【実施例】
【0026】
以下、この発明を実施例により具体的に説明する。なお、この実施例により、この発明は何ら限定されることはない。
また、以下の実施例において、研磨液組成物の配合成分として、以下のものを使用した。
【0027】
A.アルカリ化合物
(1)NaOH キシダ化学社製、商品名水酸化ナトリウム
(2)KOH キシダ化学社製、商品名水酸化カリウム
(3)アンモニア キシダ化学社製、商品名アンモニア
(4)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH) キシダ化学社製、商品名 テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(25%水溶液)
(5)ジメチルビス(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド(AH212) 四日市合成社製、商品名AH212
【0028】
B.(1)アルコール性水酸基を有する化合物 アルコール
(1)グリセリン キシダ化学社製、商品名グリセリン
(2)ジグリセリン キシダ化学社製、商品名ジグリセリン
(3)ペンタエリスリトール キシダ化学社製、商品名ペンタエリスリトール
(4)ソルビトール キシダ化学社製、商品名ソルビトール
B.(2)アルコール性水酸基を有する化合物 アミン化合物
(1)モノエタノールアミン(MEA) キシダ化学社製、商品名2−アミノエタノール
(2)ジエタノールアミン(DEA) キシダ化学社製、商品名2,2’−イミノジエタノール
(3)トリエタノールアミン(TEA) キシダ化学社製、商品名2,2’,2”−ニトリロトリエタノール
(4)モノイソプロパノールアミン 関東化学社製 商品名モノイソプロパノールアミン
(5)ジイソプロパノールアミン 関東化学社製 商品名ジイソプロパノールアミン
(6)トリイソプロパノールアミン 関東化学社製 商品名トリイソプロパノールアミン
(7)エチレンジアミン キシダ化学社製、商品名エチレンジアミン
B.(3)リン系キレート剤
(1)1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸 四日市合成社製、商品名F−115
(2)アンモニア−N,N,N−トリス(メチレンホスホン酸) キレスト社製、商品名キレストPH−320
(3)エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラキス(メチレンホスホン酸) キレスト社製、商品名キレストPH−540
【0029】
C.アクリル酸系水溶性ポリマー
(1)ポリアクリル酸Na 東亜合成社製、商品名A30SL 分子量6000
(2)ポリアクリル酸アンモニウム塩 東亜合成社製、商品名T540 分子量6000
(3)アクリル酸Naとアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸Naの共重合物 四日市合成社製 分子量10000 共重合物のモノマー比(アクリル酸Na/アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸Na=1/1)
【0030】
D.界面活性剤
<両性界面活性剤>
(1)2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(CNS) ライオン社製、商品名エナジコールCNS
(2)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 第一工業製薬社製、商品名アモーゲンCB−C
(3)ヤシ油アルキルアミノプロピオン酸ナトリウム ライオン社製、商品名リポミンLA
(4)ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム ライオン社製、商品名エナジコールDP−30
<アニオン界面活性剤>
(1)ドデシルベンゼンスルホン酸Na(ソフト型) 花王社製、商品名ネオペレックスG−15
(2)ラウレス硫酸トリエタノールアミン塩(ラウリルエーテル硫酸TEA塩) 花王社製、商品名エマール20T
<非イオン界面活性剤>
(1)ラウリルアルコールのEO付加物 第一工業製薬社製 商品名 DKS NL−100
(2)ラウリルアルコールのEO/PO付加物 第一工業製薬社製 商品名 DKS NL−Dash410
(3)ジスチレン化フェノールのEO付加物 第一工業製薬社製 商品名 ノイゲンEA137
(4)分岐デシルエーテルのEO/PO付加物 第一工業製薬社製 商品名 ノイゲンXL100
【0031】
脂肪酸類、脂肪酸アミド類、グリコール類、その他のキレート剤
(1)デカン酸 キシダ化学社製、商品名デカン酸
(2)オレイン酸アミドのEO付加物(オレイン酸アミド/5EO) ライオンアクゾ社製、商品名エソマイド O/15
(3)プロピレングリコール(PG) キシダ化学社製、商品名プロピレングリコール
(4)エチレングリコール キシダ化学社製、商品名エチレングリコール
(5)ジエチレングリコール キシダ化学社製、商品名ジエチレングリコール
(6)エチレンジアミン四酢酸Na キレスト社製、商品名キレスト40
【0032】
[応用例ET] ガラスエッチングテスト
内容積250mlのSUS製容器に、表−1、2に示す組成及び濃度の各種エッチング用水溶液を収容し、これに同表に示す各種のガラス板(白板ガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラス:2cm角四角形基板、磁気ディスク用アモルファスガラス、結晶化ガラス:2.5インチディスク状基板)を、表面が露出しないように浸漬した状態で、液温50℃で120時間静置した。各ガラス板ごとに、エッチングテスト前後の重量を測定した。
テストの結果は、ガラス基板表面からエッチングされたガラス成分の量(エッチング量)を、次式に従い、減量率(wt%)として算出し、同表に表示した:
減量率={(テスト前重量)−(テスト後重量)}/(テスト前重量)×100%
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
上記の表−1、2に示されたエッチングテストの結果から、次の事実が、判明する。
(1) 各種エッチング水溶液のうち、表−1に示す、単一化合物の水溶液では、アルカリ化合物としては、NaOH、KOHが最もエッチング性が高く、次いで第4級アンモニウム化合物及びアンモニア(No.A01〜A11参照)、そして(a)アルカノールアミン等のアミン化合物(No.a01〜a13参照)の順となる(エッチング量では、ガラス種によって若干の差は認められるが、同濃度のNaOH、KOHの1/2を超えることはない)。また、(b)グリセリン、ジグリセリン等のアルコールや、(c)1−ヒドロキシエタン−1,1ジホスホン酸等のリン系キレート剤は、ガラスをエッチングしない(No.b01〜b07及びc01〜c06参照)。
また、第4級アンモニウム化合物、アルカノールアミン化合物の水溶液の濃度による影響は、低濃度では、濃度と共にエッチング量も増大するが、10%を超えて濃度を高くしても、エッチング量の増大は殆ど望めない(No.A05〜A09及びa05〜a09参照)。
(2) 表−2に示す、併用系の水溶液では、NaOH、KOH、第4級アンモニウム化合物、アンモニア等のアルカリ化合物と、(a)アルカノールアミン等のアミン化合物、(b)グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等のアルコール、(c)1−ヒドロキシエタン−1,1ジホスホン酸、アンモニア−N,N,N−トリス(メチレンホスフォン酸)、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラキス(メチレンホスフォン酸)等のリン系キレート剤とを併用したものが、特異的に水溶液のエッチング性を向上できる。
すなわち、併用系を構成する、表示濃度の、アルカリ化合物単独の水溶液のエッチング量、及び、(a)アミン化合物、(b)アルコール、(c)リン系キレート剤等、特定の有機化合物単独の水溶液のエッチング量のいずれよりも大きく、また、両者を加算した量よりも、大きなエッチング量を達成することができる。これは全く予期できないエッチング性の向上であった。
【0036】
ただし、アルカリ化合物と併用する(a)〜(c)の有機化合物が、上述の特異的なエッチング性向上を達成させるには、以下の条件を充足する必要があることが分かった。
1) (a)アミン化合物は、分子中にアルコール性水酸基を2つ以上有すること(No.1〜2,4〜9,11〜12,23〜24,26〜27,30,31,33〜40,42〜43,47,48,53〜54参照)。また、水溶液中のアミン化合物の濃度が1%以上であること(No.5,33,36参照)。
アルコール性水酸基を1つしか有しないモノアルカノールアミンや、アルコール性水酸基を1つも有しないエチレンジアミンは、アルカリ化合物と併用しても、殆どアルカリ化合物単独の水溶液のエッチング量を超えず、エッチング性向上を示さない(No.3,10,13,25,32,41,52参照)。
2) (b)アルコールは、分子中にアルコール性水酸基を3つ以上有すること(No.17〜20,44〜45,49〜50,55〜56参照)。
アルコール性水酸基を2つしか有しないアルキレングリコールや、ジアルキレングリコールは、アルカリ化合物と併用しても、殆どアルカリ化合物単独の水溶液のエッチング量を超えず、エッチング性向上を示さない(No.14〜16参照)。
3) (c)リン系キレート剤は、炭素原子に直接結合するホスホン酸基を2つ以上有するリン化合物であること。好ましくは、さらに分子中にアルコール性水酸基を1つ以上有すること(No.21〜22,28〜29,46,51,57参照)。
特に、(c)リン系キレート剤によるエッチング性向上が、他の有機化合物(a)アミン化合物や、(b)アルコールとの併用に比較しても極めて特異的である点は、結晶化ガラスのように固いガラスに対するエッチング性向上が、著しいことである。すなわち、表−2の「結晶化ガラス」の欄に示された、併用アルカリ化合物の種類及び濃度ごとの最高のエッチング量(No.21〜22,28〜29,46,51,57参照)は、いずれも、リン系キレート剤との併用系によって達成されている。
【0037】
さらに補足すれば、(c)リン系キレート剤のうち、「1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸」(HEDPと略称)では、併用する「A.アルカリ化合物」が、NaOH、KOH、アンモニア等との場合に、エッチング量のレベルは、ガラス種を問わず、同濃度のDEAやTEA併用と同じ最高レベルに達しているだけでなく、他の「B.アルコール性水酸基を含有する化合物」の併用ではエッチングの上がっていない、結晶化ガラスのエッチング量がアモルファスガラス並みに上がっている(No.21〜22,28〜29,57参照)。
この効果は、併用するアルカリ化合物が、NaOH、KOH、アンモニア等以外の場合例えば、TMAH、AH212等の4級アンモニウム化合物では、結晶化ガラスのエッチング量は、アモルファスガラス並みとは行かなくとも、他の「B.アルコール性水酸基を含有する化合物」の併用では達していない最高レベルまで上がっている(No.46,51参照)。
エッチング効果の順序としては、NaOH=KOH>NH
3 >TMAH>AH212
となる(No.21,28,57,46,51参照)。これらのことから作用機構を推定すると、このエッチング特性には、塩基性の強さと分子・イオンの大きさが影響しているようである(塩基性は強い方が良い、イオンの大きさは小さい方が良い)。
またエッチング性は、中和当量比に大きく影響を受ける(組成物中のリン系キレート剤の有する全ての酸性水素原子を中和するに必要なアルカリ性水酸基の量をAとし、同組成物中のアルカリ化合物の有する全てのアルカリ性水酸基の量をBとした場合、B/A≧0.6の領域で効果あり)。酸が過剰な状態では、エッチング性はあまり出ないが、中和当量付近からアルカリ過剰領域においてエッチング性が高くなる傾向にある。
【0038】
[応用例 1〜2] 磁気ディスク用ガラス基板の製造
<実施例A1〜A8、A11〜A12、A21、A41、A51〜A52、A81、B1〜B8、B11〜B12、B21、B41、B51〜B52、B81及び比較例A1〜A8、A12、A21、A41、A52、B1〜B8、B12、B21、B41、B52>
【0039】
ポリッシング加工:
非磁性基板として直径2.5インチの円盤状ガラス基板の表面に対してポリッシング加工を施した。ガラス基板はKMG社製の結晶化ガラス及びアモルファスガラス基板を使用した。基板のサイズは外径65mm、内径20mm、板厚0.635mmである。
ポリッシング加工の条件は以下の通りである。即ち、研磨液に含まれる砥粒については、1次粒子が5nm、2次粒子が30nmのクラスターダイヤを用いた。研磨液として、クラスターダイヤ0.02重量部に、表−3〜4の各実施例又は比較例に記載の組成の研磨液組成物30重量部と、溶媒としてイオン交換水69.98重量部とを配合した水性ダイヤモンドスラリーを用いた。研磨液は、50ml/分で加工が開始される前に2秒間滴下した。研磨テープとして、ポリエステル製の織物布を用いた。また、研磨条件は、非磁性基板の回転数を600rpm、研磨テープの送りを75mm/分、非磁性基板の揺動を120回/分とした。テープの押し付け力は2.0kgf(19.6N)とし、加工時間は10秒とした。ポリッシング加工後、イオン交換水で表面洗浄を行った。このようにして、表面にポリッシング加工を施したガラス基板を得た。
【0040】
磁気記録媒体の調製:
ポリッシング加工後、このガラス基板をDCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C−3040)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10
−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気した後、基板上にCo−4Zr−7Nb(Zr含有量4at%、Nb含有量7at%、残部Co)のターゲットを用いて100℃以下の基板温度でCo−4Zr−7Nbの軟磁性層を100nm成膜し、この上にRu層を8nm成膜した後、さらにCo−4Zr−7Nbの軟磁性層を100nm成膜して、軟磁性下地層とした。上記軟磁性下地層の上にNi−6W(W含有量6at%、残部Ni)ターゲット、Ruターゲットを用いて、それぞれ10nm、20nmの厚さで順に成膜し、配向制御層とした。
配向制御層の上に、(Co−13Cr−16Pt)90−(SiO
2 )4−(Cr
2 O
3 )3−(TiO
2 )3{Cr含有量13at%、Pt含有量16at%、残部Coの合金組成を90mol%、SiO
2 からなる酸化物を4mol%、Cr
2 O
3 からなる酸化物を3mol%、TiO
2からなる酸化物を3mol%}の組成の磁性層を60nmの厚さで形成した。この磁性層の上に、(Co−20Cr)88−(TiO
2 )12からなる非磁性層を10nmの厚さで形成した。この非磁性層の上に、(Co−9.5Cr−16Pt−7Ru)92−(SiO
2 )5−(Cr
2 O
3 )3からなる磁性層を30nmの厚さで形成した。この磁性層の上に、Ruからなる非磁性層を10nmの厚さで形成した。この非磁性層の上に、Co−16Cr−16Pt−8B(Cr含有量16at%、Pt含有量16at%、B含有量8at%、残部Co)からなるターゲットを用いて、スパッタ圧力を3Paとして磁性層を10nmの厚さ形成した。ついでCVD法により膜厚4nmの保護層を形成した。次いで、ディッピング法によりパーフルオロポリエーテルからなる潤滑層を形成し、磁気記録媒体を得た。
【0041】
ポリッシング加工を施したガラス基板の評価:
上記のようにして得られたポリッシング加工を施した基板(各実施例又は比較例ごとに、加工枚数5枚)について、表面の研磨状態の評価を、次の4項目について実施し、その手順は、下記に従った。
(1)研磨速度:
研磨速度は、上述のポリッシング加工前後に測定した基板の重量差を、厚さ変化に換算し、加工時間で除した速度(μm/分)で表示した。
(2)表面粗さRa:
レーザー光反射散乱測定器により計測した。測定点は10点/面で、それらの測定値の平均値(Å)で表示した。
(3)スクラッチ発生率:
MicroMAX測定装置を用いて表面を観察した。ポリッシング加工で発生した傷をスクラッチとして計数し、以下の式でスクラッチ発生率を算出し:
スクラッチ発生率(%)=(スクラッチが有る基板面数/総評価面数)×100
スクラッチ発生率(%)で表した値の大きさで区分した、次の基準に従い4段階表示した。
0% ◎
0%〜5% ○
5%〜14% △
15%以上 ×
(4)パーティクル数:
ガラス表面に付着したパーティクル数は、光学顕微鏡を用いて測定した。顕微鏡で撮影した写真から、画像解析ソフトを使用して、直径0.1μm以上、2.0μm以下のパーティクルの数を数えた。1視野(7×10
−4cm
2 )ごとのパーティクル数(個)を、1面について10視野分集計し、それを単位面積あたりの数(個/cm
2 )で表した値の大きさで区分した、次の基準に従い4段階表示した。
0〜10個/cm
2 ◎
10〜100個/cm
2 ○
100〜300個/cm
2 △
300個/cm
2 以上 ×
【0042】
上記のようにして得られた垂直磁気記録媒体(各実施例又は比較例ごとに、記録媒体10面)についての評価を、次の3項目について実施し、その手順は、下記に従った。
(1)SNR:
GUZIK社製のリードライトアナライザ(機械名RWA1632)、及びスピンスタンドS1701MPを用いて測定した。ヘッドは、書き込みをシングルポール磁極、再生部にGMR素子を用いたヘッドを使用した。S/N比は、記録密度700kFCIとして測定した。SNRの数値は、各表の基準比較例(SNRの欄に「−」で表示)のSNRoと比較し、その差(ΔSNR=SNR−SNRo)の大きさで区分した、次の基準に従い4段階表示した。
+0.2dB以上 ◎
+0.1dB〜+0.2dB ○
0dB〜+0.1dB(差無し) △
0dB未満(マイナス) ×
(2)製品合格率:
最終製品として合格したものの割合を合格率(%)として計算し、次の基準に従い3段階表示した。
100%〜90% ○
89%〜80% △
80%未満 ×
(3)ミッシングカウント:
ミッシングカウントは、記録密度700kFCIのビットサイズで基板検査を行い、出力が80%以下になったビット数の1面あたりの平均値を計算し、次の基準に従い3段階表示した。
2.1(個/面)以下 ○
2.1〜2.5(個/面) △
2.5(個/面)以上 ×
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
上記の表−3〜4に示された基板表面の研磨状態の評価結果から、次の事実が、判明する。
磁気ディスク用ガラス基板の製造に際し、アルカリ金属水酸化物、第4級アンモニウム化合物、アンモニア等のアルカリ化合物(1)と、分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有するアルコール、分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するアミン化合物及びリン系キレート剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の特定化合物(2)とを含有する水性ダイヤモンドスラリーを用いた、アモルファスガラス及び結晶化ガラスのポリッシング加工により達成される、基板表面の研磨状態(実施例A1〜A8、A11〜A12、A21、A41、A51〜A52、A81、B1〜B8、B11〜B12、B21、B41、B51〜B52、B81)は、アルカリ化合物(1)と分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有するアルコール、分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するアミン化合物及びリン系キレート剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の特定化合物(2)を配合しない水性ダイヤモンドスラリーを用いた場合の研磨状態(比較例A1〜A8、A12、A21、A41、A52、B1〜B8、B12、B21、B41、B52)と比べれば、研磨速度(μm/分)、表面粗さRa(Å)、研磨面当たりのスクラッチ発生率(%)及びガラス表面に付着したパーティクル数(個/cm
2)が十分に改善されており十分実用可能である。
ここでは、アルカリ化合物(1)は、上記特定の化合物(2)と併用され、エッチング剤として働き、研磨速度の向上と表面粗さの低下に寄与し、一方両成分以外の配合成分である水溶性ポリマー(3)、界面活性剤(4)等は補助的な役割として、スクラッチの抑制や、パーティクルの除去、ヌレ性向上、洗浄性向上、ハードディスク製造時の収率の向上等に作用していると考えられる。
また、実施例A2とA21及び比較例A2とA21、更に実施例B2とB21及び比較例B2とB21の結果から、エチレングリコールの添加によりスクラッチ性が向上していることが判る。これは、エチレングリコールが、ガラス基板表面に吸着されて、基板表面と研磨液の界面で弱い境界潤滑膜を形成し、スクラッチの発生を防いでいるものと推測される。
【0046】
また、上記の表−3〜4に示された垂直磁気記録媒体の評価結果から、次の事実が、判明する。
アルカリ化合物(1)と上記特定の化合物(2)とを含有する水性ダイヤモンドスラリーを用いた、アモルファスガラス及び結晶化ガラスのポリッシング加工により得られた基板表面に形成された記録媒体(実施例A1〜A8、A11〜A12、A21、A41、A51〜A52、A81、B1〜B8、B11〜B12、B21、B41、B51〜B52、B81)においては、
アルカリ化合物(1)と上記特定の化合物(2)とを含有しない水性ダイヤモンドスラリーを用いた、アモルファスガラス及び結晶化ガラスのポリッシング加工により得られた基板表面に形成された記録媒体(比較例A1〜A8、A12、A21、A41、A52、B1〜B8、B12、B21、B41、B52)と比べて、SNR(dB)、製品合格率(%)及びミッシングカウント(個/面)が十分に改善されていて、十分実用可能である。
【0047】
[応用例 3] TFTパネル用ガラス基板の製造
<実施例C1〜C8、C11〜C12、C21〜C24、C31〜C33、C81及び比較例C1〜C8、C31>
【0048】
ポリッシング処理:
5cm角(面積25cm
2)の無アルカリガラス基板(厚さ1mm)表面に対してポリッシング処理を行った。
ポリッシング処理は、4ウェイ方式両面研磨装置を用いて行った。その際、研磨液として、平均粒径1.4μmの酸化セリウム砥粒10重量部と、表−5の各実施例又は比較例に記載の組成の研磨液組成物20重量部と、イオン交換水(比抵抗1MΩ・cm)70重量部とを配合した水性酸化セリウムスラリーを用い、研磨パッドとして、発泡ポリウレタンパッド(ローデス社製、グレード名LP−77)を用いた。
また、研磨条件は、基板を保持した定盤の回転数を50rpm、両面研磨装置へのスラリー供給量を45ml/分とした。加工圧力(パッドの押し付け力)は120gf/cm
2とし、加工時間は30分とした。このようにして、表面に、ポリッシング処理を施したガラス基板を得た。
【0049】
洗浄と評価:
ポリッシング処理を施したガラス基板は、研磨終了後、研磨面に物が触れることのないようにして、水道水で流水洗浄した後、クラス1000のクリーンルーム内において、超音波洗浄機で超音波を印加しながらイオン交換水(比抵抗1MΩ・cm)で3回リンスした。リンス後、圧縮窒素を吹き付けて乾燥した。
このようにして得られた、乾燥後のTFTパネル用ガラス基板(各実施例又は比較例ごとに、加工枚数5枚)について、研磨状態の評価(前記応用例1〜2と同様)を行った。結果は、表−5に記載の通りである。
【0050】
【表5】
【0051】
上記の表−5に示された評価結果から、次の事実が判明する。
(1)TFTパネル用ガラス基板の製造に際し、アルカリ化合物(1)及び特定の化合物(2)を含有する実施例C1〜C8、C11、C21〜C23、C31及びC81記載の配合を有する、水性酸化セリウムスラリーを用いた、無アルカリガラスのポリッシング処理により達成される、基板表面の研磨状態は、
上記(1)及び(2)のいずれか一方を含有しない、比較例C1〜C8及びC31記載の配合を有する、水性酸化セリウムスラリーを用いた場合の研磨状態に比べて、
いずれの実施例においても、スクラッチ発生率(%)及びガラス表面に付着したパーティクル数(個/cm
2)が著しく改善され、しかも、この達成が研磨速度(μm/分)及び表面粗さRa(Å)の著しい改善と同時に可能である。
(2)一方、上記アルカリ化合物(1)及び特定の化合物(2)のいずれか一方を含有しない比較例C1〜C8及びC31記載の配合を有する、水性酸化セリウムスラリーを用いた場合の研磨状態は、研磨速度(μm/分)及び表面粗さRa(Å)だけでなく、特にスクラッチ発生率(%)及びガラス表面に付着したパーティクル数(個/cm
2)の点で実用に適さず、比較例C1やC4のように、水溶性ポリマー(3)の配合によって、又は、比較例C8のように、界面活性剤(4)の配合によって、若干の改善も認められる場合もあるが、それでもなお、その他の比較例とほぼ同等な研磨状態であって、実用上使用可能とするには不十分である。
ここでは、アルカリ化合物(1)は、上記特定の化合物(2)と併用され、エッチング剤として働き、研磨速度の向上と表面粗さの低下に寄与し、一方両成分以外の配合成分である水溶性ポリマー(3)、界面活性剤(4)等は補助的な役割として、スクラッチの抑制や、パーティクルの除去、ヌレ性向上、洗浄性向上、ハードディスク製造時の収率の向上等に作用していると考えられる。
また、実施例C12及びC32記載の配合を有する、水性酸化セリウムスラリーを用いた、無アルカリガラス基板のポリッシング処理により達成される、基板表面の研磨状態と実施例C1及びC31記載の配合を有する、水性酸化セリウムスラリーを用いた同研磨状態の比較により、デカン酸の添加によりスクラッチ性が向上していることが判る。これは、デカン酸が、水性酸化セリウムスラリーの砥粒表面に吸着されて、砥粒が凝集し、凝集体は研磨時に、研磨テープとガラス基板表面との間で、ちょうどクッションのように作用して、砥粒の強い食い込みを抑え、スクラッチの低減に効果があると推定される。また、同時に基板表面に対する研磨性をマイルドにすることによって、スクラッチの発生を防いでいるものと推測される。
また、実施例C24及びC33の配合を有する、水性酸化セリウムスラリーを用いた、無アルカリガラス基板のポリッシング処理により達成される、基板表面の研磨状態と実施例C2及びC31記載の配合を有する、水性酸化セリウムスラリーを用いた同研磨状態の比較により、エチレンジアミン四酢酸Naの添加によりスクラッチ性が向上していることが判る。これは、エチレンジアミン四酢酸Naが、ガラス基板表面に吸着されて、基板表面と研磨液の界面で弱い境界潤滑膜を形成し、スクラッチの発生を防いでいるものと推測される。
【0052】
[応用例 4] 光学材料用白板ガラス基板の製造
<実施例D1〜D8、D11、D21〜D23、D31〜D33、D81及び比較例D1〜D8、D31>
【0053】
ポリッシング処理:
5cm角(面積25cm
2)の白板ガラス基板(厚さ5mm)表面に対してポリッシング処理を行った。
ポリッシング処理は、片面研磨装置を用いて行った。その際、研磨液として、平均粒径0.006μmのコロイダルシリカ砥粒10重量部と、表−6の各実施例又は比較例に記載の組成の研磨液組成物20重量部と、イオン交換水(比抵抗1MΩ・cm)70重量部とを配合した水性コロイダルシリカスラリーを用い、研磨布として、ウレタン樹脂含浸ポリエステル不織布(ローデル社製、グレード名SUBA400)を用いた。
また、研磨条件は、基板を保持した定盤の回転数を160rpm、研磨装置へのスラリー供給量を40ml/分とした。加工圧力(不織布の押し付け力)は150gf/cm
2とし、加工時間は10分とした。このようにして、表面に、ポリッシング処理を施したガラス基板を得た。
【0054】
洗浄と評価:
ポリッシング処理を施したガラス基板は、前記応用例3と同様に、水道水で流水洗浄、イオン交換水でリンス、及び圧縮窒素を吹き付け乾燥を施した。
このようにして得られた、乾燥後の光学材料用白板ガラス基板(各実施例又は比較例ごとに、加工枚数5枚)について、研磨状態の評価(前記応用例1〜2と同様)を行った。結果は、表−6に記載の通りである。
【0055】
【表6】
【0056】
上記の表−6に示された評価結果から、次の事実が判明する。
(1)光学材料用白板ガラス基板の製造に際し、アルカリ化合物(1)及び特定の化合物(2)を含有する実施例D1〜D8、D11、D21〜D23、D31、及びD81記載の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた、白板ガラスのポリッシング処理により達成される、基板表面の研磨状態は、
上記(1)及び(2)のいずれか一方を含有しない、比較例D1〜D8及びD31記載の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた場合の研磨状態に比べて、
いずれの実施例においても、スクラッチ発生率(%)及びガラス表面に付着したパーティクル数(個/cm
2)が著しく改善され、しかも、この達成が研磨速度(μm/分)及び表面粗さRa(Å)の著しい改善と同時に可能である。
(2)一方、上記アルカリ化合物(1)及び特定の化合物(2)のいずれか一方を含有しない比較例D1〜D8及びD31記載の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた場合の研磨状態は、研磨速度(μm/分)及び表面粗さRa(Å)だけでなく、特にスクラッチ発生率(%)及びガラス表面に付着したパーティクル数(個/cm
2)の点で実用に適さず、比較例D1のように、水溶性ポリマー(3)の配合によって、又は、比較例D2のように、水溶性ポリマー(3)及び界面活性剤(4)の配合によって、若干の改善も認められる場合もあるが、それでもなお、その他の比較例とほぼ同等な研磨状態であって、実用上使用可能とするには不十分である。
ここでは、アルカリ化合物(1)は、上記特定の化合物(2)と併用され、エッチング剤として働き、研磨速度の向上と表面粗さの低下に寄与し、一方両成分以外の配合成分である水溶性ポリマー(3)、界面活性剤(4)等は補助的な役割として、スクラッチの抑制や、パーティクルの除去、ヌレ性向上、洗浄性向上、ハードディスク製造時の収率の向上等に作用していると考えられる。
また、実施例D32記載の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた、光学材料用白板ガラス基板のポリッシング処理により達成される、基板表面の研磨状態と実施例D31記載の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた同研磨状態の比較により、デカン酸の添加によりスクラッチ性が向上していることが判る。これは、デカン酸が、水性コロイダルシリカスラリーの砥粒表面に吸着されて、砥粒が凝集し、凝集体は研磨時に、研磨テープとガラス基板表面との間で、ちょうどクッションのように作用して、砥粒の強い食い込みを抑え、スクラッチの低減に効果があると推定される。また、同時に基板表面に対する研磨性をマイルドにすることによって、スクラッチの発生を防いでいるものと推測される。
また、実施例D33の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた、無アルカリガラス基板のポリッシング処理により達成される、基板表面の研磨状態と実施例D31記載の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた同研磨状態の比較により、エチレンジアミン四酢酸Naの添加によりスクラッチ性が向上していることが判る。これは、エチレンジアミン四酢酸Naが、ガラス基板表面に吸着されて、基板表面と研磨液の界面で弱い境界潤滑膜を形成し、スクラッチの発生を防いでいるものと推測される。
【0057】
[応用例 5] 汎用板ガラス用ソーダライムガラス基板の製造
<実施例E1〜E8、E11、E21〜E23、E31〜E33、E81及び比較例E1〜E8、E31>
【0058】
ポリッシング処理:
5cm角(面積25cm
2)のソーダライムガラス基板(厚さ5mm)表面に対してポリッシング処理を行った。
ポリッシング処理は、4ウェイ方式両面研磨装置を用いて行った。その際、研磨液として、平均粒径0.008μmのコロイダルシリカ砥粒10重量部と、表−7の各実施例又は比較例に記載の組成の研磨液組成物20重量部と、イオン交換水(比抵抗1MΩ・cm)70重量部とを配合した水性コロイダルシリカスラリーを用い、研磨布として、ウレタン樹脂含浸ポリエステル不織布(ローデル社製、グレード名SUBA400)を用いた。
また、研磨条件は、基板を保持した定盤の回転数を80rpm、研磨装置へのスラリー供給量を80ml/分とした。加工圧力(不織布の押し付け力)は175gf/cm
2とし、加工時間は10分とした。このようにして、表面に、ポリッシング処理を施したガラス基板を得た。
【0059】
洗浄と評価:
ポリッシング処理を施したガラス基板は、前記応用例3と同様に、水道水で流水洗浄、イオン交換水でリンス、及び圧縮窒素を吹き付け乾燥を施した。
このようにして得られた、乾燥後の汎用板ガラス用ソーダライムガラス基板(各実施例又は比較例ごとに、加工枚数5枚)について、研磨状態の評価(前記応用例1〜2と同様)を行った。結果は、表−7に記載の通りである。
【0060】
【表7】
【0061】
上記の表−7に示された評価結果から、次の事実が判明する。
(1)汎用板ガラス用ソーダライムガラス基板の製造に際し、アルカリ化合物(1)及び特定の化合物(2)を含有する実施例E1〜E8、E11、E21〜E23、E31及びE81記載の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた、ソーダライムガラスのポリッシング処理により達成される、基板表面の研磨状態は、
上記(1)及び(2)のいずれか一方を含有しないが、他の配合成分及び量を共通にする、比較例E1〜E8及びE31記載の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた場合の研磨状態に比べて、
いずれの実施例においても、スクラッチ発生率(%)及びガラス表面に付着したパーティクル数(個/cm
2)が著しく改善され、しかも、この達成が研磨速度(μm/分)及び表面粗さRa(Å)の著しい改善と同時に可能である。
(2)一方、上記アルカリ化合物(1)及び特定の化合物(2)のいずれか一方を含有しない、水性コロイダルシリカスラリーを用いた場合の研磨状態は、研磨速度(μm/分)及び表面粗さRa(Å)だけでなく、特にスクラッチ発生率(%)及びガラス表面に付着したパーティクル数(個/cm
2)の点で実用に適さず、比較例E3のように、界面活性剤(4)配合によって、若干の改善も認められる場合もあるが、それでもなお、その他の比較例とほぼ同等な研磨状態であって、実用上使用可能とするには不十分である。
ここでは、アルカリ化合物(1)は、上記特定の化合物(2)と併用され、エッチング剤として働き、研磨速度の向上と表面粗さの低下に寄与し、一方両成分以外の配合成分である水溶性ポリマー(3)、界面活性剤(4)等は補助的な役割として、スクラッチの抑制や、パーティクルの除去、ヌレ性向上、洗浄性向上、ハードディスク製造時の収率の向上等に作用していると考えられる。
また、実施例E32記載の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた、汎用板ガラス用ソーダライムガラス基板のポリッシング処理により達成される、基板表面の研磨状態と実施例E31記載の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた同研磨状態の比較により、デカン酸の添加によりスクラッチ性が向上していることが判る。これは、デカン酸が、水性コロイダルシリカスラリーの砥粒表面に吸着されて、砥粒が凝集し、凝集体は研磨時に、研磨テープとガラス基板表面との間で、ちょうどクッションのように作用して、砥粒の強い食い込みを抑え、スクラッチの低減に効果があると推定される。また、同時に基板表面に対する研磨性をマイルドにすることによって、スクラッチの発生を防いでいるものと推測される。
また、実施例E33の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた、無アルカリガラス基板のポリッシング処理により達成される、基板表面の研磨状態と実施例E31記載の配合を有する、水性コロイダルシリカスラリーを用いた同研磨状態の比較により、エチレンジアミン四酢酸Naの添加によりスクラッチ性が向上していることが判る。これは、エチレンジアミン四酢酸Naが、ガラス基板表面に吸着されて、基板表面と研磨液の界面で弱い境界潤滑膜を形成し、スクラッチの発生を防いでいるものと推測される。