特許第5711910号(P5711910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711910
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】モータ駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/285 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   H02P7/285 Z
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-170778(P2010-170778)
(22)【出願日】2010年7月29日
(65)【公開番号】特開2012-34471(P2012-34471A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】300057230
【氏名又は名称】セミコンダクター・コンポーネンツ・インダストリーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 龍生
(72)【発明者】
【氏名】内山 祐二
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−019172(JP,A)
【文献】 特開平07−312886(JP,A)
【文献】 米国特許第04933799(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータコイルの逆起電圧の増加に応じてコイル電流が減少するモータを駆動する駆動回路と、
前記コイル電流の電流値が所定値より大きいか否かを検出する検出回路と、
前記コイル電流の電流値が所定値より大きいことが検出されると、前記コイル電流が前記所定値以下となるよう前記駆動回路を制御する第1制御回路と、
前記コイル電流の供給が開始されてから所定の時間が経過するまでは、前記第1制御回路が前記検出回路の検出結果に基づいて前記駆動回路を制御しないよう、前記第1制御回路を制御する第2制御回路と、
を備え
前記第2制御回路は、
電流源と、
前記コイル電流の供給が開始されると、前記電流源からの定電流でコンデンサを充電する充電回路と、
前記コンデンサの充電電圧が前記所定の時間に応じた所定電圧となると、前記所定の時間が経過したことを判定する判定回路と、
前記判定回路が前記所定の時間が経過したことを判定すると、前記検出回路の検出結果に基づいて前記第1制御回路を動作させる第3制御回路と、
を含み、
前記検出回路は、
前記コイル電流を電圧に変換する抵抗と、
前記抵抗に発生する電圧と前記所定値に応じた基準電圧との大小に基づいて、前記コイル電流の電流値と前記所定値との大小を比較する比較回路と、
前記所定値を変更するためのデータに基づいて、前記基準電圧のレベルを変更して前記比較回路に出力する電圧出力回路と、
を含み、
前記コンデンサが接続される端子を有する集積回路である
ことを特徴とするモータ駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な直流モータにおけるモータコイルの逆起電圧は、モータの回転数の上昇に応じて高くなる。このため、モータコイルに流れるコイル電流は、例えば図4に示すようにモータの起動時に大きくなりその後低下する。しかしながら、モータの回転数が一定となった定常時であっても、例えばモータがロックするとモータの回転数は低下するため、大きなコイル電流が流れることがある。そこで、モータ駆動回路には、コイル電流の電流値と、所定の電流値とを比較して、コイル電流が所定の電流値以下となるようにする電流リミット回路が設けられることがある(例えば、特許文献1参照)。つまり、コイル電流の電流値が所定の電流値(以下、電流リミット値)となると、モータ駆動回路は、例えばコイル電流が電流リミット値以下となるようモータコイルを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−94925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、定常時に流れる電流値を基準にして電流リミット値を定めると、起動時においては、一般にコイル電流の電流値は電流リミット値となる。このような場合、コイル電流が電流リミット値以下となるように制御されるため、モータが回転するために必要なトルクが確保できず、モータが回転しないことがある。
そこで、例えばマイコンに、電流リミット値をモータが起動している間は高く設定させ、定常時には低く設定させることがある。しかしながら、このような場合、マイコンはモータが起動される度に、電流リミット値を変更しなければならず、マイコンに負荷がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、マイコンの負荷を軽減可能なモータ駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一つの側面に係るモータ駆動回路は、モータコイルの逆起電圧の増加に応じてコイル電流が減少するモータを駆動する駆動回路と、前記コイル電流の電流値が所定値より大きいか否かを検出する検出回路と、前記コイル電流の電流値が所定値より大きいことが検出されると、前記コイル電流が前記所定値以下となるよう前記駆動回路を制御する第1制御回路と、前記コイル電流の供給が開始されてから所定の時間が経過するまでは、前記第1制御回路が前記検出回路の検出結果に基づいて前記駆動回路を制御しないよう、前記第1制御回路を制御する第2制御回路と、を備え、前記第2制御回路は、電流源と、前記コイル電流の供給が開始されると、前記電流源からの定電流でコンデンサを充電する充電回路と、前記コンデンサの充電電圧が前記所定の時間に応じた所定電圧となると、前記所定の時間が経過したことを判定する判定回路と、前記判定回路が前記所定の時間が経過したことを判定すると、前記検出回路の検出結果に基づいて前記第1制御回路を動作させる第3制御回路と、を含み、前記検出回路は、前記コイル電流を電圧に変換する抵抗と、前記抵抗に発生する電圧と前記所定値に応じた基準電圧との大小に基づいて、前記コイル電流の電流値と前記所定値との大小を比較する比較回路と、前記所定値を変更するためのデータに基づいて、前記基準電圧のレベルを変更して前記比較回路に出力する電圧出力回路と、を含み、前記コンデンサが接続される端子を有する集積回路である
【発明の効果】
【0007】
マイコンの負荷を軽減可能なモータ駆動回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態であるモータ駆動IC10の構成を示す図である。
図2】マスク回路23の一実施形態を示す図である。
図3】モータ15の正転を開始させた際のコイル電流IL及びモータ駆動IC10の主要な波形を示す図である。
図4】直流モータの起動時における一般的なコイル電流の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
図1は、本発明の一実施形態であるモータ駆動IC10の構成を示す図である。モータ駆動IC10(モータ駆動回路)は、マイコン16の指示に基づいてモータ15を駆動する回路であり、駆動回路20、制御回路21、電流リミット回路22、マスク回路23、及び端子30〜36を含んで構成される。
【0010】
モータ15は、例えば、端子35,36の間に接続されたブラシ付き直流モータであり、モータ15の両端の電圧に応じて回転する。具体的には、端子35の電圧がほぼ電源電圧Vccとなり、端子36の電圧がほぼグランドGNDの電圧となると正転する。一方、端子36の電圧がほぼ電源電圧Vccとなり、端子35の電圧がほぼグランドGNDの電圧となると逆転する。また、端子35,36の電圧がともにほぼグランドGNDの電圧となると、モータ15はブレーキ状態となり、モータ15の回転数は低下する。さらに、端子35,36がハイインピーダンス状態となると、モータ15はいわゆる待機状態となる。
【0011】
なお、本実施形態では、モータ15のモータコイル(不図示)に流れるコイル電流をILとする。また、図1では、モータ15が正転している際のコイル電流ILの流れる向きが図示されている。
【0012】
マイコン16は、モータ15を正転させるか、逆転させるか等を指示するための信号In1,In2や、コイル電流ILの電流値が所定値(以下、電流リミット値)であるか否かを判定するための基準となる電流値を設定するための信号S1,S2を出力する。なお、信号In1,In2,S1,S2は、論理レベルの信号である。
【0013】
駆動回路20は、制御回路21からの出力に基づいてモータ15を直接駆動するHブリッジ回路であり、NMOSトランジスタ40A,40B、PMOSトランジスタ41A,41Bを含んで構成される。
【0014】
制御回路21は、端子30,31を介して入力される信号In1,In2と、電流リミット回路22から出力され、コイル電流ILの電流値が電流リミット値より大きいか否かを示す電圧Vaと、に基づいて、Hブリッジ回路におけるNMOSトランジスタ40A等のオンオフを制御する。制御回路21は、電圧Vaがローレベル(以下、“L”レベル)の場合、信号In1,In2に基づいて、NMOSトランジスタ40A等をオン、オフする。なお、詳細は後述するが、電圧Vaが“L”レベルの場合は、コイル電流ILの電流値が電流リミット値より低く、電流リミットが検出されていない場合である。なお、ここで、電流リミットの検出とは、コイル電流ILの電流値が電流リミット値になることを検出することをいう。
【0015】
制御回路21は、信号In1,In2がともに“L”レベルの場合、Hブリッジ回路に含まれるNMOSトランジスタ40A等を全てオフする。この結果、モータ15は待機状態となる。なお、以下、信号In1が“L”レベル、信号In2が“L”レベルであることを、(In1,In2)=(L,L)と記載する。
【0016】
制御回路21は、(In1,In2)=(H,L)の場合、PMOSトランジスタ41A、およびNMOSトランジスタ40Bをオンし、PMOSトランジスタ41B、およびNMOSトランジスタ40Aをオフする。この結果、端子35の電圧はほぼ電源電圧Vccとなり、端子36はNMOSトランジスタ40Bのオン抵抗及び抵抗50を介してグランドに接地されるため、モータ15は正転する。
【0017】
また、制御回路21は、(In1,In2)=(L,H)の場合、PMOSトランジスタ41B、およびNMOSトランジスタ40Aをオンし、PMOSトランジスタ41A、およびNMOSトランジスタ40Bをオフする。この結果、端子36の電圧はほぼ電源電圧Vccとなり、端子35はNMOSトランジスタ40Aのオン抵抗及び抵抗50を介してグランドに接地されるため、モータ15は逆転する。制御回路21は、(In1,In2)=(H,H)の場合、PMOSトランジスタ41A,41Bをオフし、NMOSトランジスタ40A,40Bをオンする。この結果、端子35,36の電圧はほぼグランドGNDの電圧となるため、モータ15はブレーキ状態となる。
【0018】
また、制御回路21は、電圧Vaが “H”レベルの場合、すなわち電流リミットが検出される場合、信号In1,In2に関わらず、コイル電流ILの電流値が電流リミット値以下となるようHブリッジ回路に含まれるNMOSトランジスタ40A等をスイッチングする。なお、制御回路21、および後述するAND回路53が、第1制御回路に相当する。
【0019】
電流リミット回路22(検出回路)は、コイル電流ILの電流値が、電流リミット値より大きいか否かを検出する回路であり、抵抗50、レベル変換回路51、コンパレータ52、及びAND回路53を含んで構成される。
【0020】
抵抗50は、いわゆる電流検出抵抗であり、コイル電流ILを電圧Vrに変換する。このため、電圧Vrは、コイル電流ILと同様に変化する。
【0021】
レベル変換回路51(電圧出力回路)は、端子33,34を介して入力される信号S1,S2に基づいて、所定レベルの基準電圧Vrefのレベルを変換して出力する。なお、基準電圧Vrefは、例えば、定常時においてコイル電流ILの電流値が電流リミット値となるか否かを判定するための基準となる電圧である。
【0022】
レベル変換回路51は、(S1,S2)=(L,L)の場合、例えば基準電圧Vrefを出力し、(S1,S2)=(H,L)の場合、例えばVref×3/4を出力する。なお、ここでは、基準電圧Vrefの電圧レベルをVrefとしている。また、レベル変換回路51は、(S1,S2)=(L,H)の場合、例えばVref×2/4を出力し、(S1,S2)=(H,H)の場合、例えばVref×1/4を出力する。
【0023】
なお、信号S1,S2に応じて、異なるレベルの電圧を出力するレベル変換回路51は、例えば、信号S1,S2に応じた分圧比で基準電圧Vrefを分圧する分圧回路や、ADコンバータで実現できる。このため、本実施形態では、上述した“3/4”等の基準電圧Vrefに乗算される係数を予め自由に設定することができる。
【0024】
コンパレータ52は、電圧Vrとレベル変換回路51から出力される電圧Voのレベルとを比較する。コンパレータ52は、電圧Vrのレベルが電圧Voのレベルより高くなると、コイル電流ILの電流値が電流リミット値より高いことを検出し、“H”レベルの電圧Vc1を出力する。一方、コンパレータ52は、電圧Vrのレベルが電圧Voのレベルより低い場合、コイル電流ILの電流値が電流リミット値より低いことを検出し、“L”レベルの電圧Vc1を出力する。
【0025】
AND回路53は、マスク回路23から出力されるマスク電圧Vmと、電圧Vc1との論理積を演算し、演算結果を示す電圧Va出力する。したがって、マスク電圧Vmが“L”レベルの場合、電圧Vc1のレベルに関わらず電圧Vaは “L”レベルとなる。一方、マスク電圧Vmが“H”レベルの場合、電圧Vaは、電圧Vc1と同様に変化する。つまり、マスク電圧Vmが“L”レベルの場合、電圧Vc1のレベルによらず、電圧Vaは“L”となる。
【0026】
マスク回路23(第2制御回路)は、モータ15を正転、または逆転させるための信号In1,In2が入力されると、“L”レベルの電圧Vmを所定の時間TAだけ出力し、電圧Vc1の変化をマスクする。マスク回路23は、図2に示すように、EOR回路60、パルス発生回路61、充放電回路62、コンパレータ63、及びSRフリッププロップ64を含んで構成される。なお、所定の時間TAは、例えば、モータ15が起動されてから、回転数が一定となるまでの時間よりも長い時間であることとする。
【0027】
EOR回路60は、信号In1,In2の排他的論理和を演算して出力する。このため、信号In1,In2の何れか一方が“H”レベルとなる場合、すなわち、正転、または逆転の指示がマイコン16から出力される場合に、EOR回路60の出力は“H”レベルとなる。
【0028】
パルス発生回路61は、EOR回路60の出力が“H”レベルとなると、“H”レベルとなるパルス信号Vpを出力する。
【0029】
充放電回路62(充電回路)は、端子32を介して接続されたコンデンサ17を充放電する回路であり、制御回路70、NMOSトランジスタ71、及び電流源72を含んで構成される。具体的には、充放電回路62は、“H”レベルのパルス信号Vpが出力されると、コンデンサ17を充電し、コンパレータ63から出力される電圧Vc2が“H”レベルになると、コンデンサ17を放電する。
【0030】
制御回路70は、“H”レベルのパルス信号Vpが出力されると、NMOSトランジスタ71をオフし、コンパレータ63から出力される電圧Vc2が“H”レベルとなると、NMOSトランジスタ71をオンする。
【0031】
NMOSトランジスタ71のドレインは、端子32に接続され、電流源72からの定電流は、端子32を介してコンデンサ17に供給される。このため、NMOSトランジスタ71がオンの場合、コンデンサ17の充電電圧Vcapは、ほぼグランドGNDの電圧となる。一方、NMOSトランジスタ71がオフの場合、コンデンサ17は定電流で充電されるため、充電電圧Vcapは徐々に上昇する。
【0032】
コンパレータ63(判定回路)は、充電電圧Vcapと、所定の電圧Vbとを比較し、モータ15が起動されてから所定の時間TAが経過したか否かを検出する。具体的には、充電電圧Vcapが電圧Vbより高くなると、コンパレータ63は、モータ15が起動されてから所定の時間TAが経過したことを検出し、電圧Vc2を“H”レベルとする。なお、電圧Vc2が“H”レベルになると、前述のようにNMOSトランジスタ71はオンされるため、コンデンサ17は放電される。
【0033】
SRフリップフロップ64(第3制御回路)は、パルス信号Vpが“H”となると、つまり、モータ15を正転、または逆転させるための指示が出力されると、Q出力から出力される電圧Vmを“L”レベルとする。一方、SRフリップフロップ64は、電圧Vc2が“H”レベルとなると、つまり、モータ15の起動が開始されてから所定の時間TAが経過すると、電圧Vmを“H”レベルとする。このように、マスク回路23は、モータ15を正転、または逆転させるため指示が入力されると、“L”レベルの電圧Vmを所定の時間TAだけ出力し、電圧Vc1の変化をマスクする。
【0034】
==モータ駆動IC10の動作==
ここで、図3を参照しつつモータ駆動IC10の動作を説明する。なお、ここでは、時刻t0にマイコン16が、モータ15を正転させるべく(In1,In2)=(H,L)を出力する。また、レベル変換回路51は、基準電圧Vrefを電圧Voとして出力していることとする。また、本実施形態では、例えば、定格電流が起動時のコイル電流ILより十分大きくなるようなモータ駆動IC10が用いられることとする。また、本実施形態では、コイル電流ILが定格電流となると、Hブリッジ回路のNMOSトランジスタ40A等を、制御回路21に全てオフさせるための過電流検出回路(不図示)が含まれていることとする。
【0035】
まず、時刻t0に、(In1,In2)=(H,L)となると、PMOSトランジスタ41A、およびNMOSトランジスタ40Bはオンされるため、コイル電流ILの供給が開始される。また、パルス信号Vpが“H”レベルとなるため、コンデンサ17の充電が開始され充電電圧Vcapは上昇する。さらに、SRフリップフロップ64はリセットされるため、電圧Vmの“L”レベルは維持される。
【0036】
コイル電流ILの供給が開始されると、コイル電流ILは増加するため電圧Vrも増加する。そして、例えば、時刻t1となると、電圧Vrは電圧Vrefよりも高くなるため、電流リミットが検出され、“H”の電圧Vc1が出力される。しかしながら、時刻t0から所定の時間TAが経過するまで電圧Vc1はマスクされるため、コイル電流ILは上昇し続ける。
【0037】
ところで、モータ15が回転し始めるとモータコイルの逆起電圧は徐々に高くなるため、図3に示すように、コイル電流ILは上昇した後に低下する。そして、例えば、時刻t2となると、電圧Vrは電圧Vrefよりも低くなるため、電圧Vc1は“L”レベルとなる。
【0038】
また、時刻t0から所定の時間TAだけ経過した時刻t3となると、充電電圧Vcapは電圧Vbとなるため、電圧Vmは“H”レベルとなる。つまり、時刻t3となると、電圧Vc1のマスクは解除される。このため、時刻t3以降に電流リミットが検出されると、制御回路20は、コイル電流ILの電流値が電流リミット値以下となるようHブリッジ回路に含まれるNMOSトランジスタ40A等をスイッチングする。
【0039】
以上、本実施形態のモータ駆動IC10について説明した。マスク回路23は、コイル電流ILの供給が開始されてから所定の時間TAが経過するまでは、電流リミット回路の検出結果に基づいて、制御回路21がNMOSトランジスタ40A等をスイッチングしないよう制御回路21を制御する。このため、本実施形態では、定常時における電流リミットを検出するために、例えば図4に示したように基準電圧Vrefを上昇させる必要はない。つまり、マイコン16は、モータ15が起動される毎に基準電圧Vrefを高くする必要は無いため、マイコン16の負荷は軽減される。
【0040】
また、本実施形態では、電流源72の電流値やコンデンサ17の容量値等を自由に定めることができるため、所定の時間TAを変更することが可能である。
【0041】
一般に、モータ15が一定の回転数となるまでの時間は、例えばモータ15の種類等によって変化する。本実施形態ではコンデンサ17は、端子32に接続されるいわゆる外付けのコンデンサである。したがって、利用者は、実際に用いるモータ15に最適な所定の時間TAを設定できる。
【0042】
また、コンパレータ52は、電圧Vrと、例えば基準電圧Vrefとの大小に基づいて、コイル電流ILが電流リミット値であるか否かを検出する。電圧Vrは、コイル電流ILと同様に変化する電圧であるため、本実施形態では、精度良く電流リミットの検出を行うことができる。
【0043】
また、レベル変換回路51は、信号S1,S2に基づいて、基準電圧Vrefのレベルを変換してコンパレータ52に出力する。このため、本実施形態では、電流リミットの検出レベルを変化させることができる。
【0044】
なお、上記実施例は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0045】
モータ15は、例えばブラシ付き直流モータであるとしたが、ブラシレス直流モータであってもよい。
【0046】
また、駆動回路20は、NMOSトランジスタ40A,40B、及びPMOSトランジスタ41A,41Bを含んで構成されることとしたが、これに限られるものでは無い。例えば、PMOSトランジスタ41A,41Bを、ともにNMOSトランジスタとしても良い。ただし、そのような場合、電源Vcc側に設けられたNMOSトランジスタをオン、オフする電圧を生成するチャージポンプ回路等の昇圧回路が必要となる。
【0047】
また、駆動回路20に含まれるトランジスタは、バイポーラトランジスタ等であっても良い。
【符号の説明】
【0048】
10 モータ駆動IC
15 モータ
16 マイコン
17 コンデンサ
20 駆動回路
21 制御回路
22 電流リミット回路
23 マスク回路
30〜36 端子
40A,40B,71 NMOSトランジスタ
41A,41B PMOSトランジスタ
50 抵抗
51 レベル変換回路
52,63 コンパレータ
53 AND回路
60 EOR回路
61 パルス発生回路
62 充放電回路
64 SRフリップフロップ
70 制御回路
72 電流源
図1
図2
図3
図4