【文献】
赤松 昌彦,塚田 路治,伊藤 大介, 電力系統事故時の異常電圧に対処したPLLおよび周波数検出方式,電気学会論文誌. B, 電力・エネルギー部門誌,日本,電気学会 ,1998年 9月 1日,P.955-961
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
位相を生成する位相生成手段と、所定のサンプリング周期で交流信号が入力される毎に、前記位相生成手段で生成された位相と入力される交流信号の位相との位相差を算出し、その位相差がゼロでなければ、当該位相差に基づき前記位相生成手段で生成された位相を当該位相差が減少する方向に変更し、前記位相差がゼロであれば前記位相生成手段で生成された位相を保持する制御を行う位相制御手段とを有する位相同期手段を備えた位相検出装置において、
前記位相同期手段の前段に、前記交流信号に含まれる高調波成分を除去し、かつ、不平衡成分も除去する複素係数フィルタからなるフィルタ手段を備えたことを特徴とする、位相検出装置。
前記複素係数フィルタは、前記交流信号に含まれる基本波を通過帯域の中心周波数とするバンドパスフィルタと前記不平衡成分と所定次数の高調波成分を阻止するノッチフィルタとを組み合わせた多段フィルタである、請求項1に記載の位相検出装置。
【背景技術】
【0002】
電力系統の三相電圧の一つをv=A
m・sin(ω・t)=A
m・sin(θ)(A
m:振幅、θ:位相、ω:角周波数、t:基準時からの経過時間)とし、この三相電圧vをベクトル記号法で表すと、電圧ベクトルVは、V=A
m・exp(j・θ)=A
m・exp(j・ω・t)で表される。この電圧ベクトルVは、
図23に示すように、基準時を実軸Rの方向として反時計回りに角周波数ωで回転する回転ベクトルを示し、時刻tにおける電圧ベクトルVの虚軸Jへの投影値が三相電圧vの瞬時値となる。なお、以下の説明では、原則として電圧ベクトルを示す符号は大文字で表記し、三相電圧の瞬時値を示す符号は小文字で表記する。
【0003】
従来、電力系統の三相電圧信号の位相を検出する方法としてPLL(Phase Locked Loop)法が知られている。PLL法は、PLL回路で算出される位相θ’を有する電圧ベクトルV’をA
m・exp(j・θ')=A
m・exp(j・ω'・t)とすると、所定のサンプリング周期で電圧ベクトルV’と電力系統の電圧ベクトルVとの間の位相差Δθを算出し、その位相差Δθに基づいて電圧ベクトルV’の位相θ’を変化させ、電圧ベクトルV’を電圧ベクトルVに一致させるように位相θ’を制御する方式である。
【0004】
非特許文献1には、
図24に示す乗算式PLL法を用いた位相検出装置の構成図が示されている。乗算式PLL法は、三角関数の公式より、
sin(Δθ)=sin(θ−θ’)=sin(θ)・cos(θ’)−cos(θ)・sin(θ’)…(1)
で、|Δθ|[rad]が微小であれば、sin(Δθ)≒Δθであることから、電圧ベクトルV’の角周波数ω’を変化させるための位相差Δθを上記(1)式の演算処理により算出する方式である。
【0005】
図24に示す位相検出装置100では、電力系統の三相の電圧信号v
u,v
v,v
wをv
u=A
m・sin(θ)、v
v=A
m・sin(θ−2π/3)、v
w=A
m・sin(θ−4π/3)とすると、三相二相変換部101で互いに直交する電圧信号vα=Aα・sin(θ)、vβ=−Aβ・cos(θ)に変換し、正規化部102で電圧信号vα,vβの振幅をそれぞれ「1」に正規化して上記(1)式内のsin(θ)と−cos(θ)の値を算出している。そして、PLL処理部103で上記(1)式の演算処理をして位相差Δθを算出し、その算出値に基づきPLL処理部103から出力される位相θ’を変化させている。
【0006】
位相検出装置100では、電力系統の三相電圧信号v
u,v
v,v
wの検出値(所定のサ
ンプリング周期で検出される瞬時値)が入力される毎に、位相差Δθを算出し、その位相差Δθに基づいて位相θ’を変化させるとともに、その位相θ’をsin(θ−θ’)の演算処理にフィードバックするループ処理を繰り返し、PLL処理部103から出力される位相θ’を位相差Δθがゼロとなる値、すなわち、実際の電力系統
の電圧信号
vu,vv,vwの位相θに収束させる動作が行われる。
【0007】
PLL処理部103の位相θ’のフィードバック経路には余弦値演算部103aと正弦値演算部103bとが設けられ、余弦値演算部103aで上記(1)式内のcos(θ’)が演算され、正弦値演算部103bで上記(1)式内のsin(θ’)が演算される。余弦値演算部103aの演算値は乗算器103cで正規化部102からのsin(θ)に乗算され、正弦値演算部103bの演算値は乗算器103dで正規化部102からの−cos(θ)に乗算され、両乗算値が加算器103eで加算される。
【0008】
従って、位相検出装置100では、三相二相変換部101からPLL処理部103の加算器103eまでが上記(1)式の
演算を行う演算部を構成し、加算器103eから後段の部分が位相差Δθに基づきPLL処理部103で算出される位相θ’を変化させ、当
該位相θ’を電力系統の電圧ベクトルVの位相θに収束させる演算部を構成している。
【0009】
図24に示す乗算式PLL法を用いた位相検出装置100は、至近端で地落事故が発生したり、位相が欠落したりした場合、異常な電圧不足や電圧不平衡が生じ、PLL処理部103に入力される
三相の電圧信号v
u,v
v,v
wも同様に異常電圧となるため、位相差Δθの算出精度が低下し、これに伴い位相θ’を電力系統の位相θに収束させる速度も低下するという問題がある。
【0010】
そこで、非特許文献1や特許文献1には、電力系統の事故によ
り電圧信号
vu,vv,vwが不平衡になった場合でも各相
の電圧信号
vu,vv,vwは正相分が支配的であることに着目し、
図25に示す、PLL処理部103’から出力される位相θ’
が電圧信号
vu,vv,vwの正相分の位相に追従するPLL法が提案されている。
【0011】
図25に示す位相検出装置100’は、
図24に示す位相検出装置100に対して三相二相変換部101を対称座標変換部104に変え、余弦値演算部103aをsin(θ’+2π/3)の正弦値を演算する正弦値演算部103a’に変えたものである。
【0012】
対称座標変換部104では下記の演算式によりU相,V相,W相の電圧信号v
u,v
v,v
wが各相の正相分の電圧信号v
up,v
vp,v
wpに変換され、正規化部102では各相の正相分の電圧信号v
up,v
vp,v
wpからそれぞれ正規化した電圧信号v
up’=sin(θ),v
vp’=sin(θ−2π/3),v
wp’=sin(θ−4π/3)が算出される。
【0013】
【数1】
【0014】
位相の異なる2つのsin(θ),sin(θ+ψ)と位相θ’を用いて位相差Δθ=(θ−θ’)を求める場合、
sin(θ)・sin(θ'+ψ)=sin(θ)・{sin(θ')・cos(ψ)+cos(θ')・sin(ψ)}
sin(θ')・sin(θ+ψ)=sin(θ')・{sin(θ)・cos(ψ)+cos(θ)・sin(ψ)}
の三角関数の公式より、 sin(θ)・sin(θ'+ψ)−sin(θ')・sin(θ+ψ)
=sin(ψ)・{sin(θ)・cos(θ')−cos(θ)・sin(θ')}
=sin(ψ)・sin(θ−θ')…(2)
の関係式が成立し、(2)式よりsin(θ−θ')を求めることができる。
【0015】
図25に示す位相検出装置100'では、ψ=−4π/3とし、正規化部102からP
LL処理部103’に電圧信号v
up’=sin(θ),v
wp’=sin(θ−4π/3)を入力し、正弦値演算部103a’で(2)式の
sin(θ'+ψ)=sin(θ'−4π/3)=sin(θ'+2π/3)を演算するようにしている。そして、乗算器103cで
sin(θ)・sin(θ'+ψ)=sin(θ)・sin(θ'+2π/3)を演算するとともに、乗算器103dで
sin(θ+ψ)・sin(θ')=sin(θ−4π/3)・sin(θ')=sin(θ+2π/3)・sin(θ')を演算し、加算器103eで両演算値
の差分を演算してsin(−4π/3)・sin(θ−θ’)={√(3)/2}・sin(θ−θ’)を算出している。
【0016】
|θ−θ'|=|Δθ|[rad]が微小であれば、{√(3)/2}・sin(θ−θ’)≒0.866×Δθであるから、加算器103eからは位相差Δθの情報(0.866×Δθ)が出力される。従って、加算器103eの後段では加算器103eの演算結果に基づいて制御値Δω(Δθの微分値に相当)を生成し、その制御値Δωに所定の基準値ω
0を加算して角周波数に相当する値ω’を生成し、その角周波数ω’に積分処理を行って位相θ’を算出している。
【0017】
図23のベクトル図に示すように、電力系統の電圧ベクトルVがPLL処理部103’で生成される電圧ベクトルV’に対してΔθだけ進んだ場合、加算器103eの後段では当該加算器103eの演算値に基づいて角周波数ω’がΔωだけ増加され、PLL処理部103’で生成される電圧ベクトルV’の
角速度ω’を電力系統の電圧ベクトルVの
角速度ωよりも高くして電圧ベクトルV’を電圧ベクトルVに一致させるPLL動作が行われる。そして、電圧ベクトルV’が電圧ベクトルVに一致すると、PLL処理部103’はその状態を維持するように動作し、位相検出装置100’からは電力系統の電圧ベクトルVと同一の位相θが出力されることになる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を、本発明に係る位相検出装置を系統連系インバータに適用した場合を例に、添付図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、電力系統の三相の電圧信号v
u,v
v,v
wの基本波成分をv
u=A
m・cos(θ)(A
m:振幅、θ:系統電圧の位相)、v
v=A
m・cos(θ−2π/3)、v
w=A
m・cos(θ−4π/3)として説明する。
【0035】
まず、系統連系インバータについて、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明に係る位相検出装置が適用される系統連系インバータの基本構成を示す図である。
【0036】
図1に示す系統連系インバータ1は、直流電力を交流電力に変換して商用電力系統に供給する三相の系統連系インバータである。
【0037】
系統連系インバータ1は、直流電力を出力する直流電源2、直流電源2から出力される直流電力を交流電力に変換するインバータ回路3、このインバータ回路3内のスイッチング素子TR1〜TR6のオン・オフ動作を制御するインバータ制御部4、インバータ回路3から出力される交流電圧に含まれるスイッチングノイズを除去するフィルタ回路5、フィルタ回路5から出力される交流電圧のレベルを系統電圧に合わせて電力系統9に出力するための変圧器6、変圧器6から電力系統9に出力される出力電流を検出する電流検出器7及び電力系統9の電圧を検出する電圧検出器8を備える。
【0038】
直流電源2は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池211で構成される。なお、燃料電池などの他の直流電源で構成されていてもよい。インバータ回路3は、6個のスイッチング素子TR1〜TR6をブリッジ接続した、周知の電圧制御型インバータ回路で構成される。スイッチング素子としては、例えば、バイポーラトランジスタ、電界効果
型トランジスタ、サイリスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチング素子が用いられるが、
図1は、トランジスタを用いた例である。各トランジスタTR1〜TR6には帰還ダイオードD1〜D6が並列に接続されている。
【0039】
6個のトランジスタTR1〜TR6は、インバータ制御部4から出力されるPWM信号によってそれぞれオン・オフ動作が制御される。インバータ制御部4からは相互にレベルが逆になっている2つのPWM信号Spwm,/Spwmを1組として、周期は同一でオン期間(パルス幅)の異なる3組のPWM信号(Spwmi,/Spwmi)(iは組の番号を示し、i=1,2,3である。)が出力される。第1の組のPWM信号(Spwm1,/Spwm1)はトランジスタTR1とトランジスタTR2のベースに入力され、第2の組のPWM信号(Spwm2,/Spwm2)はトランジスタTR3とトランジスタTR4のベースに入力され、第3の組のPWM信号(Spwm3,/Spwm3)はトランジスタTR5とトランジスタTR6のベースに入力される。トランジスタTR1〜TR6はPWM信号Spwmi,/Spwmiがハイレベルのときにオン(ON)状態(導通状態)となり、ローレベルのときにオフ(OFF)状態(遮断状態)となる。
【0040】
インバータ制御部4は、マイクロコンピュータによって構成され、そのマイクロコンピュータが予め設定されたプログラムによって所定の演算処理を実行することにより3組のPWM信号(Spwmi,/Spwmi)(i=1,2,3)を生成する制御を行う。なお、インバータ制御部4をFPGA(Field Programmable Gate Array)で実現することも可能である。
【0041】
フィルタ回路5は、等価的にインバータ回路3の3本の出力ラインにそれぞれインダクタL
Fを直列に接続し、3個の出力ライン間にキャパシタC
Fを並列に接続した回路構成のローパスフィルタである。インバータ回路3内の接続点a〜cからは階段状にレベルが変化する波形の三相の電圧信号v
a’,v
b’,v
c’が出力される。電圧信号v
a’,v
b’,v
c’にはPWM信号Spwmi,/SpwmiによるトランジスタTR1〜TR6のスイッチングノイズが含まれるが、フィルタ回路5を通すことによって、そのスイッチングノイズが除去され、正弦波状の波形の電圧信号v
a,v
b,v
cが出力される。フィルタ回路5から出力される三相の電圧信号(相電圧信号)v
a,v
b,v
cは、変圧器6によってその振幅が系統電圧とほぼ同一のレベルに調整されて電力系統9に出力される。
【0042】
インバータ制御部4は、例えば、系統連系インバータ1から電力系統9のU相に出力させる電圧信号v
aの場合、
図2に示すように、電力系統9のU相の電圧ベクトルと同一の電圧ベクトルV
arと電圧ベクトルV
aLとを合成した電圧ベクトルV
aを生成する制御を行。
【0043】
電圧ベクトルV
aLは、系統連系インバータ1から電力系統9に電流I
aLを流したとき(電力を供給したとき)に、系統連系インバータ1と電力系統9との間の負荷L
aに生じる電圧降下分の電圧ベクトルである。負荷L
aは厳密には抵抗分を含んでいるが、その値はリアクタンス分に比べて小さいので、
図2では抵抗分を無視し、負荷L
aをインダクタンス回路として記載している。電圧ベクトルV
arは系統連系インバータ1を電力系統9に連系させるための電圧ベクトルである。負荷L
aはインダクタンスであるから、力率1の運転
をするために電圧ベクトルV
aLの位相は、電圧ベクトルV
arに対してほぼπ/2だけ進めている。
【0044】
インバータ制御部4は、最大電力点追従制御により電力系統9に供給する電流I
aL,I
bL,I
cLを制御することで、系統連系インバータ1から電力系統9のU,V,Wの各相に出力される電圧信号v
a,v
b,v
c(電圧ベクトルV
aLに対応する電圧信号)を制御する。なお、インバータ制御部4は、電圧検出器212から入力される太陽電池211の出力電圧V
dcによって太陽電池211の最大電力点を監視するとともに、変圧器6の出力ラインに設けられた電流検出器7から入力されるU,V,Wの各相の出力電流I
aL,I
bL,I
cLを監視し、電流マイナーループによって各相の出力電流I
aL,I
bL,I
cLが最大電力点追従制御で設定される目標値となるように制御する。
【0045】
また、インバータ制御部4は、変圧器6の出力ライン間に設けられた電圧検出器8から入力される電力系統9のU,V,Wの各相の電圧信号v
u,v
v,v
wを用いて電力系統9の電圧信号の基本波成分の振幅A
mと位相θ(電圧ベクトルV
arの振幅と位相に相当)を算出する。この位相θを算出するために、インバータ制御部4には本発明に係る位相検出装置10(
図3参照)が設けられる。位相検出装置10は、後述するようにデジタル演算処理によって位相θを算出するから、インバータ制御部4にはマイクロコンピュータに実行させる位相算出プログラムとして搭載される。
【0046】
インバータ制御部4は、電流マイナーループで算出される電流I
aLの制御値に基づき電圧ベクトルV
aLの振幅A
Lを算出し、この振幅A
Lと電力系統9の電圧信号の基本波成分の振幅A
m及び位相θとを用いて系統連系インバータ1から出力させるU相の電圧信号v
aの目標値を算出する。また、インバータ制御部4は、同様の方法で、V相,W相の電圧信号v
b,v
cの目標値を算出する。
【0047】
そして、インバータ制御部4は、電圧信号v
aに基づいてPWM信号Spwm1,/Spwm1を生成し、電圧信号v
bに基づいてPWM信号Spwm2,/Spwm2を生成し、電圧信号v
cに基づいてPWM信号Spwm3,/Spwm3を生成する。
【0048】
次に、インバータ制御部4に設けられる位相検出装置について説明する。
図3は、本発明に係る位相検出装置のブロック構成を示す図である。
【0049】
図3に示す位相検出装置10は、電力系統9の三相の電圧信号(相電圧信号)v
u,v
v,v
wを検出した信号に含まれる不平衡成分や高調波成分を除去し、正規化した電圧信号の基本波成分(正弦波信号)とその基本波成分に直交する信号(余弦波信号)を算出する基本波直交成分算出部10Aと、基本波直交成分算出部10Aから出力される正弦波信号(瞬時値)及び余弦波信号(瞬時値)と位相検出装置10から出力される位相とを用いてPLL演算処理により電力系統9の電圧信号の位相(θ)を出力するPLL処理部10Bと、を有している。
【0050】
基本波直交成分算出部10Aは、電圧検出器8から入力される三相の電圧信号v
u,v
v,v
w(所定のサンプリング周期で入力される瞬時値)を互いに直交する2相(α相とβ相)の電圧信号vα,vβに変換する三相/二相変換部11と、三相/二相変換部11から出力される電圧信号vα,vβに含まれる不平衡成分と所定次数の高調波成分を除去する複素係数フィルタを用いた複素係数フィルタ部12と、複素係数フィルタ部12から出力される電圧信号v
r,v
jを正規化する正規化部13と、を含む。なお、複素係数フィルタ部12のゲインを調整することにより正規化部13を省略することができる。
【0051】
三相/二相変換部11は、電圧検出器8から入力される三相の電圧信号v
u,v
v,v
wを下記の(3)式、(4)式の演算を行うことにより互いに直交する電圧信号vα,vβに変換する。
【0053】
図4は、三相二相変換部11の演算回路を示すブロック図である。同図に示すように、三相二相変換部11は、5個の乗算器11a〜11eと2個の加算器11f,11gで構成される。乗算器11a,11b,11dは、それぞれ(3)式の各項を演算する演算器であり、乗算器11c,11eは、それぞれ(4)式の各項を演算する演算器である。また、加算器11fは(3)式の各項を加算する演算器であり、加算器11gは(4)式の各項を加算する演算器である。
【0054】
電圧検出器8で検出される三相の電圧信号v
u,v
v,v
wは、一般に、基本波成分以外に不平衡成分や3次、5次、7次、11次などの奇数次の高調波成分(
図5の周波数成分参照)が含まれる不平衡三相信号である。従って、三相二相変換部11からはこれらの成分についても三相二相変換した電圧信号が出力される。
【0055】
電圧信号v
u,v
v,v
wの基本波成分v
su,v
sv,v
swを、
v
su=A
sm・cos(ω
s・t)
v
sv=A
sm・cos(ω
s・t−2π/3)
v
sw=A
sm・cos(ω
s・t−4π/3)
但し、A
sm:基本波成分の振幅、ω
s:系統電圧の角周波数、ω
s=2π・f
sとすると、基本波成分の電圧ベクトルV
su,V
sv,V
swは、V
s=A
sm・exp(j・ω
s・t)、a=exp(j・2π/3)として、
V
su=V
s ……………………(3A)
V
sv=exp(-j・2π/3)・V
s
=a‐
1・
Vs=a
2・V
s …(3B)
V
sw=exp(-j・4π/3)・V
s
=a
-2・
Vs=a・V
s …(3C)
で表わされる。
【0056】
また、不平衡成分v
su’,v
sv’,v
sw’は、
v
su’=A
sm’・cos(ω
s・t)
v
sv’=A
sm’・cos(ω
s・t−4π/3)
v
sw’=A
sm’・cos(ω
s・t−2π/3)
但し、A
sm’:不平衡成分の振幅、
で表わされ、不平衡成分の電圧ベクトルV
su’,V
sv’,V
sw’は、V
s’=A
sm’・exp(j・ω
s・t)として、
V
su’=V
s’ ………(4A)
V
sv’=exp(-j・4π/3)・V
s’
=a
-2・V
s’=a・V
s’ …(4B)
V
sw’=exp(-j・2π/3)・V
s’
=a
-1・V
s’=a
2・V
s’ …(4C)
で表わされる。
【0057】
基本波成分の電圧ベクトルV
su,V
sv,V
swは、
図6(a)に示すように、U,V,Wの各相の電圧ベクトルV
su,V
sv,V
swが反時計回り(左回り)にU,W,Vの相順で均等に配置され、角周波数ω
s=θ/tで反時計回りに回転するベクトルである。一方、不平衡成分は、U相に対するV相とW相の位相差が基本波成分のU相に対するV相とW相の位相差と逆になっているから、不平衡成分の相順は基本波成分の相順に対して逆になっている。従って、不平衡成分の電圧ベクトルV
su’,V
sv’,V
sw’は、
図6(b)に示すように、U,V,Wの各相の電圧ベクトルV
su’,V
sv’,V
sw’が時計回りにU,W,Vの相順で均等に配置され、角周波数ω
s=θ/tで反時計回りに回転するベクトルとなっている。
【0058】
(3A)式〜(3C)式で表わされる基本波成分の電圧ベクトルV
su,V
sv,V
swを(3)式と(4)式に代入すると、電圧ベクトルV
sα,V
sβは、
【数3】
となる。
【0059】
基本波成分の二相電圧信号v
sα,v
sβは、電圧ベクトルV
sα,V
sβの実軸上への投影値で与えられるから、三相/二相変換部11から出力される基本波成分の二相電圧信号v
sα,v
sβは、
v
sα=√(3/2)・A
sm・cos(ω
s・t) …(7)
v
sβ=√(3/2)・A
sm・sin(ω
s・t) …(8)
となる。
【0060】
同様に、(4A)式〜(4C)式を(5)式と(6)式に代入すると、電圧ベクトルV
sα’,V
sβ’は、V
sα’=√(3/2)・V
s’、V
sβ’=j・√(3/2)・V
s’となるから、三相/二相変換部11から出力される不平衡成分の相電圧信号v
sα’,v
sβ’は、
v
sα’=√(3/2)・A
sm’・cos(ω
s・t) …(9)
v
sβ’=−√(3/2)・A
sm’・sin(ω
s・t) …(10)
となる。また、cos(ω
s・t)=cos(−ω
s・t)、sin(ω
s・t)=−sin(−ω
s・t)であるから、これらを(9)式、(10)式に代入すると、
v
sα’=√(3/2)・A
sm’・cos(−ω
s・t) …(9’)
v
sβ’=√(3/2)・A
sm’・sin(−ω
s・t) …(10’)
となる。
【0061】
(9’)式及び(10’)式と(7)式及び(8)式を比較すると、基本波成分の角周波数が「ω
s」であるのに対し、不平衡成分の角周波数が「−ω
s」である点が相違する。すなわち、三相/二相変換部11から出力される基本波成分の二相電圧信号v
sα,v
sβの周波数を「正の周波数」とすると、不平衡成分の二相電圧信号v
sα’,v
sβ’は、三相/二相変換部11から「負の周波数」で出力されるということができる。
【0062】
図5において、基本波成分を正の周波数領域の周波数「f
s」の位置に表示し、不平衡成分の周波数を「−f
s」として不平衡成分を負の周波数領域の周波数「−f
s」の位置に表示しているのは上記の周波数の関係を示している。なお、
図5には、
位相検出に影響のある5次、7次、11次の高調波成分のみを描いている。3の整数倍の高調波成分は線間電圧には表れず、相電圧でもΔ結線のトランスで除去され、11次よりも大きい奇数次の高調波成分はレベルが小さく、無視し得るからである。
【0063】
不平衡成分が負の周波数になるのは、不平衡成分の相順が基本波成分の相順に対して逆になるからであるから、基本波成分の周波数f
sをn倍(n:2以上の整数)したn次高調波成分についても同様で、n次高調波成分の相順が基本波成分と同一になる場合は、その周波数f
ns(添え字nは次数)は正の周波数となり、n次高調波成分の相順が基本波成分と逆になる場合は、その周波数f
nsは負の周波数となる。
【0064】
5次、7次、11次の高調波成分は、U,V,Wの各相の電圧ベクトルをV
nu,V
nv,V
nw(添え字のnは次数)と表記し、電圧ベクトルV
nをV
n=A
nm・exp(j・n・ω
s・t)(A
nm:n次高調波成分の振幅)とすると、
V
nu=V
n
V
nv=V
n・exp(-j・2nπ/3)
V
nw=V
n・exp(-j・4nπ/3)
但し、n=5,7,11
で表わされる。exp(−j・2nπ/3)={exp(−j・2π/3)}
n=a
2n、exp(−j・4nπ/3)={exp(−j・4π/3)}
n=a
nであるから、電圧ベクトルV
nu,V
nv,V
nwは、
V
nu=V
n
V
nv=a
2n・V
n
V
nw=a
n・V
n
と表わされる。
【0065】
5次高調波成分の電圧ベクトルV
5u,V
5V,V
5wと11次高調波成分の電圧ベクトルV
11u,V
11V,V
11wは、
(V
5u,V
5V,V
5w)=(V
5,a
10・V
5,a
5・V
5)
=(V
5,a・V
5,a
2・V
5)
(V
11u,V
11V,V
11w)=(V
11,a
22・V
11,a
11・V
11)
=(V
11,a・V
11,a
2・V
11)
となり、U,V,Wの相順は基本波成分に対して逆
になるので、5次高調波成分及び11次高調波成分の周波数は負の周波数となる。
【0066】
一方、7次高調波成分の電圧ベクトルV
7u,V
7V,V
7wは、
(V
7u,V
7V,V
7w)=(V
7,a
14・V
7,a
7・V
7)
=(V
7,a
2・V
7,a・V
7)
となり、U,V,Wの相順は基本波成分に対して同
じになるので、7次高調波成分の周波数は正の周波数となる。
【0067】
従って、
図5では、5次高調波成分と11次高調波成分は、負の周波数領域の周波数「−5f
s」と「−11f
s」の位置にそれぞれ表示され、7次高調波成分は正の周波数領域の周波数「7f
s」の位置に表示されている。
【0068】
また、5次高調波成分を三相二相変換した電圧信号(v
5α,v
5β)は、不平衡成分を三相二相変換した電圧信号(v
sα’,v
sβ’)の周波数を5倍したものとなり、11次高調波成分を三相二相変換した電圧信号(v
11α,v
11β)は、同電圧信号(v
sα’,v
sβ’)の周波数を11倍したものとなり、7次高調波成分を三相二相変換した電圧信号(v
7α,v
7β)は、基本波成分を三相二相変換した電圧信号(v
sα,v
sβ)の周波数を7倍したものとなるから、
v
5α=√(3/2)・A
5m・cos(−5ω
s・t) …(11)
v
5β=√(3/2)・A
5m・sin(−5ω
s・t) …(12)
v
7α=√(3/2)・A
7m・cos(7ω
s・t) …(13)
v
7β=√(3/2)・A
7m・sin(7ω
s・t) …(14)
v
11α=√(3/2)・A
11m・cos(−11ω
s・t) …(15)
v
11β=√(3/2)・A
11m・sin(−11ω
s・t) …(16)
で表わされる。
【0069】
従って、三相/二相変換部11から複素係数フィルタ部12には、(7)式〜(16)式で表わされる基本波成分、不平衡成分及び5次、7次、11次の高調波成分の二相電圧信号(v
sα,v
sβ),(v
sα’,v
sβ’),(v
nα,v
nβ)(n=5,7,11)を含む二相電圧信号(vα,vβ)が出力される。
【0070】
複素係数フィルタ部12は、z変換表現による伝達関数H(z)が下記の(17)式で表される1次のIIRフィルタからなる複素係数バンドパスフィルタ(BPF)で構成される。(17)式において、複素係数a
1におけるf
d[Hz]は、通過帯域の中心周波数f
0をサンプリングレートで正規化した正規化周波数、Ω
d[rad/s]は正規化角周波数である。例えば、中心周波数f
0を系統周波数f
sに設定し、サンプリング周波数を「f
sr」とすると、f
dはf
s/f
sr、Ω
dは2π・f
d=2π・(f
s/f
sr)となる。なお、正規化した角周波数Ω
dは、−π<Ω
d<πである。また、rは、通過帯域の帯域幅を決めるパラメータ(0<r<1)である。
【0072】
図7は、上記(17)式の演算処理を行う処理回路を示すブロック図である。同図に示すように、複素係数フィルタ部12は、(17)式の分母の演算処理がフィードバック回路で構成され、そのフィードバック回路の出力に分子の係数b
0を乗算する回路によって構成される。
【0073】
図7に示すブロック図において、u[k](k:離散時間を表すインデックス番号)は入力データ、x[k]は複素係数フィルタ部12の状態データ、y[k]は複素係数フィルタ部12の出力データである。入力データu[k]、状態データx[k]及び出力データy[k]の間には、
x[k]=r・exp(j・Ω
d)・x[k-1]+u[k] …(18)
y[k]=(1−r)・x[k] …(19)
が成立する。
【0074】
複素係数フィルタ部12は複素係数フィルタで構成されるので、入力データu[k]が複素データか実データ(複素データの虚数部が「0」のデータ)かに関わらず、状態データx[k]及び出力データy[k]が複素信号のデータとなる。従って、入力データu[k]、状態データx[k]及び出力データy[k]をそれぞれu[k]=u
r[k]+j
・u
j[k]、x[k]=x
r[k]+j・x
j[k]、y[k]=y
r[k]+j・y
j[k]、複素係数a
1をa
1=r・exp(j・Ω
d)=r・cos(Ω
d)+j・{r・sin(Ω
d)}として(18)式と(19)式に代入し、実数部と虚数部の関係式に分けると、
x
r[k]=r・cos(Ω
d)・x
r[k-1]−r・sin(Ω
d)・x
j[k-1]+u
r[k] …(20)
x
j[k]=r・cos(Ω
d)・x
j[k-1]+r・sin(Ω
d)・x
r[k-1]+u
j[k] …(21)
y
r[k]=(1−r)・x
r[k] …(22)
y
j[k]=(1−r)・x
j[k] …(23)
となる。
【0075】
バンドパスフィルタを実係数の2次IIRフィルタで構成した場合、その2次IIRフィルタの伝達関数H(z)(z=exp(j・ω)
)は、
H(z)=(1-r
2+2(r-1)・r・cos(Ω
d)・z
-1)/(1-2r・cos(Ω
d)・z
-1+ r
2・z
-2)
で表わされる。この伝達関数H(z)の振幅特性M(ω)を求めると、(1-2r・cos(Ω
d±ω)+r
2)=0を満たすωで極が表れるから、2次IIRフィルタはその極の周波数を通過させる特性を有する。r≒1とすると、cos(Ω
d±ω)≒1より、2次IIRフィルタを通過させる正規化周波数f
dはf
d=±Ω
d/2πとなり、正規化角周波数Ω
dを基本波成分の角周波数に設定した実係数の2次IIRフィルタでは、不平衡成分も通過させることになる。
【0076】
実係数の2次IIRフィルタに対し、(17)式に示す伝達関数H(z)の振幅特性M(ω)求めると、M(ω)=(1−r)/√{1−2r・cos(Ω
d−ω)+r
2}となり、(1−2r・cos(Ω
d−ω)+r
2)=0を満たすωだけに極が表れるから、正規化角周波数Ω
dを基本波成分の角周波数に設定した複素係数の1次IIRフィルタでは、基本波成分だけを通過させ、不平衡成分や高調波成分を通過させることはない。従って、複素係数フィルタ部12は、
図5に示す周波数特性を有することになるから、中心周波数f
0を系統周波数f
sに設定することにより、複素係数フィルタ部12によって電圧信号vα,vβに含まれる不平衡成分と高調波成分((9)式〜(16)式に示す成分)を好適に除去することができる。
【0077】
図8は、(20)式〜(23)式に基づき複素係数フィルタ部12の複素演算処理を行う回路構成を示す図である。同図において、係数a
rと係数a
jはそれぞれ複素係数a
1=r・e
jΩ
dの実数部と虚数部であり、a
r=r・cos(Ω
d)、a
j=r・sin(Ω
d)である。
【0078】
同図に示すように、複素係数フィルタ部12は、6個の乗算器12a〜12fと、2個の加算器12g,12hと、2個の遅延回路12i,12jで構成される。遅延回路12iは、状態データの実数部x
r[k-1]を生成する回路であり、遅延回路12jは、状態データの虚数部x
j[k-1]を生成する回路である。乗算器12a,12bはそれぞれ(20)式の第1項と第2項(負の符号を含む)を演算する演算器であり、加算器12gは(20)式の第1項と第2項と第3項を加算する演算器である。従って、加算器12gから(20)式で示す状態データの実数部x
r[k]が出力される。
【0079】
一方、乗算器12d,12cはそれぞれ(21)式の第1項と第2項を演算する演算器であり、加算器12hは(21)式の第1項と第2項と第3項を加算する演算器である。従って、加算器12hから(21)式で示す状態データの虚数部x
j[k]が出力される。また、乗算器12e,12fはそれぞれ(22)式と(23)式を演算する演算器である。
【0080】
本実施形態では、三相二相変換部11を設け、三相の電圧信号v
u,v
v,v
wを互いに直交する電圧信号vα,vβに変換しているが、電圧信号vα,vβは、それぞれ複素データu
r+ju
jの実数部と虚数部に対応させることができるので、電圧信号vαのサンプリングデータを入力データの実数部u
r[k]として加算器12gに入力し、電圧信号vβのサンプリングデータを入力データの虚数部u
j[k]として加算器12hに入力している。
【0081】
電圧信号vαのサンプリングデータが複素係数フィルタ部12に入力される毎に、遅延回路12i、乗算器12a,12b,12e及び加算器12gで(20)式及び(22)式の演算処理が繰り返され、これにより、乗算器12eから(7)式で示される基本波成分の三相二相変換信号v
sαのみの出力データy
r[k]が出力される。また、電圧信号vβのサンプリングデータが複素係数フィルタ部12に入力される毎に、遅延回路12j、乗算器12c,12d,12f及び加算器12hで(21)式及び(23)式の演算処理が繰り返され、これにより、乗算器12fから(8)式で示される基本波成分の三相二相変換信号v
Sβのみの出力データy
j[k]が出力される。
【0082】
なお、
図3では、第1複素係数フィルタ部12から出力データy
r[k],y
j[k]によって出力される電圧信号
を電圧信号vα
,vβと区別するため、それぞれ「v
r」,「v
j」と表記している。
【0083】
なお、複素係数フィルタ部12から出力される、(7),(8)式で表わされる電圧信号v
r,v
jは、電力系統9のU相の電圧ベクトルV
uの回転基準を実軸R方向とし、U相の電圧信号v
uの位相角ψを「0」とした場合であるが、電力系統9のU相の電圧信号v
uの位相がずれ、位相角ψ≠0の場合は、複素係数フィルタ部12から出力される電圧信号v
r,v
jは、v
r=A
sm・cos(ω
s・t+ψ)、v
j=A
sm・sin(ω
s・t+ψ)となる。
【0084】
正規化部13は、複素係数フィルタ部12から出力される電圧信号v
r,v
jのレベルを「1」に正規化する演算処理を行う。複素係数フィルタ部12から出力される電圧信号v
r,v
jは振幅が同一の正弦波信号と余弦波信号で、√(v
r2+v
j2)を演算することにより振幅が求められるから、正規化部13では、出力データy
r[k],y
j[k]に対してそれぞれy
r[k]/√(y
r[k]
2+y
j[k]
2)とy
j[k]/√(y
r[k]
2+y
j[k]
2)の演算処理を行って電圧信号v
r,v
jの正規化処理が行われる。従って、正規化部13からは、v
r’=cos(θ)とv
j’=sin(θ)(θ=ω・t)で表わされる信号のデータが出力される。
【0085】
PLL処理部10Bは、基本波直交成分算出部10Aから出力される正規化された電圧信号
vr’,
vj’と、当該PLL処理部10Bから出力される位相θ’(以下、「出力位相θ'」という。)とを用いて電圧信号v
r,v
jの位相θ(以下、「入力位相θ」という。)と出力位相θ’の位相差Δθ(=θ−θ’)を算出する位相差演算部14と、位相差Δθに基づいて出力位相θ’を更新する位相更新部15とを含む。
【0086】
位相差演算部14は、sin(θ)・cos(θ’)−cos(θ)・sin(θ’)の三角関数の乗算式で表わされる演算を行うものである。位相差演算部14は、
図9に示すように、出力位相θ’に対し正弦値−sin(θ’)を演算する正弦値演算器14aと、出力位相θ’に対して余弦値cos(θ’)を演算する余弦値演算器14bと、正弦値−sin(θ’)と基本波直交成分算出部10Aから出力される正規化された電圧信号
vr’(余弦値cos(θ))とを乗算する乗算器14cと、余弦値cos(θ’)と基本波直交成分算出部10Aから出力される正規化された電圧信号
vj’(正弦値sin(θ))とを乗算する乗算器14dと、乗算器14cの乗算結果と乗算器14dの乗算結果を加算する加算器14eで構成されている。
【0087】
sin(θ)・cos(θ’)−cos(θ)・sin(θ’)=sin(θ−θ’)で、|θ−θ’|=|Δθ|が微小であれば、sin(θ−θ’)≒Δθであるから、位相差演算部14は実質的に位相差Δθを演算している。なお、正規化された互いに直交する電圧信号
vr’,
vj’に対してdq変換処理を行い、d軸上の電圧信号v
dとq軸上の電圧信号v
qを算出する場合、そのdq変換処理は、
【数5】
より、v
q=−cos(θ)・sin(θ’)+sin(θ)・cos(θ’)=sin(θ−θ’)であるから、位相差演算部14における演算処理は、基本波直交成分算出部10Aから出力される正規化された互いに直交する相電圧信号
vr’,
vj’に対してdq変換処理を行い、q軸上の電圧信号v
qを算出する処理と言うこともできる。
【0088】
位相更新部15は、位相差演算部14から出力される位相差Δθをループフィルタ15aに通した後、その出力(位相差Δθの微分値で角周波数Δωに相当する値)に加算器15bで所定の基準値ω
0(本実施形態では系統周波数f
sの角周波数ω
s=2πf
sに設定)を加算し、その加算値ω’=ω
0+Δωに積分器15cで積分処理を行って位相θ’を算出する。
【0089】
例えば、電力系統9の位相θ=2πf
s・tが安定していれば、位相更新部15から出力される出力位相θ’は入力位相θに収束し、位相差演算部14から出力される位相差Δθは「0」になるから、位相更新部15から出力される出力位相θ’は、θ’=θ=2πf
s・tに保持されている。この状態で、電力系統9の位相θが瞬間的にψだけ増加すると、位相差演算部14からは(θ+ψ)−θ’=ψの位相差Δθが出力されるから、位相更新部15ではω’が位相差Δθに基づくΔωだけ増加し、位相更新部15における電圧ベクトルV’(
図23に示した電圧ベクトルV’参照)の
角速度が増加して電力系統9の電圧ベクトルV(
図23に示した電圧ベクトルV参照)の位相θの変動に追従するように変化する。従って、PLL処理部
10Bで出力位相θ’の更新処理が繰り返されることにより位相差Δθが減少し、Δθ=0になると、すなわち、出力位相θ’がθ’=θ=2πf
s・t+ψになると、位相更新部15から出力される出力位相θ’はその値に保持されることになる。
【0090】
図10は、位相差Δθを求める他の方法の位相差演算部14’を示すブロック図である。
図9は、三角関数の乗算式を用いて位相差Δθの正弦値sin(Δθ)を演算する方法であったが、
図10に示す方法は、
図11に示すように、出力位相θ’の正弦波信号sin(θ’)を生成し、この正弦波信号sin(θ’)と基本波直交成分算出部10Aから出力される正規化された電圧信号v
j’=sin(θ)の位相差Δθを直接カウントする方法である。具体的には、電圧信号v
j’=sin(θ)が負側から正側にゼロレベルを交差するタイミングt1を検出するとともに、正弦波信号sin(θ’)が負側から正側にゼロレベルを交差するタイミングt1’を検出し、t1とt1’の間の時間ΔTを求め、その時間ΔTから位相差Δθを求める方法である。なお、sin(θ)の周期をTとすると、ΔT/T=Δθ/2πであるから、位相差ΔθはΔθ=2π・ΔT/Tを演算することにより求められる。
【0091】
図10に示す位相差演算部14’は、基本波直交成分算出部10Aから出力される正規化された電圧信号sin(θ)のレベルをゼロレベルと比較する比較器14fと、比較器14fの出力信号を用いて電圧信号sin(θ)のレベルがゼロレベルを交差するタイミングを検出する第1のゼロクロス検出器14gと、出力位相θ’に対して正弦値sin(θ’)を演算する正弦値演算器14hと、正弦値演算器14hから出力される正弦値sin(θ’)のレベルをゼロレベルと比較する比較器14iと、比較器14iの出力信号を用いて正弦値sin(θ’)のレベルがゼロレベルを交差するタイミングを検出する第2のゼロクロス検出器14jと、電圧信号sin(θ)の周波数よりも高周波のクロックCLKを発生するクロック発生器14kと、第1のゼロクロス検出器14gと第2のゼロクロス検出器14jから出力される検出信号を用いてクロックCLKのパルス数をカウントするカウンタ14lと、カウンタ14lでカウントされるカウント数Nから位相差Δθを算出する位相差演算器14mで構成されている。
【0092】
比較器14f,14iは、例えば、電圧信号sin(θ),sin(θ’)のレベルがゼロレベルより小さいと、ローレベルを出力し、ゼロレベル以上になると、ハイレベルを出力する。従って、
図11に示すように、比較器14fからは電圧信号sin(θ)のレベルが負レベルから正レベルに交差するタイミングt1でハイレベルになり、正レベルから負レベルに交差するタイミングt2でローレベルになるゼロクロス検出信号S
z1が出力され、比較器14iからは電圧信号sin(θ’)のレベルが負レベルから正レベルに交差するタイミングt1’でハイレベルになり、正レベルから負レベルに交差するタイミングt2’でローレベルになるゼロクロス検出信号S
z2が出力される。
【0093】
カウンタ14lは、正弦波信号sin(θ’)が基本波直交成分算出部10Aから出力され
る電圧信号v
j’=sin(θ)より遅れている場合は、
図11に示すように、ゼロクロス検出信号S
z1の立ち上がり信号でカウント値をゼロにリセットしてクロックCLKのパルスのカウントを開始し、ゼロクロス検出信号S
z2の立ち上がり信号でクロックCLKのパルスのカウントを停止し、そのカウント数Nを位相差演算器14mに出力する。一方、正弦波信号sin(θ’)が電圧信号v
j’=sin(θ)より進んでいる場合は、ゼロクロス検出信号S
z2の立ち上がり信号でカウント値をゼロにリセットしてクロックCLKのパルスのカウントを開始し、ゼロクロス検出信号S
z1の立ち上がり信号でクロックCLKのパルスのカウントを停止し、そのカウント数Nを位相差演算器14mに出力する。すなわち、カウンタ14lは、|t1−t1’|の期間を示すカウント数Nを算出する。
【0094】
位相差演算器14mは、カウント数Nと係数K=2π/N
T(N
T:周期TにおけるクロックCLKのパルスカウント数)の乗算を行い、位相差Δθを算出する。なお、クロックCLKの周期をτとすると、周期T=N
T・τ、ΔT=N・τである。上記のようにΔθ=2π・ΔT/Tであるから、Δθ=2π・N・τ/N
T・τ=2π・(N/N
T)となる。
【0095】
図12は、本発明に係る位相検出装置10(複素係数フィルタ部12を複素係数バンドパスフィルタとし、位相差
演算部14を三角関数の乗算式sin(θ−θ’)で位相差を算出する方式としたもの)から出力される出力位相θ’を有する電圧ベクトルV’の周波数f’の応答特性をシミュレーションした結果である。また、
図13は、シミュレーション開始から0.3秒後の電圧ベクトルV’の周波数f’の変動状態を拡大した図である。なお、位相検出装置10の位相差
演算部14は、
図9に示す構成のものである。また、
図12、
図13では、縦軸に電圧ベクトルV’の周波数f’=ω’/(2π)[Hz]を取っている。
【0096】
図12は、電力系統の電圧信号の位相θ(周波数f=系統周波数f
s=60Hz。位相角ψ=0)が安定している状態でシミュレーションを開始し、シミュレーション開始から0.2秒後に電力系統9の位相θを瞬時的に90度進ませた場合(θ=2πf
s・t+π/2とした場合)の位相検出装置10の応答特性を示している。電圧検出器8の検出電圧信号v
u,v
v,v
wに含まれる不平衡成分の含有条件を5%とし、5次、7次、11次の高調波成分の含有条件をそれぞれ5%としている。また、複素係数フィルタ部12の通過帯域の中心周波数f
0は系統周波数f
s=60Hzに設定している。
【0097】
図12に示すように、シミュレーション開始から0.2秒後に電力系統の位相θを瞬時的に「2πf
s・t」から「2πf
s・t+π/2」に変化させると、位相検出装置10は、位相差
演算部14から出力される位相差Δθが「0」から「π/2」に急変するので、その位相差Δθの急変に基づいて出力位相θ’を増加させる。位相急変時(時刻0.2秒)は、位相差Δθが大きいので、位相検出装置10は、PLL処理部
10Bにおける電圧ベクトルV’の周波数f’を急上昇させて電圧ベクトルV’を電力系統9の電圧ベクトルVに合わせるようにPLL動作をするが、その後は上昇させた周波数f’を減少させて電圧ベクトルV’を電力系統9の電圧ベクトルVに一致させるようにPLL動作をする。
【0098】
位相急変時(時刻0.2秒)から0.05秒が経過するまでの間にPLL処理部
10Bにおける電圧ベクトルV’の周波数f’が凡そ75Hzをピークにパルス状に変化しているのは、その様子を示している。また、位相急変時(時刻0.2秒)から0.1秒経過した時(時刻0.3秒)には、
図13に示すように、位相検出装置10におけるPLL動作は、周波数f’のリップルが±0.012Hz程度(系統周波数f
s=60Hzに対して変動幅0.04%程度)となるので、位相検出装置10の出力位相θ’は、位相急変時(時刻0.2秒)から0.1秒以内に電力系統の変化後の位相θに整定するということができる。
【0099】
図12,
図13のシミュレーション結果より、本発明に係る位相検出装置10によれば、電力系統9の位相θが急峻に変動した場合でも十分にその変動に追従し、高い応答精度で電力系統9の位相θを検出することができる効果を奏する。
【0100】
上記実施形態では、複素係数フィルタ部12をバンドパスフィルタで構成したが、抑制したい不平衡成分や高調波成分が分かっているのであれば、それらの成分を抑制する複素係数ノッチフィルタ(BEF)で構成してもよい。例えば、抑制したい周波数が不平衡成分(−f
s)と5次、7次、11次の高調波成分(−5f
s,+7f
s,−11f
s)の場合、それらの周波数毎にz変換表現による伝達関数H(z)が下記の(24)式で表される複素係数ノッチフィルタを設け、それらを多段に接続することによって
図14に示す周波数特性を有するノッチフィルタを構成するとよい。
【0102】
なお、Ω
dは、Ω
d=2π・(f/f
sr)であり、f=−f
sに設定すると、不平衡成分(−f
s)に対する複素係数ノッチフィルタとなる。また、f=−5f
s、f=+7f
s、f=−11f
sに設定すると、それぞれ5次、7次、11次の高調波成分に対する複素係数ノッチフィルタとなる。従って、
図17に示すように、−f
s、−5f
s、+7f
s、−11f
sを阻止周波数とする複素係数ノッチフィルタ121,122,123,124を縦続接続することにより、
図14に示す周波数特性を有するノッチフィルタが構成される。
【0103】
また、上記(24)式の演算処理を行う処理回路のブロック図は、
図15に示す構成となり、複素係数ノッチフィルタ(BEF)を用いた複素係数フィルタ部12の複素演算処理を行う回路は、
図16に示す構成となる。
図15は、
図7に示すブロック図に対して、入力データu[k]から出力データy[k]を減算し、その減算値を偏差出力データe[k]として出力する回路を追加したものである。また、
図16は、
図8に示すブロック図に対して、実数部の乗算器12eの後段に加算器12kを追加し、当該加算器12kで入力データの実数部u
r[k]から出力データy[k]の実数部y
r[k]を減算して偏差出力データの実数部e
r[k]を出力し、虚数部の乗算器12fの後段に加算器12lを追加し、当該加算器12lで入力データの虚数部u
j[k]から出力データy[k]の虚数部y
j[k]を減算して偏差出力データの虚数部e
j[k]を出力する構成としたものである。
【0104】
図16に示す回路は、
図8に示す回路に対して、上述した加算器12k,12lでの減算処理が追加された点が異なるだけであるから、
図16に示す回路の演算処理の詳細説明は省略する。
【0105】
図18は、複素係数フィルタ部を
図14に示す周波数特性を有する複素係数ノッチフィルタとし、位相差
演算部
14を三角関数の乗算式sin(θ−θ’)で位相差を算出する方式とした位相検出装置10の位相検出の応答特性(位相検出装置から出力される位相θ’を有する電圧ベクトルV’の周波数の変動状態)をシミュレーションした結果である。また、
図19は、シミュレーション開始から0.3秒後に位相検出装置10から出力される電圧ベクトルV’の周波数f’の変動状態を拡大した図である。シミュレーションの条件やグラフの表示態様は、
図12,
図13の場合と同一である。
【0106】
複素係数ノッチフィルタを用いた場合は、
図18に示すように、位相急変時(時刻0.2秒)の直後からPLL処理部
10Bにおける電圧ベクトルV’の周波数f’が急上昇し、凡そ110Hzをピークにパルス状に変化した後、位相急変時から凡そ0.02秒経過後(時刻0.22秒)には位相検出装置10の出力位相θ’が電力系統の変化後の位相θに整定することが確認できた。また、
図19に示すように、位相急変時から0.1秒経過後(時刻0.3秒)における周波数f’のリップルはほぼゼロであることも確認できた。従って、複素係数ノッチフィルタを用いた場合は、応答速度及び検出精度のいずれも複素係数バンドパスフィルタを用いた場合よりも高い性能であることが確認できた。
【0107】
図20は、複素係数フィルタ部を複素係数ノッチパスフィルタとし、位相差
演算部をsin(θ)とsin(θ')の位相差Δθを直接カウントする方式(
図10に示す位相差演算部14’を用いたもの)とした位相検出装置10の位相検出の応答特性(位相検出装置から出力される位相θ’を有する電圧ベクトルV’の周波数の変動状態)をシミュレーションした結果である。また、
図21は、シミュレーション開始から4.9秒後に位相検出装置10から出力される電圧ベクトルV’の周波数f’の変動状態を拡大した図である。シミュレーションの条件やグラフの表示態様は、
図12,
図13の場合と同一である。
【0108】
図10に示す位相差演算部14’を用いた場合は、
図20に示すように、位相急変時(時刻0.2秒)の直後にPLL処理部103における電圧ベクトルV’の周波数f’が凡そ60.48Hzに上昇するが、その後は徐々に減少して位相急変時から凡そ2.8秒経過後(時刻3.0秒)に位相検出装置10の出力位相θ’が電力系統の変化後の位相θに整定する。また、
図21に示すように、位相急変時から4.7秒経過後(時刻4.9秒)における周波数f’のリップルはほぼゼロになる。
【0109】
図10に示す位相差演算部14’を用いた場合は、
図9に示す相差演算部14を用いた場合よりも出力位相θ’が位相急変時から変化後の位相θに整定するまでに時間を要しているが、これはsin(θ)の瞬時値とsin(θ')の瞬時値を比較して位相差Δθを算出するからであると考えられる。位相差演算部14’を用いることによる速応性の低下は、ループフィルタの値を調整することにより改善することができる。また、整定時のリップルがほぼゼロになっているのは、複素係数ノッチフィルタを用いていることによるものと考えられる。
【0110】
以上より、本実施形態に係る位相検出装置10を用いると、PLL法を用いて位相を検出するPLL処理部10Bの前段で複素係数フィルタを用いて不平衡成分や所定次数の高調波成分を除去する構成であるので、不平衡成分や高調波成分の影響を受けない位相検出を高速で行うことができる。また、電圧検出器8などで混入するノイズを除去する複素係数バンドパスフィルタを組み合わせれば、不平衡成分や高調波成分以外の位相検出に悪影響を与えるノイズも除去できるので、このノイズを除去するためのフィルタを新たに設ける必要がない。更に、複素係数バンドパスフィルタや複素係数ノッチフィルタを用いているので、複素係数フィルタ部12の入出力間で位相差が生じないというメリットもある。
【0111】
なお、複素係数フィルタ部12のフィルタには複素係数バンドパスフィルタ又は複素係数ノッチフィルタを用いればよいが、好ましくは複素係数バンドパスフィルタよりも複素係数ノッチフィルタを用いたほうが高速かつ高精度の位相検出特性を得ることができる。また、複素係数ノッチフィルタと複素係数バンドパスフィルタとを組み合わせれば、両者の特性の相乗効果を期待することができ、より高速かつ高精度の位相検出特性を得ることができる。
【0112】
また、周知のように、複素係数ノッチフィルタ及び複素係数バンドパスフィルタを多段構成とすれば、急峻なフィルタ特性とすることができるとともに、不平衡成分や高調波成分の除去特性や応答性を容易に調整できるので、実装する場合は適当な段数の多段構成にするとよい。例えば、系統連系インバータ1を連系させる電力系統9が2次の高調波成分を多く含む系統の場合は、2次高調波を除去する複素係数ノッチフィルタと複素係数バンドパスフィルタを組み合わせればよく、不平衡成分や高調波成分をあまり多く含まない系統であれば、応答速度の速いフィルタ構成にすればよい。
【0113】
上記実施形態では、三相の系統連系インバータ1について説明したが、本発明に係る位相検出装置は、単相の系統連系インバータにも適用することができる。
図22は、単相の系統連系インバータに適用される位相検出装置10’のブロック図であるが、
図3の位相検出装置10に対して三相/二相変換部11が設けられていない点が異なるだけである。単相の場合は、電圧信号vが1つしかないので、その電圧信号vのサンプリングデータが入力データの実数部u
r[k]として複素係数フィルタ部12に入力され、入力データの虚数部u
j[k]には「0」が入力される。なお、
図3の位相検出装置10において、三相/二相変換部11を除去し、U,V,Wのいずれかの相の電圧信号vのサンプリングデータを入力データの実数部u
r[k]として複素係数フィルタ部12に入力し、入力データの虚数部u
j[k]には「0」を入力するようにしてもよい。
【0114】
複素係数フィルタを用いた複素係数フィルタ部12では、単相の電圧信号が入力された場合でも三相の場合と同様に互いに直交する電圧信号v
r,v
j(正弦波と余弦波の信号)が出力されるので、複素係数フィルタ部12,正規化部13及びPLL処理部10Bは、
図3に示す三相用の位相検出装置10と同様の構成で実現することができる。また、単相の場合は、一般に不平衡成分の対策が困難であるが、本発明を適用することより単相の場合でも容易に不平衡成分と高調波成分を除去できるので、不平衡成分の対策を効果的に行うことができ利点がある。
【0115】
従って、本発明は、簡単な構成で種々の系統連系インバータの位相検出装置に広く適用することができる。