(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5711976
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】合成樹脂製キャップ及びキャップ付容器
(51)【国際特許分類】
B65D 41/04 20060101AFI20150416BHJP
B65D 47/12 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
B65D41/04 B
B65D47/12
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-2270(P2011-2270)
(22)【出願日】2011年1月7日
(65)【公開番号】特開2012-144262(P2012-144262A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100061284
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 侑
(74)【代理人】
【識別番号】100088052
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】林田 光治
(72)【発明者】
【氏名】宮田 由弘
【審査官】
戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第2533413(JP,U)
【文献】
特開平09−150857(JP,A)
【文献】
特開2000−255615(JP,A)
【文献】
特開平11−130118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/04
B65D 47/12
B65D 51/18
B65D 47/06
B65D 41/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天壁と、天壁の外縁より延在し、その内面に螺条が形成された側壁と、該天壁の内面に立設されると共にシール部が設けられたインナーリングと、を有する上蓋と、
該容器口部先端の外面に形成された環状突部に係合する係合突部と、該容器口部先端の内面に形成された傾斜面に当接する押さえ部とからなる係着部と、該係着部の上部に設けられた液注ぎ部と、を有する中栓を備えており、該中栓を収容する該上蓋が、該容器口部に螺合によって係止されるキャップであって、
該中栓は、該容器口部の内周面よりも容器内方側へ突出しないよう形成され、その該押さえ部の内表面は、該上蓋が閉蓋された際に、該インナーリングの外周面と当接しないようになっており、
該インナーリングは、該上蓋が閉蓋された際に、該シール部が該容器口部の内周面に当接可能に形成されており、
該中栓を介することなく該インナーリングで該容器口部を直接シール可能となっていることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
前記シール部は、軟質樹脂から成ることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製キャップ
【請求項3】
前記シール部は、インサート成形、または、二色成形によって、前記インナーリングと一体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項4】
前記上蓋には、前記中栓の前記液注ぎ部の背面側に形成された凹所と係合する突起部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項5】
環状突部が外面に形成されると共に傾斜面が内面に形成された容器口部先端を有する容器を備えており、請求項1、2、3又は4に記載の合成樹脂製キャップが装着されたことを特徴とするキャップ付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製キャップ及びキャップ付容器に関し、より詳細には、容器口部に螺合される上蓋を有する合成樹脂製キャップ及びキャップ付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、調味料用のキャップにおいて、異なる粘性を有する様々な内容液の注出を容易とするために、該液の流量調整可能なキャップが求められている。そのため、注出筒を備えた中栓を有する合成樹脂製のキャップが多く用いられている。
【0003】
近年、環境問題等の懸念から、構造をより簡素なものとし、該樹脂の使用量を低減することもまた求められている。例えば、特許文献1及び2には、容器口部の内方に嵌合され、上蓋と別途に設けられる円錐台様の中栓を備え、上蓋が該容器口部に螺合により直接係止されるような構造を有するキャップが開示されている。又、この様なキャップは、通常、容器を密封するために、前記中栓の内周面に当接してシールするインナーリングが上蓋天壁の内面に立設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2533413号公報
【特許文献2】特許第4294411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなキャップでは、中栓の筒状部分を容器口部の内方へ嵌入して設けられることとなるため、該中栓が内容液の流路上の障害となり、該内容液の流量調整が困難となることがあった。
【0006】
又、このようなキャップでは、容器口部の内面に中栓を介してインナーリングが圧接してシールされる形となるため、上蓋を開蓋する際に、中栓がインナーリングとの間に生じる摩擦によって空転し、上蓋の開閉を繰り返すうちに容器口部と中栓との嵌合が緩くなる等してしまい、容器の密閉性が損なわれる可能性があるという問題を生じる。
【0007】
そこで、本発明は、容器口部に嵌合され、上蓋と別途に設けられる中栓を備え、上蓋が該容器口部に螺合により直接係止されるような構造を有するキャップであって、該中栓によって内容液の流量調整が容易に行え、且つ、該中栓が上蓋の開閉操作によって空転することがなく、十分な密閉性を確保することができるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、天壁と、天壁の外縁より延在し、その内面に螺条が形成された側壁と、該天壁の内面に立設さ
れると共にシール部が設けられたインナーリングと、を有する上蓋と、該容器口部先端の外面に形成された環状突部に係合する係合突部と、該容器口部先端の内面に形成された傾斜面に当接する押さえ部とからなる係着部と、該係着部の上部に設けられた液注ぎ部と、を有する中栓を備えており、該中栓を収容する該上蓋が、該容器口部に螺合によって係止されるキャップであって、該
中栓は、該容器口部の内
周面
よりも容器内方側へ突出しないよう形成され
、その該押さえ部の内表面は、該上蓋が閉蓋された際に、該インナーリングの外周面と当接しないようになっており、該インナーリングは、該上蓋が閉蓋された際に、該シール部が該容器口部の内周面に当接可能に形成されており、該中栓を介することなく該インナーリングで該容器口部を直接シール可能となっていることを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【0009】
又、本発明は、前記シール部は、軟質樹脂から成ることを特徴とする合成樹脂製キャップである
【0010】
又、本発明は、前記シール部は、インサート成形、または、二色成形によって、前記インナーリングと一体に形成されていることを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【0011】
又、本発明は、前記上蓋には、前記中栓の前記液注ぎ部の背面側に形成された凹所と係合する突起部が設けられていることを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【0012】
又、本発明は、環状突部が外周面に形成されると共に傾斜面が内周面に形成された容器口部先端を有する容器を備えており、前記合成樹脂製キャップが装着されたことを特徴とするキャップ付容器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、中栓は、容器口部の先端に係着し、該中栓は、該容器口部の内周面よりも容器内方側へ突出しないよう形成されることにより、中栓が内容液の流路上の障害とならないため、容易に内容液の流量調整を行うことができる。
【0014】
又、本発明は、上蓋の天壁内面に立設されたインナーリングが容器口部を直接シールし、容器を密閉するため、中栓が上蓋の開閉操作によって空転することがなく、構造が簡素でありながら、十分な密閉性を確保することができ、更に、該インナーリングのシール部が軟質樹脂によって形成されているため、該インナーリングと該容器口部との当接面の滑り性がよく、上蓋の開閉を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1の要部拡大図である(但し、容器は省略する)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1実施形態を
図1乃至3により説明する。本実施形態のキャップ付容器は、合成樹脂製キャップAと容器Dから成る。合成樹脂製キャップAは上蓋Bと中栓Cより構成される。そして、上蓋Bは螺合によって、中栓Cは嵌合によって、各々、容器Dの口部31に装着されるものである。
【0017】
尚、キャップAが装着される容器Dは、熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)、あるいはこれらのブレンド物等の樹脂によって成形され、その口部31の外周面31aには螺条32及び螺条32よりも先端31b側に環状突部33が各々形成される。又、内周面31cの先端31b側には傾斜面34が形成されている。
【0018】
中栓Cは、平面視略円環形状に成形され、上壁21及び上壁21の下面21aより下方へと延在する側壁22により構成されている。上壁21は、液注ぎ部23及び押さえ部24から構成され、押さえ部24は、その上端で、断面円弧状に形成され、先端が容器外方に向かって放射する形状を備えた液注ぎ部23と連続するように形成される。又、上壁21には、液注ぎ部23の背面側となる箇所に、凹所21bが形成されている。
【0019】
押さえ部24の内表面24aは、容器口部の内周面31c(仮想線L)の外周側に位置しており、容器口部31の内周面31cを超えて内方へ突出しないように形成される。つまり、内表面24aは、後述する上蓋Bのインナーリング14と当接しないように成形される。
【0020】
中栓Cの側壁22は略円筒形に形成されており、その下端22a側の内周面には係合突部25が形成される。係合突部25は押さえ部24と共に係着部26を構成し、係着部26は、係合突部25が容器口部31の環状突部33に係合し、押さえ部24が容器口部31の傾斜面34に当接することによって、中栓Cを容器口部31の先端31bに係着させる。
【0021】
従って、本実施形態において、容器口部31から流出した内容液(図示せず)は押さえ部24の内表面24aに沿って液注ぎ部23へと導かれる様になっており、押さえ部24は容器口部31の傾斜面34に当接しているので、中栓Cは容器口部31の内方側への突出部が形成されず、内容液の流量調整を容易に行うことができるものとなっている。
【0022】
尚、中栓Cを構成する樹脂原料には、熱可塑性樹脂であるオレフィン系樹脂、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)や、脂肪族ポリエステル樹脂、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、あるいはこれらのブレンド物を採用することができる。
【0023】
上蓋Bは平面視略円形をしており、天壁11及び天壁11の外縁11aより垂下するように延在する側壁12から構成される。
【0024】
側壁12には、その内周面12aに螺条13が形成されている。つまり、上蓋Bは、螺条13と容器口部31の螺条32が螺合することによって容器Dに係止されることとなる。
【0025】
天壁11の内面11bにはインナーリング14が立設されている。インナーリング14は、上蓋Bを閉蓋されている際に、その外周面14aがシール部14bで容器口部31の内周面31cと当接するように成形される。即ち、インナーリング14は、中栓Cを介することなく、容器口部31の内周よりシールすることによって容器Dを密封することができるようになっている。
【0026】
尚、上蓋Bを構成する樹脂原料には、熱可塑性樹脂であるオレフィン系樹脂、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)や、脂肪族ポリエステル樹脂、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、あるいはこれらのブレンド物を採用することができる。
【0027】
又、本実施形態において、上蓋Bの天壁11の内面隅部には突起部15が突設されている。突起部15は、天壁11及び側壁12と一体となるように形成されており、その内周面は、上端で天壁11の内面11bと、下端で側壁12の内周面12aと連続している。突起部15は、中栓Cの凹所21bに係合することで、中栓Cを上蓋Bの天壁11、側壁12、インナーリング14によって区画される空間に保持させることができるようになっている。
【0028】
これにより、キャップAを容器Dへ装着する工程において、あらかじめ中栓Cを上蓋
B内にセットし、上蓋Bを容器Dに螺着することで、上蓋Bを容器Dに螺着させると共に中栓Cを容器口部31の先端31bに係着させることができるようになっている。
【0029】
本発明の第2実施形態を
図4により説明する。
図1乃至3と同一の符号はその名称も機能も同一である。第1実施形態との相違は、側壁12の下端面12bに、ブリッジ41によって略円環形状の封止リングEが接合されていることである。本実施形態では、ブリッジ41は、需要者が上蓋Bを回し、容器Dを開封した際に切断され、封止リングEが下方へと落下することで、需要者が容易に容器の開封の有無を判断ことができるようになっている。
【0030】
尚、このように上蓋Bにブリッジ41及び封止リングEを設けた場合は、上蓋Bを構成する樹脂原料に、例えば、ポリプロピレン(PP)等の比較的硬質の樹脂が用いられることがある。このような場合、シール部14bは上蓋Bと異なる樹脂から形成することが好ましい。
【0031】
従って、本実施形態において、インナーリング14は、その外周面14aの所定位置、少なくとも、容器口部31の内周面31cと当接するシール部14bが、軟質樹脂であって、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレン(PE)、又は、熱可塑性エラストマー(TPO)等の縦弾性率の優れた樹脂から形成される。
【0032】
シール部14bを軟質樹脂から形成することにより、インナーリング14が容器口部31と当接する際に、インナーリング14のシール部14bが容器口部31の内周面31c上を滑動し易いようになっている。即ち、本実施形態では、該シール部14bを容器口部31の内周面31cに当接させることによってシールし、容器Dの密閉性を高め、且つ、上蓋Bの開閉を容易としている。
【0033】
尚、シール部14bは二色成形やインサート成形等の既存の方法によってインナーリング14に導入することができる。本実施形態では、例えば、二色成形法によって、シール部14bはインナーリング14と一体に形成されているが、これを、シール部14bはインナーリング14と別体に形成したシール部材(図示せず)とし、該シール部材をインナーリング14の外周面14aの所定位置であって、容器口部31の内周面31cと当接する箇所に接合させた形態としてもよい。
【0034】
以上のように、本実施形態1及び2では、キャップAを上蓋B及び中栓Cから構成し、且つ、中栓Cを容器Dに係着させ、その押さえ部24の内表面24aを容器口部31の内方側へ突出させないことによって、内容液の流量調整が容易なものとしている。又、上蓋Bのインナーリング14を容器口部31に当接させることで上蓋Bにシール性を持たせつつ、本実施形態1及び2では、インナーリング14が中栓Cを介することなく、容器Dの口部31をシールすることができるので、中栓Cと容器口部31との嵌合の状態よって、該シール性が低下することがない。更に、インナーリング14のシール部14bを軟質樹脂により形成することで上蓋Bの開閉が容易なものとなっている。
【0035】
又、本実施形態1及び2の別な効果として、上蓋Bを開けるだけで、容器Dの開封が完了するので、需要者は、ワンアクションで内容液を注出することが可能であり、又、中栓Cは容器Dに係着していることにより、使用の最中に中栓Cが容器Dから脱落するようなこともない。
【0036】
又、本実施形態1及び2では、押さえ部24の内表面24aは上蓋Bのインナーリング14と当接しないようになっているが、インナーリング14はその基部から先端側が外方へ拡がるテーパー状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
A 合成樹脂製キャップ B 上蓋 11 天壁
11a 外縁 11b 内面 12 側壁
12a 内周面 12b 下端面 13 螺条
14 インナーリング 14a 外周面 14b シール部
15 突起部 C 中栓 21 上壁
21a 下面 21b 凹所 22 側壁
22a 下端 23 液注ぎ部 24 押さえ部
24a 内表面 25 係合突部 26 係着部
D 容器 31 口部 31a 外周面
31b 先端 31c 内周面 32 螺条
33 環状突部 34 傾斜面 E 封止リング
41 ブリッジ