(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変位センサが、前記トンネル又はこれと一体的に移動する部材と前記昇降フレーム又はこれと一体的に移動する部材とに架け渡された前記長手方向に延びるワイヤを備えたワイヤ式リニアエンコーダである、請求項2又は請求項3に記載の搭乗橋。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0020】
図1および
図2に示すように、本実施の形態に係る搭乗橋10は、ロタンダ20と、キャブ40と、ロタンダ20とキャブ40とを接続するトンネル30と、トンネル30を昇降可能に支持するリフトコラム50と、リフトコラム50の下部に設けられた走行装置70とを備えている。ロタンダ20は港の旅客ターミナル9から突き出すように設けられた搭乗デッキ8からの出入口8aに接続されており、キャブ40は港に停留している船舶7の乗降口7aに接続されている。このように旅客ターミナル9の搭乗デッキ8と船舶7の乗降口7aとを接続している搭乗橋10内には、これらの間を連絡する通路が設けられている。
【0021】
続いて、搭乗橋10の各構成要素について詳細に説明する。以下では、トンネル30が延びている方向、すなわち、トンネル30内に形成された通路が延びている方向を「長手方向L」といい、長手方向Lと直交する水平方向を「幅方向」という。搭乗橋10が延びている方向は、すなわち、トンネル30が延びている方向でもあるので、長手方向Lは搭乗橋10およびトンネル30の両方において用いることとする。そして、長手方向Lにおいてロタンダ20がある側を「基部側」ともいい、キャブ40がある側を「先端側」ともいう。
【0022】
ロタンダ20は、地上に固定された支柱21に鉛直軸回りに正逆回転自在に支持されている。ロタンダ20の内部は円形室であって、搭乗デッキ8からの出入口8aと連通している。ロタンダ20には、トンネル30の基部側が枢結されている。具体的には、トンネル30の基部側がロタンダ20内に挿入されており、そのトンネル30の基部側下部がロタンダ20に長手方向Lと直交するヒンジピン22を介して支承されている。かかる構成により、トンネル30は長手方向Lと直交する回転軸(ヒンジピン22)を中心として上下に回動することができる。
【0023】
トンネル30は、旅客ターミナル9の搭乗デッキ8の乗降口と船舶7の乗降口とを繋ぎ、長手方向Lに延びる床面を有する連絡通路が内部に形成されている。トンネル30は、長手方向L寸法が固定されたシンプルな一段式の筒状体であって、長手方向Lに伸縮不能である。但し、トンネル30は長手方向L寸法が固定されていれば、直列に接続された複数の筒状体であったり、複層に重ね合わさった複数の筒状体であってもよい。
【0024】
トンネル30の先端側にはキャブ40の基部側が接続されている。キャブ40の内部は矩形室又は円形室であって、トンネル30内の通路と連通している。キャブ40内には、搭乗橋10を操作するための操作パネルや制御盤などが設けられている。操作パネルには、トンネル30の昇降を操作するための操作スイッチ66(
図10、参照)の他、走行装置70を操作するための操作レバー65(
図10、参照)が設けられている。
【0025】
キャブ40の先端側には開口が設けられており、この開口にフラップ41が設けられている。
図3はキャブ40とフラップ41の側面図である。
図3に示すように、フラップ41は船舶7の乗降口7aへ向けて長手方向Lに伸縮可能に構成されている。具体的には、フラップ41は、キャブ40の開口に枢結された基板部42と、基板部42から長手方向Lへ進退可能となるように基板部42に収容された延長部43と、延長部43の先端側に枢結された先端部44とを備えている。基板部42と延長部43との間には、基板部42に対して延長部43を進退移動させる駆動装置45が設けられている。駆動装置45の駆動により、延長部43が進退移動することによって、フラップ41の長手方向Lの寸法が変化する。基板部42の先端側には、キャブ40に設けられたウインチ46によって巻き上げられるワイヤロープ47が接続されている。上記構成のフラップ41は、不使用時は先端部44が延長部43と重なるように折り畳まれ、延長部43は基板部42に収容され、ワイヤロープ47が巻き上げられて基板部42はキャブ40への枢結部を中心として上方へ跳ね上げられている。このようにして、不使用時のフラップ41は折り畳まれてキャブ40内に一部又は全部が収容されている。
【0026】
図4はリフトコラムを搭乗橋の基部側から見た図であり、
図5はリフトコラムの側面図である。
図1,2に加えて
図4および
図5にも示すように、リフトコラム50は、支持梁51と、支持梁51の下部に設けられた走行装置70と、支持梁51に立設された一対の支柱53,53と、一対の支柱53,53に架け渡された昇降フレーム54とを備えている。昇降フレーム54はトンネル30を、トンネル30の長手方向L中央よりも先端側において下方から支持している。トンネル30と昇降フレーム54の上下間には直動案内装置55が介在している。直動案内装置55は、長手方向Lに延びる直線状の軌道を有するレール33(案内体)と、このレール33の軌道に沿って自在に移動可能なスライダブロック37(移動体)とを備えている。この直動案内装置55は、トンネル30と昇降フレーム54との間に介在してトンネル30を支持するとともに、トンネル30に相対して昇降フレーム54を長手方向Lに滑らかに移動させるためのものである。
【0027】
略鉛直に延びる一対の支柱53,53は、トンネル30を幅方向から挟み込むように、トンネル30の両側に位置している。この一対の支柱53,53の下端部は略水平に延びる支持梁51で連結されている。支持梁51の支柱53,53よりも外方へ延設された両端部には、アウトリガー511,511が垂設されている。アウトリガー511,511は、同じく支持梁51に設けられたアウトリガージャッキ512,512により浮上位置から接地位置まで伸縮駆動される。
【0028】
支持梁51の中央下部と、走行装置70が具備する接続部71の上部は、鉛直軸回りに正逆回転自在な旋回盤52を介して接続されている。これにより、支持梁51に対して走行装置70は、鉛直軸回りに正逆回転自在となっている。走行装置70は、接続部71と、走行台72と、一対の車軸73,73と、複数の車輪74,74とを備えている。
【0029】
図6は走行装置70の平面図である。
図6に示すように、走行装置70の基礎となる走行台72は平面視略矩形状の枠体であり、矩形枠体の対向する一対の辺から略水平に外方へ突出するように車軸73,73が固定されている。走行台72の残りの対向する一対の辺には、車軸73と略直交する方向へ延びる揺動軸75が架け渡されている。この揺動軸75には、接続部71の下部が回動可能に支承されている。これにより、接続部71および接続部71に接続された支持梁51は、揺動軸75を軸として揺動することができる。つまり、支持梁51に相対固定された支柱53,53および昇降フレーム54は、走行装置70に対して揺動可能であり、走行装置70は支持梁51に対して回転可能である。
【0030】
各車軸73には2つの車輪74,74が設けられている。2つの車輪74,74のうち走行台72に近い方が従動輪74bであり、遠い方が駆動輪74aである。駆動輪74aのディスクホイールは軸受を介して車軸73に回動可能に支承されており、このディスクホイールにはスプロケット76が設けられている。このスプロケット76は、減速機付きの走行用モータ77の出力軸に設けられたスプロケット77aからローラチェーン78を介して動力が伝達される。一方、従動輪74bのディスクホイールは自由に回動できるように軸受を介して車軸73に支承されている。かかる構成により、走行用モータ77の動力により駆動輪74aが正方向又は逆方向へ回転駆動されると、従動輪74bはそれに追従して自由に正逆回転する。なお、走行装置70では、各車軸73,73につき独立した走行用モータ77,77を備えており、一方の車軸73に設けられた車輪74,74と、他方の車軸73に設けられた車輪74,74はそれぞれ独立して回転する。
【0031】
各支柱53は、支持梁51に固定された筒状の内柱531と、内柱531に外嵌された筒状の外柱532と、内柱531内に挿通された筒状の駆動軸533とをそれぞれに備えている。外柱532は内柱531に対して摺動可能である。外柱532と内柱531との摺動摩擦を軽減するために、内柱531の外周と外柱532の内周との間にはブッシュが介装されている。駆動軸533の下端には駆動用スプロケット534が設けられており、上端にはナット537が設けられている。駆動軸533の駆動用スプロケット534には、昇降用モータ535の出力軸に設けられたスプロケット535aからローラチェーン536を介して動力が伝達される。昇降用モータ535は、一対の支柱53,53で1機を共用している。
図7に詳細に示されるように、駆動軸533のナット537には外柱532の頂部から外柱532内に垂設されたネジ軸538が螺入されており、このナット537の外周は内柱531の内周に軸受を介して回動自在に支承されている。上記構成の一対の支柱53,53において、昇降用モータ535の動力がスプロケット535a,535a、ローラチェーン536,536および駆動用スプロケット534,534を介して駆動軸533,533へ伝達されると、駆動軸533,533が回転する。この駆動軸533,533の回転に伴いナット537,537がネジ軸538,538の回りを正方向又は逆方向に回転する。この結果、外柱532,532が内柱531,531に相対して上方又は下方へ移動する。
【0032】
上述のように支持梁51に対して昇降移動する外柱532,532に昇降フレーム54が架設されており、昇降フレーム54は支持梁51に対して昇降移動することができる。
図8は昇降フレーム54の平面図であり、
図9は直動案内装置の拡大図である。
図8に示すように、昇降フレーム54は平面視において、対向する一対のブラケット541,541と、これらのブラケット541,541の長手方向Lの端同士を接続する一対の接続梁542,542とが略矩形状に組まれてなる。昇降フレーム54は、対向する角同士を結ぶように設けられた筋交い543,543によって補強されている。
【0033】
一対のブラケット541,541は長手方向Lの対称軸を中心として線対称に構成されている。各ブラケット541の長手方向Lの略中央部には柱固定部544が設けられており、この柱固定部544には支柱53の外柱532が貫通した状態に固定されている。
【0034】
図9にも示すように、昇降フレーム54の上面の四隅には、スライダ取付台38を介してスライダブロック37が取り付けられている。スライダ取付台38は、スライダブロック37を昇降フレーム54に取り付けるための部材である。本実施形態においスライダブロックは4カ所に設けられているが、トンネル30の荷重を支持できるように十分な数のスライダブロックが最適な場所に配置されることが望ましい。これらのスライダブロック37は、トンネル30の下部に取り付けられた長手方向Lに延びるレール33に沿って自在に移動可能である。トンネル30の幅方向両端部の下面には脚部31,31が垂設されており、この脚部31,31にレール取付台32,32を介してレール33,33が取り付けられている。レール取付台32は、レール33をトンネル30に取り付けるための部材である。
【0035】
本実施の形態において、レール33とスライダブロック37からなる直動案内装置55として、レール33とスライダブロック37との間に転動体としてボール(図示略)が介在するタイプのもの採用している。このような直動案内装置55では、レール33とスライダブロック37との間にボールが介在することにより、レール33とスライダブロック37の間の摩擦が軽減され、スライダブロック37の高精度で滑らかな直線運動が得られる。よって、トンネル30に相対する昇降フレーム54の長手方向Lへの移動をより滑らかなものとすることができる。さらに、レール33とスライダブロック37との相互摩耗が抑制されるので、風雨に曝されている高重量なトンネル30を支持するという過酷な環境で使用されるために適している。但し、直動案内装置55は上記に限定されず、昇降フレーム54をトンネル30に相対して長手方向Lへ直線運動させるものであればよい。
【0036】
直動案内装置55は、トンネル30に相対して昇降フレーム54を長手方向Lへ直動可能に案内する機能に加えて、トンネル30に相対する昇降フレーム54の長手方向L以外の方向への移動を規制する機能を備えている。つまり、トンネル30と昇降フレーム54は、直動案内装置55によって上下および幅方向に繋ぎ留められている。このような機能を備えるために、レール33とスライダブロック37が上下方向に乖離不能に係合し合う形状を有している。具体的には、レール33の横断面は上下中央部にくびれ形状を有し、このくびれを挟持するようにスライダブロック37の横断面はチャンネル形状を有している。このようなレール33とスライダブロック37の形状により、スライダブロック37からレール33が浮き上がったり、スライダブロック37がレール33から幅方向へ横滑りして落下したりすることのないように、スライダブロック37とレール33は上下および幅方向に乖離しないように係合している。このようにして、レール33が取り付けられたトンネル30と、スライダブロック37が取り付けられた昇降フレーム54は、係合し合うレール33とスライダブロック37により、上下および幅方向に連結されている。
【0037】
上記のように、レール33とスライダブロック37は上下に乖離不能に係合しているが、万が一、この係合が外れたときにもスライダブロック37がレール33から落脱しないようにするための安全機構として、昇降フレーム54に落脱防止金物35が設けられている。落脱防止金物35は、昇降フレーム54上にスライダ取付台38と幅方向に並んで取り付けられている。落脱防止金物35には、レール取付台32の上方に位置してレール取付台32の浮き上がりを防止する浮き上がり防止部351と、レール取付台32の側方に位置してレール取付台32の横滑りを防止する第1横滑り防止部353と、スライダ取付台38の側方に位置してスライダ取付台38の横滑りを防止する第2横滑り防止部354とが設けられている。このような落脱防止金物35を備えることにより、万が一、スライダブロック37とレール33との係合が外れたときでも、落脱防止金物35がレール33およびスライダブロック37又はこれらの取付台32,38と当接することにより、スライダブロック37がレール33から落脱することを防止できる。さらに、レール取付台32には、スライダブロック37がレール33の長手方向L端部に至ったときに落脱防止金物35と当接しうる突起352が形成されている。これにより、スライダブロック37が長手方向Lへ過度に移動することによりレール33から落脱することが防止されている。
【0038】
次に、
図10を参照しつつ、搭乗橋10の制御に係る構成について説明する。
図10は搭乗橋の制御に係る構成を示すブロック図である。搭乗橋10の制御装置60は、走行制御部61と、昇降制御部62とを備えている。制御装置60は、CPU、記憶装置、出入力装置、およびインターフェース等(何れも図示せず)を備えたいわゆるコンピュータである。制御装置60は、記憶装置に格納された走行制御用プログラムと昇降制御用プログラムをCPUで実行することにより、走行制御部61および昇降制御部62としての機能を備えることができる。なお、制御装置60は走行制御部61として機能するCPUと昇降制御部62として機能するCPUとを別個備えることもできる。制御装置60には、走行用モータ77,77と昇降用モータ535が電気的に接続されている。また、制御装置60には出入力装置として、キャブ40に設置された操作パネルに設けられた操作レバー65および操作スイッチ66が接続されている。
【0039】
さらに、制御装置60には、昇降センサ64および変位センサ63が接続されており、これらのセンサからの検出信号が制御装置60へ出力される。昇降センサ64は、昇降用モータ535から駆動軸533へ動力を伝達するローラチェーン536の走行を検出するロータリエンコーダである。ローラチェーン536の走行を検出することにより、駆動軸533の回転に基づく外柱532の昇降位置を検出することができる。外柱532の昇降位置から、昇降フレーム54およびこれに支持されたトンネル30の昇降位置を知ることができる。また、変位センサ63は、トンネル30と昇降フレーム54との間の長手方向Lの変位を検出するワイヤ式リニアエンコーダである。トンネル30と昇降フレーム54との間の長手方向Lの変位から、レール33とスライダブロック37との相対位置を検出することができる。但し、変位センサ63はワイヤ式リニアエンコーダに限定されず、レール33とスライダブロック37との相対位置を検出可能であれば、使用環境に耐えうる既知のいかなる変位センサも用いることができる。
【0040】
ここで、上記構成の搭乗橋10の退避位置から乗降位置までの移動動作について説明する。
図2に二点鎖線で示されるように、退避位置の搭乗橋10は平面視において長手方向Lが旅客ターミナル9の搭乗デッキ8と略平行となる姿勢で、搭乗デッキ8に沿って退避している。また、
図2に実線で示されるように、乗降位置の搭乗橋10は平面視において長手方向Lが船舶7の乗降口7aの開口面に対して略直交している。乗客等の乗降時に、操作レバー65が操作されて旋回指令が制御装置60へ入力されると、走行制御部61は旋回指令に応じて走行用モータ77,77の駆動を制御し、走行装置70を動作させる。
【0041】
搭乗橋10が乗降位置に到達したのち、操作スイッチ66が操作されて昇降指令が制御装置60へ入力されると、昇降制御部62は昇降指令に応じて昇降用モータ535の駆動を制御し、船舶7の乗降口7aとキャブ40との床面の高さを合わせるようにトンネル30を傾けるべく、リフトコラム50の昇降フレーム54を昇降させる。
図11は搭乗橋の昇降時の様子を示す側面図である。同図に示すように、リフトコラム50の昇降フレーム54が昇降すると、トンネル30は昇降フレーム54に下方から持ち上げられる又は引き下げられるようにして、ロタンダ20に設けられたヒンジピン22を中心として上方又は下方へ回動する。これにより、トンネル30の長手方向Lは水平から傾いた状態となる。
【0042】
トンネル30は、長手方向Lが水平である状態を基準姿勢(
図11のH
0)としている。そして、基準姿勢H
0のトンネル30は、昇降フレーム54が上昇することにより、長手方向Lがヒンジピン22を中心として上方へ傾いた上向き姿勢(
図11のH
1)となる。また、基準姿勢H
0のトンネル30は、昇降フレーム54が降下することにより、長手方向Lがヒンジピン22を中心として下方へ傾いた下向き姿勢(
図11のH
2)となる。トンネル30の長手方向Lが水平から傾くと、昇降フレーム54がトンネル30に対して長手方向Lへしか移動できないために、昇降フレーム54はトンネル30に追従して傾く。そして、昇降フレーム54が固定されている一対の支柱53,53は、トンネル30の傾き追従して、トンネル30の水平からの傾きと同じ角度で垂直から傾く。支柱53,53が傾くとき、支柱53,53、昇降フレーム54および支持梁51は一体となって、走行装置70に設けられた揺動軸75を中心として長手方向Lへ揺動する。このように、トンネル30の回動に応じて一対の支柱53,53および昇降フレーム54が走行装置70に対して傾くことで、リフトコラム50によるトンネル30の荷重の安定的な支持が維持されることとなる。
【0043】
さらに、トンネル30の長手方向Lが水平から傾くときに、トンネル30に対して昇降フレーム54は長手方向Lへ基部側又は先端側へ移動することによって、昇降フレーム54および支柱53,53がトンネル30の傾きに追従することができる。このようにトンネル30と昇降フレーム54の間に直動案内装置55が介在するため、トンネル30が傾くときにトンネル30を支持しているリフトコラム50長手方向Lへ相対変位したりすることで、トンネル30とリフトコラム50の連結部への応力の集中を回避することができる。よって、トンネル30とリフトコラム50の間にこじれや捩れを生じさせることなく、トンネル30を滑らかに回動(昇降)させることができる。
【0044】
上述のように船舶7の乗降口7aとキャブ40の床面との高さを合わせたのち、フラップ41を展開して(
図3、参照)、フラップ41で船舶7の乗降口7aとキャブ40とを接続する。前述の通りフラップ41は長手方向Lに伸縮可能であるので、このフラップ41の伸縮により船舶7の乗降口7aとキャブ40との間の距離の微調整を行うことができる。また、ロタンダ20から船舶7の乗降口7aまでの距離が一定であっても、トンネル30の回動(昇降)によってキャブ40と船舶7の乗降口7aとの距離が変化することがある。このような場合にも、キャブ40から船舶7の乗降口7aまでの距離の変化をフラップ41を伸縮させることにより吸収することができる。
【0045】
続いて、走行制御部61による走行装置70の走行制御について詳細に説明する。
図2に示すように、搭乗橋10が退避位置から乗降位置へ又はその逆へ旋回移動するときには、走行装置70の車軸73,73はロタンダ20の支柱21を中心として放射状に一列に並んだ状態となる。このような状態において、放射状に並ぶ4つの車輪74,74,,のうち、ロタンダ20側の駆動輪74aを「内輪74
in」と呼び、キャブ40側の駆動輪74aを「外輪74
out」と呼ぶこととする。
【0046】
走行制御部61は、
図10に示すように、操作レバー65を介して旋回速度指令(例えば、低速、中速、高速)が入力されると、指令された旋回速度に応じて外輪74
outを駆動する走行用モータ77(外輪駆動モータ77
out)に対して所定の周波数を出力する。内輪74
inを駆動する走行用モータ77(内輪駆動モータ77
in)に対しては、外輪74
outの旋回半径と内輪74
inの旋回半径の比率に応じて、外輪駆動モータ77
outへ出力した周波数に所定の係数を掛けた周波数を出力する。これにより、搭乗橋10が退避位置から乗降位置へ又はその逆へ、内輪74
inおよび外輪74
outはロタンダ20の支柱21を中心とする円弧軌道を描いて走行する。
【0047】
ところが、走行する路面の状況、タイヤの状態(空気圧、擦り減り具合)や遠心力等の作用により、内輪74
inおよび外輪74
outが所定の円弧軌道から外れて蛇行することがある。このように内輪74
inおよび外輪74
outが所定の円弧軌道から外れると、トンネル30に相対してリフトコラム50が長手方向Lへ移動し、搭乗橋10が乗降位置に位置したときに、トンネル30の昇降に必要なスライダブロック37の可動範囲が確保できないことがある。そこで、走行制御部61は、搭乗橋10の旋回移動時に、トンネル30に対する昇降フレーム54の長手方向Lの変位量ΔLを監視し、変位量ΔLが許容範囲を超えるようであれば内輪74
inの回転速度(回転数)を変化させることにより軌道の修正を行う。
【0048】
走行制御部61の旋回蛇行補正処理について、
図12を参照しつつ説明する。
図12は旋回蛇行補正処理のフローチャートである。走行制御部61は、搭乗橋10の旋回移動中に、変位センサ63の検出出力に基づいてトンネル30に相対する昇降フレーム54の基準位置からの長手方向Lの変位量ΔLを常時監視する(ステップS1)。この変位量ΔLは、スライダブロック37のレール33の基準位置からの変位量を表している。ここで走行制御部61は、スライダブロック37がレール33の基準位置にある時をゼロ点として、そこから長手方向Lへの変位量ΔLが許容範囲内であるかを監視する。
【0049】
図13は変位量と内輪速度補正量との関係を示すグラフである。
図13において横軸は変位量ΔLを表し、縦軸は内輪速度補正量を表している。変位量ΔLの許容範囲は、ゼロ点を挟んで−側の補正開始位置(−βmm)から+側の補正開始位置(+βmm)までの範囲である。
【0050】
そして、走行制御部61は、変位量ΔLが許容範囲を越えると、換言すれば、変位量ΔLが補正開始位置内(−βmm≦ΔL≦βmm)でなければ(ステップS1でNO)、変位量ΔLが基準値0となるように内輪74
inの回転速度、すなわち、内輪駆動モータ77
inへの出力値に対して補正を行う(ステップS2)。具体的には、走行制御部61は、内輪駆動モータ77
inへ出力する周波数について変位量ΔLに応じた比例制御を行い、この結果、内輪駆動モータ77
inへ出力する周波数が変位量ΔLに応じて補正される。この補正は、昇降フレーム54(スライダブロック37)が長手方向Lに基部側へ移動したときには内輪74
inの回転速度を加速させ、昇降フレーム54(スライダブロック37)が長手方向Lに先端側へ移動したときには内輪74
inの回転速度を減速させるものである。なお、内外輪の速度差が極端に大きくなると却って内輪74
inおよび外輪74
outが所定の円弧軌道から大きく外れてしまうことから、補正量に上限値および下限値を定めて補正量を制限することが望ましい。
【0051】
変位量ΔLが基準値0となったときに、内輪駆動モータ77
inへの出力値に対する補正を終了したのでは、補正後のリバウンドにより走行軌道がそれまでとは逆方向へ外れてしまう。そこで、補正開始位置と基準値0との間に補正終了位置(−αmm又は+αmm)が設定されている。走行制御部61は、変位量ΔLが補正終了位置内(−αmm≦ΔL≦αmm)となったときに(ステップS3でYES)、内輪74
inの回転速度、すなわち、内輪駆動モータ77
inへの出力値に対する補正を一端終了する(ステップS4)。
【0052】
なお、内輪駆動モータ77
inへの出力値の補正量が大きい場合には、補正を一端終了したときに内輪74
inの角度が急激に変化することがある。そこで、このような場合には、変位量ΔLが補正終了位置(−αmm又は+αmm)となったときに、所定の車輪角度補正時間をかけて連続的又は段階的に車輪角度が変化するように、内輪駆動モータ77
inへの出力値を補正することができる。
【0053】
上記のようにして、旋回移動時のトンネル30に相対する昇降フレーム54の変位量ΔLが許容範囲内となるように制御されることで、レール33に相対するスライダブロック37の変位量が許容範囲内に維持される。よって、旋回終了後にトンネル30を昇降させるときに、トンネル30の昇降に必要なスライダブロック37の可動範囲が確保される。
【0054】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。
【0055】
例えば、上記実施の形態に係る搭乗橋10では、レール33およびスライダブロック37からなる直動ガイドが直動案内装置55として機能しているが、直動案内装置55の構成は上記に限定されない。例えば、直動案内装置55として、レールおよびスライダブロックからなる一般的な直動ガイドと、トンネル30と昇降フレーム54を上下方向に乖離不能に連結する連結部材とを備えても良い。
【0056】
また、例えば、上記実施の形態に係る落脱防止金物35は、前述の通りレール33とスライダブロック37とが係合し合う形状を有する関係上、レール取付台32およびスライダ取付台38に当接してレール33とスライダブロック37の移動を規制するように構成されている。但し、落脱防止金物35は、レール33とスライダブロック37に当接することによりこれらの長手方向L以外の方向への移動を規制するように構成されていてもよい。
【0057】
また、例えば、上記実施の形態に係る走行制御部61では、自動的に旋回蛇行補正処理が開始されて終了されるが、これに加えて又はこれに代えて、操作レバー65による操作で旋回蛇行補正処理の開始と終了の指示が制御装置60へ入力されるようにしてもよい。
【0058】
また、例えば、上記実施形態に係る搭乗橋10は、旅客ターミナル9の搭乗デッキ8と船舶7の乗降口7aとを連絡するものであるが、空港の旅客ターミナルの搭乗デッキと航空機の乗降口とを連絡する搭乗橋にも適用することができる。