【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年 1月13日付けで、本願発明の実施物が株式会社デンロコーポレーションから株式会社アイテックソリューションズへ送付された。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態のスピーカ装置について説明する。
図1に示すように、スピーカ装置1は、複数台のスピーカ2と、これらスピーカ2を支持するスピーカ支持架台10とを備えている。スピーカ装置1は、
図1に示されるように、例えば、コンクリート製の基礎台100に設置される。
【0016】
スピーカ2は、ホーン4と、音信号を振動に変換するドライバユニット3とを備えている。複数台のスピーカ2は一列に配置されている。すなわち、これらスピーカ2は、所謂ラインアレイスピーカを構成する。ドライバユニット3は、音声再生回路を備えている。ドライバユニット3は取り外し可能にホーン4に取付けられている。
【0017】
スピーカ支持架台10は、スピーカ保持体20と、回転軸棒60(回転軸)を介してスピーカ保持体20を俯角方向DAに回転可能に支持する支持枠体40と、スピーカ保持体20を俯角方向DAに設定角度に維持するための係止装置30(
図9参照)とを備えている。
【0018】
また、スピーカ支持架台10は、スピーカ保持体20の回転を抑制するための回転抑制装置50(
図5参照)を備えている。更に、スピーカ支持架台10は、鳥などの小動物または昆虫の侵入を防止するための侵入防止ネット80を備えている。更に、スピーカ支持架台10は、支持枠体40を下方から支えるための支持台90を備えている。
【0019】
スピーカ支持架台10の各構成要素について説明する。
なお、以降の説明においては、ホーン4を正面にしてスピーカ支持架台10を見て、スピーカ支持架台10の右側の部分を右側といい、左側の部分を左側というものとする。
【0020】
図1〜
図4を参照して、支持台90の構造について説明する。
図1に示すように、支持台90は、鋼管より構成される支柱91と、支持枠体40を載せるためのフランジ92と、支持枠体40の傾きを抑制するための傾斜抑制プレート93と、支柱91を基礎台100に固定するためのベースプレート94と、を備えている。
【0021】
ベースプレート94は、支柱91の下端に取付けられている。
ベースプレート94の上側かつ支柱91の周りには、この支柱91を支えるための支柱補強部材94aが複数個設けられている。また、支柱91には、支柱補強部材94aの上端に接触するように円環状の止め金94bが取り付けられている。
【0022】
図2に示すように、フランジ92は、支柱91の上端に取付けられている。
フランジ92の下側かつ支柱91の周りには、フランジ92を下側から支えるためのフランジ補強部材92aが複数個設けられている。また、支柱91には、フランジ補強部材92aの下端に接触するように円環状の止め金92bが取り付けられている。
【0023】
図3に示すように、フランジ92には、複数個の締結孔95が形成されている。
締結孔95は、フランジ92の周方向に沿うように延びる長孔である。締結孔95には、ボルト96が挿入される。ボルト96は、フランジ92と支持枠体40の枠体下部42とを締結する。
【0024】
締結孔95は、フランジ92に対して支持枠体40を位置決めするときのガイドとしての機能を有する。水平方向DHにおけるスピーカ2の角度を調整するとき、フランジ92と枠体下部42とを締結するボルト96を緩め、支持枠体40をフランジ92に対して水平方向DHに回転させる。このとき、ボルト96が締結孔95に沿って移動するため、支持枠体40の中心がフランジ92の中心から殆どずれることがない。これにより、スピーカ2の角度調整時において、支持枠体40がフランジ92の中心からずれることによって生じる支持枠体40の揺れを抑制することができる。
【0025】
図4に、
図2のA−A線に沿う断面図を示す。
図4を参照して、傾斜抑制プレート93を説明する。
傾斜抑制プレート93は、鋼板により形成されている。傾斜抑制プレート93は、支柱91の断面積(支柱91の外径を直径とする円の面積)よりも大きい。傾斜抑制プレート93の横幅LWは、支持枠体40の枠体下部42の中央部に設けられている2本の梁42aの間の間隔LSよりも大きい。すなわち、傾斜抑制プレート93は、支持枠体40の枠体下部42から抜け落ちない大きさに形成されている。
【0026】
傾斜抑制プレート93とフランジ92との間には、梁42aの梁底部42bが配置されている。そして、傾斜抑制プレート93とフランジ92とは、ボルト97により互いに締結されている。なお、梁42aの梁底部42bの間にはスペーサ98が配置されている。
【0027】
傾斜抑制プレート93の作用を説明する。
傾斜抑制プレート93が設けられていないときは、支持枠体40を支持台90に対して水平方向DHに回転させるとき、支持枠体40がフランジ92に対して傾いて支持台90から落下する虞がある。一方、支柱91のフランジ92に対して傾斜抑制プレート93が設けられているときは、支持枠体40がフランジ92に対して僅かに傾いたときに、梁42aの梁底部42bが傾斜抑制プレート93に当たるため、支持枠体40がフランジ92に対して更に傾くことが抑えられる。これにより、支持枠体40が支持台90から落下することが抑制される。
【0028】
図5及び
図6を参照して、支持枠体40について説明する。
図5に示すように、支持枠体40は、枠体上部41と、枠体下部42と、枠体右部43と、枠体左部44とを備えている。
【0029】
枠体上部41は、支持枠体40の上側の部分を構成する。
枠体上部41は、2本の山形鋼(以下、横鋼材41a)と、これら横鋼材41aを連結する補強板41bにより構成されている。
【0030】
枠体下部42は、支持枠体40の下側の部分を構成する。
枠体下部42は、山形鋼を用いて矩形の枠に組み立てられている。枠体下部42の中央部には、2本の梁42aが設けられている。
【0031】
枠体右部43は、支持枠体40の右側の部分を構成する。
枠体右部43は、山形鋼を用いて矩形の枠に組み立てられている。すなわち、枠体右部43は、上下方向DZに延びる2本の縦鋼材43cと、縦鋼材43cを連結する2本の連結鋼材43dとにより構成されている。
【0032】
枠体右部43には、2種類の梁(以下、「第1の梁43a」及び「第2の梁43b」という。)が取り付けられている。第1の梁43aは、2本の縦鋼材43cに対して直角に配置されている。第2の梁43bは、2本の縦鋼材43cに対して斜めに配置されている。すなわち、第2の梁43bは枠体右部43においてトラス構造を形成する。
【0033】
枠体右部43は、枠体上部41及び枠体下部42に対して次のように締結されている。
枠体右部43と枠体上部41とはボルトで互いに締結されている。枠体右部43と枠体上部41とがなす角部には、支持枠体40の変形を抑制するための補強部材43eが取り付けられている。また、枠体右部43と枠体下部42とがなす角部には、支持枠体40の変形を抑制するための補強部材43fが取り付けられている。
【0034】
図6は、支持枠体40は右側の側面図である。
図6に示すように、枠体右部43には、スピーカ保持体20を支持するための右側支持板45が取り付けられている。
【0035】
右側支持板45の中央部には、回転軸棒60(
図7参照)を回転可能に支持するための支持孔45aが形成されている。支持孔45aは、支持枠体40の上下方向DZの中間部かつ前後方向DYの中間部に形成されている。
【0036】
なお、支持枠体40の上下方向DZの中間部とは、支持枠体40の上端40cからの距離と支持枠体40の下端40dからの距離とが略等しくなる部分を示す。支持枠体40の前後方向DYの中間部とは、支持枠体40の前端40aからの距離と支持枠体40の後端40bからの距離とが略等しくなる部分を示す。
【0037】
右側支持板45の上部には、第1支持棒61(
図7参照)の端部が挿通する第1ガイド孔45b(ガイド)が形成されている。
第1ガイド孔45bは、前後方向DYにおける右側支持板45の中心線CXから前方側に円弧を描くように形成されている。この円弧の中心は、支持孔45aである。
【0038】
右側支持板45の下部には、第2支持棒62(
図7参照)の端部が挿通する第2ガイド孔45c(ガイド)が形成されている。
第2ガイド孔45cは、前後方向DYにおける右側支持板45の中心線CXから後方側に円弧を描くように形成されている。この円弧の中心は、支持孔45aである。
【0039】
また、右側支持板45には、右側支持板45を補強するためのリブが取り付けられている。具体的には、支持孔45aの上側と下側に、リブ45dが設けられている。第1ガイド孔45bの上側と下側に、リブ45eが設けられている。第2ガイド孔45cの上側と下側に、リブ45fが設けられている。
【0040】
図5を参照、枠体左部44について説明する。
枠体左部44は、支持枠体40の左側の部分を構成する。枠体左部44は、山形鋼を用いて矩形の枠に組み立てられている。すなわち、枠体左部44は、上下方向DZに延びる2本の縦鋼材44cと、縦鋼材44cを連結する2本の連結鋼材44dとにより構成されている。
【0041】
枠体左部44の中央部には、2種類の梁(以下、「第3の梁44a」及び「第4の梁44b」という。)が設けられている。枠体左部44における第3の梁44a及び第4の梁44bの締結構造は、枠体右部43における第1の梁43a及び第2の梁43bの締結構造と同じである。
【0042】
枠体左部44は、枠体上部41及び枠体下部42に対して次のように締結されている。
枠体左部44と枠体上部41とはボルトで互いに締結されている。枠体左部44と枠体上部41とがなす角部には、支持枠体40の変形を抑制するための補強部材44eが取り付けられている。また、枠体左部44と枠体下部42とがなす角部には、支持枠体40の変形を抑制するための補強部材44fが取り付けられている。
【0043】
枠体左部44には、スピーカ保持体20を支持するための左側支持板46が取り付けられている。
左側支持板46の中央部には、回転軸棒60(
図7参照)を回転可能に支持するための支持孔46aが形成されている。支持孔46aは、支持枠体40の上下方向DZの中間部かつ前後方向DYの中間部に形成されている。
【0044】
左側支持板46の上部には、第1支持棒61(
図7参照)の端部が挿通する第1ガイド孔46b(ガイド)が形成されている。
左側支持板46の下部には、第2支持棒62(
図7参照)の端部が挿通する第2ガイド孔46c(ガイド)が形成されている。なお、左側支持板46の詳細な構造は右側支持板45と同じである。
【0045】
図7及び
図8を参照して、スピーカ保持体20を説明する。
図7は、スピーカ保持体20と、スピーカ2と、侵入防止ネット80と、回転軸棒60と、第1支持棒61と、第2支持棒62とを組み立てた構造体の斜視図である。
図8は、
図7に示す構造体からスピーカ2と侵入防止ネット80とを取り外した図である。
【0046】
スピーカ保持体20は、回転軸棒60と、複数台のスピーカ2を保持する保持枠21とを備えている。保持枠21は、ホーン4の前部4aを支持するホーン前部保持枠22と、ホーン4の後部4bを支持する2本のホーン後部保持部材23と、ホーン前部保持枠22とホーン後部保持部材23とを互いに連結する4本の連結部材24とを備えている。
【0047】
ホーン前部保持枠22は、山形鋼により矩形の枠に組み立てられている。
ホーン前部保持枠22は、矩形の前枠部22aと、前枠部22aの外周を囲うように設けられた側周枠部22bとを有する。ホーン前部保持枠22の前枠部22aとホーン4の前部4aとは互いに接触する。前枠部22aとスピーカ2の前部4aとはボルトで締結されている。
【0048】
ホーン後部保持部材23は、山形鋼により形成されている。
2本のホーン後部保持部材23は、ホーン4の後部4bを挟む。ホーン後部保持部材23とホーン4の後部4bとはボルト27で締結されている。
【0049】
連結部材24は、平鋼により形成されている。
連結部材24の後方端部24bは、ホーン後部保持部材23に締結されている。連結部材24の中間部24cは、ホーン前部保持枠22に締結されている。
【0050】
また、4本の連結部材24のうち、スピーカ保持体20の右側に配置される2本の連結部材24の前方端部24arには、侵入防止ネット80の蝶番86が取り付けられる取付部25が形成されている。
【0051】
4本の連結部材24のうち、スピーカ保持体20の左側に配置される2本の連結部材24の前方端部24alには、侵入防止ネット80の係合板85と係合する切込部26が形成されている。
【0052】
また、ホーン後部保持部材23の中間部には、回転軸棒60が取り付けられている。なお、ホーン後部保持部材23の中間部は、スピーカ保持体20の長手方向DBの中間部に対応する。スピーカ保持体20の長手方向DBの中間部とは、スピーカ保持体20の長手方向DBにおいて、上端からの距離と下端からの距離とが略等しくなる部分を示す。
【0053】
ホーン後部保持部材23の上部には、第1支持棒61(係合部材)が取り付けられ、ホーン後部保持部材23の下部には、第2支持棒62(係合部材)が取り付けられている。
スピーカ保持体20の上方から順番に数えて、2番目のホーン4と3番目のホーン4との間に、第1支持棒61が配置されている。スピーカ保持体20の上方から順番に数えて、4番目のホーン4と5番目のホーン4との間に、回転軸棒60が配置されている。スピーカ保持体20の上方から順番に数えて、6番目のホーン4と7番目のホーン4との間に、第2支持棒62が配置されている。
【0054】
次に、
図7を参照して、侵入防止ネット80を説明する。
侵入防止ネット80は、ネット81と、ネット81を張るネット枠82と、ネット枠82を支持するネット支持枠83とを備えている。なお、
図1及び
図7では、ネット81を簡略に示す。ネット支持枠83の左側部には取っ手84及び係合板85が設けられ、ネット支持枠83の右側部には蝶番86が設けられている。ネット支持枠83は、蝶番86を介してスピーカ保持体20に取り付けられている。すなわち、ネット支持枠83はスピーカ保持体20に対して開閉可能とされている。
【0055】
図9を参照して、係止装置30の構成及び作用について説明する。
係止装置30は、係合部材としての第1支持棒61及び第2支持棒62と、第1支持棒61のガイドとしての第1ガイド孔45b,46bと、第2支持棒62のガイドとしての第2ガイド孔45c,46c(
図5及び
図6参照)とを備える。
【0056】
係止装置30の作用は次の通り。
スピーカ保持体20が傾くとき、第1支持棒61は第1ガイド孔45b,46bに沿って移動し、第2支持棒62は第2ガイド孔45c,46cに沿って移動する。すなわち、第1ガイド孔45b,46bにおける第1支持棒61の位置及び第2ガイド孔45c,46cにおける第2支持棒62の位置は、スピーカ保持体20の角度(支持枠体40に対する角度)の大きさに対応する。
【0057】
スピーカ保持体20を設定角度に固定するときは、第1ガイド孔45b,46bにおいて第1支持棒61が設定位置(設定角度に対応する位置)に配置されるように、スピーカ保持体20を傾ける。そして、第1支持棒61が設定位置に配置されたとき、第1支持棒61の端部をそれぞれ右側支持板45及び左側支持板46にナット64で固定する。また、第2支持棒62の端部をそれぞれ右側支持板45及び左側支持板46にナット65で固定する。更に、回転軸棒60の端部をそれぞれ右側支持板45及び左側支持板46にナット63で固定する。このようにして、スピーカ保持体20の角度が設定される。
【0058】
図9を参照して、スピーカ保持体20の支持構造について説明する。
回転軸棒60は、スピーカ保持体20の長手方向DBの中間部に取り付けられている(
図7参照)。
【0059】
回転軸棒60の端部のそれぞれは、右側支持板45の支持孔45a(
図6参照)及び左側支持板46の支持孔46a(
図5参照)に挿通する。これら支持孔45a,46aは、支持枠体40の前後方向DYの中間部に設けられている。
【0060】
すなわち、この支持構造によれば、スピーカ保持体20の重心が支持枠体40の中央部に配置される。これにより、スピーカ保持体20の角度が変っても、スピーカ保持体20の荷重が支持枠体40の中心軸付近に加わる。このため、スピーカ保持体20の角度変更にともなうスピーカ装置1の重心の移動は小さい。これによって、スピーカ装置1の安定性が高くなる。
【0061】
次に、回転抑制装置50について説明する。
回転抑制装置50は、支持枠体40に設けられている(
図5参照)。回転抑制装置50は、右側支持板45に固定される右側調整装置51と、左側支持板46に固定されている左側調整装置52とを備えている。
【0062】
次に、左側調整装置52を示す。
左側調整装置52は、第1支持棒61(
図7参照)に係合する係合部53を有した支持棒54と、支持棒54を支持する支持部材55と、支持部材55に対して支持棒54の位置を調整するためのナット56とを備えている。なお、右側調整装置51は、左側調整装置52と同様の構造を有するため、以下、左側調整装置52について説明する。
【0063】
支持部材55は、左側支持板46に固定されている。
支持部材55には孔57が設けられている。この孔57に支持棒54の基端部54a(係合部53と反対側の端部)が挿通する。
【0064】
支持棒54の係合部53は円弧状に曲がっている。係合部53は、第1支持棒61の周面のうちの前面に接触する。すなわち、支持棒54は、第1支持棒61が前方に移動することを妨げるように、第1支持棒61を支持する。
【0065】
支持棒54の基端部54aには、ねじが形成されている。支持棒54は、ナット56で支持部材55に締結されている。支持棒54と支持部材55との締結はナット56により行われている。そして、支持部材55に対する支持棒54の位置が調整される。すなわち、支持部材55に対する支持棒54の位置の調整により、係合部53と第1支持棒61が互いに接触する接触部分PAと、基端部54aと支持部材55とが締結する締結部分PBとの間の距離(以下、「第1支持棒距離LX」という。)が調整され、これによって、第1支持棒61の位置が調整される。
【0066】
回転抑制装置50の角度調製機能について説明する。
スピーカ保持体20を設定角度に設定するとき、第1支持棒61の位置を調整する。第1支持棒61の位置の調整は、回転抑制装置50により行うことができる。すなわち、ナット56の移動により、第1支持棒距離LXの大きさを調整する。これにより、第1ガイド孔45b,46bに対し、第1支持棒61を設定位置を移動させることができる。このようにして、スピーカ保持体20の角度を調整する。このように、ナット56の移動により第1支持棒距離LXの大きさを調整することができるため、スピーカ装置1の設置後においても、スピーカ保持体20の角度の微調整を容易に行うことができる。
【0067】
回転抑制装置50は、角度調整機能のほか、スピーカ保持体20の角度の変化を抑制する機能(回転抑制機能)を有する。
スピーカ装置1を設置した後、地震などでスピーカ装置1に大きな力が瞬間的に加わったとき、スピーカ保持体20の角度がずれる可能性がある。これに対し、回転抑制装置50は、支持棒54により第1支持棒61を支持する。これにより、第1支持棒61の移動が抑制される。このため、仮に、第1支持棒61、第2支持棒62及び回転軸棒60を固定する各ナットが強い衝撃力により滑りスピーカ保持体20が前方に傾くという事態が生じたとしても、支持棒54により第1支持棒61が支持されるため、スピーカ保持体20が前方に傾くことが抑制される。
【0068】
本実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)本実施形態のスピーカ支持架台10は、
図1に示すように、スピーカ2を保持するスピーカ保持体20と、回転軸棒60を介してスピーカ保持体20を回転可能に支持する支持枠体40と、スピーカ保持体20を設定角度に維持する係止装置30とを備えている。
【0069】
すなわち、スピーカ支持架台10は、枠構造を有する支持枠体40によりスピーカ保持体20を支持する。枠構造の構造物は、枠構造を有しない支持構造物(例えば、回転軸棒60を支持する支持体を2本有し、かつこの2本の支持棒の基部が鋼材で連結されている支持構造物)に比べて変形しにくい。このため、枠構造を有しない支持構造物でスピーカ2を支持する場合に比べて、スピーカ支持架台10は、高い耐風圧・耐震性を有する。また、スピーカ支持架台10は係止装置30を有するため、スピーカ2の向きが変ることを抑制することができる。
【0070】
(2)本実施形態では、スピーカ支持架台10の回転軸棒60は、スピーカ保持体20の長手方向DBの中間部に取り付けられている。また、回転軸棒60の端部のそれぞれは、支持枠体40の前後方向DYの中間部に設けられた支持孔45a,46aで支持されている。
【0071】
すなわち、回転軸棒60を、スピーカ保持体20の重心または重心付近に設ける。そして、この回転軸棒60の端部をそれぞれ支持枠体40の前後方向DYの中間部に設けられた支持孔45a,46aで支持する。すなわち、スピーカ保持体20の重心を支持枠体40内に配置する。
【0072】
このため、スピーカ支持架台10の安定性が高くなる。例えば、支持枠体40の前方(支持枠体40の外側)にスピーカ2を取り付ける構造のスピーカ支持架台10では、スピーカ2の配置側に過大な荷重が加わり、スピーカ支持架台10がスピーカ2の配置側に傾く虞がある。これに対して、本実施形態では、スピーカ保持体20の重心付近に回転軸棒60を取り付け、かつ回転軸棒60を支持枠体40内に配置するため、スピーカ支持架台10が傾くことを抑制することができる。
【0073】
(3)本実施形態のスピーカ支持架台10は係止装置30を備えている。
係止装置30は、係合部材としての第1支持棒61及び第2支持棒62と、第1支持棒61及び第2支持棒62のそれぞれを案内する第1ガイド孔45b,46b及び第2ガイド孔45c,46cとを備える。すなわち、第1支持棒61及び第2支持棒62はこれらのガイド孔45b,46b,45c,46cに沿って移動するため、スピーカ保持体20を俯角方向DAに安定して回転させることができる。
【0074】
(4)本実施形態のスピーカ支持架台10の支持枠体40には、スピーカ保持体20の回転を抑制する回転抑制装置50が設けられている。
スピーカ装置1を設置した後、地震などでスピーカ装置1に大きな力が瞬間的に加わったとき、スピーカ保持体20の角度がずれる可能性がある。そこで、本実施形態では、スピーカ保持体20の回転を抑制する回転抑制装置50を設けている。これにより、スピーカ保持体20が設定角度よりも前方側に回転することを抑制することができる。すなわち、長期にわたって、支持枠体40に対してスピーカ保持体20を設定角度に維持することができる。
【0075】
(5)本実施形態のスピーカ支持架台10は、支持枠体40を下方から支える支持台90を備えている。記支持枠体40は、支持台90に対して回転可能に取り付けられている。このため、スピーカ2の向きを水平方向DHに回転させることができる。
【0076】
一方、支柱91の側周面に支持枠体40に取り付けることも考えられる。この構造のスピーカ支持架台10(以下、「比較構造のスピーカ支持架台10」という。)の場合、支持枠体40の背面側に支柱91が配置されるため、ドライバユニット3が支柱91に隠れる。このため、ドライバユニット3の交換が困難になる。これに対して、本実施形態の支持枠体40は、支持台90により下方から支えられている。すなわち、支持枠体40の背面側に、ドライバユニット3の取り外しを妨げるような部材は存在しない。このため、本実施形態のスピーカ支持架台10は、比較構造のスピーカ支持架台10に比べて、スピーカ2のドライバユニット3の取り外しが容易である。また、支持枠体40を下方から支持台90で支持する構造によれば、支柱91の重心上にスピーカ支持架台10の重心を一致させることができるため、構造物が安定する。
【0077】
(6)本実施形態のスピーカ支持架台10は、ボルトとナットによる締結により組み立てられている。
従来、この種の工作物を形成するときは、スピーカ装置1を寝かした状態(すなわち、ホーン4が上方に向く状態)で、溶接等で鋼材を接続し、全体を完成させる。この後、完成状態のスピーカ装置1を設置場所に運搬し、クレーン等の建設重機によりスピーカ装置1を立てる。
【0078】
しかし、この場合、スピーカ装置1の設置のためにはクレーン等の建設重機を必要とするため、クレーン等の建設重機が少ない孤島や大型クレーンが入ることができない山間部では、スピーカ装置1の設置が困難になるといった問題が生じる。これに対して、本実施形態のスピーカ支持架台10及びスピーカ装置1は、ボルト及びナットによる締結により組み立てることができる構造となっており、建設重機を用いないで人手で組み立て可能な構造となっているため、場所を選ばずに、スピーカ装置1を設置することができる。
【0079】
(7)本実施形態のスピーカ装置1は、上記構成のスピーカ支持架台10とスピーカ2とを有する。このため、スピーカ装置1は耐風圧・耐震性に優れる。また、スピーカ装置1のスピーカ2の向きは長期にわたって維持される。
【0080】
(変形例)
本技術は上記実施形態に例示した態様に限られるものではなく、例えば以下のように変更することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0081】
・上記実施形態のスピーカ支持架台10は、侵入防止ネット80を備えているが、この侵入防止ネット80を別の構成としてもよい。例えば、侵入防止ネット80に代えて、自動開閉扉を設けてもよい。自動開閉扉は、スピーカ2が駆動するときに開く。なお、鳥等の侵入頻度が少ない場合には、侵入防止ネット80を省略してもよい。
【0082】
・上記実施形態のスピーカ支持架台10は、複数台のスピーカ2を備えているが、スピーカ2の台数は1台でもよい。この場合においても、上記(1)の効果を奏することができる。
【0083】
・上記実施形態のスピーカ支持架台10では、係止装置30を構成する係合部材として、第1支持棒61及び第2支持棒62を採用しているが、係合部材は、この構成に限定されない。例えば、第1支持棒61及び第2支持棒62の構成に代えて、以下に示すように係合部材を4本の支持棒111〜114により構成してもよい。
【0084】
図10を参照して、係止装置30の変形例を説明する。
図10に示す構造体は、
図8に示す構造体と実質的に同じ機能を有する構造体である。
図10に示す構造体は、スピーカ保持体20と、回転軸棒60と、4本の支持棒111〜114を有する。ホーン4の後部4bを支持する2本のホーン後部保持部材23は、連結部材120により連結されている。これにより、スピーカ保持体20の強度を向上させている。支持棒111と支持棒112は、実施形態の第1支持棒61と同じ機能を有する。支持棒113と支持棒114は、実施形態の第2支持棒62と同じ機能を有する。
【0085】
・このように係止装置30の係合部材を4本の支持棒111〜114により構成する場合は、これら4本の支持棒111〜114を支持枠体40に固定し、更に、これら支持棒111〜114を案内するためのガイド孔をスピーカ保持体20に設ける構成とすることができる。例えば、スピーカ保持体20の左右の両側にガイド孔を設けた鋼板を取り付ける。このような構成の場合でも、実施形態における係止装置30と同様の効果を得ることができる。
【0086】
・係止装置30としては、更に別の装置を採用することもできる。
例えば、回転軸棒60にフランジを設けて、このフランジにガイドを形成する。更に、このガイドに嵌る係合部材を支持枠体40に取り付ける構造する。この構成の場合でも、実施形態における係止装置30と同様の効果を得ることができる。なお、この場合は、スピーカ保持体20を支持する部材が、回転軸棒60のみとなるため、回転軸棒60としては、本実施形態に採用される回転軸棒60よりも強度が高い回転軸棒60を採用する。
【0087】
・上記実施形態では、係止部材(第1支持棒61及び第2支持棒62)を案内するガイドとしてガイド孔を採用する。このような構成に対し、ガイド孔を別の構成とすることもできる。例えば、孔構造に変えて、溝構造を採用することもできる。
【0088】
・上記実施形態では、係止装置30の係合部材として、2本の支持棒(すなわち第1支持棒61及び第2支持棒62)を用いている。このような構成に代えて、第1支持棒61及び第2支持棒62のうちいずれか一方のみを係合部材として採用してもよい。この場合においても、係止装置30の機能は発揮する。
【0089】
・上記実施形態のスピーカ支持架台10は、支持枠体40を下方から支える支持台90を備えているが、支持枠体40を支持する支持台90の構成はこれに限定されない。例えば、スピーカ支持架台10を壁200(
図11参照)に取り付ける構造とすることもできる。
【0090】
図11に、壁取り付け用のスピーカ支持架台10を示す。
スピーカ支持架台10は、ブラケット140により壁200に取り付けられている。スピーカ支持架台10の支持枠体40の枠体上部41と枠体下部42には、ブラケット140と締結するブラケット取付部130が設けられている。