特許第5712196号(P5712196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5712196
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ暖房システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   F24D3/00 M
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-265831(P2012-265831)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-109429(P2014-109429A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2014年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 孝二
(72)【発明者】
【氏名】柿内 敦史
(72)【発明者】
【氏名】小川 純一
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−176848(JP,A)
【文献】 特開2003−50050(JP,A)
【文献】 特開2009−287895(JP,A)
【文献】 特開2010−71528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房端末が接続された暖房循環路と、
前記暖房循環路内に暖房熱媒体を循環させる暖房循環ポンプと、
ヒートポンプ循環路を有し、該ヒートポンプ循環路内を循環するヒートポンプ熱媒体を加熱するヒートポンプと、
前記暖房端末の上流側と下流側との間でそれぞれ前記暖房循環路に接続された暖房バイパス路と、
前記暖房バイパス路に設けた暖房バイパス弁と、
前記ヒートポンプ循環路と前記暖房循環路の途中に設けられて、前記ヒートポンプ循環路内を循環する前記ヒートポンプ熱媒体と前記暖房循環路内を循環する暖房熱媒体との間で熱交換を行うヒートポンプ熱交換器と、
前記暖房バイパス路の下流側で、且つヒートポンプ熱交換器の上流側の前記暖房循環路に設けたバッファ部と、
所定の暖房実行条件が成立しているときに、前記暖房循環ポンプと前記ヒートポンプを作動させることにより、前記暖房循環路内を循環する暖房熱媒体を加熱して前記暖房端末による暖房を行う暖房運転を実行する制御部と、
所定の暖房実行条件が不成立となり、前記ヒートポンプの運転開始から所定時間が経過していない場合は、前記暖房バイパス弁を開弁させて、前記ヒートポンプの運転を続行させ、前記所定時間経過後に前記ヒートポンプの運転を停止させる制御補正部とを備えたことを特徴とするヒートポンプ熱源システム。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートポンプ熱源システムにおいて、
前記暖房バイパス弁が流量調整弁であることを特徴とするヒートポンプ熱源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房端末が接続された暖房循環路内を循環する熱媒体を、ヒートポンプにより加熱して暖房を行うヒートポンプ暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば熱媒体として温水を使用して、床暖房機等の暖房端末が途中に接続された暖房循環路内を循環する温水を、ヒートポンプにより加熱することによって、暖房を行うヒートポンプ暖房システムが知られている。
【0003】
ヒートポンプ暖房システムは、給湯に使用される貯湯タンク内の湯水を循環させるタンク循環路とヒートポンプユニットのヒートポンプ循環路と暖房循環路とに接続された熱交換器を備え、暖房循環ポンプにより暖房循環回路内に温水を循環させた状態で、ヒートポンプユニットを作動させることによって、暖房端末に温水を供給して暖房を行っている。
【0004】
また、暖房端末における放熱量の制御方法として、温水式の暖房端末が接続された暖房循環路内を循環する温水を、ガス熱源機により加熱する暖房システムにおいて、所定の制御サイクルにおける暖房端末に温水を供給する期間(ON−duty期間)と温水供給を停止する期間(OFF−duty期間)の割合を変更して、各制御サイクルにおける暖房端末からの放熱量を調節するON/OFF−duty制御が用いられている。
【0005】
なお、特許文献1には、低温暖房水路にバイパス水路を設け、このバイパス回路に開閉弁を介装した温水供給システムが記載されている。この温水供給システムでは、追い焚き運転時に、バイパス回路の開放弁を開け、低温暖房水路の水が低温暖房機を通過しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−299941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記ヒートポンプ暖房システムにおいて、上記ON/OFF−duty制御を行って暖房端末からの放熱量(単位時間当たりの放熱量)を制御することが考えられる。
【0008】
しかし、ガス熱源機ではバーナの点火により直ちに温水の加熱を開始することができるのに対して、ヒートポンプをON(運転状態)からOFF(停止状態)に切替えるときには、ヒートポンプの特性によりある程度の時間が必要であり、その時間内はヒートポンプのON・OFFの切替えができないように設定されている。そのため、ヒートポンプの運転が一旦開始されると、少なくとも設定された所定時間が経過するまでは、ヒートポンプの運転が続行されてしまう。この場合、暖房端末からの放熱量を抑制するために、例えば、暖房端末入口の弁を閉弁させると、ヒートポンプが無負荷運転となり、各部分が高温となってヒートポンプが故障するなどの不具合が発生するおそれがある。
【0009】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、ヒートポンプが無負荷運転となり、ヒートポンプが故障するなどの不具合を防止することができるヒートポンプ暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明のヒートポンプ熱源システムは、暖房端末が接続された暖房循環路と、前記暖房循環路内に暖房熱媒体を循環させる暖房循環ポンプと、ヒートポンプ循環路を有し、該ヒートポンプ循環路内を循環するヒートポンプ熱媒体を加熱するヒートポンプと、前記暖房端末の上流側と下流側との間でそれぞれ前記暖房循環路に接続された暖房バイパス路と、前記暖房バイパス路に設けた暖房バイパス弁と、前記ヒートポンプ循環路と前記暖房循環路の途中に設けられて、前記ヒートポンプ循環路内を循環するヒートポンプ熱媒体と前記暖房循環路内を循環する暖房熱媒体との間で熱交換を行うヒートポンプ熱交換器と、前記暖房バイパス路の下流側で、且つ前記ヒートポンプ熱交換器の上流側の暖房循環路に設けたバッファ部と、所定の暖房実行条件が成立しているときに、前記暖房循環ポンプと前記ヒートポンプを作動させることにより、前記暖房循環路内を循環する暖房熱媒体を加熱して前記暖房端末による暖房を行う暖房運転を実行する制御部と、所定の暖房実行条件が不成立となり、前記ヒートポンプの運転開始から所定時間が経過していない場合は、前記暖房バイパス弁を開弁させて、前記ヒートポンプの運転を続行させ、前記所定時間経過後に前記ヒートポンプの運転を停止させる制御補正部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
所定の暖房実行条件が不成立になっても、ヒートポンプの特性により、ヒートポンプの運転開始から所定時間が経過するまでは、ヒートポンプの運転を続行させる必要がある。しかし、この場合、例えば、暖房端末入口の弁を閉弁させると、ヒートポンプが無負荷運転となり、ヒートポンプが故障するなどの不具合が発生するおそれがある。
【0012】
そこで、本発明においては、暖房バイパス路に暖房バイパス弁を設けた構成としたうえで、所定の暖房実行条件が不成立の場合であっても、ヒートポンプの運転開始から所定時間が経過するまでは、暖房バイパス弁を開弁させて、ヒートポンプの運転を続行させる。これにより、暖房循環路の暖房熱媒体は低温暖房バイパス路を介して流れ、ヒートポンプに流入するので、ヒートポンプが故障するなどの不具合が発生するおそれがない。
【0013】
さらに、本発明においては、暖房バイパスの下流側で、且つヒートポンプ熱交換器の上流側の暖房循環路にバッファ部を設けた構成としている。そのため、ヒートポンプが故障するなどの不具合が発生することを確実に防止することができる。
【0014】
また、本発明において、前記暖房バイパス弁は流量調整弁であることが好ましい。この場合、暖房バイパス弁で暖房バイパス路を流通する暖房熱媒体の流量を制御することによって、バッファ部の貯留容量を低減させ、バッファ部から無駄に放熱される熱量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ヒートポンプ熱源システムの構成図。
図2】暖房運転のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。図1を参照して、本実施形態のヒートポンプ熱源システムは、貯湯ユニット10、ヒートポンプユニット50、ガス熱源ユニット80、及び、ヒートポンプ熱源システムの全体的な作動を制御するコントローラ150を備えている。
【0017】
貯湯ユニット10は、貯湯タンク11、給水管12、給湯管13等を備えている。貯湯タンク11は内部に湯水を保温して貯め、高さ方向に略等間隔でタンク温度センサ14〜17が設けられている。貯湯タンク11の底部には、作業者の手動操作により開弁される排水弁18が設けられている。
【0018】
給水管12は、一端が給水口30を介して図示しない水道に接続され、他端が貯湯タンク11の下部に接続されて、貯湯タンク11内の下部に水を供給する。給水管12には、貯湯タンク11の内圧が過大になることを防止するための減圧弁19と、貯湯タンク11から給水管12への湯水の流出を阻止するための逆止弁20が設けられている。
【0019】
給水管12は、タンク混合弁21を介して給湯管13に連通しており、タンク混合弁21により、貯湯タンク11から給湯管13に供給される湯と給水管12から給湯管13に供給される水との混合比が変更される。給水管12には、給水管12内の水の温度を検出する水温度センサ22と、給水管12を流通する水の流量を検出する水流量センサ23と、給湯管13から給水管12への湯水の流出を阻止するための逆止弁24とが設けられている。
【0020】
給湯管13は、一端が給湯口31に接続され、他端が貯湯タンク11の上部に接続されている。貯湯タンク11の上部に貯められた湯水は、給湯口31を介して図示しない給湯栓(台所、洗面所、浴室のカランやシャワー等)に供給される。給湯管13には、給湯管13から貯湯タンク11への湯水の流入を阻止する逆止弁25と、給湯管13内の湯水の温度を検出する湯温度センサ26と、給湯管13を流通する湯水の流量を検出する湯流量センサ27とが設けられている。
【0021】
さらに、給湯管13には、給水管12の分岐管との接続部よりも下流側で、ガス熱源ユニット80に接続されたバイパス管33(バイパス往管33a、バイパス戻管33b)が介設されている。給湯管13のバイパス往管33aとの接続部とタンク混合弁21の間には、湯温度センサ28が設けられ、給湯管13のバイパス戻管33bとの接続部と給湯口31の間に、混合湯温度センサ32が設けられている。また、ヒートポンプユニット50と接続されたタンク循環路41には、貯湯タンク11からタンク循環路41に供給される湯水の温度を検出するタンク下温度センサ34が設けられている。
【0022】
また、給湯管13のバイパス往管33aとの接続部とバイパス戻管33bとの接続部の間に、バイパス往管33aに供給される湯水の流量を調整するためのバイパス制御弁29が設けられている。
【0023】
ヒートポンプユニット50及びガス熱源ユニット80と接続された暖房循環路40には、暖房循環路40からヒートポンプユニット50に戻る温水の温度を検出する暖房ヒートポンプ戻り温度センサ45と、ヒートポンプユニット50により加熱されて暖房循環路40に出湯される温水の温度を検出する暖房ヒートポンプ往き温度センサ46と、ヒートポンプユニット50をバイパスするヒートポンプバイパス路42と暖房循環路40の下流側の接続箇所の直下流部に設けられて、暖房循環路40からの温水とヒートポンプバイパス路42からの温水とが混合された温水の温度を検出する暖房混合温度センサ47とが設けられている。
【0024】
さらに、暖房循環路40側に流通する温水とヒートポンプバイパス路42側に流通する湯水の割合を調節するための暖房側混合弁48が設けられている。また、暖房循環路40の暖房側混合弁48とヒートポンプ熱交換器55との間にバッファタンク49が設けられている。
【0025】
貯湯ユニット10に備えられた各センサの検出信号は、コントローラ150に入力される。また、コントローラ150から出力される制御信号によって、タンク混合弁21、バイパス制御弁29、及び暖房側混合弁48の作動が制御される。
【0026】
次に、ヒートポンプユニット50は、貯湯タンク11内の湯水をタンク循環路41を介して循環させて加熱すると共に、暖房循環路40内を流通する温水(本発明の暖房熱媒体に相当する)を加熱するものである。ヒートポンプユニット50は、ヒートポンプ循環路52により接続された蒸発器53、圧縮機54、ヒートポンプ熱交換器55(凝縮機)、及び膨張弁56により構成されたヒートポンプ51を有している。
【0027】
蒸発器53は、ファン60の回転により供給される空気とヒートポンプ循環路52内を流通する熱媒体(ハイドロフルオロカーボン(HFC)等の代替フロン、二酸化炭素等、本発明のヒートポンプ熱媒体に相当する)との間で熱交換を行う。圧縮機54は、蒸発器53から吐出された熱媒体を圧縮して高圧・高温とし、ヒートポンプ熱交換器55に送出する。膨張弁56は、圧縮機54で加圧された熱媒体の圧力を開放する。
【0028】
除霜弁61は膨張弁56をバイパスして設けられており、圧縮機54から送出される熱媒体により蒸発器53を除霜する。ヒートポンプ循環路52には、ヒートポンプ循環路52内を流通する熱媒体の温度を検出する熱媒体温度センサ62,63,64,65が設けられている。
【0029】
また、ヒートポンプ熱交換器55には、その内部の雰囲気温度を検出する雰囲気温度センサ57が設けられている。そして、蒸発器53には、蒸発器53に吸入される空気の温度(外気温度)を検出する外気温度センサ67が設けられている。
【0030】
ヒートポンプ熱交換器55はタンク循環路41と接続され、圧縮機54により高圧・高温とされた熱媒体と、タンク循環路41内を流通する湯水との熱交換により、タンク循環路41内を流通する湯水を加熱する。タンク循環路41には、貯湯タンク11内の湯水をタンク循環路41を介して循環させるためのタンク循環ポンプ66が設けられている。
【0031】
貯湯タンク11内の下部に貯まった湯水は、タンク循環ポンプ66によりタンク循環路41に導かれ、ヒートポンプ熱交換器55で加熱されて貯湯タンク11の上部に戻される。なお、タンク循環路41のヒートポンプ熱交換器55の上流側及び下流側には、タンク循環路41内を流通する湯水の温度を検出する湯温度センサ68,69が設けられている。
【0032】
また、ヒートポンプ熱交換器55は暖房循環路40と接続され、圧縮機54により高圧・高温とされた熱媒体と、暖房循環路40内を流通する温水との熱交換により、暖房循環路40内を流通する温水を加熱する。
【0033】
ヒートポンプユニット50に備えられた各センサの検出信号は、コントローラ150に入力される。また、コントローラ150から出力される制御信号によって、圧縮機54、タンク循環ポンプ66、ファン60の作動が制御される。
【0034】
次に、ガス熱源ユニット80は、バイパス管33から供給される湯水と、暖房循環路40内を流通する温水を加熱するものであり、給湯用の第1バーナ71と第1バーナ71により加熱される第1熱交換器72を有する給湯補助熱源機70、暖房・追焚き用の第2バーナ76と第2バーナ76により加熱される第2熱交換器77を有する暖房補助熱源機75、給水管85、給湯管86、及び追焚き熱交換器87等を備えている。
【0035】
第1バーナ71及び第2バーナ76は、図示しないガス供給管から燃料ガスが供給されると共に、図示しない燃焼ファンにより燃焼用空気が供給される。コントローラ150は、第1バーナ71及び第2バーナ76に供給する燃料ガスと燃焼用空気の流量を調節して、第1バーナ71及び第2バーナ76の燃焼量を制御する。
【0036】
第1熱交換器72は、給水管85及び給湯管86に連通しており、第1バーナ71の燃焼熱によって、給水管85から供給される水を加熱して給湯管86に出湯する。給水管85は、一端が貯湯ユニット10のバイパス往管33aに接続され、バイパス往管33aを介して水が供給される。給湯管86は、一端が貯湯ユニット10のバイパス戻管33bに接続されており、バイパス戻管33bを介して給湯口31から湯が供給される。
【0037】
給水管85には、上流側から順に、止水弁93と水量センサ88が設けられている。給水管85と給湯管86は、バイパス管89により連通しており、バイパス管89にはバイパス管89の開度を調節するための水量調節弁90が設けられている。給湯管86の第1熱交換器72の下流側、及びバイパス管89との接続部分の下流側には、給湯管86内を流通する湯の温度を検出する給湯温度センサ91,92が、それぞれ設けられている。
【0038】
この構成により、貯湯タンク11から給湯管13に供給される湯の温度が設定給湯温度よりも低いとき(湯切れ状態)に、バイパス往管33aを介して給水管85に供給される水が第1熱交換器72により加熱されて湯となり、バイパス管89からの水と混合されて、給湯管86及びバイパス戻管33bを介して給湯口31から供給されるようになっている。
【0039】
また、給湯管86は、湯張り管100により、浴槽101に接続された風呂循環路102に連通している。湯張り管100には、湯張り管100を開閉する湯張り弁103と、風呂循環路102から給湯管86への湯の流入を阻止する逆止弁104が設けられている。湯張り弁103を開弁することにより、給湯管86から湯張り管100及び風呂循環路102を介して浴槽101に湯を供給することができる。
【0040】
風呂循環路102には、浴槽101内の湯水を風呂循環路102を介して循環させる風呂循環ポンプ105と、追焚き熱交換器87とが設けられている。追焚き熱交換器87は、追焚き往管107及び追焚き戻管108を介して暖房循環路40に接続されている。追焚き往管107には、追焚き往管107を開閉する追焚き弁109が設けられている。
【0041】
コントローラ150は、風呂循環ポンプ105を作動させて、浴槽101内の湯水を風呂循環路102を介して循環させた状態で、追焚き弁109を開弁し、後述する暖房循環ポンプ111を作動させて暖房循環路40から追焚き往管107及び追焚き戻管108を介して追焚き熱交換器87に温水を循環供給することによって、浴槽101内の湯水を追焚きする。
【0042】
第2熱交換器77は、暖房循環路40の途中に設けられており、第2バーナ76の燃焼熱によって、暖房循環路40内を流通する温水を加熱する。暖房循環路40は、床暖房機200(本発明の暖房端末に相当する)及び温風暖房機210と接続されて温水による熱を供給する。
【0043】
暖房循環路40には、上述したヒートポンプ熱交換器55及び暖房補助熱源機75の第2熱交換器77と、シスターン110と、暖房循環ポンプ111とが設けられている。また、暖房循環路40は、暖房循環ポンプ111と第2熱交換器77の間の箇所で低温暖房路112と高温暖房路130とに分岐している。
【0044】
高温暖房路130には温風暖房機210が接続され、低温暖房路112には床暖房機200が接続されている。高温暖房路130と低温暖房路112は、温風暖房機210及び床暖房機200の下流側で合流している。高温暖房路130の温風暖房機210の接続部と第2熱交換器77の間の箇所で高温暖房路130から分岐してシスターン110に連通する暖房バイパス路113が設けられ、暖房バイパス路113には、暖房バイパス路113の開度を調節する暖房バイパス調節弁114が設けられている。
【0045】
暖房循環路40の暖房循環ポンプ111の出口付近には、暖房循環ポンプ111から送出される温水の温度を検出する戻り温水温度センサ115が設けられている。また、暖房循環路40の第2熱交換器77の出口付近には、第2熱交換器77から送出される温水の温度を検出する往き温水温度センサ116が設けられている。
【0046】
低温暖房路112は、熱動弁120を介して床暖房機200に接続されており、熱動弁120の開閉によって、低温暖房路112から床暖房機200への温水の供給と停止が切替えられる。また、高温暖房路130から温風暖房機210への温水の供給と停止は、温風暖房機210に備えられた熱動弁211の開閉により行われる。床暖房機200を操作するための床暖房リモコン201には、床暖房機200が設置された室内の温度を検出する室温センサ202が接続されている。
【0047】
床暖房機200及び温風暖房機210の戻り口には暖房戻り路117が接続されており、暖房戻り路117の下流端は暖房側混合弁48に接続されている。また、低温暖房路112には熱動弁120の上流側と床暖房機200の下流側との間の箇所を接続する低温暖房バイパス路118(本発明の暖房バイパス路に相当する)が設けられ、低温暖房バイパス路118には、低温暖房バイパス路118の開度を調節する低温暖房バイパス弁119(本発明の暖房バイパス弁に相当する)が設けられている。
【0048】
床暖房リモコン201とコントローラ150は、通信可能に接続され、床暖房リモコン201により設定された目標暖房温度のデータと、室温センサ202による検出温度のデータが、コントローラ150に送信される。
【0049】
熱源リモコン160は、コントローラ150と通信可能に接続されている。熱源リモコン160には、ヒートポンプ熱源システムの運転状態や運転条件の設定状態等を表示する表示器161と、ヒートポンプ熱源システムの運転条件等を設定する操作部162とが備えられている。
【0050】
ヒートポンプ熱源システムの使用者は、熱源リモコン160の操作部162を操作することによって、貯湯タンク11内の湯水の沸き上げ指示、給湯口31からの給湯温度(設定給湯温度)、浴槽101への給湯温度(設定湯張り温度)等を設定することができる。
【0051】
ガス熱源ユニット80に備えられた各センサの検出信号はコントローラ150に入力される。また、コントローラ150から出力される制御信号によって、第1バーナ71、第2バーナ76、水量調節弁90、止水弁93、湯張り弁103、風呂循環ポンプ105、追焚き弁109、暖房循環ポンプ111、暖房バイパス調節弁114、低温暖房バイパス弁119、及び熱動弁120の作動が制御される。
【0052】
コントローラ150は、図示しないCPU,メモリ等により構成された電子回路ユニットであり、メモリに保持されたヒートポンプ熱源システムの制御用プログラムを、CPUで実行することによって、ヒートポンプ熱源システムの全体的な作動を制御する機能を果し、暖房制御部151及びタンク制御部152として機能する。このように暖房制御部151及びタンク制御部152として機能するコントローラ150は、本発明の制御部、及び制御部の制御結果を補正する制御補正部の構成を含んでいる。
【0053】
暖房制御部151は、温風暖房機210及び床暖房機200の暖房運転を実行する。タンク制御部152は、貯湯タンク11内の湯水を、熱源リモコン160により設定されている給湯温度(設定給湯温度又は設定湯張り温度)に応じた沸かし上げ温度まで加熱する沸かし上げ運転を実行する。そして、コントローラ150には、タイマ153が接続されている。
【0054】
次に、図2に示したフローチャートに従って、暖房制御部151による床暖房機200の暖房運転(床暖房運転)の実行処理について説明する。
【0055】
STEP1で、タンク制御部152は、室温センサ202が検出した室内温度から床暖房リモコン201で設定された目標暖房温度を減じて得た温度差ΔTから熱動弁120のON/OFFのduty比を求める。このON/OFF−dutyは、コントローラ150のメモリに格納された、温度差ΔTと暖房循環路40への温水供量とに対応したduty比を示すマップから求める。さらに、タンク制御部152は、暖房ヒートポンプ戻り温度センサ45の検出温度(戻り温水温度)Trの設定値(戻り温水設定温度)Trsを、コントローラ150のメモリに格納された所定の温度、例えば60℃に設定する。
【0056】
そして、STEP2で、暖房制御部151及びタンク制御部152は、STEP1で求めたduty比に基き、貯湯ユニット10、ヒートポンプユニット50及びガス熱源ユニット80の運転を開始する。
【0057】
そして、STEP3で、タンク制御部152は、ON期間であるか否かを判断する。
【0058】
ON期間である場合(STEP3:YES)には、STEP4に進み、タンク制御部152は、熱動弁120をON(開弁)すると共に、暖房循環ポンプ111を動作させる。
【0059】
次に、STEP5で、タンク制御部152は、湯温度センサ68が検出した湯水の温度(ヒートポンプ入口温度)Tiが、ヒートポンプ作動設定温度Tsより高いか否かを判断する。ヒートポンプ作動設定温度Tsは、コントローラ150のメモリに格納された所定の温度、例えば35℃である。
【0060】
ヒートポンプ入口温度Tiがヒートポンプ作動設定温度Tsより高い場合(STEP5:YES)には、STEP6に進み、暖房制御部151は暖房補助熱源機75を運転させる。
【0061】
一方、ヒートポンプ入口温度Tiがヒートポンプ作動温度Ts以下である場合(STEP5:NO)には、STEP7に進み、タンク制御部152はヒートポンプ51を運転させる。なお、戻り温水温度Trが戻り温水温度閾値Trsと比較して非常に低い場合には、STEP7で、暖房制御部151は給湯補助熱源機70を運転させてもよい。また、後述するSTEP11又はSTEP14でヒートポンプ51の運転を停止させたときにスタートさせたタイマ153がタイムアップをしていない場合、タイマ153がタイムアップした後に、ヒートポンプ51の運転を開始させる。
【0062】
そして、ヒートポンプ51を運転させたとき、タイマ153をスタートさせる。なお、STEP3に戻ってSTEP4,5を介してSTEP7に達したとき、タイマ153はそのまま続行させる。
【0063】
次に、STEP8で、タンク制御部152は、戻り温水温度Trが戻り温水設定温度Trsより低いか否かを判断する。
【0064】
戻り温水温度Trが戻り温水設定温度Trsより低い場合(STEP8:YES)には、STEP3に戻る。
【0065】
一方、戻り温水温度Trが戻り温水設定温度Trs以上である場合(STEP8:NO)には、STEP9に進み、暖房補助熱源機75又は給湯補助熱源機70が運転中である場合には、暖房制御部151はこれらの運転を停止させる。
【0066】
そして、STEP10に進み、ヒートポンプ51の運転開始時にスタートさせたタイマ153が所定時間M(例えば3分)をタイムアップしている否かを判断する。
【0067】
タイマ153がタイムアップしている場合(STEP10:YES)には、STEP11に進み、ヒートポンプ51が運転中である場合、タンク制御部152はヒートポンプ51の運転を停止させる。そして、ヒートポンプ51の運転を停止させたとき、タイマ153をリセットした後、再スタートさせる。
【0068】
一方、ヒートポンプ51の運転開始時にスタートしたタイマ153がタイムアップしていない場合(STEP10:NO)には、タイムアップした後にヒートポンプ51の運転を停止させる必要があるので、ヒートポンプ51の運転を継続させる。これは、ヒートポンプ51の特性によって、運転開始後運転を停止する場合、及び運転停止後運転を再開する場合に、所定時間Mを要するためである。
【0069】
他方、OFF期間である場合(STEP3:NO)には、STEP12に進み、暖房補助熱源機75又は給湯補助熱源機70が運転中である場合には、暖房制御部151はこれらの運転を停止させる。さらに、タンク制御部152は、熱動弁120をOFF(閉弁)させる。
【0070】
次に、STEP13で、タンク制御部152は、ヒートポンプ51の運転開始時にスタートさせたタイマ153がタイムアップしている否かを判断する。
【0071】
タイマ153がタイムアップしている場合(STEP13:YES)には、STEP14に進み、タンク制御部152はヒートポンプ51の運転を停止させ、タイマ153をリセットした後、再スタートさせる。
【0072】
一方、タイマ153がタイムアップしていない場合(STEP13:NO)には、ヒートポンプ51の運転を停止させることができない。このような場合は、床暖房機200の暖房負荷が低いときに発生することがある。
【0073】
この場合、STEP15に進み、タンク制御部152は低温暖房バイパス弁119を開弁させる。これにより、低温暖房路112の温水は床暖房機200を流通せず、床暖房機200の温度が必要以上に上昇することを防止することができる。
【0074】
その後、STEP16に進み、タイマ153がタイムアップした場合(STEP16:YES)には、STEP17に進み、タンク制御部152は低温暖房バイパス弁119を閉弁させる。その後、さらにSTEP14に進み、タンク制御部152はヒートポンプ51の運転を停止させ、タイマ153をリセットした後、スタートさせる。
【0075】
一方、ヒートポンプ51の運転開始時にスタートさせたタイマ153がまだタイムアップしていない場合(STEP16:NO)には、STEP18に進み、タンク制御部152は、OFF期間であるか否かを判断する。
【0076】
OFF期間である場合(STEP18:YES)には、タイマ153がタイムアップする(STEP16:YES)まで待機して、STEP17に進む。
【0077】
一方、OFF期間でなくON期間となっていた場合(STEP18:NO)には、ヒートポンプ51の運転を継続したまま、STEP4に進む。
【0078】
なお、図2のフローチャートには示してしないが、床暖房リモコン201から床暖房を停止させる旨の指示が入力された場合、又は、熱源リモコン160からヒートポンプ熱源システムの運転を停止させる旨の指示が入力された場合なども、ヒートポンプ51の運転を停止させる。この場合も、ヒートポンプ51の運転開始時にスタートしたタイマ153がタイムアップした後に、ヒートポンプ51の運転を停止させる必要がある。
【0079】
そこで、タイマ153がタイムアップしていない場合、ヒートポンプ51の運転を継続させ、STEP12と同様に熱動弁120を閉弁させると共に、STEP15と同様に低温暖房バイパス弁119を開弁させる。そして、タイマ153がタイムアップしてからSTEP17と同様に低温暖房バイパス弁119を閉弁させ、その後、ヒートポンプ51の運転を停止させる。
【0080】
ただ単に、熱動弁120を閉弁させるだけでは、ヒートポンプ51が無負荷運転となり、ヒートポンプ51が故障するなどの不具合が発生するおそれがある。そこで、本実施形態では、STEP12で熱動弁120を閉弁させると共に、STEP15で低温暖房バイパス弁119を開弁させている。そのため、低温暖房路112の温水は低温暖房バイパス路118を介して流れるので、ヒートポンプ51が故障するなどの不具合が発生するおそれがない。
【0081】
さらに、低温暖房バイパス路118の下流側で、且つヒートポンプ熱交換器55の上流側の暖房循環路40にバッファタンク49が設けられている。そのため、ヒートポンプ51が故障するなどの不具合が発生することを確実に防止することができる。
【0082】
ここで、ヒートポンプ51が無負荷運転を確実に回避するように、バッファタンク49の貯留容量を設定することが好ましい。
【0083】
具体的には、例えば、ヒートポンプ51の最小出力が16.7kcal/分であり、ヒートポンプ51の最小運転時間、すなわち前記所定時間Mが3分であるとすると、STEP18に達するまでのヒートポンプ51の最小運転時間内に発生する出力の最大値は、16.7×3=50.1kcalである。
【0084】
そして、戻り温水設定温度Trsが35℃以下の温度で設定されており、床暖房リモコン201での設定温度は一般的に40℃が下限値であって、許容範囲が±5℃であるため、45℃(=40℃+5℃)まで加熱可能であり、最低10℃の温度上昇を吸収できる。よって、バッファタンク49の貯留容量は、50.1/10=約5.0L以上に設定すればよい。なお、この容量は、バッファタンク49単独の貯留容量でもよく、低温暖房バイパス路118の下流端からヒートポンプ熱交換器55入口までの、低温暖房路112を含む暖房循環路40の管路容積を含むものでもよい。本実施形態では、バッファタンク49、及び低温暖房バイパス路118の下流端からヒートポンプ熱交換器55入口までの暖房循環路40が、本発明のバッファ部に相当する。ただし、管路が長くなるほど放熱が増加するので、バッファタンク49の貯留容量を大きくして暖房循環路40の管路を短くするほうが省エネルギーの点で優れている。
【0085】
なお、低温暖房バイパス弁119は開弁状態と閉弁状態との切替えが可能なものであればよく、開閉弁に限定されない。例えば、低温暖房バイパス弁119は流量制御弁であってもよく、この場合、低温暖房バイパス弁119で低温暖房バイパス路118を流通する流量を制御することによって、バッファタンク49の貯留容量を低減させ、バッファタンク49から無駄に放熱される熱量を少なくすることができる。
【0086】
また、本実施形態では、バッファタンク49を暖房側混合弁48とヒートポンプ熱交換器55入口との間の暖房循環路40に設けているが、これに限定されない。バッファタンク49を、例えば、低温暖房バイパス路118の下流端と暖房側混合弁48との間の暖房循環路40に設けてもよい。
【0087】
また、本実施形態では、貯湯タンク11内の湯水をヒートポンプ51により加熱する構成と、貯湯タンク11の湯切れが生じたときに給湯補助熱源機70により加熱する構成とを備えたヒートポンプ熱源システムを示したが、これらの給湯用の構成を備えていない場合であっても、暖房端末に供給される温水をヒートポンプにより加熱するヒートポンプ暖房システムであれば、本発明の適用が可能である。
【0088】
なお、本実施形態では、本発明の暖房端末として床暖房機200を例に説明したが、温風暖房機210を本発明の暖房端末として、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0089】
10…貯湯ユニット、11…貯湯タンク、40…暖房循環路(バッファ部)、41…タンク循環路、42…ヒートポンプバイパス路、48…暖房側混合弁、49…バッファタンク(バッファ部)、50…ヒートポンプユニット、51…ヒートポンプ、52…ヒートポンプ循環路、55…ヒートポンプ熱交換器、70…給湯補助熱源機、75…暖房補助熱源機、80…ガス熱源ユニット、111…暖房循環ポンプ、112…低温暖房路(バッファ部)、118…低温暖房バイパス路(暖房バイパス路)、119…低温暖房バイパス弁(暖房バイパス弁)、150…コントローラ(制御部、制御補正部)、151…暖房制御部、152…タンク制御部、153…タイマ、200…床暖房機。
図1
図2