【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
実 施 例 1
粘着シートの製造:
攪拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、アクリル酸メトキシエチル(MEA)60質量部、アクリル酸ブチル(BA)31質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)5質量部、アクリルアミド(AM)2質量部、メチルエチルケトン(MEK)100質量部を仕込み、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温した後、5時間反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンで不揮発分濃度40質量%に希釈し、(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。
【0036】
上記で得られた(メタ)アクリル系ポリマー溶液の固形分100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(TD−75:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体:綜研化学(株)製)0.4質量部を添加し、粘着剤を得た。この粘着剤をポリエチレンテレフタレート基材上に乾燥後の厚さが175μmになるように塗工し、80℃の乾燥機で2分間乾燥し溶剤を除去した。次いで粘着剤層面に剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせ、23℃、65%RHで7日間エージングを行い粘着シートを得た。
【0037】
実 施 例 2
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを7質量部に変更し、AMをジエチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)2質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0038】
参 考 例
粘着シートの製造:
実施例1において、MEAを25質量部に変更し、HEAを7質量部に変更し、BAを61質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0039】
実 施 例 4
粘着シートの製造:
実施例1において、MEAを90質量部に変更し、BAを1質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0040】
実 施 例 5
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを5質量部に変更し、BAを33質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0041】
実 施 例 6
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを9質量部に変更し、BAを29質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0042】
実 施 例 7
粘着シートの製造:
実施例1において、AMを0.2質量部に変更し、BAを32.8質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0043】
実 施 例 8
粘着シートの製造:
実施例1において、AMを4.5質量部に変更し、BAを28.5質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0044】
実 施 例 9
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを9質量部に変更し、BAを29質量部に変更し、連鎖移動剤であるN−ドデシルメルカプタンを0.005質量部添加して反応し、反応終了後不揮発分濃度を50%に調製した以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0045】
実 施 例 10
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを9質量部に変更し、BAを29質量部に変更し、MEKを95質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0046】
実 施 例 11
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを4質量部に変更し、BAを34質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0047】
実 施 例 12
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを0.5質量部に変更し、BAを37.5質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0048】
実 施 例 13
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを1質量部に変更し、BAを37質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0049】
実 施 例 14
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを2質量部に変更し、BAを36質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0050】
実 施 例 15
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを7質量部に変更し、AMをn−ビニルピロリドン(n−VP)2質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0051】
実 施 例 16
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを7質量部に変更し、AMをアクリロイルモルホリン(ACMO)に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0052】
実 施 例 17
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを7質量部に変更し、TD−75をTPA−100(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体:旭化成(株)製)0.5質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0053】
実 施 例 18
粘着シートの製造:
実施例1において、BAを33質量部に変更し、TD−75をTPA−100(旭化成(株)製)0.5質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0054】
実 施 例 19
粘着シートの製造:
実施例1において、MEAを90質量部に変更し、BAを1質量部に変更し、TD−75をTPA−100(旭化成(株)製)0.5質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0055】
比 較 例 1
粘着シートの製造:
実施例1において、MEAを10質量部に変更し、HEAを7質量部に変更し、BAを81質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0056】
比 較 例 2
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを0質量部に変更し、BAを38質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0057】
比 較 例 3
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを12質量部に変更し、BAを26質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0058】
比 較 例 4
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを7質量部に変更し、AMを0質量部に変更し、BAを33質量部に変更し、得られた(メタ)アクリル系ポリマー溶液に、更に架橋促進剤であるEDP−300((株)ADEKA製)を0.1質量部添加する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0059】
比 較 例 5
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを7質量部に変更し、AMを7質量部に変更し、BAを26質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0060】
比 較 例 6
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを7質量部に変更し、BAを30質量部に変更し、BAにアクリル酸(AA)を1質量部添加する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0061】
比 較 例 7
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを7質量部に変更し、連鎖移動剤であるN−ドデシルメルカプタンを0.01質量部添加する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0062】
比 較 例 8
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを7質量部に変更し、MEKを80質量部に変更をする以外は実施例1と同様にし、反応終了後不揮発分濃度を30%に調製して粘着剤および粘着シートを製造した。
【0063】
比 較 例 9
粘着シートの製造:
実施例1において、TD−75を金属キレート架橋剤であるM−5AT(綜研化学(株)製)0.4質量部に変更する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0064】
比 較 例 10
粘着シートの製造:
実施例1において、HEAを4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1質量部に変更し、AMを0質量部に変更し、BAを39質量部に変更し、反応終了後不揮発分濃度を30%に調製し、更に架橋促進剤であるEDP−300(旭電化(株)製)を0.1重量添加する以外は実施例1と同様にして粘着剤および粘着シートを製造した。
【0065】
試 験 例 1
粘着剤および粘着シートの物性測定:
実施例1〜
2、4〜19
、参考例および比較例1〜10で得られた粘着剤の重量平均分子量を下記測定方法により測定し、更に、分散度を下記方法により算出した。また、粘着剤シートの湿熱白化性、耐熱発泡性、ITO腐食性、塗工性および作業性を下記方法により評価した。それらの結果を表1に示した。
【0066】
<不揮発分>
精秤したブリキシャーレ(n1)に(メタ)アクリル系ポリマー溶液を1g程度入れ、合計重量(n2)を精秤した後、105℃で3時間加熱した。その後、このブリキシャーレを室温のデシケータ内に1時間静置し、次いで再度精秤し、加熱後の合計重量(n3)を測定した。得られた重量測定値(n1〜n3)を用いて下記式から不揮発分を算出した。
[数1]
不揮発分(%)=100×[加熱後重量(n3−n1)/加熱前重量(n2−n1)]
【0067】
<重量平均分子量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求めた。
(測定条件)
装置:HLC−8120(東ソー(株)製)
カラム:G7000HXL(東ソー(株)製)
GMHXL(東ソー(株)製)
G2500HXL(東ソー(株)製)
サンプル濃度:1.5mg/ml(テトラヒドロフランで希釈)
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/min
カラム濃度:40℃
【0068】
<湿熱白化性>
イソプロピルアルコールで拭いたポリカーボネート板に、50mm×60mmにカットした粘着シートを貼り付け、50℃×(5.1×10
5)Paで20分間オートクレーブ処理を行った。次いで、1時間室温で静置した後、60℃、90%RH環境下に500時間置き、23℃、65%RHで1時間静置した後、粘着剤層の白化をヘイズメーターHM−150(村上色彩研究所(株)製)を用いて、JIS K 7361に準拠してヘイズを測定し、その値により評価した。評価の基準は以下の通りである。
(評価) (内容)
○ :ヘイズが1%以下
△ :ヘイズが1%を超え2%以下
× :ヘイズが2%を超える
【0069】
<耐熱発泡性>
イソプロピルアルコールで拭いたポリカーボネート板に、50mm×60mmにカットした粘着シートを貼り付け、50℃×5atmで20分間オートクレーブ処理を行った。次いで、1時間室温で静置した後、(1)80℃環境下に500時間置き、または、(2)80℃、90%環境下に500時間置き、23℃、65%RHで1時間静置した後、粘着剤層の発泡をそれぞれ目視で確認した。評価の基準は以下の通りである。
(評価) (内容)
◎ :目視では粘着剤層に気泡は確認できない
○ :目視でわずかに気泡が確認できる
△ :実用可能な程度であるが、目視ではっきりと気泡が確認できる。
× :大きな気泡が確認できる。または、粘着剤層が基材または被着体から浮いている。
【0070】
<ITO腐食性>
10mm×100mmにカットしたITO蒸着PETフィルムに10mm×60mmにカットした粘着シートを貼り付け、50℃×5atmで20分間オートクレーブ処理を行った。次いで、1時間室温で静置した後、60℃、90%RH環境下に500時間置き、23℃、65%RHで1時間静置した後、ITO蒸着PETフィルムの抵抗を測定し、試験前の抵抗値と比較した((試験後の抵抗値)/(試験前の抵抗値))。評価の基準は以下の通りである。
(評価) (内容)
○ :(試験後の抵抗値)/(試験前の抵抗値)が110%未満
△ :(試験後の抵抗値)/(試験前の抵抗値)が110%〜130%未満
× :(試験後の抵抗値)/(試験前の抵抗値)が130%以上
【0071】
<塗工性>
製造例において製造した(メタ)アクリル系ポリマーに表に示された硬化剤を添加し、乾燥後の膜厚が175μmになるように塗工した際の塗工面の気泡の有無を目視で確認した。評価の基準は以下の通りである。
(評価) (内容)
○ :目視で気泡が確認できる
× :目視で気泡が確認できない
【0072】
<作業性>
製造例において製造した(メタ)アクリル系ポリマーに表に示された硬化剤を添加し、乾燥後の膜厚が175μmになるように塗工し、80℃の乾燥機で溶剤を揮発させた際の溶剤が揮発するまでの時間を測定した。評価の基準は以下の通りである。
(評価) (内容)
○ :4分未満で溶剤が揮発した
× :溶剤が揮発するまで4分以上かかった
【0073】
【表1】
【0074】
以上の結果より、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(a1)、架橋性官能基を有するモノマー(a2)、水素結合性モノマー(a3)を特定割合で共重合させて得られる、Mw5万以上40万未満のカルボキシル基含有モノマーを実質的に含まないアクリル系ポリマーと、イソシアネート系架橋剤(b)を含有する粘着剤は、耐湿熱白化性、耐熱発泡性、更にITO電極を腐食することなく、厚膜塗工の作業性にも優れていた。
【0075】
それに対して、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(a1)の共重合量の少ない比較例1では耐湿熱白化性に劣り、架橋性官能基を有するモノマー(a2)の共重合量が本願範囲から逸脱する比較例2、3では、耐熱発泡性に劣る結果となっている。また、水素結合性モノマー(a3)の共重合量が本願範囲から逸脱する比較例4、5では本願分子量範囲において耐熱発泡性が不十分となり、水素結合性モノマー(b)を含有せず、分子量が本願範囲を超える比較例10でも、同様に耐熱発泡性に劣り、更に、分子量が高いことにより水分散性能が劣るため耐湿熱白化性が十分ではなく、また、厚膜塗工の作業性にも劣っている。更に、本願分子量範囲を逸脱している比較例7、8では、分子量の低い比較例7では耐熱発泡性を不十分であり、分子量の高い比較例8では厚膜塗工の作業性が劣っている。また、カルボキシル基をアクリル系ポリマー中に有する比較例7ではITOを腐食する結果となっており、イソシアネート系架橋剤(TD−75)に変えて、金属架橋剤(M−5AT)を添加している比較例9では、耐熱発泡性に劣る結果となっている。