(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5712238
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】硬貨入出金装置
(51)【国際特許分類】
G07D 9/00 20060101AFI20150416BHJP
G07D 1/06 20060101ALI20150416BHJP
G07G 1/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
G07D9/00 328
G07D1/06
G07G1/00 331A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-43431(P2013-43431)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-174561(P2014-174561A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2014年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 慶一
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−059307(JP,A)
【文献】
特開2006−309468(JP,A)
【文献】
特開2011−054052(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0101723(US,A1)
【文献】
特開平05−120511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
G07D 1/06
G07G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入金され収納部へ送られる硬貨の通路である搬送路と、
前記搬送路に設けられて硬貨の正否または金種を判別する判別部と、
前記判別部の判別に応じて選択的に硬貨を前記搬送路から除くリジェクト部と、
前記リジェクト部が除いた硬貨が戻される先である返却先と、
前記搬送路における前記判別部の下流側で分岐して前記返却先に通じる戻し搬送路と、
前記戻し搬送路の硬貨を前記返却先へ送る戻し駆動部と、
前記搬送路を経由して前記収納部に収納された硬貨が払い出される先である払出先と、
前記戻し搬送路に着脱自在に設けられ、前記戻し駆動部により送られる硬貨の移動方向を変更し該硬貨を前記払出先へ導く切替部と、
を備える硬貨入出金装置。
【請求項2】
前記切替部は、硬貨が突き当たる面であって前記戻し駆動部により送られる硬貨の移動方向を前記払出先へと向かって曲げるガイド面と、前記ガイド面によって移動方向を曲げられた硬貨を前記ガイド面の下流側で前記戻し搬送路を外れる位置から前記払出先まで導く分岐スライダと、を有する
請求項1に記載の硬貨入出金装置。
【請求項3】
前記返却先は、自装置前面に開口を有し、
前記切替部は、前記開口を塞ぐ前板を有し前記開口に着脱自在の引出し型部材を備え、
前記ガイド面が前記引出し型部材に設けられている
請求項2に記載の硬貨入出金装置。
【請求項4】
前記切替部は、被検知部を備え、
前記被検知部の有無を検知する検知部と、前記検知部の検知に応じて入出金に付随する処理を変更する対応処理部と、をさらに備える
請求項1〜3のいずれか1つに記載の硬貨入出金装置。
【請求項5】
前記戻し駆動部は、ベルトコンベヤ型である
請求項1〜4のいずれか1つに記載の硬貨入出金装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、硬貨入出金装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の硬貨入出金装置は、入金に際して金種や正常な硬貨であるかなどを判別し、異常な硬貨や変形などにより機械的な判別が困難である硬貨をリジェクト硬貨として戻す。リジェクト硬貨は、返却口や引出しなどの専用口、或いは釣銭受皿へと戻される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
硬貨入出金装置の使用者は概ね店員であるが、セルフレジの場合には客が使用者となる。また、店員が硬貨入出金装置を取り扱うキャッシュレーンでは処理の速さが重視されるが、セルフレジの場合には、操作の容易さが重要である。これらの違いにより、キャッシュレーンとセルフレジとでは、硬貨入出金装置の処理に違う部分がある。具体例としては、リジェクト硬貨を戻したときの処理の違いがある。セルフレジの硬貨入出金装置は、リジェクト硬貨を客に戻して、代わりの硬貨の入金を求める。これに対し、キャッシュレーンの硬貨入出金装置は、店員が入力する金額に基づいて釣銭を出金する。この場合のリジェクト硬貨は専用口に出され、店員によって代わりの硬貨に交換、入金される。
【0004】
店員が使用者であるキャッシュレーンでは、リジェクト硬貨の戻し先を釣銭受皿にすると、リジェクト硬貨を取り除くまで釣銭の払い出しに処理を進めることができなくなる。よって、硬貨の戻し先は専用口とする方が都合がよい。
これに対して、客が使用者であるセルフレジの場合には、操作に不慣れな客がリジェクト硬貨に気づかなかったり取り忘れたりすることがないように、リジェクト硬貨の戻し先を釣銭受皿とした方が都合がよい。
このように、従来、硬貨入出金装置のリジェクト硬貨の戻し先の適否は、想定使用者によって異なる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の硬貨入出金装置は、搬送路と、判別部と、リジェクト部と、返却先、戻し搬送路と、戻し駆動部と、払出先と、切替部と、を備える。搬送路は、入金され収納部へ送られる硬貨の通路である。判別部は、搬送路に設けられて硬貨の正否または金種を判別する。リジェクト部は、判別部の判別に応じて選択的に硬貨を搬送路から除く。返却先は、リジェクト部が除いた硬貨が戻される先である。戻し搬送路は、搬送路における判別部の下流側で分岐して返却先に通じる。戻し駆動部は、戻し搬送路の硬貨を返却先へ送る。払出先は、搬送路を経由して収納部に収納された硬貨が払い出される先である。切替部は、戻し搬送路に着脱自在に設けられ、戻し駆動部により送られる硬貨の移動方向を変更し該硬貨を払出先へ導く。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態の釣銭機の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の釣銭機の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態の戻し搬送路およびその周辺部材の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態の切替部材の外観を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態の切替部材とその周囲との位置関係を示す平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の釣銭機が備える制御部と各部との電気的接続を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態について図面を用いて説明する。
図1および
図2は、釣銭機1の外観を示す斜視図であって、
図1は右角を手前にしたもの、
図2は左角を手前にしたものである。釣銭機1は、硬貨入出金装置の一例である。
【0008】
釣銭機1は、奥行が長い直方体の筐体2を備え、筐体2の上面の手前側の右側に入金口3を、筐体2の前面左側に出金口4を、筐体2の前面右側にリジェクト口5を、備えている。入金口3は、筐体2内へ入れる硬貨を受け入れる口である。出金口4は、筐体2外へ出す硬貨すなわち釣銭を払い出す口である。リジェクト口5は、返却先の一例であって、筐体2外へ通じる開口を有する。
【0009】
釣銭機1は、さらに、出金口4の下から手前に突出した受皿6と、筐体2内に収納部(不図示)とを備えている。受皿6は、出金口4が払い出した釣銭を受け止める。該受皿6は、払出先の一例である。収納部は、入金口3が受け入れた硬貨を収納する。
【0010】
図3は、戻し搬送路12(後述)およびその周辺部材の外観を示す斜視図である。釣銭機1は、上記構成に加えてさらに、搬送面7、硬貨センサ8、リジェクト部9、およびベルトコンベヤ10を備えている。
【0011】
搬送面7は、板金材の表面であり、入金口3から収納部までの硬貨の通路である搬送路11の底となる。搬送面7の上には、エンドレスベルト(不図示)が硬貨搬送方向に沿って延在している。エンドレスベルトは、搬送モータ43(
図6、後述)によって回転駆動されて搬送面7上の硬貨を運搬する。硬貨センサ8は、判別部の一例であって、硬貨の正否や金種を判別する。
【0012】
リジェクト部9は、落下孔91と、開閉蓋92と、ソレノイド93とを備える。リジェクト部9は、選択的にソレノイド93を駆動させて開閉蓋92を動かし、落下孔91を開閉する。これにより、リジェクト部9は、硬貨センサ8が正常でないとした硬貨や金種が判別できなかった硬貨を、落下孔91から落下させて搬送路11から除く。
【0013】
ベルトコンベヤ10は、戻し駆動部の一例であって、戻し搬送路12の底となる。戻し搬送路12は、リジェクト部9からリジェクト口5までの硬貨の通路であって、搬送路11における硬貨センサ8の下流側で分岐してリジェクト口5に通じている。ベルトコンベヤ10は、戻しモータ44(
図6、後述)によって回転駆動されて硬貨を運搬する。
【0014】
ここで、
図3では、ベルトコンベヤ10を、一本のエンドレスベルト10aを一対のローラ10b、10cに掛け渡したものとして図示しているが、実施にあたっては、例えば2つのベルトコンベヤが連なって戻し駆動部を実現していてもよいし、さらには、ベルトコンベヤ以外の駆動機構で戻し駆動部を実現していてもよい。
【0015】
釣銭機1はさらに、切替部材20を備えている。
図4は、切替部材20の外観を示す斜視図である。
図5は、切替部材20とその周囲との位置関係を示す平面図である。切替部材20は、リジェクト口5に差し込まれることにより着脱自在に取り付けられる引出し型の部材であって、リジェクト硬貨の戻し先を変更する。
【0016】
切替部材20の前面は、リジェクト口5に差し込まれたときにリジェクト口5を塞ぐ前板21となっている。前板21には、引き出す際に把持する引手22が設けられている。前板21の裏面には、奥へ伸びた板状の部材であってベルトコンベヤ10上に乗るガイド板23が取り付けられている。
【0017】
ガイド板23の奥側は、ガイド面24となっている。ガイド面24は戻し搬送路12を斜めに横切る曲面である。ガイド面24は、受皿6に近い方の端部が手前、遠い方の端部が奥となるよう、搬送路12を斜めに横切っている。
【0018】
ベルトコンベヤ10上の硬貨は、ガイド面24に突き当たりガイド面24に沿って移動する。これにより、ベルトコンベヤ10上の硬貨の移動方向は変更され、受皿6へと向かって曲げられる。ガイド面24は、硬貨を分岐スライダ13へ導く。分岐スライダ13は、ガイド面24の下流側から受皿6までの硬貨の通路であって、戻し搬送路12から分岐して受皿6に通じている。分岐スライダ13は、受皿6側に向かって硬貨が滑り降りるように下っている。
【0019】
ここで、分岐スライダ13および切替部材20により、切替部(一例)が実現される。
【0020】
ガイド面24の上流側端部近くのガイド板23の側面には、切り欠25が設けられている。切替部材20がリジェクト口5内に収まった状態で、切り欠25に、筐体2内のベルトコンベヤ10近傍に設けられた係合部(不図示)が、弾性的に嵌まり込む。これにより、切替部材20が振動などによりリジェクト口5から脱落することが防止される。
【0021】
切替部材20は、ガイド板23の手前側に、被検知片26を備えている。被検知片26は、被検知部の一例である。被検知片26は、小さな板状の部材で、ガイド板23上に立てて設けられる。一方、リジェクト口5の上方には、
図3に示すように、被検知片26を検知する検知部30が設けられている。検知部30は、一例としては光センサであって、スリット31内の被検知片26の有無を検知し、被検知片26の有無に応じた信号を、制御部40(
図6、後述)に出力する。
【0022】
図6は、釣銭機1が備える制御部40と各部との電気的接続を示すブロック図である。釣銭機1は、上記構成に加えてさらに、制御部40と対応処理部41と表示部42とを備える。表示部42は、例えば液晶パネルであって、使用者への各種メッセージを表示する。
【0023】
制御部40は、不図示のCPUと、RAMと、ROMやHDDなどの記憶手段とを備え、CPUが記憶手段に記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、上記各部(硬貨センサ8、表示部42、搬送モータ43、戻しモータ44、およびソレノイド93)を統括制御する。また、制御部40は、プログラムを実行することにより、対応処理部41の一例として機能する。
【0024】
対応処理部41は、検知部30から入力された信号に応じて被検知片26の有無、すなわち切替部材20がリジェクト口5内にあるか否かを判断する。そしてこの判断結果に応じて、対応処理部41は、入出金に付随する処理を変更する。入出金に付随する処理の例としては、表示部42へのメッセージ表示がある。対応処理部41は、リジェクトに際して表示部42に表示するメッセージの内容を変更する。
【0025】
例えば、使用者が客であるセルフレジの場合には、切替部材20を用い、リジェクト硬貨の戻し先を受皿6にするので、表示部42には、「釣銭受皿に認識できない硬貨を返却しました。代わりの硬貨を入金してください。」などと表示させ、操作に不慣れな客がリジェクト硬貨を釣銭と勘違いしないようにする。また、使用者が店員であるキャッシュレーンの場合には、切替部材20を用いず、リジェクト硬貨をリジェクト口5に戻すので、表示部42には、簡潔に「リジェクト有」などと表示させ、リジェクト硬貨の後処理が必要であることを店員に示す。
【0026】
このような構成の釣銭機1において、硬貨は、入金口3から投入されると、搬送路11を通って収納部に収納され、出金口4から受皿6に払い出される。また、硬貨は、搬送路11で、硬貨センサ8による判別で異常があった硬貨はリジェクト硬貨として戻される。リジェクト硬貨は、リジェクト口5が開放されていればリジェクト口5に戻され、リジェクト口5が切替部材20で閉塞されていれば受皿6に戻される。表示部42には、リジェクト先に応じたメッセージが表示される。該メッセージにより、使用者に、リジェクト硬貨の認識を促す。
【0027】
このように、本実施形態によれば、切替部材20をリジェクト口5に取り付けるか否かによって、リジェクト硬貨の戻し先を変更することができる。
【0028】
なお、被検知部および検知部は、上記実施形態に限らず、検知部が被検知部の有無を検知することにより切替部材20がリジェクト口5に取り付けられているか否かを判別できればよい。
また、本実施形態では触れていないが、リジェクト口5に蓋を設けてもよい。この蓋の形態としては、例えば、リジェクト口5を塞ぐ方形の板材の上辺を、リジェクト口5内上部に回動自在に取り付ける。この取付位置は、リジェクト口5に切替部材20を差し込んだ場合に、蓋がはねあがって切替部材20に引っかからない位置とするのが好適である。
さらに、本実施形態では、払出先を受皿6としているが、実施にあたっては、払出先は、切替部によって戻し搬送路上の硬貨の移動方向を変更することにより導くことができる位置であればよく、受皿でなくともよい。
そして、本実施形態では、切替部を切替部材20および分岐スライダ13により実現しているが、実施にあたっては、この形態に限定されるものではなく、切替部材20や分岐スライダ13の形状も実施形態のものに限定されない。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1…釣銭機、2…筐体、3…入金口、4…出金口、5…リジェクト口、6…受皿、
7…搬送面、8…硬貨センサ、9…リジェクト部、10…ベルトコンベヤ、
91…落下孔、92…開閉蓋、93…ソレノイド、
11…搬送路、12…戻し搬送路、13…分岐スライダ、
20…切替部材、24…ガイド面、25…切り欠、26…被検知片、
30…検知部、31…スリット、
40…制御部、41…対応処理部、42…表示部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特許第4786966号公報
【特許文献2】特開2007−279908号公報
【特許文献3】特許第5021703号公報