特許第5712305号(P5712305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5712305標的適用の磁場を利用する統合高周波発生器システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5712305
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】標的適用の磁場を利用する統合高周波発生器システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/60 20060101AFI20150416BHJP
   G01R 33/38 20060101ALI20150416BHJP
   G01R 33/30 20060101ALI20150416BHJP
   G01N 24/12 20060101ALI20150416BHJP
   G01R 33/48 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   G01N24/10 520A
   G01N24/06 510Z
   G01N24/02 510D
   G01N24/12 510L
   G01N24/08 510Y
【請求項の数】25
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-549390(P2013-549390)
(86)(22)【出願日】2011年12月29日
(65)【公表番号】特表2014-502730(P2014-502730A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】US2011002011
(87)【国際公開番号】WO2012096644
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2013年9月6日
(31)【優先権主張番号】12/930,584
(32)【優先日】2011年1月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513175479
【氏名又は名称】ブリッジ・12・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジャガディッシュウォー・アール・シリギリ
(72)【発明者】
【氏名】トールステン・マリー
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−253530(JP,A)
【文献】 特開2009−201545(JP,A)
【文献】 特開2007−021008(JP,A)
【文献】 特表2004−512537(JP,A)
【文献】 特表2002−501006(JP,A)
【文献】 特開2008−130292(JP,A)
【文献】 特表2007−538244(JP,A)
【文献】 特表2008−534976(JP,A)
【文献】 特開昭63−006725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/00−24/14
G01R 33/20−33/64
H01J 23/00−25/78
A61B 5/055
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴磁石の磁場中に適用ゾーンおよび高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンを有する前記磁気共鳴磁石と、
前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンに配置され、前記磁気共鳴磁石の磁場を利用して高周波(マイクロ波/テラヘルツ)放射を発生させる高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器とを含む、標的適用の磁場を利用する統合高周波発生器システム。
【請求項2】
前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンは、前記磁気共鳴磁石の主磁場中にある、請求項1に記載の統合システム。
【請求項3】
前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンは、前記磁気共鳴磁石のフリンジ磁場中にある、請求項1に記載の統合システム。
【請求項4】
前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンでの磁場プロファイルを変更するための補助磁場源をさらに含む、請求項1に記載の統合システム。
【請求項5】
前記補助磁場源は、前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器上に取り付けられた巻線を含む、請求項4に記載の統合システム。
【請求項6】
前記補助磁場源は、前記磁気共鳴磁石中に取り付けられた巻線を含む、請求項4に記載の統合システム。
【請求項7】
前記補助磁場源は、少なくとも1つの永久磁石から成る、請求項4に記載の統合システム。
【請求項8】
前記補助磁場源は、前記磁気共鳴磁石での変更点を含む、請求項4に記載の統合システム。
【請求項9】
前記磁気共鳴磁石は、少なくとも1つの巻線を含み、前記変更点は、前記磁気共鳴磁石の巻線のアンペアターンの変化を含む、請求項8に記載の統合システム。
【請求項10】
前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器から前記適用ゾーンまで延びている高周波(マイクロ波/テラヘルツ)伝送線路をさらに含む、請求項3に記載の統合システム。
【請求項11】
前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)放射は、DNPを行うために使用される、請求項4に記載の統合システム。
【請求項12】
前記補助磁場源は、前記適用ゾーンでDNPプロセスを可能にするために前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器からの高周波(マイクロ波/テラヘルツ)放射を同期させるように前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンでの前記磁場プロファイルの値を変更する、請求項4に記載の統合システム。
【請求項13】
前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器は、電子ビームの集束、輸送および前記電子ビームとVEDの回路との間の相互作用の少なくとも1つのために磁気共鳴システムの磁場を利用する、請求項1に記載の統合システム。
【請求項14】
前記磁気共鳴磁石は、穴を含み、前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンは、前記穴にある、請求項1に記載の統合システム。
【請求項15】
磁気共鳴磁石の磁場中に適用ゾーンおよび高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンを有する前記磁気共鳴磁石と、前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンでの磁場プロファイルを変更するための前記磁場中の補助磁場源とを含む磁気共鳴磁石装置。
【請求項16】
前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンは、前記磁気共鳴磁石の主磁場中にある、請求項15に記載の磁気共鳴磁石装置。
【請求項17】
前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンは、前記磁気共鳴磁石のフリンジ磁場中にある、請求項15に記載の磁気共鳴磁石装置。
【請求項18】
前記補助磁場源は、前記磁気共鳴磁石中に取り付けられた巻線を含む、請求項15に記載の磁気共鳴磁石装置。
【請求項19】
前記補助磁場源は、前記磁気共鳴磁石での変更点を含む、請求項15に記載の磁気共鳴磁石装置。
【請求項20】
前記磁気共鳴磁石は、少なくとも1つの巻線を含み、前記変更点は、前記磁気共鳴磁石の巻線のアンペアターンの変化を含む、請求項19に記載の磁気共鳴磁石装置。
【請求項21】
前記マイクロ波発生器から前記適用ゾーンまで延びているマイクロ波伝送線路をさらに含む、請求項17に記載の磁気共鳴磁石装置。
【請求項22】
高周波(マイクロ波/テラヘルツ)放射は、DNPを行うために使用される、請求項18に記載の磁気共鳴磁石装置。
【請求項23】
前記補助磁場源は、前記適用ゾーンでDNPプロセスを可能にするために前記マイクロ波発生器からの高周波(マイクロ波/テラヘルツ)放射を同期させるように前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンでの前記磁場プロファイルの大きさを増加させる、請求項18に記載の磁気共鳴磁石装置。
【請求項24】
前記マイクロ波発生器は、電子ビームの集束、輸送または前記電子ビームとVEDの回路との間の相互作用の少なくとも1つのために磁気共鳴システムの磁場を利用する、請求項15に記載の磁気共鳴磁石装置。
【請求項25】
前記磁気共鳴磁石は、穴を含み、前記高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンは、前記穴にある、請求項15に記載の磁気共鳴磁石装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、この参照により本明細書に組み込まれる、35U.S.C.§§119、120、363、365、ならびに37C.F.R.§1.55および§1.78の下で2011年1月11日に出願された米国特許出願第12/930,584号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、標的適用の磁場を利用する統合高周波発生器システムに関し、一実施形態では動的核分極(DNP)を備える核磁気共鳴(NMR)もしくは磁気共鳴イメージング(MRI)システムなどの磁気共鳴システム、または電子常磁性/スピン共鳴(EPR/ESR)システムでの使用に適しているそのようなものに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロ波およびテラヘルツ放射は、半導体に基づく固体装置、電子ビームと電磁回路との間の相互作用に基づく真空電子装置(VED)またはレーザーなどのフォトニクスに基づく線源によって発生させることができる。ミリ波(30〜300GHz)領域では、VEDに基づく線源が、固体およびフォトニクスに基づく装置と比較するときそれらの高パワー、広帯域幅、効率および堅牢性のために支配的である。VEDの前述の利点はまた、テラヘルツ(300GHz〜3THz)領域、特に300GHz〜1THz間でも有効である。電磁スペクトルのこの部分では、VEDに基づく装置は、固体装置よりも3から4桁分高いピークおよび平均パワーを提供することができ、かなり小型であり、フォトニクスに基づく装置よりも約1桁分高効率である。
【0004】
防衛、通信、工業処理および科学的応用の分野でのミリ波の応用は、十分周知である。最近、様々な種類のテラヘルツ源の出現が、上記の応用ならびに特に医用イメージング、治療および他の生物工学的応用の分野でのテラヘルツ源の応用にかなりの関心を引き起こした。
【0005】
電磁構造体(回路)に結合された電子ビームを使用してマイクロ波およびミリ波周波数を発生させる技術は、周知である。VEDは、真空外層中に次の主要構成部品を有する真空管である。他の金属および化合物を含浸させたタングステンなどの金属からの熱電子放出かまたは電界放出によって電子ビームを発生させる電子銃。高圧電源によって提供されるDCエネルギーを回路中でマイクロ波またはテラヘルツ放射に変換するための手段として使用される電子ビーム。電子ビームは、運動エネルギーを高圧電源から獲得し、この運動エネルギーを相互作用構造体中でマイクロ波/テラヘルツ波に移動させる。磁気システムは、電子銃からの電子ビームをマイクロ波が発生されるまたは増幅される相互作用領域に集束させて輸送するために使用される。ジャイロトロンのようないくつかの部類のVEDでは、磁気システムはまた、電子ビームと回路との間の相互作用でも役割を果たす。ほとんどすべてのVEDでは、強い磁場が、電子ビームに固有の空間力に打ち勝つことによってビームを集束させるために必要である。ジャイロトロンでは、必要とされる磁場は、電子ビームのサイクロトロン周波数に正比例し、それは、電磁構造体とのその相互作用にとって重要である。ジャイロトロンは、サイクロトロン周波数の基本モードかまたはより高い高調波で動作可能である。より高い高調波は、高調波次数に応じて、動作のためにより低い磁場が必要とされるという利点を有する。電子ビームでの運動エネルギーのマイクロ波またはテラヘルツ波への変換は、相互作用構造体中で起こる。構造体の共鳴周波数は、特定周波数またはある範囲の周波数で電子ビームと相互作用するように同調される。相互作用構造体はまた、空洞または共鳴装置とも呼ばれる。相互作用構造体は、基本のもしくはより高次の横電場(TE)または横磁場(TM)モードで動作する。そのようなモードは、マイクロ波管から効率良く引き出すことができないまたは低損失で長距離にわたって輸送することができない。従って、内部モード変換器がしばしば、動作モードを異なるモードに、典型的には自由空間ガウス様モードに変換するために用いられる。内部モード変換器は、標準的な導波管設計技法または準光学的方法に基づいて設計できる。VEDの本体は、高真空に保持される。窓は、VEDで発生させたマイクロ波またはテラヘルツ放射を管から外へ引き出すことを可能にする。そのエネルギーのいくらかをマイクロ波またはテラヘルツ場に与えた後の使用済み電子ビームは、アノードへと移動し続け、典型的にはコレクターと呼ばれる銅構造体に集められる。コレクターは、使用済みビームの残りのエネルギーを吸収するために空冷かまたは水冷され、そのエネルギーは、コレクターで熱として放散される。ジャイロトロンなどの、電子ビームと電磁回路との間の速波相互作用に基づく装置については、少なくとも0.036テスラ/GHzの磁場が、基本電子サイクロトロン動作に必要とされる。マイクロ波およびテラヘルツ周波数では、数テスラ(T)の磁場が、必要である。この磁場は典型的には、大きくかつ高価な超電導磁石によって提供される。
【0006】
テラヘルツ放射は、磁気共鳴分光法の多くの分野で、例えば電子常磁性/スピン共鳴(EPR/ESR)分光法で使用される。EPR分光法では、常磁性システムが、強い磁場中でのそれらのマイクロ波吸収によって調べられる。高磁場では、固体線源は、ほんの少しのパワーしか供給せず、高パワーマイクロ波源が、望まれる。動的核分極(DNP)は、数桁分のNMR信号強度の上昇を提供するために電子スピンリザーバーの大きなボルツマン分極を利用する技法であり、それ故にNMR実験でのデータ収集速度を劇的に増加させる。このことは、DNPを液体および固体状態NMR実験の固有の低感度を克服するための有用な方法にし、その方法は、素粒子物理学から構造生物学に及ぶ応用で大きな関心がある。臨床イメージングでは、この方法は、磁気共鳴イメージング(MRI)でのコントラストおよび分解能を改善するのに特に有用となり得る。パラ水素誘起分極(PHIP)、ヘリウム、キセノンまたはクリプトンなどの希ガスの分極および半導体の光学的励起核分極などの、いくつかの他の技術は、NMR実験で信号強度を増加させるために利用できる。しかしながら、特にバイオマクロ分子またはバイオ固体の構造決定分野においては、マイクロ波駆動DNP強化NMR分光法が、最も汎用的な方法であるように思われる。
【0007】
DNPは、新しい科学分野ではないがしかし現在高パワーマイクロ波およびテラヘルツ源の出現とともに復興を経験している。最初のDNP実験は、1950年代初期に低磁場で行われたがしかし最近までその技法は、高周波数、高パワーテラヘルツ源の欠如のために適用可能性が限定されていた。DNP実験では、分極剤の大きな電子分極は、EPR遷移と共鳴するテラヘルツ(マイクロ波)照射によって周囲の核(典型的には陽子、H)に移送される。DNPに必要とされる電子スピンシステムは、内因性かまたは外因性常磁性システムとすることができる。今まで、高磁場DNP実験のための大部分の分極剤は、交差効果(CE)をDNP機構として用いるTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)部分に基づいている。もし常磁性分極剤のEPRスペクトルの均一線幅(δ)および不均一広さ(Δ)が、核ラーモア周波数(ω01)と比べてより大きいならば、CE機構が、利用されてもよい。根底にある機構は、ω01だけ分離されたラーモア周波数ω0S1およびω0S2を持つ2つの電子を含む二段階プロセスである(整合条件)。DNP強化核分極はそのとき、スピン拡散を介してバルク全体にわたって分散する。
【0008】
4つの構成要素が、DNP強化NMR分光法を行うために必須であり、すなわち高パワー、高周波数テラヘルツ源と、低損失伝送線路と、試料のテラヘルツおよびラジオ周波数同時照射を可能にするNMRプローブと、高熱電子分極の源としての分極剤(上で簡潔に述べられた)とである。
【0009】
DNP実験の効率は、テラヘルツ照射によって誘起される試料での磁場(B)に強く依存する。この磁場の強さBは、
【0010】
【数1】
【0011】
に比例し、ただしPは、マイクロ波パワーであり、Qは、空洞の品質係数である。典型的には、DNP実験は、共鳴構造体(空洞)なしで行われ、それ故に品質係数Qは、小さい(<5)。十分に強いB場を生成するためには、ジャイロトロンなどの高パワーテラヘルツ源が、必要とされる。
【0012】
現在のDNP設定では、マイクロ波/テラヘルツ源は、磁気共鳴システムから完全に独立しており、追加の超電導磁石または従来の高磁場電磁石もしくは永久磁石システムを必要とする。マイクロ波/テラヘルツ放射は、伝送線路を使用して試料に供給される。しばしば主磁石および超電導ジャイロトロン磁石は、どんな干渉も避けるために十分に分離されなければならない。この背景技術および残りの開示全体にわたって、磁気共鳴システムは、すべてのそのような装置、例えば核磁気共鳴(NMR)、電子常磁性共鳴(EPR)、磁気共鳴イメージング(MRI)・・・を含むことを意図されている。
【0013】
低損失マイクロ波/テラヘルツ伝送線路は、線源(例えば、ジャイロトロン)からのテラヘルツ放射を試料に効率良く供給することを必要とされる。最小の伝送損失を確保するために、波形金属導波管が、使用されてもよい。波形金属導波管のHE11モードでの動作は、無視できるほど小さい抵抗損失をもたらし、それ故に長距離にわたる高効率伝送を可能にする。準HE11モードは、内部モード変換器を使用してVEDの内部で生成でき、その放射は、伝送線路に直接結合できる。さらに、固体DNP実験では、HE11モードは、試料を直接照らすために使用できる。DNP強化固体NMR実験については、低温、マジック角回転(MAS)NMRプローブが、必要とされる。極低温度は、軸受けおよびタービンガスとして低温窒素を使用するかまたは試料冷却のための分離可変温度ラインを使用することによって達成される。85Kに至るまでの温度は、この手法を使用して到達できる。もしより低い温度が必要であるならば、直接液体Heデュワーからの噴出ガスのような低温Heガスが、冷却に使用できる。低温でさえラジオ周波数(RF)回路を同調する可能性を維持するために、伝送線路回路が、典型的には用いられる。ここですべての可変同調素子は、室温でプローブの外部に位置する。テラヘルツ放射は、回転子軸に沿ってかまたは直角に導入できる。後者の場合には、放射は、RFコイルの卷回間の回折を通じて試料に入る。そのような設定では、試料回転に起因して、試料の大部分は、均一にテラヘルツ放射にさらされ、それ故にDNPプロセスの効率を増加させる。プローブを磁石から取り外すことなく試料を変えるために、試料排出システムが、プローブに追加されてもよい。
【0014】
従来の手法には多数の欠点がある。磁気共鳴実験を行うために使用される磁石(主磁石)およびマイクロ波発生器のための磁石の両方は、大きくかつ高価であり、それぞれ極低温冷却を必要とする。マイクロ波導波管は、マイクロ波発生器からのテラヘルツエネルギーを主磁石中に位置する試料エリアに供給するために必要であり、磁場干渉を防止するために主磁石とマイクロ波発生器磁石との間に適正な距離を調整するのに十分な長さでなければならない。ジャイロトロンでかなりのビームパワー(例えば、>2kW)が、必要とされ、その変換は、特に第二高調波動作では比較的効率が悪く、マイクロ波出力は、たった10〜20ワットだけである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
標的適用の磁場を利用する統合高周波発生器システムを提供することが、本発明の目的である。
【0016】
磁気共鳴システムで使用するためのそのようなシステムを提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0017】
そのような磁気共鳴システムでの使用に適している、改善された磁気共鳴装置およびマイクロ波発生器を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0018】
DNPとともに使用するのに適している、そのような改善された磁気共鳴装置および高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0019】
DNP動作のために容易にかつ簡単に適合される、そのような磁気共鳴装置を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0020】
より小さく、より小型で、より効率の良い、そのような高周波発生器を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、磁石の数およびコスト、全システムのサイズまたはフットプリントを低減し、マイクロ波導波管を短縮しまたは取り除き、必要なパワーを低減し、効率を増加させ、コレクターのサイズおよびVED高周波発生器の全サイズを低減する、標的適用の磁場を利用する改善された統合高周波発生器システムが、主磁石の磁場を利用する適用ゾーンおよびマイクロ波発生器ゾーンの両方を有する主磁石を使って達成できるという認識から結果として生じる。
【0022】
しかしながら、本発明は、他の実施形態では、すべてのこれらの目的を達成する必要がなく、これに関する特許請求の範囲は、これらの目的を達成する能力がある構造体または方法に限定されるべきでない。
【0023】
本発明は、磁気共鳴磁石の磁場中に適用ゾーンおよび高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンを有する磁気共鳴磁石と、高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンに配置され、磁気共鳴磁石の磁場を利用して高周波(マイクロ波/テラヘルツ)放射を発生させる高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器とを含む、標的適用の磁場を利用する統合高周波発生器システムを特徴とする。
【0024】
好ましい実施形態では、高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンは、磁気共鳴磁石の主磁場中にあってもよい。高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンは、磁気共鳴磁石のフリンジ磁場中にあってもよい。高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンでの磁場プロファイルを変更するための補助磁場源があってもよい。補助磁場源は、高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器上に取り付けられた巻線を含んでもよい。補助磁場源は、磁気共鳴磁石中に取り付けられた巻線を含んでもよい。補助磁場源は、少なくとも1つの永久磁石から成ってもよい。補助磁場源は、磁気共鳴磁石での変更点を含んでもよい。磁気共鳴磁石は、少なくとも1つの巻線を含んでもよく、変更点は、磁気共鳴磁石の巻線のアンペアターンの変化を含んでもよい。高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器から適用ゾーンまで延びる高周波(マイクロ波/テラヘルツ)伝送線路が、さらに含まれてもよい。高周波(マイクロ波/テラヘルツ)放射は、DNPを行うために使用されてもよい。補助磁場源は、適用ゾーンでのDNPプロセスを可能にするために高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器からの高周波(マイクロ波/テラヘルツ)放射を同期させるように高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンでの磁場プロファイルの値を変更する。高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器は、電子ビームの集束、輸送および電子ビームとVEDの回路との間の相互作用の少なくとも1つのために磁気共鳴システムの磁場を利用してもよい。高周波(マイクロ波/テラヘルツ)共鳴磁石は、穴を含んでもよく、高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンは、その穴にあってもよい。
【0025】
本発明はまた、磁気共鳴磁石の磁場中に適用ゾーンおよび高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンを有する磁気共鳴磁石と、高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンでの磁場プロファイルを変更するための補助磁場源とを含む磁気共鳴磁石装置も特徴とする。
【0026】
好ましい実施形態では、高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンは、磁気共鳴磁石の主磁場中にあってもよい。高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンは、磁気共鳴磁石のフリンジ磁場中にあってもよい。高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンでの磁場プロファイルを変更するための補助磁場源が、さらに含まれてもよい。補助磁場源は、磁気共鳴磁石中に取り付けられた巻線を含んでもよい。補助磁場源は、磁気共鳴磁石での変更点を含んでもよい。磁気共鳴磁石は、少なくとも1つの巻線を含んでもよく、変更点は、磁気共鳴磁石の巻線のアンペアターンの変化を含んでもよい。マイクロ波発生器から適用ゾーンまで延びるマイクロ波伝送線路が、さらに含まれてもよい。高周波(マイクロ波/テラヘルツ)放射は、DNPを行うために使用されてもよい。補助磁場源は、適用ゾーンでのDNPプロセスを可能にするためにマイクロ波発生器からの高周波(マイクロ波/テラヘルツ)放射を同期させるように高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンでの磁場プロファイルの大きさを増加させてもよい。マイクロ波発生器は、電子ビームの集束、輸送および電子ビームとVEDの回路との間の相互作用の少なくとも1つのために磁気共鳴システムの磁場を利用してもよい。磁気共鳴磁石は、穴を含んでもよく、高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器ゾーンは、その穴にあってもよい。
【0027】
本発明はまた、空間的上昇領域、均一領域および減衰領域を有する磁場源によって集束されるように適合される電子ビームを発生させるための電子銃と、高周波(マイクロ波/テラヘルツ)放射を発生させるための相互作用構造体と、窓を通じて高周波(マイクロ波/テラヘルツ)放射を引き出すための均一領域での内部モード変換器と、電子ビームが減衰領域で広がる前の実質的に均一領域に配置された縮小コレクターとを含む高周波(マイクロ波/テラヘルツ)発生器も特徴とする。
【0028】
好ましい実施形態では、相互作用構造体および内部モード変換器に近接する磁場源がさらにあってもよい。内部モード変換器は、ビームに一般に平行で、ビームを直接窓の外に向ける高周波(マイクロ波/テラヘルツ)反射体を含んでもよい。
【0029】
他の目的、特徴および利点は、好ましい実施形態の次の説明および添付の図面から当業者には思い当たることになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】マイクロ波発生のための従来技術の真空電子装置(VED)の概略線図である。
図2】DNP能力を備える従来技術の磁気共鳴システム、例えばNMRまたはMRIの概略線図である。
図3】単一試料ゾーンを有する磁気共鳴システムのための従来技術の磁石装置の概略断面線図である。
図4】補助磁場源の様々な配置を示し、適用ゾーンおよびマイクロ波発生器ゾーンの両方を有する本発明による磁気共鳴磁石装置の図3に似た概略線図である。
図5】補助磁場源の様々な配置を示し、適用ゾーンおよびマイクロ波発生器ゾーンの両方を有する本発明による磁気共鳴磁石装置の図3に似た概略線図である。
図6】補助磁場源の様々な配置を示し、適用ゾーンおよびマイクロ波発生器ゾーンの両方を有する本発明による磁気共鳴磁石装置の図3に似た概略線図である。
図7】磁気共鳴磁石装置のフリンジ磁場中のマイクロ波発生器ゾーンを例示する図3に似た概略断面線図である。
図8】磁気共鳴磁石、補助磁場源および結果として生じる合成磁場の空間磁場プロファイルを例示する図である。
図9A】典型的なジャイロトロン磁石の軸方向磁場プロファイルを有する本発明のジャイロトロンと、従来のジャイロトロンとの相互関係の図である。
図9B】典型的なジャイロトロン磁石の軸方向磁場プロファイルに対する本発明によるジャイロトロンの相互関係の図である。
図10A】相互作用構造体をより詳細に示す図9Aに似た図である。
図10B】相互作用構造体をより詳細に示す図9Bに似た図である。
図11】従来技術のマイクロ波発生器の相互作用構造体のある要素の三次元線図である。
図12】本発明の一実施形態によるマイクロ波発生器の相互作用構造体のある要素の三次元線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下で開示される好ましい実施形態または複数実施形態は別として、本発明は、他の実施形態の能力があり、様々な方法で実施されるまたは実行される能力がある。それ故に、本発明は、その応用において次の説明に記載されるまたは図面で例示される構造の詳細および構成要素の配置に限定されないと理解すべきである。一実施形態だけが本明細書で説明されるとしても、それに関する特許請求の範囲は、その実施形態に限定されるべきでない。その上、それに関する特許請求の範囲は、ある排除、制約、または放棄を明示する明瞭で説得力のある証拠がない限り制限的に読まれるべきでない。
【0032】
本発明は、広い応用を有するがしかしDNP強化磁気共鳴分光法の特定分野で発達したので、本明細書の開示は、その事例を使用する。明細書および特許請求の範囲を含む本出願全体にわたって、「磁気共鳴システム」の使用は、そのような装置のすべて、例えばNMR、MRI、EPR/ESR・・・を含み、ジャイロトロンの使用は、本明細書で示される実施形態だけに特有であるがしかしすべてのVED、例えばジャイロトロン、クライストロン、進行波管(TWT)、ジャイロトロン進行波管増幅器(ジャイロ−TWT)、ジャイロ−ツワイストロン、ジャイロクライストロンまたはそのような装置の任意の組合せを表す。DNP強化NMR分光法は、NMR周波数に直接関係する動作周波数を有する高パワーマイクロ波/テラヘルツ源を必要とする(νDNP=660*νNMR)。例えば、600MHz(Hラーモア周波数)でのDNP強化NMR分光法については、14.1TのNMR磁石が、必要とされ、マイクロ波/テラヘルツ源の動作周波数は、395GHzであるべきである。ジャイロトロンは、そのような周波数でのDNPに必要な十分な連続波パワーを発生させる能力がある。
【0033】
ジャイロトロンは、やや相対論的な装置であり、従って、NMR磁石の磁場に対応する電子共鳴周波数で放射を発生させるために、ジャイロトロンは、およそジャイロトロンでの電子の相対論的質量係数だけアップシフトされる磁場を必要とする。このアップシフトは、ジャイロトロンの動作電圧に対応し、実際には相対論的質量係数gであり、それは、g=1+電圧(kV単位で)/511と表すことができる。上記の例で述べたような395GHzを発生させるために、15kVで動作するジャイロトロンは、約14.52T(=14.1*(1+15/511))の磁場を必要とし、それは、600MHzのNMR磁石によって提供される14.1T磁場よりも約0.42T高い。
【0034】
残念ながら、10Tよりも上の磁場での超電導磁石は、高価であるニオブ−スズ(NbSn)超電導材料の使用を必要とする。代替手法は、ジャイロトロンが第二サイクロトロン高調波で動作する第二高調波動作(周波数倍増)を使用することである。そのようなシステムでは、ジャイロトロンは、上述の基本モード動作の場合の磁場値の半分だけを必要とする。このことは、7.26(=14.52/2)T磁石の使用を可能にする。そのような磁石は、ニオブ−チタン(NbTi)などのより安い超電導材料で作ることができ、NbSn磁石と比べて約半分の値段のコストがかかるだけとなる。
【0035】
しかしながら、ジャイロトロンを第二高調波で動作させることは、多数の不都合を有する。第1に、発振のためのしきい電流は、はるかにより高く、それ故により高い動作電圧および電流を必要とし、より高い電子ビームパワーをもたらす。第2に、第二サイクロトロン高調波での動作は、基本モード相互作用との競合の影響を非常に受けやすい。このことは、第二高調波発生の動作パラメーター空間を制限し、しばしば出力放射を基本サイクロトロン波でのテラヘルツ放射で汚染する。第3に、第二高調波相互作用の効率は、基本モード相互作用よりもかなり低い。このことを部分的に補償するために、装置は通常、より高い電圧および電流で動かされ、それは、高電子ビームパワーを扱うために大きな水冷コレクターを必要とする。上記の課題にもかかわらず、NMR周波数>400MHzのためのジャイロトロン磁石の法外なコストのために、第二高調波ジャイロトロンが、DNP応用で使用される。400MHzシステムについては、必要な263.6GHz放射は、9.6TのNbTi磁石を使用して基本モード動作で発生させることができる。
【0036】
図1では、ジャイロトロン10などの真空電子装置(VED)が、示される。それは、磁気システム16によって提供される磁場によって集束され、輸送される電子ビーム14を発生させる電子銃12を含む。テラヘルツ放射は、相互作用構造体または空洞18中で発生され、いくつかのマイクロ波反射面を含む内部モード変換器20によって受け取られ、そのマイクロ波反射面はこの場合には、マイクロ波反射体またはミラー22および24によって表される。マイクロ波は、ミラー22から次いでミラー24へと反射され、そこからマイクロ波は、窓26に入射してシステムから出る。高パワー電子ビームは、磁気システム16によって生成される磁場が減衰するとき28で示されるように広がる。この広がりは、ビームがコレクター30によって捕獲されるところでのビームのパワー密度をかなり低減する。
【0037】
そのようなVEDは、従来の磁気共鳴システム40、図2で使用され、そのシステムは、磁気共鳴試料46がその中に位置する適用ゾーン44を有する高磁場の極低温冷却磁石42を含む。試料46は、プローブ48によって適所に保持され、そのプローブは通常の方法で、試料を保持し、マイクロ波およびRF放射を向け、周囲条件を制御しかつ感知し、加えられる刺激に対する試料の応答を記録する働きをする。高周波放射は、マイクロ波発生器10で発生され、マイクロ波導波管50で適用ゾーンに供給され、そのゾーンはこの実施形態では、磁石装置42の適用ゾーン44である。極低温システムおよび制御装置52は、磁石プローブ装置48の過冷却を維持する。コンソール54は、RFパルスの生成、周波数、形状、継続時間を制御し、磁気共鳴分光法での動作を制御する。線源制御ラック56は、磁気システム16および電子銃12への電流および電圧の大きさおよび形状を制御する。電子銃トリムコイル58は、電子ビームを動作させ、調整するために磁気システムコイル16に加えて1つまたは複数のコイルがあってもよいという事実を表している。
【0038】
磁気共鳴磁石装置42、図3はまた、強磁性のまたは空気のコア62に取り付けられた磁気コイル60によってパワーを供給されてもよい。適用ゾーン44はそのとき、磁力線66および68によって描写される磁石の主磁場中の穴64に位置する。主巻線60は、1つまたは複数のシムコイル70、72によって支援されてもよい。
【0039】
本発明の一実施形態、図4によると、高周波発生器またはテラヘルツ源10aは、その磁気システムコイル16と一緒に、磁石42の穴64中のマイクロ波発生器ゾーン76での主磁場中に位置する。高周波発生器10aは、図1の高周波発生器10に似ているがしかし本発明に従って変更される。
【0040】
別法として、図5では、高周波発生器10aと関連する磁気システムは、16aで示されるようにコア中に位置してもよくまたは実際には16bで示されるようにコイル中に位置してもよい。さらに、別法として、補助磁場源16は、別個のコイルによってではなく、主磁石コイル42のアンペア−ターン巻線16c、図6の変化によって実装されてもよい。マイクロ波発生器ゾーン76は、図4、5および6で示されるように穴64中の主磁場の高集中エリアに位置するが、そのゾーンは、図7で示されるように主磁場のフリンジエリア78にあってもよいので、このことは、本発明の必須の制限でない。図7では、マイクロ波発生器ゾーン76での高周波発生器10aは、主磁場のフリンジエリア78に位置する。その場合には、短い長さのマイクロ波導波管80が、線源10aからのマイクロ波放射を試料46に供給するために使用される。補助磁場源16、a、b、cは、トリムコイルまたはバック(buck)もしくはブーストコイルであってもよい。別法として、それおよび他のコイルは、永久磁石であってもよく、もし望むなら強磁性かまたはセラミックの磁石であってもよい。
【0041】
図8では、磁気共鳴磁石42の軸方向磁場の空間プロファイルが、90で示される。それは、上昇領域92、均一領域94および減衰領域96を有する。図示される特定の実施形態では、均一領域は、14.1Tのピークを有するが、しかしながらマイクロ波発生器での電子の相対論的効果は、14.1TでのDNP実験を可能にするためのテラヘルツ放射を発生させるために14.22Tを必要とし、それ故に補助磁場源は、ブーストコイルまたはブースト磁石としての役割を果たし、上昇部分100、均一部分102、および減衰部分104を備える98で示されるような軸方向磁場プロファイルを有する。垂直線106で示される適用ゾーンを実質的に均一ゾーン94に置き、一方垂直線108で示されるマイクロ波発生器ゾーンを上昇ゾーン92に近接する均一ゾーン94の初めの方へ置くことによって、結果として生じる合成磁場110は、磁気共鳴磁場90に似ているがしかし必要な14.22Tを提供するためにマイクロ波発生器ゾーン108のエリアに隆起した部分112を備えて見える。このわずかだがしかし非常に重要な調整を使うと、マイクロ波発生器は、磁気共鳴システムの主磁石の磁場中に配置され、その磁場によってパワーを供給されることが可能になる。
【0042】
図9AおよびBでは、同様の空間分布、高周波発生器10にパワーを供給する磁気システムコイル16の軸方向磁場プロファイルが、示される。このプロファイルは、図8で先に示されたそれに似ているがしかしこの磁場プロファイルは、高周波発生器またはジャイロトロンでの磁場を指す。この磁場120はまた、垂直線125、127によって示されるような均一領域122、上昇部分124および減衰部分126も有し、図9Aおよび9Bでその下に示されるジャイロトロン10での空間磁場と一致するように位置決めされる。図9Aおよび9Bでは、磁場の減衰部分126でのビーム28の広がりは、最も明白であり、ビームがコレクター30に達するときビームエネルギーのはるかにより低いパワー密度をもたらす。別法として、本発明によると、VED、ジャイロトロン10aは、コレクター30aをビーム14aが広がり始める減衰領域126の前の均一領域122に置くので、より短く、より小型である。このことは、ジャイロトロンにとってより小さいコレクターおよびより短い全長を可能にする。コレクターは、ビームの内側へ一点に集まるように示されるが、逆の向きが、30aaで示されるなどのように使用されてもよいので、このことは、本発明の必須の制限でない。基本モードで動作するとき、パワーは、例えば15kVおよび20mAまで下げることができ、その結果全消散は、600ワットからマイクロ波エネルギーとして引き出される10または20ワットを引いたものであるので、コレクターの縮小したサイズは、なお十分である。実際、基本モードでの動作および結果として生じるより高い効率のために、電圧は、3kVまで下げられてもよく、その場合全ワット数は、60ワットからマイクロ波エネルギーとして引き出される10ワットを引いたものであり、その結果コレクター30aは、40または50ワットを消散させなければならないだけである。
【0043】
ジャイロトロン10aはまた、従来のジャイロトロンVED10を使用して1つのミラー24を除去し、窓26aをもう一方の側に移し、マイクロ波ミラーまたは反射体22の一般に平行な向きに対向するようにミラー22aをビーム方向に傾けることによってその内部モード変換器のサイズも低減した。
【0044】
図9Bで概要を示されるマイクロ波発生器の改善は、従来技術のマイクロ波発生器10’、図10A、および本発明によるマイクロ波発生器10a’、図10Bの構成要素のより詳細な例示をもってより完全に理解できる。従来技術のマイクロ波発生器10’の相互作用構造体18’は、導波管ランチャー21を有し、その後に放物面集束ミラー22’および1つまたは複数のマイクロ波ミラー24’が続き、そこから窓26’の外に出る。対照的に、本発明の一実施形態によるマイクロ波発生器10a’では、マイクロ波は、ランチャー21aから直接放物面ミラー24aに送出され、そのミラーは、実際には二重に湾曲し、輪郭のある(profiled)、傾いた集束ミラーであり、そこから直接窓26a’の外に出る。
【0045】
内部モード変換器構成18’および18a’の物理的差は、図11および12でそれぞれ明瞭に示される。従来の内部モード変換器18’は、らせん状に切断された導波管ランチャー21を有する。ランチャー21からマイクロ波は、ミラー22’’へ向けられ、それはここでは、放物面集束ミラーである。そこからマイクロ波放射は、ミラー24’’および24’’’から反射されて窓26’を通過する。対照的に、図12で示される本発明の実施形態では、ミラー24a’’は、二重に湾曲し、輪郭のある、傾いた集束ミラーであり、それは、ランチャー21a’からマイクロ波放射を受け取り、それを直接窓26a’’の外へ反射して劇的にマイクロ波発生器を短縮する。
【0046】
ここではジャイロトロンは、別個の高価な超電導磁石を必要とすることなく任意の周波数での基本サイクロトロン波で動作することができる。従って、我々は、第二高調波で動作する従来の設計と比べてより低い値の電子ビームパワーを選択することができる。それ故に電子ビーム密度は、相互作用構造体(空洞)の位置でさえ、使用済みビーム(テラヘルツ発生後の電子ビーム)が銅、モリブデン、タングステンまたは他のそのような材料でできた浅い円錐形のコレクターに集められることを可能にするほどに十分低い。数百ワットから数キロワットの電子ビームパワーを持つ従来のジャイロトロン設計では、使用済み電子ビームのエネルギー密度は、電子ビームを空間的に減衰する磁場中でより大きな表面積に広げることを必要とするほどに十分高い。より大きなサイズのビームは、大部分の材料について安全なエネルギー密度レベル内で水冷コレクターでの収集を可能にする。対照的に、本明細書での電子ビームの収集は、ほとんど空洞の直後で起こる。本出願では、ジャイロトロン管は、磁場の空間的に減衰する部分に及ばず、主NMR磁石中にNMRプローブを備える統合ジャイロトロン管を可能にする。
【0047】
より低い電圧での動作が、ジャイロトロンがDNP実験のために正しい周波数を生成するのに必要な磁場でのアップシフトが相対論的質量係数gのより低い値に起因してはるかにより小さいことを示唆することは、明らかである。従って、本装置は、従来の設計でのような15kVの代わりに3〜4kVだけで動作できる。より低い電圧のこの選択は、ジャイロトロンに必要な(トリム/バック/ブーストコイルによって生成すべき)追加の磁場が0.421Tの代わりに0.118Tだけであることを示唆する。さらに、所与のビームパワーについてのジャイロトロン相互作用の物理学に起因して、より低い電圧およびより高いビーム電流での動作は、より高い効率を達成するためにより望ましい。従って、本発明でのより低い電圧の選択は、超電導磁石の内部に組み込むのがより容易であるより小さい補助磁場源(トリム/バック/ブーストコイル)の使用を可能にし、主コイルへのより小さい力をもたらし、テラヘルツ発生の効率を増加させる。
【0048】
従来のジャイロトロンでは、内部モード変換器は、階段状に切断されたまたはらせん状に切断された導波管(ランチャー)およびより高次の動作モードを自由空間ガウス様モードに変換するための2つから3つのミラーから成る。これは、真空窓を通じて管の外へテラヘルツ放射を引き出すことを可能にする。そのようなモード変換器は、磁場が空間的に減衰している磁石の領域のかなりの部分に及ぶ。本発明では、より短い進歩した内部モード変換器設計が、使用されるために使用される。単一のミラーが、ランチャーから放射を集め、それを引き出しのための窓に集束させる。追加のミラーが、さらにビームを成形し、それをNMR試料にまたは注入のために伝送線路へ向けるためにジャイロトロン管の外部に位置してもよい。それ故に磁石のコストにもかかわらず、基本サイクロトロン波で動作することの主な利点は、ビームパワーの低減、管のサイズの低減、および設計の単純化である。
【0049】
DNPを600MHzで行うために、現在の技法は、395GHzで約10Wのテラヘルツパワーを必要とする。これを第二高調波ジャイロトロンで発生させるために、典型的な設計は、約15kV、150mAの電子ビームを必要とすることになり、そのビームは、2.25kWの全パワーを有し、そのうちの約10Wだけが、テラヘルツパワーとして取り出され、残りの電子ビームパワーは、巨大な水冷銅コレクターで熱として廃棄される。しかしながら、基本モードで動作させることによって、10Wの出力パワーは、約600Wの全パワーを有する15kV、20mAのビームだけを使って発生させることができる。より低いビームパワーは、管がかなり小さくでき、特に電子ビームコレクターがそうであることを示唆する。より低いビームパワーを使うと、水冷要件は、かなり低減され、強制空冷の使用によって排除さえされ、それ故にかなりのコスト削減が、達成できる。
【0050】
本発明の特定の特徴が、いくつかの図面で示され、他の図面では示されないけれども、各特徴は、本発明による他の特徴のいずれかまたはすべてと組み合わされてもよいので、これは、便宜のためだけである。本明細書で使用される場合、単語「including」、「comprising」、「having」、および「with」は、広くかつ包括的に解釈されるべきであり、どんな物理的相互接続にも限定されない。さらに、マイクロ波またはテラヘルツ領域として示される動作周波数範囲は、広く解釈されるべきであり、この領域に限定されない。その上、本出願で開示されるどんな実施形態も、可能性があるだけの実施形態と受け取るべきでない。
【0051】
加えて、本特許のための特許出願の続行中に提示されるどんな補正も、申請されたときの出願で提示されたどんな請求項要素の放棄でなく、当業者は、すべての可能な等価物を文字通りに包含することになる特許の請求範囲を起草すると合理的に期待できず、多くの等価物は、補正時に予見できないことになり、放棄されるべきもの(もしあるなら)の公正な解釈を超えており、補正の根底にある論理的根拠は、多くの等価物から希薄な関係しか有してないこともあり、かつ/または出願者が補正された任意の請求項要素のある非実質的な代替を記述することが期待できない多くの他の理由がある。
【0052】
他の実施形態は、当業者には思い当たることになり、次の特許請求の範囲内である。
【符号の説明】
【0053】
10 ジャイロトロン、マイクロ波発生器
10’ 従来技術のマイクロ波発生器
10a ジャイロトロン、高周波発生器、テラヘルツ源、線源
10a’ 本発明によるマイクロ波発生器
12 電子銃
14 電子ビーム
14a 電子ビーム
16 磁気システム、磁気システムコイル、補助磁場源
16a コア中の磁気システム
16b コイル中の磁気システム
16c アンペアターン巻線
18 相互作用構造体、空洞
18’ 内部モード変換器、相互作用構造体
18a’ 内部モード変換器
20 内部モード変換器
21 導波管ランチャー
21a ランチャー
21a’ ランチャー
22 マイクロ波反射体、ミラー
22’ 放物面集束ミラー
22’’ ミラー
22a ミラー
24 マイクロ波反射体、ミラー
24’ マイクロ波ミラー
24’’ ミラー
24’’’ ミラー
24a 放物面ミラー
24a’’ ミラー
26 窓
26’ 窓
26a 窓
26a’ 窓
26a’’ 窓
28 電子ビームの広がり
30 コレクター
30a コレクター
30aa コレクター
40 従来の磁気共鳴システム
42 磁石、磁石装置、主磁石コイル
44 適用ゾーン
46 磁気共鳴試料
48 プローブ、磁石プローブ装置
50 マイクロ波導波管
52 極低温システムおよび制御装置
54 コンソール
56 線源制御ラック
58 電子銃トリムコイル
60 磁気コイル、主巻線
62 強磁性または空気のコア
64 穴
66 磁力線
68 磁力線
70 シムコイル
72 シムコイル
76 マイクロ波発生器ゾーン
78 フリンジエリア
80 マイクロ波導波管
90 軸方向磁場の空間プロファイル、磁気共鳴磁場
92 上昇領域
94 均一領域
96 減衰領域
98 軸方向磁場プロファイル
100 上昇部分
102 均一部分
104 減衰部分
106 垂直線
108 垂直線、マイクロ波発生器ゾーン
110 合成磁場
112 隆起した部分
120 軸方向磁場プロファイル
122 均一領域
124 上昇領域
125 垂直線
126 減衰部分
127 垂直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12