【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、連続的に粉末層を与え、この粉末層の選択された区域を融合することによる三次元体の製造方法に関し、この区域は、三次元体の連続した横断面に対応する。この方法は、前記層のうちの少なくとも1層のために以下のステップ、作業領域上に少なくとも1層の粉末層を塗布するステップと、放射銃から選択された区域にエネルギーを供給することにより少なくとも1層の粉末層の選択された区域を融合するステップとを備える。
【0012】
本発明は、本方法が、少なくとも1層の粉末層の選択された区域を融合する際に使用される意図されるビーム経路を確立するステップと、意図されるビーム経路に沿って移動すると仮定される仮想のビームの特定のエネルギー付与の関数として、意図されるビーム経路に沿った少なくとも1層の粉末層内の温度を計算するステップと、計算された温度と、選択された区域を融合するステップのために設定された条件とに因って、意図されるビーム経路に沿った仮想のビームの特定のエネルギー付与を調整するステップと、計算および調整に基づき、少なくとも1層の選択された区域を融合する際に意図されるビーム経路において使用される実際のビームの特定のエネルギー付与のための操作スキームを提供するステップとを備えることを特徴とする。
【0013】
「意図されるビーム経路」の用語は、選択された区域にわたって配置される走査パターンまたは線パターンに関し、また、選択された区域にわたって粉末を溶融/融合する目的でその区域をビームが掃過される際に、ビームスポットが辿るように意図される経路の少なくとも一部分のことを指す。原理上は、選択された区域内において粉末を完全に融合させる限りにおいて、意図されるビーム経路はあらゆる形態を有することができ、換言すると、例えば、分割されていても連続であってもよく、直線部分および曲線部分の両方を含むこともできる。さらに、ビーム経路は、例えば、線が異なる順番で走査される場合、または、単一の線が反対方向に走査される場合など、線パターンが同じであっても変化し得るものである。
【0014】
「意図されるビーム経路に沿って移動すると仮定される仮想のビームの特定のエネルギー付与の関数として、意図されるビーム経路に沿った少なくとも1層の粉末層内の温度を計算する」ステップとは、意図されるビーム経路の中または近傍において、その延長部に沿って、局所的な温度または局所的な温度分布が計算されることを意味している。これは例えば、意図されるビーム経路に沿って移動する間に特定のエネルギー付与を発生すると仮定される仮想のビームにより材料に付与されたエネルギーを考慮に入れて、意図されるビーム経路に沿って配置された多数の点において局所的な温度(分布)を計算することなどによりなされる。
【0015】
意図されるビーム経路沿った特定の点における(すなわち、特定の時点における)局所的な粉末層の温度は、例えば、開始時の材料層の温度分布、材料の熱的特性(熱伝導率など)、仮想のビームの特定のエネルギー付与の履歴(ビームの現在位置、および現在位置に至るまでの間のその経路において材料層に付与されたエネルギーまたは出力の量を含む)、およびビーム経路の幾何パターンに因る。
【0016】
「ビームの特定のエネルギー付与」の用語は、単位時間および層の単位面積あたりに(仮想または実際の)ビームにより付与されたエネルギー(ビーム出力およびスポットサイズ)、すなわち、単位面積あたりに付与された出力をビームの速さで除したものを指す。したがって、特定のエネルギー付与を変化させることは、層の表面上を移動するビームの速さを変化させる、またはビームの出力を変化させる、またはビームのスポットサイズ(すなわち、特定の時点においてビームに直接曝される層の表面区域)を変化させる、またはこれらの組み合わせによってなされる。計算上、仮想のビームの特定のエネルギー付与の履歴もまたこのように、速さ、出力またはスポットサイズの変化を含む。また、ビームの形状およびビーム内におけるエネルギー/出力分布も変化してもよく、計算に含まれていてもよい。
【0017】
計算は複雑で時間がかかり過ぎることもあるため、今までどおり特定のエネルギー付与の履歴(これは、ビームは未到達であるが、先の意図されるビーム経路の既に「融合された」部分からの熱伝導がある意図されるビーム経路の点における温度に強い影響を与えることもある)を考慮にいれながら、十分に正確な温度を計算できるような簡単化を様々に行うことができる。
【0018】
「計算された温度と、選択された区域を融合するステップのために設定された条件とに因って、意図されるビーム経路に沿った仮想のビームの特定のエネルギー付与を調整する」ステップとは、例えば、最大温度のために設定された条件よりも、特定の点において温度が高くなったことを計算が示す場合などに、意図されるビーム経路の特定の部分にわたって、少なくとも1つのビームのパラメータ、すなわち、ビームの速さ、出力およびスポットサイズ、またはいずれか1つが調整されることを意味している(これは、例えば、特定の点の近傍のビームの速さの増加もしくはビーム出力の低減を要求する、または、先のビーム経路の部分からの間接的な、熱伝導によるその点の加熱を低減するように、特定のエネルギー付与の履歴の変更を要求することになろう)。
【0019】
意図されるビーム経路に沿った仮想のビームの特定のエネルギー付与の調整は、経路(の部分)に沿った温度の再計算がその他のビームのパラメータを用いて行われるように扱われてもよい。別の方法として、あるいは補助として、融合される材料に関連する既定のデータセットを利用でき、前記データセットは、計算された温度および設定された条件の関数として特定のエネルギー付与の適切な値を備える。このような規定のデータは、時間がかかり過ぎる再計算を防ぐのに役立ち、例えば、意図されるビーム経路に沿って配置された多数の点において温度が計算される際に使用できる。仮想のビームの現在位置に対応する点の前方に比較的近接して位置する「次の」点において計算された温度に応じて、現在位置から「次の」点に到達するまでビームを移動する際に使用する特定のエネルギー付与の適切な値は、既定のデータから直接取得できる。意図されるビーム経路沿って配置された残りの点に対して、この手順は繰り返される。このようにして、特定のエネルギー付与は、意図されるビーム経路沿って段階的に調整される。
【0020】
(特定のエネルギー付与のための)「操作スキーム」の用語は、実際のビームの特定のエネルギー付与、すなわち、速さ、出力およびスポットサイズのそれぞれを、粉末を融合するステップの間、時間(または、時間に関係するビーム経路に沿った位置)に対してどのように変化させるべきか、その方法を指す。したがって、操作スキームは、選択された区域を融合する際にビームの速さ、出力およびスポットサイズがどのように変化すべきかについての情報を含む。この操作スキームを提供または決定/確立するステップは、先のステップからの結果の減算および加算の形である。上記の特定のエネルギー付与の段階的な調整の例において、操作スキームは、ビームのパラメータの段階的な変動を含む。操作スキームは、意図されるビーム経路の初期部分のためなど、温度計算および特定のエネルギー付与の調整が必要ないと考えられる意図されるビーム経路の部分のためのビームのパラメータの設定の情報を含むこともできる。
【0021】
材料内の温度は、そのエネルギー含量に関係する。したがって、真の温度を計算するかわりに、別のエネルギー関連パラメータおよび温度関連パラメータを計算し利用することができる。計算された温度の用語は、そのような関連のパラメータも含む。
【0022】
意図されるビーム経路を確立するステップ、意図されるビーム経路に沿って温度を計算するステップ、仮想の特定のエネルギー付与を調整するステップ、および、操作スキームを決定するステップは、一度に実行されなくてもよいし、厳密に与えられた順番で実行されなくてもよい。例えば、計算および調整は、反復するやり方で実行でき、また、操作スキームは、ビーム経路全体の断片に対して段階的に決定できる。さらに、意図されるビーム経路を確立するステップは、所与の走査方向の等間隔に配置されたまっすぐな平行線からなる既定の線パターンが選択可能であり、いくぶん単純であるが、このステップは、好ましい線パターンおよび好ましい、最終的に選択された、意図されるビーム経路を獲得するための計算および調整を備えていてもよい。
【0023】
結果、つまり、本発明は、粉末を融合する際に使用されるビームの特定のエネルギー付与が予め調整されて、異なる特定のエネルギー付与および条件におけるビーム経路に沿って結果として生じる温度を計算することにより、使用される特定の走査パターンの温度の蓄積に応じて変化するようにする方法について言及する。換言すると、本発明の方法は、計算および調整により、経路パターンに沿って通過して粉末を溶融する際に、ビームの特定のエネルギー付与が時間(または選択された区域上の位置)に対してどのように変化すべきかを予め決定できるようにする。
【0024】
特定のエネルギー付与の操作スキームを最適化するために、例えば、製造時間を最小化する、特定の最大温度を超えないようにする、特定の時間間隔の間、特定の温度を超えないようにする、取得される温度の最大値を最小化する、ビーム経路に沿った溶融した材料の幅を均等にする、および、例えば、製造時間の最小化と取得される温度の最大値との折衷案などのこれらの様々な組み合わせなど、様々な条件を計算において使用してもよい。意図されるビーム経路を選択する前に、取り得る様々なビーム経路を評価できる。
【0025】
計算を簡単化し速度を上げるために、条件は、ビームのパラメータ(速さ、出力およびスポットサイズ)のうちの1つまたは2つの既定の(予め計算された)値、および、例えば、互いに等間隔に配置された平行線のセットなどの既定のビーム経路の両方、またはいずれか一方を含むことができる。
【0026】
本発明の方法は、包括的であり、選択された区域のあらゆる幾何形状に適用可能である。粉末層は、同様または異なる幾何形状を有する複数の選択された区域を備えていてもよいことに注意されたい。
【0027】
適切な特定のエネルギー付与の操作スキームが決定されると、このスキームは、問題の層の選択された区域(の部分)の実際の溶融/融合に使用される。本発明の方法は、好ましくは、対象物が形成される層の全て、または、少なくともほとんどにおいて使用される。
【0028】
本発明の効果は、徹底的な温度制御および選択された区域の温度分布制御を提供して、洗練された方法で融合ステップを計画可能とすることにある。同様に、これは、温度が高くなり過ぎる(これは、構築中の製品を破壊することもある)のを防止するため、温度分布を均質にする(これは、歪みおよびクラック形成を減らして製品の特性を改善する)ため、および、製造を速める(これは、製造の費用効率を高める)ために使用できる。
【0029】
本発明の有利な実施形態において、本方法は、少なくとも1層の粉末層の選択された区域を融合する際に、特定のエネルギー付与のための操作スキームを用いるステップを備える。
【0030】
本発明の別の有利な実施形態において、特定のエネルギー付与は、単位時間および単位面積あたりにビームにより付与されたエネルギーをビームの速さで除したものであり、また、特定のエネルギー付与は、ビームの速さ、ビーム出力またはビームスポットサイズのいずれか1つ、またはこれらの組み合わせを変化させることによって変化できる。
【0031】
本発明の別の有利な実施形態において、本方法は、融合される材料に関連する既定のデータセットの使用を備え、前記データセットは、計算された温度および設定された条件の関数として選択される特定のエネルギー付与の値を備える。
【0032】
本発明の別の有利な実施形態において、融合するステップのために設定された条件は、少なくとも1層の粉末層に対して次の条件、最大温度、作業温度、溶融深度および溶融幅のうちの1つまたはいくつかの条件を含む。
【0033】
本発明の別の有利な実施形態において、温度を計算するステップは、時間依存熱伝導方程式を解くステップを含む。
【0034】
本発明の別の有利な実施形態において、温度を計算するステップは、意図されるビーム経路に沿った局所的な温度を計算するステップを含む。
【0035】
本発明の別の有利な実施形態において、温度を計算するステップは、意図されるビーム経路に沿って配置された多数の点の中または近傍において実行されるいくつかの計算を含む。
【0036】
この実施形態の変形において、隣接する計算点の間の最大距離は、隣接する点の間の特定のエネルギー付与の許容される変化のための制限値を設定することにより設定される。例えば、ビームの速さだけが変化される場合、ビームの速さの許容される変化の最大値が設定される。
【0037】
本発明の別の有利な実施形態において、意図されるビーム経路を確立するステップは、複数の取り得るビーム経路に沿って温度の計算を行うステップと、前記複数のビーム経路の中から意図されるビーム経路を選択するステップとを含む。
【0038】
後述の本発明の詳細な説明において、次の図面を参照する。