【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載のパンチ金型の構成は、
図2に示すごとき構成である。すなわち、パンチ金型1は、パンチプレスにおける上型ホルダ3に上下動自在に支持される筒状のパンチガイド5を備えており、このパンチガイド5の下部に備えた板押え7には上下方向の貫通孔9が形成してある。そして、前記パンチガイド5内に上下動自在に備えたパンチボディ11の下端部には、前記貫通孔9内を上下動自在なパンチ刃部13が備えられている。
【0005】
さらに、前記パンチボディ11には、前記パンチボディ11における下部の細径部分の外周面とパンチガイド5の内周面との間の環状の空間15と、パンチプレスに上下動自在に備えたストライカ17に形成した流体供給孔19とを連通自在な流体路21が形成してある。そして、パンチプレスにおけるダイホルダ23に支持されたダイ金型25と協働して板状のワークWに打抜き加工を行うことによって打抜かれたブランク(打抜きカス)を、前記ダイ金型25におけるダイ孔27内へ落下させるために、前記パンチガイド5における前記貫通孔9の内周面の複数箇所には、前記空間15内の流体を下方向へ噴出するための溝29が形成してある。
【0006】
上記構成において、ワークWの打抜き加工を行うには、ストライカ17の下降によってパンチ金型1が下降され、パンチガイド5における板押え7でもってワークWをダイ金型25の上面に押圧固定した後、パンチボディ11に備えたパンチ刃部13によって打抜き加工が行われる。このとき打抜かれたブランクの形状は、パンチ刃部13、ダイ孔27の形状に等しいものである。そして、パンチボディ11における細径部(パンチ刃部13の僅か上の部分)の外周面と前記貫通孔9の内周面との間の微細な間隙31及び前記溝29から下方向へ噴出される流体の作用によって、ブランクがパンチ刃部13の下面に密着して、パンチボディ11と一体的に上昇することが防止されている。
【0007】
すなわち、ダイ金型25におけるダイ孔27の形状と等しい形状のブランクを打抜くときには、ブランクがダイ孔27内に入り込むと、ブランクによってダイ孔27が閉塞される態様となり、前記溝29等から下方向へ噴出される流体がブランクとパンチ刃部13との間に入り込み易く、パンチ刃部13とブランクとの密着が防止され易いものである。
【0008】
ところで、パンチ金型1とダイ金型25との協働によってワークに打抜き加工を行うとき、前述したように、パンチ刃部13,ダイ孔27の形状に等しいブランク7を打抜くとは限らず、例えば追い抜き加工やニブリング加工のように、パンチ刃部13,ダイ孔27の大きさに比較してかなり小さな打抜きカスを連続的に打抜き加工する場合がある。
【0009】
例えば、
図3に示すように、一辺の長さがLの正方形の穴をワークWに打抜き加工を行うとき、例えば一辺の長さがL/2の正方向のパンチ刃部13を備えたパンチ金型1によって追い抜き加工を行うことがある。この場合、最初は、
図4(A)に示すように、Aa,Ab,Ba,Bb(
図3参照)の領域の打抜き加工が行われる。その後は、
図4(B)に示すように領域Ca,Cbの打抜き加工を行い、次に隣接した領域Da,Dbの打抜き加工が行われる(
図4(C)参照)。
【0010】
その後、隣接した領域Cc,Dcの打抜き加工が行なわれ(
図4(D)参照)、次に領域Bc(
図5(A)参照)、領域Ac(
図5(B)参照)、領域Ad,Bd(
図5(C)参照)、領域Cd(
図5(D)参照)が順次打抜き加工され、最後にDd(
図3参照)の打抜き加工が行われることにより、一辺の長さがLの正方形の穴が打抜き加工されることになる。
【0011】
上述のごとくワークWの打抜き加工を行うとき、
図4(A)に示す状態においては、ワークから打抜かれたブランク(斜線で示した部分)の大きさはダイ孔27の大きさに等しく、その4方向(4辺)はダイ孔27の周面に接触(拘束)される傾向にあり、
図4(B),(C),(D)及び
図5(C)に示す状態においては、ブランクの大きさはダイ孔27の1/2の大きさであっても比較的大きく、しかも、その3方向(3辺)はダイ孔27の周面に接触(拘束)される傾向にある。
【0012】
しかし、
図5(A),(B),(D)及び
図3に示す状態においては、打抜かれたブランクは、ダイ孔27の1/4の大きさであって小さなものであり、しかも打抜かれた後はダイ孔27内で、例えば水平に移動可能な自由な状態にある。したがって、打抜かれた小さなブランクは、パンチ刃部13の下面に密着してパンチ刃部13と一体的に上昇し易いものである。すなわちカス上りを生じる傾向にある。
【0013】
ここで、前述したパンチ金型1を用いて前述したごとき追い抜き加工を行うとき、例えば
図3,
図4(B)〜(D),
図5(A)〜(D)の状態において、板押え7がワークWの上面に接触した場合、前述した溝29,間隙31のワークWの上面に対応した部分は閉塞され、ワークWに既に打抜き加工された穴に対応した部分の溝29,間隙31からは垂直下方向へ流体が噴出されている。そして、ワークの追い抜き加工が行われると、全ての溝29,間隙31から流体が垂直下方向へ噴出される。そして、パンチガイド5が上昇し、板押え7がワークの上面から離れると、前記流体の一部はワーク上面に当接しワーク上面に沿って水平に流れることになる。
【0014】
この場合、前記溝29及び間隙31から噴出される流体は、パンチ刃部13の周面に案内されて垂直下方向へ指向される傾向が大きく、パンチ刃部13の下面への回り込みが小さなものである。すなわち、パンチ刃部13の周囲から垂直下方向へ噴射される環状の流体の流れにおける内周面は、パンチ刃部13の外周面によって下方向へ案内されるものであるから、環状に噴射される流体は垂直下方向を指向せざるを得ないものである。
【0015】
したがって、パンチ刃部13の面積に比較してかなり小さな(例えば1/4以下)ブランク(打抜きカス)の打抜き加工を行うとき、パンチ刃部13の下面に打抜きカスが密着して一体的に上昇することがある。そして、パンチ刃部13が適宜に上昇した後、打抜きカスが自然落下するとき、ダイ孔27内へ打抜きカスが吹き飛ばされることがあると共に、ときには前記ダイ孔27から外れてワークの上面へ打抜きカスが飛ばされることがある。