特許第5712316号(P5712316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5712316
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】カス上り防止方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/00 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   B21D28/00 D
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-102074(P2014-102074)
(22)【出願日】2014年5月16日
(62)【分割の表示】特願2008-37670(P2008-37670)の分割
【原出願日】2008年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-140900(P2014-140900A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2014年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2007-135769(P2007-135769)
(32)【優先日】2007年5月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(73)【特許権者】
【識別番号】399019940
【氏名又は名称】株式会社アマダツールテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓也
【審査官】 宇田川 辰郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−014014(JP,U)
【文献】 実開平02−048217(JP,U)
【文献】 特開平10−146624(JP,A)
【文献】 特開平09−029354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/00
B21D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチ金型とダイ金型との協働により板状のワークの打抜き加工を行う際のカス上り防止方法であって、前記パンチ金型に備えた板押えによってワークを前記ダイ金型の上面に押圧し、前記パンチ金型に備えたパンチ刃部によって前記ワークの一部をダイ金型におけるダイ孔内に打抜き、前記パンチ刃部の上昇時であって前記パンチ刃部が前記ワークの下面より上側で前記ワークの上面より下側に位置するとき、前記パンチ刃部の下面に付着した小片の打抜きカスを前記ダイ孔内へ落下するために、下側が小さくなる錐形面に沿って前記板押えに配置された複数の流体噴出孔から噴出された流体を、前記ワークに既に加工された穴の部分から前記ダイ孔の中央へ向い互に交差する複数方向の流体として前記パンチ刃部の下面に沿って吹き込むと共に、流体の一部を前記ダイ金型の上面に当接して前記ダイ孔の中央方向へ指向させ、前記パンチ刃部の下面に沿った流れとして前記パンチ刃部の下面に付着した小片の打抜きカスを前記ダイ孔内に落下することを特徴とするカス上り防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタレットパンチプレスなどのごときパンチプレスに備えたパンチ金型とダイ金型によって板状のワークの打抜き加工を行うとき、打抜かれた打抜きカスがワーク上面に浮上することを防止するカス上り防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンチプレスに備えたパンチ金型とダイ金型とによって板状のワークの打抜き加工を行うと、打抜かれたブランク(打抜きカス)がパンチ金型に上下動自在に備えたパンチボディの下端部のパンチ刃部の下面に密着し、前記パンチボディの上昇時に一体的に上昇してワーク上面に前記打抜きカスが上昇することがある。そこで、カス上りを防止するために、従来は、ダイ金型におけるダイ孔の内周面にブランクを保持するための構成を細工したり、パンチ金型から下方向へ流体を噴出する構成が採用されている(例えば実開平1−118828号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−118828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載のパンチ金型の構成は、図2に示すごとき構成である。すなわち、パンチ金型1は、パンチプレスにおける上型ホルダ3に上下動自在に支持される筒状のパンチガイド5を備えており、このパンチガイド5の下部に備えた板押え7には上下方向の貫通孔9が形成してある。そして、前記パンチガイド5内に上下動自在に備えたパンチボディ11の下端部には、前記貫通孔9内を上下動自在なパンチ刃部13が備えられている。
【0005】
さらに、前記パンチボディ11には、前記パンチボディ11における下部の細径部分の外周面とパンチガイド5の内周面との間の環状の空間15と、パンチプレスに上下動自在に備えたストライカ17に形成した流体供給孔19とを連通自在な流体路21が形成してある。そして、パンチプレスにおけるダイホルダ23に支持されたダイ金型25と協働して板状のワークWに打抜き加工を行うことによって打抜かれたブランク(打抜きカス)を、前記ダイ金型25におけるダイ孔27内へ落下させるために、前記パンチガイド5における前記貫通孔9の内周面の複数箇所には、前記空間15内の流体を下方向へ噴出するための溝29が形成してある。
【0006】
上記構成において、ワークWの打抜き加工を行うには、ストライカ17の下降によってパンチ金型1が下降され、パンチガイド5における板押え7でもってワークWをダイ金型25の上面に押圧固定した後、パンチボディ11に備えたパンチ刃部13によって打抜き加工が行われる。このとき打抜かれたブランクの形状は、パンチ刃部13、ダイ孔27の形状に等しいものである。そして、パンチボディ11における細径部(パンチ刃部13の僅か上の部分)の外周面と前記貫通孔9の内周面との間の微細な間隙31及び前記溝29から下方向へ噴出される流体の作用によって、ブランクがパンチ刃部13の下面に密着して、パンチボディ11と一体的に上昇することが防止されている。
【0007】
すなわち、ダイ金型25におけるダイ孔27の形状と等しい形状のブランクを打抜くときには、ブランクがダイ孔27内に入り込むと、ブランクによってダイ孔27が閉塞される態様となり、前記溝29等から下方向へ噴出される流体がブランクとパンチ刃部13との間に入り込み易く、パンチ刃部13とブランクとの密着が防止され易いものである。
【0008】
ところで、パンチ金型1とダイ金型25との協働によってワークに打抜き加工を行うとき、前述したように、パンチ刃部13,ダイ孔27の形状に等しいブランク7を打抜くとは限らず、例えば追い抜き加工やニブリング加工のように、パンチ刃部13,ダイ孔27の大きさに比較してかなり小さな打抜きカスを連続的に打抜き加工する場合がある。
【0009】
例えば、図3に示すように、一辺の長さがLの正方形の穴をワークWに打抜き加工を行うとき、例えば一辺の長さがL/2の正方向のパンチ刃部13を備えたパンチ金型1によって追い抜き加工を行うことがある。この場合、最初は、図4(A)に示すように、Aa,Ab,Ba,Bb(図3参照)の領域の打抜き加工が行われる。その後は、図4(B)に示すように領域Ca,Cbの打抜き加工を行い、次に隣接した領域Da,Dbの打抜き加工が行われる(図4(C)参照)。
【0010】
その後、隣接した領域Cc,Dcの打抜き加工が行なわれ(図4(D)参照)、次に領域Bc(図5(A)参照)、領域Ac(図5(B)参照)、領域Ad,Bd(図5(C)参照)、領域Cd(図5(D)参照)が順次打抜き加工され、最後にDd(図3参照)の打抜き加工が行われることにより、一辺の長さがLの正方形の穴が打抜き加工されることになる。
【0011】
上述のごとくワークWの打抜き加工を行うとき、図4(A)に示す状態においては、ワークから打抜かれたブランク(斜線で示した部分)の大きさはダイ孔27の大きさに等しく、その4方向(4辺)はダイ孔27の周面に接触(拘束)される傾向にあり、図4(B),(C),(D)及び図5(C)に示す状態においては、ブランクの大きさはダイ孔27の1/2の大きさであっても比較的大きく、しかも、その3方向(3辺)はダイ孔27の周面に接触(拘束)される傾向にある。
【0012】
しかし、図5(A),(B),(D)及び図3に示す状態においては、打抜かれたブランクは、ダイ孔27の1/4の大きさであって小さなものであり、しかも打抜かれた後はダイ孔27内で、例えば水平に移動可能な自由な状態にある。したがって、打抜かれた小さなブランクは、パンチ刃部13の下面に密着してパンチ刃部13と一体的に上昇し易いものである。すなわちカス上りを生じる傾向にある。
【0013】
ここで、前述したパンチ金型1を用いて前述したごとき追い抜き加工を行うとき、例えば図3図4(B)〜(D),図5(A)〜(D)の状態において、板押え7がワークWの上面に接触した場合、前述した溝29,間隙31のワークWの上面に対応した部分は閉塞され、ワークWに既に打抜き加工された穴に対応した部分の溝29,間隙31からは垂直下方向へ流体が噴出されている。そして、ワークの追い抜き加工が行われると、全ての溝29,間隙31から流体が垂直下方向へ噴出される。そして、パンチガイド5が上昇し、板押え7がワークの上面から離れると、前記流体の一部はワーク上面に当接しワーク上面に沿って水平に流れることになる。
【0014】
この場合、前記溝29及び間隙31から噴出される流体は、パンチ刃部13の周面に案内されて垂直下方向へ指向される傾向が大きく、パンチ刃部13の下面への回り込みが小さなものである。すなわち、パンチ刃部13の周囲から垂直下方向へ噴射される環状の流体の流れにおける内周面は、パンチ刃部13の外周面によって下方向へ案内されるものであるから、環状に噴射される流体は垂直下方向を指向せざるを得ないものである。
【0015】
したがって、パンチ刃部13の面積に比較してかなり小さな(例えば1/4以下)ブランク(打抜きカス)の打抜き加工を行うとき、パンチ刃部13の下面に打抜きカスが密着して一体的に上昇することがある。そして、パンチ刃部13が適宜に上昇した後、打抜きカスが自然落下するとき、ダイ孔27内へ打抜きカスが吹き飛ばされることがあると共に、ときには前記ダイ孔27から外れてワークの上面へ打抜きカスが飛ばされることがある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、パンチ金型とダイ金型との協働により板状のワークの打抜き加工を行う際のカス上り防止方法であって、前記パンチ金型に備えた板押えによってワークを前記ダイ金型の上面に押圧し、前記パンチ金型に備えたパンチ刃部によって前記ワークの一部をダイ金型におけるダイ孔内に打抜き、前記パンチ刃部の上昇時であって前記パンチ刃部が前記ワークの下面より上側で前記ワークの上面より下側に位置するとき、前記パンチ刃部の下面に付着した小片の打抜きカスを前記ダイ孔内へ落下するために、下側が小さくなる錐形面に沿って前記板押えに配置された複数の流体噴出孔から噴出された流体を、前記ワークに既に加工された穴の部分から前記ダイ孔の中央へ向い互に交差する複数方向の流体として前記パンチ刃部の下面に沿って吹き込むと共に、流体の一部を前記ダイ金型の上面に当接して前記ダイ孔の中央方向へ指向させ、前記パンチ刃部の下面に沿った流れとして前記パンチ刃部の下面に付着した小片の打抜きカスを前記ダイ孔内に落下することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、噴射される流体がパンチ刃部の下面へ回り込み易いと共に、パンチ金型の上昇時に打抜きカスが落下したようなとき、上記打抜きカスをダイ金型のダイ孔内へ吹き飛ばすことができるものであり、小さな打抜きカスのカス上りを効果的に防止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るパンチ金型の主要部分を表わした断面説明図である。
図2】従来のパンチ金型の構成を示す断面説明図である。
図3】板状のワークの打抜き加工を行う場合の作用説明図である。
図4】板状のワークの打抜き加工を行う場合の作用説明図である。
図5】板状のワークの打抜き加工を行う場合の作用説明図である。
図6】第2の実施形態に係るパンチ金型の主要部分を表わした断面説明図である。
図7】第3の実施形態に係るパンチ金型の主要部分を表わした断面説明図である。
図8】第4の実施形態に係るパンチ金型の主要部分を表わした断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明するに、前述した従来の構成と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付することとして重複した説明は省略する。
【0020】
概念的、概略的に示す図1を参照するに、本実施形態に係るパンチ金型及びダイ金型の構成は、前述したパンチ金型1,ダイ金型25とほぼ同一である。すなわち、パンチ金型1は、筒状のパンチガイド5を備えており、このパンチガイド5の下部には板押え7が備えられている。そして、この板押え7に形成した上下方向の貫通孔9の周囲には、環状の空間15に連通した複数の流体噴出孔33が形成されている。前記流体噴出孔33は、前記貫通孔9とは直接連結することのない非連通状態に設けてあり、かつ前記パンチガイド5の上昇時に、各流体噴出孔33から噴出した流体の流れがダイ金型25に備えたダイ孔27の中央部に集中するように斜め下方向に指向してある。換言すれば、前記複数の流体噴出孔33は、下側が小さくなる錐形面に沿って配置したものである。
【0021】
以上のごとき構成において、ダイ金型25上に板状のワークWを載置し、パンチ金型1によって最初の打抜き加工を行うとき、パンチ金型1における板押え7によってワークWをダイ金型25に押圧固定すると、板押え7における貫通孔9の周囲に設けた複数の流体噴出孔33は、ワークWの上面によって閉塞された状態にある。そして、ワークWのAa,Ab,Ba,Bb領域の打抜き加工を行い穴HA(図4(B)参照)の打抜き加工が行われると、そのときのブランク(打抜きカス)の全周面はダイ金型25のダイ孔27内へ押し入れられ、ダイ孔27の全周面と接触する。
【0022】
その後、パンチ金型1が上昇するときには、先ずパンチボディ11が上昇し、パンチ刃部13がワークWの上面より高く上昇した後に、パンチガイド5が上昇してパンチガイド5の下面がワークWの上面から上方向に離反する。上述のように、ワークWの上面からパンチガイド5の下面が離れると、パンチ金型1における環状の空間15内へ予め流入していた流体は複数の流体噴出孔33からパンチ金型1における貫通孔9の軸心で貫通孔9の下方の位置へ集中するように、貫通孔9の周囲から噴射される。
【0023】
前述のごとくワークWに穴HAを打抜き加工したときの打抜きカスの全周囲は、ダイ金型25におけるダイ孔27の全内周面に接触されるので、パンチ刃部13の下面に打抜きカスが密着して一体的に上昇すること、すなわちカス上りは比較的少ないものである。また、前記ダイ孔27から打抜きカスが落下することなく停止している場合には、パンチ金型1が適宜に上昇すると、複数の流体噴出孔33から噴出した流体はダイ孔27の中央部に集中することとなり、ダイ孔27内の打抜きカスを効果的に落下することができるものである。
【0024】
次に、穴HAに隣接したCa,Cbの領域の打抜き加工を行うときは、図4(B)に示すように、穴HAに対応した部分の流体噴出孔33(ハツチングを付することなく白丸で表した孔)はワークWによって閉塞されることなく常に開いた状態にある。したがって、パンチガイド5における板押え7でもってワークWをダイ金型25の上面へ押圧固定した状態においては、開いた状態の流体噴出孔33から斜め下方に噴出された流体は、ダイ金型25の上面に当接し、ダイ孔27の内方向へ指向して流れることになる。
【0025】
そして、打抜き加工を行うべくパンチ金型1におけるパンチボディ11が下降し、パンチ刃部13がダイ孔27内に進入すると、パンチ刃部13の外周面とダイ孔27の内周面との間の微小間隙から流体がダイ孔27内に流入することとなり、流体の流入は少なくなる。その後、パンチボディ11が上昇し、パンチ刃部13の下面がワークWの下面すなわちダイ金型25の上面から僅かに上昇すると、ダイ孔27が開放される態様となり、ダイ金型25の上面に当接して内方向へ指向された多量の流体がダイ孔27内に流入することになる。
【0026】
この際、パンチ刃部13の下面がワークWの上面より下側に位置するときには、ダイ金型25の上面に当接して内方向へ指向して流れる流体の一部は、前記パンチ刃部13の下面に沿って流れることとなる。したがって、前記パンチ刃部13の下面に小さな打抜きカスが密着(付着)しているような場合には、付着している打抜きカスを吹き飛ばすことになる。なお、図4(B)に示す打抜きの場合、打抜きカスの三方向(図4(B)においての上下,右側)はダイ孔27に接触するので、パンチ刃部13に密着してのカス上りは比較的少ないものである。
【0027】
次に、図4(C),(D)及び図5(C)に示すように、領域Da,Db;Cc,Dc及びAd,Bdの打抜き加工を行うときは、図4(B)を用いて説明した場合と同様の作用,効果が得られるものである。
【0028】
そして、図5(A)に示すように、領域Bcの打抜き加工を行う場合には、生じる打抜きカスの大きさはパンチ刃部13の下面の面積,ダイ孔27の断面積の約1/4であって小さなものであり、しかも、ダイ孔27と接触する部分が二方向(図5(A)においては上,左側)であって、ダイ孔27内で移動し易く、またパンチ刃部13の下面に密着し易いものである。上述のように、小さな領域Bcの打抜き加工を行う場合には、図5(A)に示すように、ダイ孔27の周囲の流体噴出孔33からダイ孔27の中央へ向い互いに交差する方向の流体が噴出されるものである。
【0029】
したがって、パンチガイド5の板押え7がワークWをダイ金型25に押圧した状態にあるとき、ワークWに既に打抜き加工された穴に対応する複数の流体噴出孔33からダイ金型25の上面へ噴出された流体は、ダイ金型25の上面に当接しパンチ刃部13の下面に沿ってダイ孔27の中央方向へ指向して流れる。そして、ダイ孔27の中央部において交差する方向の流れが合流し、流れの一部は領域Bc方向へ流れることになる。
【0030】
よって、領域Bcの打抜き加工を行い、パンチ刃部13がダイ金型25の上面から僅かに上昇すると、既に打抜き加工された穴に対応した複数の流体噴出孔33から噴出された多量の流体がダイ孔27内へ流入し一部がパンチ刃部13の下面に沿って領域Bc方向へ流れ、領域Bcの打抜き加工時の小さな打抜きカスがパンチ刃部13の下面に付着することを防止するものである。すなわち、打抜きカスが、例えばダイ孔27の面積の1/4又はそれ以下のように小さく付着し易い場合であっても、パンチ刃部13の下面に密着してのカス上りを防止することができるものである。
【0031】
ところで、複数の流体噴出孔33から噴出される流体を、放射方向に対して適宜に傾斜して内方向を指向するように噴出させて、旋回流を生じさせることも可能である。
【0032】
本発明は、前述したごとき実施形態に限るものではなく、適宜の変更を加えることにより、その他の形態でもって実施可能である。例えば図6に示すように、パンチガイド5に対して上昇した状態にあるパンチ刃部13より下側又は上記パンチ刃部13とほぼ同一高さ位置において貫通孔9と環状の空間15とを連通した複数の第2の流体噴出孔33Aを設けた構成とすることも可能である。
【0033】
上記構成においては、より大量の流体を噴出することができ、打抜きカスのカス上りを効果的に防止することができる。また、前記構成においては、板抑え7がワークWを押さえた状態にあっても、パンチボディ11が上昇したときには複数の第2の流体噴出孔33Aの全てからダイ孔27方向へ流体を噴出することができ、パンチ刃部13の下面に対して吸引作用が働き、カス上りを上り効果的に防止することができる。なお、前記流体噴出孔33Aの指向方向を、貫通孔9の周面に沿う方向として、前記噴出孔33Aから噴出された流体の流れを旋回流とすることも可能である。
【0034】
図7は、流体噴出孔33を、板押え7の下面及び貫通孔9に連通して形成したものである。この構成によれば、ワークWに既に打抜き加工された穴に対応した複数の流体噴出孔33から流体が噴出されることは勿論のこと、板押え7がワークWを押えている部分の流体噴出孔33からの流体の一部はワークWの上面に当接して内方向に指向されるものであり、パンチボディ11が上昇するときに、パンチ刃部13の下面方向へ流体を指向することができ、カス上りを防止することができるものである。
【0035】
図8は、図6の変形例を示すもので、流体噴出孔としては第2の流体噴出孔33Aのみの構成としたものである。この構成においてもカス上りを効果的に防止することができるものである。
【0036】
なお、前記説明においては、パンチガイド5と板押え7とが一体構成の場合について例示したが、前記流体噴出孔の加工を容易に行うために、パンチガイド5と板押え7とを別体とし、パンチガイド5に板押え7を一体に取付ける構成とすることも可能であり、また流体噴出孔から噴出される流体が貫通孔9の軸心方向に水平に流れる構成とすることも可能である。すなわち種々の変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0037】
1 パンチ金型
5 パンチガイド
7 板押え
9 貫通孔
11 パンチボディ
13 パンチ刃部
15 環状の空間
19 流体供給孔
25 ダイ金型
27 ダイ孔
33 流体噴出孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8