特許第5712339号(P5712339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5712339
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】入力装置、入力方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   G06F3/041 534
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-561651(P2014-561651)
(86)(22)【出願日】2014年5月30日
(86)【国際出願番号】JP2014064507
【審査請求日】2014年12月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 大志
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−501261(JP,A)
【文献】 特開2007−219814(JP,A)
【文献】 特開平6−83523(JP,A)
【文献】 特開2013−186698(JP,A)
【文献】 特開平4−160621(JP,A)
【文献】 特開平7−306752(JP,A)
【文献】 特開平6−67788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041−048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指又はスタイラスによる接触を含む、ユーザの接触の影響を受けたタッチパネル上の複数の点を示す情報を取得する取得手段と、
前記指又はスタイラスによる接触以外の前記タッチパネルへの前記ユーザの接触の位置を示す基準位置と、前記複数の点のうち少なくとも一部との距離を算出する距離算出手段と、
前記算出される距離に基づいて、前記少なくとも一部の点から前記指又はスタイラスによる接触の影響を受けた1又は複数の点を選択する選択手段と、
前記選択された点に基づいて前記ユーザが示す位置の座標を取得する座標取得手段と、
を含む入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入力装置において、
前記タッチパネルに前記ユーザの複数の接触があるか判定する判定手段と、
前記ユーザの複数の接触があると判定された場合に前記基準位置を取得する基準位置取得手段と、
をさらに含み、
前記距離算出手段は前記取得された基準位置に基づいて前記距離を算出し、
前記選択手段は前記距離に基づいて前記1または複数の点を選択する、
入力装置。
【請求項3】
請求項2に記載の入力装置において、
前記判定手段は、前記複数の点の分散に基づいて複数の接触があるかを判定する、
入力装置。
【請求項4】
請求項2に記載の入力装置において、
前記判定手段は、前記ユーザの接触のある面積に基づいて前記ユーザの複数の接触があるかを判定する、
入力装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の入力装置において、
前記基準位置は前記複数の点に基づく重心である、
入力装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の入力装置において、
前記複数の点のそれぞれは前記タッチパネルにある静電容量を測定する複数の箇所のうちいずれかである、
入力装置。
【請求項7】
請求項6に記載の入力装置において、
前記距離算出手段は前記複数の点のそれぞれの位置と当該点における測定値とに基づいて基準位置を算出する、
入力装置。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の入力装置において、
前記複数の点は、当該タッチパネル上の前記ユーザの複数の接触の位置を示す、
入力装置。
【請求項9】
指又はスタイラスによる接触を含む、ユーザの接触の影響を受けたタッチパネル上の複数の点を示す情報を取得するステップと、
前記指又はスタイラスによる接触以外の前記タッチパネルへの前記ユーザの接触の位置を示す基準位置と、前記複数の点のうち少なくとも一部との距離を算出するステップと、
前記算出される距離に基づいて、前記少なくとも一部の点から前記指又はスタイラスによる接触の影響を受けた1又は複数の点を選択するステップと、
前記選択された点に基づいて前記ユーザが示す位置の座標を取得するステップと、
を含む入力方法。
【請求項10】
指又はスタイラスによる接触を含む、ユーザの接触の影響を受けたタッチパネル上の複数の点を示す情報を取得し、
前記指又はスタイラスによる接触以外の前記タッチパネルへの前記ユーザの接触の位置を示す基準位置と、前記複数の点のうち少なくとも一部との距離を算出し、
前記算出される距離に基づいて、前記少なくとも一部の点から前記指又はスタイラスによる接触の影響を受けた1又は複数の点を選択し、
前記選択された点に基づいて前記ユーザが示す位置の座標を取得する、
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入力装置、入力方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タブレット端末のように大きな感知領域を有するタッチパネルを用いて文字や図形を入力することが増えつつある。指やスタイラスなどを用いて感知領域に文字や図形を入力しようとすると、手の小指側の端や手のひらの手首側の端、また手首自体(以下ではこれらをまとめて「手の小指側の端など」や「手の幹」と記載する)がタッチパネルの感知領域に接触する場合がある。これらがタッチパネルの感知領域に接触すると、ユーザが指し示す指やスタイラスの位置を検出できない。
【0003】
この点、特許文献1には、静電容量式のタッチパネルにおいて、ある検出点における検出最大値と、その前後の検出点における検出値とを用いて手のひらが触れたか否かを検出し、手のひらが触れた場合に座標データを生成しないことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−82765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術によれば、手のひらがタッチパネルに触れた場合には、座標データの生成そのものが停止するため、ユーザの指し示す位置である、指先やスタイラスの接触位置が検出できない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、手の小指側の端などがタッチパネルの感知領域に接触するような場合であっても、指やスタイラスなどによりユーザが指し示す位置を検出できる入力装置、入力方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる入力装置は、指又はスタイラスによる接触を含む、ユーザの接触の影響を受けたタッチパネル上の複数の点を示す情報を取得する取得手段と、前記指又はスタイラスによる接触以外の前記タッチパネルへの前記ユーザの接触の位置を示す基準位置と、前記複数の点のうち少なくとも一部との距離を算出する距離算出手段と、前記算出される距離に基づいて、前記少なくとも一部の点から前記指又はスタイラスによる接触の影響を受けた1又は複数の点を選択する選択手段と、前記選択された点に基づいて前記ユーザが示す位置の座標を取得する座標取得手段と、を含む。
【0008】
また、本発明にかかる入力方法は、指又はスタイラスによる接触を含む、ユーザの接触の影響を受けたタッチパネル上の複数の点を示す情報を取得するステップと、前記指又はスタイラスによる接触以外の前記タッチパネルへの前記ユーザの接触の位置を示す基準位置と、前記複数の点のうち少なくとも一部との距離を算出するステップと、前記算出される距離に基づいて、前記少なくとも一部の点から前記指又はスタイラスによる接触の影響を受けた1又は複数の点を選択するステップと、前記選択された点に基づいて前記ユーザが示す位置の座標を取得するステップと、を含む。
【0009】
また、本発明にかかるプログラムは、指又はスタイラスによる接触を含む、ユーザの接触の影響を受けたタッチパネル上の複数の点を示す情報を取得し、前記指又はスタイラスによる接触以外の前記タッチパネルへの前記ユーザの接触の位置を示す基準位置と、前記複数の点のうち少なくとも一部との距離を算出し、前記算出される距離に基づいて、前記少なくとも一部の点から前記指又はスタイラスによる接触の影響を受けた1又は複数の点を選択し、前記選択された点に基づいて前記ユーザが示す位置の座標を取得する、処理をコンピュータに実行させる。
【0010】
本発明によれば、手の小指側の端などがタッチパネルに接触するような場合であっても、指やスタイラスなどによりユーザが指し示す位置を確実に検出することができる。
【0011】
本発明の一態様では、入力装置は、前記タッチパネルに前記ユーザの複数の接触があるか判定する判定手段と、前記ユーザの複数の接触があると判定された場合に前記基準位置を取得する基準位置取得手段と、をさらに含み、前記距離算出手段は前記取得された基準位置に基づいて前記距離を算出し、前記選択手段は前記距離に基づいて前記1または複数の点を選択してもよい。
【0012】
本発明の一態様では、前記判定手段は、前記複数の点の分散に基づいて複数の接触があるかを判定してもよい。
【0013】
本発明の一態様では、前記判定手段は、前記ユーザの接触のある面積に基づいて前記ユーザの複数の接触があるかを判定してもよい。
【0014】
本発明の一態様では、前記基準位置は前記複数の点に基づく重心であってよい。
【0015】
本発明の一態様では、前記複数の点のそれぞれは前記タッチパネルにある静電容量を測定する複数の箇所のうちいずれかであってよい。
【0016】
本発明の一態様では、前記距離算出手段は前記複数の点のそれぞれの位置と当該点における測定値とに基づいて基準位置を算出してよい。
【0017】
本発明の一態様では、前記複数の点は、当該タッチパネル上の前記ユーザの複数の接触の位置を示してよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態にかかるタッチパネル入力装置の構成の一例を示す図である。
図2】手書き入力する際のタッチパネルの感知領域と手との関係の一例を示す図である。
図3】各測定点における静電容量の測定値の一例を示す図である。
図4】第1の実施形態にかかる座標算出部が実現する機能を示すブロック図である。
図5】第1の実施形態にかかる座標算出部の処理の一例を示すフロー図である。
図6図3の例における基準位置と測定点Pとの距離の関係を示す図である。
図7】第2の実施形態にかかるホスト部2が実現する機能を示すブロック図である。
図8】座標選択部の処理の一例を示すフロー図である。
図9】算出されたタッチ位置の座標と基準位置と距離との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。出現する構成要素のうち同一機能を有するものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるタッチパネル入力装置の構成の一例を示す図である。タッチパネル入力装置は、静電容量方式のタッチパネルであるタッチパネル部1と、ホスト部2とを含む。タッチパネル入力装置は、具体的には、タブレット端末や、電子書籍リーダなどである。
【0021】
タッチパネル部1は、縦方向に並ぶ走査電極10と、横方向に並ぶ検出電極12と、走査電極10と検出電極12とが交差する箇所にある各測定部Cの接触強度を示す信号を検出する接触強度検出部21と、座標算出部22とを含む。タッチパネル部1は静電容量方式のタッチパネルである。
【0022】
ホスト部2は、プロセッサ31と、記憶部32と、通信部33と、表示部34とを含む。プロセッサ31は記憶部32に格納されたプログラムを実行し、通信部33、表示部34を制御する。上記プログラムは、インターネット等を介して提供されるものであってもよいし、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されてもよい。
【0023】
記憶部32は、RAMやフラッシュメモリ等のメモリ素子やハードディスクドライブ等によって構成されている。記憶部32は、上記プログラムを格納する。また、記憶部32は、各部から入力される情報や演算結果を格納する。
【0024】
通信部33は、他の装置と通信する機能を実現するものであり、例えば無線LANの集積回路やアンテナなどにより構成されている。通信部33は、プロセッサ31の制御に基づいて、他の装置から受信した情報をプロセッサ31や記憶部32に入力し、他の装置に情報を送信する。
【0025】
表示部34は、表示出力デバイスやその表示出力デバイスをコントロールするビデオコントローラなどにより構成される。表示部34は、プロセッサ31の制御に基づいて、表示出力デバイスに表示データを出力する。なお、表示出力デバイスはタッチパネル入力装置の外に接続されるものであってもよい。
【0026】
次にタッチパネル部1について説明する。複数の走査電極10は、それぞれ図1の左右方向に延びており、その端は配線によって接触強度検出部21に接続されている。複数の検出電極12は、それぞれ図1の上下方向に延びており、その端は配線によって接触強度検出部21に接続されている。複数の測定部Cは、走査電極10と検出電極12とが交差する位置に存在する。ここで、接触強度は近接や接触の度合いのことである。複数の測定部Cはm行n列のマトリクスとなっている。図1ではi番目の行、j番目の列の測定部CをCijと記載している。例えば、測定部C11は1行目の1列目にあり、測定部C1mは1行目m列目にある。測定部Cはタッチパネルの感知領域14内に存在する。以下では、測定部Cijのそれぞれの代表的な位置(例えば中心)を、測定点Pijと記載する。
【0027】
接触強度検出部21は、複数の走査電極10に順にパルス信号を供給することをフレーム期間ごとに繰り返す走査回路、パルスが供給される際の相互キャパシタンス変化に応じた接触強度の信号を取得し、その接触強度の信号をデータ信号にAD変換する信号取得回路を有する。走査回路が1つの走査電極10にパルスを印加すると、信号取得回路がその走査電極10と複数の検出電極12とが交差する位置にある複数の測定部Cについて接触強度を示すデータ信号を出力する。走査回路が全ての走査電極10を1回ずつ走査すると、信号取得回路は全ての測定部Cについてそのフレーム期間における接触強度を示すデータ信号を出力する。ここで、1フレーム期間は接触強度のサンプリング周期に相当する。
【0028】
図2は、手書き入力する際のタッチパネルの感知領域14と手との関係の一例を示す図である。手書き入力をする際には、ユーザがタッチパネルの感知領域14上に複数の接触をする。より具体的には、感知領域14には位置を指し示すユーザのスタイラスまたは指が接触し、さらにその指し示す指やスタイラスを持つ指より根元(手首)に近い手の部分が接触する。この手の部分は、手の小指側の端、手のひらのうち指より手首に近い部分、手首そのものなどであり、スタイラスや指を動かす際にその動きを安定させるために感知領域14に接触する部分である。
【0029】
図3は、各測定点Pにおける静電容量の測定値の一例を示す図である。本図では、測定値を等高線グラフによって表している。図3では、破線、細い実線、太い実線の順に値が大きくなっている。例えば、破線は一般的なノイズの値より大きい程度の値を示し、細い実線は接触の中心でかならず生じる程度の値を示す。図3の左側の円状の領域はスタイラスが接触することにより生じる測定値のピークを示しており、右側のより大きい領域の等高線は手の小指側の端が接触することにより生じる測定値のピーク等を示している。
【0030】
図3の説明などからわかるように、接触強度検出部21は、タッチパネル部1の感知領域14に触れた指またはスタイラスと、その指より手首に近い手の部分(手の小指側の端や手のひらの手首に近い部分や手首そのもの)が触れた場合に、それらの接触の影響を受けた複数の測定点Pを示す信号を取得する。実際には、接触の影響を受けた測定点Pの測定値は、ノイズの値と区別するノイズ閾値より大きい値を示す。
【0031】
ここで、文字などを入力する際には、ユーザは、位置を示すスタイラスや指と、小指側の端などとが、近くなるようにタッチすることはほとんどない。そのため、スタイラス等が接触する位置は、手の小指側の端が接触する大領域のどこからみても、その大領域の中の他の点より遠くなる傾向がある。例えば、図2における手の小指側の端が接触する領域の上端から下端の距離より、手の小指側の端が接触する領域の中の点からスタイラス等が接触する位置までの距離の方が大きい。
【0032】
座標算出部22は、接触強度検出部21が検出した各測定点Pにおける接触強度の測定値に基づいて、ユーザがスタイラスまたは指により指し示す位置の座標を算出する。座標算出部22は、図示しない記憶部(例えばメモリ)およびプロセッサを含む集積回路により実現されてよい。以下では、座標算出部22が上記集積回路により実現される場合について説明する。なお、座標算出部22はプログラムを必要としないデジタル回路によって実現されてもよい。
【0033】
図4は、第1の実施形態にかかる座標算出部22が実現する機能を示すブロック図である。座標算出部22は、機能的に、マルチタッチ判定部41、基準位置取得部42、距離算出部43、測定点選択部44、タッチ座標取得部45を含む。これらの機能は、プロセッサが記憶部に格納されたプログラムを実行し、バス等を介して他の回路とデータをやりとりすることで実現される。このプログラムは、予めメモリに格納されているが、インターネット等を介して提供されてもよいし、フラッシュメモリなどの記憶媒体によって提供されてもよい。以下ではこれらの機能について、処理フローとともに説明する。
【0034】
図5は、第1の実施形態にかかる座標算出部22の処理の一例を示すフロー図である。はじめに、座標算出部22は、接触強度検出部21から複数の測定点Pにおける寄生容量の測定値を取得する(ステップS101)。
【0035】
次に、座標算出部22に含まれるマルチタッチ判定部41は、取得された寄生容量の測定値に基づいて、タッチパネルの感知領域14に複数の接触があるか否かを判定する(ステップS102)。より具体的には、例えば、マルチタッチ判定部41は、判定閾値を超える測定点Pのx座標の分散を求め、その分散が判定基準値より大きい場合に複数の接触があったと判定してよい。この判定閾値は測定値における微小なノイズの最大値より大きい。また判定閾値はノイズと分離するためのノイズ閾値より大きくてよい。またマルチタッチ判定部41は判定閾値を超える測定点Pの数をカウントすることで、接触のある面積を求め、その面積が予め定められた値を超える場合に複数の接触があったと判定してもよいし、マルチタッチ判定部41が公知の分水嶺アルゴリズム(Watershed algorism)を用いて全ての測定点Pを含む領域を複数の領域に分割できた場合に複数の接触があったと判定してもよい。
【0036】
複数の接触がないと判定された場合には(ステップS103のN)、1箇所の接触のみなので、座標算出部22に含まれる測定点選択部44は全ての測定点Pを座標の計算に用いるものとして選択し(ステップS110)、ステップS107以降の処理を行う。
【0037】
複数の接触があったと判定された場合には(ステップS103のY)、座標算出部22に含まれる基準位置取得部42は基準位置を計算する。より具体的には、基準位置取得部42は、測定点Pの座標と測定値とに基づいて、複数の測定点Pの重心を基準位置として取得する(ステップS104)。基準位置取得部42は、複数の測定点Pのそれぞれの測定値を重みとして重心を計算してもよいし、予め定められた閾値を超える測定点Pの重みが1(所定値)で、その他の測定点Pの重みが0であるとして重心を計算してもよい。
【0038】
基準位置は指や手の小指側の端(または手首)を代表する位置である。手の小指側の端が感知領域14に接触する領域は、スタイラス等が接触する領域より大きい。そのため、手の小指側の端などの接触の影響を受ける測定点の数は、スタイラス等の接触の影響を受ける測定点の数より十分に多い。計算された重心は、手の小指側の端などが接触する領域の中か、あるいはその領域からわずかだけずれた位置になるので、手の小指側の端などを代表する位置とみなせる。
【0039】
また、基準位置取得部42は基準位置を異なる方法で取得してもよい。例えば、ユーザが右利きであるか左利きであるかの情報を予めメモリに記憶しておき、基準位置取得部42は、右利きである場合には中心より右下にある予め定められた第1の座標を基準位置として計算し、左利きである場合には中心より左下にある予め定められた第2の座標を基準位置として計算してもよい。例えば右利きであれば感知領域14の右端かつ下半分のあたりに手の小指側の端が接触する可能性が高いので、感知領域14の右下の固定的な位置も手の小指側の端などを代表する位置(基準位置)として取得することができる。また、領域を縦横それぞれ4分割するなどにより複数の小領域に分割しておき、基準位置取得部42は座標算出部22がその小領域に含まれる測定点Pの測定値の平均値(含まれる測定点Pの数が小領域にかかわらず同じ場合は和でもよい)が最大となる小領域の代表点(例えば中心)の座標を基準位置として計算してもよい。
【0040】
基準位置が取得されると、座標算出部22に含まれる距離算出部43は、複数の測定点Pのうち、測定値が計算閾値を超える測定点Pについて基準位置からの距離を計算する(ステップS105)。そして、座標算出部22に含まれる測定点選択部44は、複数の測定点Pのうち、距離が計算され、かつ距離が最も大きい測定点Pをタッチされた座標の計算に用いる測定点Pのうち1つとして選択する(ステップS106)。ここで、計算閾値は、それぞれのタッチの中心で必ず検出される程度の値であってよい。基準位置は手の小指側の端や手首の位置に相当すると考えられるので、基準位置から最も離れた測定点Pはスタイラスや指などにより静電容量が生じていると考えられる。したがって、座標算出部22が選択する測定点Pは、スタイラスや指の位置の近傍であることが期待される。
【0041】
図6は、図3の例における基準位置Rと測定点Pとの距離の関係を示す図である。仮に計算閾値が図6の細い実線であるとすると、その計算閾値を超える測定値を有するのは、測定点P57,P58,P62,P68,P78,P88となる。図6の例では、座標算出部22はこれらの測定点Pのそれぞれと基準位置Rとの距離L1,L2,L3,L4,L5,L6を計算し、それらの中で最も大きい距離L3が計算された測定点P62を選択する。
【0042】
そして、測定点選択部44は、選択された1つの測定点Pの周辺の測定点Pをタッチされた座標の計算に用いる複数の測定点Pとしてさらに選択する(ステップS107)。これにより、座標の計算に用いる複数の測定点Pのすべてが選択される。周辺の測定点Pは、単に基準位置から最も遠い選択された点を囲む8つの測定点Pなど、最も遠い選択された点に対して予め定められた相対的な位置を有する複数の測定点Pであってもよい。また測定点選択部44は、感知領域14の測定値を分水嶺アルゴリズムで分割した領域のうち、計算された距離が最も大きい測定点Pを含む領域に属する複数の測定点Pをタッチされた座標の計算に用いる複数の測定点Pとして選択してもよい。
【0043】
座標計算に用いる複数の測定点Pが選択されると、座標算出部22に含まれるタッチ座標取得部45は、選択された複数の測定点Pを用いてユーザがスタイラスまたは指で指し示すタッチ位置の座標を計算する(ステップS108)。具体的には、タッチ座標取得部45は選択された複数の測定点Pの測定値を重みとして計算される重心をユーザが指し示すタッチ位置の座標として求める。またタッチ座標取得部45は他の手法により選択された複数の測定点Pの測定値からユーザが指し示す位置の座標を求めてもよい。そして座標算出部22は計算された座標をホスト部2に向けて出力する(ステップS109)。
【0044】
ホスト部2に含まれるプロセッサ31、記憶部32、通信部33、表示部34は、記憶部32に格納されたプログラムを実行することで、座標算出部22が算出したユーザが指し示すタッチ位置の座標に応じて、表示部34の表示出力デバイス等に画像を出力する機能を実現する。
【0045】
このように、基準位置を計算し、その基準位置からの距離が最も遠い測定点Pを選択するという比較的簡易的なアルゴリズムにより、手の小指側の端などの接触の影響を取り除き、指やスタイラスによりユーザが示す座標を検出することが可能になる。また、クラスタリングのような複雑な処理を行わないため、例えばタッチパネル部1に組み込まれるような一般的に処理能力を向上させにくいハードウェアでも容易に手の小指側の端の影響を取り除くことが可能になる。
【0046】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、タッチパネル部1の感知領域14上の予め定められた位置に存在する複数の測定点Pのうち、計算閾値を超えかつ基準位置から最も遠い測定点Pを選択し、その選択された測定点Pを用いてユーザが指し示す座標を求めている。ここで、選択されるものは、必ずしも測定点Pでなくてもよい。第2の実施形態では、接触位置として座標が算出された複数の点のうち、基準位置から最も遠い点を選択するものである。以下では第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0047】
第2の実施形態にかかるタッチパネル入力装置は、第1の実施形態と同様に、静電容量方式のタッチパネルであるタッチパネル部1と、ホスト部2とを含む。タッチパネル部1およびホスト部2のハードウェア構成は、第1の実施形態と同様である。
【0048】
第2の実施形態にかかる座標算出部22の処理は、第1の実施形態とは異なる。座標算出部22は、接触強度検出部21が検出した各測定点Pにおける測定値から、接触する物体のそれぞれについて1または複数のタッチ位置の座標を算出する。例えば、感知領域14に複数の物体が接触する場合や、手の小指側の端のように大きな1つの物体が感知領域14に接触する場合には、複数のタッチ位置の座標が算出され、スタイラスや指のような1つの小さな物体が感知領域14に接触する場合には、1つのタッチ位置の座標が算出される。例えば、スタイラスと手の小指側の端とが感知領域14に接触している場合には、スタイラスのタッチ位置の座標と、手の小指側の端について複数のタッチ位置の座標が算出される。より具体的には、座標算出部22は、公知の分水嶺アルゴリズムを用いて感知領域14を分割し、分割された感知領域14のそれぞれについてタッチ位置の座標を求めることで、複数のタッチ位置の座標を算出する。座標算出部22は感知領域14を分割できない場合には、感知領域14の全体の測定点Pの測定値を用いて1つのタッチ位置の座標を算出する。
【0049】
図3の例に示すように測定値が分布する場合には、測定点P62近辺のピーク、測定点P18近辺のピーク、測定点P88近辺のピークの3箇所に応じた3つのタッチ座標が算出される。また、座標算出部22は、算出された1または複数のタッチ位置の座標を、ホスト部2に向けて出力する。
【0050】
図7は、第2の実施形態にかかるホスト部2が実現する機能を示すブロック図である。ホスト部2は、機能的に、座標選択部51と、アプリケーション部52とを含む。また、座標選択部51は、算出結果取得部61、マルチタッチ判定部62、基準位置取得部63、距離算出部64、タッチ位置選択部65、タッチ座標取得部66を含む。これらの機能は、プロセッサ31が記憶部32に格納されるプログラムを実行し、通信部33や表示部34等を制御することにより実現される。このプログラムは、インターネット等を介して提供されるものであってもよいし、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されてもよい。
【0051】
図8は、座標選択部51の処理の一例を示すフロー図である。座標選択部51は、プロセッサ31および記憶部32を中心として実現される。はじめに、座標選択部51に含まれる算出結果取得部61は、座標算出部22がバスを介して出力した1または複数のタッチ位置の座標を取得する(ステップS201)。次に、座標選択部51に含まれるマルチタッチ判定部62は、座標算出部22が座標を算出したタッチ位置の数に基づいて、手の小指側の端や手首の接触があるか否かを判定する(ステップS202)。タッチ位置の数が3未満の場合には(ステップS202のN)、座標選択部51に含まれるタッチ位置選択部65はすべてのタッチ位置を出力対象として取得し、座標選択部51に含まれるタッチ座標取得部66は取得された全てのタッチ位置の座標をアプリケーション部52に引き渡す(ステップS207)。
【0052】
一方、タッチ位置の数が3以上の場合には(ステップS202のN)、座標選択部51に含まれる基準位置取得部63は1つのタッチ位置を選択するために、基準位置を計算する。より具体的には、基準位置取得部63は、取得された3つ以上のタッチ位置の重心を基準位置として計算する(ステップS203)。そして、座標選択部51に含まれる距離算出部64はタッチ位置のそれぞれについて基準位置からの距離を算出し(ステップS204)、座標選択部51に含まれるタッチ位置選択部65は算出された距離が最も大きいタッチ位置を選択する(ステップS205)。
【0053】
ここで、基準位置は必ずしも重心でなくてもよい、例えば、第1の実施形態のように、予め設定されたユーザの利き手に応じて定まる位置であってもよい。
【0054】
図9は、算出されたタッチ位置X1,X2,X3の座標と基準位置Xcと距離D1,D2,D3との関係の一例を示す図である。図9は、図3に示す測定値が測定された場合に座標算出部22が算出するタッチ位置X1からX3を示している。タッチ位置X1は図2のスタイラスの位置に対応し、タッチ位置X2,X3は手の小指側の端が接触する位置のうち、より強い接触強度が検出される2つの点の位置に対応する。より面積の大きい手の小指側の端や手首については、通常は複数の点が検出される。図9では基準位置Xcはタッチ位置X1からX3の重心であり、第1の実施形態と同様に手の小指側の端により近い位置となる。従って、基準位置Xcとタッチ位置X1からX3との距離D1〜D3のうち距離D1が最も大きくなり、タッチ位置X1が選択される。
【0055】
タッチ位置が選択されると、座標選択部51は、選択されたタッチ位置の座標を取得し、アプリケーション部52に引き渡す(ステップS206)。
【0056】
アプリケーション部52は、プロセッサ31、記憶部32、通信部33、表示部34等により実現される。アプリケーション部52は、プロセッサ31がアプリケーションプログラムを実行することにより実現され、座標選択部51が出力したタッチ位置の座標に基づいて入力される文字や命令を判定し、それらの文字や命令に応じた画像を表示するなどの処理を実行する。
【0057】
第1の実施形態や第2の実施形態にかかるタッチパネル入力装置は、ユーザが文字等を入力する際に手の小指側の端などが接触しても、指やスタイラスによりユーザが指し示す位置を検出することが可能になる。
【0058】
また、本発明はタブレット端末や、電子書籍リーダ以外のものに適用されてもよい。例えば、タッチパネル入力装置が、パーソナルコンピュータなどに接続される外付けのタッチパネルであってもよいし、ホスト部2を含まず部品として供給されるタッチパネルであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 タッチパネル部、2 ホスト部、10 走査電極、12 検出電極、14 感知領域、21 接触強度検出部、22 座標算出部、31 プロセッサ、32 記憶部、33 通信部、34 表示部、41,62 マルチタッチ判定部、42,63 基準位置取得部、43,64 距離算出部、44 測定点選択部、45,66 タッチ座標取得部、51 座標選択部、52 アプリケーション部、61 算出結果取得部、65 タッチ位置選択部、C 測定部、P 測定点、L1,L2,L3,L4,L5,L6,D1,D2,D3 距離、R,Xc 基準位置、X1,X2,X3 タッチ位置。
【要約】
手の小指側の端や手首などがタッチパネルに接触するような場合であっても、指やスタイラスなどによりユーザが指し示す位置を検出すること。
入力装置は、指又はスタイラスによる接触を含む、ユーザの接触の影響を受けたタッチパネル上の複数の点を示す情報を取得し、前記指又はスタイラスによる接触以外の前記タッチパネルへの前記ユーザの接触の位置を示す基準位置と、前記複数の点のうち少なくとも一部との距離を算出し、前記算出される距離に基づいて、前記少なくとも一部の点から前記指又はスタイラスによる接触の影響を受けた1又は複数の点を選択し、前記選択された点に基づいて前記ユーザが示す位置の座標を取得する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9