(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5712419
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ソレノイド
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
H01F7/16 E
H01F7/16 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-265219(P2010-265219)
(22)【出願日】2010年11月29日
(65)【公開番号】特開2012-119367(P2012-119367A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】302038741
【氏名又は名称】新電元メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111899
【弁理士】
【氏名又は名称】永山 陽二
(72)【発明者】
【氏名】島田 暁生
【審査官】
池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04539542(US,A)
【文献】
実開昭57−031806(JP,U)
【文献】
実開昭61−051713(JP,U)
【文献】
特開昭55−065782(JP,A)
【文献】
特開2010−096284(JP,A)
【文献】
特開昭50−145854(JP,A)
【文献】
特開昭60−158607(JP,A)
【文献】
米国特許第04004343(US,A)
【文献】
英国特許出願公開第01499326(GB,A)
【文献】
特開2006−118701(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0011245(US,A1)
【文献】
特開2006−112620(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0054852(US,A1)
【文献】
特開昭61−287108(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/091300(WO,A1)
【文献】
特開2004−218816(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0047699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/06− 7/16
F16K 31/06−31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、該コイルの近傍に配置されると共に筒状部が形成された固定磁極と、前記コイルへの通電時に先端側が前記筒状部に進入して前記固定磁極に吸着される可動磁極とを有するソレノイドにおいて、
前記固定磁極は、前記筒状部の内周面のうち少なくとも前記筒状部の先端部から第1の距離内にある第1の領域が前記可動磁極の中心軸と平行な面となるように形成され、
前記筒状部の外周面のうち前記筒状部の前記先端部から第2の距離内にある第2の領域が前記可動磁極の中心軸と平行な面となるように形成され、
前記筒状部の前記外周面のうち前記筒状部の前記先端部から前記第2の距離を超え、かつ、前記筒状部の前記先端部から第3の距離内にある第3の領域が前記筒状部の肉厚が前記筒状部の基端側に向かって漸次増大するような傾斜面に形成され、
前記第1の距離が前記第2の距離よりも長く、
前記第3の距離が前記第1の距離から前記エアギャップブッシュの厚さを差し引いた長さと等しい又はほぼ等しいことを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
前記コイルの近傍に配置されると共に、前記可動磁極が摺動可能に挿入されている筒状部が形成された補助磁極をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のソレノイド。
【請求項3】
前記補助磁極は、前記筒状部が前記固定磁極の前記筒状部に向かって延在していることを特徴とする請求項2に記載のソレノイド。
【請求項4】
前記補助磁極は、前記筒状部に前記固定磁極の前記筒状部寄りの部分の肉厚が薄くなるような段差部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のソレノイド。
【請求項5】
前記補助磁極は、前記筒状部と前記固定磁極の前記筒状部との間隙が前記固定磁極の前記筒状部の前記第1の領域と前記第2の領域との間の肉厚よりも大きくなるように配置されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のソレノイド。
【請求項6】
前記固定磁極は、前記筒状部の中空部に段差部が形成され、
前記固定磁極の前記筒状部の前記段差部に当接するように設けられたエアギャップブッシュをさらに有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドに関し、特に一定の推力が要求されるソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
固定磁極に対して可動磁極が瞬時に吸着するストロークが短いソレノイドに対して、可動磁極の吸着まで時間を要する、すなわちストロークが長いソレノイドは、可動磁極の動作中の推力(吸引力)の強さと安定性が同時に求められるものが多い。特に、比例ソレノイドでは、コントロールストローク領域の長さ、並びに、コントロールストローク領域における吸引力の強さ及び安定性が同時に要求されていることが特に多い。
【0003】
そこで、長いストロークを持つソレノイドにおいて、吸引力等を改善するために様々な構造が提案されている。
図6は、従来技術に係るソレノイドの構造を示す断面図である。
図6において、50はソレノイド、51は固定ヨーク、52は凸部、53は可動ヨーク、54は突出部、54aは外周面、54bは内周面、54cは端面、55は中央部、56は先端である。
【0004】
図6は、特開2006−222199公報に開示されているソレノイドを示している。
図6に示すように、ソレノイド50の固定ヨーク51の先端面の縁部には、軸方向に突出した環状の凸部52が形成されており、この凸部52の外周面は、先端側に向かうほど径方向内側に位置するように所定角度で傾斜したテーパ状に形成されている。また、可動ヨーク53は、その先端面の縁部に固定ヨーク51側に突出した突出部54を有している。突出部54は、可動ヨーク53の全周に亘って環状に形成されており、その外周面54aは可動ヨーク53の軸線ALとほぼ平行に延出する。一方、突出部54の内周面54bは、先端側に向かうほど径方向外側に位置するように、可動ヨーク53の軸線ALに対して所定角度θで傾斜したテーパ状に形成される。突出部54の先端には、可動ヨーク53の軸線ALとほぼ直交する方向に延出する端面54cが形成されている。
【0005】
以上のように、可動ヨーク53の先端に内周面54bが傾斜した環状の突出部54が形成されたソレノイド50では、可動ヨーク53の突出部54の端面54cから固定ヨーク51の先端へと軸方向に流れる軸方向磁束Φ1が、可動ヨーク53の突出部54の外周面54aから固定ヨーク51の凸部52の内周面へと径方向に流れる径方向磁束Φ2よりも小さくなる(Φ1<Φ2)。これは、突出部54の内周面54bが、固定ヨーク51側に向かうほど径方向外側に位置するように傾斜しているため、突出部54を流れる磁束の向きが径方向外側へと変化することと、可動ヨーク53の先端の中央部55と固定ヨーク51の先端56との間隔が従来よりも大きくなることによる。
【0006】
以上の構成によれば、ソレノイド50を大型化せずに推力を高めることができるが、吸引力の安定性を増大し、コントロールストローク領域の長さをさらに伸ばすことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−222199公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、ソレノイドにおいて、推力の安定性を増大し、コントロールストローク領域の長さをさらに伸ばすことが可能な構造を有するソレノイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、コイルと、該コイルの近傍に配置されると共に筒状部が形成された固定磁極と、前記コイルへの通電時に先端側が前記筒状部に進入して前記固定磁極に吸着される可動磁極とを有するソレノイドにおいて、前記固定磁極は、前記筒状部の内周面のうち少なくとも前記筒状部の先端部から第1の距離内にある第1の領域が前記可動磁極の中心軸と平行な面となるように形成され、前記筒状部の外周面のうち前記筒状部の前記先端部から第2の距離内にある第2の領域が前記可動磁極の中心軸と平行な面となるように形成され、前記筒状部の前記外周面のうち前記筒状部の前記先端部から前記第2の距離を超え、かつ、前記筒状部の前記先端部から第3の距離内にある第3の領域が前記筒状部の肉厚が前記筒状部の基端側に向かって漸次増大するような傾斜面に形成され、前記第1の距離が前記第2の距離よりも長いことを特徴とするソレノイドである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記コイルの近傍に配置されると共に、前記可動磁極が摺動可能に挿入されている筒状部が形成された補助磁極をさらに有することを特徴とするソレノイドである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記補助磁極は、前記筒状部が前記固定磁極の前記筒状部に向かって延在していることを特徴とするソレノイドである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記補助磁極は、前記筒状部に前記固定磁極の前記筒状部寄りの部分の肉厚が薄くなるような段差部が形成されていることを特徴とするソレノイドである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の発明において、前前記補助磁極は、前記筒状部と前記固定磁極の前記筒状部との間隙が前記固定磁極の前記筒状部の前記第1の領域と前記第2の領域との間の肉厚よりも大きくなるように配置されていることを特徴とするソレノイドである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記固定磁極は、前記筒状部の中空部に段差部が形成され、前記固定磁極の前記筒状部の前記段差部に当接するように設けられたエアギャップブッシュをさらに有することを特徴とするソレノイドである。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6にいずれか一項に記載の発明において、前記固定磁極は、前記第3の距離が前記第1の距離から前記エアギャップブッシュの厚さを差し引いた長さと等しい又はほぼ等しいことを特徴とするソレノイドである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、内周面のうち少なくとも筒状部の先端部から第1の距離内にある第1の領域が可動磁極の中心軸と平行な面であり、筒状部の外周面のうち筒状部の先端部から第2の距離内にある第2の領域が可動磁極の中心軸と平行な面であるので、両者の間の部分は肉厚が一定であり、かつ、可動磁極の中心軸と平行になる。そして、筒状部の外周面のうち先端部から前記第2の距離を超え、かつ、筒状部の先端部から第3の距離内にある第3の領域が筒状部の肉厚が前記筒状部の基端側に向かって漸次増大するような傾斜面に形成しているので、筒状部の外周面は可動磁極の中心軸と平行な平坦面と登り勾配になるような傾斜面とが連続する構成になり、内周面は少なくともこの平坦面と平行となる。この構成は、発明者の知見によると、第2の距離内にある部分の肉厚が一定で可動磁極の中心軸と平行な部分によって、推力に寄与する磁束量の変化を低減する効果があるので、吸着力の変化を低減する、つまり、推力の安定性を増大し、同時にコントロールストローク領域の長さをさらに伸ばすことができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、補助磁極によって空間に放射される磁束を補足できるので、ストローク全体に渡って推力を増大できるので、推力調整のために可動磁極の吸着方向と直交する又はこれに近い方向への磁束の流れを増大させることによる推力の損失を補うことができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、補助磁極の筒状部が固定磁極の筒状部の先端側に向かって延在しているので、空間に放射される磁束を補足でき、さらに固定磁極の筒状部と補助磁極との間の空間を有効に活用できるので、ソレノイドを大型化せずに推力の増大と安定性とを確保することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、補助磁極の筒状部に固定磁極の筒状部寄りの部分の肉厚が薄くなるような段差部を形成することによって補助磁極と固定磁極との間を流れる寄生的な磁束の流れを低減することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、補助磁極の筒状部と固定磁極の筒状部との間隙を可動磁極の筒状部の第1の領域と第2の領域との間の肉厚よりも大きくなるようにしたことによって補助磁極と固定磁極との間を流れる寄生的な磁束の流れを低減することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、固定磁極の筒状部の段差部に当接するようにエアギャップブッシュを設けたので、比例ソレノイドにおいて不要となる可動磁極の固定磁極への吸着直前の過大な推力の発生を防止できる。ひいては、可動磁極の元の位置への復帰時間を短縮できると共に、復帰用のスプリングを小さくしてソレノイドの小型化を図ることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、第3の距離が第1の距離からエアギャップブッシュの厚さを差し引いた長さと等しい又はほぼ等しいので、固定磁極の筒状部の先端側から見て登り勾配となる外周面の傾斜面の終端と筒状部の内周面における可動磁極の中心軸と平行な面の終端とが可動磁極の中心軸上において同じ位置となる。したがって、外周面の傾斜面の終端が可動磁極の停止位置と一致するので、外周面の傾斜面を過剰に形成することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係るソレノイドの断面図であり、(a)は非通電状態、(b)は通電状態を示す。
【
図2】本発明の実施の形態に係るソレノイドを示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
【
図3】本発明の実施例と比較例との主要部の構成を示す断面図であり、(a)及び(b)は比較例、(c)は本発明の実施例を示す。
【
図4】本発明の実施例と比較例との比較実験の結果を示すグラフである。
【
図5】磁場解析を行った別の比較例における主要部の構成を示す断面図である。
【
図6】従来技術に係るソレノイドの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態に係るソレノイドを図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るソレノイドの断面図であり、(a)は非通電状態、(b)は通電状態を示す。
図1において、10はソレノイド、20は固定磁極、21は推力調整部、22は外周面、23は内周面、24は先端面、25は筒状部、26は傾斜面、27は鍔状部、28は貫通孔、29はエアギャップブッシュ、30は補助磁極、31は筒状部、32は先端面、33は鍔状部、34は貫通孔、35は段差部、36はケース、37はかしめ部、38はコイル、39はボビン、40は可動磁極、41はシャフト、42はエンドキャップ、43は鍔状部である。また、
図2は、本発明の実施の形態に係るソレノイドを示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
図2において用いた符号は、すべて
図1と同じものを示す。なお、
図1を始めとする各図面において、スプリング、リング、スリーブ、引き出し(リード)線、接続端子は、本発明と関連性の薄い部品であるので、記載と説明を省略する。さらに、コイル38については、線条を繰り返し巻回した細かい態様の記載を省略する。
【0025】
図2に示すように、ソレノイド10は、略円筒形状のケース36に内部構造が収納されている。ケース36は、シャフト41が突出する側の開口部は固定磁極20の鍔状部27によって閉止されており、反対側の開口部はエンドキャップ42をかしめ部37でかしめることによって閉止されている。また、
図1に示すように、ソレノイド10の内部構造は、直動する構成要素として、可動磁極40及びシャフト41を設けている。また、直動する構成要素と共に磁気回路を構成して直動する構成要素を作動及び支持する固定的構成要素として、固定磁極20、補助磁極30及びケース36を設けている。
【0026】
このような構成を持つソレノイド10は、コイル電流の大きさを適宜調整して、図示していないスプリングの弾発力と可動磁極40の推力とが拮抗している状態を作り出すことによって、可動磁極の位置を任意に制御することができる、いわゆる比例ソレノイドとして使用されるものである。なお、ケース36の大きさ又は外形等は
図2に示したものに限定されるものではなく、防水性、防油性など求められる機能に応じて適宜変更することが可能である。また、本発明に係るソレノイドは、比例ソレノイドとして使用されるものに限られるものではなく、吸引力の安定性と、コントロールストローク領域の長さが必要とされるチューブラソレノイドなどのソレノイドに好ましく適用できる。
【0027】
次に、ソレノイド10の直動する構成要素について述べる。ソレノイド10の可動磁極40は、長く肉厚の円筒状に形成されており、中心軸に沿って形成された中空部にはシャフト41が嵌合されている。また、後述するように、コイル38へ通電すると、固定磁極20及び補助磁極30の貫通孔の内部を摺動して固定磁極20に吸着される。このときの吸着力が推力となる。なお、固定磁極20の筒状部25の内部にはエアギャップブッシュ29が挿入されているので、可動磁極40が固定磁極20に突き当たって直接接触することはない。
【0028】
シャフト41は、丸棒状に形成されており、可動磁極40の中空部に中間部が嵌合されている。さらに、先端部が固定磁極20の貫通孔を通って外部に露出している。コイル38へ通電していないときには、図示していないスプリングの弾発力によってエンドキャップ42側に付勢され、基端部がエンドキャップ42に当接した状態となる。また、コイル38へ通電しているときには、固定磁極20の貫通孔から大きく突出した状態となる。
【0029】
さらに、直動する構成要素を作動及び支持するソレノイド10の固定的な構成要素について説明する。固定磁極20は、円盤状に形成された鍔状部27と、鍔状部27からエンドキャップ42側に向かって形成された筒状部25とを備えている。鍔状部27は、ケース36のシャフト41の先端部側に圧入によって嵌合される部分であり、外面中央に凹部が形成されている。筒状部25は、可動磁極40の動作に大きな影響を持つ部分であり、可動磁極40及びシャフト41の中心軸に沿ってエンドキャップ42側に延在している。また、筒状部25の中空部は、シャフト41の先端部側が縮径するような段差部49が形成されており、段差部49に当接するようにエアギャップブッシュ29を挿入してある。なお、ソレノイド10の用途によっては、エアギャップブッシュ29を省略してもよい。
【0030】
さらに、筒状部25は、その先端側を推力調整部21としている。推力調整部21は、本発明の中核となる部分であり、ソレノイド10の推力を安定させると共に、コントロールストローク領域を長くする役割を持つ。また、推力調整部21は、可動磁極40及びシャフト41の中心軸に沿ってエンドキャップ42側に筒状に延びている。推力調整部21の外周面22と内周面23とは、可動磁極40及びシャフト41の中心軸に対して平行な円筒状の面となっている。したがって、推力調整部21の厚さは全体にわたって均一となっている。推力調整部21の外周面22よりも鍔状部27寄りの面は鍔状部27に向かって登り勾配となるような傾斜面26として形成されている。傾斜面26は、推力の急増を緩和する役割を持つ。なお、推力調整部21の外周面22と傾斜面26とは連続的に形成されており、後述する理由によって両者の間には段差部を形成していない。
【0031】
補助磁極30は、外部への磁束の発散を低減して推力を増大させる機能を持つ。また、補助磁極30は、円環状に形成された鍔状部33と、鍔状部33から固定磁極20側に向かって形成された筒状部31とを備えている。鍔状部33は、ケース36のかしめ部37側に圧入によって嵌合されている。さらに、エンドキャップ42がかしめ部37で固定されていることによって、鍔状部33も固定磁極20側に押さえつけられるように固定されている。
【0032】
筒状部31は、その中空部を可動磁極40が摺動するものである。また、コイル38への通電時に可動磁極40の外周面の広い範囲への磁束の流れを生成して、可動磁極40のストロークの変化に伴って発生する推力の増減を抑制する役割を果たす。すなわち、可動磁極40と固定磁極20との間を流れる磁束のうち、可動磁極40の推力に寄与する磁束量の全磁束量に対する割合は、ストロークに応じて急変しやすい。筒状部31は、可動磁極40の外周面と広い面積において対向しているので、空中に拡散するなどして推力に寄与しない磁束の発生を抑制して、補助磁極30、可動磁極40及び固定磁極20を流れる磁束量を増大する。ひいては、これらを流れる磁束量が増大することによって、可動磁極40の推力に寄与する磁束量の全磁束量に対する割合の変化を相対的に小さくする効果を持っている。
【0033】
なお、筒状部31は、比例ソレノイド以外の用途などにおいては、固定磁極20側に向かって延在する長さをさらに短くしてもよい。さらに、段差部35から固定磁極20側の部分のすべてを省略してもよい。また、比例ソレノイドとして使用する場合には、特に推力の安定性が求められるので、筒状部31を推力調整部21に向けて長く延ばすことが望ましい。ただし、筒状部31の先端面32と推力調整部21の先端面24とが接近しすぎると、コイル38への通電時に、ケース36、補助磁極30及び固定磁極20を流れる寄生的な磁気回路を生じるので、先端面32と先端面24との間隙は推力調整部21の厚さよりも大きくすることが望ましい。
【0034】
ケース36は、略円筒状に形成されており、シャフト41の先端部側の内周面には、固定磁極20の鍔状部27を圧入するための段差部が形成されている。また、エンドキャップ42側はかしめによって変形し、エンドキャップ42の鍔状部43及び補助磁極30の鍔状部33の周側面に密着している。コイル38は、コイルボビン39に巻回されたコイルワイヤであり、両端部は図示していないが、引き出し線としてケース36の外部に引き出されている。コイルボビン39は、固定磁極20の鍔状部27と補助磁極30の鍔状部33とに挟まれた状態で固定されている。
【0035】
エアギャップブッシュ29は、固定磁極20の筒状部25の内部に固定磁極20と可動磁極40との間に介在するように設けられている。可動磁極40が固定磁極20に対して非常に接近すると、ソレノイド10の推力は非常に大きくなるが、比例ソレノイドにとってこの非常に大きな推力は必要ないものとなる。エアギャップブッシュ29の厚さは、推力が過大になるストロークに合わせて設定されており、これを設けることによって可動磁極40の可動範囲を狭めている。また、可動磁極40が固定磁極20に吸着されないようにすると、図示していないスプリングによってエンドキャップ42側に復帰する時間を短縮できる利点がある。また、図示していないスプリングの負荷を低減し、ひいてはソレノイド10の小型化を図ることができる利点もある。
【0036】
なお、推力調整部21の先端面24から傾斜面26の鍔状部27側の終端までの可動磁極40及びシャフト41の中心軸に沿った長さと、推力調整部21の先端面24からエアギャップブッシュ29の可動磁極40側の面までの可動磁極40及びシャフト41の中心軸に沿った長さとは、等しくなるように設定している。これは、傾斜面26が可動磁極40の推力を調整するものであって、可動磁極40の可動範囲を超えて形成しても無意味であることによる。すなわち、ギャップブッシュ29の可動磁極40側の面は、可動磁極40の停止位置となるので、この面に合わせて傾斜面26を形成すれば不要な切削加工をすることなくなるという利点がある。なお、ギャップブッシュ29を設けない場合には、筒状部25の内周面のうち、推力調整部21の先端面24から傾斜面26の鍔状部27側の終端までの可動磁極40及びシャフト41の中心軸に沿った長さよりも長くなる部分を傾斜面として形成してもよい。このような傾斜面は、比例ソレノイド以外のソレノイドにおいて、推力調整に有用となる場合がある。
【0037】
エンドキャップ42は、シャフト41の基端側を閉止する蓋である。ケース36のかしめ部37をかしめることによって鍔状部43がケース36に固定される。なお、ソレノイド10の用途によっては、エンドキャップ42を肉厚の磁性材で形成して磁気回路の一部とし、補助磁極30を省略してもよい。さらに、エンドキャップ42と補助磁極30との両方を磁気回路の一部としてもよい。
【0038】
さらに、ソレノイド10の動作について説明する。コイル38に通電していないときには、
図1(a)に示すように、図示していないスプリングの弾発力によって、シャフト41が基端側に押圧され、基端部がエンドキャップ42に当接した状態となる。コイル38に通電すると、固定磁極20、ケース36、補助磁極30及び可動磁極40に磁気回路を生成することによって、可動磁極40に対して固定磁極20への吸引力を生じて摺動し、
図1(b)に示すように、可動磁極40がエアギャップブッシュ29に当接した状態となる。なお、本発明においては、固定磁極20に推力調整部21を設けたことによって、可動磁極40の摺動時における推力の変動が低減され、結果としてコントロールストロークが長くなっている。
【0039】
次に、本発明の実施例及び比較例の実験結果について説明する。
図3は、本発明の実施例と比較例との主要部の構成を示す断面図であり、(a)及び(b)は比較例、(c)は本発明の実施例を示す。
図3において用いた符号は、すべて
図1と同じものを示す。なお、
図3に記入した寸法単位はmmである。また、
図4は、本発明の実施例と比較例との比較実験の結果を示すグラフである。なお、
図4において、x軸の原点は、可動磁極40がエアギャップブッシュ29に当接したときのストロークとなり、それぞれ固定磁極から(a)が1.6mm、(b)及び(c)が2.0mmの距離となる。
【0040】
この実験では、従来技術に係る比例ソレノイドにおいて一般的に見られるところの、固定磁極20の筒状部25に傾斜面26を形成した比較例と、本発明に係る固定磁極20の筒状部25の先端側に推力調整部21を設けた実施例との推力を測定して比較した。比較例については、
図3(a)及び(b)に示す構成としている。また、実施例は、
図3(c)に示すように、推力調整部21を設け、可動磁極40及びシャフト41の中心軸方向の長さを0.7mm、厚さを0.3mm、推力調整部21の先端面24と筒状部31の先端面32との間隙を2.7mmとした。また、以上説明した部分以外の構成は、それぞれ
図1に示すものとした。
【0041】
以上の実験の結果、
図4に示すように、本発明の実施例(c)では、可動磁極40がエアギャップブッシュ29に当接したときのストローク2.0mmから13.0mmまでの範囲において、推力の変動が0.1N以下となった。したがって、本発明の実施例(c)では、2.0mmから13.0mmまでの範囲が比例ソレノイドのコントロークストローク領域として十分実用性があることが分かった。これに対して、比較例(a)及び(b)では、推力の変動が0.1N以下となる範囲が8.0mm以下となり、コントロールストローク領域が本発明の実施例(c)よりも相当に狭いものになった。また、本発明の実施例(c)の場合、2.0mmから13.0mmまでの範囲の中間領域におけるストロークの変動が0.1Nよりもかなり小さいものとなり、中間領域のおける変動が0.1Nに近かった比較例(b)よりも推力の安定性が高かった。
【0042】
図5は、磁場解析を行った別の比較例における主要部の構成を示す断面図である。
図5において、44は薄型推力調整部、45は段差部、46はくちばし状推力調整部、47は第2傾斜面、48は内周傾斜面であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0043】
発明者は、
図4に示した本発明の実施例(c)の推力調整部21に近い構成を持つ別の比較例を想定し、想定した比較例の固定磁極の構成に対して磁場解析を行って評価した。比較例とした固定磁極は、まず、
図5(a)に示すように、推力調整部の肉厚を薄くした薄型推力調整部44とし、傾斜面26との間に段差部45を形成したもの。次に、
図5(b)に示すように、推力調整部をくちばし状に先端がとがったくちばし状推力調整部46としたもの。なお、傾斜面26とこのくちばし状推力調整部46の第2傾斜面47とは傾斜角が若干異なるものとした、さらに、
図5(c)に示すように、筒状部25の内周面23側に内周傾斜面49を形成している。推力調整部21は、
図1と同じ長さで、かつ、同じ厚さであるが、内周傾斜面49を形成したことによって、
図1のものよりも筒状部25の外周面側に若干寄っている。
【0044】
以上について発明者が解析した結果によれば、
図5の(a)、(b)及び(c)のいずれもが推力の変動を低減する能力において、
図4に示した本発明の実施例(c)に劣っていた。これは、
図5の(a)及び(b)のものよりも推力調整部21の方が肉薄に形成されていることによるものと推測される。さらに、
図5の(c)のものは、推力調整部48と可動磁極40との間隙が推力調整部21と可動磁極40との間隙よりも大きく、この間隙の差が効果を低減しているものと推測される。また、段差部45又は内周傾斜面49は、可動磁極等の構成によって多少異なるが、逆に推力の変動要因になることが分かった。また、内周傾斜面49の形成範囲や形成位置を順次変えながら解析したところ、内周傾斜面49のような傾斜面を推力調整部21及び傾斜面26を設けた範囲、つまり、筒状部25を外周側から見て推力調整部21又は傾斜面26と重なり合う範囲に設けると、推力の変動要因になりやすいことが分かった。したがって、筒状部25の内周面は、筒状部25を外周側から見て推力調整部21又は傾斜面26と重なり合う範囲において、可動磁極40及びシャフト41の中心軸と平行な面とすることが望ましい。
【0045】
以上説明したように、この実施の形態に係るソレノイド10は、固定磁極20の筒状部25の先端側に推力調整部21を設けたことによって、コイル38に通電して可動磁極40に対して固定磁極20への吸引力を生じて摺動しているときに、推力が変化することを低減できる。また、同様の構造を有する従来技術に係るソレノイドよりもコントロールストローク領域の長さを伸ばすことができる。また、推力調整部21の厚さは全体にわたって均一であるので、固定磁極20を切削加工などによって簡単に形成することができる。さらに、補助磁極30の筒状部31を推力調整部21に向かって長く延びるように形成して、可動磁極40の外周面と広い面積において対向させて、空中に拡散するなどして推力に寄与しない磁束の発生を抑制し、補助磁極30、可動磁極40及び固定磁極20を流れる磁束量を増大する。ひいては、これらを流れる磁束量が増大することによって、可動磁極40の推力に寄与する磁束量の全磁束量に対する割合の変化を相対的に小さくすることができる。
【0046】
なお、本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、例えば、ケースを有底円筒状の形状にする、ケースを略ロ字状のフレームにする、双方向ソレノイドとしてコイルを2個備えた構造とする、補助磁極をケースの外側に設ける、可動磁極の先端部を円錐台形状に形成すると共に固定磁極の筒状部の中空部の奥側を可動磁極の先端部に合わせて円錐台形状に形成する、シャフトを設けずに可動磁極の一部がケースの外部に突出した構成にする、シャフトをバルブの弁体と一体的に設ける、可動磁極と固定磁極との間隙を油路の一部として利用する、などの構成については、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 ソレノイド
20 固定磁極
21 推力調整部
22 外周面
23 内周面
24 先端面
25 筒状部
26 傾斜面
27 鍔状部
28 貫通孔
29 エアギャップブッシュ
30 補助磁極
31 筒状部
32 先端面
33 鍔状部
34 貫通孔
35 段差部
36 ケース
37 かしめ部
38 コイル
39 ボビン
40 可動磁極
41 シャフト
42 エンドキャップ
43 鍔状部
44 薄型推力調整部
45 段差部
46 くちばし状推力調整部
47 第2傾斜面
48 内周傾斜面
49 段差部
50 ソレノイド
51 固定ヨーク
52 凸部
53 可動ヨーク
54 突出部
54a 外周面
54b 内周面
54c 端面
55 中央部
56 先端