(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワークは、カップ部と、上記カップ部の奥行端より一体に突出するステム軸部又はスプライン孔を有する筒軸部とを備えてなり、搬送及び熱処理に際し上記カップ部をワーク下部とし上記ステム軸部又は上記筒軸部をワーク上部とする、請求項1記載のワークの熱処理装置。
前記エアシリンダとして、前記ピストンロッドの移動量に応じてパルスを出力するエアシリンダを用い、前記回転チャック機構は、前記ワーク上部をチャックした後は、チャック前に引き続いて上記ピストンロッドを縮小し前記当接ピースが上記ワーク上端の凹部に係合し押圧する、請求項4に記載のワークの熱処理装置。
前記第1のハンドリング手段は、前記ワークを回転可能にチャックしうる複数の回転チャック機構と、該複数の回転チャック機構を一のステーションと前記ワーク下部用熱処理ヘッドに被せる位置とに交互に交替させて対応させる往復回動手段と、上記複数の回転チャック機構を昇降させる昇降手段と、を有する、請求項1乃至5の何れかに記載のワークの熱処理装置。
前記ワーク上部熱処理部は、複数の貫通孔を有して該貫通孔の配列ピッチで間欠回転する前記間欠回転テーブルと、各貫通孔に対応して上記間欠回転テーブル上に備えられた環状冷却ジャケットと、他の一のステーションに対応する上記貫通孔の下方に備えられた前記第2のハンドリング手段である第2のリフターと、を有し、前記ワーク上部用加熱コイルは上記第2のリフターが上昇した位置に備えられた、請求項1乃至6の何れかに記載のワークの熱処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態に係るワークの熱処理装置について図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
図2は、中段プレート100より上側の四つの引き戸と、下側の四つの倹飩式戸を取り除いて、この実施形態に係るワークの熱処理装置1の内部を視た図である。
図3は、
図2の動作状態と異なる動作状態を示すワークの熱処理装置1の正面図である。
図3は、
【0035】
ワークの熱処理装置1は、
図1に示す4種類のアウタレースのうちのいずれか1種類を処理対象のワークとしており、加熱コイル、ワーク受具等を段取り換えすることで処理対象を4種類のアウタレースに広げている。このワークの熱処理装置1は、そのような汎用性を備えるための交換性・メンテナンス性も良好に備えている。アウタレースは、カップ部を下向きに保って、カップ部内面およびステム軸部外面又は筒軸部孔面の熱処理を行うので、説明の便宜上、該カップ部についてワーク下部と称し、ステム軸部又は筒軸部についてワーク上部とも称するものとする。
【0036】
〔中枢部の概要〕
図2、
図3、
図5、
図6に示すように、ワークの熱処理装置1は、左側手前部分にテーブル式搬送機構10、右側手前部分にガントリ式搬送機構20があり、ワークWを左から右へ搬送する。ワークの熱処理装置1は、仮位相決めを行う仮位相決め機構30と、本位相決めを行う本位相決め機構40と、ワークWのカップ部(ワーク下部ともいう。)の加熱と冷却を同一位置で行うワーク下部熱処理部50と、ワークWのステム軸部の外面又は筒軸部の外面についての加熱と冷却とを分離して別位置で行うワーク上部熱処理部60と、ワーク全体のアフタークールを行うアフタークール部70と、を有してなる。搬送手段を除くこれらの処理手段は、
図2において左から右へ処理工程順に並べられている。
図5、
図6に示すように、ワーク下部熱処理部50とワーク上部熱処理部60とアフタークール部70は、搬送ラインの奧側に設置されている。
【0037】
〔仮位相決めと本位相決めの意義〕
仮位相決め機構30による仮位相決め及び本位相決め機構40による本位相決めについては、以下の意義がある。カップ部の熱処理は、ワークWがトリポード型のアウタレースであるときに、カップ部の深いレース溝内にワーク下部用加熱コイルを相対的に移動して近接状態に収容し、高周波誘導加熱を行うものである。したがって、かかる近接状態が保てるように、事前にカップ部の溝の向きを正確に合わせて、本本位相決めピンをカップ部内面に当接させてワーク下部の周方向に移動を拘束することが本位相決めであり、仮位相決めは、本本位相決めピンにワーク下部(カップ部)を被せる本位相決めが行えるように、ワークWを回動させてワーク下部(カップ部)の向きを合わせるために行う。ワークWがバーフォード型のアウタレースであるときにはこの意義はない。
【0038】
〔全体の配置構造〕
図4、
図5に示すように、装置正面の外装部は、上面の高さ寸法が例えば700mm〜900mmの範囲で設定されている中段プレート100より上側が四つの引き戸101〜104で閉じられ、中段プレート100より下側が四つの倹飩式戸105〜108で閉じられている。引き戸101〜104は、把手と耐熱ガラス窓とを有する。四つの引き戸101〜104は、2列状のレールに二つずつ案内されていて、メンテナンス時には、いずれかの二つの引き戸が他の二つの引き戸に重なることで、装置内部が二つの引き戸分の間口だけ開放される。引き戸101と102は、インターロック機構109でロックされ、引き戸103と104は、インターロック機構110でロックされる。装置正面部の右側に備える操作パネル111の起動スイッチ111aは、インターロック機構109,110がロックされていることが条件で「オン」になる。
【0039】
図5、
図6に示すように、中仕切り正面壁112より背面側には、左から右へ、コントローラ(制御盤ボックス)113、ワーク下部熱処理部50に対応した第1の整流電源部114、ワーク上部熱処理に対応した第2の整流電源部115、冷却水供給部116および帰還水集水タンク117が配列されている。中段プレート100の中仕切り正面壁112に寄った際に、集水溝118が備えられ、集水溝118の右端が帰還水集水タンク117に接続されている。帰還水集水タンク117には、送水ポンプ119が備えられている。冷却水供給部116は、例えば高圧水源に接続された圧力ヘッダーを採用しているが、他の構成、例えば、多量の水を貯めることができ、かつ貯めた水に対して高圧を掛けられる空気室を備え、空気室にエアコンプレッサからの高圧空気を導入する構成でも良い。
【0040】
〔ワークの搬送手段〕
図2、
図3、
図6に示すように、ワークの熱処理装置1は、テーブル式搬送機構10とガントリ式搬送機構20とでワークWを搬送する手段が構成される。テーブル式搬送機構10は、往復移動自在な複数のテーブルで搬送ラインを分担して上記ワークの順送り搬送を行う。すなわち、第1〜第3テーブル11〜13により第1〜第4ステーションA〜Dまでの直線的な搬送ラインをテーブル搬送する。ガントリ式搬送機構20は、テーブル式搬送機構10により搬送されたワークWを、第1および第2ガントリ21,22により第4〜第6ステーションD〜Fまでの直線的な搬送ラインを順送りに吊上げ搬送を行う。
【0041】
図2、
図3に示すように、第4ステーションDは、テーブル式搬送機構10とガントリ式搬送機構20とによるワークの引き継ぎステーションである。第1〜第3ステーションA〜Cまでのステーション間の距離は等しく、且つ処理空間が小さいので短く、第3ステーションCと第4ステーションD間の距離は処理空間が大きいので約2倍となっている。第4〜第6ステーションD〜Fまでのステーション間の距離は等しく、且つ処理空間が大きいので第1ステーションAと第2ステーションBとのステーション間の距離よりも大きく採られている。
【0042】
〔ワークの搬送経路と処理工程の概要〕
図2に示すように、第1テーブル11が第1ステーションAに位置する状態で、人手又は搬入ロボットによりワークWを装置左側面パネルの搬入口を通して第1テーブル11上に載置する。ここで、ワークWが
図1(a)および(b)に示すトリポード型のアウタレースW1、W2であるときは、第1テーブル11上でワークWの仮位相決めを行う。
【0043】
次いで、
図3に示すように、ワークWが第1テーブル11で第2ステーションBに搬送され、ここでワークWを一時持ち上げる。そして、第2ステーションBにおいて、第1テーブル11と交替して位置される第2テーブル12上にワークWを載置する。この場合、ワークWが
図1(a)および(b)に示すトリポード型のアウタレースW1、W2であるときは、第2テーブル12に備える本位相決めピンでワークWの本位相決めを行う。ワークWが
図1(c)および(d)に示すバーフォード型のアウタレースW1、W2であるときは、第2テーブル12には本本位相決めピンを備えていないワーク受承皿が用意されるので、該ワーク受承皿に載置し本位相決めは行わない。
【0044】
次いで、
図3に示すように、第2テーブル12が第3ステーションCに移動しワークWを第3ステーションCに搬送する。すると、第3ステーションCに位置する第2テーブル12上のワークWに対し、ワーク下部熱処理部50のダブルハンド型のハンドリング手段51の一方の回転チャック機構52がチャックして吊り上げ、
図6に示すワーク下部熱処理位置Gへ回動し、カップ部に対し熱処理(焼入れ或いは焼戻し)のための加熱及び冷却を行なう。ワークWがバーフォード型のアウタレースであるときには、この熱処理は、回転チャック機構52によりワークWを回転した状態で行なう。
【0045】
ワーク下部熱処理部50のダブルハンド型のハンドリング手段51は、カップ部の熱処理終了後、第3ステーションCに位置する第3テーブル13上にワークWを載置する(
図2参照)。第3テーブル13は、ワークWを第4ステーションDに搬送する(
図3参照)。次いで、第1ガントリ21がワークWをチャックし吊り上げて、第5ステーションEに対応する上方位置で下降する。
図2、
図3に示すように、第5ステーションEに備えられた第1のリフター63は、該ワークWの下降に対抗して上昇し、下降してくるワークWを受け取ると下降し、間欠回転テーブル61の貫通孔61aに備えられた第4のワーク受承皿61h上にワークWを載置する。
【0046】
次いで、間欠回転テーブル61がワンステップ回動し、ワークWをワーク上部加熱位置Hの下方位置に移送すると、
図3に示すように、第2のリフター64がワークWを突き上げ、後述する
図31(a)の芯出しセンタ651j又は芯出しキャップ655でワークWの芯出しを行う。その後、第2のリフター64は、回転しさらに突き上げることで、ワークWを回転した状態で後述するワーク上部用加熱ユニット65に備えたワーク上部用加熱コイル652又は653(
図31(a))に近接する。該ワーク上部用加熱コイル652又は653は、ワークWのステム軸部の外面又は筒軸部の内面に対し熱処理(焼入れ或いは焼戻し)のための加熱及び冷却を行なう。
【0047】
次いで、
図2に示すように、第2のリフター64は、復帰下降してワークWを間欠回転テーブル61上に戻す。すると、間欠回転テーブル61上に戻されたワークWを取り囲んでいる環状冷却ジャケット62が、ワークWに対して冷却液を掛けて冷却を行う。間欠回転テーブル61は、ワンステップ間欠回動してワークWをワーク上部冷却位置Iに搬送する。環状冷却ジャケット62は、ワーク上部冷却位置Iにて間欠回転テーブル61の間欠停止中、ワークWの冷却を継続し、さらに冷却を継続したまま間欠回転テーブル61がワンステップ間欠回動してワークWを第5ステーションEに対応する位置に移動し、その後冷却を終了する。
【0048】
次いで、第1のリフター63が上昇し、ワークWを環状冷却ジャケット62の上に突き上げる。これに対応し、第2ガントリ22は、チャック機構がワークWを受け取る位置に下降し、ワークWをチャックして上昇し第6ステーションFに搬送して下降し、ワークWをアフタークール部70の反転テーブル71上に載置する。次いで、反転テーブル71は、反転したワークWをアフタークール位置Jに移送する。アフタークール部70は、アフタークール位置Jに移送されたワークWに対しアフタークールを行う。反転テーブル71がさらに反転してワークWを第6ステーションFに戻すと、該ワークWを装置右側面パネルの搬出口を通して人手又は搬出ロボットにより、搬出する。
【0049】
以下、各部の構成を詳細に分説する。
〔テーブル式搬送機構10の構成〕
図6〜
図8に示すように、テーブル式搬送機構10は、中段プレート100上に、第1ステーションAから第4ステーションDまで延びた長いレール15aと、第1ステーションAから第3ステーションCまで延びた短いレール15bと、第3ステーションCから第4ステーションDまで延びた補助レール15cと、を備えている。
【0050】
図7、
図8に示すように、長いレール15aと短いレール15bとは広い間隔で平行に、長いレール15aと補助レール15cとは狭い間隔で平行に備えられている。仮に、短いレール15bを第4ステーションDまで延ばすと、ハンドリング手段51の回転軸53aの台座との干渉を生じる。このため、長いレール15aとの間隔が狭い補助レール15cが、短いレール15bに替わり備えられている。
【0051】
図7、
図8に示すように、テーブル式搬送機構10は、長いレール15aと短いレール15bとに載って案内される共通ベースプレート14上に第1テーブル11と第2テーブル12とを備え、また長いレール15aと補助レール15cとに載って案内される第3テーブル13とを備えている。
中段プレート100の左端と共通ベースプレート14の右端とが複動式の第1のエアシリンダ16により連結されていると共に、共通ベースプレート14の中程と第3テーブル13とが複動式の第2のエアシリンダ17により連結されている。
図7に示すように、共通ベースプレート14は、第1のエアシリンダ16が伸張することにより移動される。
【0052】
第1テーブル11と第2テーブル12は、第1のエアシリンダ16のピストンが引退状態のときには、
図8に示すように、それぞれ第1ステーションAと第2ステーションBとに位置されていて、同ピストンが伸張状態になると、それぞれ第2ステーションBと第3ステーションCへ移動される。
【0053】
第3テーブル13は、第1、第2のエアシリンダ16,17の各ピストンが引退状態のときには、
図8に示すように、第3ステーションCに位置されていて、同各ピストンが同期して伸張状態になると、第4ステーションDに位置される。
【0054】
図7、
図8に示すように、第1テーブル11は、第1ステーションAと第2ステーションBとの間を往復動し、第1ステーションAで載置されるワークWを第2ステーションBへ搬送する。第2テーブル12は、第2ステーションBと第3ステーションCとの間を往復動し、第2ステーションBで載置されるワークWを第3ステーションCへ搬送する。第3テーブル13は、第3ステーションCと第4ステーションDとの間を往復動し、第3ステーションCで載置されるワークWを第4ステーションDへ搬送する。
【0055】
〔ガントリ式搬送機構20の構成〕
図2、
図3に示すように、ガントリ式搬送機構20は、第1および第2ガントリ21,22で第4〜第6ステーションD〜Fまでの搬送ラインを分担してワークWの吊上搬送を行う。第1ガントリ21は、第4ステーションDと第5ステーションEとの間を往復動して、テーブル式搬送機構10の第4ステーションDに位置されるワークWをチャックし吊り上げ第5ステーションEに搬送することを反復する。第2ガントリ22は、第5ステーションEと第6ステーションFとの間を往復動して、第5ステーションEに位置されるワークWをチャックし吊り上げ第6ステーションFに搬送することを反復する。
【0056】
ガントリ式搬送機構20は、装置フレームの左上前面部に横梁板23を有し、横梁板23の正面部に上下配置に互いに平行に、且つ水平に一対の天井レール24を有し、一対の天井レール24に係合され垂下した第1ガントリ21および第2ガントリ22を有する。
【0057】
ガントリ式搬送機構20は、横梁板23の左端と第2ガントリ22とが複動式の第3のエアシリンダ25により連結され、第1ガントリ21と第2ガントリ22とが複動式の第4のエアシリンダ26により連結されてなる。
第3のエアシリンダ25はガントリ移動用であり、第4のエアシリンダ26はガントリ間隔変更用である。第4のエアシリンダ26は、メンテナンス時以外は、ピストンを伸張した状態にロックされていることにより、第1ガントリ21と第2ガントリ22との距離を第4ステーションDと第5ステーションEとの距離に等しく保って連結している。
【0058】
図9に示すように、第1ガントリ21と第2ガントリ22は、同様に構成される。
第1ガントリ21は、ガントリ本体(垂下フレーム)21aと、第1のサーボモータ21bと、第1のサーボモータ21bの回転を入力して直動運動に変換する第1の運動変換機構21cと、第1の運動変換機構21cの直動スライダに固定された第1のチャック機構21dと、を有してなる。
第2ガントリ22は、ガントリ本体(垂下フレーム)22aと、第2のサーボモータ22bと、第2の運動変換機構22cと、第2の運動変換機構22cの直動スライダに固定された第2のチャック機構22dと、を有してなる。
【0059】
ガントリ本体21a又は22aは、天井レール24に係合案内される横スライダ(図示せず、符号なし)に上部を固定され、垂下状態になる可動フレームである。運動変換機構21c又は22cは、ガントリ本体21a又は22aに備えられた直動ガイドと、直動ガイドに支持されたボールねじと、ボールねじに螺合されかつ直動ガイドに係合案内されるボールナットランナ(直動スライダ)と、を組み合わせてなり、チャック機構21d又は22dを支持する。
【0060】
チャック機構21d又は22dは、開閉自在な一対の本体部を備え、一対の本体部は、ワークWのワーク上部(ステム軸部又は筒軸部)をチャックする。チャック機構21d又は22dは、例えば、ロータリ式高圧エアアクチュエータにより回転されるピニオンと、ピニオンを挟んで噛合する一対のラックを内蔵し、各ラックにガントリ本体を連結してなる小型カニ型平行ハンド(株式会社近藤製作所製)を用いることができる。
【0061】
第1ガントリ21と第2ガントリ22は、第3のエアシリンダ25のピストンが引退状態のときには、それぞれ第4ステーションDと第5ステーションEとに同時に位置され、同ピストンが伸張状態になると、それぞれ第5ステーションEと第6ステーションFとに同時に位置される。
【0062】
第1ガントリ21と第2ガントリ22は、それぞれ第4ステーションDと第5ステーションEとに位置されるワークのワーク上部を、チャック機構21d又は22dで挟持して吊上搬送し、それぞれ第5ステーションEと第6ステーションFとに以下のように位置させる。
【0063】
図2、
図3に示すように、第5ステーションEに一致する装置下部に第1のリフター63が備えられている。第1のリフター63は、第1ガントリ21のチャック機構21dの下降に合わせて上昇する。第1ガントリ21は、第4ステーションDにおいてチャック機構21dでチャックしたワークWを吊り上げ第5ステーションEに搬送する。そして、第1ガントリ21は、チャック機構21dを下降し、これに対応して上昇する第1のリフター63にワークWを受け渡す。その後、第1のリフター63は、下降して間欠回転テーブル61に備えられたリング状のワーク受具に受け渡し、さらに下降し待機位置に復帰する。第2ガントリ22のチャック機構22dは、第6ステーションFに備えられているアフタークール部70にワークWを受け渡す。
【0064】
〔仮位相決め機構30の構成〕
図10に示すように、ワークの熱処理装置1は、第1テーブル11上に仮位相決め機構30を備えている。仮位相決め機構30は、第1テーブル11上に備えられ、モータ31aを駆動源とし減速伝達機構を介して微小角度回転が可能なロータリーテーブル31を有する。さらに仮位相決め機構30は、第1テーブル11上に支持される近接センサ32を有し、ロータリーテーブル31上に交換可能に備えられた第1のワーク受承皿33を有する。
【0065】
仮位相決め機構30は、第1ステーションAにおいて動作する。仮位相決め機構30は、第1テーブル11上に載置されるワークWに対して仮位相決めを行う。仮位相決め機構30は、第1テーブル11が第1ステーションAに位置され、且つ第1テーブル11上に載置されるワークWがトリポード型のアウタレースであるときに仮位相決めを行う。
仮位相決め機構30は、ロータリーテーブル31を回転しワークWの外周面の角部を近接センサ32で検出したらロータリーテーブル31の回転を停止する。これにより、仮位相決め機構30は、ワーク下部(カップ部)の向きを合わせる仮位相決めを行う。
なお、ワークWの第1テーブル11上への載置は、例えば第1テーブル11が第1ステーションAに位置されると、ブザーが鳴るとともに、装置左側面パネル外面に付設された図示しない青ランプが点灯し、そのときに装置左側面パネルの搬入口を通して行うことができる。
【0066】
仮位相決め機構30は、第1のワーク受承皿33上に載置されたワークWがバーフォード型のアウタレースであるときには仮位相決めを適用しない。この場合は、第1ステーションAに位置される第1テーブル11上の第1のワーク受承皿33にワークWを搬入載置すると、該ワークWに対する仮位相決めを行わないで、第1テーブル11が第2ステーションBに移動する。第1のワーク受承皿33は、ワークWに対応して交換される。
【0067】
〔本位相決め機構40の構成〕
図2に示すように、本位相決め機構40は、第2ステーションBに関連して備えられ、
図11、
図12に示すように、中段プレート100に立設された架台41と、架台41に備えられた第3のサーボモータ42と、第3の運動変換機構43と、第3のチャック機構44と、第2テーブル12に交換可能に備えられた第2のワーク受承皿45と、ワーク検知手段46と、を有してなる。
第3の運動変換機構43は、架台41に備えられ、第3のサーボモータ42の回転を入力して上下方向の一軸状に移動するように運動変換する。第3のチャック機構44は、第3の運動変換機構43の直動スライダに固定され、上下方向に直動運動し得る。さらに、本位相決め機構40は、第2ステーションBに搬送された第1テーブル11上のワークWをチャックする前に、ワークWの大きさを検知するワーク検知手段46を備えている。
【0068】
図12に示す第2のワーク受承皿45は、ワークWがトリポード型のアウタレースである場合に第2テーブル12上に取り付けられる。第2のワーク受承皿は複数のローラ式の本位相決めピン45cを有しており、ワークWに対応して交換可能に取り付けられる。
【0069】
図11に示す第3のチャック機構44は、小型カニ型平行ハンド(登録商標:株式会社近藤製作所製)等を用いることができ、ワークWのワーク上部(ステム軸部又は筒軸部)をチャックする開閉自在な一対のフィンガー44aを備えている。
【0070】
ワーク検知手段46は、ワークWのワーク上部に当接するプローブ46aと、該プローブ46aをピストンロッドの下端に固定し、該ピストンロッドを下向きに伸張させる第5のエアシリンダ46bと、を有してなる。第5のエアシリンダ46bとして、例えばピストンロッドに磁気メモリが付設されていて、ピストンロッドを例えば0.1mm移動する毎に磁気メモリをカウントし1パルスを出力するストローク量センサ機能付きのエアシリンダが用いられている。
【0071】
ワーク検知手段46の第5のエアシリンダ46bは、第1テーブル11がワークWを載置して第2ステーションBに搬送されてきたら、第3のチャック機構44を下降する前に、伸張作動し、プローブ46aを下降し、ワークWに当接させて上昇する。
【0072】
コントローラ113(
図5)は、プローブ46aがワークWに当接するまでに第5のエアシリンダ46bが出力したパルスをカウントすることにより、ワークWの大きさを検知し、フィンガー44aがワークWのワーク上部(ステム軸部又は筒軸部)をチャックする位置に対応して下降するように、第3のサーボモータ42を制御する。
【0073】
本位相決め機構40は、ワークWがトリポード型のアウタレースであるときに適用される。本位相決め機構40は、第2ステーションBに搬送されたワークWのワーク上部をチャックして一旦持ち上げる。ワークWを持ち上げている間に、第1テーブル11が第1ステーションAに復帰すると同時に、第2テーブル12が第3ステーションCから第2ステーションBに復帰する。
すると、本位相決め機構40は、
図11、
図12に示すように、ワークWを第2テーブル12上に備えられた本位相決めピン45cに被せるように下ろしてワークWの本位相決めを行う。次いで、第2テーブル12は、本位相決めピン45cに被せて本位相決めしたワークWを第3ステーションCに移動する。
【0074】
第2のワーク受承皿45は、ワークWがトリポード型のアウタレースであるときには、本位相決めピン45cを備えたものが取り付けられ、ワークWがバーフォード型のアウタレースであるときには、本位相決めピン45cを備えていないものが取り付けられる。
【0075】
本位相決め機構40は、第2ステーションBにおいて動作する。
本位相決め機構40は、第1テーブル11が第2ステーションBに位置されると、第3のチャック機構44を下降し、一対のフィンガー44aで第1テーブル11上のワークWのワーク上部(ステム軸部又は筒軸部)をチャックし、第3のチャック機構44を上昇する。続いて、本位相決め機構40は、第1テーブル11に交替して第2テーブル12が第2ステーションBに位置されると、第3のチャック機構44を下降し、ワーク下部(カップ部)が本位相決めピン45cに被さる状態に、該ワークWを受け皿本体45aに受承させる。第3のチャック機構44は、一対のフィンガー44aを開動してチャック解除し、次いで上昇される。本位相決めピン45cは、ワーク下部(カップ部)の内面のレース溝に当接して位相を決める。その後、第2テーブル12は、第3ステーションCに移動され、ワークWを本位相決め状態にして第3ステーションCに配置される。
【0076】
〔ワーク下部熱処理部50の構成〕
図2に示すようにワーク下部熱処理部50は、ハンドリング手段51とワーク下部用熱処理ヘッド56とを有している。
【0077】
〔ハンドリング手段51の構成〕
図6、
図13、
図14、
図15に示すように、ハンドリング手段51は、二つの回転チャック機構52,52と、二つの回転チャック機構52,52を第3ステーションCとワーク下部熱処理位置Gとに交互に交替させて対応させるように移動する往復回動手段53と、二つの回転チャック機構52,52を昇降させる昇降手段54と、ワーク確認手段55を備えてなる。
【0078】
往復回動手段53は、二つの回転チャック機構52,52を第3ステーションCとワーク下部熱処理位置Gとに交互に交替させて対応させる。昇降手段54は、二つの回転チャック機構52,52が第3ステーションCとワーク下部熱処理位置Gとに対応した位置で各回転チャック機構52を昇降させる。ワーク確認手段55は、回転チャック機構52の中心に通されたロッドを昇降させてワーク上端に当接することにより、ワークの芯出し、ワークのチャック位置の確認、チャック後のワークの位置ずれや脱落監視を行う。
以下、ハンドリング手段51について詳述する。
【0079】
回転チャック機構52は、昇降ブラケット54aに固定されるハウジング52aと、ハウジング52aに回転可能に支持された筒軸52bと、チャック回転用モータ52cと、シリンダ組立体52dと、三つのチャック爪52fなどを有してなる。
【0080】
チャック回転用モータ52cは、ハウジング52a(又は昇降ブラケット54a)に備えられ出力軸が回転伝達手段(ベルト機構)52jを介して筒軸52bの上端と連結され、筒軸52bを回転する。三つのチャック爪52fは、シリンダ組立体52dの下端面に露出し120°ずつ異なる水平放射方向に摺動自在に備えられている。三つのチャック爪52fは、シリンダ組立体52dの内部に備えられている図示しない複動式のピストンおよび該ピストンにリンクされた図示しない揺動リンクによって開閉され、チャックおよびチャック解除を行い得る。
【0081】
回転チャック機構52は、チャック回転用モータ52cにより筒軸52bが回転され、シリンダ組立体52dおよびその内部の一切の構造が筒軸52bと一体に回転される。図示しないが、ピストンの下側のシリンダ室に高圧空気が流入するときは、図示しないピストンが下動し、該ピストンと三つのチャック爪52fのそれぞれとにリンクされた図示しない揺動リンクの働きで該三つのチャック爪52fが閉動し、上側のシリンダ室に高圧空気が流入するときは、三つのチャック爪52fが開動するようになっている。
【0082】
図13および
図14に示すように、往復回動手段53は、回転軸53aと、回転軸53aに固定された一対の回動板53b,53bと、第4のサーボモータ53cを駆動源として含み、回転軸53aを180°往復回動させる回転軸駆動手段(符号なし)と、を有してなる。
【0083】
回転軸駆動手段(符号なし)は、第4のサーボモータ53cと、減速機53dおよび巻掛機構53eと、を有してなり、第4のサーボモータ53cの回転を回転軸53aの下端に伝達し、回転軸53aをベルト駆動で180°往復回動させる。
【0084】
回転軸53aは、下部が大径軸部となっていて、この大径軸部が軸受装置53gにより軸支されていると共に、上端が小径軸部となっていて、該小径軸部が軸受装置53hを介して装置フレーム(符号なし)に支持されている。軸受装置53gは外筒と内筒とを備え、外筒が中段プレート100に固定され、内筒が回転軸53aの下部の大径軸部を収容して外筒内で回転自在となっている。
【0085】
回転軸53aは、中段プレート100より上側部分が角軸形状に形成されていて、この角軸部を挟持固定した状態に一対の回動板53b,53bが備えられている。回転軸53aは、第4のサーボモータ53cにより何れの方向に180°回転された際、図示しない適宜の位置決め手段によって軸下端部がロックされるように構成されている。これにより、回転軸53aは、精密に位置決め停止が行われる。
なお、回転軸53aの上端に、回転軸53aと一体に回転する籠53fを備えていて、籠53fには各機器に繋がるケーブル類が収容されている。
【0086】
図13〜
図16に示すように、昇降手段54は、一対の昇降ブラケット54aと、一対の昇降機構(以下の54b〜54f)とを有してなる。一対の昇降ブラケット54aは、各回動板53bに取り付けられ回転チャック本体52aを支持する。
【0087】
一対の昇降機構(54b〜54f)は、各昇降ブラケット54aを回動板53bに対して相対的に昇降させる。
昇降機構は、回動板53bに備えられた平行一対の縦レール54bと、昇降ブラケット54aに備えられるスライダ54cと、各回動板53bの上端に備えられる第5のサーボモータ54dと、一対の縦レール54b間に位置され回動板53bに取り付けられたボールねじ軸54eと、昇降ブラケット54aに固定されるボールナットランナ54fと、を有してなる。
【0088】
さらに詳述すると、縦レール54bは、各側の回動板53bと昇降ブラケット54aとの間に位置されている。スライダ54cは、昇降ブラケット54aに備えられ縦レール54bに係合案内される。ボールねじ軸54eは、一対の縦レール54b間に位置され、回動板53bに取り付けられ、第5のサーボモータ54dにより回転される。ボールナットランナ54fは、昇降ブラケット54aに固定されボールねじ軸54eに螺合する。
【0089】
図14〜
図16に示すように、ワーク確認手段55は、ロッド55aと、ロッド55aの下端に回転可能に延長接続された当接ピース55bと、ロッド55aを昇降させるロッド昇降用駆動手段としての第6のエアシリンダ55cと、を有してなる。
ロッド55aは、回転チャック機構52の筒軸52bに昇降可能に通され、且つ筒軸52b内に備えられたニードルベアリングにより精密に芯出し状態に支持されている。当接ピース55bは、ワークWの上端に当接されワークWの芯出しを行う部材である。
【0090】
第6のエアシリンダ55cは、例えばピストンロッドに磁気メモリが設けられていて、ピストンロッドが0.1mm移動する毎に1パルスを出力するストローク量センサ機能付きのエアシリンダが用いられる。第6のエアシリンダ55cは、ロッド55aを下降し、回転チャック内に位置する当接ピース55bをチャック爪52fより下方へ突出させる。
【0091】
コントローラ113(
図5)は、第6のエアシリンダ55cが出力するパルスをカウントし、ワークのチャック位置の確認・チャック後のワークの脱落を監視する制御を行う。
【0092】
ワーク確認手段55は、回転チャック機構52が第3ステーションCに対応して下降して、ワークWをチャックする際には、当接ピース55bを回転チャック機構の中心孔より突出してワークWの上端面に当接し、ワークWの芯出しを行うと共に、第6のエアシリンダ55cがロッド55aのスト
ローク値としてパルスを出力しコントローラ113へ送信する。
【0093】
コントローラ113は、パルスをカウントし、ロッド55aのストローク量を算出して記憶する。もしも、チャック爪52fが磨耗、その他の原因でチャック力を十分に発揮できず、例えばワークWが1mmでも下方へずれるときには、当接ピース55bが1mm追随下降しワークWの上端面に対し当接状態を維持する。このため、第6のエアシリンダ55cは、ワークWが1mm下降したことに対応するパルス数をコントローラ113へ送信する。このようにして、コントローラ113は、ワークWがチャックずれを起こしたことを検知したときは、装置全体を緊急停止させる制御を行う。これにより、ワーク下部用熱処理ヘッド56(
図2)にワークWが接触して電気的に短絡することを未然に回避できる。
【0094】
回転チャック機構52は、当接ピース55bの突出寸法に対応してコントローラ113からの指令信号に基づいて昇降手段54により下降され、下降停止位置で複数のチャック爪52fを閉動させてワークWに対応したワーク上部の適切な位置をチャックすることができる。これにより、回転チャック機構52は、ワークWの大きさが異なりチャックする位置が異なっても適切な位置をチャックすることができる。
【0095】
ワーク確認手段55は、ワークWをチャックした後はワークの脱落監視を行う。
ワーク確認手段55は、回転チャック機構52がワークWをチャックした際には、引き続き当接ピースが回転チャック機構の中心孔内に引っ込んだ位置でワークWの上端面に当接した状態を維持し、当接状態を常に信号として取得してコントローラ113へ送信する。
【0096】
熱処理中において、ワークWに対する回転チャック機構52のチャックが弛んでしまうことが考えられる。例えば、高圧空気の供給が途絶え、もしくは回転チャック機構52内部の封止機構が破断し、あるいはチャック爪52fの磨耗等が万一において発生すると、ワークWに対する回転チャック機構52のチャックが弛んでしまう。このとき、ワーク確認手段55は、ワークWが回転チャック機構52から僅かに離脱した瞬間を検知し、非当接状態の信号をコントローラ113へ送信するようになっている。
コントローラ113は、ワーク確認手段55から送信された信号を受信すると、整流部へ高周波給電を遮断する信号を出力する。これにより、回転チャック機構52から離脱するワークWがワーク下部用熱処理ヘッドの加熱コイルに接触することを回避できる。
【0097】
図6〜
図8、
図13および
図14に示すように、ハンドリング手段51は、第4のサーボモータ53cにより反転駆動されることにより、二つの回転チャック機構52,52を第3ステーションCに対応する位置とワーク下部熱処理位置Gに対応する位置とに交互に交替して位置させる。
【0098】
ハンドリング手段51は、第3ステーションCに対応する位置の回転チャック機構52を昇降させて、回転チャック機構52と第3ステーションCに位置される第2テーブル12又は第3テーブル13との間でワークWの授受を行うと共に、ワーク下部熱処理位置Gに対応する位置の回転チャック機構52を下降させて、ワークWのカップ部(ワーク下部)をワーク下部用熱処理ヘッド56に近接状態に被せて熱処理を行う。
【0099】
〔ワーク下部用熱処理ヘッド56の構成〕
図17、
図18に示すように、ワーク下部用熱処理ヘッド56は、熱処理ヘッド本体561と、外面用冷却ジャケット562と、を有して構成される。
熱処理ヘッド本体561は、熱処理ヘッド固定手段57および第1の給電クランプ58によって支持される。外面用冷却ジャケット562は、熱処理ヘッド固定手段57によって支持される。熱処理ヘッド本体561は、
図1(a),(b)に示すアウタレースW1に適用するものを示している。
【0100】
図20に示すように、熱処理ヘッド本体561は、熱処理ヘッド固定手段57を介して冷却水を供給される内面用下部冷却ジャケット561eおよび内面用上部冷却ジャケット561hと、第1の給電クランプ58を介して誘導電流を給電されるワーク下部用加熱コイル561fと、を含んで構成されている。
【0101】
〔熱処理ヘッド固定手段57の構成〕
図17〜
図19に示すように、熱処理ヘッド固定手段57は、中段プレート100上に固定されたブラケット57aと、ブラケット57aの上面部として備えられたコイルベース57bと、コイルベース57b上の両側の所要高いブロック部に備えられた一対のトグルクランプ57c,57dと、を有してなる。
【0102】
図17に示すように、熱処理ヘッド本体561は、後述する取付用基板561aをコイルベース57b上に載置する。コイルベース57bの上面には、取付用基板561aを位置決め状態に嵌入させる凹部を有する。これにより、取付用基板561aはコイルベース57bに精密に位置決めされる。
【0103】
図17、
図18(b)に示すように、コイルベース57bには、中央に上下に貫通する大径給水孔57eを有し、この大径給水孔57eに関し120°ずつ異なる三方に所要寸法離れた位置に小径給水孔57fを有する。一対のトグルクランプ57c,57dでコイルベース57bに載置した取付用基板561aの上面を強く押圧すると、取付用基板561aを固定することができる。このため、取付用基板561aの下面とコイルベース57bの凹部の面とが強く密着される。これにより、コイルベース57bに開けられた大径給水孔57eが取付用基板561aに開けられた大径給水孔に一致し、またコイルベース57bに開けられた三つの小径給水孔57fが取付用基板561aに開けられた三つの小径給水孔に一致する。
【0104】
コイルベース57bに開けられた大径給水孔57eには下側から大径冷却水配管57gが接続され、またコイルベース57bに開けられた三つの小径給水孔57fには下側から三つの小径冷却水配管57hが接続されている。大径冷却水配管57gと小径冷却水配管57hは、図示しない冷却水供給源に接続されている。図示しないが、大径冷却水配管57gと小径冷却水配管57hの中途は、倹飩式戸106の内側に迂回して配管されていて流量調整弁(電磁弁)が備えられている。
【0105】
〔第1の給電クランプ58の構成〕
図18(a)および
図19に示すように、第1の給電クランプ58は、一対の給電端子58a,58bと、一対の導電板58c,58dと、熱処理ヘッド固定手段57のブラケット57aに固定され給電端子58a,58bを支持するクランプフレーム58eと、固定フランジ58fと、可動フランジ58gと、ハンドル58hを備えたねじ軸58iと、冷却水入口用接続ジョイント58jと、冷却水出口用接続ジョイント58kと、後述するその他を有してなる。
【0106】
一対の給電端子58a,58bは、熱処理ヘッド本体561の一対の被給電端子561k
1,561k
2を、孔と凹部を除いた重ね合わせ面同士で液密に密着させて挟持する。
導電板58c,58dは、一端が給電端子58aまたは58bに接続され、他端が中仕切り正面壁112に伸びて中仕切り正面壁112の後方の第1の整流電源部114と電気的閉回路を構成するように接続されている。導電板58c,58dは、絶縁パネル58sを挟んで積層され、冷却管58qによって冷却される。
【0107】
クランプフレーム58eは、略C形に形成され、一端をブラケット57aに位置調整可能に固定された固定フランジ58fに片持ち支持されていることで、給電クランプ全体を支持している。
クランプフレーム58eの他端にねじ孔を有するボス部58mが一体に備えられ、このボス部58mのねじ孔にハンドル58hを備えたねじ軸58iが螺合されている。そして、ねじ軸58iの先端にこのねじ軸58iに対して回転可能に可動フランジ58gを備えており、可動フランジ58gが固定フランジ58fと対向している。可動フランジ58gは、ねじ軸58iの回転によって共回りすることがないようにクランプフレーム58eに係合しているものとする。
【0108】
さらに、給電端子58aの背面に固定された不導体板58nが可動フランジ58gにボルトで固定され、同様に、給電端子58bの背面に固定された不導体板58pが固定フランジ58fにボルトで固定されている。なお、その他の構成要素についても導電板58c,58dおよび給電端子58a,58bに対して絶縁されているものとする。
従って、プラス側の給電端子58aとマイナス側の給電端子58bとが対向しており、ハンドル58hを回してねじ軸58iを螺動すると、プラス側の給電端子58aがマイナス側の給電端子58bに対して接近離隔自在である。これにより、一対の給電端子58a,58bによって一対の被給電端子561k
1,561k
2を取外し可能に挟持している。
【0109】
上記構成により、一対の給電端子58a,58bが一対の被給電端子561k
1,561k
2をクランプすると、第1の整流電源部114から後述するワーク下部用加熱コイル561fに対して誘導電流を給電し得る。
なお、冷却水入口用接続ジョイント58jと冷却水出口用接続ジョイント58kについては後述する。
【0110】
〔熱処理ヘッド本体561の構成〕
図20、
図21に示す熱処理ヘッド本体561は、
図1に示すトリポード形のアウタレースW1のカップ部W11に適用されるものである。従って、
図17〜
図21において、ワークWは、
図1に示すトリポード形のアウタレースW1を示している。
【0111】
図20、
図21に示すように、熱処理ヘッド本体561は、取付用基板561aと、取付用基板561aに立設されたワーク下部用加熱コイル561fと、ワーク下部用加熱コイル561fの各端部と接続された被給電端子561k
1,561k
2と、ワーク下部用加熱コイル561fの下部側に配置された内面用下部冷却ジャケット561eと、ワーク下部用加熱コイル561fの上部側に配置された内面用上部冷却ジャケット561hとを有する。
【0112】
さらに、熱処理ヘッド本体561は、ワーク下部用加熱コイル561fを被給電端子561k
1,561k
2に接続する連結コイル561n、561pと、取付用基板561aより立ち上がり、内面用下部冷却ジャケット561eに連通接続され冷却水を給送する小径送水管561cと、取付用基板561aより立ち上がり、内面用上部冷却ジャケット561hに連通接続され冷却水を給送する大径送水管561bと、を有する。
【0113】
取付用基板561aについて説明する。
図17、
図19に示すように、取付用基板561aは、熱処理ヘッド固定手段57のコイルベース57bに形成された凹部57b
1に嵌合して載置され精密に位置決めされる。熱処理ヘッド本体561は、コイルベース57bに備えられたトグルクランプ57c,57dによって取付用基板561aの上面を強力に押圧固定され、取付用基板561aの下面をコイルベース57bの上面に形成された凹部57b
1の底面に強く密着される。この構成により、メンテナンス並びに段取り時に、トグルクランプ57c,57dの締付け、締付解除および給電端子58a,58bのクランプ、クランプ解除により容易に着脱される。
【0114】
図20に示すように、取付用基板561aには、中心に上下に貫通して大径水路孔(符号なし)が設けられ、この大径水路孔から大径送水管561bが立ち上がっていると共に、この大径水路孔に関して120°ずつ異なる三方に所要寸法離れた位置に三つの小径水路孔が設けられ三つの小径水路孔から三つの小径送水管561cが立ち上がっている。
取付用基板561aに開けられた大径水路孔と小径水路孔は、前述した熱処理ヘッド固定手段57のコイルベース57bに開けられた大径給水孔57eまたは小径給水孔57fに一致して密着し連通する。なお、この実施形態では、取付用基板561aの下に、コイルベース57bに対して嵌合するアダプタ561a
1を備えている。
【0115】
ワーク下部用加熱コイル561fについて説明する。
図20(a)〜(c)に示すように、三つのワーク下部用加熱コイル561fはそれぞれ銅管等の金属製の中空パイプにより屈曲した形状に形成されている。各ワーク下部用加熱コイル561fは、端部561fa,561fbがそれぞれ縦方向に延び、両端部561fa,561fb間がワーク側となる外側に突出して水平方向に配置されている。
【0116】
図20(a)及び
図21(b)に示すように、各ワーク下部用加熱コイル561fはコア561gに支持され、内面用上部冷却ジャケット561hと内面用下部冷却ジャケット561eとの間に重ねられている。コア561gはワーク下部用加熱コイル561fの中間部分の内面および上下面に密着している。
【0117】
図21(a)(b)に示すように、ワーク下部用加熱コイル561fの両端部561fa,561fbは、中間部分より水平面内内方に間隔が狭く形成されており、それぞれ電気的並列となるように銅管製の連結コイル561n,561pを介して、被給電端子561k
1,561k
2に接続されている。具体的には、各ワーク下部用加熱コイル561fの一方の端部561faが連結コイル561nを介して被給電端子561k
1に接続され、他方の端部561fbが連結コイル561pを介して被給電端子561k
2に接続されている。
【0118】
図20に示すように、各連結コイル561n,561pは垂直に立ち上がる上部を有し、この上部がワーク下部用加熱コイル561fの端部561fa,561fbに接続されている。
また、これら連結コイル561n,561pは、コイル同士の干渉やコイルと大径又は小径の送水管561b,561cとの干渉を避けるように適宜の迂回形状とされ、被給電端子561k
1または561k
2に接続されている。
ワーク下部用加熱コイル561f及び連結コイル561n,561pは内部に、冷却水を通流させることができるように構成されているが、連結コイル561n,561pと被給電端子561k
1,561k
2との接続については後述する。
【0119】
内面用下部冷却ジャケット561eについて説明する。
図21(a)に示すように、この熱処理ヘッド本体561は円周三分割形状であり、向きが120°ずつ異なる三つの内面用下部冷却ジャケット561eを有する。三つの内面用下部冷却ジャケット561eは、周面が六角面の六角リング561dの1つ置きの側面に開口された三つの横孔で嵌入固定されている(
図21(a)参照)。各内面用下部冷却ジャケット561eは、下面に備えている孔に取付用基板561aから立ち上がる小径送水管561cが連通接続されている。小径送水管561cは内面用下部冷却ジャケット561eを支持している。
【0120】
これによって、熱処理ヘッド本体561が熱処理ヘッド固定手段57に載置固定されると、三つの内面用下部冷却ジャケット561eが、熱処理ヘッド固定手段57に備えられた三つの小径送水管561cから冷却水を供給され得る状態になる。
【0121】
内面用上部冷却ジャケット561hについて説明する。
図21(b)に示すように、内面用上部冷却ジャケット561hは、平面視で概略三角形の扁平中空形状に形成され、三つの頂角位置にワークWのカップ部の三つの深溝の正面に冷却水を噴射する噴射口561h
1を有する。この内面用上部冷却ジャケット561hは六角リング561dに固定されている。
【0122】
内面用上部冷却ジャケット561hは、
図20(c)及び
図21(a)に示すように、六角リング561dのリング穴を通して立ち上がっている大径送水管561bと連通接続され、熱処理ヘッド固定手段57に備えられた大径冷却水配管57gから冷却水を給送されるようになっている。
【0123】
被給電端子561k
1,561k
2について説明する。
図19〜
図21に示すように、熱処理ヘッド本体561は、被給電端子561k
1,561k
2を有している。被給電端子561k
1,561k
2は、第1の給電クランプ58の給電端子58a,58bによりクランプされ誘導電流を給電される。
【0124】
一対の被給電端子561k
1,561k
2は、導電性金属ブロック(具体的には銅ブロック)よりなり、絶縁パネル561mを挟んで三層一体とされ、張出端側部分を一対の給電端子58a,58bによって水平方向にクランプされている。なお、なお、一対の給電端子58a,58bにより一対の被給電端子561k1,561k2をクランプする方向を垂直方向に設けてもよい。
【0125】
ワーク下部用加熱コイル561fに冷却水を供給させるための給水路について説明する。
図19に示すように、被給電端子561k
1,561k
2と第1の給電クランプ58の給電端子58a,58bは、それぞれ冷却水を受け容れるための内部空間561k
11,561k
21または58a
1,58b
1を有している。
【0126】
給電端子58aの外面には、内部空間561k
11に連通して冷却水入口用接続ジョイント58jを備えている。
図18に示すように、この冷却水入口用接続ジョイント58jには水源と接続された給水管58rが接続されている。図示しないが、給水管の中途は、装置の倹飩式戸106の内側近傍に配管され、流量調整弁(電磁弁)が付設されている。また給電端子58bの外面には、内部空間561k
21に連通して冷却水出口用接続ジョイント58kが備えられている。この冷却水出口用接続ジョイント58kには、末端が帰還水集水タンク117内または集水溝118に位置された排水管が接続されている。
【0127】
給電端子58a,58bで被給電端子561k
1,561k
2をクランプすると、内部空間561k
11と内部空間58a
1とが各重ねあわせ面に開通された縦長の長孔を介して連通し、また内部空間561k
21と内部空間58b
1とが各重ねあわせ面に開通された縦長の長孔を介して相互に連通する。
【0128】
具体的には、被給電端子561k
1の内部空間561k
11は、上述した連結コイル561nに連通接続され、また、被給電端子561k
2の内部空間561k
21は、上述した連結コイル561pに連通接続されている。
【0129】
従って、給電端子58a,58bで被給電端子561k
1,561k
2をクランプすると、ワーク下部用加熱コイル561fに誘導電流を給電可能な状態になると共に、ワーク下部用加熱コイル561fの内部へ冷却水を供給する給水路がカプラレス接続された状態になる。
なお、ワーク下部用加熱コイル561fおよび六つの連結コイル561n,561pに限定されるものではなく、これまでに出願公開されている適合可能な種々のコイル形状のものを採用することができる。
【0130】
外面用冷却ジャケット562について説明する。
図17、
図18に示すように、外面用冷却ジャケット562は、熱処理ヘッド固定手段57の一対の柱状ブラケット57iに揺動可能に両端支持され、ワークWのカップ部の前側(扉側)或いはカップ部の全周を囲むように位置されロックされる。外面用冷却ジャケット562は、回転チャック機構52によりチャックされ、ワーク下部熱処理位置Gに対応する上方位置から下降されるワークWと干渉しない。外面用冷却ジャケット562には、図示しない耐熱性のフレキシブル給水ホースが接続され、カップ部外面を冷却する冷却液を噴射する複数のノズル562aを備えている。メンテナンス時には、外面用冷却ジャケット562は、作業者によって手動により持ち上げられた状態になり、トグルクランプ57c,57dのチャックを解除して、熱処理ヘッド本体561を前側(扉側)に取り出して交換することができる。
【0131】
上記構成に加え、熱処理ヘッド本体561は、取付用基板561aや内面用下部冷却ジャケット561e等が、誘導電流が流れるワーク下部用加熱コイル561fおよび被給電端子561k
1,561k
2に対して、電気的絶縁が図られた状態に設けられている。
【0132】
〔第1の給電クランプ58とワーク下部用熱処理ヘッド56との関係〕
熱処理ヘッド本体561を装着するには、被給電端子561k
1,561k
2を第1の給電クランプ58の給電端子58a,58bの間に位置させ、熱処理ヘッド本体561の取付用基板561aを熱処理ヘッド固定手段57のコイルベース57bに載置し、トグルクランプ57c,57dで固定し、次いで、給電端子58a,58bで被給電端子561k
1,561k
2をクランプする。
【0133】
これによって、ワーク下部用加熱コイル561fへ給電を行う電気的接続を行うことができる。これに加え、熱処理ヘッド本体561側に備えられた給水路と熱処理ヘッド固定手段57に備えられた給水路とがカプラレス接続される。また熱処理ヘッド本体561側に備えられた給水路と熱処理ヘッド固定手段57に備えられた給水路とがカプラレスで接続される。このように、トグルクランプ57c,57dの締付け、締付解除および給電端子58a,58bのクランプ、クランプ解除により熱処理ヘッド本体561を容易に着脱できることで、メンテナンスを迅速容易に行うことができる。
【0134】
コントローラ113がプログラムに基づいて流量調整弁を「開」に制御することによって、熱処理ヘッド本体561に備えられた内面用下部冷却ジャケット561eと内面用上部冷却ジャケット561hとに冷却水が供給される。またコントローラ113がプログラムに基づいて大径冷却水配管57gと小径冷却水配管57hの中途に備えられた流量調整弁(電磁弁)を「開」に制御することによって時間を異にして、内面用下部冷却ジャケット561eと内面用上部冷却ジャケット561hとに冷却水が供給される。
【0135】
ワーク下部用熱処理ヘッド56の動作について説明する。
例えば
図3に示すように、ハンドリング手段51の回転チャック機構52がワークW(
図1に示すトリポード形のアウタレースW1)をチャックし、該ワークWをワーク下部熱処理位置Gに対応する上方に位置された後、ワークWが回転チャック機構52と共に下降する。ワークWが下降すると、
図18に示すように、熱処理ヘッド本体561の外周とこれを囲む外面用冷却ジャケット562との間の間隙に、ワークWのカップ部が下端側から進入し下端側から順に熱処理ヘッド本体561の周囲に被さっていく。これによりワーク下部用加熱コイル561f、内面用下部冷却ジャケット561eおよび内面用上部冷却ジャケット561hは、ワークWの三つの深溝の下端側から順に上端側へ近接状態で対向して相対移動する。
【0136】
ワークWのカップ部の下端が熱処理ヘッド本体561のワーク下部用加熱コイル561fと対向又は近接した時点から、ワーク下部用加熱コイル561fに誘導電流が給電される。ワーク下部用加熱コイル561fは、ワークWのカップ部内面の加熱を開始し、外面用冷却ジャケット562もカップ部外面へ冷却水を噴射し冷却を開始する。
【0137】
次いで、ワークWのカップ部の下端が内面用下部冷却ジャケット561eと対向又は近接した時点から、内面用下部冷却ジャケット561eがカップ部内面へ冷却水を噴射し冷却を開始する。内面用下部冷却ジャケット561eは、冷却水をカップ部内面に形成されている三方の溝面に噴射して冷却を行う。この時点より、カップ部内面に対し、ワーク下部用加熱コイル561fが上側では加熱を行い、その下側近傍では、内面用下部冷却ジャケット561eが冷却を行い、その状態で移動式熱処理(焼入れまたは焼戻し)を行なう。
【0138】
熱処理ヘッド本体561の上端面がワークWのカップ部天井面に近接した状態にワークWのカップ部が熱処理ヘッド本体561に深く被さると、ハンドリング手段51によるワークWの下降が停止すると共に、加熱が終了し、且つ内面用下部冷却ジャケット561eによる冷却が終了する。
次いで、内面用上部冷却ジャケット561hが冷却水を噴射しカップ部の全内面を冷却する。次いで、外面用冷却ジャケット562および内面用上部冷却ジャケット561hによる冷却が終了する。
【0139】
以上で、カップ部内面の熱処理が終了する。すると、ハンドリング手段51の回転チャック機構52がワークWを上昇する。ワークWは、その後、上昇され回動されて、第3ステーションCに搬送され下降され第3ステーションCに位置される第3テーブル13上の第3のワーク受承皿13aに載置される。
【0140】
上記構成は、アウタレースW1に適用する熱処理ヘッド本体561について説明したものである。
図1(c),(d)に示すトリポード型のアウタレースW2については、カップ部W21の内空間形状が異なるので、図示しない別のワーク下部用熱処理ヘッドが適用される。この場合の熱処理ヘッド本体の構成も、
図20に示す熱処理ヘッド本体561の構成に準じるものである。
【0141】
図22は、
図1(e),(f)に示すアウタレースW3のカップ部W31の熱処理に適用する熱処理ヘッド本体561aについて示している。熱処理ヘッド本体561aは、不導体の冷却ジャケット561rの周囲にワーク下部用加熱コイル(マルチターンコイル)561sを有し、このワーク下部用加熱コイル561sの一端は冷却ジャケット561rの中を通り、そして、両端は、この熱処理ヘッド本体561aにおいても備えられた
図20に示す被給電端子561k
1,561k
2に連通接続される。熱処理ヘッド本体561aを用いる場合には、
図17に示す取付用基板561aの小径送水管561cと小径冷却水配管57hが存在しない。
【0142】
アウタレースW3の場合は、回転チャック機構52によってチャックされたアウタレースW3を、カップ部が熱処理ヘッド本体に深く被せた状態になってから、ワークWを例えば200r.p.mで回転させつつ、
図17に示す外面用冷却ジャケット562によりカップ部外面を冷却する。そして、カップ部内の入口から最奥まで存在するワーク下部用加熱コイル(マルチターンコイル)561sによってカップ部内面を全面的に加熱し、加熱後は大径冷却水配管57gを通して冷却ジャケット561rの内部に冷却水を供給する。この冷却水をマルチターンコイルの隙間から噴射させてカップ部W31の全内面を冷却する。
【0143】
図1(g),(h)に示すアウタレースW4については、カップ部W41の内空間形状に適合するワーク下部用熱処理ヘッドが適用される。この場合の熱処理ヘッド本体の構成も、
図22に示す熱処理ヘッド本体561aの構成に準じるものである。
【0144】
〔ワーク上部熱処理部60の構成〕
図2、
図6、
図23、
図24に示すように、ワーク上部熱処理部60は、間欠回転テーブル61と、各貫通孔61aに対応して間欠回転テーブル61上に備えられた三つの環状冷却ジャケット62と、第5ステーションEに対応して位置された貫通孔61aの下方に備えられた第1のリフター63と、第5ステーションEに対応する貫通孔61aが次に間欠停止する位置の下方に備えられた第2のリフター64と、第2のリフター64が上昇停止するワーク上部加熱位置H(Hは、
図6に示すように平面視した位置)に備えられたワーク上部用加熱ユニット65と、を有してなる。
【0145】
〔間欠回転テーブル61の構成〕
図24に示すように、間欠回転テーブル61は、筒軸部が中段プレート100に開けられた貫通孔に通して落とし込まれた軸受部61bと、軸受部61bに回転可能に支持された軸部61cと、軸部61cの上端に設けられたテーブル部61dと、テーブル部61dの外周部の120°ずつ位相が異なる3位置に配設された三つの貫通孔61aと、を有してなる。
【0146】
図24(a)に示すように、第6のサーボモータ61eは、出力回転を減速機61fとベルト機構61gとを介して軸部61cの下端部に伝達し、軸部61cを120°回転する毎に所定時間停止させる。間欠回転テーブル61は、軸部61cに支持されているから、120°回転する毎に所定時間停止する。第6のサーボモータ61eが停止すると、軸部61cの下端が図示しない位置決め手段によって位置決めされる。これによって、間欠回転テーブル61は、停止時には、平面視において、三つの貫通孔61aを第5ステーションEと、ワーク上部加熱位置Hと、ワーク上部冷却位置Iとに精密に対応する。
【0147】
図24、
図27示すように、各貫通孔61aには第4のワーク受承皿61hが固定されている。貫通孔61aは第1のリフター63のリフトヘッド63aを通過させる孔径を有する。第4のワーク受承皿61hは、内径がワークWを受け取る口径に設定されていると共に、内面にリング状の受承突起61h’を有している。該リング状の受承突起61h’は、ワークWを載置する機能を有する。第1のリフター63のリフトヘッド63aは、受承突起61h’を通過してワークWを持ち上げられるようになっている。第4のワーク受承皿61hは、第1のリフター63がワークWを受承して復帰下降する際には、ワークWをゆるい嵌合状態に受け容れる。処理対象のワークWが換われば、第4のワーク受承皿61hもワークWに対応したものに交換される。
【0148】
〔環状冷却ジャケット62の構成〕
図23、
図24に示すように、間欠回転テーブル61の上側に、三つの貫通孔61aに対応して三つの環状冷却ジャケット62を備えている。各環状冷却ジャケット62は、貫通孔61aを跨いで間欠回転テーブル61上に立脚された二つの筒状の支脚62cを有し、該筒状の支脚62cによって間欠回転テーブル61の上面から離間して備えられている。環状冷却ジャケット62は、環状上面板と環状下面板と外周板と冷却水噴射用内周板62aとで形成され、環状空間62bを有している。さらに、
図25に示すように、環状冷却ジャケット62は、圧力均衡用内周板62dによって環状空間62bを内周側と外周側とに仕切られている。これによって、外周側のジャケット空間から圧力均衡用内周板62dに開けられた複数の小孔を通して、内周側のジャケット空間に全周において略均一に流入させることができ、さらに、冷却水噴射用内周板62aに開口されたノズルからの冷却水をワークWのワーク上部へ向けて均一に噴射させることができる。環状空間62bには、後述する冷却水供給路から二つの支脚62cを通して冷却水を受け容れる。
【0149】
上述したように、環状冷却ジャケット62が間欠回転テーブル61の上面から離間していることで、環状冷却ジャケット62の丈を必要以上に大きくしないで最大径のワークWのワーク上部への冷却水の噴射が良好に行える高さが実現でき、さらに噴射した冷却水を環状冷却ジャケット62の下側外方へ流れさせることができ、これによって環状冷却ジャケット62の内側に冷却水が滞留してプール状態になることを回避できる。
なお、
図24(b)に示すように、間欠回転テーブル61の上面には、一の環状冷却ジャケット62から噴射し、間欠回転テーブル61上を流れる冷却水が他の貫通孔61aの方向へ流れ込まないように規制する区画板62eが立設されている。
【0150】
図24(a)に示すように、環状冷却ジャケット62に冷却水を供給する冷却水供給路は、軸受部61bと軸部61cとテーブル部61dとの各内部にわたって連通するように、三つの環状冷却ジャケット62に対応する3系統に分かれて備えられている。
詳述すると、軸受部61bは、内周面に上下三段に分かれて三つの内周路を有し、外周面よりいずれか一つの内周路に連通する冷却水供給口611,612,613を備えている。軸部61cは、三つの縦通路614,615,616を備え、一つの縦通路は軸受部61bに備えられた一つの内周路と連通している。
図24(b)に示すように、テーブル部61dは、中心部より貫通孔61aの両側にV形に放射方向に延びる三つのV形放射通路617,618,619を備えている。各V形放射通路617,618,619はテーブル部61dの中心部で軸部61cに備えられた三つの縦通路614,615,616の中の一つと連通している。一つの環状冷却ジャケット62は、二つの支脚62cが筒状に形成され、該二つの支脚62cが貫通孔61aの下側を通っているV形放射通路617,618,619のうちの一つに連通している。
従って、環状冷却ジャケット62には、軸受部61bと軸部61cとテーブル部61dと二つの筒状の支脚62cの各内部に渡って設けられた3系統の冷却水供給路を通して、冷却水が供給される。
各冷却水供給口611,612,613に冷却水配管(符号なし)が接続され、各冷却水配管は共通の冷却水供給源に接続されている。各冷却水配管は、中途が、装置の倹飩式戸107の内側近傍に配置されていると共に、
図2に示すように、流量調整弁および電磁式仕切弁を備えている。
【0151】
〔第1のリフター63の構成〕
図27に示すように、第1のリフター63は、リフトヘッド63aと、リニアガイド筒63bと、ロッド63cと、連結ブラケット63dと、第7のエアシリンダ63eと、を有してなる。
リフトヘッド63aは、ロッド63cの上端に固定され、第5ステーションEに精密に対応して備えられている(
図6参照)。
図27に示すように、リニアガイド筒63bは、筒部とフランジを有し、筒部が中段プレート100を貫通した孔に通され、フランジが中段プレート100の上面に当接されボルト等の締結具により固定されている。リニアガイド筒63bは、内部にオイルレスブッシュ(符号なし)を有している。ロッド63cは、リニアガイド筒63bに備えたオイルレスブッシュにより上下方向に移動可能に案内されている。第7のエアシリンダ63eは、シリンダ本体が装置フレーム(符号なし)に固定され、ピストンロッドの外端が連結ブラケット63dを介してロッド63cの下端に連結されている。第7のエアシリンダ63eには、ガイドロッド付きのエアシリンダが採用されている。第7のエアシリンダ63eは、伸張作動してロッド63cを上昇させる。
【0152】
〔間欠回転テーブル61と第1のリフター63と第1ガントリ21との関係〕
図26(a)、
図26(b)に示すように、第1のリフター63は、第1ガントリ21が第4ステーションDで吊り上げたワークWを第5ステーションEに対応する上方位置に搬送し、ここからワークWを下降させる。これに対応し、第7のエアシリンダ63eは、ピストンロッドを伸張作動し、間欠回転テーブル61の下位置のリフトヘッド63aを上昇させる。リフトヘッド63aは、間欠回転テーブル61に設けられた貫通孔61aに入り、貫通孔61aに備えられた第4のワーク受承皿61hを通過し、さらに環状冷却ジャケット62を通過し、第1ガントリ21が保持するワークWの下側に近接し停止する。
【0153】
第1ガントリ21は、第1のリフトヘッド63aがワークWの下側に近接し停止したタイミングで、ワークWのチャックを解除する。これにより、ワークWはリフトヘッド63aに載置される。すると、第7のエアシリンダ63eは縮小作動し下方の待機位置に復帰する。
【0154】
第1のリフトヘッド63aに載置されたワークWは、リフトヘッド63aが下降復帰する工程において、第4のワーク受承皿61hに移載される。これにより、第1ガントリ21と第1のリフトヘッド63aとの連携によりワークWを間欠回転テーブル61の第5ステーションEに対応する貫通孔61aに備えられた第4のワーク受承皿61hに載置する。
【0155】
〔間欠回転テーブル61と第1のリフター63と第2ガントリ22との関係〕
第5ステーションEで第4のワーク受承皿61hに載置されたワークWは、間欠回転テーブル61が3ステップ間欠回転すると、熱処理を終えて第5ステーションEに戻る。このワークWを
図26(a)、
図26(b)に示すように、第5ステーションEから第6ステーションFに搬送するべく、
図26(c)に示すように、第2ガントリ22が第5ステーションEに対応する上方位置から環状冷却ジャケット62の上側近傍に下降すると共に、第1のリフター63のリフトヘッド63aが上昇する。
【0156】
第1のリフター63は、第7のエアシリンダ63eを伸張させることにより、リフトヘッド63aが、第4のワーク受承皿61hを通過し、この際にリフトヘッド63aに載置されたワークWを突き上げるようにして受け取り、さらに環状冷却ジャケット62を通過し、第1ガントリ21が保持するワークWの下側に近接し停止する。
【0157】
図26(a)に示すように、第2ガントリ22は、チャック機構22dがワークWをチャックすると上昇復帰する。第1のリフター63は、第7のエアシリンダ63eを縮小作動して、リフトヘッド63aが待機状態に下降復帰する。こうして、第1のリフター63は、間欠回転テーブル61がワンステップ間欠回転して停止する毎に、第5ステーションEに対応する熱処理を終えたワークWを第2ガントリ22に受け渡す。第2ガントリ22は、チャック機構の下降ストロークを検出してワークWをチャックし、上昇復帰する。
図26(b)に示すように、第2ガントリ22は、ワークWを第6ステーションFに対応する上方位置に搬送し、次いでワークWを下降してアフタークール部70の反転テーブル71上に備えられた第5のワーク受承皿71aに載置する。
なお、第2ガントリ22のチャック機構22dが環状冷却ジャケット62内を下降することができて、第4のワーク受承皿61hに直接載置できる構成としても良く、この場合には、第1のリフター63は備えないこととする。
【0158】
〔第2のリフター64の構成〕
図28、
図29は、第2のリフター64に示す。
図24(b)に示すように、間欠回転テーブル61は、平面視において、時計回りに120°回動して、ワークWを第5ステーションEに対応する位置からワンステップ回動しワーク上部加熱位置Hに位置させるが、第2のリフター64はワンステップ回動したWの下方に備えられている。
【0159】
図28、
図29に示すように、第2のリフター64は、中段プレート100を貫通して該中段プレート100に備えられたリニアガイド筒64aと、リニアガイド筒64aに上下方向に案内される筒状ロッド64bと、筒状ロッド64bの内部に備えられた回転筒軸64cと、回転筒軸64cを回転させるモータ64dと、を有している。さらに、第2のリフター64は、回転筒軸64cの上端に備えられたリフトヘッド64eと、中段プレート100の下側に設けられたボールねじ64fと、ボールねじ64fに螺合されたボールナットランナ64gと、出力軸が巻掛機構64qを介してボールねじ64fの上端と連結されボールねじ64fを回転する第7のサーボモータ64hと、ボールナットランナ64gと回転筒軸64cの下端とを連結している連結ブラケット64iと、回転筒軸64cの下端に接続された回転ジョイント64jと、を有している。
【0160】
第2のリフター64は、第7のサーボモータ64hにより駆動されてリフトヘッド64eでワークWの突き上げを行う。リフトヘッド64eによるワークWの突き上げストロークは、ワークWの種類に応じ制御可能である。
【0161】
さらに詳述すると、筒状ロッド64bは、オイルレスブッシュを有するリニアガイド筒64aにより上下方向に移動可能に案内される。回転筒軸64cは、筒状ロッド64bの内部に備えられ回転可能、且つ軸方向移動不能である。リフトヘッド64eは、ワークWに対応したものが選択され、回転筒軸64cの上端に固定されている。
【0162】
モータ64dは、出力軸が減速機64kを介して回転筒軸64cの下端近傍と連結され、回転筒軸64cを回転させる。第2のリフター64が突き上げたワークWをワーク上部用加熱コイル652又は653が均一加熱を行うためには、ワークWが所要の高速で回転される必要がある。このため、モータ64dは、回転筒軸64cを例えば180r.p.m以上の回転速度で回転できるスペックを有する汎用モータが使用される。
【0163】
ボールねじ64fは、中段プレート100の下側に備えられ、筒状ロッド64bに対して平行に、且つ上端近傍および下端を軸受64r、64sにより支持され、回転可能である。
【0164】
回転ジョイント64jには、冷却水配管64pが接続されている。冷却水配管64pは共通の冷却水供給源である冷却水供給部116(
図5参照)に接続されている。冷却水配管64pの中途は、メンテナンスがしやすいように、装置の倹飩式戸107の内側近傍に配置され、流量調整弁および電磁式仕切弁が備えられている。
【0165】
第7のサーボモータ64hがボールねじ64fを回転すると、ボールナットランナ64gが昇降され、ボールナットランナ64gと筒状ロッド64bの下端とが連結ブラケット64iで連結されているから、回転筒軸64cが一体に昇降される。回転筒軸64cは、筒状ロッド64bと一体に昇降されながら、モータ64dにより回転される。これにより、第2のリフター64は、回転筒軸64cの上端に備えるリフトヘッド64eでワークWを昇降自在であり、且つ回転自在である。従って、第2のリフター64は、ワークWを突き上げて第4のワーク受承皿61hを通過し、次いでワークWを回転させつつ環状冷却ジャケット62内を通過し、ワーク上部熱処理位置Hで熱処理を終えるまで突き上げることができる。
【0166】
〔ワーク上部用加熱ユニット65,65Aの構成〕
図30(a),(b)と
図31(a),(b)は、ワーク上部用加熱ユニット65を示す。
図1(a),(b)及び(e),(f)に示すワークW1,W3におけるステム軸部(中実軸)W12,W32を熱処理する場合は、
図30(a),(b)に示すようにワーク上部用加熱ユニット65を構成する。
図1(c),(d)及び(g),(h)に示すワークW2,W4におけるスプライン孔部W22,W42を備えた筒軸部を熱処理する場合は、
図31(a),(b)に示すようにワーク上部用加熱ユニット65Aを構成する。両者の相違は、ワーク上部用加熱ユニット65では、常設の芯出しセンタ651jを用い、且つワーク上部用加熱コイル652を取り付け、ワーク上部用加熱コイル652を用いる。これに対し、ワーク上部用加熱ユニット65Aでは、芯出しセンタ651jを使わず上昇位置に待機させ、ワーク上部用加熱コイル653と芯出しキャップ655とを取り付け、ワーク上部用加熱コイル653と芯出しキャップ655を用いる。すなわち、ワーク上部用加熱コイル652,653と、芯出しキャップ655はワークWが相違すると交換され、その他の構成については常設である。なお、ワーク上部用加熱コイル652,653は、図示の形状のものに限定されず、これまでに出願公開されている適合可能な種々のコイル形状のものを採用できる。
図32(a)は、ワーク上部用加熱コイル652の詳細形状の一例を示し、
図32(b)は、ワーク上部用加熱コイル653の詳細形状の一例を示す。
【0167】
図30(b)又は
図31(b)に示すように、ワーク上部用加熱ユニット65又は65Aは、中仕切り正面壁112に固定されたブラケット651と、ワーク上部用加熱コイル652又は653の一対の被給電端子に誘導電流を給電するように中仕切り正面壁112に固定されたクランプ式給電接続具654と、を有してなる。
【0168】
ブラケット651は、中仕切り正面壁112に固定されたブラケット本体651aと、ブラケット本体651aに支持される上面板651bと、上面板651bの下側に上段コイルベース651cと、を有する。さらに、ブラケット651は、上段コイルベース651cに上下動可能に備えられた2本のガイドロッド651dによって両端支持されて上段コイルベース651cの下側に配置された下段コイルベース651eを有している。
【0169】
図30(a)又は
図31(a)に示すように、上段コイルベース651cの上面並びに下段コイルベース651eの上面に、ワーク上部用加熱コイル652又は653のコイル取付基板を嵌入させて位置決めするための凹部が形成されていて、且つ凹部の底面部が大きく開口されており、凹部を挟む両側位置に一対のトグルクランプ651f又は651gを備えている。
【0170】
図30(a)に示すように、ブラケット651には、第7のエアシリンダ651hにより昇降される昇降ロッド651iの下半部に、回転可能に延長接続された芯出しセンタ651jを備えている。芯出しセンタ651jは、ワーク上部がステム軸部(中実軸)であるワークWの、ステム軸部を加熱する場合に、第7のエアシリンダ651hの縮小作動により下降され、尖端部をワークWのワーク上部に備えた円錐状の凹部に当接し、ワークWを芯出しする。芯出しセンタ651jの尖端部651j’は、ねじ組構造で交換可能に備えられる。
【0171】
図30(a)に示す芯出しセンタ651jは、
図28に示す第2のリフター64がワークWを突き上げる前は、第7のエアシリンダ651hによって下降され、且つ第7のエアシリンダ651hのシリンダ室が大気に開放されている。芯出しセンタ651jは、第2のリフター64がワークWを突き上げると、ワークWの上端に当接し、ワークWを芯出し、ワークWに押されて上昇していく。このとき、第7のエアシリンダ651hは、動作フリーとなっていて伸張していき、ストローク量に応じたパルスを出力する。
【0172】
図30(b)に示すように、芯出しセンタ651jを昇降させる機構は、昇降ロッド651iと、円筒ガイド651kと、第7のエアシリンダ651hと、連結部材651mと、を有してなる。芯出しセンタ651jは、昇降ロッド651iの下端に延長接続され、且つ昇降ロッド651iに対して回転可能に接続されている。円筒ガイド651kは、上面板651bを貫通するように上面板651bに備えられ、昇降ロッド651iは、円筒ガイド651kに上下動可能に案内されている。第7のエアシリンダ651hは、シリンダ本体の上端が上面板651bの下面に固定され、ピストンロッド651h’が上面板651bより上方へ伸張可能である構成とされている。昇降ロッド651iが上方へ最大移動されたときの上端と、ピストンロッド651h’が上方へ最大移動されたときの上端とが一致していて、両上端が連結部材651mで固定連結されてなる。
【0173】
図30に示す第7のエアシリンダ651hがピストンロッド651h’を引退作動すると、昇降ロッド651iが下降し、芯出しセンタ651jが下降する。芯出しセンタ651jの尖端部651j’がワークWを芯出しすると、第2のリフター64は、上昇しワークWに当接し、当接後に回転して上昇する。芯出しセンタ651jは、連れ回り回転されてワークWに押されて上昇していく。
【0174】
図31に示すワーク上部用加熱ユニット65Aは、上段コイルベース651c上に載置され、且つ一対のトグルクランプ651fによって押さえ付けて固定される
図31(b)に示すワーク上部用加熱コイル653と、下段コイルベース651e上に載置され、且つ一対のトグルクランプ651gによって押さえ付けられる芯出しキャップ655と、を含んで構成され、ワークWの筒軸部(ワーク上部)のスプライン孔を加熱する。
【0175】
ワーク上部用加熱ユニット65Aでは、下段コイルベース651eは、ブラケット651に備えられた第8のエアシリンダ651nが伸張作動することにより下降され、上昇については、第8のエアシリンダ651nが動作フリーとなっていることにより、第2のリフター64で突き上げられるワークWの上端が、下段コイルベース651eに取り付けられた後述する芯出しキャップ655に当接し、該芯出しキャップ655を持ち上げていく構成とされている。
【0176】
第7のエアシリンダ651hおよび第8のエアシリンダ651nは、例えばピストンロッドに磁気メモリが設けられていてピストンロッドが、例えば0.1mm移動する毎に1パルスを出力するストローク量センサ機能付きのエアシリンダが採用されている。コントローラ113は、エアシリンダが出力するパルスをカウントし、後述する制御を行う。
【0177】
図33に示すように、芯出しキャップ655は、複数部品組立構造の外側ハウジング655aと、複数部品組立構造の内側ハウジング655bと、外輪が外側ハウジング655aに被嵌され内輪が内側ハウジング655bを支持するベアリング655cと、を有してなる。
【0178】
芯出しキャップ655は、外側ハウジング655aのフランジ部が、下段コイルベース651eの凹部に嵌入され、且つ
図31に示すように一対のトグルクランプ651gで上面を押さえ付けられる。
従って、芯出しキャップ655の取付、交換を迅速に行うことができる。
図33に示すように、回転可能な内側ハウジング655bの内方張出部がワークWについて筒軸部の端面を押圧し、ワークWを芯出しする。
【0179】
図32(a)に示すワーク上部用加熱コイル652は、
図30に示すワーク上部用加熱ユニット65に適用される。ワーク上部用加熱コイル652は、銅管で構成されたコイル本体652aと、コイル本体652aの両端に設けられた一対の被給電端子652b,652cと、取付フレーム652dと、絶縁ブラケット652eと、を有してなる。取付フレーム652dと絶縁ブラケット652eとは一体的に組み付けてなる。また一対の被給電端子652b,652cは、絶縁ブラケット652eを挟んで一体的に組み付けられている(
図34)。
フランジ部652dは、下段コイルベース651eに載置され一対のトグルクランプ651gによって押さえ付けられる(
図30(b))。コイル本体652aは、中途部が二段半巻き鞍型形状でワークWのステム軸部に対して近接する。コイル本体652aの形状は一例に過ぎない。
【0180】
図32(b)に示すワーク上部用加熱コイル653は、
図31に示すワーク上部用加熱ユニット65Aに適用される。ワーク上部用加熱コイル653は、銅管で構成されたコイル本体653aと、コイル本体653aの両端に設けられた一対の被給電端子653b,653cと、フランジ653dと、絶縁ブラケット653eと、を有してなる。取付フレーム653dと絶縁ブラケット653eとは一体的に組み付けてなる。また一対の被給電端子653b,653cは、絶縁ブラケット653eを挟んで一体的に組み付けられている(
図34)。
フランジ653dは、上段コイルベース651cに載置され一対のトグルクランプ651fによって押さえ付けられる(
図31)。コイル本体653aは、マルチターン形状に垂下形成された中途部を有し、中途部が、第2のリフター64で突き上げられるワークWの筒軸部のスプライン孔に非接触に相対的に挿入される。コイル本体653aの形状は一例に過ぎない。
【0181】
図32(a)に示す一対の被給電端子652b,652c又は
図32(b)に示す一対の被給電端子653b,653cは、
図34に示すように、第2の給電クランプ654の一対の給電端子654a,654bにより、水平方向にクランプされる。
図34に示す第2の給電クランプ654は、
図18,
図19に示す第1の給電クランプ58と近似する構造である。該第2の給電クランプ654は、一対の給電端子654a,654bと、一対の導電板654c,654dと、ブラケット651に固定され給電端子654a,654bを支持するクランプフレーム654eと、固定フランジ654fと、可動フランジ654gと、ハンドル654hを備えたねじ軸654iと、冷却水入口用接続ジョイント654jと、冷却水出口用接続ジョイント654kと、その他とを有してなる。
一対の導電板654c,654dは、中仕切り正面壁112の後方に備えられた第2の整流電源部115(
図5、
図6参照)から誘導電流を給電される。
第2の給電クランプ654のクランプ構造は、第1の給電クランプ58と略同様であるので説明を省略する。
これにより、コイル本体652a(
図32(a)参照)又は653a(
図32(b)参照)に第2の整流電源部115から出力される誘導電流が給電される。なお、コイル本体652a又は653aの形状は図示例に限定されない。一対の給電端子654a,654bによる一対の被給電端子652b,652c又は653b,653cをクランプする方向が垂直方向であっても良い。
【0182】
〔第2のリフター64とワーク上部用加熱ユニット65の動作関係〕
図28、
図29、
図30(a),(b)を用いて、ワーク上部がステム軸部であるワークWの、ステム軸部を加熱する場合について説明する。
【0183】
図30に示すワーク上部用加熱ユニット65では、段取りとして、ワーク上部用加熱コイル652が下段コイルベース651eに取り付けられる。
図5のコントローラ113が
図29に示す第7のサーボモータ64hのモータドライバ(図示しない)に駆動開始信号を送信すると、
図29に示す第7のサーボモータ64hが駆動し、ボールねじ64fが回転し、リフトヘッド64eが上昇していく。リフトヘッド64eは、第4のワーク受承皿61hに載置されたワークWを突き上げていき、ワークWのワーク上端が芯出しセンタ651jに当接し、さらにワークWを突き上げていく。芯出しセンタ651jは、尖端部651j’をワークWのワーク上端の凹部に嵌合してワークWを芯出する。
【0184】
芯出しセンタ651jによりワークWの芯出しが行われた時点より、第8のエアシリンダ651hが出力するパルスを出力する。コントローラ113は、第8のエアシリンダ651hが出力するパルスをカウントすると共に、モータ64dのモータドライバに駆動開始信号を送信する。
これによりモータ64dは駆動回転し、ワークWを例えば1秒間に3回転以上の回転速度で回転させる。
また、コントローラ113は、回転ジョイント64jに対応する電磁式仕切弁が開弁するように開弁制御信号を送信する。
これにより、回転ジョイント64j内に冷却水が供給され、ワークWのカップ部内の冷却と、リフトヘッド64eの冷却とが行われる。この冷却水の供給は、第2のリフター64が下降を開始する時点で停止する。
【0185】
コントローラ113は、パルスをカウントし、ワークWのワーク上部がワーク上部用加熱コイル652に対し、初期対応状態になる第1のカウント値(第1の閾値)になったら、第2の整流電源部115に誘導電流を供給開始する信号を出力する。
これにより、ワーク上部用加熱コイル652が誘導電流を供給されワーク上部の加熱を開始する。
【0186】
引き続いて、ワークWの突き上げ移動が行われる。コントローラ113は、継続してカウントするパルス数が、ワーク上部がワーク上部用加熱コイル652に完全対応状態になる第2のカウント値(第1の閾値)になったら、ボールねじ64fを回転する第7のサーボモータ64hのモータドライバに駆動停止信号を出力する。
これにより、ボールねじ64fが回転停止し、ワークWの突き上げが停止する。第2の整流電源部115による誘導電流の供給はさらに継続される。
【0187】
コントローラ113は、ワーク上部用加熱コイル652に誘導電流を供給開始してから、例えば4秒間経過したら、第2の整流電源部115に誘導電流の供給を停止する信号を出力し、次いで、第7のサーボモータ64hに復帰回転させる信号を出力する。
これにより、加熱が終了し、リフトヘッド64eがワークWを第4のワーク受承皿61hに受け渡して下降復帰する。
以上により、ワークWのステム軸部は、ワーク上部用加熱コイル652により熱処理温度に加熱される。
【0188】
図31に示すワーク上部用加熱ユニット65Aでは、段取りとして、ワーク上部用加熱コイル653が上段コイルベース651cに取り付けられ、また芯出しキャップ655が下段コイルベース651eに取り付けられる。そして、ワーク上部が筒軸部であるワークWの、筒軸部のスプライン孔を熱処理する。芯出しセンタ651jは、上昇された位置にロックされ使用されない。従って、コントローラ113は、第9のエアシリンダ651nが出力するパルスをカウントして制御を行う。
【0189】
コントローラ113は、ワーク上部用加熱コイル653のマルチターン形状部が、ワークWのスプライン孔に非接触に相対的に挿入された時点で、リフトヘッド64eの上昇を停止し、ワーク上部用加熱コイル653に誘導電流を例えば約4秒間供給させ、リフトヘッド64eを下降させる制御を行う。
コントローラ113は、第2のリフター64が下降開始する時点で、回転ジョイント64jに対応する電磁式仕切弁を開弁する開弁制御信号を送信する。
これにより、回転ジョイント64j内に冷却水が供給され、リフトヘッド64eを冷却する。この冷却水の供給は、第2のリフター64が下降開始する時点で停止する。
コントローラ113は、その他の動作制御についてステム軸部を加熱する場合と同様に行う。
これにより、ワークWのスプライン孔は、ワーク上部用加熱コイル653により熱処理温度(焼入温度あるいは焼戻温度)に加熱される。
【0190】
〔ワーク上部熱処理部60の動作〕
図2に示すように、ワーク上部熱処理部60は、第1ガントリ21により第5ステーションEに次々に搬送される各ワークWに対し、以下の動作により、ワーク上部の熱処理を行う。
ワークWは、第1ガントリ21により第5ステーションEの上方位置に対応してから下降され、環状冷却ジャケット62の直ぐ上まで下降される。このワークWを、第1のリフター63を上昇して受け取る。
第1のリフター63は、復帰下降し、下降途中で、ワークWを間欠回転テーブル61の貫通孔61aに備えられた第4のワーク受承皿61hで受承させる。このワークWを、間欠回転テーブル61をワンステップ間欠回転することにより、ワーク上部用加熱コイル652又は653の下位置に搬送する。
次いで、ワークWの芯出しを行う。これは、第2のリフター64を上昇して第2のリフター64でワークWを突き上げ、ワークWを芯出しセンタ651j又は芯出しキャップ655に当接させることで実行される。
ワークWを回転させてから突き上げ、ワーク上部用加熱コイル652又は653に近接させる。ワーク上部用加熱コイル652又は653に誘導電流を供給し、ワーク上部の加熱処理を行う。この加熱処理が終了したら、第2のリフター64を復帰下降し、ワークWを第4のワーク受承皿61hに戻す。
【0191】
ワークWを第4のワーク受承皿61hに戻す時点より、環状冷却ジャケット62でワークWに冷却液を噴射しワーク上部の冷却を行う。次いで、間欠回転テーブル61をさらにワンステップ回動し、ワーク上部冷却位置Iでの停止中も継続して冷却を行う。間欠回転テーブル61をさらにワンステップ回動し、第5ステーションEに到達する寸前まで、環状冷却ジャケット62による冷却を行う。そして、第5ステーションEに戻したワークWを第1のリフター63で突き上げて第2ガントリ22に受け渡す。
【0192】
〔アフタークール部70〕
図2、
図3、
図35(a),(b),(c)に示すように、アフタークール部70は、第5のワーク受承皿71aを二つ備えた反転テーブル71と、ロータリアクチュエータ72と、アフタークール位置Jの三方を囲む閉鎖ボックス73と、冷却液吹付手段74と、閉鎖ボックス73の開口にエアカーテンを形成するエア吹付手段75と、を有してなる。
【0193】
アフタークール部70は、第2ガントリ22により第6ステーションFに搬送されてきたワークWをアフタークール位置Jに移動して、アフタークールを行う。アフタークール部70は、アフタークール位置Jでアフタークールを終えたワークWの第6ステーションFへ送り返す。
【0194】
第5のワーク受承皿71aは、反転テーブル71上の反転テーブル71の回転中心の周りに180°異なる2位置(第6ステーションFとアフタークール位置Jに対応する2位置)に備えられている。第5のワーク受承皿は、ワークWに対応して選択されたものが交換可能に備えられている。
【0195】
反転テーブル71は、下面中央部より回転軸を垂下していて、この回転軸がフレームに軸支されることにより水平面内に回転可能に組み付けられている。ロータリアクチュエータ72は、フレームに取り付けられ、出力軸を反転テーブル71の回転軸と連結され、反転テーブル71を回動角が180°となるように往復回動させる。なお、回動角が180°となるように間欠回転させても良い。
【0196】
第5のワーク受承皿71aは、反転テーブル71上の反転テーブル71の回転中心の周りに180°異なる2位置(第6ステーションFとアフタークール位置Jに対応する2位置)に備えられている。第5のワーク受承皿は、ワークWに対応して選択されたものが交換可能に備えられている。
【0197】
閉鎖ボックス73は、アフタークール位置Jに対応する第5のワーク受承皿に載置されたワークWの三方をパネルで取り囲んでなる。
【0198】
冷却液吹付手段74は、閉鎖ボックス73内に高さ調整自在、吹付方向を調整自在に備えられたノズル74aと、両端を図示しない冷却水供給源(冷却水の圧力ヘッダー)とノズル74aとに接続された冷却水配管74bと、配管途中に備えられる図示しない電磁弁、流量調整弁、仕切弁等からなり、閉鎖ボックス73内のワークWに冷却液を吹き付ける。
【0199】
エア吹付手段75は、閉鎖ボックス73の開口面に沿って上方から下向きにエアを吹き付けるエアノズル75aと、両端を図示しない高圧空気発生源(エアコンプレッサ又は高圧空気ヘッダー)とエアノズル75aとに接続された高圧空気用配管75bと、配管途中に備えられる図示しない電磁弁、流量調整弁、仕切弁等からなり、閉鎖ボックス73の開口面にエアカーテンを形成する。
なお、ロータリアクチュエータ72に替えて、サーボモータを備えても良い。
【0200】
上記構成のアフタークール部70は、第2ガントリ22により第6ステーションFに搬送されたワークWを、第6ステーションFに対応する位置の第5のワーク受承皿71aで受承する。すると、ロータリアクチュエータ72が駆動し反転テーブル71が反転することにより、第6ステーションFに位置するワークWは、アフタークール位置Jに搬送され、アフタークール位置Jに位置するワークWは、第6ステーションFに搬送される。第6ステーションFからアフタークール位置Jに搬送されたワークWは、閉鎖ボックス73に取り囲まれ冷却液吹付手段74により冷却液が吹き付けられてアフタークールされる。アフタークールを終えて、アフタークール位置Jから第6ステーションFに搬送されるワークWは、エアカーテンを通過する際に付着している冷却液を吹き飛ばされ、第6ステーションFに停止すると、次のワークWが第2ガントリ22により第6ステーションFに搬送される前に速やかに搬出される。
【0201】
上記実施形態のワークの熱処理装置1によれば、ワーク下部熱処理部50において、一方の回転チャック機構52を昇降して第2又は第3テーブル12,13との間でワークWの授受を行い、他方の回転チャック機構52を昇降してワーク下部用熱処理ヘッド56と協働してワーク下部の熱処理を行う構成であるので、カップ部の熱処理の時間とテーブル式搬送機構との間でワークを授受する時間とを同じ時間帯に重ねることができ、且つワーク搬送ラインからワーク下部熱処理位置までのワークの搬送時間と、ワーク下部熱処理位置からワーク搬送ラインまでの搬送時間とを同じ時間帯に重ねることができる。
さらにワークの熱処理装置1によれば、ワーク上部熱処理部60において、間欠回転テーブル61の上面位置にワークWを受承して間欠回動し、ワークWを突き上げて回転させてワーク上部用加熱コイル652又は653によりステム軸部の外面又は筒軸部の内面を加熱し、その後突き上げ前の位置に戻し、環状冷却ジャケット62から冷却液を噴射してステム軸部又は筒軸部を冷却しつつ間欠回動して第2ガントリ22に受け渡し、さらにアフタークールを行う構成であるので、間欠回転テーブルの停止時間として、冷却時間を含まないでステム軸部又は筒軸部の加熱に要する時間とワークWの突き上げ時間と下降時間の和に設定することができ、冷却時間については、必要十分な時間を確保できる。
【0202】
上記ワークの熱処理装置1によれば、ワーク確認手段55が、回転チャック機構52の外側に備えられロッド651iを昇降させるエアシリンダ651nを有してなり、エアシリンダ651nが、回転チャック機構52によるワーク1のチャックに先行してピストンロッドを縮小し、且つ回転チャック機構52がワーク上部をチャックする動作工程ではピストンを動作フリーとする構成である。
この構成により、当接ピース55bがワーク上端を押圧しワークを芯出しした後に、ロッド55aが動作フリーになるので、回転チャック機構52がロッド55aに対して相対的に下降できてワークをチャックでき、さらに当接ピース55bがワーク上端を押圧し、ワークの位置ずれ確認ができ、回転チャック機構52について高い信頼性が得られ、ワーク下部の熱処理における電気的短絡事故を回避できる。
【0203】
上記ワークの熱処理装置1によれば、第1のハンドリング手段51が、エアシリンダ651nとして、ピストンロッド651hの移動量に応じてパルスを出力するエアシリンダを用いてなり、回転チャック機構52は、ワーク上部をチャックした後は、チャック前に引き続いてピストンロッド651hを縮小し当接ピース55bがワーク上端の凹部に係合し押圧する構成である。
この構成により、ワークWのチャック位置の確認、チャック後のワークの脱落監視を行うことができるので、回転チャック機構52について高い信頼性が得られ、ワーク下部の熱処理における電気的短絡事故を回避できる。
【0204】
上記ワークの熱処理装置1によれば、第1のハンドリング手段51は、ワークを回転可能にチャックしうる二つの回転チャック機構52と、二つの回転チャック機構52を一のステーションとワーク下部用熱処理ヘッド56に被せる位置とに交互に交替させて対応させる往復回動手段53と、二つの回転チャック機構52が第3ステーションCとワーク下部熱処理位置Gとに対応した位置で各回転チャック機構52を昇降させる昇降手段54と、を有する構成である。
この構成により、一対の回転チャック機構52を備えているので、回転チャック機構52を一のステーションに対応する位置で下降してワークをチャックし、ワークを上昇させてワーク下部用熱処理ヘッド56に被せる位置に回動し下降してワークをワーク下部用熱処理ヘッド56に被せ、熱処理を終えたらワークを上昇させて一のステーションに対応する位置に回動することを交替式に行えるため、熱処理時間を短くすることができる。
【0205】
上記ワークの熱処理装置1によれば、ワーク上部熱処理部60は、複数の貫通孔61aを有し貫通孔61aの配列ピッチで間欠回転する間欠回転テーブル61と、各貫通孔61aに対応して間欠回転テーブル61上に備えられた環状冷却ジャケット62と、他の一のステーションに対応する貫通孔61aの下方に備えられた第2のリフター64と、を有し、ワーク上部用加熱ユニット65は、ワーク上部用加熱コイル652又は653を有し、第2のリフター64が上昇する位置に備えられた構成である。
この構成により、間欠回転テーブル61をワークの搬送手段としつつ、ワーク上部に対する加熱と冷却とを切り離すことができ、冷却時間を大きく取ることができる。
【0206】
〔装置のコンパクト化〕
上記構成によれば、ワーク上部加熱位置Hにブラケット651を備えて、ワークWのステム軸部を加熱するワーク上部用加熱コイル652と、筒軸部のスプライン孔を加熱するワーク上部用加熱コイル653のいずれも共通に取り付けられるようにしたので、別々のステーションを備えた従来例に比べてライン方向の装置長さを短くすることができ、装置のコンパクト化に繋がる。
【0207】
また上記構成によれば、第5ステーションEに対応し、間欠回転テーブル61の下側に第1リフターを備えることで、第1,第2ガントリ21,22のストロークを短くすることができる。これにより、装置高さを低く抑えることができ、装置のコンパクト化に繋がる。
【0208】
〔メンテナンス性〕
ワークの熱処理装置1は、四つの引き戸101〜104の中、いずれかの二つの引き戸を開き、四つの倹飩式戸105〜108を取外し、メンテナンス操作側を大きく開放して、ワーク下部用熱処理ヘッド56の交換、ワーク上部用加熱コイル652又は653の交換、第1〜第3テーブル11〜13上の第1〜第3のワーク受承皿の交換、電磁式仕切弁の調整等を行うことができる。
【0209】
第1〜第3テーブル11〜13が手前にあるので、第1〜第3テーブル11〜13上の第1〜第3のワーク受承皿の交換作業が容易である。ワーク下部用熱処理ヘッド56の交換、ワーク上部用加熱コイル652又はワーク上部用加熱コイル653の交換は、奥側であるが、クランプで着脱できるので、交換作業が容易である。ワーク下部熱処理位置が第3ステーションCと第4ステーションDとの略中間位置に対応していて、平面視において、第3ステーションCとワーク下部熱処理位置Gとを結ぶ線が、ワーク搬送ラインに斜めに交差して備えられていることにより、メンテナンス操作側に寄っているので、ワーク下部用熱処理ヘッド56の交換作業がやり易い。
【0210】
メンテナンス時には、第1ガントリ21と第2ガントリ22は、第4のエアシリンダ26のピストンが引退状態になることで間隔を狭め、且つ第3のエアシリンダ25のピストンが伸張状態になることで、アフタークール部70の上方に寄った位置になる。これにより、第4ステーションDから第5ステーションEのエリアが解放されるので、ワーク上部用加熱コイル652又は653の交換や、第1〜第5のワーク受承皿の交換が第1ガントリ21と第2ガントリ22が邪魔にならずに行えて、交換作業がやり易くなっている。
【0211】
〔その他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々、設計変更した形態が含まれる。
【0212】
(1)ワーク下部熱処理位置Gが備えられる位置は、メンテナンス性とコンパクト性との両面から、平面視において、第3ステーションCと上記ワーク下部熱処理位置Gとを結ぶ線と、上記ワーク搬送ラインとの交差角30°〜60°の範囲にあり、かつ第3ステーションCと第4ステーションDとの略中間位置に対応していれば良い。
【0213】
(2)上記の実施形態では、間欠回転テーブル61に三つの貫通孔61aを備え、且つ間欠回転テーブル61上に各貫通孔61aの上方を囲んで環状冷却ジャケット62を備えた構成を示したが、貫通孔61aと環状冷却ジャケット62の組を三つに限定されるものではない。多い場合としては、貫通孔61aと環状冷却ジャケット62の6組としても良い。
1回転中で等角度回転する毎に間欠停止する回数が3乃至6回の間欠回転テーブルとし、この間欠回転テーブルに間欠停止回数に応じた3乃至6以上の上下に貫通する貫通孔を、回転中心に関して円周方向に等分配置に設け、一つの貫通孔が上記第5ステーションEに対応して間欠停止するようにし、各貫通孔を取り巻いた上方に環状の冷却ジャケットを有する構成としても良い。