【実施例1】
【0014】
本発明の排水カゴの実施例1を
図1〜3を参照して説明する。実施例1の排水カゴ1は、
図1(a)〜(c)に示すように、全体として凹皿状に形成されており、捕集排水部2と、捕集排水部2の周囲に形成された環状のフランジ部3と、フランジ部3に設けられた取っ手部4とを備えている。
【0015】
捕集排水部2は、排水カゴ1の底部5及び周壁部6から構成された部分に相当し、排水が通過する網目状部7と、孔等が形成されておらず排水が通過しない孔なし部8とで形成されている。
【0016】
網目状部7は、
図1(b)、(c)に示すように、排水カゴ1の底部5の一部及び周壁部6の一部に連続的に形成されている。網目状部7は、排水を排出し、排水中のゴミを捕集する機能を発揮するものであり、従来の排水カゴ1と同様に、金網等の網9(
図1(a)、(c)において部分的に示し、その拡大図を
図1(d)に示す。)で形成されている。
【0017】
網目状部7は、排水の排出とゴミの捕集を行う機能を有するものであるから、そのような機能を有するものであれば、多数の孔を有する構成であってもよい。要するに、網目状部7に替えて多孔部であってもよいのであり、本明細書では、「網目状部7」は、「網目状部7あるいは多孔部」の意味で使用する。
図1(e)に多孔部の複数の孔10の構成例を拡大図で示す。
【0018】
孔なし部8は、網9や孔10等が形成されておらず、排水やゴミが通過することのない平滑な面を有する部分であり、
図1(b)、(c)に示すように、排水カゴ1の底部5の一部及び周壁部6の一部に連続的に形成されている。
【0019】
フランジ部3は、周壁部6の上端に外側に向けて水平に張り出すように連続的に形成されている。このフランジ部3は、
図2(a)に示すような、シンク11の排水口12における装着用段部13に載置して装着する機能を有する。フランジ部3の内縁の一部に排水カゴ1の内側に向けて湾曲状に突出する取っ手部4が形成されている。取っ手部4は、孔なし部8の上方に形成されている。換言すれば、取っ手部4の下方に孔なし部8が形成されている。
【0020】
(作用)
実施例1の作用を以下説明する。
図2(a)は、排水カゴ1をシンク11の排水口12に装着した状態を示す。シンク11の排水口12には、その上部には装着用段部13が形成されており、その底部開口14には排水管15が取り付けられている。
【0021】
排水カゴ1は、そのフランジ部3が排水口12の載置用段部13上に載置され、さらにその上に、排水蓋16が載置されて取り付けられる。排水蓋16は、例えば、金属、合成樹脂等の材料で形成されており、排水口12をカバーするものである。排水蓋16には、開口部18が設けられており、この開口部18の一方の側の縁部18’が下方に傾斜するように形成されている。
【0022】
シンク11からの排水、及び排水とともに流されてきたゴミは、排水蓋16の開口部18から排水カゴ1内に流れ込み、排水カゴ1によってゴミ19が捕集されて、排水は排水口12の底部開口14から排水管15を通して排水される(
図2、
図3参照)。
【0023】
排水蓋16の開口部18の位置や形状は特に限定されないが、開口部18の縁部18’が、取っ手部4側に下り勾配とならないように取り付けられるのが望ましい。そのような取り付けは、使用者が排水カゴ1及び排水蓋16を取り付ける際に調整してもよいが、予め、排水カゴ1の上面及び排水蓋16のフランジ部17の下面に、位置決め用の凸部及び凹部を設けた構成としてもよい。なお、
図2(e)に、排水蓋16の好ましくない設置形態として、開口部18の縁部18’が取っ手部4側が下り勾配となる状態を示す。
【0024】
排水カゴ1を清掃する際には、排水蓋16を取り外し、さらに排水カゴ1を排水口12から取り外す。そして、排水カゴ1内に捕集されたゴミ19は、排水カゴ1を上下逆さにひっくり返してして取り除けばよい。
【0025】
図3(a)〜(c)は、実施例1の排水カゴ1が、排水とともに流されてくるゴミ19を捕集する過程を説明する図である。排水とともに流されてきたゴミ19は、排水カゴ1の孔なし部8では、排水網9や孔10が形成されていないために、
図3(a)に示すように、孔なし部8と網目状部7との境界付近まで流され、網目状部7側で捕集されて徐々に溜まる。
【0026】
このため、後から流れてくる排水は、
図3(b)に示すように、捕集されて徐々に溜まってくるゴミ19により止められて滞水20となり、その水位21が上昇する。この過程において、後から流されてくるゴミ19は、水位21が上昇することにより、先に溜まっているゴミ19を乗り越えてさらに網目状部7側に溜まっていく。
【0027】
このようにして、排水は網目状部7を通して排水され、排水とともに流されてくるゴミ19は、孔なし部8に溜まることなく、
図3(c)に示すように、孔なし部8と網目状部7との境界付近から網目状部7側に寄せられ、比較的まとまった状態で溜まる。この結果、孔なし部8の上方に位置する取っ手部4の周辺には、ゴミ19が溜まりにくいので、清掃時に取っ手部4を掴んでも、手がゴミ19に触れにくくなり、手がゴミ19に接触して生じる使用者への不快感を低減できる。
【0028】
さらに、ゴミ19は捕集排水部2に無造作に付着するようなことがなく、網目状部7側にまとまって溜まるので、清掃の際にも、一括して除去することができ、清掃性も向上する。また、孔なし部8は、平坦(フラット)な面を有し洗浄し易いので、捕集排水部2の全面が網目状部で形成されている従来の排水カゴに比較して、清掃性が良い。
【0029】
(実験例)
図1に示す実施例1の排水カゴ1について、その効果を確認するために、次のような2種類の比較実験を実施した。
(1)ゴミ寄せ試験:底部5の網目状部面積を求める試験
(2)排水試験:周壁部6の網目状部面積を求める試験
【0030】
(1)ゴミ寄せ試験
図1(a)に示す実施例1の排水カゴであって、底部5の直径が約125mmであり、網目状部7の開口寸法s(
図1(a)参照)を、20mm、30mm、35mm、40mm、50mm、60mmとしたものそれぞれについて、台所ゴミの中でも、特に排水時に流れ難い大きな野菜くず100gを通常の水洗流量(12リットル/分程度)の水で20秒間流して排水した。
【0031】
この実験によると、いずれの場合も、取っ手部4から離れた位置でゴミが溜まるが、網目状部7の開口寸法が35mmの場合が、取っ手部4から最も離れた位置でゴミが溜まった。このような実験により、実施例1の排水カゴ1により、取っ手部4から離れた網目状部側に溜まるという効果が実証され、また、網目状部7の開口寸法s等も設計上、考慮すべき事項であることが分かった。
【0032】
(2)排水試験
網目状部7の開口寸法が35mmの排水カゴ1について、台所ゴミの中でも、特に詰まり易い油こげ、ツナの缶詰及び米粒から成るゴミ100gを20リットルで流して満水状態として、排水時間が25秒以下となる
図1(a)に示す網目状部7の周壁部6における面積(排水用側面開口部の面積)を求めた。この結果、周壁部6の網目状部7の面積は、120cm
2程度が良いということが分かった。これにより、網目状部7の周壁部6の面積も、本発明の効果に関連するものであり、設計上、考慮すべき事項であることが分かった。
【0033】
(変形例1)
本実施例1の孔なし部8には、網9や孔10等が形成されていないが、実施例1の変形例1の排水カゴとして、孔なし部8の一部に孔を形成した構成を、
図2(b)〜(d)において説明する。この変形例1の排水カゴでは、
図2(b)、(c)に示すような位置、即ち、排水カゴ1の底部5のほぼ中央であって、孔なし部8における網目状部7との境界付近に沿った位置に、小孔群25が複数(この変形例1では3つ)形成されている。
【0034】
小孔群25は、
図2(d)に拡大図で示すように、ゴミを捕捉し排水を通過させる小孔26が複数個、密集して形成されて成る。例えば、孔直径1.4mm程度の複数の円形の小孔26を、それぞれの中心を互いに1.5mm程度に離して形成する。
【0035】
なお、孔なし部8は、文字通りからすると「孔がない」部分であるから、厳密には、小孔群25を設けた構成は「孔なし部」に相当しないとも解釈される。しかしながら、変形例1の小孔群25の孔26は、あくまでも網目状部7の孔とは異なり、孔なし部8に例外的に設けたものであり、本発明の「孔なし部」の「孔」に相当するものではないものとする。従って、変形例1の排水カゴでは、孔なし部8は小孔群25を設けていても「孔なし部」として扱うものとする。
【0036】
このような複数の小孔群25を設けると、シンク11での排水量が多いような場合でも、排水の水位が高くならず、取っ手部4が汚れにくい。即ち、実施例1において説明したように、
図3(a)、(b)において、ゴミ19が孔なし部8における網目状部7との境界付近に溜まっても、複数の小孔群25から少量ずつ排水されるので、
図3(b)に示す排水の水位21が余り高くなりすぎず、排水性を良好に保つことができる。また、取っ手部4が排水中に比較的長い時間浸されような状態が防止できるので、取っ手部4及びその周辺が汚れにくい。
【0037】
なお、底部5の網目状部7にゴミ19が溜まった状態でも効果的に排水できるようにするために最適な小孔群25の数、配列等について評価する実験を、上記実験例の網目状部7の開口寸法が35mmの排水カゴ1について行った。この結果、排水カゴ1の底部5のほぼ中央であって孔なし部8に、底部5の網目状部7との境界付近に沿うように小孔群25を直列状に7つ設けた構成が、排水性が良いことが分かった。このことから、変形例1では、小孔群25の数、配列等も、排水カゴ1の排水性をより向上させるために、設計上、考慮する事項であることが分かった。
【0038】
(変形例2)
実施例1の変形例2の排水カゴを、
図4を参照して説明する。この変形例2の排水カゴは、実施例1の排水カゴとほぼ同じ構成であるが、周壁部6の上部に、上端がフランジ部3に連続した傾斜状の段部27が、平面視で環状に形成されている構成が特徴である。換言すると、排水カゴ1の周壁部6の上部が段部27において傾斜状に拡開してフランジ部3に連続している。
【0039】
このような傾斜状の段部27を設けたので、排水カゴ1に流れ込む排水の勢いで、ゴミが段部27の上面に滞留することなく、排水カゴ1の内側に導入することができる。従って、取っ手部4及びその周辺にゴミが付着しにくく、汚れにくいので、取っ手部4を掴んでもゴミに触れるようなことがない。
【0040】
(変形例3)
実施例1の変形例3の排水カゴを、
図5を参照して説明する。この変形例3の排水カゴは、実施例1の排水カゴ1とほぼ同じ構成であるが、取っ手部4の下方における周壁部6に、排水カゴの1の内側に向けて窪んだ凹部29が形成されている構成が特徴である。
【0041】
変形例3の排水カゴでは、このような凹部29が設けられているので、取っ手部4を掴む際には、
図5(c)に示すように、親指を凹部29に入れれば、手を排水カゴ1の奥の方まで入れなくても安定して掴むことができる。また、
図5(d)に示すように、排水カゴ1を上下逆さにしてゴミを捨てする際にも、安定して掴むことが可能である。
【実施例4】
【0050】
本発明の排水カゴの実施例4を
図8(a)〜(c)を参照して説明する。実施例4の排水カゴ45は、実施例1の排水カゴ1と同様に、捕集排水部46と、捕集排水部46の周囲に形成されたフランジ部47と、フランジ部47に設けられた取っ手部48とを備えおり、捕集排水部46は、排水が通過する網目状部49と、孔等が形成されておらず排水が通過しない孔なし部50とで形成されている。
【0051】
実施例4の排水カゴ45においては、網目状部49は、排水カゴ45の底部51と周壁部52の一部に連続的に形成されている。網目状部49が形成された排水カゴ45の底部51及び周壁部52は、平面視で円形状ではなく円形が一部直線的に切り欠かれた形状をしている。孔なし部50は、周壁部52の一部に、網目状部49と連続して形成され、垂直に設けられた平板状の立ち上げ部53と、立ち上げ部53の上端からフランジ部47まで伸びる平板状の傾斜した段部54とから形成されている。
【0052】
換言すると、実施例4の排水カゴ45は、網目状部49で形成された環状の周壁部52及び底部51を有する従来の排水カゴ(
図8(b)の想像線(2点鎖線)で示す)において、環状の周壁部52の一部が平面視で直線的に切り欠かれ、その切り欠かれた部分に孔なし部50が形成された構成に相当し、孔なし部50は、垂直に設けられた平板状の立ち上げ部53と、立ち上げ部53の上端から上方に傾斜した平板状の段部54とから連続的に形成されている。
【0053】
フランジ部47は、上方から見て平面視で円形に形成されており、周壁部52の上端に連続的に水平に形成されている。このフランジ部47は、シンク11の排水口12における装着用段部13(
図2(a)参照)に載置して装着する機能を有する。フランジ部47の内縁の一部であって、孔なし部50の上方に排水カゴ45の内側に向けて湾曲状に突出する取っ手部48が形成されている。逆に表現すると、取っ手部48の下方に、孔なし部50が形成されている。
【0054】
以上の構成から成る実施例4の排水カゴ45では、孔なし部50における傾斜した段部54上に排水が流入すると、排水は網目状部49である底部51に流れ落ち、そこでゴミが捕集されて排水は排水管15(
図2(a)参照)に流れ出る。
【0055】
排水とともに流れてきたゴミは、孔なし部50の傾斜した段部54上では排水の勢いで流され、また、傾斜面でずり落ちるようにして、網目状部49上に移動し、傾斜した段部54には溜まりにくい。従って、取っ手部48周辺には、ゴミが溜まりにくいので、清掃時に取っ手部48を掴んでも、手がゴミに触れにくくなり、手がゴミに接触して生じる使用者への不快感を低減できる。