(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動計測手段の計測に基づいて移動量及び移動方向を算出し、当該算出された移動量及び移動方向と、この移動期間中の基準となる位置情報とに基づいて移動経路を決定する自律測位手段を備え、
前記自律測位手段は、
前記絶対位置測定手段により現在位置が取得された場合には、当該現在位置を前記基準となる位置情報として使用し、
前記移動経路判別手段は、
前記絶対位置測定手段、及び、前記自律測位手段により測定された位置情報、及び、前記鉄道路線図の情報に基づいて、前記動作内容判別手段により列車移動状態であると判定された期間の移動経路を判別する
ことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
現在位置を測定する絶対位置測定手段と、磁気センサを含む動作の計測を行う移動計測手段とを備え、列車の発車、移動又は停止状態を判断する測位装置のコンピュータが、
前記絶対位置測定手段の動作タイミングを制御して非連続的に現在位置を測定させる測位制御ステップと、
前記移動計測手段の計測結果に基づいて動作状態の判別を行う動作内容判別ステップと、
を実行するとともに、
前記移動計測手段の前記磁気センサが磁気の乱れにより計測できなくなったとき、前記動作内容判別ステップで、列車が発車したタイミングであると判別することを特徴とする測位方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電車を利用して移動する場合には、電車を駆動するモータの動作により磁界が発生し、磁気センサによる方向の計測を行うことができない、即ち、自律航法機能を利用することができないという課題がある。一方で、衛星測位機能を利用する頻度を増やすことは、電力消費の増大に繋がるという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、電車による移動を含む移動経路の軌跡を精度良く取得することのできる低消費電力の測位装置、測位方法、および、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するため、請求項1記載の発明は、現在位置を測定する絶対位置測定手段と、前記絶対位置測定手段の動作タイミングを制御して非連続的に現在位置を測定させる測位制御手段と、移動動作の計測を行う移動計測手段と、前記移動計測手段の計測結果に基づいて少なくとも移動種別を判定する動作内容判別手段と、鉄道路線図の情報を記憶する地図データ記憶手段と、前記絶対位置測定手段により測定された位置情報、及び、前記鉄道路線図の情報に基づいて、前記動作内容判別手段により列車移動状態であると判定された期間の移動経路を決定する移動経路判別手段と、を備える
とともに、前記移動計測手段は磁気センサを備え、前記動作内容判別手段は、前記磁気センサが磁気の乱れにより計測できなくなったとき、列車が発車したタイミングであると判断し、前記測位制御手段は、前記列車が発車したと判断したタイミングから所定時間後に、前記絶対位置測定手段の測定を開始させることを特徴とする測位装置を提供するものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記測位制御手段は、
前記動作内容判別手段により列車に乗車したと判定された場合には、前記絶対位置測定手段を動作させて第1地点の位置データを取得し、
前記動作内容判別手段により前記列車から下車したと判定された場合には、前記絶対位置測定手段を動作させて第2地点の位置データを取得し、
前記移動経路判別手段は、
前記第1地点の位置データ、及び、前記第2地点の位置データが取得されると、当該列車移動状態の期間の移動経路を決定する
ことを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の測位装置において、
前記測位制御手段は、
動作種別が列車移動状態から他の動作種別に変化したと前記動作内容判別手段により判定された場合には、前記絶対位置測定手段を動作させて経由地点の位置データを取得する
ことを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の測位装置において、
前記測位制御手段は、
前記第1地点の位置データが設定された後、列車から下車したと前記動作内容判別手段により判定されるまでの期間には、前記絶対位置測定手段を動作させない
ことを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記移動計測手段の計測に基づいて移動量及び移動方向を算出し、当該算出された移動量及び移動方向と、この移動期間中の基準となる位置情報とに基づいて移動経路を決定する自律測位手段を備え、
前記自律測位手段は、
前記絶対位置測定手段により現在位置が取得された場合には、当該現在位置を前記基準となる位置情報として使用し、
前記移動経路判別手段は、
前記絶対位置測定手段、及び、前記自律測位手段により測定された位置情報、及び、前記鉄道路線図の情報に基づいて、前記動作内容判別手段により列車移動状態であると判定された期間の移動経路を判別する
ことを特徴としている。
【0012】
請求項6記載の発明は、現在位置を測定する絶対位置測定手段と、
磁気センサを備え動作の計測を行う移動計測手段と、鉄道路線図の情報とを用いて移動経路を求める測位方法において、前記絶対位置測定手段の動作タイミングを制御して非連続的に現在位置を測定させる測位制御ステップと、前記移動計測手段の計測結果に基づいて動作状態の判別を行う動作内容判別ステップと、前記絶対位置測定手段により測定された位置情報、及び、前記鉄道路線図の情報に基づいて、前記動作内容判別ステップで判別された列車移動の期間の移動経路を判別する移動経路判別ステップと、を含
み、前記動作内容判別ステップは、前記磁気センサが磁気の乱れにより計測できなくなったとき、列車が発車したタイミングであると判断するステップを含み、前記測位制御ステップは、前記列車が発車したと判断したタイミングから所定時間後に、前記絶対位置測定ステップを開始させることを特徴とする測位方法を提供するものである。
【0013】
請求項7記載の発明は、現在位置を測定する絶対位置測定手段と、磁気センサを備え動作の計測を行う移動計測手段と、鉄道路線図の情報を記憶する地図データ記憶手段と、を備えた測位装置に用いられるコンピュータを、前記絶対位置測定手段の動作タイミングを制御して非連続的に現在位置を測定させる測位制御手段と、前記移動計測手段の計測結果に基づいて動作状態の判別を行う動作内容判別手段と、前記絶対位置測定手段により測定された位置情報、及び、前記鉄道路線図の情報に基づいて、前記動作内容判別手段により判別された列車移動の期間の移動経路を判別する移動経路判別手段と、して機能させ、前記動作内容判別手段は、前記磁気センサが磁気の乱れにより計測できなくなったとき、列車が発車したタイミングであると判断し、前記測位制御手段は、前記列車が発車したと判断したタイミングから所定時間後に、前記絶対位置測定手段の測定を開始させることを特徴とするプログラムを提供するものである。
請求項8記載の発明は、現在位置を測定する絶対位置測定手段と、磁気センサを含む動作の計測を行う移動計測手段とを備え、列車の発車、移動又は停止状態を判断する測位装置のコンピュータが、
前記絶対位置測定手段の動作タイミングを制御して非連続的に現在位置を測定させる測位制御ステップと、前記移動計測手段の計測結果に基づいて動作状態の判別を行う動作内容判別ステップと、を実行するとともに、前記移動計測手段の前記磁気センサが磁気の乱れにより計測できなくなったとき、
前記動作内容判別ステップで、列車が発車したタイミングであると判別することを特徴とする測位方法を提供するものである。
請求項9記載の発明は、現在位置を測定する絶対位置測定手段と、磁気センサを含む動作の計測を行う移動計測手段とを備え、列車の発車、移動又は停止状態を判断する測位装置のコンピュータが、前記絶対位置測定手段の動作タイミングを制御して非連続的に現在位置を測定させる測位制御ステップと、前記移動計測手段の計測結果に基づいて動作状態の判別を行う動作内容判別ステップと、前記絶対位置測定手段により測定された位置情報に基づいて、前記動作内容判別ステップにより列車移動状態であると判断された期間の移動経路を決定する移動経路判別ステップと、を実行するとともに、前記移動計測手段の前記磁気センサが磁気の乱れにより計測できなくなったとき、列車が発車したタイミングであると判断し、前記動作内容判別ステップは、該タイミング以降は列車移動状態であると判別することを特徴とする測位方法を提供するものである。
請求項
10記載の発明は、現在位置を測定する絶対位置測定手段と、磁気センサを含む動作の計測を行う移動計測手段とを備え、列車の発車、移動又は停止状態を判断する測位装置のコンピュータを、
前記絶対位置測定手段の動作タイミングを制御して非連続的に現在位置を測定させる測位制御手段、前記移動計測手段の計測結果に基づいて動作状態の判別を行う動作内容判別手段、として機能させるとともに、前記移動計測手段の前記磁気センサが磁気の乱れにより計測できなくなったとき、
前記動作内容判別手段は、列車が発車したタイミングであると
判別することを特徴とするプログラムを提供するものである。
請求項11記載の発明は、現在位置を測定する絶対位置測定手段と、磁気センサを含む動作の計測を行う移動計測手段と、を備え、列車の発車、移動又は停止状態を判断する測位装置のコンピュータを、前記絶対位置測定手段の動作タイミングを制御して非連続的に現在位置を測定させる測位制御手段、前記移動計測手段の計測結果に基づいて動作状態の判別を行う動作内容判別手段、前記絶対位置測定手段により測定された位置情報に基づいて、前記動作内容判別手段により列車移動状態であると判断された期間の移動経路を決定する移動経路判別手段、として機能させるとともに、前記移動計測手段の前記磁気センサが磁気の乱れにより計測できなくなったとき、前記動作内容判別手段は、列車が発車したタイミングであると判別することを特徴とするプログラムを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従うと、鉄道の路線図を記憶し、絶対位置測定手段により測定された位置データと路線図情報とを比較することにより移動経路を取得することができるので、鉄道による移動中の絶対位置の測定頻度を増加させる必要がない。従って、消費電力を低く抑えながら、列車による移動を含む移動経路の軌跡の取得を精度良く行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、測位装置の内部構成を示すブロック図である。
【0018】
測位装置1は、ユーザが装着して利用する携帯型の測位装置である。この測位装置1は、装置全体の統括制御および演算処理を行うCPU10(測位制御手段)と、CPU10に作業用メモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)11と、CPU10が実行するプログラムや初期データを格納するROM(Read Only Memory)12と、不揮発性メモリ13と、GPS衛星から送信される電波を受信するGPS受信アンテナ14と、受信電波を復調して解読処理を行う絶対位置測定手段としてのGPS受信処理部15と、3軸方向の地磁気を計測する3軸地磁気センサ16と、3軸方向の加速度を計測する3軸加速度センサ17と、CPU10からの出力制御信号に基づいて出力表示を行う表示部18と、CPU10および3軸加速度センサ17に電力を供給する電源19と、ユーザによる操作内容を信号に変換してCPU10へ出力する操作キー20と、ユーザの動作状態を判別する動作内容判別手段としての状態判別処理部21と、ユーザの進行方向を判定する進行方向確定処理部22と、ユーザの移動量を算出する自律測位制御処理部23(自律測位手段)などを備えている。
【0019】
RAM11には、位置方向時間情報記憶部11aが備えられている。この位置方向時間情報記憶部11aは、乗車した電車が移動を開始した際の乗車位置、進行方向、および乗車時刻の情報を一時的に記憶する。
【0020】
ROM12には、CPU10が読み出して実行するプログラム12aが含まれている。このプログラム12aは、例えば、測位装置1の制御プログラムや測位処理プログラムである。このプログラム12aは、不揮発性メモリ13に記憶させることも可能である。或いは、CDROMやフラッシュメモリといった可搬型記録媒体に実行プログラム12aを記録し、読み取り装置を介してCPU10が実行可能としても良い。また、プログラム12aは、キャリアウェーブ(搬送波)を媒体として、通信回線を介して測位装置1にダウンロードされる形態を適用することもできる。
【0021】
不揮発性メモリ13は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)である。この不揮発性メモリ13には、路線図データ記憶部13a(地図データ記憶手段)が含まれている。路線図データ記憶部13aには、鉄道の路線情報や駅の位置情報などが記憶されている。ユーザは、この路線図データを必要に応じて外部から取得し、最新情報に更新することが可能である。また、この不揮発性メモリ13には、路線図情報だけではなく、より詳しい地図データを記憶させることとしても良い。
【0022】
GPS受信処理部15は、GPS受信アンテナ14を介して受信した複数のGPS衛星からの電波を復調する。そして、このGPS受信処理部15では、復調された複数のGPS衛星からの信号に基づいて現在位置を求め、所定のフォーマットに従って結果をCPU10へと出力する。このGPS受信処理部15は、CPU10からの指令に基づき間欠的に動作する。
【0023】
3軸地磁気センサ16は、例えば、磁気抵抗素子を用いて3軸方向の磁界を計測することが可能なセンサである。近傍に磁界の発生源がない場合には、この3軸地磁気センサにより地磁気が測定されてCPU10へ出力される。3軸加速度センサ17は、3軸方向の加速度が計測可能なセンサである。ユーザが静止した状態のときには、この3軸加速度センサ17は、地球の重力加速度を計測してCPU10へ計測データを出力する。これらの3軸地磁気センサ16および3軸加速度センサにより、移動計測手段が構成される。
【0024】
表示部18は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)である。或いは、この測位装置1は、有機ELD(Electro-Luminescent Display)などの他の表示方式の表示部を備えることとしてもよい。この表示部18は、CPU10からの信号に基づいて、例えば、測位位置や移動経路の情報を不揮発性メモリ13から読み出す地図データと重ねて表示させることが可能である。
【0025】
状態判別処理部21では、3軸地磁気センサ16、および、3軸加速度センサ17による計測データがCPU10を介して取得され、これらの計測データを用いた演算結果に基づいて、測位装置1のユーザの動作状態を判別する。この実施形態の状態判別処理部21により判別が可能な状態には、ユーザの静止状態、歩行状態、および、鉄道を利用しての移動状態が含まれる。更に、車、自転車などによる移動状態や、エスカレータ、歩く歩道などによる移動状態の判別を可能としても良いし、或いは、歩行状態と走行状態とを判別可能としても良い。
【0026】
歩行状態と鉄道移動状態との判別は、3軸地磁気センサ16および3軸加速度センサ17の計測に基づいて、以下のように行うことができる。先ず、歩行状態の場合には、両センサの入力、すなわち、一定の重力加速度、および、地磁気の向きから鉛直方向と進行方向とを定めることができる。測位装置1を装着したユーザの歩行中には、ステップごとにユーザの重心が鉛直方向に移動することで鉛直方向加速度の周期的な変化が計測される。
【0027】
鉄道による移動の際には、先ず、電車のモータの動作により車両内の磁場が乱され、3軸地磁気センサの出力が不安定に変化し続ける。一方、3軸加速度センサ17の出力は、3軸地磁気センサの出力が乱れることで進行方向を同定することができなくなるが、発車の際の加速度により重力方向に垂直な面内で変化を示す。また、電車の走行中は、この水平面内で発車時の加速度とほぼ垂直方向には、自動車による移動に特徴的な加速度変化が観測されない。具体的には、自動車による移動の場合には、水平面内で進行方向に垂直な方向に1−3Hzの特徴的な振動が観測されるのに対し、電車による移動ではこの振動が発生しない。従って、3軸加速度センサ17の出力のうち水平面内のデータに対してフーリエ変換をしてこの周波数帯の振幅強度を求め、所定の閾値と比較することにより、鉄道による移動であることが同定される。
【0028】
進行方向確定処理部22は、電車による移動状態となった後に、初期位置データ、および、電車による移動開始後の位置データを利用し、路線図のデータを参照しながらこの電車が走行する路線と進行方向とを判別する処理を行う。この進行方向確定処理部22とCPU10とにより、移動経路判別手段が構成される。
【0029】
自律測位制御処理部23は、CPU10を介して3軸地磁気センサ16、および、3軸加速度センサ17の計測データを取得して、これらの計測データに基づいてユーザの移動方向と移動距離とを算出する。本実施形態の測位装置1では、この自律測位制御処理部23は、ユーザの歩行状態での移動距離を算出する。
【0030】
次に、本発明の測位処理の動作手順について、フローチャートを用いて説明する。
【0031】
図2は、CPU10が実行する測位処理の制御手順を示したフローチャートである。また、
図3〜
図5は、
図2のフローチャート内でそれぞれ呼び出される停止後処理、歩行後処理、および、電車後処理の制御手順を示したフローチャートである。
【0032】
この測位処理の制御処理は、操作キー20からの入力信号に基づいて開始される。制御処理が開始されると、
図2に示すように、先ず、CPU10は、初期設定を行う(ステップS11)。具体的には、GPS受信処理部15を動作させて、現在位置のデータを取得する。また、CPU10は、状態判別処理部21からユーザの動作状態の判別結果を取得する。停止状態であると判別された場合には、CPU10は、停止フラグを“ON”に設定する。歩行状態であると判別された場合には、CPU10は、歩行フラグを“ON”に設定する。また、電車移動状態であると判別された場合には、CPU10は、電車フラグを“ON”に設定する。
【0033】
次に、CPU10は、3軸加速度センサ17から入力する計測データのうち、所定の期間の加速度データを状態判別処理部21へ送る(ステップS12)。また、CPU10は、3軸地磁気センサ16から入力する計測データのうち、所定の期間の地磁気データを状態判別処理部21へ送る(ステップS13)。
【0034】
CPU10は、前回(初回は、初期設定(ステップS11)の際に)状態判別処理部21から取得したユーザの動作状態に基づく判別処理を行う(ステップS14)。CPU10は、停止フラグ、歩行フラグ、或いは、電車フラグの何れが“ON”であるかを確認することによりこの判別処理を行う。前回の動作状態が停止状態であったと判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS101からの停止後処理へ移行する。前回の動作状態が歩行状態であったと判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS201からの歩行後処理へ移行する。また、前回の動作状態が電車移動状態であったと判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS301からの電車後処理へ移行する。
【0035】
ステップS101へ移行すると、
図3に示すように、CPU10は、状態判別処理部21へ信号を送り、ステップS11、S12の処理で状態判別処理部21へ送られた加速度データ、および、地磁気データに基づいてユーザの現在の動作状態を判別させる。そして、CPU10は、状態判別処理部21から動作状態の判別結果を取得して、この動作状態の判別処理を行う。
【0036】
ステップS101の判別処理において、現在の動作状態が前回から継続して停止状態であると判別された場合には、CPU10は、GPS受信処理部15がGPS衛星からの電波を受信処理中であるか否かを判別する(ステップS111)。GPS受信処理部15による受信処理の有無は、それぞれGPSフラグが“ON”であるか、又は、“OFF”であるかによって示される。GPS衛星からの電波の受信処理中であると判別された場合は、引き続きGPS受信処理部15にGPS受信処理を行わせ(ステップS112)、また、受信、復調したGPS衛星からの信号を利用して位置演算処理を行わせる(ステップS113)。CPU10は、GPS受信処理部15から出力された位置演算処理の結果を取得して、求められた位置、および、時刻を位置方向時間情報記憶部11aに記憶させる(ステップS114)。それから、CPU10の処理は、ステップS115へ移行する。
【0037】
一方、ステップS111の判別処理で、GPS衛星からの電波の受信処理中ではないと判別された場合には、“NO”へ分岐して、ステップS112〜S114の処理を省略してステップS115へ移行する。
【0038】
次に、CPU10は、GPS受信処理が終了しているか否かを判別する。GPS受信処理部15による受信処理が行われておらず、既にGPS受信処理が終了していると判別された場合には、CPU10は、GPSフラグを“OFF”に設定する(ステップS116)とともに、乗車フラグを“OFF”に設定する(ステップS117)。それから、CPU10の処理は、ステップS118へ移行する。GPS受信処理が終了していないと判別された場合、例えば、必要な衛星電波数が受信できていない状況で繰り返し受信処理を実行する場合などは、GPSフラグが“ON”のままCPU10の処理は、ステップS118へ移行する。
【0039】
CPU10は、停止処理を実行する(ステップS118)。この停止処理では、CPU10は、自律測位制御処理部23における移動量および移動方向の算出を停止させる。それから、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0040】
ステップS101の判別処理において、現在の動作状態が歩行状態であると判別された場合には、CPU10は、歩行処理を実行する(ステップS121)。この歩行処理では、CPU10は、自律測位制御処理部23を動作させて、自律計測された現在位置データを取得する。そして、CPU10は、現在位置データを位置方向時間情報記憶部11aに記憶させるとともに、表示部18へ信号を送って表示画面上に現在位置を表示させる。
【0041】
次に、CPU10は、停止フラグを“OFF”に設定し(ステップS122)、また、歩行フラグを“ON”に設定する(ステップS123)。
【0042】
それから、CPU10は、GPS受信開始処理を実行し(ステップS124)、また、GPSフラグを“ON”に設定する(ステップS125)。そして、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0043】
ステップS101の判別処理において、現在の動作状態が電車移動状態であると判別された場合には、次に、CPU10は、GPS受信処理部15へ信号を送り、GPS受信処理を開始させる(ステップS131)とともに、GPSフラグを“ON”に設定する(ステップS132)。
【0044】
次に、CPU10は、停止フラグを“OFF”に設定し(ステップS133)、また、電車フラグを“ON”に設定する(ステップS134)。それから、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0045】
ステップS14の判別処理で、前回の動作状態が歩行状態であったと判別された場合(即ち、歩行フラグが“ON”)には、CPU10の処理は、ステップS201へ移行する。そして、CPU10は、
図4に示すように、状態判別処理部21からユーザの現在の動作状態を取得する。そして、CPU10は、この動作状態の判別処理を行う。
【0046】
ステップS201の判別処理で、現在の動作状態が停止状態であると判別された場合には、CPU10は、停止処理を行い(ステップS211)、歩行状態の期間に実行させていた自律測位制御処理部23による処理を停止させる。そして、CUP10は、歩行フラグを“OFF”に設定する(ステップS212)とともに、停止フラグを“ON”に設定する(ステップS213)。それから、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0047】
ステップS201の判別処理で、現在の動作状態が継続して歩行状態であると判別された場合には、CPU10は、GPS受信処理部15がGPS衛星からの電波を受信処理中であるか否かを判別する(ステップS221)。GPS衛星からの電波の受信処理中であると判別された場合には、CPU10は、引き続きGPS受信処理部15にGPS受信処理を行わせ(ステップS222)、また、受信、復調したGPS衛星からの信号を利用して、位置演算処理を行わせる(ステップS223)。CPU10は、GPS受信処理部15から出力された位置演算結果を取得して、この位置、および、時刻を位置方向時間情報記憶部11aに記憶させる(ステップS224)。それから、CPU10の処理は、ステップS225へ移行する。
【0048】
一方、ステップS221の判別処理で、GPS衛星からの電波の受信処理中ではないと判別された場合には、“NO”へ分岐して、CPU10の処理は、ステップS222〜S224を省略してステップS225へ移行する。
【0049】
次に、CPU10は、GPS受信処理が終了しているか否かを判別する(ステップS225)。GPS受信処理部15による受信処理が行われておらず、既にGPS受信処理が終了していると判別された場合には、CPU10は、GPSフラグを“OFF”に設定し(ステップS226)、また、乗車フラグを“OFF”に設定する(ステップS227)。それから、CPU10の処理は、ステップS228へ移行する。GPS受信処理が終了していないと判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS226〜S227を省略してステップS228へ移行する。
【0050】
CPU10は、歩行処理を実行する(ステップS228)。歩行状態が継続中には、CPU10は、自律測位制御処理部23に移動量および移動方向を算出させるとともに、所定の時間間隔でGPS受信処理部15を動作させて自律測位の基準となる位置データを取得、更新する。また、CPU10は、求められた位置、および、移動経路のデータを表示部18へ表示させる。それから、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0051】
ステップS201の判別処理で、現在の動作状態が電車移動状態であると判別された場合には、CPU10は、このタイミングを電車移動が開始されたタイミングとして設定する(ステップS231)。CPU10は、先ず、停止処理を実行し、歩行中に実行されていた自律測位制御処理部23による自律測位処理を停止させる。また、CPU10は、表示部18へユーザが現在電車移動中である旨表示させる。
【0052】
次いで、CPU10は、GPS受信処理部15へ指令を送り、GPS受信処理を開始させて、電車移動開始位置のデータの取得動作を開始する。CPU10は、GPSフラグを“ON”に設定し(ステップS233)、歩行フラグを“OFF”に設定し(ステップS234)、また、電車フラグを“ON”に設定する(ステップS235)。
【0053】
ステップS14の判別処理で、前回の動作状態が電車移動状態であったと判別された場合(即ち、電車フラグが“ON”)には、CPU10の処理は、ステップS301へ移行する。そして、CPU10は、
図5に示すように、状態判別処理部21へ信号を送り、状態判別処理部21からユーザの現在の動作状態を取得し、この動作状態の判別処理を行う。
【0054】
ステップS301の判別処理で、現在の動作状態が停止状態であると判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS311へ移行する。この場合には、電車が停止した際に、ユーザが下車せずにそのまま乗車していると判断される。CPU10は、GPS受信処理部15へ指令を送り、GPS衛星からの電波受信処理を開始させるとともに、GPSフラグを“ON”に設定する(ステップS312)。また、CPU10は、乗車フラグを“ON”に設定し(ステップS313)、電車フラグを“OFF”に設定し(ステップS314)、更に、停止フラグを“ON”に設定する(ステップS315)。CPU10は、停止処理を行って自律測位制御処理部23の処理の停止状態を継続させ、また、表示部18に、現在電車の内部で停止状態である旨表示させる(ステップS316)。そして、CPU10の処理は、ステップS12の処理へ戻る。
【0055】
ステップS301の判別処理で、現在の動作状態が歩行状態であると判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS321へ移行する。この場合には、電車が停止した後にユーザが下車したと判断して、下車位置の情報の取得を開始する。CPU10は、GPS受信処理部15へ指令を送り、GPS衛星からの電波受信処理を開始させるとともに、GPSフラグを“ON”に設定する(ステップS322)。また、CPU10は、電車フラグを“OFF”に設定し(ステップS323)、歩行フラグを“ON”に設定する(ステップS323)。それから、CPU10は、歩行処理を行う(ステップS325)。CPU10は、自律測位制御処理部23に移動量と移動方向の算出処理を開始させ、その後、ステップS12の処理へ戻る。
【0056】
ステップS301の判別処理で、現在の動作状態が継続して電車移動状態であると判別された場合には、先ず、CPU10は、GPS受信処理部15がGPS衛星からの電波を受信処理中であるか否かを判別する(ステップS331)。GPS衛星からの電波の受信処理中であると判別された場合は、引き続きGPS受信処理部15にGPS受信処理を行わせ(ステップS332)、また、GPS衛星からの電波を受信して復調した信号を利用して、位置演算処理を行わせる(ステップS333)。CPU10は、GPS受信処理部15から出力された位置演算結果を取得して、この位置情報、および、時刻情報を位置方向時間情報記憶部11aに記憶させる(ステップS334)。それから、CPU10の処理は、ステップS335の判別処理へ移行する。
【0057】
一方、ステップS331の判別処理で、GPS衛星からの電波の受信処理中ではないと判別された場合には、“NO”へ分岐して、ステップS332〜S334の処理を省略してステップS335の判別処理へ移行する。
【0058】
ステップS335の判別処理では、CPU10は、GPS受信処理が終了しているか否かを判別する。GPS受信処理部15による受信処理が行われておらず、既にGPS受信処理が終了していると判別された場合には、CPU10は、GPSフラグを“OFF”に設定し(ステップS336)、また、乗車フラグを“OFF”に設定する(ステップS337)。それから、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。ステップS335の判別処理でGPS受信処理が終了していないと判別された場合には、CPU10の処理は、そのままステップS12へ戻る。
【0059】
次に、鉄道を利用した移動時に上記の測位制御処理が実行された際の具体的な動作例について、フローチャートを参照しながら説明する。
【0060】
図6は、本実施形態における鉄道を利用した移動時の測位結果の具体例を示す図である。
【0061】
測位装置1のユーザが駅B1で電車に乗り、この電車が動き出すと、状態判別処理部21からCPU10が取得する動作状態の判別結果は、歩行状態から電車移動状態へ変化する(ステップS14、S201)。この変化により、ユーザが電車に乗車したと判定される。CPU10は、停止処理を行って自律測位制御処理部23による自律測位を中止させ(ステップS231)、また、GPS受信処理部15に指令を送ってGPS受信処理を開始させる(ステップS232)。続いて、GPSフラグを“ON”に設定し(ステップS233)、歩行フラグを“OFF”に設定し(ステップS234)、また、電車フラグを“ON”に切り替える(ステップS235)。
【0062】
或いは、ユーザが乗車してから電車の出発までに停止時間がある場合には、状態判別処理部21から取得される動作状態の判別結果は、歩行状態から停止状態を経て電車移動状態へと変化する。この場合には、先ず、CPU10は、停止状態に変化した時点で(ステップS14、S201)停止処理を実行して、自律測位制御処理部23による自律測位を中止させる(ステップS211)。それから、CPU10は、歩行フラグを“OFF”に設定し(ステップS212)、また、停止フラグを“ON”に設定する(ステップS213)。
【0063】
停止状態に変化してから電車が出発するまでは、状態判別処理部21から取得される動作状態の判別結果は、停止状態が繰り返される(ステップS14、ステップS101)。この期間は、GPSフラグが“OFF”であり(ステップS111)、従って、CPU10は、停止処理のみを繰り返す(ステップS117)。電車が出発すると、状態判別処理部21からCPU10へ入力する動作状態の判別結果が停止状態から電車移動状態に切り替わる(ステップS14、S101)。この場合には、先の歩行状態の際に電車に乗車したと判断される。CPU10は、GPS受信処理部15へ指令を送ってGPS受信処理を開始させ(ステップS131)、GPSフラグを“ON”に設定する(ステップS132)。また、停止フラグを“OFF”に設定するとともに(ステップS133)、電車フラグを“ON”に設定する(ステップS134)。
【0064】
乗車した電車が走行を続けていくと、状態判別処理部21から入力される動作状態の判別結果は、電車移動状態が連続する(ステップS14、ステップS301)。ステップS231、S132で開始されたGPS受信処理が終了するまでは、GPS受信処理、位置演算処理、および、位置時刻記憶処理がそれぞれ実行される(ステップS331〜S334)。このときに取得されて位置方向時間情報記憶部11aに記憶された位置データが、乗車地点データとなる。一方、GPS受信処理が終了すると、GPSフラグが“OFF”に設定されて(ステップS335、S336)、以降列車が走行している間は位置データの取得は行われない。また、乗車フラグが再度“OFF”に設定される(ステップS337)。なお、電車移動中にユーザが車内を移動しても、3軸地磁気センサ16の出力により電車の移動が終了していないと判断できるので、歩行状態には変化しない。
【0065】
電車が途中駅B2〜B7に到着して停止すると、状態判別処理部21から入力される動作状態の判別結果は、電車移動状態から停止状態に切り替わる(ステップS14、S301)。CPU10は、GPS受信処理部15に指令を送ってGPS受信処理を開始させる(ステップS311)とともに、GPSフラグを“ON”に設定する(ステップS312)。また、乗車フラグが“ON”に設定され、電車フラグが“OFF”に設定され、更に、停止フラグが“ON”に設定される(ステップS313〜S315)。それから、停止処理が行われる(ステップS316)。
【0066】
電車が途中駅B2〜B7から発車すると、状態判別処理部21からCPU10に入力される動作状態の判別結果は、停止状態から電車移動状態に変化する(ステップS14、ステップS101)。このとき、GPS受信処理は、既に開始されており(ステップS131)、またGPSフラグは、既に“ON”に設定されている(ステップS132)。そして、停止フラグが“OFF”に設定され(ステップS133)、また、電車フラグが“ON”に設定される(ステップS134)。
【0067】
乗車した電車が走行を続けていくと、状態判別処理部21から入力される動作状態の判別結果は、電車移動状態が連続する(ステップS14、ステップS301)。ステップS231、S132で開始されたGPS受信処理が終了するまでは、GPS受信処理、位置演算処理、および、位置時刻記憶処理がそれぞれ実行される(ステップS331〜S334)。GPS受信処理が終了すると、GPSフラグが“OFF”に設定され(ステップS335、S336)、また、乗車フラグが再度“OFF”に設定される(ステップS337)。乗車駅の位置データと、このGPS受信処理により求められた現在位置のデータにより、進行方向確定処理部22によって乗車駅からの進行方向が確定される。
【0068】
電車が駅B8に到着してユーザが下車すると、状態判別処理部21からCPU10に入力される動作状態の判別結果は、電車移動状態から歩行状態に変化する(ステップS14、ステップS101)。この変化により、電車から下車したと判定される。先ず、GPS受信処理部15によるGPS受信処理が開始され(ステップS321)。それから、GPSフラグが“ON”に設定され、電車フラグが“OFF”に設定され、また、歩行フラグが“ON”に設定される(ステップS322〜S324)。また、歩行処理が実行されて、自律測位制御処理部23に指令が送られることで、移動量と移動方向の計測が開始されるとともに、所定の時間間隔でGPSの受信開始処理が行われる(ステップS325)。なお、途中駅B2〜B7に停止中に車内を移動した場合は、一旦下車した後に再び乗車したものとみなされて、同様の処理が行われる。
【0069】
ユーザが駅B8で下車した後、歩行状態が継続されると(ステップS14、ステップS201)、当初はGPSフラグが“ON”であるので、GPS受信処理、位置演算処理、および、位置時刻記憶処理が実行される(ステップS221〜S224)。そして、GPS衛星を利用して求められ、また、位置方向時間情報記憶部11aに記憶された位置データが下車駅を同定するための位置データとなる。GPS受信処理が終了すると、GPSフラグが“OFF”に設定され、また、乗車フラグも“OFF”に設定される(ステップS225〜S227)。それから、歩行処理が行われる(ステップS228)。下車時点では自律測位制御処理部23に基準となる位置データがない状態であり、GPS受信処理により取得された位置データと、下車時点から実行されている移動量及び移動方向の計測データとに基づいて、下車駅の位置データが逆算される。そして、位置方向時間情報記憶部11aに記憶された乗車地点、下車地点のそれぞれの位置データ、および、路線図データ記憶部13aに記憶された路線図データから、電車移動に利用した路線およびその区間が決定される。また、複数の経路がある場合などには、駅B2で取得した進行方向のデータや、途中駅B2〜B7の位置データも参照することにより経路を選択する。
【0070】
或いは、駅B8に電車が到着して停止した後に、ユーザが歩行動作を開始して下車した場合には、状態判別処理部21からCPU10に入力される判別結果は、電車移動状態から停止状態を経て歩行状態へと変化する。この場合には、先ず、状態判別処理部21の判別結果が停止状態に移行した段階でGPS受信処理が開始され(ステップS311〜S312)、また、電車フラグが“OFF”に設定されるとともに、乗車フラグ、および、停止フラグが“ON”に設定される(ステップS313〜S315)。また、停止処理が行われる(ステップS316)。
【0071】
その後、ユーザが歩行動作を開始して下車すると(ステップS14、S101)、先ず、歩行処理が行われて自律測位制御処理部23により自律測位が開始され(ステップS121)る。また、停止フラグが“OFF”に設定され、歩行フラグが“ON”に設定される(ステップS122〜S123)。次のGPS受信開始処理(ステップS124)は、既に実行開始されており、また、GPSフラグは、既に“ON”に設定されている(ステップS125)。そして、状態判別処理部21からCPU10に入力される判別結果が連続して歩行状態になると(ステップS14、ステップS201)、当初はGPSフラグが“ON”であり、GPS受信処理、位置演算処理、および、位置時刻記憶処理が実行される(ステップS221〜S224)。そして、GPS受信処理が終了すると、GPSフラグ、および、乗車フラグが“OFF”に切り替えられる(ステップS225〜S227)。また、歩行処理が繰り返し実行されて自律測位が行われる(ステップS228)。
【0072】
以上のように、上記の実施形態の測位装置1によれば、路線図データ記憶部13aを備え、また、3軸加速度センサ17の波形パターンから電車による移動状態を判別することにより、GPS受信処理部15を用いた位置の測定処理を行う頻度を減らした状態でも、路線図データと比較することにより電車による移動経路を特定することができる。従って、電力の消費量を抑えることができる。
【0073】
また、鉄道の路線のような限定された軌道上を走る場合に、路線図データと限られた点の位置データとを併用して移動経路を取得することにより、地図上の道路や路線との移動経路各地点でのマッチング処理といった煩雑な作業を省略しても正確な移動経路情報を取得することができる。
【0074】
また、鉄道による移動の際に地図データを用いて乗車駅と下車駅とを特定し、移動経路を同定することにより、電車のモータが発生する磁界の影響で自律航法機能を用いることができない場合や、自律航法機能を備えていない測位装置を用いる場合であっても、GPS衛星を利用した衛星測位システムによる位置測定の頻度を増やすことなく正確な移動経路情報を取得することができる。
【0075】
また、GPS受信処理部15による位置の測定処理を電車による移動を開始したときと、電車が止まったときに限定することで、効率よく乗車駅、下車駅、および、精度の良い移動経路の情報を取得することができる。
【0076】
ここで、上記の実施形態では、下車したと判別されたときにのみ乗車地点および下車地点の位置データに基づいて鉄道移動の路線経路を決定したが、停車駅ごとに路線経路を決定することとしても良い。中途駅の情報を移動経路の決定の際に含めることで、複数の路線がある場合でも、より正確に経路を取得することができる。
【0077】
また、路線図データ記憶部13aに記憶される路線図には、単なる地図としての情報だけではなく、各運行路線の情報も併せて保持させることができる。測定された駅位置の精度があまり良くない場合で、例えば、乗車駅が近隣の駅B11と正しい乗車駅B1とで判別がつかない場合であっても、下車駅B8へ繋がっている路線上の駅が駅B1しかないことから乗車駅を判別させることもできる。また、線路が繋がっている場合でも、例えば、直通運転を行う電車の有無の情報により、平行路線の経路を選択することができる。
【0078】
また、上記の実施形態では、GPS衛星を利用して求められた位置データに基づいて乗車駅および下車駅の同定を行ったが、乗車前や下車後に行われたGPS利用測定地点を基準とした自律航法による位置データを利用して駅を同定することもできる。このように、GPS衛星を利用した測位および自律測位を併用することにより、地下駅やビル内の駅でGPS受信処理による位置データの取得が困難な場合にも同様に、路線図を用いて鉄道による移動経路の選択を行うことができる。
【0079】
また、上記の実施形態では、途中駅B2〜B7への停車時間が長い場合や、下車駅B8に到着してから、下車を開始するまでの時間が長い場合には、停止状態の間にステップS111〜S117までのGPS受信処理が行われ、また、終了する場合がある。この場合には、電車停止時の受信処理の動作フラグを設定しておき、ステップS124、S131のGPS受信開始処理、および、ステップS125、S132のGPSフラグを“ON”に設定する処理を行わないように設定することが可能である。
【0080】
[変更例1]
変更例1の測位装置の内部構成は、上記の実施形態の測位装置1の構成と同一であり、説明を省略する。
【0081】
この変更例1の測位装置1では、電車移動状態から停止状態へ移行した場合にGPS受信処理を開始しない。即ち、ステップS311、S312を削除する。また、停止状態から電車移動状態へ変化した場合には、乗車フラグが“ON”の場合には、GPS受信開始処理、および、GPSフラグを“ON”に設定する処理(ステップS132、S133)を行わず、代わりに、乗車フラグを“OFF”に設定する処理を行う。
【0082】
この変更例1の測位装置1では、電車移動状態から停止状態に移行したとき、GPSフラグは、“OFF”のままである。その後、連続して停止状態であると判定された場合には、そのままGPS処理は行われない(ステップS111)。電車移動状態から歩行状態に変化して下車したと判断された場合にのみGPS受信開始処理が行われる(ステップS321)。
【0083】
また、この場合には、電車移動状態から停止状態を経て電車移動状態に戻った場合には、GPS受信処理は、やはり開始されず、乗車フラグが“OFF”に設定される。一方、電車移動状態から停止状態を経て歩行状態に移行した場合には、歩行処理が実行される(S121)。この歩行処理の中では、上述したように、自律測位処理とともに、所定の時間間隔でGPS受信処理が開始され、GPS受信処理が行われる(ステップS221〜S224)。GPS受信処理が終了すると、GPSフラグ、および、乗車フラグは“OFF”に設定されるとともに(ステップS226、S227)、歩行処理により下車位置のデータが算出される(ステップS228)。
【0084】
以上のように、変更例1の測位装置1によれば、乗車時と下車時にのみGPS受信処理が動作して位置データを取得する。そして、これらの2点の位置データと、路線図データ記憶部13aに記憶された路線図データに基づいて電車移動がなされた経路が決定されるので、電車の走行中には一切GPSの受信動作を行わずに電力消費を抑えたまま、移動経路データを取得できる。
【0085】
[変更例2]
変更例2の測位装置の構成は、上記の実施形態の測位装置1の構成と同一であり、説明を省略する。
【0086】
変更例2の測位装置1では、電車移動状態が検出されると、この電車移動状態の継続時間を計測する。また、予め設定されて、例えば、ROM12に格納した時間間隔の設定データを呼び出す。そして、GPS受信終了状態の判別処理(ステップS335)の後に、電車移動状態の継続時間がこの設定された時間間隔に達したか否かを判別する処理を行う。電車移動状態の継続時間が設定された時間間隔以上である場合には、電車走行中にGPS受信開始処理、GPSフラグを“ON”に設定する処理、および、乗車フラグを“ON”にする処理を行わせる。また、計測していた電車移動状態の継続時間をリセットする。
【0087】
以上のように、変更例2の測位装置によれば、走行中に適切な時間間隔で現在位置の測定処理を行うことによって、特急列車のような長距離に亘って停車しない列車の経路であっても路線図データを参照しながら的確に取得することができる。
【0088】
また、ここで、変更例2の測位装置においては、変更例1の測位装置1と同様に電車が停止した際の現在位置測定処理を省略することができる。この省略によって、各駅停車やラッシュ時の運行など、頻繁に停車する場合でも不必要な頻度で現在位置の測定処理を行わなくなり、従って、電力の消費量を抑えることができる。
【0089】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記の説明では、自律測位を行うことができない電車による移動経路の決定に用いた場合を例に挙げたが、動力を持たない客車といった他の鉄道でも効果的に利用可能である。
【0090】
また、上述の実施の形態ではGPS衛星を用いた位置の測定を行ったが、他の衛星測位システム、例えば、GLONASS(Global Navigation Satellite System)を用いることとしても良いし、携帯電話と携帯電話の基地局との通信を利用した位置測定を利用することも可能である。
【0091】
また、3軸加速度センサおよび3軸地磁気センサによるバス移動状態の判別、或いは、予め、自動車による移動状態が公共交通機関による移動である旨を指定する操作入力を用いることにより、トロリーバスなどの電車以外のルートが決まっている交通手段に適用することも可能である。
【0092】
また、上記の実施形態では、ユーザの電車への乗車、および、下車を判断してGPS衛星を利用した位置測定を行ったが、GPS衛星を利用した位置測定の頻度が高い場合には、特別に乗車時、および、下車時のGPS衛星を利用した位置測定を行わず、乗車タイミング、および、下車タイミングに最も近い位置データを用いることとしても良い。
【0093】
また、上記の実施形態では、列車の動き出しのタイミングでGPS衛星からの受信処理を開始したが、乗車した列車が移動を開始した後所定の時間、例えば、30秒経過後にGPS衛星を利用した位置測定を行うことにより、乗車駅のデータと乗車駅からの進行方向のデータとを同時に取得することも可能である。また、例えば、常に路線図データの駅位置情報と位置データとを比較することにより、駅から所定の距離、例えば、300m以内に接近した場合には、一度GPS衛星を利用した位置測定を行わせ、自律測位による隣接駅の識別精度を向上させたり、出発ホームの情報を取得可能としたりすることとしても良い。
【0094】
また、上述の実施の形態では、ROM12に格納されたプログラム12aに基づいて、CPU10がGPS受信処理部15、状態判別処理部21、進行方向確定処理部22に各処理を実行させる形態を示したが、これらの処理を全てCPU10の演算によるソフトウェア処理として行わせることとしても良い。その他、実施形態で示した数値や構成などの細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。