(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  第2ピッチ配列は、前記複数のピッチ種のうちピッチ長が最も短いピッチ種のピッチ長に対して、ピッチ長が10%長い範囲に含まれるピッチ種が連続して隣接する数が3個以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  前記複数の周方向溝のうち最も車両内側に位置する周方向溝と最も車両外側に位置する周方向溝との間には、ピッチ長が異なる複数のピッチ種を第3ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成され、
  第3ピッチ配列は、タイヤ周方向に隣接するピッチ種が、互いに同じピッチ種あるいは前記隣接ピッチ種であるピッチ配列であり、
  第1ピッチ配列に用いられるピッチ種の数は、第3ピッチ配列に用いられるピッチ種の数よりも多い、請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  前記複数の周方向溝のうち最も車両内側に位置する周方向溝と最も車両外側に位置する周方向溝との間には、ピッチ長が異なる複数のピッチ種を第4ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成され、
  第4ピッチ配列は、タイヤ周方向に前記隣接ピッチ種以外のピッチ種が隣接する部分を備え、かつ、前記複数のピッチ種のうちピッチ長が最も短いピッチ種が連続する数が3個以下であるピッチ配列であり、
  第4ピッチ配列に用いられるピッチ種の数は、第2ピッチ配列に用いられるピッチ種の数よりも多い、請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  上記特許文献1に記載されている空気入りタイヤでは、長さの順に隣り合う1つ以上のピッチを飛ばして並ぶ模様構成単位を含んで配列するので、長さが最も短い最短ピッチが並ぶことによりトレッドのブロック剛性が小さくなることを防止することができる。このため、上記空気入りタイヤによれば、パターンノイズの発生を抑制することができる。しかし、長さの順に隣り合う1つ以上のピッチを飛ばして並ぶ模様構成単位を含んで配列するので、タイヤ周方向において隣り合うピッチ長の変化が大きい部分が生じ、ヒール・アンド・トゥ摩耗が発生しやすい。
【0007】
  上記特許文献2に記載されている空気入りタイヤでは、ドライ路面での操縦安定性の向上とパターンノイズの低減とを両立することが可能であるが、耐ヒール・アンド・トゥ摩耗性能の向上については、何も言及されていない。
  特に、近年の車両では、高速走行時の走行安定性を確保するために、空気入りタイヤがネガティブキャンバーで車両に取り付けられる。このような車両では、高速走行時にタイヤの車両装着内側部分に、外側部分よりも大きな負荷がかかり、ヒール・アンド・トゥ摩耗が発生しやすくなる。
【0008】
  そこで、本発明は、パターンノイズの抑制と耐ヒール・アンド・トゥ摩耗性能の向上とを両立することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0009】
  上記課題を解決するため、本発明の空気入りタイヤは、車両に対するタイヤ表裏の装着方向が指定された空気入りタイヤであって、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝を備え、
  前記複数の周方向溝のうち最も車両内側に位置する周方向溝よりも車両内側には、ピッチ長が異なる複数のピッチ種を第1ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成され、前記複数の周方向溝のうち最も車両外側に位置する周方向溝よりも車両外側には、ピッチ長が異なる複数のピッチ種を第2ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成され、前記複数のピッチ種をピッチ長の順番に並べたとき、互いに隣り合うピッチ種を隣接ピッチ種とするとき、第1ピッチ配列は、タイヤ周方向に隣接するピッチ種が、互いに同じピッチ種あるいは前記隣接ピッチ種であるピッチ配列であり、第2ピッチ配列は、タイヤ周方向に
沿って隣接するピッチのピッチ種が変化する部分であって、前記隣接ピッチ種以外のピッチ種が隣接する部分を備え、かつ、前記複数のピッチ種のうちピッチ長が最も短いピッチ種が連続する数が3個以下であるピッチ配列であることを特徴とする。
【0010】
  また、第2ピッチ配列は、前記複数のピッチ種のうちピッチ長が最も短いピッチ種のピッチ長に対して、ピッチ長が10%長い範囲に含まれるピッチ種が連続して隣接する数が3個以下であることが好ましい。
【0011】
  また、前記隣接ピッチ種のピッチ長の比は、0.85以上1.15以下であることが好ましい。
【0012】
  また、第1ピッチ配列に用いられるピッチ種の数と、第2ピッチ配列に用いられるピッチ種の数とは同じであることが好ましい。
【0013】
  また、前記複数の周方向溝のうち最も車両内側に位置する周方向溝と最も車両外側に位置する周方向溝との間には、ピッチ長が異なる複数のピッチ種を第3ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成され、第3ピッチ配列は、タイヤ周方向に隣接するピッチ種が、互いに同じピッチ種あるいは前記隣接ピッチ種であるピッチ配列であり、第1ピッチ配列に用いられるピッチ種の数は、第3ピッチ配列に用いられるピッチ種の数よりも多いことが好ましい。
【0014】
  また、前記複数の周方向溝のうち最も車両内側に位置する周方向溝と最も車両外側に位置する周方向溝との間には、ピッチ長が異なる複数のピッチ種を第4ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成され、第4ピッチ配列は、タイヤ周方向に前記隣接ピッチ種以外のピッチ種が隣接する部分を備え、かつ、前記複数のピッチ種のうちピッチ長が最も短いピッチ種が連続する数が3個以下であるピッチ配列であり、第4ピッチ配列に用いられるピッチ種の数は、第2ピッチ配列に用いられるピッチ種の数よりも多いことが好ましい。
 
【発明の効果】
【0015】
  本発明の空気入りタイヤによれば、パターンノイズの抑制と耐ヒール・アンド・トゥ摩耗性能の向上とを両立することができる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
  以下、本発明の空気入りタイヤについて、実施形態に基づいて説明する。
  以下に説明する実施形態の空気入りタイヤは、例えば、JATMA  YEAR  BOOK  2009(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められる乗用車用タイヤに適用することができる。この他、本発明の空気入りタイヤは、B章に定められる小型トラック用タイヤあるいはC章に定められるトラック及びバス用タイヤに適用することもできる。
 
【0018】
  なお、以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向である。また、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向において、タイヤセンターラインCLから離れる方向である。また、タイヤ幅方向内方とは、タイヤ幅方向において、タイヤセンターラインCLに近づく方向である。また、タイヤ周方向とは、空気入りタイヤの回転軸を回転の中心として回転する方向である。
 
【0019】
  まず、
図1を参照して、本実施形態の空気入りタイヤのトレッドパターンについて説明する。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤのトレッドに設けられるトレッドパターン10の一例を示す展開図である。本実施形態の空気入りタイヤは、車両に対するタイヤ表裏の装着方向が指定されている。
図1に示される例では、
図1の右方向が車両外側であり、左方向が車両内側である。
 
【0020】
  トレッドパターン10は、タイヤセンターラインCLから順に、周方向リブ12,14と、ブロック16と、ショルダーブロック18と、を有する。
  トレッドパターン10は、ブロック16とショルダーブロック18との間に設けられる周方向溝20により、センター領域とショルダー領域に分けられる。以下の説明では、タイヤ幅方向において最も外側に形成された周方向溝よりもタイヤ幅方向外方の領域をショルダー領域と定義する。特に、車両外側に位置するショルダー領域を外側ショルダー領域と定義し、車両内側に位置するショルダー領域を内側ショルダー領域と定義する。また、タイヤ幅方向において最も外側に形成された周方向溝よりもタイヤ幅方向内方の領域をセンター領域と定義する。
 
【0021】
  周方向リブ12は、2つの周方向溝22によって画されている。また、周方向リブ12には、一端が閉塞した傾斜ラグ溝24が設けられている。
  周方向リブ14は、周方向溝22と周方向細溝26との間に画されている。
 
【0022】
  ブロック16は、周方向細溝26と、周方向溝20と、周方向細溝26と周方向溝20を結ぶ傾斜ラグ溝28とによって画されている。
  ショルダーブロック18は、周方向溝20とショルダー端との間を連通するショルダーラグ溝30により画されている。また、ショルダーブロック18には、ショルダー端から延び、ショルダーブロック18の途中で閉塞するショルダー閉塞ラグ溝32が設けられている。
 
【0023】
  周方向溝20,22の溝幅は、例えば、6mm以上9mm以下であり、周方向溝20,22の溝深さは、例えば、7mm以上9mm以下である。また、周方向細溝26の溝幅は、例えば、1mm以上3mm以下であり、周方向細溝26の溝深さは、例えば、4mm以上5mm以下である。
  傾斜ラグ溝24の溝幅は、例えば、2mm以上6mm以下であり、傾斜ラグ溝24の溝深さは、例えば、3mm以上7mm以下である。また、傾斜ラグ溝28の溝幅は、例えば、2mm以上7mm以下であり、傾斜ラグ溝28の溝深さは、例えば、3mm以上7mm以下である。
  また、ショルダーラグ溝30の溝幅は、例えば、2mm以上4mm以下であり、ショルダーラグ溝30の溝深さは、例えば、3mm以上6mm以下である。また、ショルダー閉鎖ラグ溝32の溝幅は、例えば、2mm以上4mm以下であり、ショルダー閉鎖ラグ溝32の溝深さは、例えば、3mm以上6mm以下である。
 
【0024】
  なお、周方向溝20,22や周方向細溝26は、
図1に示されるようにタイヤセンターラインCLと平行な溝に限定されない。周方向溝20,22や周方向細溝26は、例えば、タイヤセンターラインCLに対して35度以内の角度で傾斜する溝も含む。
 
【0025】
  次に、本実施形態のトレッドパターン10に施されるピッチバリエーションについて説明する。ここで、トレッドパターン10のピッチとは、タイヤ周方向に沿って同じパターンが繰り返される最小単位である。
図1にPc
1、Pc
2で示されるピッチは、センター領域に配置されるピッチを示す。また、
図1にPsh
1、Psh
2で示されるピッチは、外側ショルダー領域に配置されるピッチを示す。
 
【0026】
  本実施形態の空気入りタイヤでは、内側ショルダー領域を含む、タイヤセンターラインCLよりも車両内側には、ピッチ長が異なる複数のピッチ種を第1ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成されている。また、外側ショルダー領域を含む、タイヤセンターラインCLよりも車両外側には、ピッチ長が異なる複数のピッチ種を第2ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成されている。第1ピッチ配列および第2ピッチ配列の定義は、後述する。
 
【0027】
  以下、
図2を参照して、第1ピッチ配列および第2ピッチ配列について説明する。
図2(a)は、第1ピッチ配列の一例を示す図であり、
図2(b)は、第2ピッチ配列の一例を示す図である。
図2に示される例では、ピッチ長が異なる5種類のピッチ種A〜Eを用いたピッチ配列が示されている。5種類のピッチ種A〜Eのピッチ長をそれぞれP
A〜P
Eとすると、P
A>P
B>P
C>P
D>P
Eである。
 
【0028】
  例えば、
図2(a)に示される第1ピッチ配列は、ピッチ種Aが3つ、ピッチ種Bが3つ、ピッチ種Cが4つ、ピッチ種Dが4つ、…の順に、タイヤ周方向に各ピッチが配列されることを示す。また、
図2(b)に示される第2ピッチ配列は、ピッチ種Bが2つ、ピッチ種Cが2つ、ピッチ種Aが3つ、ピッチ種Bが1つ、…の順に、タイヤ周方向に各ピッチが配列されることを示す。
 
【0029】
  ここで、複数のピッチ種A〜Eをピッチ長の順番に並べたとき、互いに隣り合うピッチ種を隣接ピッチ種と定義する。例えば、ピッチ種Aに対する隣接ピッチ種は、ピッチ種Bである。また、ピッチ種Bに対する隣接ピッチ種は、ピッチ種Aとピッチ種Cである。また、ピッチ種Cに対する隣接ピッチ種は、ピッチ種Bとピッチ種Dである。また、ピッチ種Dに対する隣接ピッチ種は、ピッチ種Cとピッチ種Eである。また、ピッチ種Eに対する隣接ピッチ種は、ピッチ種Dである。
 
【0030】
  なお、隣接ピッチ種のピッチ長の比は、0.85以上1.15以下であることが好ましい。これは、隣接ピッチ種のピッチ長の差が15%以内であることを意味する。
  例えば、
図2(a)に示される第1ピッチ配列のピッチ種A〜Eのピッチ長は、P
A=39.00mm、P
B=35.50mm、P
C=30.90mm、P
D=26.90mm、P
E=25.40mmである。また、
図2(b)に示される第2ピッチ配列のピッチ種A〜Eのピッチ長は、P
A=37.20mm、P
B=34.30mm、P
C=31.20mm、P
D=28.10mm、P
E=25.00mmである。
 
【0031】
  ここで、タイヤ周方向に隣接するピッチ種(例えば、
図1に示されるPc
1とPc
2)が、互いに同じピッチ種あるいは隣接ピッチ種であるピッチ配列を第1ピッチ配列と定義する。例えば、
図2(a)に「A3」と示される部分のように、ピッチ種Aが3つ連続する部分は、タイヤ周方向に隣接するピッチ種が互いに同じピッチ種となる部分である。また、
図2(a)に示される「A3」の次に「B3」と示される部分のように、3つ連続するピッチ種Aの3つ目のピッチ種Aと、その次に配置される3つ連続するピッチ種Bの1つ目のピッチ種Bとは、タイヤ周方向に隣接するピッチ種が隣接ピッチ種となる部分である。
 
【0032】
  また、
タイヤ周方向に沿って隣接するピッチのピッチ種が変化する部分であって、隣接ピッチ種以外のピッチ種が隣接する部分を備え、かつ、複数のピッチ種のうちピッチ長が最も短いピッチ種が連続する数が3個以下であるピッチ配列を第2ピッチ配列と定義する。例えば、
図2(b)に「C2」の次に「A3」と示される部分のように、第2ピッチ配列は、ピッチ種Cに隣接ピッチ種以外のピッチ種であるピッチ種Aが隣接する部分を備える。また、
図2(b)に「E1」、「E2」と示される部分のように、第2ピッチ配列は、複数のピッチ種A〜Eのうちピッチ長が最も短いピッチ種Eが連続する数が3個以下となるピッチ配列である。
 
【0033】
  なお、本実施形態では、5種類のピッチ種A〜Eを用いて第1ピッチ配列、第2ピッチ配列を形成する例について説明したが、第1ピッチ配列、第2ピッチ配列を形成するために用いられるピッチ種の数はこれに限定されるものではない。例えば、ピッチ長が最も長いピッチ種のピッチ長と、ピッチ長が最も短いピッチ種のピッチ長とを一定とする条件において、第1ピッチ配列、第2ピッチ配列を形成するために用いられるピッチ種の数を多くすると、隣接ピッチ種のピッチ長の差は小さくなる。このような場合、第2ピッチ配列は、複数のピッチ種のうちピッチ長が最も短いピッチ種のピッチ長に対して、ピッチ長が10%長い範囲に含まれるピッチ種が連続して隣接する数が3個以下であることが好ましい。
 
【0034】
  本実施形態の空気入りタイヤでは、上述した第1ピッチ配列のピッチ配列が内側ショルダー領域に形成されるため、内側ショルダー領域においてタイヤ周方向に隣接するピッチの間で生じるブロックの剛性差を低減することができる。そのため、ネガティブキャンバーで車両に装着され、荷重の負担が大きい内側ショルダー領域において、ヒール・アンド・トゥ摩耗の発生を抑制することができる。
  また、本実施形態の空気入りタイヤでは、上述した第2ピッチ配列のピッチ配列が外側ショルダー領域に形成される。そのため、パターンノイズの発生への寄与が大きい外側ショルダー領域において、パターンノイズの発生を抑制することができる。
 
【0035】
  なお、本実施形態では、第1ピッチ配列に用いられるピッチ種の数と第2ピッチ配列に用いられるピッチ種の数をいずれも5種類としたが、第1ピッチ配列に用いられるピッチ種の数は、第2ピッチ配列に用いられるピッチ種の数と異なるものでもよい。
 
【0036】
<第2の実施形態>
  次に、第2の実施形態の空気入りタイヤについて説明する。本実施形態の空気入りタイヤの基本的な構成は、第1の実施形態と同様である。本実施形態の空気入りタイヤは、トレッドパターン10に施されるピッチバリエーションが第1の実施形態とは異なる。以下、本実施形態のトレッドパターン10に施されるピッチバリエーションについて説明する。
 
【0037】
  第1の実施形態と同様、本実施形態の空気入りタイヤの内側ショルダー領域には、ピッチ長が異なる複数(例えば、5つ)のピッチ種を第1ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成されている。また、本実施形態の空気入りタイヤの外側ショルダー領域には、ピッチ長が異なる複数(例えば、5つ)のピッチ種を第2ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成されている。
  更に、本実施形態の空気入りタイヤのセンター領域には、ピッチ長が異なる複数(例えば、3つ)のピッチ種を第3ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成されている。
 
【0038】
  以下、
図3(a)を参照して、第3ピッチ配列について説明する。
図3(a)は、第3ピッチ配列の一例を示す図である。
図3(a)に示される例では、ピッチ長が異なる3種類のピッチ種A、B、Cを用いたピッチ配列が示されている。
  例えば、
図3(a)に示される第3ピッチ配列は、ピッチ種Bが2つ、ピッチ種Cが2つ、ピッチ種Bが1つ、ピッチ種Aが1つ、…の順に、タイヤ周方向に各ピッチが配列されることを示す。
  第1ピッチ配列と同様、第3ピッチ配列も、タイヤ周方向に隣接するピッチ種が、互いに同じピッチ種あるいは隣接ピッチ種であるピッチ配列である。
 
【0039】
  本実施形態の空気入りタイヤでは、内側ショルダー領域に形成される第1ピッチ配列だけでなく、センター領域に形成される第3ピッチ配列も、タイヤ周方向に隣接するピッチ種が、互いに同じピッチ種あるいは隣接ピッチ種であるピッチ配列である。そのため、内側ショルダー領域だけでなくセンター領域においても、隣接ピッチ間の剛性差が小さくなり、第1の実施形態に比べて、ヒール・アンド・トゥ摩耗の発生を抑制することができる。
  特に、ヒール・アンド・トゥ摩耗が発生しやすい内側ショルダー領域に形成される第1ピッチ配列に用いられるピッチ種の数を、センター領域に形成される第3ピッチ配列に用いられるピッチ種の数よりも多くすることにより、ヒール・アンド・トゥ摩耗の発生をより効果的に抑制することができる。
 
【0040】
<第3の実施形態>
  次に、第3の実施形態の空気入りタイヤについて説明する。本実施形態の空気入りタイヤの基本的な構成は、第1の実施形態と同様である。本実施形態の空気入りタイヤは、トレッドパターン10に施されるピッチバリエーションが第1の実施形態とは異なる。以下、本実施形態のトレッドパターン10に施されるピッチバリエーションについて説明する。
 
【0041】
  本実施形態の空気入りタイヤの内側ショルダー領域には、ピッチ長が異なる複数(例えば、5つ)のピッチ種を第1ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成されている。また、本実施形態の空気入りタイヤの外側ショルダー領域には、ピッチ長が異なる複数(例えば、5つ)のピッチ種を第2ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成されている。
  更に、本実施形態の空気入りタイヤのセンター領域には、ピッチ長が異なる複数(例えば、6つ)のピッチ種を第4ピッチ配列によりタイヤ周方向に分散配置したトレッドパターンが形成されている。
 
【0042】
  以下、
図3(b)を参照して、第4ピッチ配列について説明する。
図3(b)は、第4ピッチ配列の一例を示す図である。
図3(b)に示される例では、ピッチ長が異なる6種類のピッチ種A〜Fを用いたピッチ配列が示されている。5種類のピッチ種A〜Eのピッチ長をそれぞれP
A〜P
Eとすると、P
A>P
B>P
C>P
D>P
E>P
Fである。また、
図3(b)に示される第4ピッチ配列のピッチ種A〜Fのピッチ長は、P
A=37.20mm、P
B=34.30mm、P
C=31.20mm、P
D=28.10mm、P
E=25.00mm、P
F=22.1mmである。
  例えば、
図3(b)に示される第4ピッチ配列は、ピッチ種Bが2つ、ピッチ種Eが1つ、ピッチ種Bが1つ、ピッチ種Fが1つ、…の順に、タイヤ周方向に各ピッチが配列されることを示す。
  第2ピッチ配列と同様、第4ピッチ配列も、複数のピッチ種A〜Fのうちピッチ長が最も短いピッチ種Fが連続する数が3個以下となるピッチ配列である。
 
【0043】
  本実施形態の空気入りタイヤでは、外側ショルダー領域に比べてヒール・アンド・トゥ摩耗が発生しやすいセンター領域に形成される第4ピッチ配列に用いられるピッチ種の数が、外側ショルダー領域に形成される第2ピッチ配列に用いられるピッチ種の数よりも多い。そのため、センター領域における隣接ピッチ間の剛性差が小さくなり、ヒール・アンド・トゥ摩耗の発生を抑制することができる。
 
【実施例】
【0044】
  種々の空気入りタイヤを用いて、本発明の効果を確認する試験を行った。タイヤサイズは、205/55R16であり、JATMA  YEAR  BOOK  2009(日本自動車タイヤ協会規格)に規定された空気圧の条件を用いた。荷重条件は、JATMA  YEAR  BOOK  2009で規定される条件とした。キャンバー角度は、−1.5度とした。各試験タイヤを1.5Lクラスの前輪駆動車の4輪に装着し、正規荷重の80%の荷重を加え、以下のような試験を行った。
【0045】
(パターンノイズ性能)
  平滑路面において、時速100kmで走行したときのパターンノイズをドライバーが官能評価した。後述する比較例1の評価結果を100とし、指数値が高いほど、パターンノイズが小さいことを示す。
【0046】
(耐ヒール・アンド・トゥ摩耗性)
  各試験タイヤを装着した車両で10000km走行した後に、ヒール・アンド・トゥ摩耗の大きさを調べた。後述する比較例1の測定結果を100とし、指数値が高いほど、ヒール・アンド・トゥ摩耗が発生しにくいことを示す。
【0047】
(実施例1)
  まず、実施例1の空気入りタイヤのトレッドパターン10について説明する。実施例1の空気入りタイヤのトレッドパターン10は、内側ショルダー領域を含む、タイヤセンターラインCLよりも車両内側が、
図2(a)に示されるような5種類のピッチ種を有する第1ピッチ配列で形成されている。また、外側ショルダー領域を含む、タイヤセンターラインCLよりも車両外側が、
図2(b)に示されるような5種類のピッチ種を有する第2ピッチ配列で形成されている。
【0048】
(比較例1)
  次に、比較例1の空気入りタイヤのトレッドパターン10について説明する。比較例1の空気入りタイヤのトレッドパターン10は、内側ショルダー領域、外側ショルダー領域、センター領域が
図2(a)に示されるような5種類のピッチ種を有する第1ピッチ配列で形成されている。
【0049】
(比較例2)
  次に、比較例2の空気入りタイヤのトレッドパターン10について説明する。比較例2の空気入りタイヤのトレッドパターン10は、内側ショルダー領域、外側ショルダー領域、センター領域が
図2(b)に示されるような5種類のピッチ種を有する第2ピッチ配列で形成されている。
【0050】
  比較例1,2、実施例1の空気入りタイヤにおけるパターンノイズ性能、耐ヒール・アンド・トゥ摩耗性(耐H&T摩耗性)の試験結果を表1に示す。
【表1】
【0051】
  表1の結果から、実施例1の空気入りタイヤでは、第1ピッチ配列のピッチ配列が内側ショルダー領域に形成され、第2ピッチ配列のピッチ配列が外側ショルダー領域に形成されるため、パターンノイズの抑制と耐ヒール・アンド・トゥ摩耗性能の向上とを両立できることが分かる。
【0052】
(実施例2,3)
  次に、実施例2,3の空気入りタイヤについて説明する。
  実施例2の空気入りタイヤのトレッドパターン10は、内側ショルダー領域が
図2(a)に示されるような5種類のピッチ種を有する第1ピッチ配列で形成されている。また、外側ショルダー領域が
図2(b)に示されるような5種類のピッチ種を有する第2ピッチ配列で形成されている。また、実施例2の空気入りタイヤのトレッドパターン10は、センター領域が
図3(a)に示されるような3種類のピッチ種を有する第3ピッチ配列で形成されている。
【0053】
  実施例3の空気入りタイヤのトレッドパターン10は、内側ショルダー領域が
図2(a)に示されるような5種類のピッチ種を有する第1ピッチ配列で形成されている。また、外側ショルダー領域が5種類のピッチ種を有する
図2(b)に示されるような第2ピッチ配列で形成されている。また、実施例3の空気入りタイヤのトレッドパターン10は、センター領域が
図3(b)に示されるような6種類のピッチ種を有する第4ピッチ配列で形成されている。
【0054】
  比較例1,2、実施例2,3の空気入りタイヤにおけるパターンノイズ性能、耐ヒール・アンド・トゥ摩耗性の試験結果を表2に示す。
【表2】
【0055】
  表2の結果から、実施例2の空気入りタイヤでは、第1ピッチ配列のピッチ配列が内側ショルダー領域に形成され、第2ピッチ配列のピッチ配列が外側ショルダー領域に形成され、第3ピッチ配列のピッチ配列がセンター領域に形成されるため、耐ヒール・アンド・トゥ摩耗性能がより向上することが分かる。
  また、実施例3の空気入りタイヤでは、第1ピッチ配列のピッチ配列が内側ショルダー領域に形成され、第2ピッチ配列のピッチ配列が外側ショルダー領域に形成され、第4ピッチ配列のピッチ配列がセンター領域に形成されるため、耐ヒール・アンド・トゥ摩耗性能がより向上することが分かる。
【0056】
  以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。