(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の吸収性物品を実施するための形態について、テープ型使い捨ておむつの例により具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える吸収性物品(例えば、パンツ型使い捨ておむつ、尿取りパッド等)を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
[1]本発明の吸収性物品の基本的な構成:
本発明は、
図1A〜
図1Cに示す吸収性物品1Aのような吸収体22Aと吸収体22Aを被包する吸収体被包シート50Aを備える吸収性物品に関するものである。本発明の吸収性物品は、
図1D及び
図1Eに示すようにフラッフパルプと高吸水性ポリマーを含む吸収体22Aと、吸収体22Aの表面S1、両側面S3,S4及び裏面S2を被包する吸収体被包シート50Aを備えるものである。
【0024】
[1−1]吸収体:
「吸収体」は、着用者の排泄物(尿等)を吸収し保持する部材であり、吸収材によって構成されている。通常の吸収性物品の場合、尿等の排泄物を吸収する性質がある限り、吸収材の種類について制限はない。但し、本発明の吸収性物品に用いる吸収体はフラッフパルプと高吸水性ポリマーの双方を含んでいる必要がある。吸収速度と吸収量の双方に優れた吸収性物品とするためである。
【0025】
「フラッフパルプ」とはパルプを綿状に解繊したものである。解繊するパルプは木材パルプでも非木材パルプでもよい。木材パルプとしては、針葉樹由来のパルプが好ましい。但し、広葉樹、わら、竹又はケナフ等に由来するパルプを用いることもできる。
【0026】
「高吸水性ポリマー」とは、架橋構造を持つ親水性のポリマーで、自重の10倍以上の吸水力があり、圧力をかけても離水し難いものを指す(Super Absorbent Polymer:以下「SAP」と記す)。
【0027】
SAPとしては、従来公知のSAP、例えば、A)デンプン系(デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリル酸エチルグラフト共重合体のケン化物等);B)セルロース系(ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物等);C)合成樹脂系(アクリル酸(塩)重合体、ポリビニルアルコール−無水マレイン酸反応物の架橋物等)等を用いることができる。これらは単独で又は二種以上を混合して用いることができる。前記SAPの中でも、吸水性能が高いポリアクリル酸ナトリウムを用いることが好ましい。
【0028】
フラッフパルプの量について特に制限はない。但し、50〜250g/m
2とすることが好ましい。50g/m
2以上とすることにより、即時の吸収性(吸収速度)に優れる吸収性物品を構成することができる。一方、250g/m
2以下とすることにより、吸収体を薄型化することができる。これらの効果をより確実に得たい場合には、フラッフパルプの量を50〜150g/m
2とすることが更に好ましい。
【0029】
SAPの量も特に限定されない。但し、フラッフパルプ100質量部に対して80〜500質量部(フラッフパルプ:SAP=1:0.8〜5)とすることが好ましい。80質量部以上とすることにより、フラッフパルプの量を減じても吸収体全体の吸収量が低下し難い。一方、500質量部以下とすることにより、吸収体の吸収速度が極端に低下し難い。これらの効果をより確実に得たい場合には、120〜500質量部(フラッフパルプ:SAP=1:1.2〜5)とすることが更に好ましい。
【0030】
なお、本発明において用いる吸収体は、フラッフパルプとSAPを含む限り、他の吸収材を更に含んでいてもよい。他の吸収材としては、ティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布等の親水性シートを用いることができる。
【0031】
吸収体におけるSAPとフラッフパルプの配置形態としては、A)フラッフパルプのマット内部にSAPを分散させる、B)フラッフパルプのマットが複数積層された積層体において前記マットの層間にSAPを層状に配置する等の形態を採用することができる。
【0032】
吸収体の厚さは特に限定されない。但し、1〜6mmとすることが好ましい。1mm以上とすることにより、吸収体に十分な吸収性能を発揮させることができる。一方、6mm以下とすることにより吸収体を薄型化することができる。これらの効果をより確実に得たい場合には、吸収体の厚さを1〜3mmとすることが更に好ましい。
【0033】
吸収体の平面形状は特に限定されない。従来公知の吸収性物品と同様の形状を採用することができる。例えば
図1Dに示すような矩形状の吸収体22A、
図7に示すような砂時計型の吸収体22F等を挙げることができる。「砂時計型」とは、砂時計を正面側から平面視した場合の平面形状の意である。即ち、吸収体を平面視した場合に長手方向の両端部が幅広く、長手方向の中央部が括れて幅狭くなっている形状を指す。
【0034】
[1−2]吸収体被包シート:
「吸収体被包シート」は、吸収体に含まれるSAPが外部に脱落することを防止し、SAPが吸収性物品の外部に漏れることを防止し、また、吸収体の型崩れを防止するためのシート材である。
【0035】
シート材の材質は特に限定されない。但し、尿等の排泄物を吸収体に吸収させ得るものである必要がある。通常は、吸収体の項で例示した親水性シート、後にトップシートの項で説明する液透過性シート等と同様の材質が用いられる。
【0036】
図1Bに示すように、吸収体被包シート50Aは吸収体22Aの表面S1、両側面S3,S4及び裏面S2を被包している。「表面」とは吸収体の外面のうち、吸収性物品の使用時に着用者の股下と対向する側の面を指す。通常はトップシートと対向する面となる。「裏面」とは吸収体の外面のうち、吸収性物品の使用時に着用者の股下と背向する側の面を指す。通常はバックシートと対向する面となる。「両側面」とは吸収体の外面のうち、吸収性物品の幅方向の外側(右側及び左側)に向く面を指す。
【0037】
吸収体被包シートは、吸収体の少なくとも表面、両側面及び裏面を被包するものであればよい。但し、
図1D及び
図1Eに示すように吸収体22Aの表面S1、両側面S3,S4及び裏面S2に加えて、吸収体22Aの両端面S5,S6を被包するものであってもよい。「両端面」とは吸収体の外面のうち、吸収性物品の装着時に吸収性物品の前後方向(幅方向と直交する方向)の前側ないし後側を向く面を指す。
【0038】
図1D及び
図1Eに示す例では積層された吸収体被包シート50Aの両端部を接合部62によって接合し封着している。これにより、吸収体22Aの両端面S5,S6が露出しないように被包される。
【0039】
吸収体の被包の形態は特に限定されない。例えば
図1D及び
図1Eに示すように吸収体被包シート50Aを上シート52Aと下シート54Aの2枚で構成し、吸収体22Aの表面S1上で上シート52Aと下シート54Aを接合する形態を挙げることができる。また、
図3A及び
図3Bに示すように1枚の吸収体被包シート50Bで吸収体22Bを包むように構成してもよい。
【0040】
[2]本発明の吸収性物品の特徴的な構成:
通常の吸収性物品の場合、
図2Bに示すように吸収体被包シート(ティシュ150)を吸収体122の表面S1、両側面S3,S4及び裏面S2に対して密着させて配置し、ティシュ150により吸収体122をしっかり包む形態が一般的である。しかし、この形態を薄型吸収体等のSAP比率が高い吸収体に適用した場合、SAPの膨潤が妨げられたり、SAPの膨潤に伴う吸収体の膨張によって吸収体被包シートが破断されたりするおそれがある。
【0041】
そこで、本発明の吸収性物品においては、
図1D及び
図1Eに示すように吸収体被包シート50Aを吸収体22Aの両側縁E1,E2から更に幅方向外側に延出させて袋部60Aを形成することとした。
【0042】
前記のような構造とすれば、
図1Fに示すように袋部60Aの内部空間に膨潤したSAPの膨潤に伴って膨張した吸収体22Aを受け入れることができる。従って、1)SAPの膨潤が妨げられて、SAPの吸収性能を十分に発揮することができなくなる、2)SAPの膨潤に伴う吸収体の膨張によって吸収体被包シートが破断される等してSAPが吸収性物品の外部に漏れる、等の不具合を有効に防止することができる。
【0043】
前記袋部は吸収体側縁方向のみが開口され、他の方向は封着されている。従って、前記袋部によって前記吸収体の両側面が被包されていることになる。しかし、前記袋部を形成するのみでは、吸収体の両側面が吸収体被包シートによってしっかり包まれていない状態となり、吸収体の型崩れを防止することができない。
【0044】
そこで、本発明においては、
図1D及び
図1Eに示すように袋部60Aの側縁E3(E4)と側縁E3(E4)に近い方の吸収体22Aの側縁E1(E2)との間に、袋部60Aを構成する吸収体被包シート50A同士を相互に接合する、剥離可能な弱接合部56Aを形成することとした。
【0045】
なお、本明細書中では前記のような弱接合部を形成する形態を「第1の実施形態」と称する場合がある。一方、後述するような弱接合部に代えて間欠的な接合部を形成する形態を「第2の実施形態」と称する場合がある。
【0046】
図1Bに示すようにSAPが湿潤し、膨潤する前の状態においては、吸収体被包シート50Aが、弱接合部56Aによって吸収体22Aの両側面S3,S4と密着するように押さえつけられている。従って、吸収体22Aの型崩れを防止する効果がある。一方、尿等の排泄物によってSAPが湿潤して膨潤し、これに伴って吸収体が膨張すると、
図1Fに示すように膨張した吸収体22Aによって弱接合部が押し広げられて剥離される。従って、袋部60Aの内部空間に膨張した吸収体22Aが受け入れられ、SAPの膨潤及びこれに伴う吸収体22Aの膨張が妨げられることがない。
【0047】
「袋部」とは、内部空間とこれに連通する開口が形成された袋状の部分を指す。本発明の吸収性物品においては、
図1D及び
図1Eに示すように吸収体被包シート50Aのうち吸収体22Aの両側縁E1,E2から更に幅方向外側に延出された部分によって、吸収体22Aの側縁E1,E2方向を開口部とする袋部60Aが形成される。より具体的には吸収体被包シートが少なくとも2層積層され、その2層の吸収体被包シートの周縁部が一方向(即ち開口の方向)を除いて封着されることによって袋部が形成される。
図1D及び
図1Eに示すように袋部60Aは吸収体22Aを中心として左右一対形成される。そして、各々の袋部60Aは吸収体22Aの側縁E1,E2に向かってその内部空間が開口されるように形成されている。
【0048】
「弱接合」とは、膨張した吸収体によって力が加わった際に初めて剥離される程度の強度による接合を意味する。その剥離力は特に限定されない。但し、前記弱接合部は、180°ピールの剥離力が0.3〜3.0N/25mmの範囲内で、前記吸収体被包シート同士が相互に接合されたものであることが好ましい。剥離力を0.3N/25mm以上とすることによりSAPが湿潤し、膨潤する前の状態において吸収体の型崩れを防止するという効果を得られる。一方、剥離力を3.0N/25mm以下とすることによりSAPの膨潤に伴って吸収体が膨張した際に弱接合部が剥離されるという効果を得られる。
【0049】
ここに言う「剥離力」は、JIS Z0237に記載の方法に準拠して測定した値を意味するものとする。具体的には、25mm幅、引張速度200mm/分、180°ピールの条件下で測定した剥離力である。
【0050】
弱接合の方法は特に限定されない。従来公知の接合方法、例えば熱融着(ヒートシール)、超音波融着、接着剤による接着等を採用することができる。剥離力は、熱融着であれば融着温度、凸型にかける押圧力、凸型−凹型間のクリアランス等によって調整することができる。超音波融着の場合は超音波振動の周波数、増幅率、ホーン−アンビル間のクリアランス等によって、接着剤による接着の場合は接着剤の種類や塗布量、塗布方法等により適宜調整することができる。
【0051】
なお、接着剤の塗布方法としては、スリットコーター(シムコーター)の接触方式による塗布方法、カーテンスプレー、スパイラルスプレー、オメガコート、サミット等の非接触方式の塗布方法等により実施することができる。なお、オメガコートは、例えばオメガノズルヘッド(ITWダイナテック社製)を用いることにより、サミットは、例えばサミットノズル(ノードソン社製)を用いることにより実施することができる。
【0052】
接着剤の種類は特に限定されるものではなく、従来、吸収性物品の製造に用いられてきた接着剤を用いればよい。例えばホットメルト接着剤等の流動性の高い接着剤を好適に用いることができる。
【0053】
図1Dに示すように弱接合部56Aは、吸収体22Aの両側縁E1,E2に沿って形成されている必要がある。吸収体22Aの両側面S3,S4を吸収体被包シート50Aによって押さえ込み、吸収体22Aの型崩れを防止するためである。
【0054】
「吸収体の両側縁に沿って」とは、「吸収体の両側縁と並行するように」の意味である。具体的には、
図1D及び
図1Eに示すように吸収体22Aの側縁E1(E2)と側縁E3(E4)の間の領域において、吸収体22Aの両側縁E1,E2と並行するように弱接合部56Aが形成される。
【0055】
本発明の吸収性物品においては、前記弱接合部と、当該弱接合部に隣接する前記吸収体被包シートの側縁との間隔が5〜20mmの範囲内であることが好ましい。前記間隔を5mm以上とすることにより、SAPの膨潤及びこれに伴う吸収体の膨張を阻害し難いという効果を得ることができる。一方、前記間隔を20mm以下とすることにより、吸収体の型崩れを防ぐ効果を得ることができる。前記の効果をより確実に得るためには、前記間隔を5〜15mmとすることが更に好ましく、前記弱接合部が、前記袋部の側縁に近い方の前記吸収体の側縁に隣接するように形成されていることが特に好ましい。「隣接するように」とは、吸収体の側縁と弱接合部との間に隙間がないことを意味する。これらの構成が好ましい点は後述する第2の実施形態の間欠的な接合部についても同様である。
【0056】
また、
図7に示すように弱接合部56Fは、少なくとも吸収体22Fの長手方向中央部に対応する位置に形成されていれば足りる。排泄物は吸収性物品の股下近傍に集まるため、この部分におけるSAPの膨潤及びこれに伴う吸収体の膨張が最も大きいからである。但し、
図1Dに示すように弱接合部56Aを吸収体22Aの長手方向全域に対応する位置に形成することが好ましい。
図1Dに示すような形態は吸収体22Aの型崩れを防止する効果が高いという利点がある。
【0057】
なお、「吸収体の長手方向中央部に対応する位置」とは、平面視した吸収体をその長手方向の全長を基準に3等分した場合の中央部(両端部以外の部分)に対応する位置を意味する。
【0058】
弱接合部の接合パターンは特に限定されない。以下、接合パターンの例を幾つか示す。
【0059】
図1D及び
図1Eに示す弱接合部56A、
図3A及び
図3Bに示す弱接合部56Bは帯状の弱接合部を形成した形態である。これらの形態では、吸収体22A,22Bの長手方向全域に対応する位置に連続的に弱接合部56A,56Bが形成されている。これらの形態は吸収体の型崩れを防止し、吸収性の形状を安定化させる効果が高いという利点がある。また吸収体の形状が安定化すると、吸収体の変形に伴って吸収体からSAPが零れ落ちることも防止することができるため好ましい。
【0060】
図4に示す弱接合部56Cは
図1Dに示す帯状の弱接合部56Aに代えて、当該帯状の領域にドット状の弱接合部56Cを千鳥状に形成した形態である。この形態も、吸収体22Cの長手方向全域に対応する位置に弱接合部56Cが形成されている。このような形態は
図1D、
図3Aに示す形態には劣るものの吸収体22Cの型崩れを防止し、吸収体22Cの形状を安定化させる効果がある。
【0061】
また、弱接合部56Cのように吸収体22Cの前後方向に向かって間欠的に形成されていると、連続的に形成された弱接合部と比較して、吸収体が膨張した際に弱接合部を容易に剥離させることができる。従って、SAPの膨潤が妨げられることはなく、SAPの膨潤に伴う吸収体の膨張によって吸収体被包シートが破断される等の不具合も生じ難い。
図4に示すようなドット状の弱接合部56Cに代えて、直線状の接合部を間欠的に形成しても同様の効果を得ることができる。
【0062】
ドット状の弱接合部の形状としては、矩形、多角形、円形、楕円形、曲線又は幾何学模様等の形状を単独で、又は適宜組み合わせることができる。ドット状の弱接合部は
図4に示すように千鳥に配置する他、行列状に配置してもよい。
【0063】
参考例として、図5に示す弱接合部56Dは
図1Dに示す帯状の弱接合部56Aに代えて、当該帯状の領域に直線状の弱接合部56Dを複数本形成した形態である。この形態も、吸収体22Dの長手方向全域に対応する位置に弱接合部56Dが形成されている。このような形態は
図1D、
図3Aに示す形態には劣るものの、
図4に示す形態と同程度に吸収体22Dの型崩れを防止し、吸収体22Dの形状を安定化させる効果がある。
【0064】
参考例として、図6に示す弱接合部56Eは
図5に示す複数の直線状の弱接合部56Dに代えて、直線状の弱接合部56Eを左右各1本形成した形態である。この形態も、吸収体22Dの長手方向全域に対応する位置に弱接合部56Dが形成されている。このような形態では弱接合部56Eを吸収体22Eの両側縁E1,E2に隣接するように形成することで、
図5に示す形態と同程度に吸収体22Eの型崩れを防止し、吸収体22Eの形状を安定化させる効果を得ることができる。即ち、
図5に示す弱接合部56Dより弱接合部の形成面積が小さくても同等の効果を得ることができる。
【0065】
参考例として、弱接合部を吸収体の長手方向中央部に対応する位置だけに形成してもよい。特に
図7に示すような砂時計型の吸収体22Fについては、排泄物が集まり易い長手方向中央部に幅広な弱接合部56Fを形成することができる。幅広な弱接合部56Fは吸収体22Fが膨張した際にその吸収体を受け入れる内部空間の容積を大きくとることができる。
【0066】
図7に示す弱接合部56Fは、砂時計型の吸収体22Fの長手方向中央部に対応する位置に、
図1Dに示す弱接合部56Aと同様の形態を適用した例である。また、
図8に示す弱接合部56Gは、砂時計型の吸収体22Gの長手方向中央部に対応する位置に、
図4に示す弱接合部56Cと同様の形態を適用した例である。
【0067】
更に、
図9に示す弱接合部56Hは、砂時計型の吸収体22Hの長手方向中央部に対応する位置に、
図5に示す弱接合部56Aと同様の形態を適用した例である。更にまた、
図10に示す弱接合部56Iは、砂時計型の吸収体22Iの長手方向中央部に対応する位置に、
図6に示す弱接合部56Eと同様の形態を適用した例である。
【0068】
吸収体被包シートに剥離可能な弱接合部を形成することに代えて、
図11に示すように吸収体被包シート50Jに通常の接合部66を間欠的に形成してもよい。この形態では、接合部66が剥離されるのではなく、間欠的に形成された接合部66の間から膨張した吸収体が袋部60Jに進入する。従って、吸収体被包シートに剥離可能な弱接合部を形成した場合と同様にSAPの膨潤及びこれに伴う吸収体の膨張を阻害し難い。
【0069】
前記接合部は、
図11に示すように複数の線状の接合部66が吸収体22Jの両側縁E1,E2に沿って間欠的に形成されていることが好ましい。この形態は活動が活発な着用者(例えば乳幼児等)に対して使用した場合でも、排泄物によるSAPの湿潤・膨潤に伴って吸収体が膨張する前に意図せず接合部が剥離することはない。従って、SAP膨潤前における吸収体の型崩れ防止効果に優れる。
【0070】
この間欠的に形成された接合部においては、線状の接合部66の長さは1〜10mmであることが好ましい。前記長さを1mm以上とすることにより、十分な接合強度を得られる。一方、前記長さを10mm以下とすることにより、SAPの膨潤及びこれに伴う吸収体の膨張を阻害し難い。
【0071】
また、線状の接合部66同士の間に形成される非接合部の長さは1〜20mmの範囲内のものであることが好ましい。前記長さを1mm以上とすることにより、SAPの膨潤及びこれに伴う吸収体の膨張を阻害し難い。一方、前記長さを20mm以下とすることにより、十分な接合強度を得られる。
【0072】
この間欠的に形成された接合部は、線状の接合部66と、非接合部の長さの比が1:1〜1:10の範囲内であることが好ましい。前記長さの比を1:1以上とすることにより、SAPの膨潤及びこれに伴う吸収体の膨張を阻害し難い。一方、前記長さの比を1:10以下とすることにより、十分な接合強度を得られる。
【0073】
[3]その他:
本発明の吸収性物品の他の部分については、従来公知の吸収性物品と同様に構成すればよい。以下、
図1A〜
図1Cに示す吸収性物品1A(テープ型使い捨ておむつ)を例として説明する。
【0074】
図1A〜
図1Cに示す吸収性物品1Aは、吸収体22Aがその表面側をトップシート18によって被覆されるとともに、その裏面側をバックシート20によって被覆されている。即ち、吸収体22Aがトップシート18とバックシート20の層間に配置されている。
【0075】
[3−1]トップシート:
トップシートは、吸収体の表面(吸収性物品の装着時に着用者の肌と対向する側の面)を被覆するように配置されるシート状部材である。着用者の尿等を透過させる必要から、その少なくとも一部(全部又は一部)が液透過性材料により構成される。
【0076】
前記液透過性材料としては、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、脂肪族ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0077】
前記不織布としては、エアースルー(カード熱風)、カードエンボス等の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。前記親水化処理は、不織布の原綿に対して界面活性剤を塗布、スプレー、含浸等させることにより行うことができる。
【0078】
トップシートは「少なくとも一部」が液透過性材料によって構成されている。その位置については特に限定されないが、平面視した場合に股下部における吸収体の配置位置と重畳する部分が液透過性材料により構成されていることが好ましい。
【0079】
なお、本発明の吸収性物品は、着用者の肌と対向する側の面全てがトップシートによってカバーされている必要はない。例えば、テープ型使い捨ておむつにおいては、吸収性物品の幅方向中央部に液透過性材料からなるトップシートを配置し、吸収性物品の幅方向側縁部(サイドフラップ部分)には通気撥水性材料からなるサイドシートを配置する形態がよく用いられる。この際、前記通気撥水性材料としてはカードエンボス、スパンボンド等の製法により得られた不織布シート、特に防水性が高いSMS、SMMS等の不織布シートを用いることが好ましい。
【0080】
[3−2]バックシート:
バックシートは、吸収体の裏面(吸収性物品の装着時に着用者の肌と背向する側の面)を被覆するように配置されるシート状部材である。バックシートは、着用者の尿が吸収性物品外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成される。
【0081】
バックシートの配置位置については特に制限はない。吸収体に吸収された尿の漏れを防止するという観点から、少なくとも吸収体の配置位置をカバーするようにバックシートが配置されていることが好ましい。
【0082】
前記液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができる。中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されたフィルムであり、液不透過性ではあるが透湿性を有する。従って、防漏性を確保しつつ吸収性物品内部の蒸れを防止することができる。
【0083】
テープ型使い捨ておむつにおいては、
図1Cに示すようにバックシート20の外表面側にカバーシート24を貼り合わせる形態がよく用いられる。このカバーシートは、バックシートを補強し、バックシートの手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。
【0084】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0085】
[3−3]各種伸縮材:
本発明の吸収性物品には、ウエスト伸縮材に加えて、レッグ伸縮材等の伸縮材を配置することが好ましい。
【0086】
レッグ伸縮材は、レッグギャザーを形成するための伸縮材である。テープ型使い捨ておむつの場合、
図1A〜
図1Cに示すレッグ伸縮材40のように少なくとも股下部4に左右複数対の線状伸縮材を平行する直線状に配置する形態がよく用いられる。
【0087】
伸縮材としては、天然ゴムからなる平ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性糸からなる糸ゴムの他、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を好適に用いることができる。
【0088】
伸縮材は、着用者に対して過度の締め付け力を作用させることなく、十分な伸縮力を作用させるため、伸張状態で固定する。伸縮材は、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着によって固定することができる。
【0089】
「伸張状態で固定」とは、伸縮材が伸張率120%以上に伸張された状態で、被固定体となるシート材に接合、固着等されていることを意味する。中でも、伸張率が200〜400%であることが好ましく、250〜350%であることが更に好ましい。なお、「伸張率」とは、非伸張状態の伸縮材の長さ(原寸)に対する伸張状態の伸縮材の長さの百分率を示すものとする。
【0090】
テープ型使い捨ておむつの場合、
図1A〜
図1Cに示すようにトップシート18(又はサイドシート19)とバックシート20(又はカバーシート24)の層間に、伸張状態の線状伸縮材を挟み込むように固定する等の方法でレッグ伸縮材40を配置することができる。
【0091】
また、
図1A〜
図1Cに示すようにトップシート18(又はサイドシート19)とバックシート20(又はカバーシート24)の層間に、伸張状態の面状伸縮材(伸縮性フォーム等)を挟み込むように固定する等の方法でウエスト伸縮材42を配置することができる。
【0092】
[3−4]立体ギャザー:
立体ギャザーは、従来の吸収性物品に準じて構成することができる。
図1A〜
図1Cに示すように、吸収体22Aの両側に配置された左右一対の立体ギャザー26(26a,26b)を備えていることが好ましい。
【0093】
テープ型使い捨ておむつの場合、
図1A〜
図1Cに示すように撥水性シート32からなるサイドシート19の一部によって立体ギャザー26を構成する形態が多く用いられる。
【0094】
この場合、撥水性シート32の層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材36を挟み込んで固定すればよい。撥水性シートとしては、カードエンボス、スパンボンド等の製法により得られた不織布シート、特に防水性が高いSMS、SMMS等の不織布シートを用いることが好ましい。
【0095】
立体ギャザーの種類としては、内倒しギャザー、外倒しギャザー、高さ方向の一部に、曲げ部や折り返し部を形成したC折りギャザーやZ折りギャザー等を挙げることができる。これらの中では、防漏性が高い点において、例えば、
図5B及び
図5Dに示す立体ギャザー26A,26Bのような内倒しギャザーが好ましい。
【0096】
[3−5]止着テープ:
テープ型使い捨ておむつの場合、
図1A〜
図1Cに示すように後身頃6の左右の各側縁6a,6bから延出するように配置された、前身頃2と後身頃6とを固定するための止着テープ11を備えたものが好適に用いられる。
【0097】
止着テープのファスニング部材は特に限定されない。但し、止着力が高く、複数回の脱着を行っても止着力が低下し難いメカニカルファスナー(面状ファスナー)を用いることが好ましい。
図1A〜
図1Cに示す吸収性物品1Aは、ファスニング部材46として止着テープ11の先端近傍にメカニカルファスナーのフック材47を付設している。一方、前身頃2にはメカニカルファスナーのループ材48からなるフロントパッチ13を付設している。
【0098】
止着テープの数は特に限定されず、着用者の体型(具体的には、ウエスト周り、脚周り等)の寸法に合わせて、適当な数の止着テープを付設すればよい。一般的には、乳幼児用の使い捨ておむつであれば一対(左右1個ずつ)、成人用の使い捨ておむつであれば二対(左右2個ずつ)が付設される。