特許第5712651号(P5712651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5712651
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】電子機器のユニットケース
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/03 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   H05K5/03 G
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-24612(P2011-24612)
(22)【出願日】2011年2月8日
(65)【公開番号】特開2012-164842(P2012-164842A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2014年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150441
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】新谷 貴範
【審査官】 遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−346315(JP,A)
【文献】 実開昭60−018624(JP,U)
【文献】 特開2004−056968(JP,A)
【文献】 特開2007−335491(JP,A)
【文献】 実開平05−091123(JP,U)
【文献】 特開2000−316219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製の箱形ケースと、該箱形ケースに内嵌めした中仕切カバーと、前記箱形ケースの開口端面に外嵌めしたトップカバーとの組立体からなり、その内部に回路部品を搭載した電子機器のユニットケースにおいて、
前記箱形ケースの開口端の周面に嵌合フランジ部を形成し、
前記トップカバーの外周縁に沿って外嵌めフランジ部を形成し、
前記箱形ケースの側壁に対向して中仕切カバーの左右側縁に、前記箱形ケースへの内嵌め位置で該ケースの側壁面を外側へ押圧するようにばね弾性を付与した矯正鍔部を形成し
前記中仕切カバーの左右側縁に形成した矯正鍔部間の外法寸法を、前記箱形ケースの内法基準寸法よりも大に設定し、
前記箱形ケースに前記中仕切カバーを内嵌めした状態で前記トップカバーを外嵌めする際に前記嵌合フランジ部が前記外嵌めフランジ部により外側から内側へ押される寸法に設定したことを特徴とする電子機器のユニットケース。
【請求項2】
請求項1に記載のユニットケースにおいて、中仕切カバーの側縁に形成した矯正鍔部は、その断面形状が略V字形の条片であることを特徴とする電子機器のユニットケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用インバータ,サーボアンプなどの電子機器に適用するプラスチック製ユニットケースの組立構造に関する。
【背景技術】
【0002】
頭記の汎用インバータを対象に、その回路部品を搭載した取付基板に上部プラスチックカバー,左右の側面プラスチックカバー,および前面プラスチックカバーを組み合わせて回路部品を包囲するユニットケースを構成した電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、汎用インバータのユニットケースをプラスチック製の箱形ケースと、該箱形ケースに内嵌めした中仕切カバーと、箱形ケースの開口端面に外嵌めして被せたトップカバーとの組立体で構成した防水仕様の製品も開発されており、次にそのユニットケースの構造を図4図5に示す。図において、ユニットケース1はパワー半導体モジュールおよびそのヒートシンク(不図示)を搭載して風胴を形成する後部ケース2と、各種の回路部品(不図示)を搭載して後部ケース2の前部に結合した有底の箱形ケースになる中間ケース3と、該中間ケース3の中段位置に内嵌めして内装した中仕切用の中間カバー4と、後部ケース2の開口端面に外嵌めして取付けた前面カバー(トップカバー)5との組立体になり、これらのケースを図示のように組み合わせてユニットケース1を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−191965号公報(図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記したプラスチック製のユニットケースは、そのモールド成形過程で生じる成形収縮,残留歪みに起因してケースに反り変形が発生し、特に長方形の箱形形状になる中間ケース3については、図6(a)に示す設計の原型に対して、モールド成形品には図6(b)で示すような内反りが生じてケースの左右側壁3aの端縁が内側に向けて凹状に湾曲するようになる。しかも、この様な内反りが中間ケース3に生じていると、ケースの内側に近接して搭載する回路部品の組み付けに障害となるほか、中間ケース3にトップカバー5を外嵌めしたユニットケースの組立状態ではケース周縁部分に不要な隙間が残り、このままではユニットケースの防水機能が損なわれてしまう。
【0006】
そこで、従来では中間ケース3に内反りが生じないように側壁3aにリブを設けたり、プラスチック材料,金型温度,成形圧力などの成形加工条件を厳密に管理することで対応しているがこれには多額な費用を要するために製品がコスト高となる。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、プラスチック製の箱形ケースには成形加工に伴う内反り変形が発生するのを前提として、箱形ケースのモールド成形により生じた内反り変形をユニットケースの組立段階で矯正できるように改良した電子機器のユニットケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によれば、プラスチック製の箱形ケースと、該箱形ケースに内嵌めした中仕切カバーと、前記箱形ケースの開口端面に外嵌めしたトップカバーとの組立体からなり、その内部に回路部品を搭載した電子機器のユニットケースにおいて、前記箱形ケースの開口端の周面に嵌合フランジ部を形成し、前記トップカバーの外周縁に沿って外嵌めフランジ部を形成し、前記箱形ケースの側壁に対向して中仕切カバーの左右側縁に、前記箱形ケースへの内嵌め位置で該ケースの側壁面を外側へ押圧するようにばね弾性を付与した矯正鍔部を形成し、前記中仕切カバーの左右側縁に形成した矯正鍔部間の外法寸法を、前記箱形ケースの内法基準寸法よりも大に設定し、前記箱形ケースに前記中仕切カバーを内嵌めした状態で前記トップカバーを外嵌めする際に前記嵌合フランジ部が前記外嵌めフランジ部により外側から内側へ押される寸法に設定する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、モールド成形に伴って内反り変形が生じた箱形ケースに中仕切カバーを押し込んで内嵌めすると、該中仕切カバーの側縁に形成したばね性の矯正鍔部が箱形ケースの側壁を外側に押圧付勢して内反りが矯正される。また、この状態から箱形ケースの開放端面にトップカバーを外嵌めすると、中仕切カバーの矯正鍔部によって外側へ余分押し広げられたケース側壁は、逆に内側に押し戻されて箱形ケースの開放端周縁とトップカバーの周縁とが隙間無しに密着し、これによりユニットケースとして変形の少ない寸法精度と併せて高い防水性を確保できる。
【0010】
さらに、安価なプラスチック材料を使い、モールド成形の加工管理も緩和して製品のコスト低減化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】汎用インバータに適用する本発明実施例のユニットケースの組立図であって、(a)は中仕切用の中間カバー、(b)は中間カバーを箱形ケースになる中間ケースに内嵌めした組立段階の状態を表す断面図である。
図2】中間カバーを内嵌めした中間ケースと該ケースの開放端面に外嵌めする表面カバーとの相間関係を表す断面図である。
図3図2における中間ケースに表面カバーを外嵌めした組立状態を表すユニットケースの要部断面図である。
図4】防水仕様の汎用インバータに採用するプラスチック製ユニットケースの外形斜視図である。
図5図4における中間ケースと中間カバーとの分解斜視図である。
図6】中間ケースのモールド成形により生じた反り変形を表す図であって、(a),(b)はそれぞれはケースの原型,成形品の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1図3に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図4図5に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
図示実施例のユニットケースは、図4に示した汎用インバータのプラスチック製ユニットケース1の組立構造と基本的に同様であるが、その中間ケース(箱形ケース)3に内嵌めして内装する中間カバー(中仕切カバー)4については、図1(a),(b)で示すように中間ケース3への内嵌め位置で該ケースの左右側壁3aを外側に向けて押圧付勢するようにばね弾性を付与した矯正鍔部4aがカバーの左右側縁に一体成形されている。ここで、矯正鍔部4aは図示のように断面形状が略V字形になるヒレ状の条片になり、この左右の矯正鍔部4aを含めた中間カバー4の外法寸法dは、中間ケース3の内法基準寸法Dよりも大(d>D)に設定して成形加工されている。
【0013】
一方、図2において、表面カバー(トップカバー)5にはその外周縁に沿って外嵌めフランジ部5aが形成されている。また、このフランジ部5aに対向して中間ケース3の開口端の周面には嵌合フランジ部3bが形成されている。なお、この嵌合フランジ部3bの表面には外方から雨水の水滴がケース内に浸入するのを防ぐように複数条の排水溝3c(図3参照)が形成されている。
【0014】
そして、図1(b)で示すように前記の中間カバー4を中間ケース3の中に押し込むと、該中間カバー4の左右側縁に形成した断面V字形の矯正鍔部4aが中間ケース3の側壁3aの内面に当接して撓み、そのばね反力Fが中間ケース3の左右側壁3aを外側に向けて押し広げるように押圧付勢する(矢印P)。これにより、モールド成形に伴って中間ケース3の側壁3aに生じた内反りの変形(図6(b)参照)が矯正される。
【0015】
次に、図1(b)の組立状態から図2のように中間ケース3の開口端面に表面カバー5を外嵌めすると、中間カバー4の矯正鍔部4aに押圧されて外側へ余分押し広げられた中間ケース3の側壁3aは、逆に表面カバー5の外嵌めフランジ部5aにより外側から内側へ押し戻されて表面カバー5の外嵌めフランジ部5aと中間ケース3の嵌め合いフランジ部3bとの間が隙間無しに重なり合うようになる。これにより、インバータのユニットケースとして、高い寸法精度と防水性が確保される。
【0016】
なお、図示実施例は汎用インバータに適用するユニットケースについて述べたが、これに限定されるものではなく、他の電子機器に適用するプラスチック製ユニットケースにも同様に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0017】
1 ユニットケース
3 中間ケース(箱形ケース)
3a 側壁
4 中間カバー(中仕切カバー)
4a 矯正鍔部
5 表面カバー(トップカバー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6