【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0063】
1.評価方法
1−1.ラミネートガスバリア性積層フィルムの作製
ガスバリア性積層フィルムNo.1〜23のガスバリア性樹脂組成物層(No.16ではアンカーコート層)の上に、ウレタン系2液硬化型接着剤を用いたドライラミネート法により、熱接着性樹脂として無延伸ポリプロピレンフィルム(「P1147」(厚さ70μm)、東洋紡績社製)を貼り合わせ、40℃にて4日間エージングしてラミネートガスバリア性積層フィルムを得た。なお、乾燥後の接着剤層の厚さは3μmであった。
【0064】
1−2.水蒸気透過度測定
ラミネートガスバリア性積層フィルムについて、JIS K7129 B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(「PERMATRAN−W 3/33MG」、MOCON社製)を用い、温度40℃、湿度100%RHの雰囲気下で水蒸気透過度を測定した。なお、ガスバリア性積層フィルムへの調湿は、プラスチックフィルム側からガスバリア性樹脂組成物層側に水蒸気が透過する方向とした。また、上記ラミネートガスバリア性積層フィルムに対して、温度121℃、気圧0.2MPa(2kgf/cm
2)で30分間のレトルト処理を施した後、40℃にて1日間乾燥させたものについても、同様に水蒸気透過度を測定した。
【0065】
1−3.酸素透過度
ラミネートガスバリア性積層フィルムについて、JIS K7126−1(2006)付属書1に準じて、酸素透過度測定装置(「OX−TRAN 2/20」、MOCON社製)を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で酸素透過度を測定した。また、上記ラミネートガスバリア性積層フィルムに対して、温度121℃、気圧0.2MPa(2kgf/cm
2)で30分間のレトルト処理を施した後、40℃にて1日間乾燥させたものについても、同様に酸素透過度を測定した。
【0066】
1−4.ラミネート強度の測定方法
ラミネートガスバリア積層フィルムを幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、テンシロン万能材料試験機(「テンシロン UMT−II−500型」、東洋ボールドウイン社製)を用いてラミネート強度を測定した。なお、引張速度は200mm/分とし、ガスバリア性積層フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムとの間に水をつけて、剥離角度90度で剥離させたときの強度を測定した。また、上記ラミネートガスバリア性積層フィルムに対して、温度121℃、気圧0.2MPa(2kgf/cm
2)で30分間のレトルト処理を施した後、40℃にて1日間乾燥させたものについても、同様にラミネート強度測定した。
【0067】
1−5.ガスバリア性樹脂組成物層の厚さ
ガスバリア性積層フィルムの試料を2mm×5mmの短冊状に切り出し、エポキシ樹脂に包埋した。包埋した試料をミクロトームで超薄切片とし、染色剤に四酸化ルテニウムを用いて染色した。観察は、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、「JEM2100」)を使用し、加速電圧は200kV、観察倍率は5,000倍、10,000倍で観察し、ガスバリア性樹脂組成物層の厚さを測定した。
【0068】
2.準備
2−1.プラスチックフィルムの作製
極限粘度0.62(30℃、フェノール/テトラクロロエタン(質量比)=60/40)、シリカを100ppm含むポリエチレンテレフタレート(PET)を予備結晶化後、本乾燥し、Tダイを有する押出し機を用いて280℃で押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。次に得られたシートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に100℃で4倍延伸を行い、一軸延伸PETフィルムを得た。
【0069】
2−2.アンカーコート層を形成するための塗工液の調製
<調製例1>
ウレタン系の樹脂(「タケラック(登録商標) A525−S」、三井化学社製)に、イソシアネート系の硬化剤(「タケラック A−50」、三井化学社製)を添加し、溶媒に酢酸エチルを用いて、固形分濃度が6.5質量%になるよう調製した。ここに、エポキシ系シランカップリング剤(「KBM403」、信越化学工業社製)を、アンカーコート剤樹脂組成物(樹脂と硬化剤とシランカップリング剤の合計100質量%)中の含有量が5質量%となるように添加してアンカーコート層用塗工液No.1とした。
【0070】
<調製例2>
シランカップリング剤を、イソシアネート系シランカップリング剤(「KBE9007」、信越化学工業社製)に変更したこと以外は、調製例1と同様にしてアンカーコート層溶塗工液No.2を調製した。
【0071】
<調製例3>
シランカップリング剤を、アミン系シランカップリング剤(「KBM603」、信越化学工業社製)に変更したこと以外は、調製例1と同様にしてアンカーコート層溶塗工液No.3を調製した。
【0072】
<調製例4>
樹脂をウレタン系の樹脂(「EL−530A」、東洋モートン社製)、硬化剤を、イソシアネート系の硬化剤(「EL−530B」、東洋モートン社製)に変更したこと以外は調製例1と同様にしてアンカーコート層用塗工液No.4を調製した。
【0073】
<調製例5>
ウレタン系の樹脂(「タケラック(登録商標) A525−S」、三井化学社製)に、イソシアネート系の硬化剤(「タケラック A−50」、三井化学社製)を添加し、溶媒に酢酸エチルを用いて、固形分濃度が6.5質量%になるよう調製し、これをアンカーコート層用塗工液No.5とした。
【0074】
2−3.ガスバリア性樹脂組成物層の材料の調製
<エチレン−ビニルアルコール系共重合体溶液の調製>
精製水20.996質量部とn−プロピルアルコール(NPA)51質量部の混合溶媒に、エチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名:「SG−525」(エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化して得られた重合体、エチレン比率26モル%、酢酸ビニル成分のケン化度約100%)、日本合成化学社製(以下、「EVOH」と略記することがある。))15質量部を加え、更に過酸化水素水(濃度30質量%)13質量部と硫酸鉄(FeSO
4)0.004質量部を添加して撹拌下で80℃に加温し、約2時間反応させた。その後冷却してカタラーゼを3000ppmになるように添加し、残存過酸化水素を除去し、これにより固形分15質量%のほぼ透明なエチレン−ビニルアルコール系共重合体溶液(EVOH溶液)を得た。
【0075】
<ポリビニルアルコール樹脂溶液の調製>
精製水40質量%、n−プロピルアルコール(NPA)60質量%からなる混合溶剤70質量部に、完全けん化ポリビニルアルコール樹脂(商品名:「ゴーセノール(登録商標) NL−05」(けん化度99.5%以上)、日本合成化学社製)30質量部を加え溶解させ、これにより固形分30質量%の透明なポリビニルアルコール溶液を得た。
【0076】
<無機層状化合物分散液の調製>
無機層状化合物であるモンモリロナイト(商品名:「クニピア(登録商標) F」、クニミネ工業社製)4質量部を精製水96質量部中に攪拌しながら添加し、高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で充分に分散させた。その後、40℃で1日間保温し固形分4質量%の無機層状化合物分散液を得た。
【0077】
<添加剤>
架橋剤:塩酸化ジルコニウム(商品名「ジルコゾール(登録商標) Zc−20」(固形分20質量%)、第一稀元素化学工業社製)
架橋剤:チタンラクテート(商品名:「オルガチックス(登録商標) TC−310」(固形分約45質量%)、松本製薬工業社製)
シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(商品名:「KBE−403」(固形分100質量%)、信越化学工業社製)
【0078】
2−4.ガスバリア性樹脂組成物層を形成するための塗工液の調製
<調製例1>
混合溶剤A(精製水:n−プロピルアルコール(質量比)=40:60)62.30質量部に、EVOH溶液を31.75質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液5.95質量部を添加した。この分散液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加し、イオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作で得られた分散液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した。分散処理した混合液97質量部に対して、添加剤としての塩酸化ジルコニウム0.75質量部、精製水0.9質量部、NPA1.35質量部を添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュ(目開き60μm)のフィルターにて濾過し固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.1を得た。
【0079】
<調製例2>
混合溶剤A、EVOH溶液及び無機層状化合物分散液の使用量を、混合溶剤A65.76質量部、EVOH溶液33.00質量部、無機層状化合物分散液1.24質量部に変更したこと以外は調製例1と同様にして、固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.2を得た。
【0080】
<調製例3>
混合溶剤A、EVOH溶液及び無機層状化合物分散液の使用量を、混合溶剤A64.00質量部、EVOH溶液32.36質量部、無機層状化合物分散液3.64質量部に変更したこと以外は調製例1と同様にして、固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.3を得た。
【0081】
<調製例4>
混合溶剤A、EVOH溶液及び無機層状化合物分散液の使用量を、混合溶剤A66.21質量部、EVOH溶液33.17質量部、無機層状化合物分散液0.62質量部に変更したこと以外は調製例1と同様にして、固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.4を得た。
【0082】
<調製例5>
混合溶剤A、EVOH溶液及び無機層状化合物分散液の使用量を、混合溶剤A60.67質量部、EVOH溶液31.15質量部、無機層状化合物分散液8.18質量部に変更したこと以外は調製例1と同様にして、固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.5を得た。
【0083】
<調製例6>
添加剤を3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン0.15質量部に、精製水及びNPAの使用量を、精製水1.14質量部、NPA1.71質量部に変更したこと以外は調製例1と同様にして、固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.6を得た。
【0084】
<調製例7>
添加剤をチタンラクテート0.33質量部に、精製水及びNPAの使用量を、精製水1.07質量部、NPA1.60質量部に変更したこと以外は調製例1と同様にして、固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.7を得た。
【0085】
<調製例8>
混合溶剤A、EVOH溶液及び無機層状化合物分散液の使用量を、混合溶剤A59.10質量部、EVOH溶液30.58質量部、無機層状化合物分散液10.32質量部に変更したこと以外は調製例1と同様にして、固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.8を得た。
【0086】
<調製例9>
混合溶剤A61.52質量部に、EVOH溶液を32.40質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液6.08質量部を添加した。この分散液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作で得られた分散液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液97質量部に対して塩酸化ジルコニウム0.25質量部と、混合溶剤A2.75質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.9を得た。
【0087】
<調製例10>
混合溶剤A65.02質量部に、EVOH溶液を29.46質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液5.52質量部を添加した。この分散液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作で得られた分散液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液97質量部に対して塩酸化ジルコニウム2.50質量部と、混合溶剤A0.50質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.10を得た。
【0088】
<調製例11>(無機層状化合物なし)
混合溶剤A66.67質量部に、EVOH溶液を33.33質量部添加し、充分に攪拌混合した。更に、この溶液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
この様にして得られた混合液97質量部に対して、塩酸化ジルコニウム0.75質量部と、混合溶剤A2.25質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.11を得た。
【0089】
<調製例12>(ポリビニルアルコール樹脂使用)
混合溶剤A78.17質量部に、ポリビニルアルコール樹脂溶液を15.87質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液5.95質量部を添加した。この分散液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作で得られた分散液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液97質量部に対して塩酸化ジルコニウム0.75質量部と、混合溶剤A2.25質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.12を得た。
【0090】
<調製例13>(添加剤なし)
混合溶剤A62.30質量部に、EVOH溶液を31.75質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液5.95質量部を添加した。この分散液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた分散液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5質量%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.13を得た。
【0091】
3.ガスバリア性積層フィルムの作製
<製造例1>
上記で得た一軸延伸PETフィルムを120℃の温度で4.0倍横方向に延伸し、6%の横方向の弛緩を行いながら、熱固定ゾーンの温度を225℃に設定し熱固定処理を行った。各温度での処理時間は、予熱温度100℃で3秒、延伸温度120℃で5秒、熱固定処理温度225℃で8秒行った。その後冷却し、両縁部を裁断除去することによって、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムを1000m以上に亘って連続的に製膜してミルロールを作製した。得られたミルロールについて、幅400mm、長さ1000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、PETフィルムを得た。前記PETフィルムに、無機薄膜層として酸化ケイ素と酸化アルミニウムの二元系無機酸化物薄膜層(酸化ケイ素/酸化アルミニウムの比率(質量比)=60/40)を形成した。
【0092】
ここで、無機薄膜層は、蒸着源として、3mm〜5mm程度の大きさの粒子状のSiO
2(純度99.99%)とA1
2O
3(純度99.9%)を用い、電子ビーム蒸着法により、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との二元系無機酸化物薄膜を形成した。蒸着材料は、混合せずに、2つに区切って投入した。加熱源として、EB(Electron Beam)銃を用い、A1
2O
3とSiO
2のそれぞれを時分割で加熱した。そのときのEB銃のエミッション電流を1.2Aとし、A1
2O
3とSiO
2との質量比が40:60となるように、各材料を加熱した。フィルム送り速度を30m/minとし、蒸着時の圧力を、1×10
-2Paに調整した。また、蒸着時のフィルムを冷却するためのロールの温度を−10℃に調整した。このようにして得られた無機薄膜層の厚さは27nmであった。
【0093】
無機薄膜層上にアンカーコート層用塗工液No.1をグラビアロールコート法によって塗布し乾燥させアンカーコート層を形成した。乾燥後のアンカーコート層の厚さは0.30μmであった。アンカーコート層上に、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.1をグラビアロールコート法によって塗布し、160℃で乾燥させガスバリア性樹脂組成物層を形成し、ガスバリア性積層フィルムNo.1を作製した。なお、乾燥後のガスバリア性樹脂組成物層の厚さは0.25μmであった。
【0094】
<製造例2〜10>
ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.2〜10に変更したこと以外は製造例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムNo.2〜10を作製した。
【0095】
<製造例11>
酸化ケイ素と酸化アルミニウムの2元系酸化物無機薄膜層中の酸化ケイ素と酸化アルミニウムの質量比(酸化ケイ素/酸化アルミニウム)を、50/50に変更したこと以外は製造例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムNo.11を作製した。
【0096】
<製造例12〜15>
アンカーコート層用塗工液を、アンカーコート層用塗工液No.2〜5に変更したこと以外は製造例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムNo.12〜15を作製した。
【0097】
<製造例16>
ガスバリア性樹脂組成物層を形成しなかったこと以外は製造例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムNo.16を作製した。
【0098】
<製造例17>
無機薄膜層を形成しなかったこと以外は製造例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムNo.17を作製した。
【0099】
<製造例18〜20>
ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液No.11〜13に変更したこと以外は製造例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムNo.18〜20を作製した。
【0100】
<製造例21>
ガスバリア性樹脂組成物層の厚さを、0.01μmに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムNo.21を作製した。
【0101】
<製造例22>
アンカーコート層の厚さを、0.01μmに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムNo.22を作製した。
【0102】
<製造例23>
ガスバリア性樹脂組成物層の厚さを、0.7μmに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムNo.23を作製した。
【0103】
作製したガスバリア性積層フィルムNo.1〜23の構成及びこれらの評価結果を表1,2に示した。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
ガスバリア性積層フィルムNo.1〜15、22は、本発明要件を満足するものである。これらのフィルムでは、レトルト処理後においても、ラミネート強度が高く、酸素透過度及び水蒸気透過度が低い値である。これらの中で、無機薄膜層とガスバリア性樹脂組成物層との間に厚さ0.3μmのアンカーコート層を有するガスバリア性積層フィルムNo.1〜15は、レトルト処理後のラミネート強度がより優れていた。
【0107】
ガスバリア性積層フィルムNo.16はガスバリア性樹脂組成物層を有さないもの、ガスバリア性積層フィルムNo.17は無機薄膜層を有さないもの、ガスバリア性積層フィルムNo.18はガスバリア性樹脂組成物が無機層状化合物を含有しない場合であるが、これらはいずれも酸素透過度及び水蒸気透過度が高い値である。
【0108】
ガスバリア性積層フィルムNo.19はガスバリア性樹脂としてPVAを用いた場合であるが、レトルト処理時にガスバリア性積層フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムとが剥離してしまった。ガスバリア性積層フィルムNo.20はガスバリア性樹脂組成物が添加剤を含有しない場合であるが、これはレトルト処理前の酸素透過度及び水蒸気透過度が高い値を示し、且つ、ラミネート強度が非常に弱かった。
【0109】
ガスバリア性積層フィルムNo.21は、ガスバリア性樹脂組成物層の厚さが0.05μm未満の場合であるが、レトルト処理後の酸素透過度が高くなった。すなわち、レトルト処理後のガスバリア性が低下した。ガスバリア性積層フィルムNo.23は、ガスバリア性樹脂組成物層の厚さが0.5μmを超える場合であるが、レトルト処理後のラミネート強度が非常に弱かった。
【0110】
4.太陽電池バックシート用積層シートの作製
4−1.原料ポリエステル樹脂の重合
(ポリエステル樹脂(a)の重合)
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、高純度テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03質量部、トリエチルアミンを0.16質量部添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧343kPa(3.5kgf/cm
2)、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻した。
15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。
重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステルを得た。この際、溶融樹脂を約275℃に保った状態で、濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)5μmのステンレス焼結体フィルターを用いて、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
【0111】
(ポリエステル樹脂(b)の重合)
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、高純度テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03質量部、トリエチルアミンを0.16質量部、平均粒径2.5μmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、生成PETに対し、2000ppmとなるよう添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧343kPa(3.5kgf/cm
2)、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻した。
15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。
重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステルを得た。この際、溶融樹脂を約275℃に保った状態で、濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)20μmのステンレス焼結体フィルターを用いて、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
【0112】
4−2.ポリエステル基材フィルムの製造
ポリエステル樹脂(a)及びポリエステル樹脂(b)を、それぞれ回転型真空重合装置を用い、66Pa(0.5mmHg)の減圧下、220℃で固相重合を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)を得た。
【0113】
基材フィルムの中間層用原料としてポリエステル樹脂(A)を135℃で6時間減圧乾燥(133Pa(1Torr))した後、押出機2(中間層B層用)に供給し、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を平均粒径2.5μmのシリカ粒子濃度が0.06質量%になるように配合したものを、押出機1(外層A層用)に供給し、それぞれ285℃で溶解した。この2つのポリエステル樹脂を、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、A層/B層/A層の厚さの比は1.5:7:1.5となるように各押し出し機の吐出量を調整した。また、この時の押し出し機内における溶融樹脂の滞留時間は15分間であった。次にこの未延伸フィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後、周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。
【0114】
得られた一軸配向PETフィルムを引き続き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度120℃の熱風ゾーンに導き(予熱工程)、幅方向に4.3倍に延伸した(横延伸工程)。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、最高温度235℃で熱固定処理し、30℃の冷却工程で幅方向に3%の緩和処理を行なった。なお、予熱工程、横延伸工程、熱固定工程における炉内の熱風風速は20m/秒とし、冷却工程の冷却風風速は10m/秒とした。また、熱風及び冷却風は濾過精度1μmのフィルターを通して循環させた。こうして厚さ50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムに被覆層が形成されたポリエステル基材フィルムを得た。
【0115】
4−3.積層シートの作製
ガスバリア性積層フィルムNo.1、21及びポリエステル基材フィルムを21cm×30cmに切り、ガスバリア性積層フィルムとポリエステル基材フィルムとをガスバリア性樹脂組成物層が内側になるように2枚重ね合わせて、ドライラミネーションした。
接着剤はドライラミネーション用ポリウレタン接着剤(大日本インキ化学工業社製 製品名:LX951/KMW70)を使い、接着剤量は3.5g/m
2とした。エージング条件としては、室温エージング1日後、40℃でのエージングを1日施した。
【0116】
4−4.評価
得られた太陽電池バックシート用積層シートに対して、温度121℃、湿度100%RH、気圧0.2MPaで30分間処理した後、40℃にて1日間乾燥した。
湿熱処理後の試料について、上記ラミネートガスバリア性積層フィルムの場合と同様にして、水蒸気透過度及び酸素透過度を測定した。なお、水蒸気透過度測定において積層シートへの調湿は、ガスバリア性積層フィルムを構成するプラスチックフィルム側から無機薄膜層側に水蒸気が透過する方向とした。結果を表3に示した。
【0117】
【表3】