特許第5712735号(P5712735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5712735ゴム支承側壁用ゴム組成物およびゴム支承体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5712735
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ゴム支承側壁用ゴム組成物およびゴム支承体
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20150416BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20150416BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150416BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20150416BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20150416BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20150416BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20150416BHJP
   F16F 1/40 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08L23/16
   C08K3/04
   C08K5/09
   C08K5/20
   F16F15/04 P
   F16F1/36 C
   F16F1/40
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-78417(P2011-78417)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-211277(P2012-211277A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】伊海 康一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知明
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−048952(JP,A)
【文献】 特開2009−298949(JP,A)
【文献】 特開2011−038069(JP,A)
【文献】 特開2007−314697(JP,A)
【文献】 特開2008−115625(JP,A)
【文献】 特開平07−188463(JP,A)
【文献】 特開2010−248453(JP,A)
【文献】 特開2011−046812(JP,A)
【文献】 特開平10−310737(JP,A)
【文献】 特開平01−168739(JP,A)
【文献】 特開2010−255795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
F16F 1/00−15/36
B63B 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、脂肪酸亜鉛塩と、脂肪酸アマイド化合物とを含有し、
前記エチレン−プロピレン−ジエンゴムの含有量が、前記ゴム成分の全質量に対して25質量%以上40質量%未満であるゴム支承側壁用ゴム組成物。
【請求項2】
前記脂肪酸亜鉛塩の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部である請求項1に記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラック以外の無機充填剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1質量部未満である請求項1または2に記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラック以外の無機充填剤を含有しない請求項1〜3のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【請求項5】
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して20〜50質量部である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸アマイド化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部である請求項1〜5のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【請求項7】
前記エチレン−プロピレン−ジエンゴムが、エチレン含有量が30質量%以上、100℃におけるムーニー粘度が50以上、ジエン含有量が5質量%以上である請求項1〜6のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【請求項8】
更に、軟化点が90〜120℃の石油樹脂を含有する請求項1〜7のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【請求項9】
前記石油樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して2〜10質量部である請求項8に記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【請求項10】
前記脂肪酸亜鉛塩の脂肪酸部分が、炭素数9〜19のモノカルボン酸である請求項1〜9のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【請求項11】
ゴム支承本体用ゴム組成物と硬質板とが交互が積層し、外周側面に被覆ゴムを有するゴム支承体であって、
前記被覆ゴムが、請求項1〜10のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物を用いて形成されるゴム支承体。
【請求項12】
前記ゴム支承側壁用ゴム組成物の加硫速度が、前記ゴム支承本体用ゴム組成物の加硫速度に対して±20%以内である請求項11に記載のゴム支承体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム支承側壁用ゴム組成物およびそれを用いて被覆ゴムを形成したゴム支承体に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁や構造物の免震装置として用いられる積層ゴム支承体は、一般に複数のゴム板と金属板とを積層した積層体の上下にプレートを取り付けた構造を有しているが、野外で長期間にわたり使用する場合には、積層体の外周側面を耐候性に優れたゴム組成物からなるゴムシートで覆うことが行われている。
また、このような積層ゴム支承体は、未加硫のゴム板と金属板とを積層して積層体を形成し、上記積層体の全面をモールドで取り囲んだ後、加圧条件下で加硫し、加硫後に上記モールドを取り外すことにより製造されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「ゴム成分として、天然ゴムとEPDMとを含有し、更に、シリカと、カーボンブラックと、ワックス及び/又はアマイド化合物とを含有する未加硫ゴム組成物からなることを特徴とするゴム支承被覆用ゴムシート。」が記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−1603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のゴム支承被覆用ゴムシートを有するゴム支承体を製造する際に、井桁(組立)式のモールドを使用すると、モールドからの離型性(以下、単に「モールド離型性」という。)が悪く、また、ゴム支承本体用ゴム組成物の硬化物(以下、「本体ゴム」ともいう。)がゴム支承被覆用ゴムシートの硬化物(以下、「被覆ゴム」ともいう。)を内部から押出すことにより、被覆ゴムが積層体の外周側面から剥がれたり、本体ゴムが被覆ゴムを突き破ったりすることにより、ゴム支承体の外観が劣る問題があることが分かった。
そこで、本発明は、モールド離型性が良好で外観に優れるゴム支承体を実現することができるゴム支承側壁用ゴム組成物およびそれを用いて被覆ゴムを形成したゴム支承体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、天然ゴム(NR)およびエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)を特定割合で含むゴム成分に対して、カーボンブラック、脂肪酸亜鉛塩および脂肪酸アマイド化合物を配合したゴム組成物を用いて被覆ゴムを形成すると、モールド離型性が良好で外観に優れるゴム支承体が得られることを知見し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(12)を提供する。
【0007】
(1)天然ゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、脂肪酸亜鉛塩と、脂肪酸アマイド化合物とを含有し、
上記エチレン−プロピレン−ジエンゴムの含有量が、上記ゴム成分の全質量に対して25質量%以上40質量%未満であるゴム支承側壁用ゴム組成物。
【0008】
(2)上記脂肪酸亜鉛塩の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部である上記(1)に記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【0009】
(3)上記カーボンブラック以外の無機充填剤の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して1質量部未満である上記(1)または(2)に記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【0010】
(4)上記カーボンブラック以外の無機充填剤を含有しない上記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【0011】
(5)上記カーボンブラックの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して20〜50質量部である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【0012】
(6)上記脂肪酸アマイド化合物の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【0013】
(7)上記エチレン−プロピレン−ジエンゴムが、エチレン含有量が30質量%以上、100℃におけるムーニー粘度が50以上、ジエン含有量が5質量%以上である上記(1)〜(6)のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【0014】
(8)更に、軟化点が90〜120℃の石油樹脂を含有する上記(1)〜(7)のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【0015】
(9)上記石油樹脂の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して2〜10質量部である上記(8)に記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
【0016】
(10)上記脂肪酸亜鉛塩の脂肪酸部分が、炭素数9〜19のモノカルボン酸である上記(1)〜(9)のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物。
11)ゴム支承本体用ゴム組成物と硬質板とが交互が積層し、外周側面に被覆ゴムを有するゴム支承体であって、
上記被覆ゴムが、上記(1)〜(10)のいずれかに記載のゴム支承側壁用ゴム組成物を用いて形成されるゴム支承体。
【0017】
12)上記ゴム支承側壁用ゴム組成物の加硫速度が、上記ゴム支承本体用ゴム組成物の加硫速度に対して±20%以内である上記(11)に記載のゴム支承体。
【発明の効果】
【0018】
以下に説明するように、本発明によれば、モールド離型性が良好で外観に優れるゴム支承体を実現することができるゴム支承側壁用ゴム組成物およびそれを用いて被覆ゴムを形成したゴム支承体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明のゴム支承体の実施態様の一例を表す模式的な断面図である。
図2図2は、無圧オーブン加硫に用いるモールドの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔ゴム支承側壁用ゴム組成物〕
本発明のゴム支承側壁用ゴム組成物(以下、単に「本発明のゴム組成物」ともいう。)は、天然ゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、脂肪酸亜鉛塩と、脂肪酸アマイド化合物とを含有し、上記エチレン−プロピレン−ジエンゴムの含有量が上記ゴム成分の全質量に対して25質量%以上40質量%未満であるゴム支承側壁用のゴム組成物である。
次に、本発明のゴム組成物に含有するゴム成分、カーボンブラック、脂肪酸亜鉛塩および脂肪酸アマイド化合物ならびにその他の任意成分について詳述する。
【0021】
<ゴム成分>
本発明のゴム組成物が含有するゴム成分は、少なくとも天然ゴム(以下、「NR」略す。)およびエチレン−プロピレン−ジエンゴム(以下、「EPDM」と略す。)を含むものである。
本発明においては、上記EPDMの含有量は、ゴム成分の全質量に対して、25質量%以上40質量%未満である。
EPDMの含有割合がこの範囲であると、得られる本発明のゴム組成物を用いて被覆ゴムを形成したゴム支承体(以下、「本発明のゴム支承体」ともいう。)の耐久性、耐候性および外観が良好となる。
これは、結合部(特に、コーナー部)に圧力が加わり難い井桁式のモールド内での加硫においても、本発明のゴム組成物同士が良好に加硫接着し、強度の高い被覆ゴムが形成できるためと考えられる。
【0022】
(NR)
上記NRは特に限定されず、グリーンブック(天然ゴム各種等級品の国際品質包装基準)により規格化された天然ゴムを用いることができる。
【0023】
(EPDM)
上記EPDMは、エチレン、プロピレンおよびジエンからなる一般的な共重合体ゴムであれば特に限定されない。
本発明においては、未加硫ゴムの強度および上記NRとの共加硫性が良好となり、また、得られる被覆ゴムの切断時伸びおよび本体ゴムとの接着性が向上する結果、本発明のゴム支承体の外観がより良好となる理由から、エチレン含有量、ジエン含有量および100℃におけるムーニー粘度が以下のものを用いるのが好ましい。
上記EPDMのエチレン含有量は、30質量%以上であるのが好ましく、40〜65質量%であるのがより好ましい。
また、上記EPDMのジエン含有量は、5質量%以上であるのが好ましく、7.0〜11.0質量%であるのがより好ましい。なお、ジエン成分としては、具体的には、例えば、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等が挙げられる。
更に、上記EPDMの100℃におけるムーニー粘度は、50以上であるのが好ましく、55〜100であるのがより好ましい。なお、ムーニー粘度とは、JIS K6300−1−2001に準じて、L形ロータを使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、試験温度100℃の条件で測定した粘度(ML1+4、100℃)をいう。
【0024】
(その他のゴム)
本発明のゴム組成物が含有するゴム成分は、上記NRおよび上記EPDMを含み、かつ、上記EPDMが25質量%以上40質量%未満であれば、他のジエン系ゴムとして、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)等を含んでいてもよい。
ここで、他のジエン系ゴムの含有量は、NRおよびEPDMの割合にも左右されるため特に限定されないが、ゴム成分の全質量に対して50質量部未満であることが好ましく、25質量部以下であるのがより好ましい。
【0025】
<カーボンブラック>
本発明のゴム組成物が含有するカーボンブラックは、従来公知のものを使用することができる。
【0026】
本発明においては、CTAB吸着比表面積が40m2/g以上のカーボンブラックを用いるのが好ましく、60〜150m2/gのカーボンブラックを用いるのがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、カーボンブラックがゴム分子との吸着に利用できる表面積を、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)の吸着により測定した値である。
このようなカーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAFを挙げることができる。なお、CTAB吸着比表面積は、ASTM D3765−80に記載の方法により測定することができる。
【0027】
また、本発明においては、カーボンブラックの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、20〜50質量部であるのが好ましく、25〜45質量部であるのがより好ましい。
カーボンブラックの含有量がこの範囲であると、得られる被覆ゴムの強度および切断時伸びが良好となり、また、本体ゴムとの接着性も良好となることから、加硫後の外観不良を起こしにくくなる。
【0028】
<脂肪酸亜鉛塩>
本発明のゴム組成物が含有する脂肪酸亜鉛塩は、特に限定されないが、本発明のゴム組成物の系内で反応した生成物ではなく、配合剤として系外から添加する成分である。
上記脂肪酸亜鉛塩の脂肪酸部分は、飽和のものであっても不飽和物であってもよく、直鎖または分岐鎖のモノカルボン酸であり、炭素数9〜19のものが好ましい。
上記脂肪酸亜鉛塩としては、具体的には、例えば、アセチル酸亜鉛塩、プロピオン酸亜鉛塩、ブタン酸亜鉛塩、ラウリン酸亜鉛塩、ミリスチン酸亜鉛塩、パルミチン酸亜鉛塩、ステアリン酸亜鉛塩、アクリル酸亜鉛塩、プロピオン酸亜鉛塩、マレイン酸亜鉛塩、フマル酸亜鉛塩等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、モールド離型性がより良好となる理由から、不飽和脂肪酸亜鉛塩であるのが好ましい。
【0029】
本発明においては、上記脂肪酸亜鉛塩を含有することにより、本発明のゴム支承体の外観が良好となる。
これは、モールド表面に密着した被覆ゴムを容易に剥がすことができるためであると考えられる。
また、上記脂肪酸亜鉛塩の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのが好ましく、1〜4質量部であるのがより好ましい。
【0030】
<脂肪酸アマイド化合物>
本発明のゴム組成物が含有する脂肪酸アマイド化合物は特に限定されず、脂肪酸や不飽和脂肪酸のモノアマイド類およびビスアマイド類を用いることができる。
上記脂肪酸アマイド化合物のモノアマイド類としては、具体的には、例えば、ステアリン酸アマイド、バルミチン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ミリスチン酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイド、カプリル酸アマイド、カプリン酸アマイド、リノール酸アマイド、リノレン酸アマイド、リジノールサンアマイド、パルミトレイン酸アマイド、ラウリン酸アマイド、アラキド酸アマイド、アラキジン酸アマイド、エイコセン酸アマイド、ブライジン酸アマイド、エライジン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−(2−ハイドロキシメチル)・ステアリン酸アマイド、N−(2−ハイドロキシエチル)ラウリン酸アマイド等が挙げられる。
上記脂肪酸アマイド化合物のビスアマイド類としては、具体的には、例えば、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アマイド、オクタメチレンビスエルカ酸アマイド等が挙げられる。
これらのうち、被覆ゴム表面へのブルーム速度が速い理由から、モノアマイド類であるのが好ましく、オレイン酸アマイドであるのがより好ましい。
【0031】
本発明においては、上記脂肪酸アマイド化合物を含有することにより、本発明のゴム支承体のモールド離型性が良好となる。
これは、上記脂肪酸亜鉛塩とともに配合することにより、上記脂肪酸アマイド化合物の被覆ゴム表面へのブルームが促進されるためであると考えられる。
また、上記脂肪酸アマイド化合物の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのが好ましく、1〜4質量部であるのがより好ましい。
【0032】
<石油樹脂>
本発明のゴム組成物は、上述したNRおよびEPDMの相溶性を改善し、得られる被覆ゴムの破断伸びが良好となる理由から、石油樹脂を含有しているのが好ましい。
石油樹脂としては、例えば、脂肪族不飽和炭化水素系樹脂、芳香族不飽和炭化水素系樹脂等が挙げられる。
【0033】
脂肪族不飽和炭化水素としては、具体的には、例えば、ナフサの熱分解により得られるC5留分中に含まれる、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテンのようなオレフィン系炭化水素;2−メチル−1,3−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエンのようなジオレフィン系炭化水素;等が挙げられる。
これらは、適当な触媒の存在下で、重合または共重合されることが可能である。
【0034】
芳香族不飽和炭化水素としては、具体的には、例えば、ナフサの熱分解により得られるC9留分中に含まれる、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエンのようなビニル置換芳香族炭化水素等が挙げられる。
これらは、適当な触媒の存在下で、重合または共重合されることが可能である。
【0035】
上記石油樹脂は、上述したゴム成分(特に、ジエン系ゴム)の物性に対し、その分子量および二重結合の反応性が影響を与えるので、軟化点(JIS K2207)が90〜120℃のものが好ましい。
【0036】
本発明においては、石油樹脂を含有する場合の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、2〜10質量部であるのが好ましく、3〜7質量部であるのがより好ましい。
【0037】
<無機充填剤>
本発明のゴム組成物は、本発明のゴム支承体の本体ゴムを形成するゴム支承本体用ゴム組成物との加硫速度の差を少なくし、被覆ゴムと本体ゴムとの接着性が良好になる理由から、上述したカーボンブラック以外の無機充填剤の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して1質量部未満であるのが好ましく、実質的に無機充填剤を含有しないのがより好ましい。
このような無機充填剤としては、具体的には、例えば、シリカ;T−クレー、カオリンクレー、ろう石クレー、セリサイトクレー、焼成クレーのようなソフトクレー;けいそう土;重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、石英とカオリナイトとの凝集体;等が挙げられる。
【0038】
<その他の添加剤>
本発明のゴム組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の添加剤を含有することができる。
上記添加剤としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、加硫助剤、難燃剤、耐候剤、耐熱剤等が挙げられる。
加硫剤としては、具体的には、例えば、硫黄、酸化亜鉛;TMTDなどの有機含硫黄化合物;ジクミルペルオキシドなどの有機過酸化物;等が挙げられる。
加硫促進剤としては、具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)などのスルフェンアミド類;メルカプトベンゾチアゾールなどのチアゾール類;テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム類;ステアリン酸;等が挙げられる。
老化防止剤としては、具体的には、例えば、TMDQなどのケトン・アミン縮合物;DNPDなどのアミン類;スチレン化フェノールなどのモノフェノール類;等が挙げられる。
軟化剤としては、具体的には、例えば、パラフィン系オイル(プロセスオイル)等が挙げられる。
【0039】
本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上述した各成分を配合した未加硫ゴム組成物を、適宜成形して公知の方法、装置を用いて、混練等により調製できる。
【0040】
〔ゴム支承体〕
本発明のゴム支承体は、ゴム支承本体用ゴム組成物と硬質板とが交互が積層し、外周側面に被覆ゴムを有するゴム支承体であって、上記被覆ゴムが、上述した本発明のゴム組成物を用いて形成されるゴム支承体である。
ここで、上記ゴム支承本体用ゴム組成物は、ゴム支承体の本体ゴムを形成する従来公知のゴム組成物を用いることができる。
【0041】
本発明においては、被覆ゴムと本体ゴムとの接着性が良好になる理由から、上述した本発明のゴム組成物の加硫速度が、上記ゴム支承本体用ゴム組成物の加硫速度に対して±20%以内であるのが好ましく、±10%以内であるのがより好ましい。
ここで、本発明において加硫速度とは、130℃または150℃における加硫時間(T5)のことをいい、また、加硫時間(T5)とは、レオメーター曲線、すなわち、本発明のゴム組成物についてレオメーターを用いてそのトルク(N・m)を測定し、最大トルクと最小トルクとの間を100等分し、トルクが最小トルクを起点に5/100上昇した時間をいう。
【0042】
次に、図1を用いて本発明のゴム支承体を説明する。
図1は、本発明のゴム支承体の実施態様の一例を表す模式的な断面図である。
図1において、符号1はゴム支承体(高減衰積層体)を表し、符号2は硬質板を表し、符号3はゴム支承本体用ゴム組成物(本体ゴム)を表し、符号4は本発明のゴム組成物(被覆ゴム)を表す。
【0043】
図1に一例として示すように、本発明のゴム支承体1は、ゴム支承本体用ゴム組成物(本体ゴム)3と硬質板2とを交互に積層し、外周側面に上述した本発明のゴム組成物(被覆ゴム)4を有する。
また、このゴム支承体1は、ゴム支承本体用ゴム組成物3と硬質板2との間に接着層を設けて構成してもよく、また、接着層を設けずに直接加硫して構成してもよい。
同様に、このゴム支承体1は、硬質板2およびゴム支承本体用ゴム組成物3と本発明のゴム組成物4との間に接着層を設けて構成してもよく、また、接着層を設けずに直接加硫して構成してもよい。
【0044】
図1においては、本発明のゴム支承体1は、ゴム支承本体用ゴム組成物3と、硬質板2とを交互に積層させた状態が図示されているが、ゴム支承本体用ゴム組成物3は2層以上を積層させた構造としてもよい。
また、図1においては、ゴム支承本体用ゴム組成物3について7層、硬質板2について6層の合計13層の例を示してあるが、本発明のゴム支承体1のゴム支承本体用ゴム組成物3と硬質板2との積層数はこれに限定されず、用いられる用途、要求される特性等に応じて、任意に設定できる。
同様に、図1においては、本発明のゴム組成物4について単層の例を示してあるが、本発明のゴム支承体1の本発明のゴム組成物4の積層数はこれに限定されず、用いられる用途、要求される特性等に応じて、任意に設定できる。
更に、本発明のゴム支承体1の大きさ、全体の厚さ、ゴム支承本体用ゴム組成物3の層の厚さ、硬質板の厚さ、本発明のゴム組成物4の層の厚さ等についても、用いられる用途、要求される特性等に応じて、任意に設定できる。
【0045】
本発明の積層体を製造するには、ゴム支承本体用ゴム組成物をシート状に成形した後に加硫して、シート状のゴム組成物を得た後、接着剤を含む層を設けて硬質板と交互に積層させてもよいし、また、あらかじめ未加硫のゴム支承本体用ゴム組成物をシート状に成形し、硬質板と交互に積層した後、加熱して加硫・接着を同時に行ってもよい。
また、被覆ゴムについても同様、ゴム支承本体用ゴム組成物と硬質板とを積層した後に、上下面をフランジ等により固定し、その外周側面に上述した本発明のゴム組成物をシート状に成形したものをこの順に巻き付けて、加硫する等の方法で設けることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に従ってより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(ゴム支承本体用ゴム組成物の調製)
下記第1表に示す組成(単位は質量部)になるように、各化合物を配合してB型バンバリーミキサーにて5分間混練し、未加硫のゴム支承本体用ゴム組成物を調製した。
調製した未加硫のゴム支承本体用ゴム組成物の130℃および150℃における加硫速度(T5)を測定した。結果を下記第1表に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・NR:STR20、TECK BEE HANG社製
・ブタジエンゴム:NipolBR1220、日本ゼオン社製
・カーボンブラック:ダイヤブラックI、三菱化学社製
・シリカ:ニップシールVN3、東ソー・シリカ社製
・ソフトクレイ:ユニオンクレーRC−1、竹原化学工業社製
・石油樹脂:ハイレジン#120(軟化点120℃、東邦化学社製)
・アロマオイル:ダイアナプロセスオイルAH、出光興産社製
・ステアリン酸:LUNAC S−30、花王社製
・酸化亜鉛:亜鉛華3号、正同化学工業社製
・硫黄:粉末イオウ、細井化学工業社製
・加硫促進剤:ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製
・スコーチ防止剤:リターダーCTP、大内新興化学工業社製
【0050】
(ゴム支承側壁用ゴム組成物の調製:実施例1〜8、比較例1〜6)
下記第2表に示す組成(単位は質量部)になるように、各化合物を配合してB型バンバリーミキサーにて5分間混練し、未加硫のゴム支承側壁用ゴム組成物を調製した。
調製した未加硫のゴム支承側壁用ゴム組成物の130℃および150℃における加硫速度(T5)を測定した。結果を下記第2表に示す。
また、調製した未加硫のゴム支承側壁用ゴム組成物を148℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で45分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。このシートからJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251:2010に準拠して行い、引張強さ(TB)[MPa]および切断時伸び(EB)[%]を室温にて測定した。結果を下記第2表に示す。
更に、調製した未加硫のゴム支承側壁用ゴム組成物を圧延し、幅150mm×厚さ5mmのシート状物を作製した。次いで、図2に示すように、このシート状物5をモールド6内で2枚重ね合わせ、モールド蓋7の荷重による面圧(0.015kg/cm2)のみが加わる条件の下、130℃で180分間加硫(以下、「無圧オーブン加硫」ともいう。)させた。その後、加硫接着した2枚のシート状物に剥離試験を行い、剥離力(N/25mm)を調べた。結果を下記第2表に示す。なお、剥離試験は、2枚のシート状物をインチ幅にカットした後、各シートを180°剥離方向に50mm/分の速度で引っ張ることで行った。
【0051】
(ゴム支承体の作製:実施例1〜8、比較例1〜6)
まず、調製した未加硫のゴム支承本体用ゴム組成物を圧延し、幅900mm×長さ900mm×厚さ5mmのシート状物を作製した。
同様に、調製した未加硫のゴム支承側壁用ゴム組成物を圧延し、幅178mm×厚さ5mmのシート状物を作製した。
次いで、圧延後のゴム支承本体用ゴム組成物の上記シート状物を7枚積層してなるゴム層(幅900mm×長さ900mm×厚さ35mm)の3層と鉄板(幅900mm×長さ900mm×厚さ4.5mm)の2層とをそれぞれ交互に積層し、更に、これらの積層物の上下にそれぞれ鉄板(幅900mm×長さ900mm×厚さ32mm)を1枚積層させた積層体(幅900mm×長さ900mm×厚さ178mm)を作製した。
次いで、作製した積層体の外周側面に、圧延後のゴム支承側壁用ゴム組成物の上記シート状物を1周分巻きつけた。
次いで、鉄板の上に、上記シート状物を巻きつけた上記積層体を設置し、その側面(4面)に押し板を立て、更に、上部からも押し板を被せて、直方体のモールドとし、プレスにより上下方向から圧力と熱を加えるプレス加硫を施し、ゴム支承体を作製した。
【0052】
以下に示す方法により、耐候性、モールド離型性および加硫後の外観の評価をした。その結果を第2表に示す。
【0053】
<耐候性>
調製した未加硫のゴム支承体用ゴム組成物を148℃で45分間プレス加硫して、2mm厚の加硫シートを作製し、このシートから幅10mm、長さ150mm、厚さ2mmの短冊状の試験片を打ち抜いた。
JIS K6259−2004に準じて、試験片を50%伸長し、40℃で、オゾン濃度50pphmの雰囲気下に196時間晒した後、試料の状態を目視で観察した。
その結果、クラックがあるものを耐候性(耐オゾン性)に劣るものとして「×」と評価し、クラックがないものを耐候性(耐オゾン性)に優れるものとして「○」と評価した。
【0054】
<モールド離型性>
作製時に各ゴム支承体をモールドから離型させる際に、被覆ゴムがモールドに密着し、モールドから剥離するための別の作業(例えば、密着した被覆ゴムとモールドとの隙間に空気を入れる作業等)を伴うものをモールド離型性に劣るものとして「×」と評価し、被覆ゴムがモールドに密着せず、モールドから容易に剥離することができるものをモールド離型性に優れるものとして「○」と評価した。
【0055】
<外観>
作製した各ゴム支承体の被覆ゴムの表面を目視により確認し、被覆ゴムが外周側面から剥がれたり、本体ゴムが被覆ゴムを突き破ったりしているものを外観に劣るものとして「×」と評価し、被覆ゴムに剥がれや破れはないが、本体ゴムにより押し上げられ、形状が変形しているものを外観にやや劣るものとして「△」と評価し、被覆ゴムに剥がれ、破れ、変形が見られないものを外観に優れるものとして「○」と評価した。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
第2表中の各成分のうち、第1表中の各成分と異なるものは、以下のものを使用した。
・EPDM:エスプレン505(エチレン含有量:50質量%、100℃におけるムーニー粘度:90、ジエン含有量:10.0質量%、住友化学社製)
・カーボンブラック1:ショウブラックN220、ISAF級、昭和キャボット社製
・カーボンブラック2:ニテロン#200IN、HAF級、新日化カーボン社製
・脂肪酸亜鉛塩:アクチプラストT、Rhein Chemie社製
・脂肪酸アマイド化合物:アーモスリップCP、ライオンアクゾ社製
・老化防止剤:6C、精工化学社製
・ワックス:Sunnoc、大内新興化学工業社製
【0059】
第2表から明らかなように、脂肪酸亜鉛塩および脂肪酸アマイド化合物を配合せずに調製した比較例1および2のゴム支承側壁用ゴム組成物を用いて被覆ゴムを形成したゴム支承体は、耐候性に優れるが、モールド離型性および外観に劣ることが分かった。また、井桁式のモールドの利用を考慮した無圧オーブン加硫においても剥離力が弱く、被覆ゴムの接合部における接着が弱いことが分かった。
また、EPDMを多量に配合して調製した比較例3および4のゴム支承側壁用ゴム組成物を用いて被覆ゴムを形成したゴム支承体は、外観に劣ることが分かり、また、無圧オーブン加硫における剥離力が弱いことが分かった。
更に、脂肪酸亜鉛塩を配合せずに調製した比較例5のゴム支承側壁用ゴム組成物を用いて被覆ゴムを形成したゴム支承体は、加硫後にモールドに密着してしまい、モールドから取り外せず、モールド離型性に劣ることが分かった。
EPDMを少量配合して調製した比較例6のゴム支承側壁用ゴム組成物を用いて被覆ゴムを形成したゴム支承体は、耐候性に劣ることが分かり、モールド離型性および外観が良好であっても実用上問題があることが分かった。
【0060】
これに対し、NRおよびEPDMを特定割合で含むゴム成分に対して、脂肪酸亜鉛塩および脂肪酸アマイド化合物を配合した実施例1〜8のゴム支承側壁用ゴム組成物を用いて被覆ゴムを形成したゴム支承体は、耐候性に優れ、モールド離型性および外観が良好となることが分かった。また、無圧オーブン加硫における剥離力も高いことが分かった。
【符号の説明】
【0061】
1 ゴム支承体(高減衰積層体)
2 硬質板
3 ゴム支承本体用ゴム組成物(本体ゴム)
4 本発明のゴム組成物(被覆ゴム)
5 シート状物
6 モールド
7 モールド蓋
図1
図2