【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例について、
図1及び
図2に基づいて説明する。
図1に示すように、実施例1の太陽熱集熱装置1は、集熱パネル2と、貯湯装置3と、集熱回路4と、気液分離手段5と、通路手段6等を備えている。この太陽熱集熱装置1は、熱媒体としての不凍液(例えば、プロピレングリコール)を循環ポンプ7により集熱回路4内を矢印方向に循環させ、集熱パネル2で加熱された不凍液により貯湯装置3内に貯留された水を暖めて湯に変換し、貯湯装置3から湯を供給可能に構成されている。尚、熱媒体は、前記プロピレングリコールに限られず、エチレングリコール等、熱伝達率が高く、冬季に凍結しない機能を有していれば良い。
【0017】
集熱パネル2は、建物の屋根等高所に設置されると共に太陽熱吸熱性の良好な材料で構成され、集熱回路4内を循環する不凍液を太陽熱により加熱可能に形成されている。
貯湯装置3は、ロックウール等の断熱材で被覆された円筒形の密閉タンクにより形成され、その内部に家庭用水等の水を貯留可能に構成されている。貯湯装置3には、給水管8aと、給湯管8bと、貯留水の温度を測定可能な複数の水温センサ9aが設けられ、その内部に後述する熱交換器10が収容されている。水温センサ9aは制御盤11へ検出された水温を出力している。給水管8aは貯湯装置3内へ給水するため底部近傍位置に接続され、給湯管8bは加熱された湯を外部へ給湯するため頂部位置に接続されている。
【0018】
集熱回路4は、集熱パネル2と貯湯装置3との間に亙って不凍液を循環させ、貯湯装置3の内部において不凍液に集熱された熱を水と熱交換する熱交換器10を形成している。
集熱回路4は、気液分離手段5から集熱パネル2までの流路を形成する往回路部4aと、集熱パネル2内部に配設された集熱回路部4bと、集熱パネル2から熱交換器10までの流路を形成する第1復回路部4cと、螺旋状に形成された熱交換器10と、熱交換器10から気液分離手段5までの流路を形成する第2復回路部4dとを備えている。
往回路部4a、第1復回路部4c及び第2復回路部4dは、銅製、ゴム製又は合成樹脂製の配管により構成され、それらの周囲は断熱材で被覆されている。
【0019】
往回路部4aの途中部には、不凍液を集熱回路部4b側へ圧送可能な循環ポンプ7が設けられ、集熱回路部4bの下流側位置には、集熱した不凍液の温度を測定可能な液温センサ9bが設けられている。循環ポンプ7は制御盤11からの制御信号で制御され、液温センサ9bは制御盤11へ不凍液の温度を出力している。
【0020】
気液分離手段5は、金属製タンクにより形成され、内部に貯留された不凍液から空気を分離する気液分離機能を有している。気液分離手段5の上部開口部5aには、着脱可能な調圧弁12が密閉状に装着されている。それ故、循環ポンプ7のサクション側に加圧状態の不凍液を供給でき、循環ポンプ7の循環効率を高くすることができる。
この気液分離手段5は、外部を断熱材により被覆され、第2復回路部4dを流れて還流した不凍液を往回路部4aへ還流させ且つ一部の不凍液を貯留可能に形成されている。
調圧弁12は、気液分離手段5の上部開口部5aに取り付けられたとき、下方へ付勢されて上部開口部5aを閉鎖する第1弁体と、この第1弁体の中央開口に対して上方へ付勢されて中央開口を閉鎖する第2弁体とを備えている。尚、この調圧弁12は、エンジンのラジエータキャップと同様の構成のため、詳細説明は省略する。
【0021】
気液分離手段5の下方近傍位置には、大気に解放され且つ不凍液を貯留可能な合成樹脂製のリザーブタンク13が設置されている。気液分離手段5とリザーブタンク13とは、連通管14を介して連通されている。連通管14は、一端が上部開口部5aを閉鎖する第1弁体よりも上部位置に接続され、他端がリザーブタンク13内の底部近傍位置に配置されるように形成されている。これにより、気液分離手段5の内部圧力が高く、集熱回路4内が高圧のとき、調圧弁12の第1弁体と上部開口部5aとの間に隙間を形成し、不凍液が気液分離手段5から連通管14を介してリザーブタンク13へ移動する。また、気液分離手段5の内部圧力が低く、集熱回路4内が低圧のとき、調圧弁12が第2弁体と中央開口との間に隙間を形成し、不凍液はリザーブタンク13から連通管14を介して気液分離手段5へ移動する。これにより、集熱回路4内の圧力変動を抑制している。
【0022】
リザーブタンク13には、貯留された不凍液の水位を検出する第1、第2液位センサ15,16が設置されている。第1液位センサ15の先端高さ位置は、上限液位に相当する位置に設定され、第2液位センサ16の先端高さ位置は、下限液位に相当する位置に設定されている。本実施例では、第2液位センサ16の先端が連通管14の他端よりも高くなるよう設置されている。これにより、第1、第2液位センサ15,16は、制御盤11へリザーブタンク13に貯留された不凍液の液位状態を出力している。
【0023】
制御盤11は、通常運転釦11aと、試運転釦11bとを備え、循環ポンプ7、水温センサ9a、液温センサ9b、第1、第2水位センサ15,16と電気的に接続されている。この制御盤11は、通常運転時、水温センサ9aと液温センサ9bとにより検出された温度差に基づき循環ポンプ7を回転駆動し、試運転時、リザーブタンク13に貯留された不凍液の液位を報知するように構成されている。
【0024】
通路手段6は、気液分離手段5よりも上流側近傍において第2復回路部4dの途中部から分岐して不凍液を気液分離手段5に滴下可能な分岐通路17と、この分岐通路17を開閉可能な切替バルブ18(切替手段)とを備えている。分岐通路17の先端の出口は、気液分離手段5の上部開口部5aの直上方位置になるように設置されている。
【0025】
切替バルブ18を手動で開操作したとき、集熱回路部4b等を通過した不凍液は、分岐通路17の分岐地点で、第2復回路部4dを流れる不凍液と分岐通路17を流れる不凍液とに分流する。第2復回路部4dを流れる不凍液は、気液分離手段5へ還流される。分岐通路17を流れる不凍液は、分岐通路17を流れて分岐通路17の先端出口から下方に配置された気液分離手段5の上部開口部5aへ滴下される。ここで、分岐通路17の先端の出口と上部開口部5aとの滴下用空間が不凍液の流れを視認可能な視認可能部に相当している。
【0026】
次に、通常運転時における太陽熱集熱装置1の作動を説明する。
通常運転は、集熱回路4と気液分離手段5との内部に不凍液が充填され、リザーブタンク13に不凍液が適正量貯留された状態で開始される。
貯湯装置3は、常時、給水管8aから給水圧が付加された密閉状態に維持されている。それ故、給湯管8bの開閉バルブが開操作されたとき、給湯が行われると共に給湯により減少した同量の水が自動的に給水管8aから補給されている。
【0027】
通常運転釦11aがオン操作されたとき、制御盤11は、水温センサ9aと液温センサ9bからの入力信号に基づいて不凍液と湯との温度差に応じて循環ポンプ7の回転をオンオフ制御している。制御盤11は、液温センサ9bの測定温度と水温センサ9aの測定温度との差が第1温度、例えば液温が水温よりも7度以上高いとき、循環ポンプ7をオン制御して不凍液の循環を開始する。これにより、加熱された不凍液が熱交換器10へ供給され、貯湯装置3内の貯留水は不凍液との熱交換により加熱される。
また、液温センサ9bの測定温度と水温センサ9aの測定温度との差が第2温度、例えば液温と水温との差が4度以下のとき、循環ポンプ7をオフ制御して不凍液の循環を停止する。これにより、集熱回路4内の不凍液は停止し、気液分離手段5内の貯留水の加熱は停止される。
【0028】
次に、
図1,
図2に基づき、太陽熱集熱装置1の不凍液充填手順について説明する。
太陽熱集熱装置1の新規設置や点検修理後において、集熱回路4等の各設備内には不凍液が存在していないため、太陽熱集熱装置1の運転に必要な不凍液を適正量充填するため、試運転の開始前に不凍液充填作業を行なう。この場合、
図2に示すように、気液分離手段5から調圧弁12を取り外し、分岐通路17の先端の出口と気液分離手段5の上部開口部5aとを対向させる。
【0029】
不凍液が収容された不凍液容器19を気液分離手段5の上方に配置し、不凍液容器19と気液分離手段5とを可撓性のホース19aにより連通した後、気液分離手段5内へ不凍液を注入する。この時点で、試運転釦11bをオン操作して循環ポンプ7を回転動作させると共に、切替バルブ18を開操作する。気液分離手段5に供給された不凍液は、循環ポンプ7により圧送されて往回路部4a、集熱回路部4b、第1復回路部4c、熱交換器10、第2復回路部4d内の空気と順次置換され、各回路部内へ充填される。気液分離手段5内の不凍液の液位は、不凍液容器19から供給された不凍液と還流した不凍液により上昇し、上部開口部5aの近傍位置に達したとき、不凍液は気液分離手段5から連通管14を介してリザーブタンク13内へ移動する。ここで、分岐通路17の先端の出口から滴下する不凍液を目視により確認することで、集熱回路4等の全体への不凍液の充填完了を判定することができる。
【0030】
不凍液容器19による不凍液の供給を継続することにより、リザーブタンク13内の不凍液の液位が第2液位センサ16の先端高さ位置に達したとき、制御盤11がリザーブタンク13内の不凍液充填完了をランプ等で報知している。
リザーブタンク13の不凍液充填完了の際、分岐通路17の先端の出口から不凍液の滴下が視認された場合、集熱回路4等リザーブタンク13以外の設備にも不凍液が充填されているため、不凍液注入完了と判定する。また、リザーブタンク13の不凍液充填完了の際、分岐通路17の先端の出口から不凍液の滴下が視認されない場合、集熱回路4の途中部が機材等により閉塞され回路内に不凍液が充填されていないと判定し、各回路部の状態確認を行い、集熱回路4の閉塞状態を解除した後、不凍液注入作業を継続する。
【0031】
次に、実施例1に係る太陽熱集熱装置1の作用、効果について説明する。
集熱回路4の気液分離手段5よりも上流側部分である第2復回路部4dに接続され且つ不凍液の流れを視認可能な視認可能部を有する通路手段6を設けたため、不凍液を不凍液容器19から気液分離手段5に注入し、集熱回路4の循環ポンプ7を駆動したとき、集熱パネル2と集熱回路4の全体に不凍液が充填されると、不凍液が気液分離手段5の上流側部分に達し、気液分離手段5に還流される不凍液を目視により視認できるため、集熱回路4の内部に不凍液が充填されたことを確実に判定することができる。しかも、集熱回路4の不凍液による充填完了を確実に判定できるため、不凍液が不足した状態の運転を防止でき、それ故、太陽熱集熱装置1の熱効率を向上でき、試運転時間を短縮することができる。
【0032】
通路手段6は、気液分離手段5よりも上流側近傍において第2復回路部4dから分岐すると共に不凍液を気液分離手段5に滴下可能な分岐通路17と、この分岐通路17を開閉可能な切替バルブ18とを有するため、通常運転時の集熱回路4の配管構造を変更することなく、視認容易な位置に視認可能部を配置することができ、視認容易性を高めることができる。しかも、通常運転時の集熱回路4の配管構造を変更しないため、集熱回路4の配管を断熱材等で被覆する場合であっても、熱効率と視認確実性とを維持することができる。
【実施例2】
【0033】
次に、実施例2に係る太陽熱集熱装置1Aについて
図3に基づいて説明する。尚、実施例1の太陽熱集熱装置1と異なる構成についてのみ説明し、実施例1と同一の部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
図3に示すように、第2復回路部4dの途中部には、通路手段6Aが設けられている。 通路手段6Aは、気液分離手段5の上流側部分に相当する第2復回路部4dの一部を構成すると共に不凍液の流れを目視可能なチューブにより形成されている。尚、通路手段6Aは、不凍液の流れが視認できれば良く、透明又は半透明のゴムや合成樹脂素材、或いは一部に視認用の窓部を形成したチューブでも良い。
【0035】
図3に示すように、集熱回路4等の各設備全体に不凍液を充填するとき、気液分離手段5の上部開口部5aから調圧弁12を取り外し、パイプ状の接続管21が挿通された蓋部材20を上部開口部5aに装着した後、不凍液容器19のホース19aが接続管21に接続される。
【0036】
試運転等の不凍液注入作業において、不凍液容器19から不凍液を供給したとき、通路手段6A内を不凍液が流れているか否かを目視により確認し、通路手段6A内の不凍液の流れを視認することで集熱回路4等の不凍液の充填完了を判定している。
本実施例によれば、集熱回路4の流路構造を変更しないため、視認可能部を設置するためのスペースが不要になり、回路構造を簡単化でき、安価な太陽熱集熱装置1Aを得ることができる。
【0037】
次に、変更形態に係る太陽熱集熱装置1Bについて
図4に基づいて説明する。この図では、便宜上、太陽熱集熱装置1Bの気液分離手段5に不凍液を注入する状態を示している。尚、実施例1の太陽熱集熱装置1及び実施例2の太陽熱集熱装置1Aと異なる構成についてのみ説明し、前記実施例1,2と同一の部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
リザーブタンク13Aは、透明又は半透明の合成樹脂素材により形成され、外部から不凍液の液位を視認可能に形成されている。このリザーブタンク13Aと気液分離手段5とが、第1バイパス通路31により連通されている。第1バイパス通路31は、一端が気液分離手段5の中段部に接続され、他端がリザーブタンク13Aの上部位置に接続されている。第1バイパス通路31と気液分離手段5との接続部は、第2復回路部4dと気液分離手段5との接続部の高さ位置よりも低い位置に設定されている。
この第1バイパス通路31の途中部には、気液分離手段5とリザーブタンク13Aとの間を手動操作により開閉可能な切替バルブ22が設けられている。
【0039】
往回路部4aの循環ポンプ7の上流側途中部には、三方バルブ23が設けられている。この三方バルブ23とリザーブタンク13Aとは、第2バイパス通路32により連通されている。第2バイパス通路32は、一端が三方バルブ23に接続され、他端がリザーブタンク13Aの底部に接続されている。
【0040】
三方バルブ23は、制御盤11と電気的に接続され、通常運転釦11aがオン操作されたとき、リザーブタンク13Aからの不凍液を遮断すると共に気液分離手段5からの不凍液を循環ポンプ7側へ連通し、試運転釦11bがオン操作されたとき、気液分離手段5からの不凍液を遮断すると共にリザーブタンク13Aからの不凍液を循環ポンプ7側へ連通するように構成されている。
【0041】
通常運転時は、切替バルブ22を閉弁し、通常運転釦11aをオン操作する。これにより、不凍液は、気液分離手段5から集熱パネル2側へ圧送され、加熱された不凍液が熱交換器10へ供給された後、気液分離手段5へ還流される。
試運転における不凍液注入作業時は、調圧弁12に代えて蓋部材20を上部開口部5aに装着し、切替バルブ22を開弁し、不凍液容器19のホース19aと接続管21とを接続した後、試運転釦11bをオン操作する。
【0042】
これにより、不凍液容器19から気液分離手段5へ供給された不凍液は、気液分離手段5から第1バイパス通路31を介してリザーブタンク13Aに供給され、リザーブタンク13Aから第2バイパス通路32を移動して集熱パネル2側へ圧送され、熱交換器10を通過して気液分離手段5へ還流される。このとき、リザーブタンク13A内の不凍液の液位状態を視認することにより、集熱回路4内の不凍液充填状態を判定することができる。
【0043】
次に、別の変更形態について
図5に基づいて説明する。尚、前述した太陽熱集熱装置1Bと異なる構成についてのみ説明する。
往回路部4aとリザーブタンク13Aとは、第3バイパス通路33により連通されている。第3バイパス通路33は、一端が往回路部4aの循環ポンプ7の上流側途中部に接続され、他端がリザーブタンク13Aの底部に接続されている。
【0044】
この第3バイパス通路33の途中部には、リザーブタンク13Aと往回路部4aとの間を開閉可能可能な切替バルブ24が設けられている。
切替バルブ24は、制御盤11と電気的に接続され、通常運転釦11aがオン操作されたとき、リザーブタンク13Aからの不凍液を遮断すると共に気液分離手段5からの不凍液を循環ポンプ7側へ連通し、試運転釦11bがオン操作されたとき、リザーブタンク13Aからの不凍液の流れを循環ポンプ7へ連通するように形成されている。これにより、構造の簡単化を図りつつ、先に説明した変更形態と同様の効果を奏することができる。
【0045】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例1においては、不凍液を注入するとき、不凍液容器のホースを上部開口部に直接挿入した例について説明したが、気液分離手段に装着される蓋部材の接続管を介して不凍液を注入しても良い。この場合、蓋部材に滴下する不凍液を気液分離手段に還流するための不凍液受け部を形成する。
【0046】
2〕前記実施例1においては、切替バルブが手動で操作される例について説明したが、少なくとも、不凍液注入作業時、開弁できれば良く、制御盤により電気的に制御することも可能である。
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。