【実施例】
【0025】
(正・負極格子の作製)
本実施例の鉛蓄電池の正・負極格子基材にはPb−Ca−Sn系合金を用いた。合金組成は正極格子基材がPb−0.06質量%Ca−1.5質量%Sn、負極格子基材がPb−0.05質量%Ca−0.5質量%Snである。上記の合金からなる正極格子基材を圧延した後にエキスパンド加工を行うことで、長さ115mm×幅137mm×厚さ1.6mmの正極格子を作製した。また、上記の合金からなる負極格子基材を圧延した後にエキスパンド加工を行うことで、長さ115mm×幅137mm×厚さ1.4mmの負極格子を作製した。
【0026】
(正極板の作製)
正極板の作製においては、まず、鉛粉に対して13質量%の水と10質量%の希硫酸(比重1.40,20℃)を加え、これを混練して正極活物質ペーストを作製した。この正極活物質ペースト94gを、上記のようにして作製した正極格子に充填して、温度40°C、湿度50RH%の雰囲気下で24時間放置して熟成した後に、温度50°Cで24時間放置して乾燥させ、未化成の正極板を作製した。
【0027】
(負極板の作製)
負極板の作製においては、まず、鉛粉に対して、0.2質量%のリグニンと0.6質量%の硫酸バリウムを添加し、混練機で混練して混合物を準備した。次に、この混合物に、鉛粉に対して13質量%の水を加えて混合し、さらに鉛粉に対して7質量%の希硫酸(比重1.40,20℃)を加えて負極活物質ペーストを作製した。この負極活物質ペースト90gを、上記のようにして作製した負極格子に充填して、自然環境下で24時間放置して熟成した後に、温度50℃で24時間放置して乾燥させ、未化成の負極板を作製した。
【0028】
(実施例1の負極板)
負極板を作製する際、負極活物質ペースト中に、負極活物質(鉛粉)の質量に対して、0.2質量%の粒径約40nmのアセチレンブラックと共に、粒径約20μmの膨張化黒鉛を、0%、0.5質量%、1.0質量%、3.0質量%、5.0質量%添加した。
【0029】
(実施例2の負極板)
負極板を作製する際、負極活物質ペースト中に、負極活物質(鉛粉)の質量に対して、0.2質量%の粒径約40nmのアセチレンブラックと共に、直径約150nm、長さ約20μmのカーボンウィスカーを、0%、0.5質量%、1.0質量%、3.0質量%、5.0質量%添加した。
【0030】
(実施例3の負極板)
負極板を作製する際、負極活物質ペースト中に、負極活物質(鉛粉)の質量に対して、0.2質量%の粒径約40nmのアセチレンブラックと共に、粒径約20μmの膨張化黒鉛及び直径約150nm、長さ約20μmのカーボンウィスカーを、等量ずつ、0%、0.5質量%、1.0質量%、3.0質量%、5.0質量%添加した。
【0031】
(実施例4の負極板)
負極板を作製する際、負極活物質ペースト中に、負極活物質(鉛粉)の質量に対して、0.2質量%の粒径約40nmのアセチレンブラックと共に、直径約150nm、長さ約20μmのグラファイトウィスカーを、0%、0.5質量%、1.0質量%、3.0質量%、5.0質量%添加した。
【0032】
(実施例5の負極板)
負極板を作製する際、負極活物質ペースト中に、負極活物質(鉛粉)の質量に対して、0.2質量%の粒径約40nmのアセチレンブラックと共に、粒径約20μmの膨張化黒鉛及び直径約150nm、長さ約20μmのグラファイトウィスカーを、等量ずつ、0%、0.5質量%、1.0質量%、3.0質量%、5.0質量%添加した。
また、実施例1〜5において、比較のために、膨張化黒鉛及び/又はカーボンウィスカーを添加しないで、アセチレンブラックを、負極活物質ペースト中に、負極活物質(鉛粉)の質量に対して、0.2質量%、0.5質量%、1.0質量%、1.5質量%添加した負極板を作製した。
【0033】
(実施例6の負極板)
負極板を作製する際、負極活物質ペースト中に、負極活物質(鉛粉)の質量に対して、上記のアセチレンブラック0.2質量%と共に、上記の膨張化黒鉛、カーボンウィスカー、グラファイトウィスカーを、それぞれ、1.0質量%添加した。
【0034】
(電池の作製および化成)
上記のようにして作製した負極板を、厚さ0.65mmの微孔性ポリエチレン製の袋状セパレータによって包み、その負極板6枚と上記正極板5枚を、両端に負極板がくるように交互に配置し、同極性の格子耳をCOS法により集合溶接し、未化成電池を作製した。
【0035】
集合溶接の際に一体化して作製された正・負極接続部材(正・負極ストラップ、極柱、およびセル間接続体)は、Pb−Sn−Sb合金からなり、実施例1及び2においてはPb−1.5質量%Sn合金にSbが0(検出限界である0.1質量ppm未満)、50質量ppm、100質量ppm、500質量ppm、1000質量ppm、5000質量ppm、10000質量ppm、25000質量ppm含まれる組成、実施例3〜5においてはPb−1.5質量%Sn合金にSbが0(検出限界である0.1質量ppm未満)、50質量ppm、500質量ppm、5000質量ppm、25000質量ppm含まれる組成とした。実施例6においては、正・負極接続部材は、Pb−1.5質量%Sn合金にSbが100質量ppm含まれる組成と共に、Pb−Ca−Sb合金からなるPb−0.1質量%Ca合金にSbが100質量ppm含まれる組成とした。
【0036】
(実施例1)
上記未化成電池に比重1.23(20℃)の希硫酸を入れ、18Aで20時間化成した後に、希硫酸を一度抜き、その後、比重1.28(20℃)の硫酸(電解液)を入れて、No.A0〜A4(ストラップ中Sb:0ppm、アセチレンブラック:0.05〜1.5質量%、膨張化黒鉛:0%)、No.B1〜B4(ストラップ中Sb:0ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0.5〜5.0質量%)、No.C1〜C5(ストラップ中Sb:50質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜5.0質量%)、No.D1〜D5(ストラップ中Sb:100質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜5.0質量%)、No.E1〜E5(ストラップ中Sb:500質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜5.0質量%)、No.F1〜F5(ストラップ中Sb:1000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜5.0質量%)、No.G1〜G5(ストラップ中Sb:5000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜5.0質量%)、No.H1〜H5(ストラップ中Sb:10000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜5.0質量%)、No.J1〜J5(ストラップ中Sb:25000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜5.0質量%)の実施例1の各鉛蓄電池を完成させた。
【0037】
(鉛蓄電池の評価)
上記のようにして作製した実施例1の各鉛蓄電池について、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを測定した。測定結果を表1に示す。
鉛蓄電池の寿命試験の条件は以下のとおりである。
放電:50A×1min
充電:14.0V(max50A)×1min
上記充放電サイクル中の放電電圧が7.2Vを下回ったときを寿命とした。
また、負極耳痩せ(量)は、寿命時の量であり、減液速度は、寿命時の減液量を寿命サイクル数で除したものである。
なお、表1には、No.A1の鉛蓄電池(ストラップ中Sb:0ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0%)の寿命サイクル数(寿命性能)、減液速度、電解液への遊離カーボン質量を100とし、No.A1以外の各鉛蓄電池についての測定結果は、No.A1に対する%で表示した。但し、放電容量は、定格5時間率容量に対する%であり、負極耳痩せは、初期の厚みに対する%である。
【0038】
【表1】
【0039】
表1より、ストラップ中のSb量が5000質量ppm以下の場合、膨張化黒鉛の添加量が負極活物質の質量に対して0.5〜3.0質量%の範囲では、Sb量が増加するにしたがって、また、膨張化黒鉛の添加量が増加するにしたがって、膨張化黒鉛を添加しないときと比較して、寿命性能が顕著に向上することが分かる(No.A1、C1、D1、E1、F1、G1とB1〜B3、C2〜C4、D2〜D4、E2〜E4、F2〜F4、G2〜G4との比較)。膨張化黒鉛の添加量が負極活物質の質量に対して3.0質量%を超えると、寿命性能の向上は頭打ちになる(No.B4、C5、D5、E5、F5、G5)が、膨張化黒鉛を添加しない場合と比較して改善されている。
ストラップ中のSb量が5000質量ppmを超えると寿命性能の向上は頭打ちになり(No.H1〜H5)、10000質量ppmを超えると負極耳痩せで寿命となる(No.J1〜J5)。
【0040】
(実施例2)
実施例1の鉛蓄電池と同様にして、No.A0〜A4(ストラップ中Sb:0ppm、アセチレンブラック:0.05〜1.5質量%、カーボンウィスカー:0%)、No.K1〜K4(ストラップ中Sb:0ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、カーボンウィスカー:0.5〜5.0質量%)、No.C1、L1〜L4(ストラップ中Sb:50質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、カーボンウィスカー:0〜5.0質量%)、No.D1、M1〜M4(ストラップ中Sb:100質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、カーボンウィスカー:0〜5.0質量%)、No.E1、N1〜N4(ストラップ中Sb:500質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、カーボンウィスカー:0〜5.0質量%)、No.F1、O1〜O4(ストラップ中Sb:1000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、カーボンウィスカー:0〜5.0質量%)、No.G1、P1〜P4(ストラップ中Sb:5000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、カーボンウィスカー:0〜5.0質量%)、No.H1、Q1〜Q4(ストラップ中Sb:10000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、カーボンウィスカー:0〜5.0質量%)、No.J1、R1〜R4(ストラップ中Sb:25000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、カーボンウィスカー:0〜5.0質量%)の実施例2の各鉛蓄電池を完成させた。
【0041】
上記のようにして作製した実施例2の各鉛蓄電池について、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを、実施例1と同様にして測定した。測定結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2より、ストラップ中のSb量が5000質量ppm以下の場合、カーボンウィスカーの添加量が負極活物質の質量に対して0.5〜3.0質量%の範囲では、Sb量が増加するにしたがって、また、カーボンウィスカーの添加量が増加するにしたがって、カーボンウィスカーを添加しないときと比較して、寿命性能が顕著に向上することが分かる(No.A1、C1、D1、E1、F1、G1とK1〜K3、L1〜L3、M1〜M3、N1〜N3、O1〜O3、P1〜P3との比較)。カーボンウィスカーの添加量が負極活物質の質量に対して3.0質量%を超えると、寿命性能の向上は頭打ちになる(No.K4、L4、M4、N4、O4、P4)が、カーボンウィスカーを添加しない場合と比較して改善されている。
ストラップ中のSb量が5000質量ppmを超えると寿命性能の向上は頭打ちになり(No.Q1〜Q4)、10000質量ppmを超えると負極耳痩せで寿命となる(No.R1〜R4)。
【0044】
(実施例3)
実施例1の鉛蓄電池と同様にして、No.A0〜A4(ストラップ中Sb:0ppm、アセチレンブラック:0.05〜1.5質量%、膨張化黒鉛及びカーボンウィスカー:0%)、No.S1〜S4(ストラップ中Sb:0ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0.25〜2.5質量%、カーボンウィスカー:0.25〜2.5質量%)、No.C1、T1〜T4(ストラップ中Sb:50質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜2.5質量%、カーボンウィスカー:0〜2.5質量%)、No.E1、U1〜U4(ストラップ中Sb:500質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜2.5質量%、カーボンウィスカー:0〜2.5質量%)、No.G1、V1〜V4(ストラップ中Sb:5000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜2.5質量%、カーボンウィスカー:0〜2.5質量%)、No.J1、W1〜W4(ストラップ中Sb:25000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜2.5質量%、カーボンウィスカー:0〜2.5質量%)の実施例3の各鉛蓄電池を完成させた。
【0045】
上記のようにして作製した実施例3の各鉛蓄電池について、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを、実施例1と同様にして測定した。測定結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
表3より、ストラップ中のSb量が5000質量ppm以下の場合、膨張化黒鉛及びカーボンウィスカーの添加量が負極活物質の質量に対して0.5〜3.0質量%の範囲では、Sb量が増加するにしたがって、また、膨張化黒鉛及びカーボンウィスカーの添加量が増加するにしたがって、膨張化黒鉛及びカーボンウィスカーを添加しないときと比較して、寿命性能が顕著に向上することが分かる(No.A1、C1、E1、G1とS1〜S3、T1〜T3、U1〜U3、V1〜V3との比較)。膨張化黒鉛及びカーボンウィスカーの添加量が負極活物質の質量に対して3.0質量%を超えると、寿命性能の向上は頭打ちになる(No.S4、T4、U4、V4)が、膨張化黒鉛及びカーボンウィスカーを添加しない場合と比較して改善されている。
ストラップ中のSb量が10000質量ppmを超えると負極耳痩せで寿命となる(No.W1〜W4)。
【0048】
(実施例4)
実施例1の鉛蓄電池と同様にして、No.A0〜A4(ストラップ中Sb:0ppm、アセチレンブラック:0.05〜1.5質量%、グラファイトウィスカー:0%)、No.X1〜X4(ストラップ中Sb:0ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、グラファイトウィスカー:0.5〜5.0質量%)、No.C1、Y1〜Y4(ストラップ中Sb:50質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、グラファイトウィスカー:0〜5.0質量%)、No.E1、Z1〜Z4(ストラップ中Sb:500質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、グラファイトウィスカー:0〜5.0質量%)、No.G1、AA1〜AA4(ストラップ中Sb:5000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、グラファイトウィスカー:0〜5.0質量%)、No.J1、AB1〜AB4(ストラップ中Sb:25000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、カーボンウィスカー:0〜5.0質量%)の実施例4の各鉛蓄電池を完成させた。
【0049】
上記のようにして作製した実施例4の各鉛蓄電池について、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを、実施例1と同様にして測定した。測定結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
表4より、ストラップ中のSb量が5000質量ppm以下の場合、グラファイトウィスカーの添加量が負極活物質の質量に対して0.5〜3.0質量%の範囲では、Sb量が増加するにしたがって、また、グラファイトウィスカーの添加量が増加するにしたがって、グラファイトウィスカーを添加しないときと比較して、寿命性能が顕著に向上することが分かる(No.A1、C1、E1、G1とX1〜X3、Y1〜Y3、Z1〜Z3、AA1〜AA3との比較)。グラファイトウィスカーの添加量が負極活物質の質量に対して3.0質量%を超えると、寿命性能の向上は頭打ちになる(No.X4、Y4、Z4、AA4)が、グラファイトウィスカーを添加しない場合と比較して改善されている。
ストラップ中のSb量が、10000質量ppmを超えると負極耳痩せで寿命となる(No.AB1〜AB4)。
【0052】
(実施例5)
実施例1の鉛蓄電池と同様にして、No.A0〜A4(ストラップ中Sb:0ppm、アセチレンブラック:0.05〜1.5質量%、膨張化黒鉛及びグラファイトウィスカー:0%)、No.AC1〜AC4(ストラップ中Sb:0ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0.25〜2.5質量%、グラファイトウィスカー:0.25〜2.5質量%)、No.C1、AD1〜AD4(ストラップ中Sb:50質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜2.5質量%、グラファイトウィスカー:0〜2.5質量%)、No.E1、AE1〜AE4(ストラップ中Sb:500質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜2.5質量%、グラファイトウィスカー:0〜2.5質量%)、No.G1、AF1〜AF4(ストラップ中Sb:5000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜2.5質量%、グラファイトウィスカー:0〜2.5質量%)、No.J1、AG1〜AG4(ストラップ中Sb:25000質量ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:0〜2.5質量%、グラファイトウィスカー:0〜2.5質量%)の実施例5の各鉛蓄電池を完成させた。
【0053】
上記のようにして作製した実施例5の各鉛蓄電池について、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを、実施例1と同様にして測定した。測定結果を表5に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
表5より、ストラップ中のSb量が5000質量ppm以下の場合、膨張化黒鉛及びグラファイトウィスカーの添加量が負極活物質の質量に対して0.5〜3.0質量%の範囲では、Sb量が増加するにしたがって、また、膨張化黒鉛及びグラファイトウィスカーの添加量が増加するにしたがって、膨張化黒鉛及びグラファイトウィスカーを添加しないときと比較して、寿命性能が顕著に向上することが分かる(No.A1、C1、E1、G1とAC1〜AC3、AD1〜AD3、AE1〜AE3、AF1〜AF3との比較)。膨張化黒鉛及びグラファイトウィスカーの添加量が負極活物質の質量に対して3.0質量%を超えると、寿命性能の向上は頭打ちになる(No.AC4、AD4、AE4、AF4)が、膨張化黒鉛及びグラファイトウィスカーを添加しない場合と比較して改善されている。
ストラップ中のSb量が10000質量ppmを超えると負極耳痩せで寿命となる(No.AG1〜AG4)
【0056】
(実施例6)
実施例1の鉛蓄電池と同様にして、No.D3(Pb−1.5質量%Sn−Sbストラップ合金中のSb:100ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:1.0%)、No.M2(Pb−1.5質量%Sn−Sbストラップ合金中のSb:100ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、カーボンウィスカー:1.0%)、No.QAH1(Pb−1.5質量%Sn−Sbストラップ合金中のSb:100ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、グラファイトウィスカー:1.0質量%)、No.AH2(Pb−0.1質量%Ca−Sbストラップ合金中のSb:100ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、膨張化黒鉛:1.0%)、No.AH3(Pb−0.1質量%Ca−Sbストラップ合金中のSb:100ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、カーボンウィスカー:1.0%)、No.AH4(Pb−0.1質量%Ca−Sbストラップ合金中のSb:100ppm、アセチレンブラック:0.2質量%、グラファイトウィスカー:1.0質量%)の実施例6の各鉛蓄電池を完成させた。
【0057】
上記のようにして作製した実施例6の各鉛蓄電池について、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを、実施例1と同様にして測定した。測定結果を表6に示す。
【0058】
【表6】
【0059】
表6より、ストラップ合金が、Pb−Ca系合金であっても、Pb−Sn系合金と同等の効果を奏することが分かる。
【0060】
また、表1〜表5より、以下のようなことが分かる。
アセチレンブラック、膨張化黒鉛、カーボンウィスカー、グラファイトウィスカーともに添加量を増加すると寿命性能が向上する(No.A0〜A4、B1〜B4、K1〜K4、S1〜S4、X1〜X4、AC1〜AC4参照)が、膨張化黒鉛及び/又はカーボンウィスカーの方が、アセチレンブラックよりも、少量の添加で、寿命性能向上の効果がある(No.A3とB1、K1、S1、X1及びAC1との比較、No.A4とB2、K2、S2、X2及びAC2との比較)。
【0061】
膨張化黒鉛及び/又はカーボンウィスカー(グラファイトウィスカー)の添加量が増加すると相対的に負極活物質(鉛粉)の量が減少するので放電容量が低下する。膨張化黒鉛及び/又はカーボンウィスカー(グラファイトウィスカー)の添加量が負極活物質の質量に対して3.0質量%までは、定格5時間率容量に対して100%以上であり、定格を満たす(B1〜B3、C2〜C4、D2〜D4、E2〜E4、F2〜F4、G2〜G4、K1〜K3、L1〜L3、M1〜M3、N1〜N3、O1〜O3、P1〜P3、S1〜S3、T1〜T3、U1〜U3、V1〜V3、X1〜X3、Y1〜Y3、Z1〜Z3、AA1〜AA3、AC1〜AC3、AD1〜AD3、AE1〜AE3、AF1〜AF3)。
【0062】
膨張化黒鉛及び/又はカーボンウィスカー(グラファイトウィスカー)の添加量が増加すると減液速度はやや増加するが、ストラップ中のSb量が5000質量ppm以下の場合、膨張化黒鉛及び/又はカーボンウィスカー(グラファイトウィスカー)の添加量が負極活物質の質量に対して0.5〜3.0質量%の範囲で、減液は抑制されている(B1〜B3、C2〜C4、D2〜D4、E2〜E4、F2〜F4、G2〜G4、K1〜K3、L1〜L3、M1〜M3、N1〜N3、O1〜O3、P1〜P3、S1〜S3、T1〜T3、U1〜U3、V1〜V3、X1〜X3、Y1〜Y3、Z1〜Z3、AA1〜AA3、AC1〜AC3、AD1〜AD3、AE1〜AE3、AF1〜AF3)。膨張化黒鉛及び/又はカーボンウィスカーの添加量が、負極活物質の質量に対して3.0質量%を超えると、減液速度が増加する(No.B4、C5、D5、E5、F5、G5、K4、L4、M4、N4、O4、P4、S4、T4、U4、V4、X4、Y4、Z4、AA4、AC4、AD4、AE4、AF4)。
ストラップ中のSb量が5000質量ppmを超えると、減液速度が顕著に増加する(No.H1〜H5、J1〜J5、Q1〜Q4、R1〜R4、W1〜W4、AB1〜AB4、AG1〜AG4)ので、好ましくない。
【0063】
負極活物質中に膨張化黒鉛及び/又はカーボンウィスカー(グラファイトウィスカー)を添加した場合、アセチレンブラックを添加した場合と比べて、添加量を増加しても、電解液への遊離カーボン量は顕著に少ない(No.A1〜A4とB1〜B4、C2〜C5、D2〜D5、E2〜E5、F2〜F5、G2〜G5、K1〜K4、L1〜L4、M1〜M4、N1〜N4、O1〜O4、P1〜P4、S1〜S4、T1〜T4、U1〜U4、V1〜V4、X1〜X4、Y1〜Y4、Z1〜Z4、AA1〜AA4、AC1〜AC4、AD1〜AD4、AE1〜AE4及びAF1〜AF4との比較)。
【0064】
膨張化黒鉛及び/又はカーボンウィスカーの添加量が増加すると負極耳痩せが発生するが、ストラップ中のSb量が5000質量ppm以下の場合、膨張化黒鉛及び/又はカーボンウィスカーの添加量が負極活物質の質量に対して0.5〜3.0質量%の範囲では、初期の厚みに対して十分に少ない量である(B1〜B3、C2〜C4、D2〜D4、E2〜E4、F2〜F4、G2〜G4、K1〜K3、L1〜L3、M1〜M3、N1〜N3、O1〜O3、P1〜P3、S1〜S3、T1〜T3、U1〜U3、V1〜V3、X1〜X3、Y1〜Y3、Z1〜Z3、AA1〜AA3、AC1〜AC3、AD1〜AD3、AE1〜AE3、AF1〜AF3)。膨張化黒鉛及び/又はカーボンウィスカーの添加量が、負極活物質の質量に対して3.0質量%を超えると、負極耳痩せが増大する(No.B4、C5、D5、E5、F5、G5、K4、L4、M4、N4、O4、P4、S4、T4、U4、V4、X4、Y4、Z4、AA4、AC4、AD4、AE4、AF4)。
ストラップ中のSb量が5000質量ppmを超えると、負極耳痩せが増大し、10000ppm以上では負極耳痩せが50%以上進行する(No.H1〜H5、J1〜J5、Q1〜Q4、R1〜R4、W1〜W4、AB1〜AB4、AG1〜AG4)。この場合、高率放電時に溶断する可能性があるので、上限を5000ppmとする。
【0065】
以上のとおり、本発明においては、正および負極格子は実質的にSbを含まないPb−Ca−Sn系合金からなり、正および負極ストラップは5000質量ppm以下のSbを含んだ鉛合金からなり、負極活物質中にカーボンを添加した鉛蓄電池において、前記カーボンの一部に膨張化黒鉛及び/又はウィスカー状カーボンを使用したことにより、寿命性能が顕著に向上し、減液が抑制され、負極耳痩せが抑制され、かつ、電解液への遊離カーボン量が少なく、電槽汚れなどのない鉛蓄電池が得られる。
また、膨張化黒鉛及び/又はウィスカー状カーボンの添加量の総量は0.5〜3.0質量%とすることが好ましい。
【0066】
本発明の鉛蓄電池は、上述したように、減液が抑制されているから、液式鉛蓄電池として用いられる。また、実施例1に記載したように、未化成の正および負極板を用いて電池を作製した後、電池に所定の希硫酸を注液して通電することにより、これらの極板群を電槽内において化成する、いわゆる電槽化成法で製造される液式鉛蓄電池に適用することができる。
【0067】
また、近年、自動車には、排出ガス削減を目的に、信号待ちなどで停車中はエンジンを停止し、発進時に再起動するアイドリングストップが求められるようになっているが、エンジン停止中、電力は、発電機からではなく、鉛蓄電池から供給されるため、鉛蓄電池は従来よりも深く放電されるようになり、さらに、過充電防止システムが導入されているため、鉛蓄電池は充電不足状態で使用されることが多くなった。
上記のように深い放電と慢性的な充電不足状態で使用されると、サルフェーションが発生したり、負極格子耳部の痩せ細りが生じて、寿命性能が低下する傾向にあるが、本発明の鉛蓄電池は、前述したように、寿命性能が顕著に向上し、負極耳痩せが抑制されているから、アイドリングストップ車用として最適である。