(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変調手段は、前記データ系列を、階乗数が前記入力信号のデータのパターン数以上となる2の累乗数の内、最小の数に等分割して前記サブデータ系列を生成することを特徴とする請求項1に記載の通信機。
前記変調手段は、前記データ系列としてCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の通信機。
前記復調手段は、値の範囲であるレンジを前記サブ変調データの数と同じ個数用いて、前記レンジに該レンジを一意に特定するための番号を割り当て、前記サブ変調データのそれぞれについて、該サブ変調データの各要素が属する前記レンジを検出し、該サブ変調データの最も多くの要素が属する前記レンジに割り当てられた該レンジを一意に特定するための番号を、該サブ変調データに対応する前記固有の番号として検出することを特徴とする請求項4に記載の通信機。
前記変調ステップにおいて、前記データ系列を、階乗数が前記入力信号のデータのパターン数以上となる2の累乗数の内、最小の数に等分割して前記サブデータ系列を生成することを特徴とする請求項6に記載の通信方法。
前記変調ステップにおいて、前記データ系列としてCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列を用いることを特徴とする請求項6または7に記載の通信方法。
前記復調ステップにおいて、値の範囲であるレンジを前記サブ変調データの数と同じ個数用いて、前記レンジに該レンジを一意に特定するための番号を割り当て、前記サブ変調データのそれぞれについて、該サブ変調データの各要素が属する前記レンジを検出し、該サブ変調データの最も多くの要素が属する前記レンジに割り当てられた該レンジを一意に特定するための番号を、該サブ変調データに対応する前記固有の番号として検出することを特徴とする請求項9に記載の通信方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OFDM方式の通信では、PAPRを低減することが課題となっている。特許文献1では、PAPRを低減する最適位相を算出するために繰り返し計算処理を行い、サブキャリアごとに位相を制御する必要がある。また特許文献1に開示されている技術では、PAPRの低減の程度を制御することはできない。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、OFDM方式の通信において、PAPRを低減し、さらにPAPRの低減の程度を制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る通信機は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機であって、
データの集合であるデータ系列であって、データのシフトを行っていない同じデータ系列との間の自己相関値が、データのシフトを行ったデータ系列との間の自己相関値に比べて高い、自己相関特性を有する任意のデータ系列を、階乗数が入力信号のデータのパターン数以上となる所定の数に等分割してサブデータ系列を生成し、前記サブデータ系列の各要素に所定の振幅係数および前記サブデータ系列ごとに定めた固有の番号をそれぞれ乗算する演算を行い、前記入力信号のデータのパターンに一対一で対応づけられた並び替え規則に基づき、該演算を施した前記サブデータ系列を並び替えて合成して変調データを生成する変調手段と、
前記変調データの逆高速フーリエ変換を行うIFFT手段と、
前記IFFT手段の演算結果を前記所定の数に等分割してサブ演算結果を生成し、前記サブ演算結果ごとに定めた平準化係数を前記サブ演算結果の各要素に乗算する演算手段と、
前記演算手段で演算を施した前記サブ演算結果を前記演算手段で等分割したときの位置に並べて合成してベースバンド信号を生成する合成手段と、
前記ベースバンド信号から送信信号を生成して送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記変調手段は、前記データ系列を、階乗数が前記入力信号のデータのパターン数以上となる2の累乗数の内、最小の数に等分割して前記サブデータ系列を生成する。
【0009】
好ましくは、前記変調手段は、前記データ系列としてCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列を用いる。
【0010】
本発明の第2の観点に係る通信機は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機であって、
送信信号を受信してベースバンド信号を生成する受信手段と、
前記ベースバンド信号を直並列変換して並列信号を生成し、前記並列信号を所定の数に等分割してサブ並列信号を生成し、前記サブ並列信号の各要素を前記サブ並列信号ごとに定めた平準化係数で除算する演算を行い、該演算を施した前記サブ並列信号を等分割したときの位置に並べて合成する逆演算手段と、
前記逆演算手段の演算結果の高速フーリエ変換を行って変調データを生成するFFT手段と、
前記変調データを前記所定の数に等分割してサブ変調データを生成し、前記サブ変調データの各要素の値に基づき所定の基準に従って前記サブ変調データごとに定めた固有の番号を検出し、前記サブ変調データごとに定めた固有の番号、等分割したときの前記サブ変調データの並び順、および入力信号のデータのパターンに一対一で対応づけられた所定の並び替え規則に基づき、前記入力信号を復元する復調手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記復調手段は、値の範囲であるレンジを前記サブ変調データの数と同じ個数用いて、前記レンジに該レンジを一意に特定するための番号を割り当て、前記サブ変調データのそれぞれについて、該サブ変調データの各要素が属する前記レンジを検出し、該サブ変調データの最も多くの要素が属する前記レンジに割り当てられた該レンジを一意に特定するための番号を、該サブ変調データに対応する前記固有の番号として検出する。
【0012】
本発明の第3の観点に係る通信方法は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機が行う通信方法であって、
データの集合であるデータ系列であって、データのシフトを行っていない同じデータ系列との間の自己相関値が、データのシフトを行ったデータ系列との間の自己相関値に比べて高い、自己相関特性を有する任意のデータ系列を、階乗数が入力信号のデータのパターン数以上となる所定の数に等分割してサブデータ系列を生成し、前記サブデータ系列の各要素に所定の振幅係数および前記サブデータ系列ごとに定めた固有の番号をそれぞれ乗算する演算を行い、前記入力信号のデータのパターンに一対一で対応づけられた並び替え規則に基づき、該演算を施した前記サブデータ系列を並び替えて合成して変調データを生成する変調ステップと、
前記変調データの逆高速フーリエ変換を行うIFFTステップと、
前記IFFTステップの演算結果を前記所定の数に等分割してサブ演算結果を生成し、前記サブ演算結果ごとに定めた平準化係数を前記サブ演算結果の各要素に乗算する演算ステップと、
前記演算ステップで演算を施した前記サブ演算結果を前記演算ステップで等分割したときの位置に並べて合成してベースバンド信号を生成する合成ステップと、
前記ベースバンド信号から送信信号を生成して送信する送信ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記変調ステップにおいて、前記データ系列を、階乗数が前記入力信号のデータのパターン数以上となる2の累乗数の内、最小の数に等分割して前記サブデータ系列を生成する。
【0014】
好ましくは、前記変調ステップにおいて、前記データ系列としてCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列を用いる。
【0015】
本発明の第4の観点に係る通信方法は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機が行う通信方法であって、
送信信号を受信してベースバンド信号を生成する受信ステップと、
前記ベースバンド信号を直並列変換して並列信号を生成し、前記並列信号を所定の数に等分割してサブ並列信号を生成し、前記サブ並列信号の各要素を前記サブ並列信号ごとに定めた平準化係数で除算する演算を行い、該演算を施した前記サブ並列信号を等分割したときの位置に並べて合成する逆演算ステップと、
前記逆演算ステップの演算結果の高速フーリエ変換を行って変調データを生成するFFTステップと、
前記変調データを前記所定の数に等分割してサブ変調データを生成し、前記サブ変調データの各要素の値に基づき所定の基準に従って前記サブ変調データごとに定めた固有の番号を検出し、前記サブ変調データごとに定めた固有の番号、等分割したときの前記サブ変調データの並び順、および入力信号のデータのパターンに一対一で対応づけられた所定の並び替え規則に基づき、前記入力信号を復元する復調ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記復調ステップにおいて、値の範囲であるレンジを前記サブ変調データの数と同じ個数用いて、前記レンジに該レンジを一意に特定するための番号を割り当て、前記サブ変調データのそれぞれについて、該サブ変調データの各要素が属する前記レンジを検出し、該サブ変調データの最も多くの要素が属する前記レンジに割り当てられた該レンジを一意に特定するための番号を、該サブ変調データに対応する前記固有の番号として検出する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、OFDM方式の通信において、PAPRを低減し、さらにPAPRの低減の程度を制御することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。以下の説明において、IFFT(Inverse Fast Fourier Transformation:逆高速フーリエ変換)は、IFFTとIDFT(Inverse Discrete Fourier Transformation:逆離散フーリエ変換)を含む概念とする。したがって本発明の実施の形態においては、IFFTの代わりに、IDFTを行うよう構成してもよい。同様にFFT(Fast Fourier Transformation:高速フーリエ変換)は、FFTとDFT(Discrete Fourier Transformation:離散フーリエ変換)を含む概念とする。またIDFTおよびDFTを行う場合は、以下の説明におけるFFTサイズとは、DFTのサイズを意味する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る通信機の構成例を示すブロック図である。通信機1は、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式の無線通信により他の機器と通信を行う。通信機1は、アンテナ10、変調部11、系列生成部12、IFFT部13、演算部14、合成部15、送信部16、およびコントローラ20を備える。
【0021】
コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)21、RAM(Random Access Memory)23、およびROM(Read-Only Memory)24を備える。複雑化を避け、理解を容易にするために、コントローラ20から各部への信号線が省略されているが、コントローラ20は通信機1の各部にI/O(Input/Output)22を介して接続しており、それらの処理の開始、終了、処理内容の制御を行う。
【0022】
RAM23には、例えば送信フレームを生成するためのデータが記憶されている。ROM24は、コントローラ20が通信機1の動作を制御するための制御プログラムを格納する。コントローラ20は、制御プログラムに基づいて、通信機1を制御する。
【0023】
図2は、実施の形態に係る通信機の異なる構成例を示すブロック図である。上述の通信機1に受信機能をもたせるため、
図2に示す通信機1はさらに復調部31、FFT部32、逆演算部33、受信部34、および送受信切替部35を備える。送信機能および受信機能を備える
図2に示す通信機1を用いて、通信機1が行う通信方法について以下に説明する。
【0024】
系列生成部12は、データの集合であるデータ系列であって、自己相関特性を有する任意のデータ系列を、階乗数が入力信号のデータのパターン数以上となる所定の数に等分割してサブデータ系列を生成し、変調部11に送る。自己相関特性を有する任意のデータ系列とは、データのシフトを行っていない同じデータ系列との間の自己相関値が、データの任意のシフトを行ったデータ系列との間の自己相関値に比べて高いデータ系列である。データの任意のシフトを行ったデータ系列は、データのシフトを行っていないデータ系列と比べて、少なくとも1の要素の値が異なる。そのようなデータ系列として、例えばCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列を用いることができる。CAZAC系列の要素数をNとすると、CAZAC系列は下記(1)式で表され、CAZAC系列の各要素は下記(2)式で表される。系列生成部12は、入力信号の要素の数についての情報を予め保持しているものとする。
【0027】
系列生成部12は、下記(3)式で表されるように、CAZAC系列を階乗数が入力信号のデータのパターン数以上となる所定の数Mに等分割してサブデータ系列b
0、b
1、・・・、b
M−1を生成する。例えば、入力信号の要素の数が4であれば、入力信号の各要素の値は0または1であるから、入力信号のデータのパターン数は2の4乗である16である。4の階乗数は24であるから、所定の数として4以上の自然数を用いることができる。所定の数は、階乗数が入力信号のデータのパターン数以上となる2の累乗数の内、最小の数としてもよい。2の累乗数とすることで、IFFT部13での処理を高速化することができ、2の累乗数の内、最小の数とすることで、送信信号のビット数の増加を抑制することができる。同様に、入力信号の要素の数が8の場合には所定の数として8を、入力信号の要素の数が16または32の場合には所定の数として16を、入力信号の要素の数が64の場合には所定の数として32を用いるよう構成してもよい。
【0029】
変調部11は、サブデータ系列の各要素に所定の実数である振幅係数およびサブデータ系列ごとに定めた固有の番号をそれぞれ乗算する演算を行う。サブデータ系列ごとに定めた固有の番号とは、1から始まる連続した自然数である。例えば、上記(3)式のサブデータ系列b
0の固有の番号は1、サブデータ系列b
1の固有の番号は2のように予め定めておく。なお固有の番号は、あるデータ系列に含まれる各サブデータ系列の固有の番号が1から始まる連続した自然数であればよく、必ずしもデータ系列において各サブデータ系列が位置する順に、各サブデータ系列に1から始まる連続した自然数を割り当てる必要はない。上記(3)式中のM=4とすると、各サブデータ系列の各要素は、下記(4)式で表される。
【0031】
振幅係数をaとし、サブデータ系列b
0、b
1、b
2、b
3の固有の番号をそれぞれ1、2、3、4とすると、上述の演算を施したサブデータ系列b’
0、b’
1、b’
2、b’
3はそれぞれ下記(5)式で表される。
【0033】
変調部11は、入力信号のデータのパターンに一対一で対応づけられた並び替え規則を用いる。入力信号の要素の数が4である場合には、データのパターン数は16である。また4つのデータの並び替え規則は、いずれのデータの位置も変更しない場合を含めると、4の階乗の24種類存在する。そこで24種類の内、任意の16種類を入力信号のデータのパターンに一対一で対応付ける。
図3は、実施の形態に係る通信機が用いる並び替え規則を示す図である。入力信号の要素の数が4である場合には、P1〜P16までの並び替え規則を用意する。例えば、入力信号1010に対応付けられた並び替え規則P11は、並び替え前において2番目のデータが1番目に、4番目のデータが2番目に、1番目のデータが3番目に、3番目のデータが4番目に位置するように入れ替えることを示している。
【0034】
変調部11は、入力信号のデータパターンに一対一で対応づけられた並び替え規則に基づき、上述の演算を施したサブデータ系列を並び替えて合成して変調データを生成する。ここで、入力信号が1010だとすると、上記(5)式で表される上述の演算を施したサブデータ系列を並び替えて合成した変調データc’は、下記(6)式で表される。
【0036】
変調部11は、変調データをIFFT部13に送る。IFFT部13は、変調データのIFFTを行い、演算結果を演算部14に送る。演算部14は、IFFT部13の演算結果を所定の数に等分割してサブ演算結果を生成し、サブ演算結果ごとに定めた実数である平準化係数をサブ演算結果の各要素に乗算する。所定の数とは、系列生成部12で用いた所定の数と同じである。平準化係数は、後述するように、PAPR(Peak-to-Average Power Ratio:ピーク対平均電力比)を低減するのに好適な値を用いる。IFFT部13の演算結果uは、下記(7)式で表される。
【0038】
変調データが上記(6)式で表される場合には、演算部14は、下記(8)式で表されるように演算結果uを4等分してサブ演算結果u
0、u
1、u
2、u
3を生成する。
【0040】
演算部14は、サブ演算結果の各要素にサブ演算結果ごとに定めた実数である平準化係数を乗算する。サブ演算結果ごとに定めた平準化係数をf
0、f
1、f
2、f
3とすると、上述の演算を施したサブ演算結果u’
0、u’
1、u’
2、u’
3は、下記(9)式で表される。
【0042】
演算部14は、上述の演算を施したサブ演算結果を合成部15に送る。合成部15は、上記(9)式で表される演算部14で演算を施したサブ演算結果を、下記(10)式のように等分割したときの位置に並べて合成してベースバンド信号を生成する。合成部15は、ベースバンド信号を送信部16に送る。
【0044】
送信部16は、ベースバンド信号から送信信号を生成して、送受信切替部35およびアンテナ10を介して他の機器に送信する。
【0045】
図4は、実施の形態に係る通信機が行う変調処理を示す図である。横軸は要素であり、縦軸は要素の絶対値である。CAZAC系列の各要素は複素数であるので、要素の絶対値を用いて表示を簡易化する。入力信号の要素の数を4とし、CAZAC系列の要素の数を8とする。
図4(a)は入力信号を表し、
図4(b)はCAZAC系列を表す。系列生成部12でCAZAC系列を4等分してサブデータ系列を生成し、上記(5)式で示すように、変調部11でサブデータ系列ごとに定めた固有の番号および振幅係数を乗算した結果が
図4(c)である。図中のa
0=a、a
1=2a、a
2=3a、a
3=4aである。
図4(d)は、入力信号1010に対応づけられた並び替え規則に基づき、
図4(c)に示す演算を施したサブデータ系列を並び替えて合成した変調データである。
図4(e)は、変調データのIFFTを行った結果である。v
0〜v
7は、変調データのIFFTを行った結果の各要素の値を表す。
図4(f)は、
図4(e)に示す変調データのIFFTを行った結果を4等分し、上記(9)式で示すように、平準化係数を乗算した結果である。
図4(f)に示すデータ基づきベースバンド信号が生成される。
【0046】
図5および
図6は、実施の形態に係るIFFT部での処理による振幅の変化を示す図である。入力信号の要素の数を4、CAZAC系列の要素の数およびFFTサイズを2048、サブデータ系列の数を4として、入力信号のデータの各パターンについて、変調部11からIFFT部13までの処理のシミュレーションを行った。図中の順序とは、変調部11で演算を施したサブデータ系列を並び替えた後の該サブデータ系列の順序を意味する。IFFT前の欄には、横軸を要素とし、縦軸に変調データの各要素の実部の値を示した。IFFT後の欄には、横軸を要素とし、縦軸に変調データのIFFTを行った結果の各要素の実部の値を示した。図に示すとおり、並び替えた後の該サブデータ系列の順序によらず、変調データのIFFTを行った結果の各要素が描く包絡線はほぼ一致することがわかる。そのため、演算結果を等分割して生成したサブ演算結果ごとに定めた平準化係数をサブ演算結果の各要素に乗算して、
図4(f)に示すように包絡線を直線に近づけることでPAPRを低減することができる。虚部についても同様に、変調データのIFFTを行った結果の各要素が描く包絡線はほぼ一致する結果が得られる。
【0047】
図7は、サブデータ系列の数を変えた場合の実施の形態に係るIFFT部での処理による振幅の変化を示す図である。上段は、入力信号の要素の数を32とし、CAZAC系列の要素の数およびFFTサイズを16384とし、サブデータ系列の数を16として、変調部11からIFFT部13までの処理のシミュレーションを行った結果である。階乗数が2の32乗以上となる自然数は13であり、13以上の自然数の内、最小の2の累乗数である16を、サブデータ系列の数として用いた。下段は、入力信号の要素の数を256とし、CAZAC系列の要素の数およびFFTサイズを16384とし、サブデータ系列の数を64として、変調部11からIFFT部13までの処理のシミュレーションを行った結果である。階乗数が2の256乗以上となる自然数は58であり、58以上の自然数の内、最小の2の累乗数である64をサブデータ系列の数として用いた。IFFT前の欄には、横軸を要素とし、縦軸に変調データの各要素の実部の値を示した。IFFT後の欄には、横軸を要素とし、縦軸に変調データのIFFTを行った結果の各要素の実部の値を示した。図に示すとおり、上段と下段のIFFTを行った結果の各要素が描く包絡線はほぼ一致し、FFTサイズによって変調データのIFFTを行った結果の各要素が描く包絡線の形が決定されることがわかる。
【0048】
図8は、実施の形態に係る演算部での処理による振幅と信号点配置図の変化を示す図である。入力信号1010について、変調部11から演算部14までの処理のシミュレーションを行った。変調部演算結果の欄の上段には、横軸を要素とし、縦軸に変調データの各要素の実部の値を示した。変調部演算結果の欄の下段には、変調データの信号点配置図を示した。IFFT部演算結果の欄の上段には、横軸を要素とし、縦軸にIFFT部13で変調データのIFFTを行った結果の各要素の実部の値を示した。IFFT部演算結果の欄の下段には、IFFT部13で変調データのIFFTを行った結果の信号点配置図を示した。演算部演算結果の欄の上段には、演算部14で演算を施したサブ演算結果の各要素の実部の値を示した。演算部演算結果の欄の下段には、演算部14で演算を施したサブ演算結果の信号点配置図を示した。演算部14において、上記(9)式中の平準化係数f
0=1、f
1=1.3、f
2=1.8、f
3=1.8として演算処理を行った。
【0049】
IFFT部13で変調データのIFFTを行った結果から生成した信号のPAPRは5.5306dBであるのに対し、演算部14で演算を施したサブ演算結果を合成して生成した信号のPAPRは4.0022dBであり、演算部14で平準化係数を乗算する演算を施すことで、PAPRを低減できることがわかる。
【0050】
図9は、実施の形態に係る演算部での処理によるPAPRの変化を示す図である。横軸は、並び替え規則、縦軸はPAPR(単位:dB)である。入力信号の要素の数を4、CAZAC系列の要素の数およびFFTサイズを2048、サブデータ系列の数を4として、4の階乗数である24種類の並び替え規則について、変調部11から演算部14までの処理のシミュレーションを行った。プロット点をアスタリスクで表したグラフがIFFT部13で変調データのIFFTを行った結果から生成した信号のPAPRであり、プロット点を丸で表したグラフが演算部14で演算を施したサブ演算結果を合成して生成した信号のPAPRである。図に示すとおり、いずれの並び替え規則を適用した場合においても、演算部14で平準化係数を乗算する演算を施すことで、PAPRを約1.5dB低減できることがわかる。
【0051】
図10は、実施の形態に係る通信機が行う送信制御の動作の一例を示すフローチャートである。系列生成部12は、自己相関特性を有する任意のデータ系列を所定の数に等分割してサブデータ系列を生成する(ステップS110)。変調部11は、サブデータ系列の各要素に所定の振幅係数およびサブデータ系列ごとに定めた固有の番号をそれぞれ乗算する(ステップS120)。変調部11は、入力信号のデータのパターンに一対一で対応づけられた並び替え規則に基づき、上述の演算を施したサブデータ系列を並び替えて合成して変調データを生成する(ステップS130)。
【0052】
IFFT部13は、変調データのIFFTを行う(ステップS140)。演算部14は、IFFT部13の演算結果を所定の数に等分割してサブ演算結果を生成し、サブ演算結果ごとに定めた平準化係数をサブ演算結果の各要素に乗算する(ステップS150)。合成部15は、演算部14で演算を施したサブ演算結果を、等分割したときの位置に並べて合成してベースバンド信号を生成する(ステップS160)。送信部16は、ベースバンド信号から送信信号を生成して、送受信切替部35およびアンテナ10を介して他の機器に送信する(ステップS170)。ステップS170の送信処理が完了すると、処理を終了する。
【0053】
以上説明したとおり、送信側で上述の演算を施すことによりPAPRを低減することができる。受信側での処理を以下に説明する。受信部34は、アンテナ10および送受信切替部35を介して送信信号を受信し、ベースバンド信号を生成し、逆演算部33に送る。
【0054】
逆演算部33は、ベースバンド信号を直並列変換し、並列信号を生成する。並列信号rは、上記(10)式で表される、送信側の合成部15で合成したデータu’に一致する。逆演算部33は、並列信号を所定の数に等分割してサブ並列信号を生成する。所定の数とは、送信側の系列生成部12で用いた所定の数と同じであり、サブ並列信号r
0、r
1、r
2、r
3は、それぞれu’
0、u’
1、u’
2、u’
3に一致する。逆演算部33は、サブ並列信号の各要素をサブ並列信号ごとに定めた実数である平準化係数で除算する。平準化係数は、送信側の演算部14で用いたものと同じである。送信側では、予め所定の数および平準化係数についての情報を保持しているものとする。上述の演算を施したサブ並列信号r’
0、r’
1、r’
2、r’
3は、下記(11)式で表され、それぞれ送信側の演算部14でIFFT部13の演算結果uを4等分して得られたサブ演算結果u
0、u
1、u
2、u
3に一致する。
【0056】
逆演算部33は、上述の演算を施したサブ並列信号を等分割したときの位置に並べて合成し、FFT部32に送る。サブ並列信号を等分割したときの位置に並べて合成したデータは、送信側のIFFT部13の演算結果uに一致する。FFT部32は、逆演算部33の演算結果のFFTを行い、変調データを生成し、復調部31に送る。該変調データは、送信側の変調部11で生成した変調データに一致する。
【0057】
復調部31は、変調データを所定の数に等分割してサブ変調データを生成する。変調データsを所定の数に等分割して生成したサブ変調データs
0、s
1、s
2、s
3は、下記(12)式で表される。所定の数は、逆演算部33で用いた所定の数と同じであり、系列生成部12で用いた所定の数と同じである。したがってサブ変調データs
0、s
1、s
2、s
3は、それぞれ上記(6)式のb’
1、b’
3、b’
0、b’
2にそれぞれ一致する。
【0059】
復調部31は、サブ変調データの各要素の値に基づき所定の基準に従ってサブ変調データごとに定めた固有の番号を検出する。例えば復調部31は、値の範囲であるレンジを、サブ変調データの数と同じ個数用いて、各レンジに該レンジを一意に特定するための番号を割り当てる。復調部31は、各サブ変調データについて、該サブ変調データの各要素が属するレンジを検出し、該サブ変調データの最も多くの要素が属するレンジに割り当てられた該レンジを一意に特定するための番号を、該サブ変調データに対応する固有の番号として検出する。各サブ変調データに含まれる要素が1つである場合は、該要素が属するレンジに割り当てられた該レンジを一意に特定するための番号を、該サブ変調データに対応する固有の番号として検出すればよい。サブ変調データごとに定めた固有の番号は、該サブ変調データに対応する変調部11で演算を施したサブデータ系列ごとに定めた固有の番号に一致する。
【0060】
復調部31は、サブ変調データごとに定めた固有の番号、等分割したときのサブ変調データの並び順、および入力信号のデータのパターンに一対一で対応付けられた所定の並び替え規則に基づき、入力信号を復元する。並び替え規則は、
図3に示す送信側の変調部11で用いた並び替え規則であり、送信側では予め並び替え規則についての情報を保持しているものとする。
【0061】
例えば、要素の絶対値が0以上、1.5a未満である範囲をレンジ1、要素の絶対値が1.5a以上、2.5a未満である範囲をレンジ2、要素の絶対値が2.5a以上、3.5a未満である範囲をレンジ3、要素の絶対値が3.5a以上である範囲をレンジ4とする。レンジ1、2、3、4に割り当てられたレンジを一意に特定するための番号は、それぞれ1、2、3、4とする。ここでaは、送信側の変調部11で用いた振幅係数であり、受信側では予め振幅係数についての情報を保持しているものとする。上記(5)、(6)式より、サブ変調データs
0、s
1、s
2、s
3に対応するレンジはそれぞれ、レンジ2、レンジ4、レンジ1、レンジ3であり、固有の番号が2、4、1、3であることが検出できる。
図3に示す並び替え規則において、並び替え後が2413である場合の入力信号は1010であるから、受信側で入力信号1010を復元することができる。
【0062】
図11は、実施の形態に係る通信機が行う復調処理を示す図である。横軸は要素であり、縦軸は要素の絶対値である。CAZAC系列の各要素は複素数であるので、要素の絶対値を用いて表示を簡易化する。
図11(a)は、並列信号を表す。
図11(b)は、上記(11)式で表されるように、並列信号を分割して生成したサブ並列信号の各要素をサブ並列信号ごとに定めた平準化係数で除算した結果である。
図11(c)は、
図11(b)に示す演算を施したサブ並列信号を合成したデータのFFTを行って生成した変調データである。
図11(d)は、変調データを分割して生成したサブ変調データごとに定めた固有の番号、等分割したときのサブ変調データの並び順、および入力信号のデータのパターンに一対一で対応付けられた所定の並び替え規則に基づき、復元した入力信号である。
【0063】
図12は、実施の形態に係る通信機が行う受信制御の動作の一例を示すフローチャートである。受信部34は、アンテナ10および送受信切替部35を介して送信信号を受信し、ベースバンド信号を生成する(ステップS210)。逆演算部33は、ベースバンド信号を直並列変換し、並列信号を生成する(ステップS220)。逆演算部33は、並列信号を所定の数に等分割してサブ並列信号を生成し、サブ並列信号の各要素をサブ並列信号ごとに定めた平準化係数で除算し、演算を施したサブ並列信号を等分割したときの位置に並べて合成する(ステップS230)。
【0064】
FFT部32は、逆演算部33の演算結果のFFTを行い、変調データを生成する(ステップS240)。復調部31は、変調データを所定の数に等分割してサブ変調データを生成し、サブ変調データの各要素の値に基づき所定の基準に従ってサブ変調データごとに定めた固有の番号を検出する(ステップS250)。復調部31は、サブ変調データごとに定めた固有の番号、等分割したときのサブ変調データの並び順、および入力信号のデータのパターンに一対一で対応付けられた所定の並び替え規則に基づき、入力信号を復元する(ステップS260)。ステップS260の入力信号の復元処理が完了すると、処理を終了する。
【0065】
以上説明したとおり、本発明の実施の形態に係る通信機1によれば、OFDM通信方式において、入力信号に基づきデータ系列に所定の演算を施し、ベースバンド信号を生成することでPAPRを低減することが可能となる。また後述するように、PAPRを低減し、PAPRの低減の程度を制御することが可能となる。
【0066】
(具体例)
次に、シミュレーションにより本実施の形態に係る発明の効果を説明する。入力信号にランダム信号を用いて、従来技術と本実施の形態に係る発明について、ベースバンド信号を生成し、PAPRの算出を繰り返すシミュレーションを行った。従来技術と本実施の形態に係る発明のPAPRのCCDF(Complementary Cumulative Distribution Function:相補累積分布関数)、すなわちPAPRの発生確率の特性を比較した。従来技術においては、入力信号をQPSK(Quadrature Phase-Shift Keying:四位相偏移変調)で変調した変調信号を直並列変換し、周波数成分が互いに直交するサブキャリアに割り当ててサブキャリア変調信号を生成した。そしてサブキャリア変調信号のIFFTを行って合成し、ベースバンド信号を生成した。入力信号の要素数を256とし、FFTサイズは128とした。
【0067】
図13は、シミュレーションしたベースバンド信号のPAPRのCCDF特性を示す図である。横軸はPAPR(単位:dB)、縦軸はPAPRのCCDFである。本実施の形態においては各要素が上記(3)式で表されるCAZAC系列を用い、入力信号の要素数を256とし、FFTサイズを16384とし、サブデータ系列の数を64としてシミュレーションを行った。また本実施の形態においては、演算部14で平準化係数を乗算する演算を行わなかった場合と行った場合とそれぞれシミュレーションを行った。
【0068】
従来技術のPAPRのCCDF特性が太い実線のグラフであり、本実施の形態において演算部14で演算を行わなかった場合が細い実線のグラフであり、本実施の形態において演算部14で演算を行った場合が点線のグラフである。演算部14で演算を行うことでPAPRがより低減されることがわかる。また演算部14で演算を行わなかった場合は、平準化係数を全て1にした場合と同じであるから、平準化係数を変えることでPAPRの低減の程度を制御できることがわかる。例えばあるランダム信号でシミュレーションを行い、好適な平準化係数を検出し、演算部14で好適な平準化係数を用いるよう構成することで、PAPRを低減することができる。
【0069】
上述のシミュレーションにより、本実施の形態においては、入力信号に基づきデータ系列に所定の演算を施し、ベースバンド信号を生成することでPAPRを低減できることがわかった。また平準化係数を変更することでPAPRの低減の程度を制御できることがわかった。
【0070】
本発明の実施の形態は上述の実施の形態に限られない。系列生成部12の処理を変調部11で行うよう構成してもよい。IFFT部13は、IFFTの代わりにIDFTを行うよう構成してもよいし、FFT部32は、FFTの代わりにDFTを行うよう構成してもよい。