特許第5712960号(P5712960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5712960エアバッグ装置を備えたステアリングホイール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5712960
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置を備えたステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/04 20060101AFI20150416BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   B62D1/04
   B60R21/203
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-80715(P2012-80715)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209009(P2013-209009A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆徳
【審査官】 杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−213251(JP,A)
【文献】 特開2010−201949(JP,A)
【文献】 特開2010−116060(JP,A)
【文献】 特開2004−323010(JP,A)
【文献】 特開2011−255753(JP,A)
【文献】 特開2007−145112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00− 1/28
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵時に把持するリング部、該リング部の中央に配置されるボス部、及び、前記リング部と前記ボス部とを連結するスポーク部、を有して構成されるステアリングホイール本体が、
前記ボス部の上部に、エアバッグ装置を組み付ける構成とし、
前記リング部、前記ボス部、及び、前記スポーク部を相互に連結するように配設される芯金と、
該芯金における前記リング部に配置されるリング芯金部と、前記スポーク部に配置されるスポーク芯金部の前記リング芯金部近傍と、を被覆し、前記芯金より軟質とした合成樹脂製の被覆層と、
前記ボス部の下方を覆うように、前記芯金に取り付けられる合成樹脂製のロアカバーと、
を備えて構成され、
前記エアバッグ装置の前記ステアリングホイール本体への組付構造が、
前記エアバッグ装置側に配設されて、下方に延びる軸部と該軸部の下端で拡径する係止頭部とを有した組付ピン、を設けて構成される組付部と、
前記芯金側に配設されて、前記係止頭部を挿通可能に前記芯金に貫通するように形成される組付孔、及び、該組付孔の下端側の開口面を横断するように配設され、前記係止頭部の前記組付孔への挿入時、前記係止頭部の先端に押されて、前記開口面に沿って撓み、前記係止頭部の通過後に復元して、前記係止頭部を係止する金属製の係止ピン、を設けて構成される組付座と、
を備えて構成され、
前記ロアカバーに、係止状態の前記係止ピンを前記開口面に沿って係止解除側に移動させるための棒状の押し治具を挿入させる挿入孔と、該挿入孔に挿入させた前記押し治具の先端を前記係止ピン側に案内する案内面と、を有した治具挿入部が、配設されている構成のエアバッグ装置を備えたステアリングホイールであって、
前記ステアリングホイール本体の被覆層が、前記組付座の下面側における前記組付孔の周縁の近傍を被覆する近傍被覆部を備え、
前記ロアカバーの前記治具挿入部が、前記押し治具の先端を、係止解除する前記係止ピン側に向いた方向として、前記ボス部の中央側へ向けつつ斜め上方向へ挿入させるように、前記挿入孔を開口させ、かつ、前記挿入孔の下縁側から斜め上方向に延びるように前記案内面を配設させる構成とするとともに、
前記案内面が、前記挿入孔に挿入させた前記押し治具の先端を、前記係止ピンとの当接直前の当接準備位置まで案内可能で、さらに、前記係止ピンを係止解除側に移動させる前記押し治具先端の移動を案内可能に、前記押し治具の軸直交方向における上方側を除く下方側から両側の側方までの移動を規制して案内可能な下側案内部として、構成され、
前記近傍被覆部が、前記挿入孔に挿入させた前記押し治具の先端を、前記当接準備位置まで案内可能に、前記押し治具の軸直交方向における上方側の移動を規制して案内可能な上側案内部、を備えて構成されていることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項2】
前記下側案内部が、前記ボス部中央側のボス側部位と前記挿入孔側の挿入側部位とを設けて構成され、
前記ボス側部位の前記案内面における前記押し治具先端の下方移動を規制する底面が、前記挿入側部位の前記案内面における前記押し治具先端の下方移動を規制する底面と連なりつつ、上方に変位して配設され、
前記上側案内部が、前記下側案内部の前記挿入側部位と前記ボス側部位との境界付近の上方に配設され、
前記近傍被覆部が、
前記被覆層における前記スポーク芯金部を被覆するスポーク被覆部の下面側の部位から延設されて形成されるとともに、前記ボス部中央側の縦壁面と、該縦壁面の下縁側から前記リング部側に延びる下壁面と、前記縦壁面と前記下壁面との交差する稜線部位として、前記下側案内部の前記ボス側部位の側に突出する突条部と、を有し、
該突条部を、前記押し治具の軸部外周面と接触して前記押し治具を案内する前記上側案内部として、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置を備えたステアリングホイールに関し、特に、エアバッグ装置をワンタッチでステアリングホイール本体に組み付けることができるとともに、その後のエアバッグ装置の取り外し作業が容易なステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置を備えたステアリングホイールでは、ステアリングホイール本体が、操舵時に把持するリング部、リング部の中央に配置されるボス部、及び、リング部とボス部とを連結するスポーク部、を有して構成され、エアバッグ装置が、ボス部の上部に、組み付けられる構成としていた(例えば、特許文献1参照)。このステアリングホイール本体は、リング部、ボス部、及び、スポーク部を相互に連結するように配設される金属製の芯金と、芯金を被覆する被覆層と、ボス部の下方を覆う合成樹脂製のロアカバーと、を備えて構成されていた。被覆層は、芯金におけるリング部に配置されるリング芯金部と、スポーク部に配置されるスポーク芯金部のリング芯金部近傍と、を被覆して、感触が良好なように、芯金より軟質とした合成樹脂製としていた。
【0003】
そして、エアバッグ装置のステアリングホイール本体への組付構造は、エアバッグ装置を押し下げるワンタッチの操作により、エアバッグ装置を組み付けることができるものであり、エアバッグ装置側に配設される組付部と、ステアリングホイール本体側の組付座と、により構成されていた。エアバッグ装置側の組付部は、下方に延びる軸部と、軸部の下端で拡径する係止頭部と、を有した組付ピンを設けて構成されていた。ステアリングホイール本体側の組付座は、芯金側に配設されて、組付ピンの係止頭部を挿通可能に芯金に貫通するように形成される組付孔と、組付孔の下端側の開口面を横断するように配設される弾性を有した金属ワイヤからなる係止ピンと、を備えて構成されていた。
【0004】
このような組付構造では、組付部の組付ピンを組付座の組付孔に挿入させれば、係止ピンが、係止頭部の先端に押されて、組付孔の下端側の開口面に沿って係止解除側のボス部の中央側に撓み、そして、係止頭部の通過後に復元して、係止頭部を係止することから、組付部が組付座に係止され、エアバッグ装置をステアリングホイール本体に組み付けることができた。
【0005】
そしてさらに、従来のステアリングホイールのロアカバーには、係止状態の係止ピンを開口面に沿ってボス部の中央側となる係止解除側に移動させる棒状の押し治具を挿入させるための挿入孔と、挿入孔に挿入させた押し治具の先端を係止ピン側に案内する案内面と、を有した治具挿入部が、配設されていた。
【0006】
また、組付座の下面側の芯金自体にも、押し治具先端の案内部が設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−323010号公報(図9,11〜15参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のステアリングホイールでは、組付後のエアバッグ装置を取り外す際、ロアカバーの治具挿入部の挿入孔から、押し治具を挿入する際、押し治具の先端を、芯金の部位に長く摺動させて、係止ピンに押し当て、そしてさらに、押し治具をボス部の中央側に押して、係止ピンを、組付ピンの係止解除位置まで撓ませることとなって、押し治具の芯金との接触距離が長かった。
【0009】
そのため、ロアカバーやエアバッグ装置に隠れて、押し治具の先端が目視できず、押し治具を保持する感触だけでは、押し治具先端が係止ピンに当ったか否か、明確に、認識できず、その係止ピンに当接するまでの間に、押し治具の先端の角度を変える等の操作を行なってしまい、取り外し操作に不慣れな作業者では、円滑に、係止ピンを係止解除位置に移動させ難かった。
【0010】
特に、ロアカバーの押し治具を挿入させる挿入孔が、エアバッグ装置の他にステアリングホイール本体に取り付ける種々のスイッチ類等により、押し治具を係止ピンに当てる当接位置から、ボス部中央から離れる方向であって、斜め下方に向かった位置に配置されるような場合には、押し治具先端を斜め上方向に向けて、その挿入孔に挿入させることから、さらに一層、押し込み途中で、押し治具の先端の角度を変える等の操作を行ない易くなって、不慣れな作業者では、係止ピンを係止解除位置に移動させ難い課題が生じていた。
【0011】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、ステアリングホイール本体に組み付けたエアバッグ装置の取り外し作業を容易に行なえるエアバッグ装置を備えたステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
<請求項1の作用>
本発明に係るステアリングホイールは、操舵時に把持するリング部、該リング部の中央に配置されるボス部、及び、前記リング部と前記ボス部とを連結するスポーク部、を有して構成されるステアリングホイール本体が、
前記ボス部の上部に、エアバッグ装置を組み付ける構成とし、
前記リング部、前記ボス部、及び、前記スポーク部を相互に連結するように配設される芯金と、
該芯金における前記リング部に配置されるリング芯金部と、前記スポーク部に配置されるスポーク芯金部の前記リング芯金部近傍と、を被覆し、前記芯金より軟質とした合成樹脂製の被覆層と、
前記ボス部の下方を覆うように、前記芯金に取り付けられる合成樹脂製のロアカバーと、
を備えて構成され、
前記エアバッグ装置の前記ステアリングホイール本体への組付構造が、
前記エアバッグ装置側に配設されて、下方に延びる軸部と該軸部の下端で拡径する係止頭部とを有した組付ピン、を設けて構成される組付部と、
前記芯金側に配設されて、前記係止頭部を挿通可能に前記芯金に貫通するように形成される組付孔、及び、該組付孔の下端側の開口面を横断するように配設され、前記係止頭部の前記組付孔への挿入時、前記係止頭部の先端に押されて、前記開口面に沿って撓み、前記係止頭部の通過後に復元して、前記係止頭部を係止する金属製の係止ピン、を設けて構成される組付座と、
を備えて構成され、
前記ロアカバーに、係止状態の前記係止ピンを前記開口面に沿って係止解除側に移動させるための棒状の押し治具を挿入させる挿入孔と、該挿入孔に挿入させた前記押し治具の先端を前記係止ピン側に案内する案内面と、を有した治具挿入部が、配設されている構成のエアバッグ装置を備えたステアリングホイールであって、
前記ステアリングホイール本体の被覆層が、前記組付座の下面側における前記組付孔の周縁の近傍を被覆する近傍被覆部を備え、
前記ロアカバーの前記治具挿入部が、前記押し治具の先端を、係止解除する前記係止ピン側に向いた方向として、前記ボス部の中央側へ向けつつ斜め上方向へ挿入させるように、前記挿入孔を開口させ、かつ、前記挿入孔の下縁側から斜め上方向に延びるように前記案内面を配設させる構成とするとともに、
前記案内面が、前記挿入孔に挿入させた前記押し治具の先端を、前記係止ピンとの当接直前の当接準備位置まで案内可能で、さらに、前記係止ピンを係止解除側に移動させる前記押し治具先端の移動を案内可能に、前記押し治具の軸直交方向における上方側を除く下方側から両側の側方までの移動を規制して案内可能な下側案内部として、構成され、
前記近傍被覆部が、前記挿入孔に挿入させた前記押し治具の先端を、前記当接準備位置まで案内可能に、前記押し治具の軸直交方向における上方側の移動を規制して案内可能な上側案内部、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るステアリングホイールでは、ステアリングホイール本体に組み付けたエアバッグ装置を取り外す際、先端をボス部中央側の斜め上方向に向けつつ、押し治具をロアカバーの挿入孔に挿入させる。すると、押し治具は、ロアカバーの治具挿入部の下側案内部により、押し治具の軸直交方向の下方側から両側の側方の方向までの範囲の移動を規制されて、係止ピンと当接する直前の当接準備位置付近まで、案内される。
【0014】
そしてこの時、押し治具の先端側を、下側案内部から離れるように上方に移動させても、上側案内部が、その移動を規制する。そして、この時の感触は、上側案内部が、芯金より軟質とした被覆層の近傍被覆部から形成されており、作業者は、押し治具の先端が係止ピンや芯金と接触していないことを容易に認識できて、さらに、押し治具を挿入することができる。
【0015】
そしてその後、下側案内部と上側案内部とによって、軸直交方向の略360°の範囲で、位置規制されつつ、押し治具が挿入され、円滑に、押し治具先端が当接準備位置に配置される。
【0016】
さらに、押し治具を挿入させれば、係止ピン自体あるいは係止ピン近傍の芯金に接触してメタルタッチの感触となって、作業者は、合成樹脂製のロアカバーの下側案内部や被覆層の上側案内部との押し治具の摺動する感触と相違して、押し治具の先端がメタルタッチしたことを容易に把握できる。
【0017】
そのため、作業者は、係止ピンと直接当接したり、あるいは、その近傍の芯金に当接したことを容易に把握でき、さらに押し治具を押せば、係止ピンを押せることを認識できる。そして実際に、作業者が押し治具を押せば、押し治具先端が、係止ピンを押し移動させることとなって、係止ピンは、円滑に、係止解除位置に移動し、組付ピンの係止を解除することができる。
【0018】
なお、押し治具の当接準備位置とは、押し治具の先端が、係止ピン自体若しくは係止ピン近傍の芯金と接触するメタルタッチの直前位置であり、そして、その位置から、押し治具を、数ミリ程度、少し押せば、押し治具先端が、係止ピン自体若しくは係止ピン近傍の芯金に接触してメタルタッチし、さらに、係止ピンを係止解除位置に移動させることができる位置である。
【0019】
したがって、本発明に係るステアリングホイールでは、押し治具の挿入時に、押し治具の合成樹脂との摺動の感触から、メタルタッチの感触の相違に変わることで、作業者は、その後の少しの押し動作で係止ピンを係止解除位置に移動できる位置に、押し治具を配置させていると容易に認識できて、ステアリングホイール本体に組み付けたエアバッグ装置の取り外し作業を容易に行なえ、不慣れな作業者でも迅速かつ円滑に行なえる。
【0020】
また、上側案内部は、芯金を被覆する被覆層の一部から構成されるものであって、余分な部品を取り付けることなく、簡便に配設することができる。
【0021】
さらに、上側案内部は、芯金を被覆する被覆層の一部の近傍被覆部から構成されるものであって、芯金より軟質としている。そのため、押し治具先端が当接準備位置から係止ピンの先端部を係止解除位置まで押し移動される際、ロアカバーの芯金への組付誤差により、ずれた位置に配置された下側案内部に案内される押し治具が、適正組付時より、横方向や上方向にずれ移動することとなっても、近傍被覆部自体の弾性により、そのずれ移動を吸収して、円滑に、押し治具を押し移動させることができる。
【0022】
<請求項2の説明>
本発明に係るステアリングホイールでは、前記下側案内部を、前記ボス部中央側のボス側部位と前記挿入孔側の挿入側部位とを設けて構成し、
前記ボス側部位の前記案内面における前記押し治具先端の下方移動を規制する底面を、前記挿入側部位の前記案内面における前記押し治具先端の下方移動を規制する底面と連なりつつ、上方に変位させて配設し、
前記上側案内部を、前記下側案内部の前記挿入側部位と前記ボス側部位との境界付近の上方に配設し、
前記近傍被覆部を、
前記被覆層における前記スポーク芯金部を被覆するスポーク被覆部の下面側の部位から延設して形成するとともに、前記ボス部中央側の縦壁面と、該縦壁面の下縁側から前記リング部側に延びる下壁面と、前記縦壁面と前記下壁面との交差する稜線部位として、前記下側案内部の前記ボス側部位の側に突出する突条部と、を設けて構成して、
該突条部を、前記押し治具の軸部外周面と接触して前記押し治具を案内する前記上側案内部として、構成することが望ましい。
【0023】
このような構成では、下側案内部の押し治具の先端の下方移動を規制する底面が、上側案内部の下方付近における挿入側部位とボス側部位との境界付近において、上方に変位されて、上側案内部に接近する構成としている。そのため、押し治具の挿入孔への挿入時、まず、下側案内部の挿入側部位に摺動させている状態から、押し治具先端がボス側部位に移行する際に、まず、僅かに上向きに案内され、そして、上側案内部によって、不要な押し治具先端の上方移動が規制されて、押し治具は、挿入方向への押し込みだけが可能な拘束状態となる。
【0024】
すなわち、作業者は、押し治具を挿入孔へ挿入する際、まず、下側案内部の挿入側部位の底面上を摺動する際の押し治具先端の上方側へ自由に移動できる非拘束状態から、ボス側部位の底面上を摺動する際の拘束状態を、押し治具の感触から容易に把握できる。そして、その拘束状態では、単に、挿入方向への押し込み動作だけで、押し治具を押せばよく、その後の押し治具先端における係止ピンとの接触やその近傍の芯金との接触によるメタルタッチの感触を、拘束状態での被覆層やロアカバーの合成樹脂材との摺動の感触と区別して、一層、明確に把握でき、作業者は、その後の押し治具の押し込み動作を安心感を持って行える。
【0025】
また、上側案内部は、近傍被覆部の突条部として、スポーク被覆部の下面側の部位から延設したボス部側の下縁に、形成すればよく、被覆層の成形型の型面を複雑にせずに、手間無く容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る一実施形態のステアリングホイールの平面図である。
図2】実施形態のステアリングホイールにおけるステアリングホイール本体を示す概略平面図である。
図3】実施形態のステアリングホイールにおけるステアリングホイール本体のロアカバーを除いた底面図である。
図4】ステアリングホイール本体の組付座を示す拡大底面図である。
図5】実施形態のステアリングホイールの芯金を示す平面図である。
図6】実施形態のステアリングホイールの芯金における左右方向に沿った概略縦断面図であり、図5のVI−VI部位に対応する。
図7】実施形態のステアリングホイールのエアバッグ装置を底面側から見た斜視図である。
図8】実施形態のステアリングホイール本体とエアバッグ装置との組付構造を示す拡大縦断面図である。
図9】実施形態のロアカバーの平面図である。
図10】実施形態のロアカバーの端面図であり、図9のX−X部位を示す。
図11】実施形態のロアカバーの挿入孔から見た係止ピンの状態を示す図である。
図12】実施形態のエアバッグ装置の取り外しを説明する押し治具の挿入状態を示す概略縦断面図である。
図13】実施形態のエアバッグ装置の取り外しを説明する押し治具の挿入状態を示す概略縦断面図であり、図12の後の状態を示す。
図14】実施形態のエアバッグ装置の取り外しを説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のステアリングホイールWは、図1に示すように、操舵時に把持するリング部R、リング部Rの中央に配置されるボス部B、及び、リング部Rとボス部Bとを連結するスポーク部S、を有したステアリングホイール本体1と、ボス部Bの上部に配設されるエアバッグ装置60と、を備えて構成されている。
【0028】
なお、本明細書での上下・左右・前後の方向は、ステアリングホイールWをステアリングシャフトSS(図6参照)に接続させた状態における車両の直進操舵時を基準として、上下方向は、ステアリングシャフトSSの軸方向に沿った上下方向に対応し、左右方向は、ステアリングシャフトSSの軸直交方向の車両の左右方向に対応し、前後方向は、ステアリングシャフトSSの軸直交方向の車両の前後方向に対応している。
【0029】
ステアリングホイール本体1は、図1〜3,5,9に示すように、リング部R、ボス部B、及び、スポーク部Sを相互に連結するように配設されるアルミニウム合金等からなる金属製の芯金2と、リング部Rとリング部R近傍のスポーク部Sの芯金2の部位を覆う被覆層27と、ボス部Bの下面側を覆うロアカバー40と、を備えて構成されている。また、スポーク部Sは、ボス部Bから左右両側に延びる前側スポーク部FSとボス部Bから後側に延びる後側スポーク部BSとの二種類を有して構成されている。
【0030】
なお、エアバッグ装置60の周囲には、装飾用の合成樹脂製のベゼル95が配設されている。ベゼル95は、エアバッグ装置60の左方側の左部96と、エアバッグ装置60の右方側の右部97と、エアバッグ装置60の後側の後部98と、を備えて構成されている。
【0031】
また、被覆層27は、図1〜3に示すように、芯金2より軟質として感触を良好にするウレタン等の合成樹脂製として、リング部Rに配置されるリング被覆部28と、スポーク部Sに配置されるスポーク被覆部29と、を備えて構成され、スポーク被覆部29におけるリング被覆部28の近傍の厚肉部30が、上方から見てベゼル95と隣接するように配設されている。また、スポーク被覆部29は、ベゼル95の左部96、右部97、及び、後部98の下方に延設される延設部31を備え、延設部31には、ベゼル95から延びる図示しない係止脚を係止させるベゼル係止孔33(33a,33b,33c,33d)が形成されている。
【0032】
そして、被覆層27における左右の前側スポーク部FSを覆うスポーク被覆部29には、後述するように、金属製の棒状の押し治具Jを案内する上側案内部37を構成する近傍被覆部35が、延設部31の下面31b側に配設されている(図3,12,13参照)。
【0033】
また、ロアカバー40は、ポリプロピン等の合成樹脂から形成され、図9,10に示すように、ステアリングシャフトSS(図6参照)を挿通させる中央孔41aを設けた底壁部41と、底壁部41の外周縁から筒状に延びる側壁部43と、を備えて構成されている。このロアカバー40には、エアバッグ装置60を取り外す押し治具Jを案内するための後述する治具挿入部45が形成されている。なお、底壁部41には、ロアカバー40を芯金2に取り付けるための4本の係止脚部41bが突設されている。
【0034】
芯金2は、図2,3,5,6に示すように、リング部Rに配置されるリング芯金部3、ボス部Bに配置されるボス芯金部4、スポーク部Sに配置されるスポーク芯金部5、を備えて相互に連結されるように配設されている。ボス芯金部4は、ステアリングシャフトSSを挿入させてナットN止めする締結部4aと、締結部4aの周囲の長方形板状のプレート部4bと、を備えて構成されている。スポーク芯金部5は、左右の前側スポーク部FSに配置される前側スポーク芯金部6(6L,6R)と、後側スポーク部BSに配置される後側スポーク芯金部7と、を備えて構成されている。
【0035】
そして、実施形態の場合、後側スポーク芯金部7は、ボス芯金部4の板状のプレート部4bの左右両側における前側スポーク芯金部6付近から、相互に平行に後方に延びる二本の後左側部7L及び後右側部7Rを備えて構成されている。後左側部7Lと後右側部7Rとは、前後方向の中央付近で、連結杆部8によって相互に連結されている。
【0036】
なお、前側スポーク芯金部6の前左側スポーク芯金部6L、前右側スポーク芯金部6R、及び、後側スポーク芯金部7の後左側部7L、後右側部7Rには、それぞれ、各スポーク被覆部29の厚肉部30の形状を維持し易いように、鍔状の突片部5aが上方に突設されている。
【0037】
また、前側スポーク芯金部6の前左側スポーク芯金部6L付近と前右側スポーク芯金部6R付近、さらには、後側スポーク芯金部7の後左側部7Lと後右側部7Rとには、ロアカバー40の係止脚部41bを係止させる係止孔2aが形成されている。
【0038】
さらに、前側スポーク芯金部6の前左側スポーク芯金部6L、前右側スポーク芯金部6R、及び、連結杆部8におけるエアバッグ装置60の下方のエリアには、図1〜4に示すように、エアバッグ装置60の押下操作によりエアバッグ装置60側の組付部80を組付可能な組付座10(10L,10R,10B)が、配設されている。
【0039】
なお、前側スポーク芯金部6の前左側スポーク芯金部6Lと前右側スポーク芯金部6Rに配設される組付座10L,10Rは、相互に左右対称的に形成され、連結杆部8に配設される組付座10Bは、前右側スポーク芯金部6Rに配設された組付座10Rが、90°分、時計回り方向に回転した状態として配設されているだけであって、基本的な構造としては、組付座10(10L,10R,10B)は、エアバッグ装置60の組付部80に対応して、同様な構成としている。
【0040】
そして、各組付座10は、それぞれ、組付部80を挿入する組付孔11と、組付孔11の下方周縁に配置される係止ピン20と、を備えて構成されている。係止ピン20は、弾性変形可能な金属ワイヤから形成され、反転部22を間にして、長さの短い短杆部21と、長さの長い長杆部23と、を有した平面視で略J字形状としている。そして、係止ピン20は、組付孔11の下端側の開口面12を横断するように、長杆部23側の係止軸部24を配置させて、芯金2側に設けられた係止部15に係止されている。
【0041】
なお、これらの組付座10は、各々の組付孔11の周縁の上面10a側の高さを、ボス芯金部4の締結部4aの上面4au側から等しい高さとして、配設されている。
【0042】
各係止部15は、係止軸部24の開口面12に沿って短杆部21から離れる方向の移動、換言すれば、組付座10の下面10bに沿ったボス部Bの中央CO側への移動、を許容しつつ、短杆部21、反転部22、及び、長杆部23の先端を位置規制し、係止ピン20を係止するように、構成されている。
【0043】
簡単に説明すれば、係止部15は、組付座10の組付孔11の下縁周縁の組付座10の下面10b側に下方へ突出する鍔付き係止軸部16、元部内側規制部17、元部外側規制部18、及び、先端側規制部19、を備えて構成されている。鍔付き係止軸部16は、反転部22を巻き掛けるように構成され、元部内側規制部17は、短杆部21の長杆部23に接近する方向の移動を規制するように配設され、元部外側規制部18は、短杆部21の長杆部23から離れる方向の移動を規制するように配設されている。先端側規制部19は、長杆部23における係止軸部24を越えた先端部25における短杆部21に接近する移動を規制するとともに、先端部25の下方移動を規制する横杆部19aを備えて構成されている。
【0044】
そして、係止部15に係止される係止ピン20に対して、組付部80の後述する組付ピン81の係止頭部81cが組付孔11を挿通してくれば、係止軸部24が、係止頭部81cの先端に押されて、開口面12に沿ってボス部Bの中央CO側に撓み、係止頭部81cの通過後に復元して、係止頭部81cを係止することとなる。
【0045】
なお、後側の組付座10Bの係止部15は、前側の組付座10L,10Rの係止部15と若干の形状の相違があるものの、各部の基本構成を前側のものと同様として、構成されている。
【0046】
ステアリングホイール本体1の各組付座10に組み付けられるエアバッグ装置60側の組付部80は、図7,8に示すように、ステアリングホイール本体1の組付座10に対応する位置の三箇所に配設されて、金属製の組付ピン81を配設させて構成されている。
【0047】
なお、エアバッグ装置60は、図示しないエアバッグを保持する板金製の取付ベース61と、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター70と、折り畳まれたエアバッグを覆う合成樹脂製のパッド75と、を備えて構成されている。パッド75は、図1,7に示すように、エアバッグの膨張時に開くような扉部を有した天井壁部76と、天井壁部76から下方に延びる筒状の側壁部77と、を備え、側壁部77の下端には、取付ベース61の係止部62に取り付けられる取付脚部78が配設されている。インフレーター70は、取付ボルト71により、取付ベース61に固定されている。取付ベース61には、左右両側と後側に、組付部80を配設する組付基部63が配設されている。
【0048】
そして、各組付部80は、既述の組付ピン81とともに、可動側接点部90と固定側接点部91とを設けたホーンスイッチ機構85を配設させて構成されている。組付ピン81は、金属製として、円板状の鍔部81a、鍔部81aから下方に延びる円柱状の軸部81b、軸部81bの下端に設けられる円錐状の係止頭部81c、及び、係止頭部81cの上部に設けられる円環状の係止凹部81d、を備えて構成されている。なお、組付ピン81の鍔部81aは、ホーンスイッチ機構85の固定側接点部91を構成することとなる。
【0049】
軸部81bの下端側には、組付孔11の内周側に配置される略円筒状の合成樹脂製のカバー部86が配設され、軸部81bの上端側には、略円筒状の合成樹脂製の絶縁スペーサ88が配設され、カバー部86と絶縁スペーサ88との間には、付勢手段としての圧縮コイルばね87が配設されている。絶縁スペーサ88の上部には、可動側接点部90が配設され、可動側接点部90は、合成樹脂製のキャップ89を利用して、絶縁スペーサ88に取り付けられている。
【0050】
なお、絶縁スペーサ88は、コイルばね87を保持する図示しない係止脚と取付ベース61に取り付けるための図示しない係止脚を備えている。そして、可動側接点部90や組付ピン81を内部に配置させて、キャップ89を組み付ければ、可動側接点部90と組付ピン81とを絶縁スペーサ88に保持させることができる。そしてさらに、組付ピン81の周囲にコイルばね87を配置させて、絶縁スペーサ88の所定の係止脚に保持させ、組付ピン81の先端にカバー部86を嵌めれば、組付部80を構成でき、その後、取付ベース61の組付基部63の取付孔63aの上方から組付部80を挿入させて、絶縁スペーサ88の図示しない係止脚を取付孔63aの下縁側周縁に係止させれば、組付部80を取付ベース61側に取り付けることができる。
【0051】
そして、各組付部80は、組付ピン81の係止頭部81cを、組付座10の上方から組付孔11に挿入させ、係止ピン20の係止軸部24を撓ませた後に復元させつつ係止凹部81dに挿入させれば、図8に示すように、係止頭部81cが係止ピン20の係止軸部24に係止されて、組付座10に組み付けられ、エアバッグ装置60が、ステアリングホイール本体1に保持されることとなる。この組付状態では、組付ピン81は、係止凹部81dに挿入された組付ピン81とカバー部86の部位とによって、上下動が規制されて、組付座10側に保持された状態となる。また、この組付状態では、係止ピン20の長杆部23は、係止軸部24や先端部25を含めて、組付座10の下面10bとなる組付孔11の周縁に当接する状態となる。
【0052】
さらに、この組付状態において、エアバッグ装置60の取付ベース61にホーン作動回路の正極側のリード線を結線しておけば、取付ベース61に接触する可動側接点部90はホーン作動回路の正極側となり、芯金2側の組付座10やその係止ピン20に接触する組付ピン81の鍔部81aからなる固定側接点部91は、ホーン作動回路の負極側となる。そのため、下端をカバー部86を介在させて組付座10に当接させ、かつ、上端を絶縁スペーサ88を介在させて組付基部63に当接させたコイルばね87の付勢力に抗して、エアバッグ装置60を押し下げれば、組付座10に保持された組付ピン81の鍔部81aからなる固定側接点部91に対して、取付ベース61や絶縁スペーサ88、さらにはキャップ89とともに、可動側接点部90が下降し、そして、可動側接点部90と固定側接点部91との相互が接触して、ホーンを作動させることとなる。
【0053】
そして、実施形態では、図9〜13に示すように、組み付けたエアバッグ装置60の取り外すために、ロアカバー40に、既述したように、押し治具Jを挿入するための治具挿入部45が形成されている。なお、治具挿入部45は、ロアカバー40の左右に、左右対称的に配設されており、以下、左方側の治具挿入部45とその上方の被覆層27に設けた近傍被覆部35とについて説明し、右方側のそれらについては、左方側の治具挿入部45と左右対称としている点が相違しているだけであるため、説明を省略する。
【0054】
治具挿入部45は、押し治具Jを挿入可能にロアカバー40の側壁部43に貫通された挿入孔46と、挿入孔46に挿入させた押し治具Jの先端JTを係止ピン20の先端部25側に案内する案内面47と、を設けて構成されている。
【0055】
なお、押し治具Jは、組付ピン81の係止頭部81cを係止状態とした係止ピン20の係止軸部24を、組付座10の下面10b側の開口面12に沿って係止解除側に移動させるように、先端JTを係止頭部81cの先端部25に当接させるもので、棒状に形成されている。
【0056】
さらに、側壁部43に設けた挿入孔46は、押し治具Jの先端JTを、係止解除する係止ピン20側に向いた方向として、ボス部中央CO側(図2,3,12〜14参照)へ向けつつ斜め上方向へ挿入させるように、開口されている。さらに、案内面47は、挿入孔46に挿入させた押し治具Jの先端JTを、係止ピン20の先端部25と当接する直前の当接準備位置P0に配置可能に、挿入孔46の下縁46b側から、ボス部中央CO側に向き、かつ、斜め上方向に延びるように、配設されている。
【0057】
そしてさらに、案内面47は、挿入孔46に挿入させた押し治具Jの先端JTを、当接準備位置P0まで案内可能で、さらに、係止ピン20の先端部25を係止解除側に移動させる移動を案内可能に、押し治具Jの軸直交方向における上方側を除く下方側から両側の側方までの移動を規制して案内可能な下側案内部54として、構成されている。
【0058】
具体的に説明すると、下側案内部54は、ロアカバー40の底壁部41の挿入孔46の近傍からボス部中央CO側に延びるように、上方に突出する中央リブ49と、中央リブ49を間にして配設されて、ロアカバー40の底壁部41の挿入孔46の近傍から相互に接近しつつボス部中央CO側へ延びる垂直壁部51(51F,51B)と、を備えて構成されるとともに、ボス部中央CO側の端部で、中央リブ49の上端面49aと連なりつつ垂直壁部51F,51B相互を連結する連結壁52を備えて構成されている。中央リブ49や垂直壁部51F,51Bは、挿入孔46近傍では、側壁部43にも連なっている。
【0059】
そして、中央リブ49の上端面49aと連結壁52の上面52aとが、押し治具Jの軸直交方向における下方DD(図11参照)への移動を規制して案内する下案内面47aとし、垂直壁部51F,51Bの内側面51aが、押し治具Jの軸直交方向における側方SD(図11参照)となる横方向(実施形態では前後方向)の移動を規制して案内する横案内面47bとなる。
【0060】
なお、垂直壁部51F,51Bのボス部中央CO側の開口幅L(図14のA参照)は、押し治具Jの軸部JSの外径寸法D(図12のA参照)より、僅かに大きく設定されている。
【0061】
さらに、連結壁52の上面52aは、中央リブ49の上端面49aと連続しつつ上方に変位して配設されている。
【0062】
そして、実施形態の場合、下側案内部54は、ボス部中央CO側の連結壁52を設けたボス側部位57と、挿入孔46側の挿入側部位55と、から構成されている。そのため、ボス側部位57における押し治具Jの先端JTの下方移動を規制する下案内面47aとしての底面57aが、連結壁52の上面52aとなって、挿入側部位55における押し治具Jの先端JTの下方移動を規制する下案内面47aとしての底面55a(中央リブ49の上端面49a)より、上方に変位されて配設されている。
【0063】
そして、下側案内部54の上方の近傍被覆部35には、挿入孔46に挿入させた押し治具Jの先端JTを、当接準備位置P0まで案内可能に、押し治具Jの軸直交方向における上方UD(図11参照)側の移動を規制して案内可能な上側案内部37が、配設されている。
【0064】
この近傍被覆部35は、スポーク被覆部29におけるベゼル95の左部96の下方に配設される延設部31の下面31b側から構成され、組付座10の下面10b側の係止ピン20の先端部25付近に接近して、配設されている。そして、近傍被覆部35は、ボス部中央CO側で略上下方向に沿った縦壁面35aと、縦壁面35aの下縁側からリング部R側に延びる下壁面35bと、縦壁面35aと下壁面35bとの交差する稜線部位に配置される突条部35cと、を備えて構成されている。
【0065】
なお、突条部35cの近傍には、ベゼル係止孔33bが形成されている。
【0066】
そして、近傍被覆部35の突条部35cは、下側案内部54のボス側部位57の側へ突出するように形成されて、押し治具Jの軸部JSの外周面JOと接触して押し治具Jを案内する上側案内部37としている。実施形態の場合、突条部35cは、スポーク被覆部29の延設部31の下面31b側におけるボス部中央CO側の端部から構成され、係止ピン20の長杆部23の軸方向に略沿う状態とした前後方向に沿った軸方向の1/4円柱状として、左右方向の外表面を弧面として形成されている。
【0067】
突条部35cからなる上側案内部37は、下側案内部54の挿入側部位55とボス側部位57との境界56付近の上方に配設されている。そして、上側案内部37と下側案内部54のボス側部位57の底面57aとの隙間寸法Hは、底面57aの垂直方向において、押し治具Jの当接準備位置P0から、係止ピン20の先端部25を係止解除位置PFに押圧移動できるまでの押し治具Jの移動を許容しつつ、押し治具Jの軸部JSの外径寸法Dと略等しい寸法に設定され、かつ、上側案内部37と下側案内部54のボス側部位57の底面57aとが、同時に、押し治具Jの軸部JSの外周面JOに接触可能に、設定されている。
【0068】
そして、実施形態のステアリングホイールWでは、ステアリングホイール本体1に組み付けたエアバッグ装置60を取り外す際、図12,13のA,Bや図14のA,Bに示すように、先端JTをボス部中央CO側の斜め上方向に向けつつ、押し治具Jをロアカバー40の挿入孔46に挿入させる。すると、押し治具Jは、ロアカバー40の治具挿入部45の下側案内部54により、押し治具Jの軸直交方向の下方DD側から両側の側方SDの方向までの範囲の移動を規制されて、係止ピン20と当接する直前の当接準備位置P0付近まで、案内される(図12のA,B、図14のA参照)。
【0069】
そしてこの時、押し治具Jの先端JT側を、下側案内部54から離れるように上方に移動させても、上側案内部37が、その移動を規制する。そして、この時の感触は、上側案内部37が、芯金2より軟質とした被覆層27の近傍被覆部35から形成されており、作業者は、押し治具Jの先端JTが芯金2と接触していないことを容易に認識できて、さらに、押し治具Jを挿入することができる。
【0070】
そしてその後、下側案内部54と上側案内部37とによって、軸直交方向の略360°の範囲で、位置規制されつつ、押し治具Jが挿入され、円滑に、押し治具Jの先端JTが当接準備位置P0に配置される。
【0071】
さらに、押し治具Jを挿入させれば、図13のAに示すように、係止ピン20の先端部25に接触してメタルタッチの感触となって、作業者は、合成樹脂製のロアカバー40の下側案内部54や被覆層27の上側案内部37との押し治具Jの摺動する感触と相違して、押し治具Jの先端JTがメタルタッチしたことを容易に把握できる。
【0072】
そのため、作業者は、係止ピン20の先端部25と直接当接したことを容易に把握でき、さらに押し治具Jを押せば、係止ピン20の先端部25を押せることを認識できる。そして実際に、図13のBや図14のBに示すように、作業者が押し治具Jを押せば、押し治具Jの先端JTが、係止ピン20を押し移動させることとなって、係止ピン20の先端部25(係止軸部24)は、円滑に、係止解除位置PFに移動し、組付ピン81の係止を解除することができる。
【0073】
なお、実施形態では、係止ピン20の先端部25(係止軸部24)が係止解除位置PFに移動すれば、エアバッグ装置60の組付部80は、コイルばね87の付勢力により、組付ピン81の係止頭部81cが組付孔11から抜ける。そのため、他の組付座10も同様に係止ピン20を係止解除位置に移動させれば、その後は、単に、エアバッグ装置60を持ち上げるだけで、簡単に、エアバッグ装置60をステアリングホイール本体1から取り外すことができる。
【0074】
したがって、実施形態のステアリングホイールWでは、押し治具Jの挿入時に、押し治具Jの合成樹脂製のロアカバー40や近傍被覆部35との摺動の感触から、メタルタッチの感触の相違に変わることで、作業者は、その後の少しの押し動作で係止ピン20を係止解除位置PFに移動できる位置に、押し治具Jを配置させていると容易に認識できて、ステアリングホイール本体1に組み付けたエアバッグ装置60の取り外し作業を容易に行なえ、不慣れな作業者でも迅速かつ円滑に行なえる。
【0075】
また、実施形態では、上側案内部37は、芯金2のスポーク芯金部5を被覆する被覆層27の一部(延設部31)の近傍被覆部35から構成されるものであって、余分な部品を取り付けることなく、簡便に配設することができる。
【0076】
さらに、上側案内部37は、芯金2のスポーク芯金部5を被覆する被覆層27の一部(延設部31)の近傍被覆部35から構成されるものであって、芯金2より軟質としている。そのため、押し治具先端JTが当接準備位置P0から係止ピン20の先端部25を係止解除位置PFまで押し移動される際、ロアカバー40の芯金2への組付誤差により、ずれた位置に配置された下側案内部54に案内させる押し治具Jが、適正組付時より、横方向や上方向にずれ移動することとなっても、近傍被覆部35自体の弾性により、そのずれ移動を吸収して、円滑に、押し治具Jを押し移動させることができる。
【0077】
そして、実施形態のステアリングホイールWでは、下側案内部54が、ボス部中央CO側のボス側部位57と挿入孔46側の挿入側部位55とを設けて構成され、ボス側部位57の案内面47における押し治具先端JTの下方移動を規制する底面57aが、挿入側部位55の案内面47における押し治具先端JTの下方移動を規制する底面55aと連なりつつ、上方に変位して配設されている。そして、上側案内部37が、下側案内部54の挿入側部位55とボス側部位57との境界56付近の上方に配設されている。さらに、近傍被覆部35が、被覆層27におけるスポーク芯金部5を被覆するスポーク被覆部29の延設部31の下面31b側の部位から延設されて形成されるとともに、ボス部中央CO側の縦壁面35aと、縦壁面35aの下縁側からリング部R側に延びる下壁面35bと、縦壁面35aと下壁面35bとの交差する稜線部位として、下側案内部54のボス側部位57の側に突出する突条部35cと、を有して、突条部35cを、押し治具Jの軸部JSの外周面JOと接触して押し治具Jを案内する上側案内部37として、構成されている。
【0078】
そのため、実施形態では、下側案内部54の押し治具Jの先端JTの下方移動を規制する底面57aが、上側案内部37の下方付近における挿入側部位55とボス側部位57との境界56付近において、上方に変位されて、上側案内部37に接近する構成としている。そのため、押し治具Jの挿入孔46への挿入時、まず、下側案内部54の挿入側部位55に摺動させている状態から、押し治具Jの先端JTがボス側部位57に移行する際に、まず、僅かに上向きに案内され、そして、上側案内部37によって、不要な押し治具Jの先端JTの上方移動が規制されて、押し治具Jは、挿入方向ID(図12参照)への押し込みだけが可能な拘束状態となる。
【0079】
すなわち、作業者は、押し治具Jを挿入孔46へ挿入する際、まず、図12のAに示すように、下側案内部54の挿入側部位55の底面55a上を摺動する際の押し治具先端JTの上方側へ自由に移動できる非拘束状態から、図12のBに示すように、ボス側部位57の底面57a上を摺動する際の拘束状態を、押し治具Jの感触から容易に把握できる。そして、その拘束状態では、図13のA,Bに示すように、単に、挿入方向IDへの押し込み動作だけで、押し治具Jを押せばよく、その後の押し治具先端JTにおける係止ピン20の先端部25との接触によるメタルタッチの感触を、拘束状態での被覆層27(近傍被覆部35)やロアカバー40の合成樹脂材との摺動の感触と区別して、一層、明確に把握でき、作業者は、その後の押し治具Jの押し込み動作を安心感を持って行える。
【0080】
また、上側案内部37は、近傍被覆部35の突条部35cとして、スポーク被覆部29の下面31b側の部位から延設したボス部B側の下縁に、形成すればよく、被覆層27の成形型の型面を複雑にせずに、手間無く容易に形成することができる。
【0081】
なお、実施形態では、後側スポーク芯金部7に設けた組付座10B付近には、ロアカバー40に、組付座10L,10Rに対応する治具挿入部45に近似して、挿入孔46Aと案内面47Aを有した治具挿入部45Aが配設されているが、その治具挿入部45Aの上方には、押し治具Jの先端JTの上方移動を規制する上側案内部37が配設されていない。しかし、この部位近傍のスポーク被覆部29の被覆層27の材料を延設させて、組付座10B付近に、上側案内部37を配設させてもよい。
【0082】
また、実施形態では、押し治具Jを、組付座10の下面10bに当てることなく、係止ピン20の先端部25に直接当接させるように、構成したが、下側案内部54と上側案内部37との案内による押し治具先端JTの当接準備位置P0の配置を、係止ピン20の先端部25の近傍における芯金2(スポーク芯金部5等)の組付座10の下面10bに当たる直前位置とし、その後の押し治具Jの押し動作により、下側案内部54と上側案内部37との案内によって、押し治具先端JTが、芯金2と接触し、かつ、その芯金2に摺動しつつ先端部25を係止解除位置PFまで押し移動させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…ステアリングホイール本体、2…芯金、3…リング芯金部、5…スポーク芯金部、10…組付座、11…組付孔、12…開口面、20…係止ピン、24…係止軸部、25…先端部、27…被覆層、28…リング被覆部、29…スポーク被覆部、31…延設部、31b…下面、35…近傍被覆部、35a…縦壁面、35b…下壁面、35c…突条部、37…上側案内部、
40…ロアカバー、45…治具挿入部、46…挿入孔、46b…下縁、47…案内面、54…下側案内部、55…挿入側部位、55a…底面、57…ボス側部位、57a…底面、
60…エアバッグ装置、80…組付部、81…組付ピン、81b…軸部、81c…係止頭部、
R…リング部、B…ボス部、CO…(ボス部)中央、S…スポーク部、
J…押し治具、JT…先端、
P0…(押し治具の)当接準備位置、
PF…(係止ピンの)係止解除位置、
W…ステアリングホイール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14