特許第5712961号(P5712961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン・エィ・ダブリュ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000002
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000003
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000004
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000005
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000006
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000007
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000008
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000009
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000010
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000011
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000012
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000013
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000014
  • 特許5712961-搬送装置のグリッパ 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5712961
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】搬送装置のグリッパ
(51)【国際特許分類】
   B23F 23/06 20060101AFI20150416BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   B23F23/06
   B23Q7/04 B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-80850(P2012-80850)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-208684(P2013-208684A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2013年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川西 哲智
(72)【発明者】
【氏名】大谷 昌弘
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−153123(JP,A)
【文献】 特開平04−244348(JP,A)
【文献】 特開平11−291125(JP,A)
【文献】 特開平05−285766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 23/06
B23Q 7/04
B23B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置に配設され、円筒状ワークを挟持する一対の挟持部が挟持ガイドに係合して構成されたグリッパであって、
上記搬送装置は、回転支持治具を介して上記円筒状ワークを支持して回転する回転装置と、刃具装着部に刃具を装着して上記円筒状ワークに加工を行う加工装置とを備えた回転加工機に配設されているとともに、複数の上記グリッパが旋回中心軸線の周りに配設され、該複数のグリッパを上記回転装置に順次対向させるよう旋回する旋回ローダとして構成されており、
上記挟持ガイドは、上記一対の挟持部を互いに平行な状態で移動させる平行ガイド部と、該平行ガイド部の両端部分において上記一対の挟持部の先端側を両側へ開かせる一対の開きガイド部とを有しており、
上記一対の挟持部は、上記平行ガイド部に沿って互いに接近して円筒状ワークを挟持する挟持位置と、上記開きガイド部に沿って互いに離隔して上記先端側が後退する退避位置とに移動可能であり、かつ、上記一対の挟持部が互いに接近したときに上下に重なって互いに係合する係合部を有しており、
上記グリッパは、上記回転装置に対向したとき、該回転装置に対向する位置に待機したままで、上記一対の挟持部を上記退避位置にして、該一対の挟持部が上記加工装置の上記刃具装着部から退避するよう構成されていることを特徴とする搬送装置のグリッパ。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置のグリッパにおいて、上記平行ガイド部は、直線状に形成されており、上記一対の開きガイド部は、曲線状に形成されていることを特徴とする搬送装置のグリッパ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送装置のグリッパにおいて、上記一対の開きガイド部は、上記一対の挟持部の先端側が上記退避位置において略90°開くよう形成されていることを特徴とする搬送装置のグリッパ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送装置のグリッパにおいて上記一対の挟持部は、上記円筒状ワークの2箇所に当接するV形状の内側面と、該内側面の下端位置において突出する鍔部とを有しており、
上記一対の挟持部の上記内側面によって上記円筒状ワークを挟み込んで該円筒状ワークの位置決めを行うよう構成されていることを特徴とする搬送装置のグリッパ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送装置のグリッパにおいて上記一対の挟持部は、V形状の内側面と、上記円筒状ワークの2箇所に当接するよう上記内側面の下端位置において突出するV形状の鍔部とを有しており、
上記一対の挟持部の上記鍔部によって上記回転支持治具を挟み込んで該回転支持治具の位置決めを行うよう構成されていることを特徴とする搬送装置のグリッパ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の搬送装置のグリッパにおいて、上記一対の挟持部における上記係合部は、上記内側面の横方向の両端部において複数段形成されていることを特徴とする搬送装置のグリッパ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の搬送装置のグリッパにおいて、上記グリッパは、上記円筒状ワーク、上記回転支持治具及び上記刃具を直接又は間接的に把持可能であり、
上記旋回ローダは、上記複数のグリッパを旋回させることにより、上記回転装置との間での上記円筒状ワークの受渡し、上記回転装置との間での上記回転支持治具の受渡し、上記加工装置との間での上記刃具の受渡しが可能であることを特徴とする搬送装置のグリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置において、ワークを把持する部分であるグリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
工場内でワークを搬送する種々の搬送装置においては、一対の把持部を接近させてワークを把持するグリッパが用いられることがある。搬送装置は、グリッパに把持したワークを種々の加工機へ搬送し、この加工機においてワークに加工を行うときには所定の位置にグリッパを退避させる。
例えば、ホブ盤に関する特許文献1においては、ホブ盤において、テーブルに対してワークを自動交換するローダを配設することが開示されている。このローダは、サポートコラムに鉛直軸回りで回転する回転盤を設けて構成されており、回転盤には、180度位相をずらした把持部が設けられている。そして、一方の把持部で加工済のワークを把持した状態で、他方の把持部で未加工のワークを把持し、回転盤を180度回転させることでワークの搬出入を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−291125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ホブ盤においては、ローダ(搬送装置)が旋回して把持部(グリッパ)に把持したワークをテーブル(回転装置)へ受け渡し、このテーブルに支持されて回転するワークに対して、ホブ盤のホブヘッド(加工装置)におけるホブ(刃具)が回転しながら加工を行う。このとき、ローダの把持部をテーブルに対向する位置で待機させておくと、この把持部がホブヘッドと干渉するおそれがある。そのため、ワークの加工が終了するまで、把持部を所定の位置へ退避させる必要がある。
【0005】
ホブヘッドとの干渉を避けやすくするためには、把持部を回動させて開閉させる構造にすることが考えられる。しかし、この場合には、大きさ・形状の異なる複数種類のワークを把持しようとしても、ワークの大きさによってワークの中心位置がずれるので回転装置への受渡しが困難になる。これに対し、把持部を平行移動させて開閉させる構造にすることも考えられる。しかし、この場合には、把持部がホブヘッドと干渉しやすくなってしまう。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、大きさ・形状の異なる複数種類のワーク等の把持と、周辺の装置との干渉の回避とを両立させることができる搬送装置のグリッパを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、搬送装置に配設され、円筒状ワークを挟持する一対の挟持部が挟持ガイドに係合して構成されたグリッパであって、
上記搬送装置は、回転支持治具を介して上記円筒状ワークを支持して回転する回転装置と、刃具装着部に刃具を装着して上記円筒状ワークに加工を行う加工装置とを備えた回転加工機に配設されているとともに、複数の上記グリッパが旋回中心軸線の周りに配設され、該複数のグリッパを上記回転装置に順次対向させるよう旋回する旋回ローダとして構成されており、
上記挟持ガイドは、上記一対の挟持部を互いに平行な状態で移動させる平行ガイド部と、該平行ガイド部の両端部分において上記一対の挟持部の先端側を両側へ開かせる一対の開きガイド部とを有しており、
上記一対の挟持部は、上記平行ガイド部に沿って互いに接近して円筒状ワークを挟持する挟持位置と、上記開きガイド部に沿って互いに離隔して上記先端側が後退する退避位置とに移動可能であり、かつ、上記一対の挟持部が互いに接近したときに上下に重なって互いに係合する係合部を有しており、
上記グリッパは、上記回転装置に対向したとき、該回転装置に対向する位置に待機したままで、上記一対の挟持部を上記退避位置にして、該一対の挟持部が上記加工装置の上記刃具装着部から退避するよう構成されていることを特徴とする搬送装置のグリッパにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記搬送装置のグリッパは、一対の挟持部を退避位置へ移動させるときの挟持ガイドの構造に工夫をしている。
従来のグリッパが、一対の挟持部を平行移動させるだけ、又は一対の挟持部を回動させるだけの構造を有しているのに対し、本発明のグリッパは、平行移動と回動とを組み合わせることにより、複数種類のワーク等の把持と、周辺の装置との干渉の回避とを両立させたものである。
【0009】
グリッパは、一対の挟持部が平行ガイド部に沿って互いに平行に接近することにより、大きさ・形状の異なる複数種類のワーク等の把持が可能である。これにより、グリッパの汎用性を高めることができる。また、グリッパは、一対の挟持部が一対の開きガイド部に沿って移動することにより、一対の挟持部の先端側が開くようにして、ワークに加工を行う加工装置から退避することができる。これにより、ワークに加工を行う際に、ワークの搬送を行った位置にグリッパを待機させておいても、このグリッパが加工装置に干渉しないようにすることができる。
【0010】
それ故、上記搬送装置のグリッパによれば、大きさ・形状の異なる複数種類のワーク等の把持と、周辺の装置との干渉の回避とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例にかかる、搬送装置のグリッパを示す斜視図。
図2】実施例にかかる、一対の挟持部が挟持位置にある状態のグリッパを、下方から見た状態で示す斜視図。
図3】実施例にかかる、一対の挟持部が退避位置にある状態のグリッパを、下方から見た状態で示す斜視図。
図4】実施例にかかる、一対の挟持部が加工装置の刃具装着部から退避した状態を示す上面図。
図5】実施例にかかる、一方治具部と他方治具部とによる回転支持治具を示す正面図。
図6】実施例にかかる、回転支持治具及び円筒状ワークがセットされた回転加工機を示す斜視図。
図7】実施例にかかる、円筒状ワークを把持するグリッパを示す斜視図。
図8】実施例にかかる、他の円筒状ワークを把持するグリッパを示す斜視図。
図9】実施例にかかる、回転支持治具を把持するグリッパを示す斜視図。
図10】実施例にかかる、刃具が保持されたパレットを把持するグリッパを示す斜視図。
図11】実施例にかかる、グリッパの一対の挟持部を示す斜視図。
図12】実施例にかかる、他方治具部を把持するグリッパを示す斜視図。
図13】実施例にかかる、一対の挟持部が挟持位置にある状態の他のグリッパを示す斜視図。
図14】実施例にかかる、一対の挟持部が退避位置にある状態の他のグリッパを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した搬送装置のグリッパにおける好ましい実施の形態につき説明する。
上記搬送装置のグリッパにおいては、上記平行ガイド部は、直線状に形成されており、上記一対の開きガイド部は、曲線状に形成されていてもよい(請求項2)。
この場合には、平行ガイド部及び一対の開きガイド部の形状が簡単である。
【0013】
また、上記一対の開きガイド部は、上記一対の挟持部の先端側が上記退避位置において略90°開くよう形成されていてもよい(請求項3)。
この場合には、ワークの搬送を行った位置にグリッパを待機させておいても、一対の挟持部が最も効果的に加工装置から退避することができる。そのため、ワークに加工を行う加工装置を、搬送装置のグリッパへ極力接近させることができる。
なお、一対の開きガイド部は、一対の挟持部が退避位置において、所定の角度(例えば挟持位置から60〜90°)開くように構成することもできる。
【0014】
また、上記ワークは円筒状ワークであり、上記一対の挟持部は、上記円筒状ワークの2箇所に当接するV形状の内側面と、該内側面の下端位置において突出する鍔部とを有しており、上記一対の挟持部の上記内側面によって上記円筒状ワークを挟み込んで該円筒状ワークの位置決めを行うよう構成されていてもよい(請求項4)。
この場合には、一対の挟持部の内側面によって、円筒状ワークを位置決めを行って安定して挟持することができる。また、一対の挟持部の鍔部に円筒状ワークの下側角部を掛止させることにより、円筒状ワークの落下防止を行うことができる。
【0015】
また、上記ワークは円筒状ワークであり、上記一対の挟持部は、V形状の内側面と、上記円筒状ワークの2箇所に当接するよう上記内側面の下端位置において突出するV形状の鍔部とを有しており、上記一対の挟持部の上記鍔部によって上記回転支持治具を挟み込んで該回転支持治具の位置決めを行うよう構成されていてもよい(請求項5)。
この場合には、一対の挟持部の鍔部によって、回転支持治具を位置決めを行って安定して挟持することができる。
【0016】
また、上記搬送装置は、回転支持治具を介して上記円筒状ワークを支持して回転する回転装置と、刃具装着部に刃具を装着して上記円筒状ワークに加工を行う加工装置とを備えた回転加工機に配設されているとともに、複数の上記グリッパが旋回中心軸線の周りに配設され、該複数のグリッパを上記回転装置に順次対向させるよう旋回する旋回ローダとして構成されており、上記グリッパは、上記回転装置に対向したとき、上記一対の挟持部を上記退避位置にして、該一対の挟持部が上記加工装置の上記刃具装着部から退避するよう構成されてい
【0017】
グリッパを旋回ローダのグリッパとして用いる場合には、旋回ローダが旋回してグリッパに把持した円筒状ワークを回転装置へ受け渡した後、一対の挟持部を退避位置にして、グリッパを回転装置に対向する位置に待機させておくことができる。このとき、一対の挟持部が退避位置にあることにより、この一対の挟持部が加工装置の刃具装着部に干渉しないようにすることができる。これにより、グリッパが回転装置に対向する位置に待機したままで、加工装置の刃具によって、回転装置によって回転させる円筒状ワークの外周に対して歯面を切削加工することができる。
【0018】
また、上記グリッパは、上記円筒状ワーク、上記回転支持治具及び上記刃具を直接又は間接的に把持可能であり、上記旋回ローダは、上記複数のグリッパを旋回させることにより、上記回転装置との間での上記円筒状ワークの受渡し、上記回転装置との間での上記回転支持治具の受渡し、上記加工装置との間での上記刃具の受渡しが可能であってもよい(請求項7)。
この場合には、グリッパによって、回転装置及び加工装置に必要とされる回転支持治具及び刃具の段替えも行うことができ、グリッパの汎用性を一層高めることができる。
なお、グリッパは、刃具については、刃具が保持されたパレットを把持することにより、間接的に把持することができる。
【実施例】
【0019】
以下に、搬送装置のグリッパにかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
搬送装置のグリッパ5は、図1図3に示すごとく、搬送装置としての旋回ローダ4に配設され、円筒状ワーク8を挟持する一対の挟持部51が挟持ガイド53に係合して構成されている。挟持ガイド53は、一対の挟持部51を互いに平行な状態で移動させる直線状の平行ガイド部531と、平行ガイド部531の両端部分において一対の挟持部51の先端側を両側へ開かせる曲線状の一対の開きガイド部532とを有している。一対の挟持部51は、図2に示すごとく、平行ガイド部531に沿って互いに接近して円筒状ワーク8を挟持する挟持位置511と、図3に示すごとく、開きガイド部532に沿って互いに離隔して先端側が後退する退避位置512とに移動可能である。
【0020】
以下に、本例の旋回ローダ4のグリッパ5につき、図1図14を参照して詳説する。
図1に示すごとく、本例の旋回ローダ4は、回転支持治具6を介して円筒状ワーク8を支持して回転する回転装置2と、刃具7を装着して円筒状ワーク8の外周に歯面81を切削加工する加工装置3とを備えたホブ盤1に配設されている。そして、本例の旋回ローダ4は、複数のグリッパ5が旋回中心軸線の周りに配設され、複数のグリッパ5を回転装置2に順次対向させるよう構成されている。本例のグリッパ5は、図4に示すごとく、回転装置2に対向したとき、一対の挟持部51を退避位置512にして、一対の挟持部51が加工装置3の刃具(ホブカッタ)7及び刃具7を支持する刃具装着部(ホブヘッド)31から退避するよう構成されている。
【0021】
図1に示すごとく、本例のホブ盤1は、旋回ローダ4によって、ホブ盤1に対して円筒状ワーク8の搬送と回転支持治具6及び刃具7の段替え(交換)とを可能にしたものである。本例の加工装置3及び回転装置2においては、断面円形状の円筒状ワーク8に対して歯切りを行い、製品としてのはすば歯車を製造する。
加工装置3は、刃具7を装着する刃具装着部31の回転中心軸線301を、水平方向に傾斜して向けられるよう構成されている。回転装置2は、上下方向に向く回転中心軸線201の回りに回転するよう構成されている。加工装置3は、回転装置2によって回転する円筒状ワーク8の外周を、回転する刃具7によって切削して、はすば状の歯面81を加工する。
加工装置3は、刃具装着部31を、回転可能であるとともに前後及び上下に移動させるよう構成されている。加工装置3は、旋回ローダ4に対して回転装置2が配設された方向の延長上に配設されている。
【0022】
回転装置2は、回転駆動源によって、回転テーブルに設けられた一方の回転支軸21を回転させるよう構成されており、他方の回転支軸22は、一方の回転支軸21の回転を受けて回転するようになっている。本例の回転装置2は、回転中心軸線201を鉛直方向に向けて配設されており、一方の回転支軸21は鉛直方向下側に配設され、他方の回転支軸22は鉛直方向上側に配設される。他方の回転支軸22は、旋回ローダ4の旋回中心支柱41に取り付けられている。
【0023】
図1に示すごとく、本例の旋回ローダ4は、円筒状ワーク8、回転支持治具6、及び刃具7を保持するパレット70のいずれもの搬入・搬出を行うよう構成されている。各グリッパ5は、回転装置2に対向する内部受渡位置501と、旋回中心支柱41に対して回転装置2が位置する方向とは反対方向に位置する外部受渡位置502とに逐次回転するよう構成されている。
本例の各グリッパ5は、旋回ローダ4の旋回によって、図7図8に示すごとく、回転装置2との間での加工前の円筒状ワーク8の供給及び加工後の円筒状ワーク8の取出、図9に示すごとく、回転装置2との間での回転支持治具6の供給及び取出、図10に示すごとく、加工装置3との間での刃具7の供給及び取出を行うよう構成されている。
【0024】
図5に示すごとく、回転支持治具6は、回転装置2の一方の回転支軸21に装着される一方治具部61と、回転装置2において一方の回転支軸21と同一軸線上に配置された他方の回転支軸22に装着される他方治具部62とによって構成されている。他方治具部62は、一方治具部61と組み合わせて運搬可能である。
回転支持治具6は、一方治具部61の上に他方治具部62が組み合わさった状態で、旋回ローダ4によって回転装置2まで搬送(運搬)される。
【0025】
回転支持治具6は、他方治具部62の中心位置において下方へ突出する中心軸部621を、一方治具部61の中心位置に形成された中心穴611内に挿入して、一方治具部61と他方治具部62との中心位置決めを行った状態で組み合わさるよう構成されている。円筒状ワーク8の中心には、中心穴83が形成されており、一方治具部61と他方治具部62とによって円筒状ワーク8を挟持するときには、円筒状ワーク8の中心穴83内に挿通された中心軸部621が中心穴611に挿入される。一方治具部61と他方治具部62とは、円筒状ワーク8を挟持する場合と、円筒状ワーク8を挟持しない場合とのいずれにおいても、中心軸部621と中心穴611との中心位置決めを行って組み合わせるよう構成されている。
【0026】
図5図6に示すごとく、回転支持治具6の一方治具部61には、バリ取り工具63が取り付けられている。バリ取り工具63は、一方治具部61の中心軸線の回りに回転自在に取り付けられ、一方治具部61と他方治具部62との間に挟持する円筒状ワーク8の端面80にバリ取り加工を行うよう構成されている。
【0027】
本例のバリ取り工具63は、一方治具部61の中心軸線の回りに回転自在なリング部631と、リング部631から周方向一方に突出して設けられた支持アーム部632と、支持アーム部632において一方治具部61の中心軸線と平行な中心軸線の回りに回転自在に支持された回転工具部633とを有している。支持アーム部632には、ホブ盤1の架台に配設(立設)された回り止め部材65と係合するストッパ溝64が設けられている。
そして、バリ取り工具63は、一方治具部61が一方の回転支軸21に装着されたときに、支持アーム部632のストッパ溝64が回り止め部材65と係合することにより、一方の回転支軸21及び一方治具部61が回転する際に、一方治具部61の中心軸線の回りに回転しないようにすることができる。
【0028】
図1図10に示すごとく、本例の刃具7は、加工装置3の刃具装着部31に装着される前は、パレット70上に保持されて保管されている。旋回ローダ4の各グリッパ5は、パレット70を把持するよう構成されている。パレット70は、グリッパ5に把持される土台部71と、土台部71の中心からオフセットした位置に形成され、刃具7を保持する刃具保持部72とを有している。土台部71は、各グリッパ5によって把持しやすいように、円盤形状に形成されている。刃具保持部72は、一対の受け部721によって、軸方向を水平方向に向けた刃具7の両端部分の軸部を受けるよう構成されている。
加工装置3は、刃具装着部31を前進及び上下させて、この刃具装着部31に、グリッパ5に把持されたパレット70の刃具保持部72における刃具7を装着するよう構成されている。
【0029】
図1に示すごとく、本例の旋回ローダ4は、旋回中心支柱41の回りに複数のグリッパ5を旋回可能に配設して構成されている。旋回ローダ4は、モータ等の駆動源によって、複数のグリッパ5の全体を、グリッパ5が配設された周方向の所定角度ずつ旋回させるよう構成されている。旋回中心支柱41の旋回中心軸線401は上下方向に向けられており、各グリッパ5は、旋回中心支柱41の回りに水平方向に旋回するよう構成されている。
本例のグリッパ5は、旋回中心支柱41の回りにおいて互いに90°ずれた位置の4箇所に配設されている。各グリッパ5は、旋回中心支柱41に対して、個別に上下移動可能である。なお、グリッパ5は、旋回中心支柱41の回りの2箇所もしくは3箇所、あるいは5箇所以上に等間隔に配設することもできる。
【0030】
図示は省略するが、旋回ローダ4に対して回転装置2が配設された方向とは反対側の方向には、円筒状ワーク8、回転支持治具6及びパレット70のいずれをも搬送可能である搬送台が配設される。
また、旋回ローダ4は、外部受渡位置502と内部受渡位置501とのいずれか一方でグリッパ5の各高さ位置を設定し、この各高さ位置を維持して外部受渡位置502と内部受渡位置501との他方へ旋回するよう構成されている。
【0031】
図7図8に示すごとく、本例の円筒状ワーク8は、歯車用の円盤形状を有しており、グリッパ5は、円盤形状の外周を挟持するよう構成されている。グリッパ5は、一対の挟持部51の間隔を可変させることにより、外径が異なる複数種類の円筒状ワーク8を把持できるよう構成されている。
図11に示すごとく、グリッパ5における一対の挟持部51は、円筒状ワーク8の2箇所に当接するV形状の内側面513と、内側面513の下端位置において突出する鍔部514とを有している。グリッパ5は、一対の挟持部51の内側面513によって円筒状ワーク8を挟み込んで、この円筒状ワーク8の位置決めを行うよう構成されている。また、鍔部514は、内側面513の形状に沿ってV形状に形成されている。
【0032】
各挟持部51の内側面513は、その幅が中間位置で縮小するように、上下方向から見てV形状に形成されている。各挟持部51において、V形状の内側面513の横方向の両端部には、外径の小さな円筒状ワーク8を把持するときに、上下に重なって互いに係合する複数段の係合部515が形成されている。
図7図8に示すごとく、一対の挟持部51によって円筒状ワーク8を挟持するときには、各挟持部51のV形状の内側面513によって円筒状ワーク8の外周を挟み込み、鍔部514によって円筒状ワーク8の下側角部を掛止して、円筒状ワーク8の落下防止を行うことができる。
【0033】
図9に示すごとく、一対の挟持部51によって、他方治具部62が上側に組み合わさった一方治具部61を挟持するときには、各挟持部51のV形状の内側面513によって一方治具部61の外周を挟み込み、鍔部514によって一方治具部61の外周に形成されたフランジ部66を掛止して、一方治具部61及び他方治具部62の落下防止を行うことができる。
【0034】
図10に示すごとく、一対の挟持部51によってパレット70を挟持するときには、各挟持部51のV形状の内側面513によってパレット70の外周を挟み込み、鍔部514によってパレット70の下側角部を掛止して、パレット70の落下防止を行うことができる。
また、図12に示すごとく、他方治具部62等の上側部分622の外径が下側部分(中心軸部)621の外径よりも大きなものは、上側部分622を一対の挟持部51の上面に載置し、一対の鍔部514によって下側部分621の外周を挟み込むことができる。この場合には、一対の鍔部514によって他方治具部62の下側部分621を挟み込んで他方治具部62の位置決めを行う。
【0035】
各グリッパ5は、旋回ローダ4の旋回中心支柱41に配設された電動アクチュエータによって、それぞれ個別に上下にスライド可能である。旋回中心支柱41においては、一対のリニヤガイド43が配設されている。各グリッパ5は、電動アクチュエータによる駆動力を受け、リニヤガイド43に沿って上下にスライド可能である。
電動アクチュエータ及び一対のリニヤガイド43は、旋回中心支柱41に設けられたベースプレート44に配設されている。電動アクチュエータ及び一対のリニヤガイド43には、板形状のカムプレート52が取り付けられている。
【0036】
図2図3に示すごとく、本例の挟持ガイド53は、カムプレート52の板面を貫通する貫通穴(貫通溝)として形成されている。平行ガイド部531は、直線状であって長尺状に形成された貫通穴であり、開きガイド部532は、曲線状に形成された貫通穴である。本例の開きガイド部532は、平行ガイド部531に対して直交する角度まで屈曲して形成されている。そして、一対の挟持部51は、開きガイド部532の端部にある退避位置512まで移動したときには、先端側が略90°開く状態になる。
【0037】
本例の一対の挟持部51は、シリンダ54による駆動力を受けて、挟持方向Lの中心位置に対して対称となる移動量で、平行ガイド部531と開きガイド部532とを移動する。カムプレート52における挟持方向Lの中心位置には、ピニオンギヤ55が回転自在に設けられており、このピニオンギヤ55の一方側と他方側とに、直線状に歯面を形成してなるラック56がそれぞれ噛合している。一方のラック56Aには、シリンダ54のロッド540の先端部が取り付けられている。
【0038】
図2図3に示すごとく、グリッパ5の各挟持部51には、各挟持部51をカムプレート52に支持するための支持プレート57が、狭持ガイド53内に挿通された2つの円筒状の掛渡部571を介して設けられている。各挟持部51は、掛渡部571をカムプレート52の挟持ガイド53内に配置して、支持プレート57との間にカムプレート52を挟み込んで、カムプレート52上をスライドするよう構成されている。
各支持プレート57には、係合ピン572が立設されており、各ラック56には、係合ピン572を、挟持方向Lに直交する方向へスライドさせるためのスライド溝562が形成された連結プレート561が設けられている。
【0039】
シリンダ54による駆動力を受けてラック56が挟持方向Lへスライドするときには、連結プレート561から、係合ピン572、支持プレート57及び掛渡部571を介して挟持部51へ動力が伝達される。
シリンダ54のロッド540がストロークする際には、一方のラック56Aが挟持方向Lの一方向へスライドするとともに、他方のラック56Bがピニオンギヤ55の回転を受けて挟持方向Lの他方向へスライドする。これにより、シリンダ54による駆動力のみで各ラック56にそれぞれ係合する一対の挟持部51を、挟持位置511と退避位置512との間で移動させることができる。
【0040】
また、本例においては、図2に示すごとく、シリンダ54のロッド540を出位置541にするときには、ピニオンギヤ55を介して一対のラック56が互いに接近し、一対の挟持部51を、平行ガイド部531に沿って互いに接近させて、挟持位置511へ移動させる。一方、図3に示すごとく、シリンダ54のロッド540を戻位置542にするときには、ピニオンギヤ55を介して一対のラック56が互いに離隔し、一対の挟持部51を、開きガイド部532に沿って互いに離隔させて、退避位置512へ移動させる。そして、各挟持部51の掛渡部571が平行ガイド部531から開きガイド部532へ移動するときに、各挟持部51の先端側が、互いに向き合う状態から略90°回動した開く状態に変化して、加工装置3の刃具装着部31から退避する。
【0041】
グリッパ5の開閉構造は、一対のラック56及びピニオンギヤ55(ラック&ピニオン)を用いる以外にも種々の構造とすることができる。
例えば、図13図14に示すごとく、挟持ガイド53を、一対の挟持部51をスライドさせるレール52Aによって形成し、シリンダ54の駆動力をリンク522を介して一対の挟持部51へ伝達することにより、一対の挟持部51を挟持位置511と退避位置512との間で移動させることもできる。
【0042】
この場合には、各挟持部51を、レール52Aに係合してスライドするスライダー521に取り付け、各スライダー521又は挟持部51と、シリンダ54のロッド540の先端部とをリンク522によって連結する。そして、図13に示すごとく、ロッド540が戻位置542に移動するときに、一対の挟持部51を、レール52Aにおける平行ガイド部531に沿って互いに接近させて挟持位置511へ移動させる。一方、図14に示すごとく、ロッド540が出位置541に移動するときに、一対の挟持部51を、レール52Aにおける開きガイド部532に沿って互いに離隔させて退避位置512へ移動させる。
【0043】
本例の旋回ローダ4のグリッパ5は、一対の挟持部51を退避位置512へ移動させるときの挟持ガイド53の構造に工夫をしている。
従来のグリッパが、一対の挟持部を平行移動させるだけ、又は一対の挟持部を回動させるだけの構造を有しているのに対し、本例のグリッパ5は、平行移動と回動とを組み合わせることにより、複数種類の円筒状ワーク8等の把持と、加工装置3の刃具装着部31との干渉の回避とを両立させたものである。
【0044】
本例のグリッパ5は、一対の挟持部51が平行ガイド部531に沿って互いに平行に接近することにより、大きさ・形状の異なる複数種類の円筒状ワーク8及び回転支持治具6、並びに刃具7のパレット70の把持が可能である。これにより、グリッパ5の汎用性を高めることができる。また、グリッパ5は、一対の挟持部51が一対の開きガイド部532に沿って移動することにより、一対の挟持部51の先端側が開くようにして、加工装置3の刃具装着部31から退避することができる。
【0045】
より具体的には、本例のグリッパ5は、旋回ローダ4が旋回してこのグリッパ5に把持した円筒状ワーク8を回転装置2へ受け渡した後、一対の挟持部51を退避位置512にして、グリッパ5を回転装置2に対向する位置に待機させておくことができる。このとき、一対の挟持部51が退避位置512にあることにより、この一対の挟持部51が加工装置3の刃具装着部31に干渉しないようにすることができる。これにより、グリッパ5が回転装置2に対向する位置に待機したままで、加工装置3の刃具7を回転させて、回転装置2によって回転させる円筒状ワーク8の外周に対して歯面81を切削加工することができる。
また、一対の挟持部51が、挟持位置511から略90°開く退避位置512へ移動することにより、刃具装着部31との干渉を避けるために各挟持部51の先端側の形状を細くする必要がなくなる。そのため、一対の挟持部51の剛性を十分に確保することができる。
【0046】
それ故、旋回ローダ(搬送装置)4のグリッパ5によれば、大きさ・形状の異なる複数種類の円筒状ワーク8及び回転支持治具6、並びに刃具7のパレット70の把持と、加工装置3の刃具装着部31との干渉の回避とを両立させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ホブ盤
2 回転装置
3 加工装置
4 旋回ローダ(搬送装置)
5 グリッパ
51 一対の挟持部
511 挟持位置
512 退避位置
52 カムプレート
53 挟持ガイド
531 平行ガイド部
532 開きガイド部
8 円筒状ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14