(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記貫通孔の前記外側開口部を、前記センサ検出面に対して直交方向に、前記センサ検出面を含む平面上に投影したとき、前記貫通孔の前記外側開口部は、前記センサ検出面の中心位置と、前記外側開口部の中心の投影位置との間の距離は1mm以上離れている、請求項1に記載の送信装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、タイヤがパンクしたとき、タイヤとリムとにより挟まれたタイヤ空洞領域内に注入するパンク修理液が用いられる。しかし、筐体の内部空間とタイヤ空洞領域との間を接続する開口部は、筐体の表面から一方向に突出した突出部の頂部に設けられ、かつ、突出部の高さは1mm以上であるので、タイヤ空洞領域に設けられた送信装置にパンク修理液が付着しても、突出部の頂部に付着し難い。さらに、開口部の面積も小さいので、通気孔を塞ぎ、空気圧の計測に影響を与えるといった問題はない、とされている。
【0006】
本発明は、タイヤ空洞領域に設けられ、タイヤの状態に関するタイヤ情報を送信する、上記送信装置とは異なる形態の送信装置であって、パンク修理液を用いてタイヤのパンクを修理しても、タイヤ空洞領域と送信装置との間を接続する筐体に設けられた貫通孔(通気孔)をパンク修理液が塞ぐことを抑制できる送信装置、およびこの送信装置を用いてタイヤの異常の有無を判定するタイヤ情報監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、タイヤ空洞領域に設けられ、タイヤの状態に関するタイヤ情報を送信する送信装置である。当該送信装置は、
タイヤとリムで囲まれたタイヤ空洞領域に充填される気体の状態を、タイヤ情報として検出するセンサと、
検出した前記タイヤ情報を無線により送信する送信機と、
前記センサと前記送信機を内部に収納する筐体と、を有する。
前記筐体は、前記筐体の壁を貫通し、前記センサのセンサ検出面に対して直交方向に延びる貫通孔を有する。
前記貫通孔の前記タイヤ空洞領域側の開口部を外側開口部といい、前記貫通孔の前記センサ検出面の側の開口部を内側開口部というとき、
前記外側開口部の面積は、0.8mm
2以下であり、
前記センサ検出面は、空間を隔てることなく前記内側開口部に面している。前記貫通孔の側壁の面積をAmm
2とし、前記外側開口部と前記内側開口部との間に挟まれる前記貫通孔の体積をVmm
3とし、前記外側開口部と前記内側開口部との間の、前記センサ検出面に直交する方向の距離をhmmとしたとき、前記距離hmmは、3〜15mmであり、前記体積Vmm
3に対する面積Amm
2の比率A/Vは、3.0〜30.0mm
-1である。
【0008】
前記貫通孔の前記外側開口部を、前記センサ検出面に対して直交方向に、前記センサ検出面を含む平面上に投影したとき、前記貫通孔の前記外側開口部は、前記センサ検出面の中心位置と、前記外側開口部の中心の投影位置との間の距離は1mm以上離れていることが好ましい。
【0009】
さらに、前記外側開口部の領域の投影位置は、いずれも前記センサ検出面の外側に位置することが好ましい。
【0010】
また、前記外側開口部の面積は、前記内側開口部の面積に比べて小さいことが好ましい。
【0011】
前記内側開口部の周長は、例えば、前記外側開口部の周長の3〜30倍であることが好ましい。
【0012】
本発明の他の一態様は、タイヤ状態監視システムである。当該システムは、
前記システムは、送信装置と、受信装置と、監視部と、を備える。
前記送信装置は、
タイヤとリムで囲まれたタイヤ空洞領域に充填される気体の状態を、タイヤ情報として検出するセンサと、
検出した前記タイヤ情報を無線により送信する送信機と、
前記センサと前記送信機を内部に収納する筐体と、を有する。
前記受信装置は、前記送信機から送信された前記タイヤ情報を受信する。
前記監視部は、前記タイヤ情報に基づいて、タイヤの異常の有無を判定し、判定結果を報知する。
前記送信装置の前記筐体は、前記筐体の壁を貫通し、前記センサのセンサ検出面に対して直交方向に延びる貫通孔を有し、前記貫通孔の前記タイヤ空洞領域側の開口部を外側開口部といい、前記貫通孔の前記センサ検出面の側の開口部を内側開口部というとき、前記外側開口部の面積は、0.8mm
2以下であり、前記センサ検出面は、空間を隔てることなく前記内側開口部に面している。さらに、前記貫通孔の側壁の面積をAmm
2とし、前記外側開口部と前記内側開口部との間に挟まれる前記貫通孔の体積をVmm
3とし、前記外側開口部と前記内側開口部との間の、前記センサ検出面に直交する方向の距離をhmmとしたとき、前記距離hmmは、3〜15mmであり、前記
体積Vmm3に対する前記
面積Amm2の比率
A/Vは、3.0〜30.0mm
-1である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の送信装置及びタイヤ状態監視システムによれば、パンク修理液を用いてタイヤのパンクを修理してもパンク修理液が通気孔を塞ぎ難くい。このため、依然としてタイヤの空気圧情報等のタイヤ情報を適切に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の送信装置及びタイヤ状態監視システムについて、添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0016】
(タイヤ空気圧モニタリングシステムの概要)
図1は、タイヤ状態監視システムの実施形態であるタイヤ状態モニタリングシステム10の全体概要を示す図である。
タイヤ状態モニタリングシステム(以下、システムという)10は、車両1に搭載されている。システム10は、車両1の各タイヤ2a,2b,2c,2d(タイヤ2a,2b,2c,2dをまとめて説明するとき、タイヤ2a,2b,2c,2dを総称してタイヤ2という)のタイヤ空洞領域に設けられたタイヤ情報送信装置(以下、送信装置という)100a,100b,100c,100dと、監視装置200と、を有する。
【0017】
送信装置100a,100b,100c,100dのそれぞれは、タイヤ2とリム3(
図2参照)で囲まれたタイヤ空洞領域に充填される気体の状態を、タイヤの状態に関するタイヤ情報として検出し、このタイヤ情報を監視装置200に無線で送信する。以降、送信装置100a,100b,100c,100dをまとめて説明するとき、送信装置100a,100b,100c,100dを総称して送信装置100という。
【0018】
(送信装置の構成)
図2は、送信装置100がタイヤに固定される方法の一例を説明する図である。
図3は、
図2に示す送信装置100の全体を示す斜視図である。
送信装置100は、タイヤ空洞領域内に配置される筐体102を有する。筐体102には、タイヤ空洞領域とタイヤ2の外部の大気とを通気するタイヤバルブ104が設けられている。筐体102は、略板状に形成され、タイヤ周方向(
図2のX方向)に延びるように設けられている。タイヤバルブ104は、タイヤ幅方向(
図2のY方向)に延びる筒型形状をなし、リム3に設けられた図示されない貫通孔をタイヤ幅方向に貫通するように設けられている。すなわち、タイヤバルブ104の延在方向(
図2のY方向)の一方の端部は、タイヤ空洞領域に位置している。筐体102は、タイヤ空洞領域において、タイヤバルブ104の延在方向の一端に接続され、
図2に示すように、タイヤバルブ104がリム3に機械的に固定されることにより、タイヤ空洞領域内に固定されて配置される。
ここで、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸の周りにタイヤ2のトレッド部を回転させたときのトレッド部の回転方向、すなわちタイヤ2の回転方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸から放射状に延びる方向をいう。
【0019】
図4は、
図3に示すA−A線に沿った筐体102の矢視断面図である。
図4に示すように、筐体102は、筐体102の内部に設けられた回路106を有する。回路106は、基板108と、基板108に設けられたセンサユニット110と、送信機112と、処理ユニット114と、電源部116と、アンテナ118(
図5に示す)と、を有する。また、筐体102の内部空間には、回路106をタイヤ空洞領域から画された状態で格納するために封止樹脂剤119で充填されている。
【0020】
センサユニット110は、タイヤ空洞領域に充填される気体の状態をタイヤ情報として検出するセンサを有する。本実施形態では、センサユニット110は、タイヤ空洞領域に充填される気体の空気圧をタイヤ情報として検出する。また、センサユニット110は、空気圧を検出するためのセンサ検出面111を有し、センサ検出面111は、空間を隔てることなく、筐体102を貫通する貫通孔122の内部空間と直接面している。
【0021】
筐体102には、筐体102の壁を貫通する貫通孔122が、筐体102の壁を貫通するように設けられている。貫通孔122の内部が筐体102の内部空間120となっている。貫通孔122がタイヤ空洞領域に面した筐体102の表面には、貫通孔122の外側開口部122aが設けられている。すなわち、外側開口部122aは、タイヤ径方向の外側に向かって開口するように設けられている。一方、筐体102の内表面には、貫通孔122の内側開口部122bが設けられている。
【0022】
図4に示すように、貫通孔122は、外側開口部122aから内側開口部122bに進むにつれて、貫通孔122の断面を拡げる。すなわち、貫通孔122の内側開口部122bは、外側開口部122aに比べて開口面積が広い。内側開口部122bの開口面積を外側開口部122aの開口面積より広く形成することにより、貫通孔の外側開口部及び内側開口部の開口面積が一様な場合と比較して毛細管現象が作用し難くなる。このため、外側開口部122aにパンク修理液等の液体が付着した場合であっても、パンク修理液等の液体は、貫通孔122、さらには、貫通孔122の内部空間内に流入し難くなる。
このように、送信装置100は、タイヤ空洞領域に充填される気体の状態を、タイヤ情報として検出するセンサ(例えば、後述する空気圧センサ)を含むセンサユニット110と、検出したタイヤ情報を無線により送信する送信機112と、センサユニット110と送信機112を内部に収納する筐体102と、を有する。筐体102、貫通孔122、センサユニット110については、後述する。
【0023】
(送信装置の回路構成)
図5は、送信装置100の回路構成図である。
センサユニット110は、空気圧センサ110aとA/D変換器110bを有する。空気圧センサ110aは、貫通孔122内の空間の空気圧を感知し、圧力信号を出力する。ここで、貫通孔122の空間は、タイヤ空洞領域と繋がっているため、空気圧センサ110aは、タイヤ空洞領域の空気圧を感知することができる。
A/D変換器110bは、空気圧センサ110aから出力された圧力信号をデジタル変換し、圧力データを出力する。
【0024】
処理ユニット114は、中央処理部114aと記憶部114bとを有する。中央処理部114aは、記憶部114bの半導体メモリに格納されているプログラムに基づいて動作する。中央処理部114aは、電力が供給されて駆動すると、センサユニット110から送られてくる圧力データを所定時間間隔、例えば5分毎に、送信機112を介して監視装置200に空気圧の情報である圧力データを送信するように制御する。記憶部114bには送信装置100に固有の識別情報が予め記憶されており、中央処理部114aは圧力データと共に識別情報を監視装置200に送信するように制御する。
【0025】
記憶部114bは、中央処理部114aを動作するプログラムが記録されているROMと、例えばEEPROM等の書き換え可能な不揮発性のメモリとを備える。送信装置100の固有の識別情報は、記憶部114bの書き換え不可領域に記憶されている。
【0026】
送信機112は、発振回路112aと、変調回路112bと、増幅回路112cとを有する。
発振回路112aは、搬送波信号、例えば315MHz帯の周波数のRF信号を生成する。
変調回路112bは、中央処理部114aから送られた圧力データと送信装置100に固有の識別情報とを用いて、搬送波信号を変調して送信信号を生成する。変調方式は、振幅偏移変調(ASK)、周波数変調(FM)、周波数偏移変調(FSK)、位相変調(PM)、位相偏移変調(PSK)等の方式を用いることができる。
増幅回路112cは、変調回路112bで生成された送信信号を増幅する。増幅された送信信号は、アンテナ118を介して、監視装置200に無線で送信される。
電源部116は、例えば二次バッテリが用いられ、センサユニット110と、送信機112と、処理ユニット114と、に電力を供給する。
【0027】
(監視装置の回路構成)
図6は、監視装置200の回路構成図である。
監視装置200は、例えば車両1の運転席の位置に配置され、運転者に空気圧の情報を報知する。監視装置200は、アンテナ202と、受信部(受信装置)204と、受信バッファ206と、中央処理部208と、記憶部210と、操作部212と、スイッチ214と、表示制御部216と、表示部218と、電源部220と、を有する。中央処理部208と、記憶部210と、操作部212と、スイッチ214と、表示制御部216と、表示部218とにより、受信したタイヤ情報に基づいて、タイヤの異常の有無を判定し、判定結果を報知する監視部が形成される。
【0028】
アンテナ202は、送信装置100の送信周波数と同じ周波数に整合され、受信部204に接続されている。
受信部204は、送信装置100から送信された所定の周波数の送信信号を受信し、復調処理をして圧力データと識別情報のデータを取り出す。これらのデータは、受信バッファ206に出力される。
受信バッファ206は、受信部204から出力された圧力データと識別情報のデータを一時的に格納する。格納された圧力データと識別情報のデータは、中央処理部208からの指示にしたがって、中央処理部208に出力される。
【0029】
中央処理部208は、主にCPUで構成され、記憶部210に記憶されているプログラムに基づいて動作する。中央処理部208は、受信した圧力データと識別情報のデータに基づいて、識別情報毎にタイヤ2a〜2dの空気圧を監視する。具体的には、圧力データに基づいて、タイヤ2a〜2dの異常の有無を判定し、判定結果を運転者に報知する。タイヤの異常の有無を判定するとは、例えば、空気圧が異常に低くなり、あるいは短時間に急激に低下し、タイヤがパンクしているか否かを判定することをいう。
【0030】
中央処理部208は、判定結果を表示制御部216に出力し、表示制御部216を介して判定結果を表示部218に出力させる。
さらに、中央処理部208は、操作部212からの情報やスイッチ214からの情報に応じて、送信装置100との間の通信方式等の初期設定を行う。また、操作部212からの情報により、中央処理部208においてタイヤの異常の有無の判定を行うための判定条件を設定することもできる。
記憶部210は、中央処理部208のCPUを動作するプログラムが記憶されたROMと、EEPROM等の不揮発性メモリとを有する。この記憶部210には、製造段階で、送信装置100との間の通信方式のテーブルが記憶されている。送信装置100と監視装置200は、初期段階において予め設定されている通信方式で通信する。通信方式テーブルには、送信装置100のそれぞれの固有の識別情報に対応して、通信プロトコル、転送ビットレート、データフォーマット等の情報が含まれている。これらの情報は、操作部212からの入力により自在に設定変更をすることができる。
【0031】
操作部212は、キーボード等の入力デバイスを含み、各種情報や条件を入力するために用いられる。スイッチ214は、初期設定の開始を中央処理部208に指示するために用いられる。
表示制御部216は、中央処理部208からの判定結果に応じて、タイヤ2a〜2dの装着位置に対応させてタイヤの空気圧を表示部218に表示させるように制御する。その際、表示制御部216は、タイヤがパンク状態にあるといった判定結果も、表示部218に同時に表示させるように制御する。
電源部220は、車両1に搭載されているバッテリから供給された電力を、監視装置200の各部分に適した電圧に制御して、図示されない電源ラインを通して電力を供給する。
【0032】
(筐体、貫通孔、センサユニットについての詳細説明)
以下、筐体102、貫通孔122、及びセンサユニット110のセンサ検出面111について詳細に説明する。
図4に示すように、筐体102に設けられる貫通孔122は、筐体102の壁を貫通し、センサのセンサ検出面111に対して直交方向に延びている。センサユニット110のセンサにおけるセンサ検出面111は、空間を隔てることなく内側開口部122bに直接面している。すなわち、センサ検出面111を取り巻くセンサユニット110の外側表面は、筐体102の内部の側壁面と接触しており、貫通孔122の空間にセンサ検出面111は接している。このような構成により、筐体102の厚さ、さらには、送信装置100の厚さを抑えることができるので、タイヤをリムに装着するとき、タイヤ装着用レバーが筐体102と干渉してリム組みを困難にすることを防ぐことができる。また、タイヤ装着用レバーが筐体102に衝突することが無くなるので、筐体102、さらには送信装置100が破損することを抑制することができる。
【0033】
しかし、貫通孔122の空間とセンサ検出面111との間に空間を介さずにセンサ検出面111が内側開口部122bに直接面するように構成することにより、貫通孔122に進入したパンク修理液がセンサ検出面111に付着することを防止する必要がある。このために、貫通孔122の側壁面に、貫通孔122の内部に進入したパンク修理液を付着させることにより、センサ検出面111にパンク修理液付着させ難くすることができる。しかし、貫通孔122の内部に進入したパンク修理液が多数付着すると、貫通孔122自体を塞いでしまい、センサユニット110は、正確にタイヤ情報を検出することはできない。本実施形態では、外側開口部122aと内側開口部122bとの間の、センサ検出面111に直交する方向の距離をhmmとし、外側開口部122aと内側開口部122bとの間に挟まれる貫通孔122の体積をVmm
3とし、外側開口部122a及び内側開口部122bを除いた貫通孔122の側壁面の面積をAmm
2としたとき、距離hmmを、3〜15mmとし、体積Vmm
3に対する面積Amm
2の比率A/Vを、3.0〜30.0mm
-1とするように貫通孔122を構成している。このような寸法を有する貫通孔122では、比率A/Vが上記範囲より小さい場合、体積Vに対して面積Aが小さいので、貫通孔122内に進入したパンク修理液は、貫通孔122の側壁面の表面に付着すると、貫通孔122の断面を塞ぎ易くなる。一方、比率A/Vが上記範囲より大きい場合、体積Vに対して面積Aが大きいので、貫通孔122内に進入したパンク修理液は、側壁面に付着し易く、付着した場合でも、側壁面の面上に広がって付着するので、貫通孔122の断面を塞ぎ難い。しかし、比率A/Vが上記範囲より大きい貫通孔122の加工は極めて困難であり、実用的に作製することは困難となる。比率A/Vは、3.0〜30.0mm
-1であることにより、後述する実験例からわかるように、貫通孔122を実用的に作製することができ、かつパンク修理液は貫通孔122を塞ぎ難い。距離hが3mm未満である場合、貫通孔122の側壁面でパンク修理液が付着し難くなり、パンク修理液がセンサ検出面111上に落下し易くなる。距離hの実質的な上限は15mmである。この上限値を超えると、筐体102自体の厚さが厚くなるので、タイヤをリムに装着するとき、タイヤ装着用レバーが筐体102と干渉してリム組みを困難にする他、筐体102、さらには送信装置100を破損する可能性が高くなる。また、外側開口部122aの周長に対する内側開口部122bの周長の比は、3以上であることが好ましく、この比の上限は30であることが好ましい。
また、外側開口部122aの面積は0.8mm
2以下である。外側開口部122aの面積を0.8mm
2以下とすることにより、外側開口部122aからパンク修理液が貫通孔122内に進入しにくくなるので、パンク修理液が貫通孔122を塞ぐ可能性は極めて小さくなる。
【0034】
また、外側開口部122aの面積は、内側開口部122bの面積に比べて小さいことが、同じ比率A/Vであっても、パンク修理液が貫通孔122の内部に進入する可能性を小さくする点で、好ましい。また、内側開口部122aの周長は、例えば外側開口部122bの周長の3〜30倍であることが好ましい。
【0035】
図7(a)は、距離hmmは、3mm以上であり、比率A/Vは、3.0〜30.0mm
-1である貫通孔122の形状の一例を説明する図である。貫通孔122は、外側開口部122aの面積は小さいが、貫通孔122の内部において、断面が急激に拡大して内側開口部122bに進むに従って断面が徐々に大きくなっている形状となっている。このような形状にすることで、比率A/Vを3.0mm
-1以上に高くすることができ、貫通孔122内に進入したパンク修理液は、貫通孔122の側壁面に付着し易く、付着した場合でも、側壁面の面上に広がって付着するので、貫通孔122の断面を塞ぎ難い。
【0036】
さらに、距離hmmは、3mm以上であり、比率A/Vは、3.0〜30.0mm
-1である貫通孔122とするために、
図7(b)に示すような貫通孔122の形状にすることもできる。すなわち、
図7(b)は、貫通孔122の形状を表した図である。貫通孔122の側壁面には、凹凸状に折れ曲がって襞形状を成している。このため、体積Vmm
3に対して側壁面の面積Amm
2が相対的に大きく、比率A/Vは、3.0〜30.0mm
-1とすることができる。この場合においても、比率A/Vは高いので、貫通孔122内に進入したパンク修理液は、側壁面に付着し易く、付着した場合でも、側壁面の面上に広がって付着するので、貫通孔122の断面を塞ぎ難い。
【0037】
本実施形態では、上述したように、センサ検出面111は、空間を隔てることなく内側開口部122bに直接面しているので、貫通孔122の内部に進入したパンク修理液は、側壁面に付着ない場合、センサ検出面111に落下する可能性がある。このため、貫通孔122の外側開口部122aを、センサ検出面111に対して直交方向に、センサ検出面111を含む平面上に投影したとき、貫通孔122の外側開口部122aは、センサ検出面111の中心位置(重心位置)と、外側開口部122aの中心の投影位置(重心位置)との間の距離は1mm以上離れていることが好ましい。より好ましくは、2mm以上離れて、更に好ましくは、4mm以上離れている。
図8(a)は、このような貫通孔122の形態の一例を説明する図である。
【0038】
図8(b)は、更に貫通孔122の異なる形態の一例を説明する図である。
図8(b)に示すように、外側開口部122aの領域の投影位置Rは、いずれもセンサ検出面111の外側に位置する。このため、貫通孔122の内部に進入したパンク修理液は、側壁面に付着ない場合であっても、センサ検出面111の外側のセンサユニット110の表面に付着するので、センサ検出面111の誤動作を抑制することができる。
【0039】
以上述べたように、本実施形態では、外側開口部122aの面積は、0.8mm
2以下であり、センサ検出面111は、空間を隔てることなく貫通孔122の内側開口部122bに直接面しており、距離hmmは、3mm以上15mm以下であり、体積Vmm
3に対する面積Amm
2の比率A/Vは、3.0〜30.0mm
-1である。このため、タイヤをリムに装着するとき、タイヤ装着用レバーが筐体102と干渉してリム組みを困難にすることを防ぐことができる。また、タイヤ装着用レバーが筐体102に衝突することが無くなるので、筐体102、さらには送信装置100が破損することを抑制することができる。さらに、比率A/Vは、3.0〜30.0mm
-1であるので、貫通孔122の内部に進入したパンク修理液は、側壁面に付着し易く、付着した場合でも、側壁面の面上に広がって付着するので、貫通孔122の断面を閉塞することを抑制できる。
【0040】
(実験例)
本実施形態の効果を調べるために、
図3に示す形態の送信装置100を有するタイヤ状態モニタリングシステム10を用い、貫通孔122の形状を種々変更した実施例1〜6、比較例1〜4を作製し、パンク修理液が通気孔を塞ぎ易いか否かを判断した。
各実施例及び比較例の形状の貫通孔を有する送信装置100を、リムサイズ15×6Jのリムに固定した後、このリムに195/65R15のタイヤを装着した。その際、パンク修理液をタイヤ空洞領域に450ml注入した。タイヤの空気圧は200KPaとした。この後、排気量2.0lの乗用車に装着してテストコースの舗装路にて30〜80km/時の走行速度で2時間走行した。その後、タイヤ空洞領域内の空気を徐々に抜いて、タイヤ状態モニタリングシステム10の計測結果を調べた。計測した空気圧が空気を抜くことにより徐々に空気圧の計測値が減少することを確認することができ、計測に異常が見られないか否かを調べた。さらに、送信装置100の筐体102を貫通孔122の内壁面及びセンサ検出面111が目視できるように解体して、パンク修理液の貫通孔122の側壁面及びセンサ検出面111への付着の程度を調べた。
【0041】
貫通孔122の閉塞に関する評価は下記レベル1〜4の4段階で判断した。レベル3,4が合格レベルとした。
・レベル1:貫通孔122がパンク修理液で詰まって、正確な空気圧を計測できなかった。
・レベル2:貫通孔122はパンク修理液で略詰まっており、正確な空気圧を計測するのに時間を要した。
・レベル3:貫通孔122はパンク修理液で詰まっていないが、センサ検出面111にパンク修理液の付着が見られる。しかし、正確な空気圧を計測できる。
・レベル4:貫通孔122はパンク修理液で詰まっておらず、センサ検出面111にもパンク修理液の付着はない。正確な空気圧を計測できる。
【0042】
さらに、送信装置100を有するリムのリム組のしやすさ(リム組性)についても評価した。評価は下記レベル1〜3の3段階で判断した。
・レベル1:送信装置100の筐体102が装着しようとするタイヤと物理的に緩衝し、送信装置100を破損した。
・レベル2:送信装置100の筐体102が装着しようとするタイヤと若干物理的に緩衝するが、リム組みすることができた。
・レベル3:送信装置100の筐体102が装着しようとするタイヤと緩衝せず、問題なくリム組みできた。
【0043】
下記表1,2は、実施例1〜6と、比較例1〜4の仕様とその評価結果を示している。
実施例1〜6、比較例1〜4では、外側開口部122aの断面を0.8mm
2の円形状に固定し、内側開口部122bの断面の大きさ及び形状を変更するとともに、貫通孔122の側壁面の形状を
図7(b)に示すように襞形状にし、襞の深さと大きさを調整することにより、比率A/Vを変更した。また、距離hmmは、筐体102の壁の厚さを変えることにより変更した。なお、比較例4は、A/Vを32.5mm
-1となるように貫通孔122の側壁面の襞形状の襞深さを深く設計したが、作製(射出成形及びその後の孔加工)はできなかった。
【0046】
実施例1〜5及び比較例1〜4の評価結果の比較より、距離hmmを、3〜15mmとし、比率A/Vを、3.0〜30.0mm
-1とすることが、リム組性及び貫通孔122の閉塞を抑制する点で有効であることがわかる。また、実施例5,6のように、センサ検出111と外側開口部122aの位置関係を調整することにより、センサ検出面111上へのパンク修理液の付着が少なくなり、好ましいことがわかる。
また、実施例1の仕様のうち、外側開口部122aの面積を0.8mm
2から0.9mm
2に変更した場合、貫通孔の閉塞の有無の評価はレベル1であった。
【0047】
以上、本発明の送信装置およびタイヤ状態監視システムについて詳細に説明したが、本発明の送信装置およびタイヤ状態監視システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。