(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第一実施形態)
まず、第一実施形態に係る照明装置付屋根構造体の構成について説明する。
【0029】
図1および
図2に示すように、照明装置付屋根構造体1は、例えばカーポート用屋根として用いられるものであって、上下方向に二枚積層された光透過性板材10,11(下側の光透過性板材11は
図2参照)と、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換するソーラーパネル30(
図2参照)と、光透過性板材10,11およびソーラーパネル30を支持する枠材50と、ソーラーパネル30で変換した電気エネルギーを蓄えるバッテリー70(
図4参照)と、照明用光源80(
図2参照)とを備えている。
【0030】
(光透過性板材)
光透過性板材10,11は、照明装置付屋根構造体1の屋根形状に応じてその形状が決定されており、例えば、平面視で略矩形状に形成されている。光透過性板材10,11は、その周縁部が枠材50に支持されて、屋根面を構成している。光透過性板材10,11は、照明装置付屋根構造体1の長手方向(
図1中、X軸方向)に沿って直線状に形成され、且つ照明装置付屋根構造体1の短手方向(
図1中、Y軸方向)に沿って湾曲したアーチ状に形成されている。上下の光透過性板材10,11は、二枚とも略同形状に形成されている。
【0031】
二枚のうち、上側に位置する光透過性板材10(以下、「上側光透過性板材」という場合がある)は、例えば、光透過性樹脂板あるいは光透過性硝子板にて構成されている。この上側光透過性板材10は、ソーラーパネル30による発電量を考慮すると、透明なものであるのが好ましい。上側光透過性板材10の材料としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂などが挙げられるが、特にポリカーボネートやアクリル樹脂のように、強度、耐候性に優れた樹脂を用いることが好ましい。本実施の形態では、上側光透過性板材10は、前記の樹脂製の一枚の板状材から構成されているが、前記の任意の樹脂からなる板状材を二枚以上貼り合わせて強化樹脂合板としたものであってもよい。また、上側光透過性板材10は、マット加工などにより表面粗度を高くして樹脂板の表面で太陽光を散乱させる半透明樹脂板としてもよい。
【0032】
下側に位置する光透過性板材11(以下、「下側光透過性板材」という場合がある)は、上下両面から光を放射するエッジライト式両面導光板によって構成されている。エッジライト式両面導光板は、その端面(エッジ)より照明用光源80からの光を導入し、この光がエッジライト式両面導光板の中を全反射しながら、エッジライト式両面導光板の平板方向(板が広がる方向)に進んで行くうちに、表面に設けられた後記する反射手段12に当たって向きを変え、全反射臨界角度より大きくなった成分の光がエッジライト式両面導光板の表面に出てくる現象を用いて、照明効果を得るものである。下側光透過性板材11(エッジライト式両面導光板)は、ポリメチルメタクリレート系、ポリカーボネート系、ポリスチレン系またはアクリル系などの光透過性樹脂板にて構成されている。この光透過性樹脂板は、ガラス板と比べると光透過率は低いが、エッジライト式両面導光板としての透過率は十分に確保できる。また、光透過性樹脂板は、強度が高く、軽量であるので、光透過性板材10,11の大面積化に対応することができる。
【0033】
本実施形態では、光透過性板材10,11には、蛍光体が含有されている。蛍光体は、例えば、リン酸カルシウム3Ca
3(PO
4)
2・Ca(F,Cl)
2:Sbなどが用いられ、蛍光体を光透過性板材10,11に含有させると、近紫外線や可視光線が蛍光体に照射されて、蛍光を発するので、エッジライト式両面導光板の照度が高くなる。また、光透過性板材10,11には、蛍光体に代えて色素を含有させてもよい。色素を光透過性板材10,11に含有させると、屋根面が所望の色に着色できるので、周辺環境に馴染ませることができ、美観を高めることができる。
【0034】
図2および
図3に示すように、下側光透過性板材11の少なくとも一方の表面(本実施形態では上面)には、照明用光源80からの光を部分的に反射させる反射手段12が設けられている。反射手段12は、本実施形態では、半透過型反射ドットシートにて構成されており、光透過性板材11の上表面に付設されている。半透過型反射ドットシートは、ポリエチレン・テレフタレート(PET)やポリカーボネートなどの樹脂シート12aに、基材となるチタン白(TiO
2)や沈降性硫酸バリウム(BaSO
4)などの光学的に吸収がなく、反射率の高い顔料と樹脂バインダーを練り合わせた反射インク12bをスクリーン印刷法によって塗布することで製造されている。半透過型反射ドットシートは、反射インク12bが塗布された部分で光を反射・屈折(一部透過)させ、反射インク12bが塗布されていない部分で光を透過させることで半透過型となる。
【0035】
反射インク12bは、
図3に示すように独特なグラデーションパターンに従って塗布される。具体的には、照明用光源80の光の放射方向に沿っており、照明用光源80に近い部分は小さく、照明用光源80から遠くなるに従って大きくなるように、反射インク12bが塗布される。ところで、本実施形態では、下側光透過性板材11の両側に照明用光源80が設けられているので、中間部分が大きくなるように反射インク12bが塗布されており、下側光透過性板材11の平面的に見て反射量が均一になるように構成されている。半透過型反射ドットシートは、下側光透過性板材11の上面に貼り付けられるために、反射インク12bが印刷された面とは反対面に接着剤が塗布される。すなわち、半透過型反射ドットシートは、反射インク12bが印刷された面が上側になるように配置され、その下面に接着剤が塗布される。接着剤は、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などが使用される。なお、粘着テープなどに使用される接着剤を使用してもよい。
【0036】
なお、本実施形態では、反射手段12として、半透過型反射ドットシートが採用されているが、これに限定されるものではない。例えば、
図6の(a)に示すように、下側光透過性板材11の上面に反射インク12cを直接印刷して反射ドットを形成して、これを反射手段としてもよい。この場合、反射インク12cは、下側光透過性板材11の上面にチタン白(TiO
2)や沈降性硫酸バリウム(BaSO
4)などの光学的に吸収がなく、反射率の高い顔料と樹脂バインダーを練り合わせた反射インク12cをスクリーン印刷法によって塗布することで構成されている。反射ドットの形状は、半透過型反射ドットシートと同様のグラデーションパターンに従って塗布される。
【0037】
また、反射手段12は、
図6の(b)に示すように、下側光透過性板材11の上面に形成される反射溝13にて構成してもよい。反射溝13は、例えば、断面V字状を呈して複数形成されており、下側光透過性板材11の射出成形の際に、型に加工された凸部により一体形成される。また、反射溝13は、下側光透過性板材11の表面に切削加工などによって形成してもよい。このような構成によれば、反射溝13へ入射する光はその入射角によって、光が下方へ反射したり上方へ出射したりするので、反射手段12は半透過型となる。
【0038】
図2および
図3に示すように、下側光透過性板材11の周縁部の端面のうち、少なくとも照明用光源80が配置された側の端面に対向する端面には、反射シート14が設けられている。反射シート14は、下側光透過性板材11の端面から外側へ逃げようとする光を下側光透過性板材11内に戻すために設けられた反射手段である。本実施形態では、照明用光源80は、下側光透過性板材11の両側(
図2中、左右方向両側)に設けられているので、反射シート14は、紙面左右方向両側の端面に設けられている。さらに、反射シート14は、紙面表裏方向両端の端面にも設けられており、下側光透過性板材11の周縁部全周に亘って設けられている。反射シート14は、ポリエチレン・テレフタレート(PET)やポリカーボネートなどの光学的に透明度の高い樹脂を発泡させて製造されている。この際に形成される泡の直径は数μm程度であるが、泡の密度が高いほど反射率は高くなる。なお、反射シート14は、下側光透過性板材11よりも光屈折率が低い接着剤によって下側光透過性板材11に接着されている。反射シート14は、下側光透過性板材11の外側からの光は内側へ向かって透過させ、内側からの光は反射させるように構成されている。
【0039】
下側光透過性板材11の周縁部の端面のうち、照明用光源80が配置された側の端面には、照明用光源80からの光の下側光透過性板材11内への入射角度を調整するプリズムシート17が設けられている。プリズムシート17は、照明用光源80の光照射方向前方に配置され、照明用光源80からの光が下側光透過性板材11に入射する際の入射角度を広げるように構成されている。プリズムシート17は、平面矩形形状を呈しており、樹脂系接着剤によって、下側光透過性板材11の端面で照明用光源80に対向する位置に貼り付けられている。本実施形態では、照明用光源80は、後記するように枠材50の長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられているので、プリズムシート17は、各照明用光源80に対向して、下側光透過性板材11の端面に沿って所定の間隔で複数設けられている。下側光透過性板材11の端面のプリズムシート17が設けられる部分では、反射シート14が切り欠かれており、開口部が形成されている。この開口部にプリズムシート17が設けられる。すなわち、照明用光源80の前面に位置する下側光透過性板材11の端面にはプリズムシート17が貼り付けられており、その他の部分の端面には反射シート14が貼り付けられている。
【0040】
下側光透過性板材11の下面には、照明用光源80からの光を拡散させて下方に出射させる拡散シート15が布設されている。拡散シート15は、下側光透過性板材11の下面全体を覆うように貼り付けられている。拡散シート15は、ポリエチレン・テレフタレート(PET)やポリカーボネートなどの光学的に透明度の高い樹脂と、この樹脂とは屈折率の異なる樹脂を不均一に混合して形成されている。拡散シート15は、その片側表面(下面)に凹凸を形成したマットタイプのシートとしてもよい。
【0041】
(照明用光源)
図2および
図3に示すように、本実施形態では、照明用光源80は、発光ダイオードにて構成されている。発光ダイオードは、電子と正孔の再結合によって可視光あるいは紫外光を発する発光素子を利用するものであれば、どのようなタイプのものであってもよい。発光素子としては、例えば、赤色、緑色、青色ダイオードのいずれの発光ダイオードを使用してもよいし、またこれら3色の発光ダイオードを組み合わせて白色光を発するものとしてもよい。
【0042】
本実施形態では、発光ダイオードは、少なくとも発光層が窒化物半導体である発光素子と、この発光素子が発光する光の少なくとも一部を吸収して波長変換することで蛍光を発する無機蛍光体とを有するものである。具体的には、紫外LED発光素子として発光スペクトルが主ピークとして350nm〜390nmに発光可能なものが使用されている。この場合、発光層は、有機金属気相成長法(MOCVD法)などによって、例えばサファイア基板上にAlNなどの低温バッファー層を設け、その上部にAlGaN厚膜、AlGaN系のn型窒化物半導体とp型窒化物半導体の薄膜を形成させてあり、クラッド層としてInAlGaN発光層を形成させたものが挙げられる。勿論、半導体層に用いる材料やその組成によって、発光波長を種々選択することができる。
【0043】
また、無機蛍光体としては、白色発光するものとして、例えば、3Ca
3(PO
4)
2・Ca(F,Cl)
2:Sbなどが挙げられる。この他、青色、緑色、赤色の各色発光の蛍光体混合物からなる白色発光する混合蛍光体とすることも可能である。これら蛍光物質を利用する場合には、硝子などの透光性無機部材や樹脂などの透光性有機部材中にこれら蛍光物質を適量混合させて形成させても良い。さらにこれら蛍光物質と有機バインダーと溶媒の混合物を硝子などの内壁あるいは外壁に塗布した後、加熱してバインダーと溶媒のみを分解ガス化して飛ばしてもよい。このような発光装置とすれば、無機蛍光体によって発光ダイオードの発する紫外線を効率よく白色光に変換することで、明るい照明を得ることができる。
【0044】
照明用光源80は、枠材50の長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられている(
図3参照)。なお、具体的な照明用光源80の固定構造は枠材50の構造を説明する際に後述する。
【0045】
発光ダイオードからなる照明用光源80の周囲には、リフレクター82が設けられ、このリフレクター82の前側開口部には、凸レンズ83が設けられている。
【0046】
リフレクター82は、耐熱衝撃性に優れたアルミニウム板またはアルミニウム合金板をプレス加工することで形成されており、その表面(照明面)は、CMP(Chemical Mechanical Polishing(化学・機械的研磨))によって研磨されて、その表面粗さが小さくなっている。リフレクター82は、発光ダイオードを覆うように傘状に形成されており、発光ダイオードから後方に照射された光を、発光ダイオードの正面方向に反射させるようになっている。なお、リフレクター82は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製に限られるものではない。例えば、ガラス板の表面にアルミニウムなどの金属を蒸着させたガラス製リフレクターであってもよい。
【0047】
凸レンズ83は、ガラスあるいは光透過性樹脂にて構成されており、リフレクター82で反射された光を下側光透過性板材11の端面に向かって収束させるようになっている。凸レンズ83は、リフレクター82の前側開口部に接着あるいは嵌合されて固定されている。
【0048】
(ソーラーパネル)
図2および
図3に示すように、ソーラーパネル30は、薄膜系太陽電池セル31に、光透過性のバックシート32を布設して構成されている。ソーラーパネル30は、フィルム状を呈して適度な柔軟性を備えており、光透過性板材10,11の面形状に追従可能なフレキシブルパネルとなっている。薄膜系太陽電池セル31は、例えば、光透過性を備えた薄膜シリコン型太陽光発電セルが用いられている。薄膜系太陽電池セル31は、薄く形成されて、光の透過性が高められている。薄膜シリコン型太陽光発電セルは、柔軟性を有する基板の上に、アモルファスシリコン(a−Si:H)や微結晶シリコン(μc−Si:H)等からなる数μmの薄膜を形成して構成されており、一枚ものの大面積に形成されている。薄膜は、CVD(化学気相成長)法等によって形成される。なお、薄膜系太陽電池セル31は、従来の結晶系ウェハ型の太陽光発電セルと比較して発電効率が低いが、大面積に形成することで、発電量を確保している。本実施形態の薄膜系太陽電池セル31は、薄膜が基板の両面に形成されており、両面で受光して発電可能な太陽電池セルとなっている。
【0049】
なお、本実施形態では、厚さが数μmの薄膜を基板上一面に形成してなる薄膜系太陽電池セル31を用いているがこれに限定されるものではない。例えば、
図7に示すように、基板35上に、厚さが150〜300μmであるpc−Si型(多結晶Si型)の太陽電池セル36等を所定の隙間を空けて配置するようにしてもよい。この場合、太陽電池セル36自体に光透過性はないが、太陽電池セル36が配置されていない隙間部分を通して光が透過するようになっている。
図7では、太陽電池セル36は、紙面上下左右に所定の間隔をあけて配置されているが、その配列形状は図示したものに限定される趣旨ではない。
【0050】
図2および
図3に示すように、バックシート32は、薄膜を保護するために薄膜系太陽電池セル31の表面を覆って布設されるものであって、本実施形態では、薄膜系太陽電池セル31の上下の両表面をそれぞれ覆って布設されている。バックシート32は、太陽光の少なくとも一部を透過するようになっている。具体的には、バックシート32は、三層構造を呈しており、最外層は、耐候性に優れたフィルム、またはシート材料(フッ素樹脂フィルム、フッ素樹脂塗膜、耐熱低オリゴマー、PETフィルム等)にて構成されている。中間層は、水蒸気バリアー性に優れた光透過性の蒸着PETフィルム等を設置して構成されている。最内層は、耐熱性、耐湿性、耐電性等に優れた電気絶縁用PETフィルムにて構成されている。
【0051】
以上のような構成のソーラーパネル30は、上側光透過性板材10と下側光透過性板材11との間に配置されている。ソーラーパネル30は、上側光透過性板材10の下面、または下側光透過性板材11の上面に接着剤を介して貼り付けて布設されている。なお、ソーラーパネル30は、接着剤を介さずに、上側光透過性板材10と下側光透過性板材11とで挟持するようにしてもよい。
【0052】
ソーラーパネル30には、バッテリー70が接続されている。
図4に示すように、
バッテリー70は、枠材50を支持する柱材52の内部に収容されている。柱材52は、中空形状に形成されており、その内部に設置された収容ボックス71に収容されている。柱材52の側面には、開閉蓋63が形成されており、その内部には、板状の載置台64が設けられている。載置台64上には収容ボックス71が載置される。収容ボックス71には、開閉可能な蓋体72と、内部に空気を送る送風ファン73と、排気口74とが設けられている。送風ファン73は、収容ボックス71の上面に設けられ、排気口74は、収容ボックス71の側面の下部に形成されている。
【0053】
バッテリー70は、例えば、アルカリ蓄電池、ニッケル-水素蓄電池、リチウムイオン電池などで構成されている。バッテリー70は、前記の電池に限られるものではなく、小型で軽量、高性能の充電式電池であればどのような蓄電池であってもよい。これらの中で、リチウムイオン電池はエネルギー密度が高いため、特に好ましい。一般的には、正極はLiCoO
2、負極はC、セパレータとしての電解質にはLiClO
4、LiPF
6などのLiイオンを含む有機電解液が使用されている。ここでLiイオンは正極、負極の材料の結晶中に出入りすることができ、充電、放電できる仕組みとなっている。Liイオン電池内において、充電中はセパレータを介してLiイオンが正極から負極に移動し、逆に放電中はLiイオンが負極から正極に移動する。
【0054】
バッテリー70は、ソーラーパネル30の薄膜系太陽電池セル31および照明用光源80と接続されており、薄膜系太陽電池セル31で発電された電気を充電しておくとともに、夜間などの照明が必要となる時間帯には、照明用光源80の電源として作動する。
【0055】
バッテリー70および照明用光源80には、制御部(図示せず)が接続されている。制御部は、バッテリー70への過充電を防止するとともに、バッテリー70から照明用光源80へ供給される電力のオン・オフや供給量を制御するものである。制御部には、周囲の明るさに応じて照明用光源80を点灯させる光センサ(図示せず)が設けられている。光センサは、例えば屋根面の上面でソーラーパネル30の受光の妨げにならない位置に設けられている。
【0056】
(枠材)
図1に示すように、枠材50は、金属形材からなる梁材51で格子状の区画を有するように構成されている。梁材51は、柱材52によって支持されている。柱材52は、所定の間隔で地盤に立設されており、その下端部にベースプレート53を有している。ベースプレート53には、地盤の基礎に設けられたアンカーボルト(図示せず)が挿通されて、柱材52を地盤に固定するようになっている。梁材51は、隣り合う柱材52間で架け渡される大梁54と、互いに対向する大梁54,54間に架け渡されるつなぎ梁55とで構成されている。これらの大梁54およびつなぎ梁55は、中空状に形成されており、必要に応じて、内側あるいは外側に補強リブ(図示せず)が形成されている。
【0057】
梁材51および柱材52は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の押出形材にて構成されている。アルミニウム合金製の押出形材は、6063合金をベースとして形成されている。6063合金をベースとした押出形材は、押出後の熱処理によってMg
2Siがマトリックス中に微細に析出するため、強度、靭性が高い。さらに、押出形材の表面には、陽極酸化皮膜処理が施されており、耐食性、耐候性に優れている。陽極酸化皮膜処理の工程で、封孔処理前に表面の酸化皮膜中に顔料を含有させることにより、多様な色調の形材として美観を向上することも可能である。なお、本実施の形態では、梁材51および柱材52は中空状(ホロー)に形成されているが、中実状(ソリッド)であってもよい。
【0058】
梁材51によって、屋根面のフレームが構成されている。ここで、梁材51は、
図1中に示したY軸方向に延在する大梁54およびつなぎ梁55は円弧状に湾曲して形成され、X軸方向に延在する大梁54およびつなぎ梁55は直線状に形成されている。これによって、屋根面は、一方向(Y軸方向)のみに湾曲したアール屋根形状を呈しており、これにともなって、屋根面を構成する光透過性板材10,11も、それぞれが一方向(Y軸方向)のみに湾曲したアール屋根形状を呈することとなる。Y軸方向に延在する大梁54およびつなぎ梁55は、一旦、直線状の押出形材として成形した後に、湾曲させて形成されている。
【0059】
図2および
図3に示すように、梁材51は、光透過性板材10,11の周縁部を支持するようになっている。具体的には、大梁54およびつなぎ梁55の光透過性板材10,11側の側面には、把持溝56がそれぞれ形成されており、この把持溝56に光透過性板材10,11の周縁部が挿入されて支持されることとなる。把持溝56は、中空の梁材51の側面を開口するように成形することで形成され、梁材51の中空部が把持溝56の内部空間を構成することとなる。
【0060】
図2に示すように、光透過性板材10,11は、その周縁部が、把持溝56に挿入されて固定されている。光透過性板材10,11の周縁部は、把持溝56の上下枠を構成する上下のプレート部57,57で挟持されている。プレート部57,57の先端には弾性シール部材58,58がそれぞれ設けられている。弾性シール部材58は、ゴムパッキンにて構成されており、上側光透過性板材10の上面と上側のプレート部57の先端部との間、および下側光透過性板材11の下面と下側のプレート部57の先端部との間に、それぞれ圧縮状態で設けられている。これによって、ソーラーパネル30を挟むように配置された光透過性板材10,11を挟持するための適度な押圧力を得ることができるとともに、把持溝56内に雨水や結露水が浸入するのを防止できる。
【0061】
把持溝56の底部(奥側)には、照明用光源80を固定するためのネジ孔61が所定の間隔をあけて複数形成されている。一方、照明用光源80は、発光ダイオードの基端部の外周に、ネジ孔61に螺合するオネジ部81を備えている。照明用光源80は、そのオネジ部81をネジ孔61に螺合することで、下側光透過性板材11の端面との距離を調節可能に構成されている。つまり、オネジ部81をネジ孔61に螺合させることで、照明用光源80が軸方向に沿って移動するので、所望の位置で回転を止めることで軸方向位置を調整できる。また、ネジ孔61にオネジ部81を螺合させるといった簡単な作業だけで、照明用光源80の取付けを行うことができるとともに、照明用光源80の取付位置のガイドとすることができる。
【0062】
本実施形態のように、屋根面が一方向(Y軸方向)のみに湾曲したアール屋根形状を呈している場合、ネジ孔61は、湾曲した枠材50(大梁54およびつなぎ梁55)に形成されており、照明用光源80が、下側光透過性板材11の平面方向(X軸方向)に沿って光を出射するように構成されている。
【0063】
光透過性板材10,11を固定するための把持溝56の下方には、この把持溝56に平行な第二把持溝59が形成されている。第二把持溝59は、光透過性板材10,11の下方に設けられる光透過性カバー16を把持する。光透過性カバー16は、第二把持溝59の上下枠を構成する上下のプレート部57,57で挟持されている。なお、第二把持溝59の上側のプレート部57は,把持溝56の下側のプレート部57と兼用されている。第二把持溝59のプレート部57,57の先端で光透過性カバー16との間には、把持溝56と同様に、弾性シール部材58,58がそれぞれ圧縮状態で設けられており、各プレート部57,57で光透過性カバー16を把持するように構成されている。
【0064】
光透過性カバー16は、下側光透過性板材11の下方で、この下側光透過性板材11を覆うように設けられている。光透過性カバー16は、拡散シート15から出射された光をさらに拡散させるために設けられたものであって、例えば、光透過性樹脂板にて構成されている。光透過性カバー16は、下側光透過性板材11側の表面(上面)に凹凸を形成してマット面が形成されている。これによれば、照明を和らげることができる。
【0065】
枠材50の把持溝56の底部の裏側にも中空スペース60が形成されている。この中空スペース60は、照明用光源80の電力供給用コード(図示せず)が配設される配線スペースとして利用される。このような構成によれば、外部に配線(電力供給用コード)が露出されることなく、配線が雨水などに曝されるのを防止できるとともに、美観を得ることができる。
【0066】
次に、前記構成による照明装置付屋根構造体1の作用について説明する。
【0067】
かかる照明装置付屋根構造体1によれば、ソーラーパネル30は、薄膜シリコン型太陽光発電セルからなる薄膜系太陽電池セル31と、光透過性のバックシート32とを備え、上下二枚の光透過性板材10,11間に配置されているので、昼間においては、
図5の(a)に示すように、屋根面の下方に太陽光が差し込むとともに天井面が明るくなる。具体的には、太陽光の一部は、
図5中、太線で示すように、上側光透過性板材10、ソーラーパネル30、下側光透過性板材11の順で屋根面を透過する。反射手段12を構成する半透過型反射ドットシートでは、太陽光の一部は、反射インク12bが塗布されていない樹脂シート12a部分を透過し、また、反射インク12bが塗布されている樹脂シート12a部分でもある程度透過する。そして、下側光透過性板材11に入射した太陽光は、その内部に含有された蛍光体に照射されて蛍光を発するので、その照度が高くなる。下側光透過性板材11に色素を含有させた場合には、屋根面が所望の色に発光して美観を高めることができる。
【0068】
一方、太陽光の一部は、ソーラーパネル30の薄膜系太陽電池セル31の上面で受光されるので、ソーラーパネル30で発電を行い、バッテリー70に蓄電することができる。また、ソーラーパネル30を透過した太陽光の一部は、反射手段12の反射インク12bによって、上方に反射され、薄膜系太陽電池セル31の下面で受光されるので、ソーラーパネル30で発電を行い、バッテリー70に蓄電することができる。
【0069】
また、本実施形態では、ソーラーパネル30が、上側光透過性板材10の下面、または下側光透過性板材11の上面に布設されて接着固定されているので、上下二枚の光透過性板材10,11とソーラーパネルを一体的に把持することができ、構造が簡素化され、照明装置付屋根構造体1の製造を効率的に行うことができる。
【0070】
一方、ソーラーパネル30が、光を透過可能な薄膜シリコン型太陽光発電セルからなる薄膜系太陽電池セル31を備えて構成されているので、薄膜系太陽電池セル31をソーラーパネル30全体に布設することができ、受光面積を大きく確保できる。また、薄膜系太陽電池セル31はフィルム状で、光透過性板材10,11の面形状に追従可能なフレキシブルパネルにて構成されているので、本実施形態のように、平板形状以外の形状の光透過性板材10,11に追従して設けることができるので、屋根形状のデザインの自由度を高めることができる。
【0071】
また、ソーラーパネル30で太陽エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリー70に蓄えているので、夜間においても、照明用光源80によって快適な照明を得ることができる。
【0072】
具体的には、照明用光源80からの光が下側光透過性板材11の端面からその内部に入射される。ここで、照明用光源80は発光ダイオードにて構成されているので、少ない消費電量で明るい照明を得られることができるとともに、照明用光源80の小型化が達成され、枠材50の薄型化に貢献している。これによって、照明装置付屋根構造体1を見る者に軽快な印象を与えることができる。さらに、発光ダイオードを、枠材50内に所定の間隔をあけて複数設けるようにしているので、枠材50が湾曲している場合であっても、照明用光源80に特殊な加工を施すことなく、照明用光源80を形成することができる。
【0073】
また、発光ダイオードの周囲にはリフレクター82が設けられ、このリフレクター82の前側開口部には、凸レンズ83が設けられているので、発光ダイオードからの光は、リフレクター82で前方に反射され、凸レンズ83によって下側光透過性板材11の端面に向かって収束される。したがって、発光ダイオードからの光を無駄にすることなく効率的に利用できる。さらに、照明用光源80は、オネジ部81を備えており、把持溝56の底部に形成されたネジ孔61に螺合するようになっているので、軸方向位置の調整を行うことができ、発光ダイオードの光をプリズムシート17の位置で収束させることができる。そして、このプリズムシート17によって、発光ダイオードからの光が下側光透過性板材11に入射する際の入射角度を広げることができるので、下側光透過性板材11の内部に光を均一に入射することができ、下側光透過性板材11内での光の伝達を好適に行うことができる。
【0074】
下側光透過性板材11の端面からその内部に入射された光は、下側光透過性板材11の上面と下面との間で全反射を繰り返しながら、他方の端面に進んでいく。その途中で、入射された光は、反射手段12である反射ドットシートの反射インク12bで形成された反射ドットに当たって、反射ドット内で乱反射して、下側光透過性板材11の下面(照明面)またはその反対方向(上面)に向かって放射される。下面に向かって放射された光は、スネルの法則に従って、下面への入射角が全反射の臨界角よりも大きい場合は下面から下側光透過性板材11の下方外部へ放射され、一方、前記入射角が全反射の臨界角よりも小さい場合は下面で上方に反射されて下側光透過性板材11の内部へ戻る。このとき、反射インク12bは、発光ダイオードの配置に応じたグラデーションパターンに従って塗布されているので、効率的に光を反射させることができ、照度を高めることができる。また、下側光透過性板材11に入射された光は、その内部に含有された蛍光体に照射されて蛍光を発するので、下側光透過性板材11の照度が高くなる。さらに、下側光透過性板材11に色素を含有させた場合には、屋根面が所望の色に発光して美観を高めることができる。
【0075】
一方、下側光透過性板材11の上面で反射ドットがない部分に放射された光は、上面への入射角が全反射の臨界角よりも大きい場合に上面から下側光透過性板材11の上方外部へ放射される。ここで、ソーラーパネル30は、薄膜系太陽電池セル31の薄膜が基板の両面に形成されており、両面で受光して発電可能な太陽電池セルとなっているので、下側光透過性板材11から放射される光を利用して発電することが可能である。照明用光源80として使用される発光ダイオードから放射される光のピーク波長、薄膜系太陽電池セル31に用いられる半導体の種類等にもよるが、下側光透過性板材11から上方外部へ放射される光エネルギーのうち5%程度のエネルギーを電気エネルギーとして回収でき、光の損失を低減することができる。
【0076】
また、下側光透過性板材11の周縁部の端面のうち、少なくとも照明用光源80が配置された側の端面に対向する端面に、反射シート14が設けられているので、下側光透過性板材11の端面から外部に出射しようとする光を内側へと反射して、下側光透過性板材11内部に戻すことができ、照明用光源80からの光を無駄にすることなく効率よく利用することができる。特に、本実施の形態では、下側光透過性板材11の端面全周に亘って反射シート14を設けているので、下側光透過性板材11に入射された光は端面から逃げることはない。
【0077】
本実施の形態では、下側光透過性板材11の下面に、照明用光源80からの光を拡散させて下方に出射させる拡散シート15が設けられているので、下側光透過性板材11の下面から出射される光を拡散させて均一化することができ、安定した照度の照明を得ることができる。さらに、光を拡散することで、反射手段12(反射ドットシート)によって発生する光の反射量の濃淡である輝度斑を低減することができ、照明ムラをなくすことができる。
【0078】
さらに、下側光透過性板材11の下方に、この下側光透過性板材11を覆う光透過性カバー16が設けられているので、下側光透過性板材11の下面から出射された光をさらに拡散することができる。また、光透過性カバー16の上面(導光板側面)をマット面とすれば、照明を和らげることもできる。また、光透過性カバー16に顔料を添加すれば、色付きの照明とすることができ、照明装置付屋根構造体1の美観およびデザイン性を高めることもできる。
【0079】
また、本実施形態では、下側光透過性板材11が、エッジライト式両面導光板によって構成されているので、少ない光で大きい照明面を得ることができる。特に、エッジライト式両面導光板は、上下両面から光を放射するので、上方に放射される光を利用してソーラーパネル30で発電することができる。
【0080】
また、照明用光源80は、湾曲する枠材50(大梁54およびつなぎ梁55)に設けられており、その枠材50の延出方向の直交方向に光を出射するように構成されてので、湾曲する下側光透過性板材11の内部であっても、照明用光源80からの光は平面方向に伝達されることとなり、その反射角度を一定に保つことができるので、全反射を繰り返すことができる。
【0081】
本実施形態では、屋根面の全体にソーラーパネル30を設けて構成されているが、これに限定されることはない。例えば、
図8に示すような種々の配置形状としてもよい。
図8の(a)は、屋根面を3行3列に9分割し、中央の1行および1列にソーラーパネル30を上下の光透過性板材10,11で挟んだサンドイッチパネルP1を設け、その他の部分(四隅)には、透明樹脂板からなる透明パネルP2を設けている。このような構成によれば、サンドイッチパネルP1が平面視十字状を呈し、デザイン性が向上するとともに、昼間には透明パネルP2から多くの採光を得られる。
図8の(b)は、屋根面を3行3列に9分割し、中央の一枚部分のみにサンドイッチパネルP1を設け、その他の部分には透明パネルP2を設けている。このような構成によれば、昼間における採光量を多くすることができる。
図8の(c)は、屋根面を3行3列に9分割し、対角線上位置にサンドイッチパネルP1を設け、その他の部分には透明パネルP2を設けている。このような構成によれば、サンドイッチパネルP1が平面視X字状を呈し、デザイン性が向上している。
【0082】
図8の(d)は、屋根面の中心線上に帯状のサンドイッチパネルP1を設け、その両側には略矩形の透明パネルP2を設けている。サンドイッチパネルP1の長手方向両端部に照明用光源80を設けている。このような構成によれば、照明を帯状に形成することによって、照明をデザイン上のアクセントとすることができる。また、照明用光源80は少ない個数で済むので、省エネルギー化および低コスト化が図れる。
【0083】
(第二実施形態)
本発明に係る照明装置付屋根構造体の第二実施形態では、
図9に示すように、上下の光透過性板材10,11およびソーラーパネル30を一体的に固定する把持溝56内に、光透過性板材10,11の把持位置を規制する位置決めストッパ65が形成されている。位置決めストッパ65は、把持溝56の上下のプレート部57,57の内側の上下面に、互いに向き合うように突出してそれぞれ形成されている。位置決めストッパ65は、把持溝56の長手方向に沿って延在する突条として形成されていてもよく、また把持溝56の長手方向に沿って所定の間隔をあけて複数個所に形成されていてもよい。上下の位置決めストッパ65,65間の隙間は、照明用光源80(発光ダイオード)からの光が通過できる高さとなるように構成されている。このような構成によれば、光透過性板材10,11およびソーラーパネル30を、把持溝56に固定する際に、容易に正確な位置に固定することができ、照明用光源80と下側光透過性板材11の端面との距離を所望の値にすることができる。
【0084】
光透過性カバー16を把持する第二把持溝59にも、前記と同等形状の位置決めストッパ65が形成されている。なお、その他の構成については、前記第一実施形態と同様であるので、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0085】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、光透過性板材10,11を構成するエッジライト式両面導光板は、光透過性樹脂板に限られるものではなく、ガラス板で形成してもよい。エッジライト式両面導光板をガラス板で形成すれば、光透過性樹脂板よりも高い透過率を得ることができるので、照度を高めることができる。光透過性樹脂板を採用するかガラス板を採用するかは、要求される照度、構造強度、形状などに応じて適宜決定される。
【0086】
また、本発明の枠材50や柱材52は、アルミニウム製やアルミニウム合金製に限られるものではなく、必要な強度を有していればスチール、ステンレス、チタンや銅あるいは木材など他の材質であっても適用できるのは勿論である。但し、重量やコストや美観を考慮すると、枠材50や柱材52をアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成するのが好ましい。
【0087】
さらに、前記実施の形態では、枠材50は柱材52に支持されているが、これに限られるものではなく、例えば、隣接する構造物の壁面などに枠材50を直接固定するようにしてもよい。
【0088】
また、本発明に係る照明装置付屋根構造体1は、カーポート用屋根2として利用するのに限られるものではないのは勿論である。例えば、待合スペース用屋根や、公園内の休憩所や住宅のテラスなどで用いることも可能である。