(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713120
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】磁気測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 33/12 20060101AFI20150416BHJP
G01N 27/72 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
G01R33/12 M
G01N27/72
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-555148(P2013-555148)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(86)【国際出願番号】JP2012082276
(87)【国際公開番号】WO2013111467
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2014年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2012-14551(P2012-14551)
(32)【優先日】2012年1月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】近松 努
(72)【発明者】
【氏名】小川 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】崔 京九
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍司
【審査官】
荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−206316(JP,A)
【文献】
特開昭61−210976(JP,A)
【文献】
特開2004−038611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00−33/18
G01N 27/72−27/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化方向が面直である薄板状の磁性体試料の残留磁化を測定する磁場測定装置であって、
磁場を印加して前記磁性体試料の境界を介して隣接する第1の領域及び第2の領域を互いに
面直方向かつ逆方向に着磁する磁場発生部と、
前記磁場発生部による着磁後の前記磁性体試料の磁場を測定して前記磁性体試料の残留磁化として出力する測定部と
を備えることを特徴とする磁場測定装置。
【請求項2】
前記磁場発生部は、少なくとも隣接する一対の符号が異なる磁極を有し、前記磁極によって前記磁性体試料を着磁する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁場測定装置。
【請求項3】
前記磁場発生部は、減衰振動する磁場を発生して前記磁性体試料を着磁することを特徴とする請求項1に記載の磁場測定装置。
【請求項4】
前記磁場発生部は、前記磁性体試料の表面を走査しながら交流磁場を発生して前記磁性体試料を着磁する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁場測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状の磁性体試料の磁気特性、特に微小領域の磁気特性を、残留磁化に起因する漏洩磁束の測定を介して測定するための磁場測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スパッタリングやレーザーデポジション等の物理的成膜法により、微小寸法の薄膜磁石(厚さ:数〜数百μm程度)が製作されるようになり、マイクロマシンやセンサ分野において使用されている(特許文献1)。このような薄膜磁石を利用したマイクロマシンやセンサ分野における応用において、狙いどおりのデバイスを作製するためには、薄膜磁石の残留磁化に起因する漏洩磁束を基に磁気回路を設計する必要があり、薄膜磁石の残留磁化の分布、すなわち、微小領域の残留磁化をサブミリメートル以下の分解能で精密に測定することが求められる。
【0003】
従来、磁性体試料の磁気特性測定にはB−Hカーブトレーサーや試料振動型磁力計(VSM:Vibrating Sample Magnetometer)が用いられてきた。しかしながら、これらの測定装置では、測定対象となる磁性体の平均的な磁気特性が測定されるに過ぎず、磁気特性の分布、すなわち微小領域の磁気特性を測定することはできない。
【0004】
測定対象となる磁性体を切断加工などによって分割し、VSMなどで測定することによって、微小な領域の磁気特性を測定する方法も考えられる。しかしながら、加工による磁性体表面層へのダメージにより、磁性体試料の本質的な磁気特性を測定できないことが懸念される。
【0005】
磁性体試料の微小領域の磁気特性を、磁性体試料の加工を伴わずに測定するためには磁気力顕微鏡(MFM:Magnetic Force Microscopy)や走査型ホールプローブ顕微鏡(SHPM:Scanning Hall Probe Microscopy)などが用いられている。
【0006】
MFMは磁性体からなる測定子にて試料表面を走査するために、微小領域の磁気特性を精細に測定することができる。しかしながら、MFMは測定子を試料表面に近づける必要があり、B−Hカーブトレーサーのように試料を閉磁路の一部とすることができないために、磁性体試料の表面に現れる磁極に起因する反磁場Hdの影響を受けざるを得ない。
【0007】
反磁場Hdの影響は試料の形状に大きく依存し、一様に磁化した薄膜磁石のような薄板状の磁性体試料では反磁場Hdが試料の自発磁化Jと略等しくなるために磁束を試料の外部に取り出すことができない。すなわち、MFMでは一様に磁化した薄板状の磁性体試料の磁気特性を評価することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】再公表特許WO2005/091315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、薄膜磁石のような、薄板状の磁性体試料の微小領域の残留磁化、および残留磁化の分布を、反磁場Hdの影響を受けることなく、残留磁化に起因する漏洩磁束にて評価することのできる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、薄板状の磁性体試料の残留磁化を測定する磁場測定装置であって、磁場を印加して前記磁性体試料の第1の領域及び第2の領域を互いに逆方向に着磁する磁場発生部と、前記磁場発生部による着磁後の前記磁性体試料の磁場を測定して前記磁性体試料の残留磁化として出力する測定部とを備えることを特徴とする磁場測定装置である。本発明はこのような構成を取ることによって、着磁後の磁性体試料を測定するので、測定中に外部磁場を印加する場合のように、印加される外部磁場の影響を測定部が受けることを考慮せずに、測定部を試料表面に接近させることができる。また第1および第2の領域を互いに逆方向に着磁するので、反磁場の影響を受けずに磁性体試料の残留磁化に起因する漏洩磁束を正確に測定することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記磁場発生部は、少なくとも一対の符号が異なる磁極を有し、前記磁極によって前記磁性体試料を着磁してもよい。
【0012】
また、本発明においては、前記磁場発生部は、減衰振動する磁場を発生して前記磁性体試料を着磁してもよい。
【0013】
また、本発明においては、前記磁場発生部は、前記磁性体試料の表面を走査しながら局所領域に交流磁場を発生して前記磁性体試料を着磁してもよい。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薄板状の磁性体試料(例えば磁石薄膜)に対して、磁場を印加して前記磁性体試料の第1の領域及び第2の領域を互いに逆方向に着磁する磁場発生部と、前記磁場発生部による着磁後の前記磁性体試料の残留磁化に起因する漏洩磁束を測定する測定部とを備える磁場測定装置を提供することにより、薄板状の磁性体試料の微小領域における磁気特性、すなわち、磁気特性の分布を評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る磁場測定装置を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の磁場測定装置に備えられる一対以上の磁極を有する磁場発生部の概略斜視図である。
【
図3】(a)前記磁場発生部による着磁例を示す磁場分布図である。(b)一様に着磁された前記磁性体試料の磁場分布図である。
【
図4】(a)(b)減衰振動磁場により前記磁性体試料を着磁する工程を示す説明図である。
【
図5】減衰振動磁場により着磁された前記磁性体試料の磁場分布図である。
【
図6】(a)(b)交流磁場を印加しながら走査することにより前記磁性体試料を着磁する工程を示す説明図である。
【
図7】交流磁場を印加しながら走査することにより着磁された前記磁性体試料の磁場分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
図1は本発明に係る磁場測定装置の全体構成を示す概略斜視図である。
図1において、Xt軸方向(図示のXYZ直交3軸のうちのX軸に平行)に摺動自在なXテーブル11と、Xテーブル11上に配されてYt軸(XYZ直交3軸のうちのY軸に平行)方向に摺動自在なYテーブル12と、Yテーブル12上に配されてZt軸(XYZ直交3軸のうちのZ軸に平行)方向に摺動自在なZテーブル13とを有するXYZテーブル10が基台1上に設置されており、Zテーブル13上に薄板状の形態を有する磁性体試料5が位置決め固定されている。また、本発明に係る磁場測定装置は、測定装置の各部を制御し、測定された漏洩磁束を基に磁気特性とその分布を算出するする制御部40を含む。
【0019】
本発明の測定対称となる磁性体試料とは、R−T−B系、R−T系のような希土類系磁石、Baフェライト、Srフェライトのような酸化物系磁石、さらに、磁石のような高い保磁力を有さない軟磁性体を含む。また、磁性体試料の磁化方向が、薄板状の試料の形状に対して面直方向である場合には、本発明は容易な機構にて実現可能であるが、磁化方向が面内である場合についても、本発明は有効に機能する。
【0020】
磁性体試料5を着磁する磁場発生部は、少なくとも一対の符号が異なる磁極を有する磁場発生部6でもよく、ホルダアーム4の先端底面に測定部2と共に設置された局所磁場発生部3でもよい。少なくとも一対の符号が異なる磁極を有する磁場発生部6によって、磁性体試料5の第1の領域及び第2の領域を互いに逆方向に着磁することができる。また、ホルダアーム4の先端底面に設置された局所磁場発生部3より交流磁場を発生させながら磁性体試料5の表面を走査することによっても、磁性体試料5の第1の領域及び第2の領域を互いに逆方向に着磁することができる。
【0021】
XYZテーブル10の駆動方式はモータで駆動するものでもよく、ピエゾアクチュエータで駆動するものでも良い。XYZテーブル10のXY方向における移動ストロークは試料の測定領域をカバーするよう設定すれば良い。これにより、試料の測定領域全体を測定することが可能となる。XYZテーブル10のXY方向における移動ストロークは例えば10×10mmである。XYZテーブル10のZ方向における移動ストロークは試料の厚さよりも十分に大きく設定すれば良い。これにより、測定部2、局所磁場発生部3、磁場発生部6に対して磁性体試料5を容易に接近させることが可能となる。XYZテーブル10のXY方向における位置決め分解能は磁性体試料5の磁区の大きさより十分に小さく設定すればよい。これにより、微小領域の測定が可能となる。XY方向における位置決め分解能は例えば10nmである。XYZテーブル10のZ方向における位置決め分解能は磁性体試料5の表面粗さより十分に小さく設定すればよい。これにより、表面形態の影響を受けずに試料の残留磁化に起因する漏洩磁束の測定が可能となる。
【0022】
基台1にはZs軸方向(XYZ直交3軸のうちのZ軸に平行)に摺動自在なZアーム23が立設固定されており、Zアーム23の前面にXs軸方向(XYZ直交3軸のうちのX軸に平行)に摺動自在なXアーム21と、Xアーム21の前面にYs軸方向(XYZ直交3軸のうちのY軸に平行)に摺動自在なYアーム22が設置されており、Yアーム22の底面にホルダアーム4と、ホルダアーム4の先端底面に測定部2および局所磁場発生部3が設置されている。
【0023】
XYZアーム20の駆動方式はモータで駆動するものでもよく、ピエゾアクチュエータで駆動するものでも良い。XYZアーム20のXY方向における移動ストロークは試料の測定領域をカバーするよう設定すれば良い。これにより、試料の測定領域全体を測定することが可能となる。XYZアーム20のXY方向における移動ストロークは例えば100×100mmである。XYZアーム20のZ方向における移動ストロークは試料の厚さよりも十分に大きく設定すれば良い。これにより、測定部2および局所磁場発生部3に対して磁性体試料5を容易に接近させることが可能となる。XYZアーム20のXY方向における位置決め分解能は磁性体試料5の磁区の大きさより十分に小さく設定すればよい。これにより、微小領域の磁場分布測定が可能となる。XY方向における位置決め分解能は例えば10nmである。XYZアーム20のZ方向における位置決め分解能は磁性体試料5の表面粗さより十分に小さく設定すればよい。これにより、表面形態の影響を受けない磁場分布測定が可能となる。
【0024】
XYZステージ10とXYZアーム20の二つの機構は磁性体試料5と測定部2および局所磁場発生部3の間における相対的な位置関係において同一の動作をするものであるが、それぞれの機構の異なる駆動方式を選択することにより、微小領域の測定から大面積試料の測定までが一台の装置で可能となる。例えばXYZステージ10の駆動方式をモータによる粗動動作とし、XYZアーム20の駆動方式をピエゾアクチュエータによる微動動作とすると良い。これにより、粗動動作によって試料中の任意の箇所への高速に移動し、微動動作によって微小領域の残留磁化を詳細に測定することが可能となる。
【0025】
基台1にはZm軸方向(XYZ直交3軸のうちのZ軸に平行)に摺動自在なZm軸駆動系30が立設固定されており、Zm軸駆動系30の前面に磁場発生部6が設置されている。本実施形態においては、この磁場発生部6により、磁性体試料の第1の領域及び第2の領域を互いに逆方向に着磁する。磁場発生部6によって磁性体試料5を着磁するためには、磁場発生部6から磁場を外部に放射する磁極7と磁性体試料5の表面が対向する着磁位置(
図1の仮想線位置)にXYZテーブル10を移動し、Zm軸駆動系30によって磁極7を磁性体試料5の表面に十分に近接させる。これにより、磁性体試料5を一様に若しくは磁場発生部6の磁極7が有するパターンの通りに着磁することが可能となる。
【0026】
図2は前記磁場発生部6の概略図を示す。
図2において、磁性体試料5はXYZテーブル10によって着磁位置(
図1の仮想線位置)に存在し、磁場を放出する磁極7は磁性体試料5の表面と近接し対向した位置に存在している。
図2に示した実施の形態においては、磁極7は放出する磁場の符号が異なる一対で構成されているが、本発明における磁場発生部はこれに限定されない。隣接する磁極どうしの符号が異なる微小な磁極のマトリクスであってもよいし、一様な磁場を発生するものであってもよい。
【0027】
図3の(a)は前記磁場発生部6を用いて磁性体試料5を着磁した後に、磁極7の放出する磁場の符号の異なる境界近傍の領域を測定部2にて走査して得た試料の残留磁化に起因する漏洩磁束の分布の例示である。測定領域の略中央に磁極7の放出する磁場の符号の異なる境界が位置し、境界の右側は正方向(測定部2と対向する面がN極)に着磁されている第1の領域であり、境界の左側は第1の領域とは逆方向の(測定部2と対向する面がS極)に着磁されている第2の領域となるように着磁されている。
【0028】
第1の領域と第2の領域の境界近傍の領域において前記測定部2により検出される信号の強度が最も大きく、境界から離れた領域では信号の強度が小さい。これは着磁状態の異なる境界部分近傍において磁性体試料からの漏洩磁束が大きいことに起因するものと考えられる。
【0029】
図3の(b)は一様な外部磁場を発生可能な磁場発生部を用いて磁性体試料5を着磁した後に、測定部2にて走査して得た試料の残留磁化に起因する漏洩磁束の分布の例示である。磁性体試料5は負方向(測定部2と対向する面がS極)に飽和着磁されている。
【0030】
磁性体試料5は飽和着磁されているにも関わらず、測定部2により検出される信号が小さい。これは薄板状の形態を有する磁性体試料5が一様に着磁された状態において、その反磁場係数Nが凡そ1となるために、磁性体試料5の有する磁気分極Jが反磁場Hdによって打ち消され、磁性体試料5の外部に磁束が漏洩しないことに起因するものと考えられる。
【0031】
図4は(a)は、減衰振動磁場により磁性体試料5を着磁する工程を示す図である。この図において、磁性体試料5はXYZテーブル10によって着磁位置(
図1の仮想線位置)に存在し、本実施形態において磁場を放出する磁場発生部である磁極7は磁性体試料5の表面と近接し対向した位置に存在している。磁極7の放出する磁場は時間の経過と共に振幅が減少しながら符号の正負が逆方向に反転する磁場(減衰振動磁場)であればよい。
【0032】
次に、
図4(b)により、磁性体試料5が減衰振動磁場により着磁される過程を説明する。説明の簡略化のために磁性体試料5の中には高保磁力、中保磁力、低保磁力の3種類の保磁力成分を有する領域が存在し、磁極7より放出される磁場は時間の経過と共に振幅を減少させながら、逆方向に正負に合計3回反転するものとする。
【0033】
まず、磁極7より放出される正方向で大強度の磁場により、磁性体試料5の全体が正方向に着磁される。次いで、磁極7より放出される負方向で中強度の磁場により、磁性体試料5の中保磁力および低保磁力部分のみが磁化方向を負に反転する。このとき磁極7より放出される中強度の磁場は、磁性体試料5の中にある高保磁力部分を磁化反転させることができないため、高保磁力部分は正方向の磁化状態を維持する。さらに、磁極7より放出される正方向で小強度の磁場により、磁性体試料5の低保磁力部分のみが磁化方向を正に反転する。このとき磁極7より放出される小強度の磁場は、磁性体試料5の中にある中保磁力部分を磁化反転させることができないため、中保磁力部分は正方向の磁化状態を維持する。
【0034】
以上の過程により、磁性体試料5の中に正負方向に磁化状態の異なる第1の領域と第2の領域が混在させることが可能となる。磁化状態の異なる部分が混在する磁性体試料5は、その形状が薄板状であっても反磁場Hdが小さく、外部に漏洩する磁束を測定部2により検出することが可能となる。
【0035】
図5は磁場発生部6を用いて減衰振動磁場を発生させ、着磁した磁性体試料5の磁場分布図の例示である。発生させた減衰振動磁場は最大6400kA/mである。
【0036】
減衰振動磁場にて着磁した磁性体試料5は大きさが0.5〜1.0μm程度からなる磁化状態の異なる領域(磁区)が混在した状態となった。この磁区の大きさは磁性体試料5の結晶粒子の大きさと略等しく、保磁力の分布を有する結晶粒子の残留磁化状態が正負方向に異なることを反映した漏洩磁束の分布が測定されたものと考えられる。
【0037】
図6(a)は局所磁場発生部3にて、交流磁場を発生させながら走査することにより磁性体試料5を不均一に着磁する工程を示す。この図において磁性体試料5および局所磁場発生部3はXYZテーブル10およびXYZアーム20対向する位置に存在し、局所磁場発生部3の底面は磁性体試料5の上面と近接している。
図6(b)に示すように、局所磁場発生部3の放出する磁場は時間の経過と共に符号の正負が反転する磁場(交流磁場)であればよい。
【0038】
図7は局所磁場発生部3にて交流磁場を発生させながら走査することにより着磁された磁性体試料5の磁場分布図の例示である。磁性体試料5は磁場発生部6にて一様に飽和着磁(
図3Bと同態様)した後に、測定領域の中央部のみに対して局所磁場発生部3にて交流磁場を発生させながら走査することにより着磁した。
【0039】
磁性体試料5の一様に着磁された部分(測定領域の上下)は飽和着磁されているものの、反磁場によって磁束が外部に漏洩せず、測定部2にて検出される信号の強度は小さい。一方、局所磁場発生部3にて交流磁場を発生させながら走査することにより着磁された部分(測定領域の中央)は測定部2にて検出される信号の強度が大きく、磁性体試料5が正負方向に交互に磁化されていることにより、反磁場による影響が小さく磁束が外部に漏洩しているものと考えられる。
【0040】
図7に示したように、所定の磁場強度を有する交流磁場によっても、磁性体試料の該磁場強度に対応する保磁力以下の部分を不均一に磁化することができ、磁場強度を順次変更して同様の測定を行なうことにより、磁性体試料の磁気特性分布を得ることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 基台
2 測定部
3 局所磁場発生部
4 ホルダアーム
5 磁性体試料
6 磁場発生部
7 磁極
10 XYZテーブル
11 Xテーブル
12 Yテーブル
13 Zテーブル
20 XYZアーム
21 Xアーム
22 Yアーム
23 Zアーム
30 Zm軸駆動系
40 制御部