【実施例】
【0065】
(実施例1)
締結用雄ねじ部及び締結用雌ねじ部の形状の違いによる剛性を比較するため、下記の
参考例1、従来例1、比較例1の先端交換式切削工具を準備し、実際に切削評価を実施した。
【0066】
参考例1として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを50°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.5mm、ねじ山面の幅を0.408mm、ねじ底面の幅を0.408mmにした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを50°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.5mm、ねじ山の螺合面の幅を0.408mm、ねじ底の螺合面の幅を0.408mmにした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例1の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも40°大きく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも40°大きく設けられたホルダーを作成し、
参考例1の先端交換式切削工具を作製した。
【0067】
従来例1として、JIS規格に記載の標準メートル並目ねじ形状の締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッド、及びJIS規格に記載の標準メートル並目ねじ形状の締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製し、この加工ヘッドをホルダーに締め付け、従来例1の先端交換式切削工具を作製した。従来例1の先端交換式切削工具に使用された加工ヘッドにおいては、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを30°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを30°とし、ねじ山の1ピッチPを1.0mmとし、ねじ山面の幅を0.211mm、ねじ底面の幅を0.211mmとした。従来例1の先端交換式切削工具に使用されたホルダーにおいては、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを30°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを30°とし、ねじ山の1ピッチPを1.0mmとし、ねじ山の螺合面の幅を0.211mm、ねじ底の螺合面の幅を0.211mmとした。すなわち、圧力側フランクのフランク角αと遊び側フランクのフランク角βを等しくした加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γと遊び側フランクの螺合面の角度δを等しくしたホルダーを作製し、従来例1の先端交換式切削工具を作製した。
【0068】
比較例1として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを10°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを50°とし、ねじ山の1ピッチPを1.5mm、ねじ山面の幅を0.408mm、ねじ底面の幅を0.408mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを10°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを50°とし、ねじ山の1ピッチPを1.5mm、ねじ山の螺合面の幅を0.408mm、ねじ底の螺合面の幅を0.408mmにした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、比較例1の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも40°小さく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも40°小さく設けられたホルダーを作製し、
参考例1の先端交換式切削工具を作製した。
【0069】
参考例1、従来例1、及び比較例1の共通仕様として、加工ヘッドはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NM15、Co含有量:11質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。ホルダーはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NC60、Co含有量16質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。また、加工ヘッドの先端から締結用雄ねじ部までは一体成形で作製され、工具径Dが10mm、外周刃を工具軸Oの方向で測定したときの長さである刃長が10mm、締結用雄ねじ部の呼び径dが6mm、締結用雄ねじ部を工具軸Oの方向で測定したときの長さである締結用雄ねじ部のねじ長が6mm、締結用雌ねじ部の直径が6mm、締結用雌ねじ部を工具軸Oの方向で測定したときの長さである締結用雌ねじ部のねじ長が8mm、刃数が4枚の同一形状のスクエアエンドミルとし、切れ刃部にはTiSiN系の硬質皮膜を施し、切削を実施した。なお、「テーパ角」は、
図3〜
図5に示した加工ヘッドとホルダーとの接触面のテーパ角度を示す。以下の実施例においては、特に示さない限り、テーパ角は0°の例を示す。
【0070】
切削に使用した被削材はHRC40のプリハードン鋼にて、先端交換式切削工具の突出し量を40mmで一定とし、切削条件を回転数が3240min
−1、軸方向の切込み量を5mm、径方向の切込み量を1mmに固定し、送り速度を700mm/minから100mm/minずつ増加させ、10mの加工距離の切削加工が可能かを確認しながら1200mm/minまで安定加工が可能か否かについて検証した。なお、工具冷却及び切り屑排出のためにエアブローを使用した。
【0071】
評価基準としては、送り速度を700mm/minから100mm/minずつ増加させ、送り速度が1200mm/minでの切削加工において、加工ヘッドにおける締結用雄ねじ部の折損が発生せずに安定加工が行えた場合、その先端交換式切削工具を良好とした。検証した結果を表1に示す。なお、表1に記載の結果における「○」は、それぞれの送り速度での切削加工において、加工ヘッドにおける締結用雄ねじ部の折損が発生しなかったことを示し、表1に記載の結果における「×」は、それぞれの送り速度での切削加工において、加工ヘッドにおける締結用雄ねじ部の折損が発生したことを示す。また、締結用雄ねじ部の折損とは、締結用雄ねじ部自体が折損し、加工ヘッドの締結用雄ねじ部によるホルダーへの螺合が不可能となった状態を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に記載の結果より、
参考例1においては送り速度が1200mm/minでの切削加工において、締結用雄ねじ部の折損が発生せず安定した加工が可能であったため、良好であった。しかし、従来例1、比較例1については、従来例1が900mm/min、比較例1が800mm/minの送り速度にて、切削中に締結用雄ねじ部の折損が発生してしまい、高能率な加工が不可能であったため、不良であった。これらのことから、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも大きく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも大きく設けられたホルダーから構成される
参考例1は、従来の先端交換式切削工具と比較し、締結用雄ねじ部の折損を発生させずに、送り速度が1.5倍以上の高能率加工が可能であるといえる。
【0074】
(実施例2)
圧力側フランクのフランク角αと遊び側フランクのフランク角βとの角度差、及び圧力側フランクの螺合面の角度γと遊び側フランクの螺合面の角度δとの角度差による締結用雄ねじ部におけるねじ山の剛性の変化、加工ヘッドの後端における剛性の変化、及び切削時の工具摩耗を比較するため、下記の
参考例2〜参考例9の先端交換式切削工具を準備し、実際に切削評価を実施した。
【0075】
参考例2として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを50°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを45°とし、ねじ山面の幅を0.452mm、ねじ底面の幅を0.452mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを50°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを45°とし、ねじ山面の螺合面の幅を0.452mm、ねじ底の螺合面の幅を0.452mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例2の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも5°大きく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも5°大きく設けられたホルダーを作製し、
参考例2の先端交換式切削工具を作製した。
【0076】
参考例3として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを50°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを40°とし、ねじ山面の幅を0.492mm、ねじ底面の幅を0.492mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを50°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを40°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.492mm、ねじ底の螺合面の幅を0.492mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例3の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも10°大きく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも10°大きく設けられたホルダーを作製し、
参考例3の先端交換式切削工具を作製した。
【0077】
参考例4として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを50°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを30°とし、ねじ山面の幅を0.558mm、ねじ底面の幅を0.558mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを50°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを30°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.558mm、ねじ底の螺合面の幅を0.558mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例4の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも20°大きく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも20°大きく設けられたホルダーを作製し、
参考例4の先端交換式切削工具を作製した。
【0078】
参考例5として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを50°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを20°とし、ねじ山面の幅を0.611mm、ねじ底面の幅を0.611mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを50°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを20°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.611mm、ねじ底の螺合面の幅を0.611mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例5の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも30°大きく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも30°大きく設けられたホルダーを作製し、
参考例5の先端交換式切削工具を作製した。
【0079】
参考例6として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを50°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山面の幅を0.658mm、ねじ底面の幅を0.658mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを50°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.658mm、ねじ底の螺合面の幅を0.658mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例6の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも40°大きく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも40°大きく設けられたホルダーを作製し、
参考例6の先端交換式切削工具を作製した。
【0080】
参考例7として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを60°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山面の幅を0.523mm、ねじ底面の幅を0.523mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを60°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.523mm、ねじ底の螺合面の幅を0.523mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例7の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも50°大きく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも50°大きく設けられたホルダーを作製し、
参考例7の先端交換式切削工具を作製した。
【0081】
参考例8として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを70°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山面の幅を0.269mm、ねじ底面の幅を0.269mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを70°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.269mm、ねじ底の螺合面の幅を0.269mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例8の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも60°大きく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも60°大きく設けられたホルダーを作製し、
参考例8の先端交換式切削工具を作製した。
【0082】
参考例9として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを70°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを5°とし、ねじ山面の幅を0.291mm、ねじ底面の幅を0.291mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを70°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを5°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.291mm、ねじ底の螺合面の幅を0.291mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例9の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも65°大きく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも65°大きく設けられたホルダーを作製し、
参考例9の先端交換式切削工具を作製した。
【0083】
参考例2乃至9における共通仕様として、加工ヘッド及びホルダーはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NM15、Co含有量:11質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。ホルダーはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NC60、Co含有量16質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。また、加工ヘッドの先端から締結用雄ねじ部までは一体成形で作製され、工具径Dが10mm、刃長が10mm、締結用雄ねじ部の呼び径dが6mm、締結用雄ねじ部のねじ長が6mm、締結用雌ねじ部の直径が6mm、締結用雌ねじ部のねじ長が8mm、締結用雄ねじ部及び締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPが2mm、締結用雄ねじ部及び締結用雌ねじ部におけるテーパ角が0°、刃数が4枚の同一形状のスクエアエンドミルとし、切れ刃部にはTiSiN系の硬質皮膜を施し、切削を実施した。
【0084】
切削加工に使用した被削材はHRC40のプリハードン鋼とし、先端交換式切削工具の突出し量を40mmで一定とし、切削条件を回転数が3240min
−1、送り速度が1200mm/min、軸方向の切込み量を5mm、径方向の切込み量を1mmに固定し、50mの加工距離の切削加工後の工具摩耗状態を検証した。なお、工具冷却及び切り屑排出のためにエアブローを使用した。
【0085】
評価方法としては、50m切削加工後に光学式の工具顕微鏡を用いて、スクエアエンドミルの4枚の外周刃に生じた最大逃げ面摩耗幅を測定し、その平均値を算出した。さらに、光学式の工具顕微鏡を用いて、締結用雄ねじ部におけるねじ山及び加工ヘッドの後端すなわち面取りによって形成された面19と圧力側フランクのフランク面11のなす角(ねじ山)に生じた欠損の有無を確認した。
【0086】
評価基準としては、50m切削加工後の先端交換式切削工具に用いられた加工ヘッドにおいて、締結用雄ねじ部におけるねじ山及び加工ヘッドの後端において欠損が無く、逃げ面摩耗幅の平均値が0.2mm以下であったものを良好とした。検証した結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
表2に記載の結果より、
参考例2乃至9において、50m加工後も締結用雄ねじ部におけるねじ山及び加工ヘッドの後端において欠損が発生せず、逃げ面摩耗幅の平均値が0.2mm以下であったため、良好であった。
【0089】
特に、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも10°以上60°以下の範囲で大きく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも10°以上60°以下の範囲で大きく設けられたホルダーから構成される
参考例2乃至8においては50mの切削加工後においても外周刃に生じた逃げ面摩耗幅の平均値は0.15mm以下であったため、更に長時間切削可能な状態であった。
【0090】
(実施例3)
圧力側フランクのフランク角αの角度及び圧力側フランクの螺合面の角度γによる締結用雄ねじ部におけるねじ山の剛性の変化、加工ヘッドとホルダーを螺合したときの芯だし精度の変化及び切削時の工具摩耗を比較するため、下記の
参考例10〜参考例14の先端交換式切削工具を準備し、実際に切削評価を実施した。
【0091】
参考例10として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを30°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを20°とし、ねじ山面の幅を0.764mm、ねじ底面の幅を0.764mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを30°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを20°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.764mm、ねじ底の螺合面の幅を0.764mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例10の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αを30°とした加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γを30°としたホルダーを作製し、
参考例10の先端交換式切削工具を作製した。
【0092】
参考例11として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを35°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを20°とし、ねじ山面の幅を0.734mm、ねじ底面の幅を0.734mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを35°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを20°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.734mm、ねじ底の螺合面の幅を0.734mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例11の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αを35°とした加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γを35°としたホルダーを作製し、
参考例11の先端交換式切削工具を作製した。
【0093】
参考例12として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを45°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを30°とし、ねじ山面の幅を0.605mm、ねじ底面の幅を0.605mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを45°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを30°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.605mm、ねじ底の螺合面の幅を0.605mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例12の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αを45°とした加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γを45°としたホルダーを作製し、
参考例12の先端交換式切削工具を作製した。
【0094】
参考例13として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを60°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを30°とし、ねじ山面の幅を0.423mm、ねじ底面の幅を0.423mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを60°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを30°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.423mm、ねじ底の螺合面の幅を0.423mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例13の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αを60°とした加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γを60°としたホルダーを作製し、
参考例13の先端交換式切削工具を作製した。
【0095】
参考例14として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを65°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを30°とし、ねじ山面の幅を0.319mm、ねじ底面の幅を0.319mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを65°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを30°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.319mm、ねじ底の螺合面の幅を0.319mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例14の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αを65°とした加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γを65°としたホルダーを作製し、
参考例14の先端交換式切削工具を作製した。
【0096】
参考例10乃至14における共通仕様として、加工ヘッド及びホルダーはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NM15、Co含有量:11質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。ホルダーはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NC60、Co含有量16質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。また、加工ヘッドの先端から締結用雄ねじ部までは一体成形で作製され、工具径Dが10mm、刃長が10mm、締結用雄ねじ部の呼び径が6mm、締結用雄ねじ部のねじ長が6mm、締結用雌ねじ部の直径が6mm、締結用雌ねじ部のねじ長が8mm、締結用雄ねじ部及び締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPが2mm、締結用雄ねじ部及び締結用雌ねじ部におけるテーパ角が0°、刃数が4枚の同一形状のスクエアエンドミルとし、切れ刃部にはTiSiN系の硬質皮膜を施し、切削を実施した。
【0097】
切削加工に使用した被削材はHRC40のプリハードン鋼とし、先端交換式切削工具の突出し量を40mmで一定とし、切削条件を回転数が3240min−1、送り速度が1200mm/min、軸方向の切込み量を5mm、径方向の切込み量を1mmに固定し、50mの加工距離の切削加工後の工具摩耗状態を検証した。なお、工具冷却及び切り屑排出のためにエアブローを使用した。
【0098】
評価方法としては、切削加工前において、加工ヘッドとホルダーを螺合したときの芯だし精度の変化を確認するために、マシニングセンタの主軸に取り付けたときの外周刃の振れすなわち切れ刃部の振れをダイヤルゲージで測定した。さらに、50m切削加工後に光学式の工具顕微鏡を用いて、スクエアエンドミルの4枚の外周刃に生じた最大逃げ面摩耗幅を測定し、その平均値を算出した。さらに、光学式の工具顕微鏡を用いて、締結用雄ねじ部におけるねじ山に生じた欠損の有無を確認した。
【0099】
評価基準としては、切削加工前において加工ヘッドとホルダーを螺合したときの切れ刃部の振れが30μm以下であり、50m切削加工後の先端交換式切削工具に用いられた加工ヘッドにおいて、締結用雄ねじ部におけるねじ山において欠損が無く、逃げ面摩耗幅の平均値が0.2mm以下であったものを良好とした。検証した結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
表3に記載の結果より、
参考例10乃至14において、切削加工前に加工ヘッドとホルダーを螺合したときの切れ刃部の振れが30μm以下であり、50m加工後も締結用雄ねじ部におけるねじ山において欠損が発生せず、逃げ面摩耗幅の平均値が0.2mm以下であったため、良好であった。
【0102】
特に、圧力側フランクのフランク角αが35°以上60°以下の範囲で設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが35°以上60°以下の範囲で設けられたホルダーから構成される
参考例11乃至13においては、切削加工前に加工ヘッドとホルダーを螺合したときの切れ刃部の振れが15μm以下であり、50mの切削加工後においても外周刃に生じた逃げ面摩耗幅の平均値は0.1mm以下であったため、更に長時間切削可能な状態であった。
【0103】
(実施例4)
遊び側フランクのフランク角βの角度及び遊び側フランクの螺合面の角度δによる締結用雄ねじ部におけるねじ山の剛性の変化及び切削時の工具摩耗を比較するため、下記の
参考例15〜参考例18の先端交換式切削工具を準備し、実際に切削評価を実施した。
【0104】
参考例15として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを40°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを0°とし、ねじ山面の幅を0.790mm、ねじ底面の幅を0.790mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを40°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを0°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.790mm、ねじ底の螺合面の幅を0.790mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダに締め付け、
参考例15の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、遊び側フランクのフランク角βを0°とした加工ヘッド、及び遊び側フランクの螺合面の角度δを0°としたホルダーを作製し、
参考例15の先端交換式切削工具を作製した。
【0105】
参考例16として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを40°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山面の幅を0.746mm、ねじ底面の幅を0.746mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを40°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.746mm、ねじ底の螺合面の幅を0.746mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例16の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、遊び側フランクのフランク角βを10°とした加工ヘッド、及び遊び側フランクの螺合面の角度δを10°としたホルダーを作製し、
参考例16の先端交換式切削工具を作製した。
【0106】
参考例17として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを40°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを25°とし、ねじ山面の幅を0.673mm、ねじ底面の幅を0.673mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを40°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを25°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.673mm、ねじ底の螺合面の幅を0.673mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例17の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、遊び側フランクのフランク角βを25°とした加工ヘッド、及び遊び側フランクの螺合面の角度δを25°としたホルダーを作製し、
参考例17の先端交換式切削工具を作製した。
【0107】
参考例18として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを40°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを30°とし、ねじ山面の幅を0.646mm、ねじ底面の幅を0.646mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを40°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを30°とし、ねじ山の螺合面の幅を0.646mm、ねじ底の螺合面の幅を0.646mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例18の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、遊び側フランクのフランク角βを30°とした加工ヘッド、及び遊び側フランクの螺合面の角度δを30°としたホルダーを作製し、
参考例18の先端交換式切削工具を作製した。
【0108】
参考例15乃至18における共通仕様として、加工ヘッド及びホルダーはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NM15、Co含有量:11質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。ホルダーはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NC60、Co含有量16質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。また、加工ヘッドの先端から締結用雄ねじ部までは一体成形で作製され、工具径Dが10mm、刃長が10mm、締結用雄ねじ部の呼び径が6mm、締結用雄ねじ部のねじ長が6mm、締結用雌ねじ部の直径が6mm、締結用雌ねじ部のねじ長が8mm、締結用雄ねじ部及び締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPが2mm、締結用雄ねじ部及び締結用雌ねじ部におけるテーパ角が0°、刃数が4枚の同一形状のスクエアエンドミルとし、切れ刃部にはTiSiN系の硬質皮膜を施し、切削を実施した。
【0109】
切削加工に使用した被削材はHRC40のプリハードン鋼とし、先端交換式切削工具の突出し量を40mmで一定とし、切削条件を回転数が3240min
−1、送り速度が1200mm/min、軸方向の切込み量を5mm、径方向の切込み量を1mmに固定し、50mの加工距離の切削加工後の工具摩耗状態を検証した。なお、工具冷却及び切り屑排出のためにエアブローを使用した。
【0110】
評価方法としては、50m切削加工後に光学式の工具顕微鏡を用いて、スクエアエンドミルの4枚の外周刃に生じた最大逃げ面摩耗幅を測定し、その平均値を算出した。さらに、光学式の工具顕微鏡を用いて、締結用雄ねじ部におけるねじ山に生じた欠損の有無を確認した。
【0111】
評価基準としては、50m切削加工後の先端交換式切削工具に用いられた加工ヘッドにおいて、締結用雄ねじ部におけるねじ山において欠損が無く、逃げ面摩耗幅の平均値が0.2mm以下であったものを良好とした。検証した結果を表4に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
表4に記載の結果より、
参考例15乃至18において、50m加工後も締結用雄ねじ部におけるねじ山において欠損が発生せず、逃げ面摩耗幅の平均値が0.2mm以下であったため、良好であった。
【0114】
特に、遊び側フランクのフランク角βが0°以上25°以下の範囲で設けられた加工ヘッド、及び遊び側フランクの螺合面の角度が0°以上25°以下の範囲で設けられたホルダーから構成される
参考例15乃至17においては50mの切削加工後においても外周刃に生じた逃げ面摩耗幅の平均値は0.06mm以下であったため、更に長時間切削可能な状態であった。
【0115】
(実施例5)
締結用雄ねじ部及び締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPによる締結用雄ねじ部におけるねじ山の剛性の変化及び切削時の工具摩耗を比較するため、下記の
参考例19〜参考例23の先端交換式切削工具を準備し、実際に切削評価を実施した。
【0116】
参考例19として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを40°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山の1ピッチPを0.6mmにし、ねじ山面の幅を0.046mm、ねじ底面の幅を0.046mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを40°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の1ピッチPを0.6mmにし、ねじ山の螺合面の幅を0.046mm、ねじ底の螺合面の幅を0.046mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例19の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、締結用雄ねじ部におけるねじ山の1ピッチPを締結用雄ねじ部の呼び径dの10%の長さとした加工ヘッド、及び締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPを締結用雄ねじ部の呼び径dの10%の長さとしたホルダーを作製し、
参考例19の先端交換式切削工具を作製した。
【0117】
参考例20として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを40°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山の1ピッチPを0.9mmにし、ねじ山面の幅を0.196mm、ねじ底面の幅を0.196mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを40°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の1ピッチPを0.9mmにし、ねじ山の螺合面の幅を0.196mm、ねじ底の螺合面の幅を0.196mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例20の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、締結用雄ねじ部におけるねじ山の1ピッチPを締結用雄ねじ部の呼び径dの15%の長さとした加工ヘッド、及び締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPを締結用雄ねじ部の呼び径dの15%の長さとしたホルダーを作製し、
参考例20の先端交換式切削工具を作製した。
【0118】
参考例21として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを40°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.4mmにし、ねじ山面の幅を0.446mm、ねじ底面の幅を0.446mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを40°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.4mmにし、ねじ山の螺合面の幅を0.446mm、ねじ底の螺合面の幅を0.446mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例21の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、締結用雄ねじ部におけるねじ山の1ピッチPを締結用雄ねじ部の呼び径dの23%の長さとした加工ヘッド、及び締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPを締結用雄ねじ部の呼び径dの23%の長さとしたホルダーを作製し、
参考例21の先端交換式切削工具を作製した。
【0119】
参考例22として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを40°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.8mmにし、ねじ山面の幅を0.646mm、ねじ底面の幅を0.646mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを40°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.8mmにし、ねじ山の螺合面の幅を0.646mm、ねじ底の螺合面の幅を0.646mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例22の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、締結用雄ねじ部におけるねじ山の1ピッチPを締結用雄ねじ部の呼び径dの30%の長さとした加工ヘッド、及び締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPを締結用雄ねじ部の呼び径dの30%の長さとしたホルダーを作製し、
参考例22の先端交換式切削工具を作製した。
【0120】
参考例23として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを40°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山の1ピッチPを2.1mmにし、ねじ山面の幅を0.796mm、ねじ底面の幅を0.796mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを40°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の1ピッチPを2.1mmにし、ねじ山の螺合面の幅を0.796mm、ねじ底の螺合面の幅を0.796mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例23の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、締結用雄ねじ部におけるねじ山の1ピッチPを締結用雄ねじ部の呼び径dの35%の長さとした加工ヘッド、及び締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPを締結用雄ねじ部の呼び径dの35%の長さとしたホルダーを作製し、
参考例23の先端交換式切削工具を作製した。
【0121】
参考例19乃至23における共通仕様として、加工ヘッド及びホルダーはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NM15、Co含有量:11質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。ホルダーはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NC60、Co含有量16質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。また、加工ヘッドの先端から締結用雄ねじ部までは一体成形で作製され、工具径Dが10mm、刃長が10mm、締結用雄ねじ部の呼び径dが6mm、締結用雄ねじ部のねじ長が6mm、締結用雌ねじ部の直径が6mm、締結用雌ねじ部のねじ長が8mm、締結用雄ねじ部及び締結用雌ねじ部におけるテーパ角が0°、刃数が4枚の同一形状のスクエアエンドミルとし、切れ刃部にはTiSiN系の硬質皮膜を施し、切削を実施した。
【0122】
切削加工に使用した被削材はHRC40のプリハードン鋼とし、先端交換式切削工具の突出し量を40mmで一定とし、切削条件を回転数が3240min
−1、送り速度が1200mm/min、軸方向の切込み量を5mm、径方向の切込み量を1mmに固定し、50mの加工距離の切削加工後の工具摩耗状態を検証した。なお、工具冷却及び切り屑排出のためにエアブローを使用した。
【0123】
評価方法としては、50m切削加工後に光学式の工具顕微鏡を用いて、スクエアエンドミルの4枚の外周刃に生じた最大逃げ面摩耗幅を測定し、その平均値を算出した。さらに、光学式の工具顕微鏡を用いて、締結用雄ねじ部におけるねじ山に生じた欠損の有無を確認した。
【0124】
評価基準としては、50m切削加工後の先端交換式切削工具に用いられた加工ヘッドにおいて、締結用雄ねじ部のねじ山において欠損が無く、逃げ面摩耗幅の平均値が0.2mm以下であったものを良好とした。検証した結果を表5に示す。
【0125】
【表5】
【0126】
表5に記載の結果より、
参考例19乃至23において、50m加工後も締結用雄ねじ部におけるねじ山において欠損が発生せず、逃げ面摩耗幅の平均値が0.2mm以下であったため、良好であった。
【0127】
特に、締結用雄ねじ部及び締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPを、締結用雄ねじ部の呼び径dの15%以上30%以下の範囲の長さに設定した
参考例20乃至22においては50mの切削加工後においても外周刃に生じた逃げ面摩耗幅の平均値は0.04mm以下であったため、更に長時間切削可能な状態であった。
【0128】
(実施例6)
締結用雄ねじ部におけるねじ山面の幅及びねじ底面の幅、並びに締結用雌ねじ部におけるねじ山の螺合面の幅とねじ底の螺合面の幅による、締結用雄ねじ部におけるねじ山の剛性の変化及び切削時の工具摩耗を比較するため、下記の
参考例24〜参考例28の先端交換式切削工具を準備し、実際に切削評価を実施した。
【0129】
参考例24として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを50°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを15°とし、ねじ山の1ピッチPを0.9mmにし、ねじ山面の幅を0.085mm、ねじ底面の幅を0.085mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを50°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを15°とし、ねじ山の1ピッチPを0.9mmにし、ねじ山の螺合面の幅を0.085mm、ねじ底の螺合面の幅を0.085mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例24の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、締結用雄ねじ部におけるねじ山面の幅及びねじ底面の幅を締結用雄ねじ部におけるねじ山の1ピッチPの9%の長さとし、締結用雌ねじ部におけるねじ山の螺合面の幅及びねじ底の螺合面の幅を締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPの9%の長さとしたホルダーを作製し、
参考例24の先端交換式切削工具を作製した。
【0130】
参考例25として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを50°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.0mmにし、ねじ山面の幅を0.152mm、ねじ底面の幅を0.152mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを50°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.0mmにし、ねじ山の螺合面の幅を0.152mm、ねじ底の螺合面の幅を0.152mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例25の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、締結用雄ねじ部におけるねじ山面の幅及びねじ底面の幅を締結用雄ねじ部におけるねじ山の1ピッチPの15%の長さとし、締結用雌ねじ部におけるねじ山の螺合面の幅及びねじ底の螺合面の幅を締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPの15%の長さとしたホルダーを作製し、
参考例25の先端交換式切削工具を作製した。
【0131】
参考例26として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを50°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.2mmにし、ねじ山面の幅を0.258mm、ねじ底面の幅を0.258mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを50°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.2mmにし、ねじ山の螺合面の幅を0.258mm、ねじ底の螺合面の幅を0.258mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例26の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、締結用雄ねじ部におけるねじ山面の幅及びねじ底面の幅を締結用雄ねじ部におけるねじ山の1ピッチPの22%の長さとし、締結用雌ねじ部におけるねじ山の螺合面の幅及びねじ底の螺合面の幅を締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPの22%の長さとしたホルダーを作製し、
参考例26の先端交換式切削工具を作製した。
【0132】
参考例27として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを50°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.7mmにし、ねじ山面の幅を0.508mm、ねじ底面の幅を0.508mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを50°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.7mmにし、ねじ山の螺合面の幅を0.508mm、ねじ底の螺合面の幅を0.508mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例27の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、締結用雄ねじ部におけるねじ山面の幅及びねじ底面の幅を締結用雄ねじ部におけるねじ山の1ピッチPの30%の長さとし、締結用雌ねじ部におけるねじ山の螺合面の幅及びねじ底の螺合面の幅を締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPの30%の長さとしたホルダーを作製し、
参考例27の先端交換式切削工具を作製した。
【0133】
参考例28として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを35°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.8mmにし、ねじ山面の幅を0.681mm、ねじ底面の幅を0.681mmとした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを35°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.8mmにし、ねじ面の螺合面の幅を0.681mm、ねじ底の螺合面の幅を0.681mmとした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、
参考例28の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、締結用雄ねじ部におけるねじ山面の幅及びねじ底面の幅を締結用雄ねじ部におけるねじ山の1ピッチPの38%の長さとし、締結用雌ねじ部におけるねじ山の螺合面の幅及びねじ底の螺合面の幅を締結用雌ねじ部におけるねじ山の1ピッチPの38%の長さとしたホルダーを作製し、
参考例28の先端交換式切削工具を作製した。
【0134】
参考例24乃至28における共通仕様として、加工ヘッド及びホルダーはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NM15、Co含有量:11質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。ホルダーはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NC60、Co含有量16質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。また、加工ヘッドの先端から締結用雄ねじ部までは一体成形で作製され、工具径Dが10mm、刃長が10mm、締結用雄ねじ部の呼び径dが6mm、締結用雄ねじ部のねじ長が6mm、締結用雌ねじ部の直径が6mm、締結用雌ねじ部のねじ長が8mm、締結用雄ねじ部及び締結用雌ねじ部におけるテーパ角が0°、刃数が4枚の同一形状のスクエアエンドミルとし、切れ刃部にはTiSiN系の硬質皮膜を施し、切削を実施した。
【0135】
切削加工に使用した被削材はHRC40のプリハードン鋼とし、先端交換式切削工具の突出し量を40mmで一定とし、切削条件を回転数が3240min
−1、送り速度が1200mm/min、軸方向の切込み量を5mm、径方向の切込み量を1mmに固定し、50mの加工距離の切削加工後の工具摩耗状態を検証した。なお、工具冷却及び切り屑排出のためにエアブローを使用した。
【0136】
評価方法としては、50m切削加工後に光学式の工具顕微鏡を用いて、スクエアエンドミルの4枚の外周刃に生じた最大逃げ面摩耗幅を測定し、その平均値を算出した。さらに、光学式の工具顕微鏡を用いて、締結用雄ねじ部におけるねじ山に生じた欠損の有無を確認した。
【0137】
評価基準としては、50m切削加工後の先端交換式切削工具に用いられた加工ヘッドにおいて、締結用雄ねじ部におけるねじ山において欠損が無く、逃げ面摩耗幅の平均値が0.2mm以下であったものを良好とした。検証した結果を表6に示す。
【0138】
【表6】
【0139】
表6に記載の結果より、
参考例24乃至28において、50m加工後も締結用雄ねじ部におけるねじ山において欠損が発生せず、逃げ面摩耗幅の平均値が0.2mm以下であったため、良好であった。
【0140】
特に、締結用雄ねじ部におけるねじ山面の幅及びねじ底面の幅、並びに締結用雌ねじ部におけるねじ山の螺合面の幅とねじ底の螺合面の幅をねじ山の1ピッチPの15%以上30%以下の範囲の長さに設定した
参考例25乃至27においては、50mの切削加工後においても外周刃に生じた逃げ面摩耗幅の平均値は0.03mm以下であったため、更に長時間切削可能な状態であった。
【0141】
(実施例7)
加工ヘッドとホルダーの接触面のテーパ部(
図3〜
図5)の効果を評価するため、下記の本発明例29の先端交換式切削工具を準備し、実際に切削評価を実施した。
【0142】
本発明例29として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角αを50°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角βを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.5mm、ねじ山面の幅を0.408mm、ねじ底面の幅を0.408mmにした締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを50°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを10°とし、ねじ山の1ピッチPを1.5mm、ねじ山の螺合面の幅を0.408mm、ねじ底の螺合面の幅を0.408mmにした締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。この加工ヘッドをホルダーに締め付け、本発明例29の先端交換式切削工具を作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも40°大きく設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも40°大きく設けられたホルダーを作製した。また、加工ヘッドとホルダーの接触面のテーパ部のテーパ角は5°とした。以上の本発明例29の先端交換式切削工具を作製した。
【0143】
従来例1は、実施例1に示した従来例1と同一ものを用いた。また、比較例2として、締結用雄ねじ部における圧力側フランクのフランク角を10°、締結用雄ねじ部における遊び側フランクのフランク角を50°とし、ねじ山の1ピッチを1.5mm、ねじ山面の幅を0.408mm、ねじ底面の幅を0.408mmとし、ねじの後端から先端に向かうにつれ締結用雄ねじの径が減少するように5°のテーパを設けた締結用雄ねじ部が設けられた加工ヘッドを作製した。さらに、締結用雌ねじ部における圧力側フランクの螺合面の角度γを10°、締結用雌ねじ部における遊び側フランクの螺合面の角度δを50°とし、ねじ山の1ピッチPを1.5mm、ねじ山の螺合面の幅を0.408mm、ねじ底の螺合面の幅を0.408mmにし、ねじの後端から先端に向かうにつれ締結用雌ねじ部の径が減少するように5°のテーパ角を設けた締結用雌ねじ部が設けられたホルダーを作製した。すなわち、圧力側フランクのフランク角αが遊び側フランクのフランク角βよりも40°小さく、5°のテーパ角が設けられた加工ヘッド、及び圧力側フランクの螺合面の角度γが遊び側フランクの螺合面の角度δよりも40°小さく設けられたホルダーを作製した。また、加工ヘッドとホルダーの接触面のテーパ部のテーパ角は5°とした。以上の比較例2の先端交換式切削工具を作製した。
【0144】
本発明例29、従来例1、比較例2の共通仕様として、加工ヘッドはWC基超硬合金製(日立ツール株式会社製、材質名:NM15、Co含有量:11質量%)であるが、高速度工具鋼(日立金属株式会社製、材質名:HAP72)を用いた場合でも同様の傾向を示した。ホルダーはクロムモリブデン鋼製(JIS規格、材質名:SCM440)とした。また、加工ヘッドの先端から締結用雄ねじ部までは一体成形で作製され、工具径Dが10mm、刃長が10mm、締結用雄ねじ部の呼び径dが6mm、締結用雄ねじ部のねじ長が6mm、締結用雌ねじ部の直径が6mm、締結用雌ねじ部のねじ長が8mm、締結用雄ねじ部及び締結用雌ねじ部におけるテーパ角が5°または0°、刃数が4枚の同一形状のスクエアエンドミルとし、切れ刃部にはTiSiN系の硬質皮膜を施し、切削を実施した。
【0145】
切削に使用した被削材はHRC40のプリハードン鋼にて、先端交換式切削工具の突出し量を40mmで一定とし、切削条件を回転数が3240min
−1、軸方向の切込み量を5mm、径方向の切込み量を1mmに固定し、送り速度を700mm/minから100mm/minずつ増加させ、10mの加工距離の切削加工が可能かを確認しながら1300mm/minまで安定加工が可能かについて検証した。なお、工具冷却及び切り屑排出のためにエアブローを使用した。
【0146】
評価基準としては、送り速度を700mm/minから100mm/minずつ増加させ、送り速度が1300mm/minでの切削加工において、加工ヘッドにおける締結用雄ねじ部の折損が発生せずに安定加工が行えた場合、その先端交換式切削工具を良好とした。検証した結果を表7に示す。なお、表7に記載の結果における「○」は、それぞれの送り速度での切削加工において、加工ヘッドにおける締結用雄ねじ部の折損が発生しなかったことを示し、表7に記載の結果における「×」は、それぞれの送り速度での切削加工において、加工ヘッドにおける締結用雄ねじ部の折損が発生したことを示す。また、締結用雄ねじ部の折損とは、締結用雄ねじ部自体が折損し、加工ヘッドの締結用雄ねじ部によるホルダーへの螺合が不可能となった状態を示す。
【0147】
【表7】
【0148】
表7に記載の結果より、本発明例29においては送り速度が1300mm/minでの切削加工において、締結用雄ねじ部の折損が発生せず安定した加工が可能であった。これは、テーパ角が0°の
参考例1よりもさらに良好な結果であった。しかし、従来例1、比較例2については、従来例1が900mm/min、比較例2が1000mm/minの送り速度にて、切削中に締結用雄ねじ部の折損が発生してしまい、高能率な加工が不可能であったため、不良であった。これらのことから、加工ヘッドとホルダーとの接触面をテーパとし、前述した2面によって位置を拘束することで高能率加工が可能であるといえる。