特許第5713201号(P5713201)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5713201蓄熱体、蓄熱体の製造方法そして蓄熱体を有する蓄熱装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713201
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】蓄熱体、蓄熱体の製造方法そして蓄熱体を有する蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20150416BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   F28D20/02 E
   F28D20/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-14035(P2012-14035)
(22)【出願日】2012年1月26日
(65)【公開番号】特開2013-152064(P2013-152064A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
(72)【発明者】
【氏名】古本 直行
(72)【発明者】
【氏名】山口 以昌
(72)【発明者】
【氏名】杉山 正行
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−026288(JP,A)
【文献】 特開2011−094878(JP,A)
【文献】 特開2011−133127(JP,A)
【文献】 特開平04−073595(JP,A)
【文献】 特開2007−205710(JP,A)
【文献】 特開2008−089186(JP,A)
【文献】 特開2006−226628(JP,A)
【文献】 実開昭56−058182(JP,U)
【文献】 実開昭57−087276(JP,U)
【文献】 実開平03−067878(JP,U)
【文献】 特開2001−261074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/02
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシート状の包装材を重ねて平坦で矩形な袋状に形成される密閉容器内に蓄熱剤を封入した蓄熱体において、
重なる包装材同士が、周縁に囲まれた領域内で包装材の周縁の一辺に対して傾角をもち該一辺の方向で間隔をもって平行に配列された複数の線シール部によりそれぞれシールされていて、隣接する線シール部同士間の非シール帯が、上記線シール部の配列方向で連続して複数形成されており、任意の非シール帯で重なる包装材同士間に蓄熱剤が封入されて包装材の外面で凸状に膨出する蓄熱剤封入筒状部が複数形成されていて、上記複数の蓄熱剤封入筒状部が群をなしている蓄熱剤封入域と、蓄熱剤が封入されていない部分又は折曲可能な程度に蓄熱剤が封入されている部分で蓄熱剤封入域同士を連結している連結域とを有し、該連結域は、隣接する蓄熱剤封入の域に干渉せずに、上記一辺に対して直角な方向の線分で連結域を折曲可能な上記一辺方向の幅を有していることを特徴とする蓄熱体。
【請求項2】
可撓性を有するシート状の包装材を重ねて平坦で矩形な袋状に形成される密閉容器内に蓄熱剤を封入した蓄熱体の製造方法において、
重なる包装材同士を、注入口とする一部を除いて開口縁部をシールすると共に、周縁に囲まれた領域内で包装材の周縁の一辺に対して傾角をもち該一辺の方向で間隔をもって平
行に配列された複数の線シール部により、隣接する線シール部同士間の非シール帯を上記線シール部の配列方向で連続して複数形成し、任意の非シール帯で重なる包装材同士間に上記注入口から蓄熱剤を封入し包装材の外面で凸状に膨出する蓄熱剤封入筒状部を複数形成し、上記複数の蓄熱剤封入筒状部が群をなしている蓄熱剤封入域を形成する工程と、蓄熱剤が封入されていない部分又は折曲可能な程度に蓄熱剤が封入されている部分で蓄熱剤封入域同士を連結している連結域を、隣接する蓄熱剤封入の域に干渉せずに、上記一辺に対して直角な方向の線分で連結域を折曲可能な上記一辺方向の幅にわたり形成する工程とを順次繰り返した後、上記注入口をシールして密閉することを特徴とする蓄熱体の製造方法。
【請求項3】
可撓性を有するシート状の包装材を重ねて平坦で矩形な袋状に形成される密閉容器内に蓄熱剤を封入した蓄熱体の製造方法において、
重なる包装材同士を、注入口とする一部を除いて開口縁部をシールすると共に、周縁に囲まれた領域内で包装材の周縁の一辺に対して傾角をもつ第一の線シール部を形成し重なる包装材同士間に上記注入口から蓄熱剤を封入し前記第一の線シール部と該一辺の方向で間隔をもって平行に第二の線シール部を形成することにより、隣接する線シール部同士間の非シール帯に蓄熱剤が封入されていて包装材の外面で凸状に膨出する蓄熱剤封入筒状部を形成し、該蓄熱剤封入筒状部を形成する工程を繰り返し、前記該蓄熱剤封入筒状部を前記一辺の方向で連続して複数形成し、上記複数の蓄熱剤封入筒状部が群をなしている蓄熱剤封入域を形成する工程と、蓄熱剤が封入されていない部分又は折曲可能な程度に蓄熱剤が封入されている部分で蓄熱剤封入域同士を連結している連結域を、隣接する蓄熱剤封入域に干渉せずに、上記一辺に対して直角な方向の線分で連結域を折曲可能な上記一辺方向の幅にわたり形成する工程とを順次繰り返した後、上記注入口をシールして密閉することを特徴とする蓄熱体の製造方法。
【請求項4】
請求項に記載の蓄熱体を、連結部で折り返した状態で蓄熱槽内に蓄熱剤封入域を順次重ねて配置し、隣接して位置する蓄熱剤封入域同士の線シール部の傾角を逆向きとすることを特徴とする蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱剤を容器内に封入してなる蓄熱体、より詳しくは限られた蓄熱容積で蓄熱量をより大きくするのに好適な蓄熱体、蓄熱体の製造方法、そのような蓄熱体を有する蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄熱剤を容器内に封入してなる蓄熱体は、その容器の周囲の熱媒体(水、気体など)との熱交換を通じて熱エネルギーの有効利用に供されるものとしてよく知られており、たとえば保冷庫(特許文献1)、蓄熱装置(特許文献2、3)、蓄熱式空調装置(特許文献4)などの構成部材として用いられている。そして、いずれの用途であれ、限られた蓄熱容積で蓄熱量がより大きくなる蓄熱体が求められている。そのような蓄熱体は最終的にコンパクト化、ひいては低コスト化に資するからである。その意味から、周囲の熱媒体との間の伝熱効率が良好になる蓄熱体又はその容器の形状、材質、蓄熱体配置の仕方等について種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献5には、軟性材料製の板状容器の内部に形成された空隙に蓄熱剤を封入してなる蓄熱体が記載されており、多数の蓄熱体が、個々の蓄熱体の板状容器の外表面側部にある凸部を介して多段に積層配置されているので、限られた蓄熱容積で蓄熱量をより大きくすることができ、スペーサーとして機能する凸部により隣接する蓄熱体の容器の外表面同士が非接触となるので、周囲の熱媒体との間の伝熱効率を良好に維持することができる。
【0004】
また、特許文献6では、ヒートシール性を有する二枚の材料シートを部分的にヒートシールして蓄熱材容器とし、ヒートシール位置を工夫することにより容器(蓄熱体)に凸凹をつけ、内部の蓄熱剤の偏在を防ぐ等の工夫が提案されている。より詳しくは、矩形の二枚の材料シートの周縁同士をシールすると共に、長辺の方向での複数位置で長辺に対して直角な方向に延びる帯状域で二枚の材料シートをシールすることで、周縁内に複数の容器部分を形成し、そして、各容器部分の中央点で二枚の材料シートをスポット状にシールして各容器部分での形崩れを防止している。各容器部分は、その上下面が上記スポット状のシール箇所を除いて広い面積で平坦部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−130903
【特許文献2】特開平6−207748
【特許文献3】特開2003−329383
【特許文献4】特開平10−89732
【特許文献5】特開平3−11296
【特許文献6】特開2001−261074
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献5の場合のように蓄熱体の容器の外表面側部に設けた凸部をスペーサーとして機能させるということは、隣接する容器の外表面間の概ね全域にわたりに隙間が形成されることを意味している。しかし、隣接する容器間に隙間が形成されるようでは、限られた蓄熱容積で蓄熱量がより大きくするという目的を十分に達成できているとはいえない。
【0007】
また、特許文献5の場合のように板状容器を軟性材料により形成し、その外表面側部に設けた凸部をスペーサーとして機能させるためには、その軟性材料は板状容器の外形を維持するに足るほどに硬質でなければならない。しかし、特許文献6の場合のように材料シートにより形成された容器では、材料シートが相対的に軟質であるが故に、その容器の外表面側部に凸部を設けてもスペーサーとしての機能を十分に果たすことができず、隣接する容器の外表面同士が広範囲にわたり接触し、両外表面間に隙間がなくなり、容器の周囲の熱媒体との接触面積が小さくなったり、熱媒体との熱交換が不均一になったりして、伝熱効率が大きく低下するおそれがある。
【0008】
限られた蓄熱容積で蓄熱量をより大きくするためには、多数の蓄熱体をより高密度に積層配置させる際に隣接する容器の外表面同士がある程度接触することはやむを得ないと割り切ったうえで、容器の周囲の熱媒体との接触面積をある程度確保でき、熱媒体との熱交換の均一性を維持し、伝熱効率の低下を回避する工夫も必要である。
【0009】
本発明は、上記の事情及び課題に鑑みなされたものであり、蓄熱剤に接する容器の有効な表面積が大きく、容器の周囲の熱媒体との間の熱交換効率に優れる又は当該熱交換が全体として均一になる蓄熱体、或いは限られた蓄熱容積で蓄熱量をより大きくすることができる又は多段の積層配置に好適な蓄熱体、蓄熱体の製造方法、そしてそのような蓄熱体を有する蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上述の目的は、蓄熱体、蓄熱体の製造方法そして蓄熱装置に関して、次の第一発明ないし第発明により達成される。
【0013】
<蓄熱体>
発明:
可撓性を有するシート状の包装材を重ねて平坦で矩形な袋状に形成される密閉容器内に蓄熱剤を封入した蓄熱体において、重なる包装材同士が、周縁に囲まれた領域内で包装材の周縁の一辺に対して傾角をもち該一辺の方向で間隔をもって平行に配列された複数の線シール部によりそれぞれシールされていて、隣接する線シール部同士間の非シール帯が、上記線シール部の配列方向で連続して複数形成されており、任意の非シール帯で重なる包装材同士間に蓄熱剤が封入されて包装材の外面で凸状に膨出する蓄熱剤封入筒状部が複数形成されていて、上記複数の蓄熱剤封入筒状部が群をなしている蓄熱剤封入域と、蓄熱剤が封入されていない部分又は折曲可能な程度に蓄熱剤が封入されている部分で蓄熱剤封入域
同士を連結している連結域とを有し、該連結域は、隣接する蓄熱剤封入の域に干渉せずに、上記一辺に対して直角な方向の線分で連結域を折曲可能な上記一辺方向の幅を有していることを特徴とする蓄熱体。
【0016】
<蓄熱体の製造方法>
発明:
可撓性を有するシート状の包装材を重ねて平坦で矩形な袋状に形成される密閉容器内に蓄熱剤を封入した蓄熱体の製造方法において、重なる包装材同士を、注入口とする一部を除いて開口縁部をシールすると共に、周縁に囲まれた領域内で包装材の周縁の一辺に対して傾角をもち該一辺の方向で間隔をもって平行に配列された複数の線シール部により、隣接する線シール部同士間の非シール帯を上記線シール部の配列方向で連続して複数形成し、任意の非シール帯で重なる包装材同士間に上記注入口から蓄熱剤を封入し包装材の外面で凸状に膨出する蓄熱剤封入筒状部を複数形成し、上記複数の蓄熱剤封入筒状部が群をなしている蓄熱剤封入域を形成する工程と、蓄熱剤が封入されていない部分又は折曲可能な程度に蓄熱剤が封入されている部分で蓄熱剤封入域同士を連結している連結域を、隣接する蓄熱剤封入の域に干渉せずに、上記一辺に対して直角な方向の線分で連結域を折曲可能な上記一辺方向の幅にわたり形成する工程とを順次繰り返した後、上記注入口をシールして密閉することを特徴とする蓄熱体の製造方法。
【0017】
発明:
可撓性を有するシート状の包装材を重ねて平坦で矩形な袋状に形成される密閉容器内に蓄熱剤を封入した蓄熱体の製造方法において、
重なる包装材同士を、注入口とする一部を除いて開口縁部をシールすると共に、周縁に囲まれた領域内で包装材の周縁の一辺に対して傾角をもつ第一の線シール部を形成し重なる包装材同士間に上記注入口から蓄熱剤を封入し前記第一の線シール部と該一辺の方向で間隔をもって平行に第二の線シール部を形成することにより、隣接する線シール部同士間の非シール帯に蓄熱剤が封入されていて包装材の外面で凸状に膨出する蓄熱剤封入筒状部を形成し、該蓄熱剤封入筒状部を形成する工程を繰り返し、前記該蓄熱剤封入筒状部を前記
一辺の方向で連続して複数形成し、上記複数の蓄熱剤封入筒状部が群をなしている蓄熱剤封入域を形成する工程と、蓄熱剤が封入されていない部分又は折曲可能な程度に蓄熱剤が封入されている部分で蓄熱剤封入域同士を連結している連結域を、隣接する蓄熱剤封入域に干渉せずに、上記一辺に対して直角な方向の線分で連結域を折曲可能な上記一辺方向の幅にわたり形成する工程とを順次繰り返した後、上記注入口をシールして密閉することを特徴とする蓄熱体の製造方法。
【0019】
<蓄熱装置>
発明:
発明の蓄熱体を、連結部で折り返した状態で蓄熱槽内に蓄熱剤封入域を順次重ねて配置し、隣接して位置する蓄熱剤封入域同士の線シール部の傾角を逆向きとすることを特徴とする蓄熱装置。
【0022】
<蓄熱体の使用方法>
発明の蓄熱体そして第発明又は第発明により得られる蓄熱体は、以下の要領で使用されて第発明の蓄熱装置を形成する。
【0023】
蓄熱槽内に、連結部で次々と折りたたまれるようにして蛇腹状をなし、蓄熱剤封入域同士が重ねて配置されるように蓄熱体を配置する。隣接する蓄熱剤封入域同士が互いの線シール部の傾角を逆向きとするようになるので、互いの蓄熱剤封入筒状部が交差して点状の狭い範囲のみで接触し、他の広い範囲が非接触で空間を形成するようになる。かくして、熱媒体との熱交換が有効的に行われ、しかも、蓄熱剤封入域同士を重ねて配置する状態においても蓄熱体の形状は安定して維持される。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以上のように、蓄熱槽内に重ねて配置される蓄熱体が隣接する層で線シール部の傾角を逆向きとするので、互いの蓄熱剤封入筒状部が交差して点状の狭い範囲でのみ接触し、広い範囲で非接触となって層同士間に空間を形成する結果、該空間内に充満する熱媒体と蓄熱体の有効な接触面積が広く、熱媒体の流れが偏ることなく全体に均一で、熱交換時の伝熱特性が優れており、しかも蓄熱剤を収容する蓄熱体が低コストで製造でき、限られた蓄熱容積で蓄熱量をより大きくすることができ、それと相俟って蓄熱体を蓄熱槽内に配置する費用も低コストとなる。
【0025】
なお、本発明に係る蓄熱体を形成する包装材は相対的に軟質であるので変形し易い。それ故、たとえば大気中で当該蓄熱体を多段に積層配置させると、重力を受ける容器内の蓄熱剤により当該容器を形成する包装材が変形し、隣接する容器同士の接触面積が増加し、周囲の熱媒体の流れに偏りが生じるおそれがある。これに対して、液体中で当該蓄熱体を多段に積層配置させると、浮力により重力の影響が緩和されるので、そのようなおそれは生じにくくなる。この意味から、蓄熱体の周囲の熱媒体が気体である場合より、液体である場合の方が、本発明においては好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第一実施形態の蓄熱体を示し、(A)は平面図、(B)は(A)におけるB-B断面図、(C)は周縁シール部を省略して示す斜視図、(D)は蓄熱体の一部について(B)と同一で示す部分拡大断面図である。
図2図1の蓄熱体の製造手順を示し、(A)はシール前の二枚の包装材を示す斜視図、(B)は一部の未シール分を除いて周縁シール部と線シール部とを形成し、未シール部から蓄熱剤を注入する状態を示す図である。
図3図1の蓄熱体を蓄熱槽(図示せず)内に積層している状態を示し、(A)は平面図、(B)は(A)におけるB-B断面図(C)は(A)におけるC-C断面図である。
図4】第二実施形態の蓄熱体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態の蓄熱体を示し、(A)は平面図、(B)は(A)におけるB-B断面図、(C)は周縁シール部を省略して示す蓄熱体の斜視図、(D)は蓄熱体の一部についての(B)と同じ位置での部分拡大断面図である。
【0029】
本実施形態の蓄熱体1は、シール可能な矩形シート状で可撓性を有する二枚の包装材2をシールして一つの密閉袋状の容器をなし、その内部に蓄熱剤を封入することにより形成されている。ここで、包装材は、シール前には全く別の二枚の包装材であることは勿論のこと、一枚の包装材を中央位置で折曲して重なりあうようになっていてもよい。一枚の包装材で密閉袋状を形成する場合、包装材の側縁同士をシールして筒状とした後に、その開口両端をシールすることで密閉袋状とすることができ、包装材の側縁同士のシール部が矩形袋状の側縁部又は中央部に位置するようになっていてもよい。さらに、その際、側縁同士は、包装材の同一側の面を接面させることとしたいわゆる合掌貼り、あるいは重ね合わせることとしたいわゆる封筒貼りの形態でもよい。さらには、当初から筒状をなす包装材の開口両端をシールすることでも密閉袋状とすることができる。包装材は、基層の一方もしくは両方の面にシール可能なシーラント層を有しているものでも、包装材自体がシール可能なものとなっていてもよく、シールの形態そしてシール手段により適宜選択すればよい。また、シール手段は、その種類に限定はなく、ヒートシール、高周波シール、超音波シールあるいは接着によるシールのいずれでもよいが、本実施形態では、シーラント層を有する包装材をヒートシールでシールする例で説明を進めて行くこととする。
【0030】
図1(A)に見られるように、蓄熱体1を形成する二枚の包装材2は、周縁同士が周縁シール部3によりシールされて密閉袋状を形成していると共に、上記周縁シール部3により囲まれた範囲内で、周縁の一辺、すなわち、図示の場合、長辺に対して傾角θをもち、この長辺が延びる方向で間隔をもって平行に配列された状態で複数の線シール部4が形成されている。この複数の線シール部4の端部は、上記周縁シール部3の上記長辺に近接しているが周縁シール部3とはつながっておらず、周縁シール部3との間に若干の非シール部分4Aが形成されている。隣接する線シール部4同士間は非シール帯5(蓄熱剤封入前を示す図2(B)参照)となっており、上記線シール部4の端部における上記非シール部分4Aによって連通している。かかる非シール帯5の内部には、流動性を有する蓄熱剤が注入されていて、図1(B)、(C)、(D)に見られるように、包装材2の外面が凸状に膨出する蓄熱剤封入筒状部6を形成している。蓄熱剤は、非シール帯5内に注入される際に、上記非シール部分4Aを通って、隣接する非シール帯5へ次々と流入し、全非シール帯5内に充満するようになる。
【0031】
かくして、本実施形態の蓄熱体1は、非シール帯5内に蓄熱剤が注入された状態で、図示のごとく、複数の蓄熱剤封入筒状部6が上記長辺に対し斜角θをもって配列形成されるようになる。
【0032】
次に、本実施形態の蓄熱体の製造手順について説明する。
【0033】
(1)先ず、図2(A)のごとく、基材層2A上にヒートシールを可能とするシーラント層2Bが形成された包装材2を、同一形状そして同一寸法として二枚用意し、シーラント層2B同士が対面するように配置する。
【0034】
(2)次に、上記二枚の包装材2を重ねた状態で、それらの周縁同士を一部(例えば、図2(B)において右端の短辺)を除いてシールして周縁シール部3を形成すると共に、それと同時あるいは前後して、上記周縁で囲まれる範囲内に複数の線シール部4を形成する。シールは、本実施形態では、前述したように、例えばヒートシールにより行われる。シールが行われていない上記周縁の一部は、未シール部分3Aとして残る。未シール部分3Aは、右端の短辺の全幅にわたっていても、さらにこの短辺の一部であってもよい。上記未シール部分は、下述する蓄熱剤の注入のためであり、その注入に十分なものであればよい。したがって、未シール部分3Aを残さずに、上記短辺を含めて、全周にわたり周縁シール部3を形成して、非シール帯5の一箇所に注入針を刺し込んで蓄熱剤の注入後に、注入針により穿孔された針孔を塞ぐシールを行ってもよい。
【0035】
(3)次に、未シール部分3Aから蓄熱剤を、図2(B)に示される矢印方向から注入する。蓄熱剤は、線シール部4の端部と周縁シール部3との間の非シール部分4Aを通って、次々と隣接する非シール帯5内で充満されるようになる。しかる後、短辺における上記未シール部分3Aをもシールして、蓄熱剤が漏出しないように密封する。その際、長辺方向で両端に位置する線シール部4と周縁シール部3の短辺における部分との間の端域は、蓄熱剤が封入されていなくても、封入されていてもよい。図1(B)、(C)は上記端域に蓄熱剤が封入されていない場合の例を示している。上記端域に蓄熱剤が封入されている場合にはその分だけ蓄熱体の蓄熱量が多くなる。かくして、図1に示される蓄熱体1を得る。
【0036】
次に、本実施形態の蓄熱体を用いる蓄熱装置について説明する。上記のようにして得られた蓄熱体1を複数用意して蓄熱槽(図示せず)内に重ねて配置して蓄熱装置を形成する。その配置は、隣接する蓄熱体1の蓄熱剤封入筒状部6同士の傾角が逆向きとなるように行われる。互いに隣接する蓄熱体(合計二つの蓄熱体)を単位構造体としたとき、当該蓄熱装置は、蓄熱槽内にその単位構造体を積み重ねたものとして把握することもできる。
【0037】
蓄熱体を上下に重ねて配置する場合の状態を図3に示す。全ての蓄熱体1は、図3に見られるように、上下に隣接する蓄熱体1(図3(A)にて上方に位置する蓄熱体1の線シール部4が実線で、下方に位置する蓄熱体1の線シール部4が破線で示されている。)との間で、逆向きに傾角θを有する蓄熱剤封入筒状部6同士で点状の狭い範囲Pのみで接触し(図3(A),(B)参照)、他の広い範囲で空間Sが形成され(図3(C)参照)、この空間Sに流入する熱媒体と広い接触面積で熱交換が行われる。しかも、上下の蓄熱体1は、互いの点状の狭い範囲のみで接触しているだけなので、その周囲の空間Sで熱媒体の流通が良好となる。仮に、狭い範囲でも線状部分で接触すると、接触面積があまり小さくならないとしても、熱媒体が線状部分で遮断され流通性を阻害する。したがって、点状の狭い範囲Pで接触することは、この点でも、線状部分での接触に比較して優れている。蓄熱体を水平方向に重ねて配置する場合にも、同様に蓄熱剤封入筒状部6同士の間に広い範囲で空間Sが形成され、熱媒体と広い接触面積で熱交換ができると共に、熱媒体の流通性を良好に保つことができる。
【0038】
<第二実施形態>
本実施形態は、前実施形態の複数の蓄熱体を線シール部の配列方向で連結して形成されており、蓄熱剤封入筒状部の群を複数有し、蓄熱剤封入筒状部の群(蓄熱剤封入域)同士を、蓄熱剤が封入されていない部分又は折曲可能な程度に蓄熱剤が封入されている部分で連結していることに特徴がある。
【0039】
本実施形態を示す図4は、前実施形態の図1(C)に相当する図である。
【0040】
図4において、蓄熱体1は、複数の蓄熱剤封入筒状部6を連続して有する蓄熱剤封入筒状部6の群で蓄熱剤封入域7を形成し、蓄熱剤封入域7同士は、蓄熱剤が封入されていない部分又は折曲可能な程度に蓄熱剤が封入されている部分で形成される連結域8によって連結されている。
【0041】
蓄熱剤封入域7における蓄熱剤封入筒状部6の傾角θはすべての蓄熱剤封入域7について同じである。連結域8の幅、すなわち隣接する蓄熱剤封入域7同士間の距離は、該連結域8の範囲にて、上記蓄熱剤封入筒状部6の配列方向に延びる蓄熱体1の一辺に対して直角な方向の線分を折曲線Xとして折り曲げても該線分が上記蓄熱剤封入域7に干渉しない寸法となっている。
【0042】
かかる本実施形態の蓄熱体1は、上記連結域8の範囲に折曲線Xを位置するようにして折曲して、蓄熱槽内で蓄熱剤封入域7が順次重ねて配置される。隣接する蓄熱剤封入域7は、上記連結域8内の折曲線Xで折曲されているために、蓄熱剤封入筒状部6は互いに逆向きの傾角θをもつように位置することとなり、前実施形態の場合と同様に、点状の狭い範囲のみで接触することとなる。かくして、前実施形態の場合と同様に、熱媒体と広い接触面積で熱交換ができると共に、熱媒体の流通性を良好に保つ。さらに、本実施形態によると蓄熱体1は、連結域8により連続して一体に形成されているので取扱いが便利である。
【0043】
本発明は、第一実施形態そして第二実施形態のいずれの場合も、蓄熱槽を冷凍機と空調機に接続して、蓄熱槽内の熱媒体を冷凍機との間そして空調機との間でそれぞれ循環可能として、交互に循環させることで、空調を行うことができる。
【0044】
本発明において、蓄熱体は、既述のように直接重ねて配置してもよいが、配置数が多くなるときには、その支持を確実にしまた取扱いを容易にするように、熱媒体を通過させることができる収納籠状の容器内に重ねて配置してもよい。
【0045】
本発明において、蓄熱体に封入する蓄熱剤として、冷却され水和物を生成する臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)を始めとするアルキルアンモニウム塩等の四級アンモニウム塩の水溶液を用いることが、高い潜熱蓄熱性能を有し、0℃より高い温度で冷却して蓄熱することができるので好ましい。また、熱媒体として水を用いることがよく行われるが、蓄熱剤として前記臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液等を用いる場合には、熱媒体中で蓄熱剤を封入した蓄熱体が浮き上がることがないので、問題なく蓄熱体を多段に重ねて配置させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 蓄熱体
2 包装材
3 周縁シール部
4 線シール部
5 非シール帯
6 蓄熱剤封入筒状部
7 蓄熱剤封入域
8 連結域
θ 傾角
図1
図2
図3
図4