特許第5713274号(P5713274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5713274高分子量ポリオキシアルキレン誘導体の精製方法
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  • 特許5713274-高分子量ポリオキシアルキレン誘導体の精製方法 図000022
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713274
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】高分子量ポリオキシアルキレン誘導体の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/30 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   C08G65/30
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2010-77541(P2010-77541)
(22)【出願日】2010年3月30日
(65)【公開番号】特開2010-254978(P2010-254978A)
(43)【公開日】2010年11月11日
【審査請求日】2013年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2009-85124(P2009-85124)
(32)【優先日】2009年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】吉村 秀一
(72)【発明者】
【氏名】中本 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智佳
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−263834(JP,A)
【文献】 特表2008−511729(JP,A)
【文献】 特開平03−135931(JP,A)
【文献】 特表2007−501325(JP,A)
【文献】 特開平09−100250(JP,A)
【文献】 特開2006−188611(JP,A)
【文献】 特開2006−063313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00−65/48
C07B 31/00−63/04
C07C 1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1]で示される分子量8800〜100000のポリオキシアルキレン誘導体から、水酸基数の異なる不純物を分離する精製方法であって、以下の工程(A)、(B)、(C)および(D)を有することを特徴とする、ポリオキシアルキレン誘導体の精製方法。
【化8】
(式中、
Zは、2〜8個の活性水素を持つ化合物の残基であり、
Y1及びY2は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、2級アミノ基、またはこれらを含むアルキレン基を示し、
Polymer1及びPolymer2は、直鎖もしくは分岐の炭素数2〜4のポリオキシアルキレン鎖を示し、
Rは、炭素数1〜7の炭化水素基または炭素数3〜9のアセタール基を示し、
Xはアミノ基、保護アミノ基、保護カルボキシル基、アルデヒド基、保護アルデヒド基、水酸基、保護水酸基、チオール基、保護チオール基、スルホニル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、またはこれらを含むアルキレン基、または水素原子を示し、
m及びnは、m=1または0、n=1または0、かつ1≦m+nであり
a及びbは、0≦a≦8、0≦b≦、かつ2≦a+b≦8を満たす整数であり、
a及びbが2以上の整数の場合、Y1及びY2、Polymer1及びPolymer2、R、X、m、nは分子中で同一または異なっても良い)
(A) 前記ポリオキシアルキレン誘導体の5重量倍以上の非プロトン性有機溶剤であって、トルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランからなる群より選ばれた一種以上の非プロトン性有機溶剤を使用し、上記ポリオキシアルキレン誘導体を溶解して溶液とする工程
(B) アルミニウムとケイ素との少なくとも一方を含む酸化物からなる無機系吸着剤を前記溶液に対して前記ポリオキシアルキレン誘導体の0.5〜5重量倍添加することで、スラリーを生成させる工程
(C) 25℃以上で前記スラリーを攪拌する工程
(D) 前記スラリーをろ過後、0≦b≦2の場合は、ろ液またはろ過ケーキから前記ポリオキシアルキレン誘導体を回収し、b=3の場合は、ろ過ケーキから前記ポリオキシアルキレン誘導体を回収する工程
【請求項2】
0≦b≦2であり、前記工程(D)において、前記スラリーをろ過後、前記ろ液から前記ポリオキシアルキレン誘導体を回収する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記一般式[1]において、Zがエチレングリコールの脱水酸基残基であり、Y1及びY2がエーテル結合であり、Polymer1が直鎖のポリオキシエチレン鎖であり、Rが炭素数1〜7の炭化水素基または炭素数3〜9のアセタール基であり、Xが水素原子であり、m及びnがそれぞれm=1、n=0であり、a及びbがそれぞれ、a=1、b=1である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記一般式[1]において、Rがメチル基である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記一般式[1]において、Zが多価アルコールまたはアミノ酸やペプチドの残基であり、Y1及びY2がエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、2級アミノ基またはこれらを含むアルキレン基であり、Polymer1及びPolymer2が直鎖もしくは分岐のポリオキシエチレン鎖であり、Rが炭素数1〜7の炭化水素基または炭素数3〜9のアセタール基であり、Xが保護アミノ基、保護カルボキシル基、保護アルデヒド基、保護水酸基、保護チオール基、シアノ基またはこれらを含むアルキレン基であり、m及びnがそれぞれ、m=1または0、n=1であり、a及びbがそれぞれ、0≦a≦8、0≦b≦、かつ2≦a+b≦8を満たす整数であり、a及びbが2以上の整数の場合、Y1及びY2、Polymer1及びPolymer2、R、X、m、nは分子中で同一または異なっても良い、請求項2記載の方法。
【請求項6】
一般式[1]において、Zが多価アルコールの脱水酸基残基であり、Y1及びY2がエーテル結合であり、Polymer1及びPolymer2が直鎖もしくは分岐のポリオキシエチレン鎖であり、Rが炭素数1〜7の炭化水素基または炭素数3〜9のアセタール基であり、Xが保護アミノ基、保護カルボキシル基、保護アルデヒド基、保護水酸基、保護チオール基、シアノ基またはこれらを含むアルキレン基であり、m及びnがそれぞれ、1または0、かつ1≦m+nであり、a及びbがそれぞれ、0≦a≦8、0≦b≦、かつ2≦a+b≦8を満たす整数であり、a及びbが2以上の整数の場合、Y1及びY2、Polymer1及びPolymer2、R、X、mは分子中で同一または異なっても良い、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記工程(D)において、前記スラリーをろ過後、前記ろ過ケーキからポリオキシアルキレン誘導体を回収する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
一般式[1]で示されるポリオキシアルキレン誘導体において、Zが多価アルコールの脱水酸基残基であり、Y1及びY2がエーテル結合であり、Polymer2が直鎖もしくは分岐のポリオキシエチレン鎖であり、Rが炭素数1〜7の炭化水素基または炭素数3〜9のアセタール基であり、Xが水素原子であり、m及びnがそれぞれ、m=0、n=1であり、a及びbがそれぞれ、a=0または1、2≦b≦、かつ3≦a+b≦を満たす整数であり、bが2以上の整数の場合、Polymer2、Xは分子中で同一または異なっても良い、請求項7記載の方法。
【請求項9】
一般式[1]において、Zが多価アルコール、アミノ酸またはペプチドの残基であり、Y1及びY2がエーテル結合、アミド結合、エステル結合、カーボネート結合、2級アミノ基またはこれらを含むアルキレン基であり、Polymer1及びPolymer2が直鎖もしくは分岐のポリオキシエチレン鎖であり、Rが炭素数1〜7の炭化水素基または炭素数3〜9のアセタール基であり、Xがアミノ基、保護アミノ基、保護カルボキシル基、アルデヒド基、保護アルデヒド基、水酸基、保護水酸基、チオール基、保護チオール基、シアノ基またはこれらを含むアルキレン基または水素原子であり、m及びnがそれぞれ、m=1または0、n=1または0、かつ1≦m+nであり、a及びbがそれぞれ、0≦a≦8、0≦b≦、かつ2≦a+b≦8を満たす整数であり、a及びbが2以上の整数の場合、Y1及びY2、Polymer1及びPolymer2、R、X、m、nは分子中で同一または異なっても良い、請求項7記載の方法。
【請求項10】
一般式[1]で示されるポリオキシアルキレン誘導体の分子量が10000以上である、請求項1〜9のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項11】
一般式[1]で示されるポリオキシアルキレン誘導体の分子量が30000以上である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記無機系吸着剤が、酸化アルミニウムと酸化ケイ素との少なくとも一方を成分とすることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記吸着剤の量がポリオキシアルキレン誘導体の1〜3重量倍である、請求項1〜12のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記非プロトン性溶剤がトルエンである、請求項1〜13のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記非プロトン性溶剤の量が前記ポリオキシアルキレン誘導体の10〜20重量倍である、請求項1〜14のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量のポリオキシアルキレン誘導体の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリペプチド、酵素、抗体や遺伝子、オリゴ核酸などを含む核酸化合物、核酸医薬やその他の生理活性物質に血中滞溜性や標的部位へのターゲティング機能などを付加する素材として、ポリオキシアルキレン誘導体は非常に多く使用されている。これはその立体反発効果のために他の生体成分との相互作用が低いためであり、ポリオキシアルキレン誘導体で修飾した生理活性物質、またはリポソームなどをポリオキシアルキレン誘導体で修飾したドラッグキャリアは、非修飾のものより体内での長い血中滞溜性を発揮することが知られている。また、この効果は高分子量のポリオキシアルキレン誘導体である程、大きいことが報告されている。さらに、このポリオキシアルキレン誘導体の末端に活性基や抗体を結合させることで、ターゲティング機能の付加も可能であり、ポリオキシアルキレン誘導体はドラッグデリバリーシステムの分野において非常に有用で欠かすことのできない素材となっている。そのため、これを使用して製造される薬物の性能や安全性の観点から、ポリオキシアルキレン誘導体はより高純度で、不純物の少ないものが求められている。現在、ポリオキシアルキレン誘導体には様々な骨格を持つものが開発されており、その製造方法により副生する不純物は様々である。以下にその例を示す。
【0003】
(ケースA: 片末端封鎖直鎖型ポリオキシアルキレン誘導体中のジオール不純物)
まず、ポリオキシアルキレン誘導体でも最も汎用される直鎖で水酸基を1個有するポリオキシアルキレン誘導体中に含まれる両末端が水酸基のポリオキシアルキレン誘導体であるジオール体と呼ばれる不純物が挙げられる。
【0004】
通常、水酸基を1個有するポリオキシアルキレン誘導体を製造する際には、開始剤として相当するアルコールとアルカリ触媒を用い、アルキレンオキシドを付加重合して得ることができる。このとき、開始剤であるアルコール類や反応槽内に混入または残存した水、開始剤が分解してできた両末端水酸基を持つ不純物にアルキレンオキシドが付加重合すると、両末端にアルキレンオキシドが付加重合し、主成分の倍の分子量をもつジオール体が副生する。高分子量のポリオキシアルキレン誘導体を製造する場合、大量のアルキレンオキシドを付加重合させるため、開始剤量が反応容器に対して少量となる。その結果、系中の水分モル数が開始剤に対して多くなるため、ジオール含有量が高分子量のポリオキシアルキレンでは多くなってしまう。また、ポリオキシアルキレン誘導体は高分子量になるほど融解時の粘性が増大することから、アルキレンオキシドの付加重合の途中で溶剤を加えて粘性を低下させたり、反応速度を上げるために触媒を追加する場合がある。それらに含まれる微量の水にアルキレンオキシドが付加重合したものもあり、そのジオール体の分子量は製造方法によって様々であり、主成分の分子量より同程度かそれより小さなジオール体が生成する場合もある。
【0005】
このようにジオール体はごく微量の水分であっても生成してしまうことから、その副生を完全に抑制することは困難である。特にドラッグキャリアの分野で効果があるとされる高分子量のポリオキシアルキレン誘導体の製造においては更に困難である。この不純物ジオール体は、薬物の修飾を行った際の薬物の二量化の原因となる。ジオール体は目的物と同じポリエーテル化合物であり、分離精製は困難である。このため、ポリオキシアルキレン誘導体中のジオール体を低減する精製技術が強く望まれている。
【0006】
(ケースBおよびE: 後付けによる分岐型ポリオキシアルキレン誘導体中の不純物)
ポリオキシアルキレン鎖を2以上の整数本もつ分岐型のポリオキシアルキレン誘導体の製造方法の1つとして、反応性ポリオキシアルキレン誘導体を骨格となる活性水素基を持つ化合物に化学的に結合させる方法がある。
【0007】
この方法の場合に副生する不純物は、反応性ポリオキシアルキレン誘導体とそれが加水分解により反応性部位が水酸基に戻ったポリオキシアルキレン誘導体、未反応の原料、及び原料に1本だけポリオキシアルキレン鎖が導入された反応中間体があり、更には反応性ポリオキシアルキレン誘導体に当初から含まれるジオール体も挙げられ、この方法による分岐型のポリオキシアルキレン誘導体の合成は、多様な官能基、分子量の不純物が複製し、特に精製が困難である。このような分岐のポリオキシアルキレン誘導体は生理活性物質を少ない結合点で修飾し、直鎖と変わらない血中滞溜性を発揮する。結合点が少ないことから、生理活性物質自身の活性の低下を防ぐ目的でのこの分岐のポリオキシアルキレン誘導体は非常に有効であり、そのため、直鎖のポリオキシアルキレン誘導体の除去、精製技術が求めれられていた。
【0008】
(ケースD: 多分岐型ポリオキシアルキレン誘導体中のジオール不純物)
また、例えばグリセリンやジグリセリンのような多価アルコールを開始剤としてアルキレンオキシドを付加重合して得られる水酸基末端ポリオキシアルキレン鎖を3本以上有する分岐型のポリオキシアルキレン誘導体については、1つの水酸基を持つ直鎖のポリオキシアルキレン誘導体と同様に、開始剤に含まれる水由来のジオール体と、開始剤によっては固体のものや粘性の高いものは予め有機溶剤に溶解させて反応を行うため、溶剤中の水分由来のジオール体が挙げられる。また、同様に反応途中での溶剤の添加や触媒の追加などにより副生するジオール体もある。主成分の多価アルコールの方が水酸基を多く持ちモル当たりのアルキレンオキシド付加モル数が多くなるため、これらの副生するジオール体の分子量は同等かそれより小さくなる。このような多官能ポリオキシアルキレン誘導体は、医薬分野において、外科手術等で使用される止血剤やシーリング剤などのゲル化剤原料として用いられている。これにジオール体由来の不純物が混入すると、分子量や架橋点の異なる不純物が混入することになり、所望のゲル強度を得ることができない。ケースA同様、合成段階での水分の除去は非常に困難であり、ポリオキシアルキレン誘導体中のジオール体を低減する精製技術が強く望まれている。
【0009】
(ケースC: 官能基変換時に生じる反応残水酸基不純物)
上記方法により合成したポリオキシアルキレン誘導体は、その後、末端の水酸基を様々な官能基へ化学変性させる。通常、ポリオキシアルキレン誘導体の分子量が大きくなるほど粘性が上昇し、分子中の反応部位濃度が低下し反応率が悪化するため、水酸基が少量残存する。また、ケースDのような、分子中の水酸基数が多いポリオキシアルキレン誘導体では化学変性時に未反応の水酸基数の異なる不純物が2以上の整数生成してしまう。純度向上、また歩留向上から、未反応の水酸基を持つポリオキシアルキレン誘導体の削減が重要となっている。
【0010】
このように未反応の水酸基が残存すると、ポリオキシアルキレン誘導体の純度が低下し、得られる薬剤の純度も低下する。このためにポリオキシアルキレン誘導体の精製技術が求められていた。
【0011】
以上のように、ポリオキシアルキレン誘導体の合成においては、様々な不純物が副生するが、その精製方法については、様々な提案がなされている。特に水酸基を1個有するポリオキシアルキレン誘導体からのジオール体の精製については、以下の方法が示されている。
【0012】
(片末端OHの精製方法の例-アルキレンオキシド付加時の水分コントロール)
一つは、アルキレンオキシドを付加重合させる際の製法として、特許文献1(特開平11-335460号)や特許文献2(US2006/0074200)に示されているように、アルコール化合物を出発物質としたエチレンオキシド付加反応において系内の水分をppmオーダーで制御することにより、より高分子量の不純物であるジオール体の原因となる水分子の影響を最小限に抑え、ジオール体の生成を抑制している。しかしながら、高分子量のポリオキシアルキレン誘導体を製造する場合、大量のアルキレンオキシドを付加重合させるため、開始剤量が反応容器に対して少量となる。その結果、系中の水分モル数が開始剤に対して多くなるため、ジオール含有量が高分子量のポリオキシアルキレンでは多くなってしまうため、ジオール体の副生は避けられない。
【0013】
(片末端OHの精製方法の例-クロマトグラフィー精製)
また、生成したジオール体を除去する方法として示されているものに、非特許文献1(Macromol.Chem., 189, 1809-1817(1988) Leonardら)の透析によるメトキシポリエチレングリコールの精製実験のような分子量の大きさによって精製分離する方法がある。しかしながら、主成分と同等か近い分子量を持つジオール体の分離は、透析による精製では困難である。
【0014】
非特許文献2(J. Bioactive Compatible Polymers, 16,206-220(2001) Lapienisら)のシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによるメトキシポリエチレングリコールの精製実験で、数10g程度の実験室レベルでの分子量5000以下のものでメトキシポリエチレングリコール中のジオール体の除去を行っている。しかしながら、精製するメトキシポリエチレングリコールに対して使用するシリカゲル量、溶剤量共に非常に大量であり、工業的なスケールでの製造は困難である。また、分子量が大きくなると1分子あたりの極性が低下するため分離が困難となる。更に分子量によって溶離速度も変わり、分離能に関わってくるため、カラムクロマトグラフィーで目的物を単離するためには、その不純物の種類と含量によって充填剤、溶離液の選択が必要であり、更には展開時の条件の最適化も必要となる。上述したようにカラムクロマトグラフィーでの精製は、使用する吸着剤量、溶剤量共に大量であり、さらに操作が非常に煩雑であり、目的のポリオキシアルキレン誘導体の分子量やそれに含有する不純物によってはこの方法での精製は不可能である。
【0015】
更に、特許文献3(US5,298,410)や特許文献4(特表2008-514693)はメトキシポリエチレングリコールの水酸基をジメチルトリチル基や酢酸エステル基またはフタル酸エステル基にて修飾することにより、極性の違いを増幅してカラムクロマトグラフィーによって分取する方法が示されている。しかしながら、この製法は、末端水酸基を一旦化学修飾し、これを用いてカラム精製後脱保護し、その後、もう一度水酸基に戻す必要があるため工程が非常に煩雑であることと、化学修飾を施しているために新たな化学種の不純物を生じさせる問題がある。また、特に高分子量になると、末端の極性の差が小さくなり、分離が困難になると考えられる。
【0016】
(片末端OHの精製方法の例-イオン交換樹脂を使用したバッチ処理)
一方、特許文献5(WO2006/028745)においては、ポリカルボン酸からなるイオン交換樹脂に対して化学修飾なしにメトキシポリエチレングリコールを作用させ、ジオール体を吸着させ除去を行なう例が示されている。この技術は分子量30,000の高分子量体においても有効な精製方法であることが示されている。しかしながら、この吸着の原理はポリエチレングリコール分子内のエーテル酸素と樹脂中のカルボン酸との相互作用を利用した、やはり分子量の大きさの差による分離であるために、ジオール体の分子量がメトキシポリエチレングリコールの分子量と同等や近い場合には適応できない。
【0017】
以上より、高分子量の片末端に水酸基を持つポリオキシアルキレン誘導体から、高分子量のジオール体を除去するのは困難であり、更には主成分の分子量以下の分子量を持つジオール体の除去については技術的に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平11-335460号
【特許文献2】US2006/0074200
【特許文献3】US5,298,410
【特許文献4】特表2008-514693
【特許文献5】WO2006/028745
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Macromol. Chem., 189,1809-1817(1988) Leonardら
【非特許文献2】J. BioactiveCompatible Polymers, 16,206-220(2001) Lapienisら
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、主成分中に含まれる分子中の含有水酸基数の異なる不純物を削減し、高純度かつ高分子量であるポリオキシアルキレン誘導体を製造する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、高分子量のポリオキシアルキレン誘導体を非プロトン性有機溶剤中で、アルミニウムとケイ素との少なくとも一方を含む酸化物からなる無機系吸着剤を用いて吸着操作を行うことにより、分子内の含有水酸基数の違いにより、その分子量に関らず分離し、高純度かつ高分子量のポリオキシアルキレン誘導体を得ることができる精製方法である。本発明によるとカラムクロマトグラフィーを行うことなく、吸着剤をろ過助剤のように始めからポリオキシアルキレン誘導体を溶解させた溶液中に混合させてろ過する形態のみで、非常に簡便に精製することが出来る方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば目的物の分子量、不純物の分子量、また、構造やそれに含まれる官能基に関らず、水酸基の数の差で高純度に精製が可能である。更には、本発明は操作が容易であるため、工業的な製造までスケールアップによる再現性も良く、非常に適した精製方法といえる。本発明の精製方法で得られた高分子量のポリオキシアルキレン誘導体は、不純物含量が少なく高純度である。また、本発明の製造方法で製造することにより、高純度のものが容易に得られる。本発明の高分子量のポリオキシアルキレン誘導体を用いて修飾した生体関連物質は、不純物が少なく安全性、安定性に優れており、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】処理前の試料、実施例6の処理後の試料A、および比較例2の処理後の試料Bの各分析結果を示すチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の詳細は、一般式[1]で示される分子量8,800〜100,000からなるポリオキシアルキレン誘導体を、以下の操作を含む吸着処理工程により精製する方法である。
【0025】
【化1】
【0026】
Zは、2〜8個の活性水素を持つ化合物の残基であり、具体的な化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトールなどの多価アルコール類、またはリジンやグルタミン酸など、アミノ基、カルボキシル基、またはチオール基を持つアミノ酸やペプチド、または有機アミン、有機カルボン酸などの化合物が挙げられる。ここで残基とは、水酸基、及びカルボキシル基の場合は、脱水酸基残基であり、アミノ基、2級アミノ基、チオール基の場合は脱水素残基のことを言う。
【0027】
Y1及びY2は、Zとポリオキシアルキレン鎖との間の結合基であり、共有結合であれば特に制限はないが、好ましくは、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、2級アミノ基、及びそれらを含むアルキレン基が挙げられる。前記アルキレン基部分として好ましいものはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、へキシレン基などが挙げられ、これらは分岐していてもよい。より好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基である。具体的な結合基としては、Zの活性水素基によって異なり、より好ましいY1及びY2の例を以下に示す。
【0028】
Zの水酸基にポリオキシアルキレン誘導体を結合する場合、
-O-、 -OCONH(CH2)2or3O-、 -O(CH2)2or3NHCO(CH2)1〜5O-、
-O(CH2)2or3NHCOO-、
【0029】
Zのアミノ基にポリオキシアルキレン誘導体を結合する場合、
-CO(CH2)1〜5O-、 -COO-、-CO-、
【0030】
Zのカルボキシル基にポリオキシアルキレン誘導体を結合する場合、
-O-、 -NH(CH2)2or3O-
【0031】
Zのチオール基にポリオキシアルキレン誘導体を結合する場合、
-S-
【0032】
Polymer1及びPolymer2は、直鎖もしくは分岐の炭素数2〜4のポリオキシアルキレン鎖である。具体的なポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシ−1−エチルエチレン、ポリオキシ−1、2−ジメチルエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシトリメチレン、及びそれらのブロック共重合体、またはランダム共重合体が挙げられる。医薬用途においては、血液中に薬物を溶解させる必要があるため、その修飾剤としてのポリオキシアルキレン誘導体は水溶性の高いものが望まれる。そのため、好ましいポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンであり、より好ましくはポリオキシエチレンである。分岐のポリオキシアルキレン鎖とは途中にリンカーを介し、2鎖またはそれ以上に分岐しているポリオキシアルキレン鎖であり、分岐点は複数あっても良い。例としては、下記式(i)に示すようなグリセリンなどの多価アルコールを分岐点とし、2鎖、またはそれ以上に分岐しているポリオキシアルキレン鎖である。
【0033】
【化2】

(ただし、n1は1〜2300であり、好ましくは20〜1000であり、更に好ましくは100〜1000である。n2は1〜1200であり、好ましくは20〜1000であり、より好ましくは100〜1000である。)
【0034】
Rは、炭素数1〜7の炭化水素基、または炭素数3〜9のアセタール基であり、具体的な炭化水素基、アセタール基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ジエチルアセタール基、ジメチルアセタール基、ジイソプロピルアセタール基、1,3−ジオキソランなどが挙げられ、好ましい炭化水素基としては、メチル基、t−ブチル基、ベンジル基であり、好ましいアセタール基としては、ジエチルアセタール基である。
【0035】
Xはアミノ基、保護アミノ基、保護カルボキシル基、アルデヒド基、保護アルデヒド基、水酸基、保護水酸基、チオール基、保護チオール基、スルホニル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、及びそれらを含むアルキレン基、または水素原子である。アルキレン基としては具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、へキシレン基などが挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、より好ましくはエチレン基である。Xについて、後述のnがn=1でPolymer2がある場合、Xはポリオキシアルキレン鎖末端の官能基となり、n=0でPolymer2がなく、結合基であるYに直接連結する場合、XはZに結合した前記官能基または前記官能基を含むアルキレン基となる。Xが水素原子であれば、Zのポリオキシアルキレン鎖の結合に関与しない活性水素基を表す。
【0036】
m及びnは、1または0、かつ1≦m+nであり、
a及びbは、0≦a≦8、0≦b≦、かつ2≦a+b≦8を満たす整数であり、
a及びbが2以上の整数の場合、Y1及びY2、Polymer1及びPolymer2、R、X、m、nは分子中で同一または異なっても良い。
【0037】
以下、各工程を詳細に説明する。
(A) 一般式[1]で示されるポリオキシアルキレン誘導体の5重量倍以上の非プロトン性有機溶剤を使用し、上記ポリオキシアルキレン誘導体を溶解する工程
【0038】
溶剤としては、非プロトン性溶剤でありかつ極性が低く、さらに、ポリオキシアルキレン誘導体の溶解性が高い溶剤が望ましい。非プロトン性有機溶剤としてはトルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフランが挙げられ、好ましい非プロトン性有機溶剤はトルエン、酢酸エチルであり、より好ましくはトルエンである。プロトン性の溶剤では、ポリオキシアルキレン誘導体と吸着剤との相互作用を阻害してしまうため好ましくない。
【0039】
溶剤量は、一般式[1]で示されるポリオキシアルキレン誘導体に対して5重量倍以上が望ましい。5重量倍未満だと溶液の粘性が高く精製効率が悪くなり、更には歩留も悪くなるため、5重量倍以上とすることが製造上有利である。溶剤量を30重量倍以上としても、精製効率は変化せず良好であるが、その後のろ過操作において、処理容量が多くなり、工数が増加し収量が少なくなり、コストの面で不利となる。これらの理由から、好ましい溶剤量は5〜30重量倍であり、より好ましくは10〜20倍である。
【0040】
上記溶剤を用いて、ポリオキシアルキレン誘導体の溶解を行う。処理容器へ仕込む順番はポリオキシアルキレン誘導体、非プロトン性有機溶剤のどちらからでも良い。ポリオキシアルキレン誘導体の分子量によっては加温が必要な場合があり、その方法については特に制限はないが、一般的には30℃以上に加温することで溶解することができる。
【0041】
(B) アルミニウムとケイ素との少なくとも一方を含む酸化物からなる無機系吸着剤を前記ポリオキシアルキレン誘導体の0.5〜5重量倍添加することで、スラリーを生成させる工程
【0042】
アルミニウムとケイ素との少なくとも一方を含む酸化物からなる無機系吸着剤とは、酸化物中にアルミニウム原子とケイ素原子との一方または双方を含む酸化物である。具体的には、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との複合酸化物、酸化アルミニウムと他の金属との複合酸化物、二酸化ケイ素と他の金属との複合酸化物が挙げられる。ここで言う他の金属としては、ナトリウム、マグネシウム、カルシウムの酸化物が挙げられる。
上記吸着剤は単独、または複合して使用してもよい。
本発明は、分子中の水酸基数により分離する方法であるため、水酸基との相互作用のある吸着剤が有利であり、好ましい無機系吸着剤は、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、アルミニウムとケイ素からなる複合酸化物であり、更に好ましくは(Al2O3) 、(SiO2)
、(Al2O3・H2O)
、(Al2O3・9SiO2・H2O)であり、特に好ましくは、(Al2O3)
、(SiO2) 、(Al2O3・H2O) であり、最も好ましくは(Al2O3・H2O)である。
具体的な例としては、活性アルミナ(Al2O3)、シリカゲル(SiO2)、協和化学工業(株)製のキョーワードシリーズのキョーワード200B(Al2O3・H2O)、キョーワード700(Al2O3・9SiO2・H2O)、キョーワード2000(Mg0.7Al0.31.15)、キョーワード300(2.5MgO・Al2O3・XH2O) (xは9≦x≦11)が挙げられる。
【0043】
吸着剤量は、一般式[1]で示されるポリオキシアルキレン誘導体に対して0.5〜5重量倍の範囲が望ましい。0.5未満だと十分な精製効果が得られず、5重量倍より多くなると、処理量が多く歩留低下し、工数が増加する。これらの理由から、ケースA,B,Cの場合は、吸着剤量は1〜3重量倍が好ましく、より好ましくは2重量倍であり、ケースD、Eの場合、吸着剤量は2〜5重量倍が好ましく、より好ましくは3重量倍である。
【0044】
(C) 25℃以上で前記スラリーを攪拌する工程
この工程は、工程(B)の溶液に吸着剤を加えて吸着剤のスラリーとし、吸着処理する工程である。処理温度は25〜80℃が好ましい。25℃より低温では、溶液の粘性が高く精製効率が悪くなる。また、ポリオキシアルキレン誘導体の構造や分子量によっては結晶が析出してしまうため、25℃以上が望ましい。好ましい温度範囲としては、40〜100℃であり、より好ましくは40〜60℃である。上記温度範囲にてスラリーを不活性ガス雰囲気下または吹き込みながら30分以上攪拌を行い、吸着処理を行う。この操作により、分子中の水酸基数の多いポリオキシアルキレン誘導体が吸着剤に吸着される。
【0045】
(D)前記スラリーから前記ポリオキシアルキレン誘導体を回収する工程
この工程は、上記工程(C)の吸着処理溶液から吸着剤と溶剤の除去を行い目的のポリオキシアルキレン誘導体を単離する工程である。吸着剤の除去方法はろ過により、一般的には、減圧濾過、または加圧ろ過によって除去を行う。この際、ろ過時の温度の低下による結晶の析出を予防する目的で予めろ過器を工程(C)の処理温度と同じに加温しておくことが望ましい。ろ過後、目的のポリオキシアルキレン誘導体は、不純物ポリオキシアルキレンより水酸基が少ない場合はろ液に含有され、水酸基が多い場合はろ過ケーキに含有される。ろ液、ろ過ケーキからの目的のポリオキシアルキレンの単離方法は異なっており、ろ液から単離する場合、不純物よりも溶剤の除去は、特に制限はないが、減圧留去による方法、若しくは再沈殿による方法が好ましい。ろ過ケーキから単離する場合、ろ過ケーキに有機溶剤を添加して、再度前記方法により吸着剤を除去し、更に前記方法にて溶剤の除去を行う。
【0046】
それぞれの場合について、以下に説明する。
工程(D)において、目的物のポリオキシアルキレン誘導体が不純物のポリオキシアルキレン誘導体よりも水酸基が少ない場合、吸着剤との相互作用が不純物よりも小さいため、ろ液中に目的物が存在し、不純物は吸着剤に残存する。そのため、工程(D)において、ろ過後のろ液から減圧留去による方法、若しくは再沈殿による方法により、目的物を単離する。
この方法に該当する代表的なポリオキシアルキレン誘導体を以下に挙げる。
【0047】
(ケースAの水酸基を1個有する直鎖のポリオキシアルキレン誘導体において、水由来の不純物ジオール体を除去する場合)
一般式[1]において、
a及びbがそれぞれ、a=1、b=1であり、m及びnがそれぞれ、m=1、n=0である。
Zは、2個の水酸基を持つ化合物の脱水酸基残基である。具体的な化合物としては、エチレングリコールが挙げられる。
Y1及びY2は、Zとポリオキシアルキレン鎖との間の結合基であり、エーテル結合である。
Polymer1は、炭素数2〜4の直鎖のポリオキシプロピレン鎖であり、好ましいポリオキシアルキレン鎖としてはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンであり、より好ましくはポリオキシエチレンである。
Rは、炭素数1〜7の炭化水素基、3〜9個の炭素原子を含むアセタール基であり、好ましくはメチル基、t−ブチル基、ベンジル基、ジエチルアセタール基であり、より好ましくはメチル基、ジエチルアセタール基、更に好ましくはメチル基である。
Xは水素原子である。
【0048】
(ケースBの分岐型のポリオキシアルキレン誘導体において、直鎖または分岐型のポリオキシアルキレン誘導体で水酸基を有する不純物ポリオキシアルキレン誘導体を除去する場合)
一般式[1]において、
a及びbがそれぞれ、0≦a≦8、0≦b≦、かつ2≦a+b≦8を満たす整数であり、m及びnがそれぞれ、m=1または0、n=1である。
Zは、多価アルコール類、またはアミノ酸やペプチドの残基であり、好ましい多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、より好ましくはグリセリンである。好ましいアミノ酸としては、リジン、グルタミン酸である。
Y1及びY2は、Zとポリオキシアルキレン鎖との間の結合基であり、共有結合であれば特に制限はないが、好ましくは、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、2級アミノ基、及びそれらを含むアルキレン基が挙げられる。アルキレン基として好ましいものはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、へキシレン基などが挙げられ、より好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基である。具体的な結合基としては、Zの活性水素基によって異なり、好ましいY1及びY2の例を以下に示す。
【0049】
Zの水酸基にポリオキシアルキレン誘導体を結合する場合、
-O-、 -OCONH(CH2)2or3O-、 -O(CH2)2or3NHCO(CH2)1〜5O-、
-O(CH2)2or3NHCOO-、
【0050】
Zのアミノ基にポリオキシアルキレン誘導体を結合する場合、
-CO(CH2)1〜5O-、 -COO-、-CO-、
【0051】
Zのカルボキシル基にポリオキシアルキレン誘導体を結合する場合、
-O-、 -NH(CH2)2or3O-
【0052】
Zのチオール基にポリオキシアルキレン誘導体を結合する場合、
-S-
【0053】
Polymer1及びPolymer2は、直鎖、もしくは分岐の炭素数2〜4のポリオキシアルキレン鎖であり、好ましいポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンであり、より好ましくはポリオキシエチレンである。
【0054】
Rは、炭素数1〜7の炭化水素基、または炭素数3〜9のアセタール基であり、好ましくは、メチル基、t−ブチル基、ベンジル基、ジエチルアセタール基であり、より好ましくはメチル基である。
【0055】
Xは保護アミノ基、保護カルボキシル基、保護アルデヒド基、保護水酸基、保護チオール基、シアノ基、及びそれらを含むアルキレン基である。アルキレン基は、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、より好ましくはエチレン基である。
【0056】
好ましいXとしては下記(ii)、(iii)、(iv)、(v)に示すものである。
【0057】
【化3】

【0058】
さらにa及びbが2以上の整数の場合、上記記載のY1及びY2、Polymer1及びPolymer2、R、X、m、nは分子中で同一または異なっても良い。
ケースBにおける具体的な形態の例として表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
(ケースCのポリオキシアルキレン誘導体において、末端水酸基をメトキシ基などの炭化水素基やアセタール基またアミノ基の前駆体であるシアノ基やアミノ基の保護基などに変性させた際に残存する、未反応の水酸基を有する不純物ポリオキシアルキレン誘導体を除去する場合)
【0061】
一般式[1]において、
a及びbがそれぞれ、0≦a≦8、0≦b≦、かつ2≦a+b≦8を満たす整数であり、m及びnがそれぞれ、1または0、かつ1≦m+nである。
Zは、多価アルコール類の脱水酸基残基であり、好ましい多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトールである。
Y1及びY2は、Zとポリオキシアルキレン鎖との間の結合基であり、エーテル結合である。
【0062】
Polymer1及びPolymer2は、直鎖、もしくは分岐の炭素数2〜4のポリオキシアルキレン鎖であり、好ましいポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンであり、より好ましくはポリオキシエチレンである。
【0063】
Rは、炭素数1〜7の炭化水素基、または炭素数3〜9のアセタール基であり、好ましくは、メチル基、t−ブチル基、ベンジル基、ジエチルアセタール基であり、より好ましくはメチル基である。
【0064】
Xは保護アミノ基、保護カルボキシル基、保護アルデヒド基、保護水酸基、保護チオール基、シアノ基、及びそれらを含むアルキレン基である。アルキレン基は、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、より好ましくはエチレン基である。
【0065】
好ましいXとしては下記(iii)、(iv)、(v)に示すものである。
【化4】
【0066】
さらにa及びbが2以上の整数の場合、上記記載のY1及びY2、Polymer1及びPolymer2、R、X、m、nは分子中で同一または異なっても良い。
【0067】
ケースCにおける具体的な形態の例として表2、3に示す。
【表2】

【表3】

【0068】
工程(D)において、目的物のポリオキシアルキレン誘導体が不純物のポリオキシアルキレン誘導体よりも水酸基が多い場合、目的物の水酸基数が多いために吸着剤との相互作用が不純物よりも大きく、工程(C)において、ろ液中に不純物が存在し、目的物は吸着剤に残存することとなるため、工程(D)の後に更に以下に示す工程(E)が必要となる。
【0069】
(E)スラリー溶液をろ過、ろ過ケーキより式(1)の化合物を回収する工程
【0070】
この工程は、工程(C)の後、ろ過ケーキ回収し有機溶剤を添加し、再度ろ過を行う工程である。使用する有機溶剤は極性溶剤が有利であり、メタノール、またはエタノールなどのプロトン性溶剤が好ましく、より好ましくはエタノールである。溶剤量については特に制限はないが、上記ポリオキシアルキレン誘導体に対して5重量倍以上が望ましい。処理温度は40℃以上が好ましい。ろ過による吸着剤の除去は特に制限はないが、一般的には、減圧濾過、または加圧ろ過によって除去を行う。この際、ろ過時の温度の低下による結晶の析出を予防する目的で予めろ過器を処理温度と同じ温度に加温しておくことが望ましい。また、ろ過後に予め処理温度と同じ温度に加温したメタノール、またはエタノールを用いてろ過ケーキを洗浄することにより、歩留の向上が望まれる。回収したろ液からの溶剤の除去は、特に制限はないが、減圧留去による方法、若しくは再沈殿による方法が好ましい。
【0071】
この方法に該当するポリオキシアルキレン誘導体を以下に挙げる。
(ケースDの水酸基を3個有する分岐型のポリオキシアルキレン誘導体で水由来のジオール体を除去する場合)
一般式[1]において、
a及びbがそれぞれ、a=0または1、2≦b≦、かつ3≦a+b≦を満たす整数であり、m及びnがそれぞれ、m=0、n=1である。
Zは、多価アルコール類の脱水酸基残基であり、好ましい多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトールであり、より好ましくはグリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトールである。
Y1及びY2は、Zとポリオキシアルキレン鎖との間の結合基であり、エーテル結合である。
Polymer1及びPolymer2は、直鎖、もしくは分岐の炭素数2〜4のポリオキシアルキレン鎖であり、好ましいポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンであり、より好ましくはポリオキシエチレンである。
Rは、炭素数1〜7の炭化水素基、または炭素数3〜9のアセタール基であり、好ましくは、メチル基、t−ブチル基、ベンジル基、ジエチルアセタール基であり、より好ましくはベンジル基である。
Xは水酸基を含むアルキレン基であり、好ましいアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
【0072】
(ケースEの分岐型のポリオキシアルキレン誘導体において、未反応の片末端が水酸基である直鎖のポリオキシアルキレン誘導体を除去する場合)
一般式[1]において、
a及びbがそれぞれ、0≦a≦8、0≦b≦、かつ2≦a+b≦8を満たす整数であり、m及びnがそれぞれ、1または0、かつ1≦m+nである。
Zは、多価アルコール類、またはアミノ酸やペプチドなどの化合物であり、好ましい多価アルコール、アミノ酸としては、エチレングリコール、グリセリン、リジン、グルタミン酸である。
Y1及びY2は、Zとポリオキシアルキレン鎖との間の結合基であり、好ましくは、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、2級アミノ基、及びそれらを含むアルキレン基が挙げられる。アルキレン基として好ましいものはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、へキシレン基などが挙げられ、より好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基である。具体的な結合基としては、Zの活性水素基によって異なり、好ましいY1及びY2の例を以下に示す。
【0073】
Zの水酸基にポリオキシアルキレン誘導体を結合する場合、
-O-、 -OCONH(CH2)2or3O-、 -O(CH2)2or3NHCO(CH2)1〜5O-、
-O(CH2)2or3NHCOO-、
【0074】
Zのアミノ基にポリオキシアルキレン誘導体を結合する場合、
-CO(CH2)1〜5O-、 -COO-、-CO-、
【0075】
Zのカルボキシル基にポリオキシアルキレン誘導体を結合する場合、
-O-、 -NH(CH2)2or3O-
【0076】
Zのチオール基にポリオキシアルキレン誘導体を結合する場合、
-S-
【0077】
Polymer1及びPolymer2は、直鎖、もしくは分岐の炭素数2〜4のポリオキシアルキレン鎖であり、好ましいポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンであり、より好ましくはポリオキシエチレンである。
Rは、炭素数1〜7の炭化水素基、または炭素数3〜9のアセタール基であり、好ましくは、メチル基、t−ブチル基、ベンジル基、ジエチルアセタール基であり、より好ましくはメチル基である。
Xは、アミノ基、保護アミノ基、保護カルボキシル基、アルデヒド基、保護アルデヒド基、水酸基、保護水酸基、チオール基、保護チオール基、シアノ基、及びそれらを含むアルキレン基、または水素原子である。アルキレン基として好ましいものはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、へキシレン基などが挙げられる。好ましいXは、水酸基を含むアルキレン基、または水素原子である。
さらにa及びbが2以上の整数の場合、上記記載のY1及びY2、Polymer1及びPolymer2、R、X、m、nは分子中で同一または異なっても良い。
【0078】
ケースEにおける具体的な形態の例として表4に示す。
【表4】
【0079】
ケースAからEにおけるポリオキシアルキレン誘導体の分子量は8,800〜100,000であるが、近年の医療用途におけるポリオキシアルキレン誘導体はその血中滞溜性の向上と共に生理活性物質の活性を低下を防ぐため、所望されるポリオキシアルキレンの分子量は増大傾向にある。そのため、好ましいポリオキシアルキレン誘導体の分子量は10,000〜100,000であり、より好ましくは20,000〜100,000、更に好ましくは30,000〜100,000である。
【0080】
上記記載の工程(A)〜(D)または(A)〜(E)の操作は繰り返し行ってもよく、特に不純物が多い場合には繰り返し行うことによって純度を向上することができる。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
また、得られるポリオキシアルキレン誘導体の純度に関して、高分子の分子量分布をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定を行った。以下にその測定法を記載する。
【0082】
GPCシステムとしてはSHODEX GPC SYSTEM -11を用い、
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1ml/min、カラム:SHODEX KF-801,KF-803, KF-804 ( 8mmI..D X 30cm )、カラム温度: 40℃、検出器: R I X 8、サンプル量:1mg/g、注入量:100ul
GPC測定値には、高分子量不純物と低分子量不純物を、メインピークとの溶出曲線の変曲点からベースラインに対して垂直に分割し、得られた各ピークの面積値から各ピークの面積百分率を算出する。
【0083】
(実施例1-1)
メトキシポリエチレングリコール(以降mPEGと表す)(分子量:30,000、ジオール含量:2.81%):100gとトルエン:1500g(1700mL)を5L四つ口フラスコに仕込み、スリーワンモーター、冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、55℃で溶解した。これにキョーワード200B(協和化学工業)200g添加し、55℃で1時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行い、ろ液を回収した。回収したろ液にヘキサン1000gを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料を回収した(50g)。
GPC分析の結果、試料のジオール体含量は0.3%であった。
【0084】
実施例1-2〜24について、メトキシポリエチレングリコールの分子量、溶剤種、溶剤量、吸着剤種、吸着剤量の条件を変更し、実施例1の操作に準じて実験を行った結果を以下の表5〜11に示す。
【0085】
(実施例1-1〜1-7:溶剤種を変更した例)
mPEG(分子量:30,000、ジオール含量:2.81%):100gを以下の表記載の溶剤:1700mLを5L四つ口フラスコに仕込み、スリーワンモーター、冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、40℃前後で溶解した。これにキョーワード200B(協和化学工業)200g添加し、40℃〜55℃の溶剤の沸点以下の温度で1時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行いろ液を回収した。回収したろ液にヘキサン1000gを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料を回収した。また、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンに関しては、ろ液をエバポレーターにて濃縮後、酢酸エチル1000gに再溶解後、ヘキサン1000gを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料を回収した。
【0086】
【表5】
【0087】
以上の結果より、非極性非プロトン性でもトルエンや酢酸エチルなど極性が低いほど効果が大きい。
【0088】
(比較例1-1〜1-2:溶剤種を変更した例)
実施例1-1〜1-7の方法で、溶剤にプロトン性溶剤であるエタノールと非プロトン性溶剤では有るが極性の高いDMFを用いて操作を行った。結果を以下の表6に示す。
【0089】
【表6】

以上の結果より、プロトン性溶剤や極性の高い溶剤では精製効果が無かった。
【0090】
(実施例1-8〜1-13:溶剤量を変更した例)
mPEG(分子量:30,000、ジオール含量:2.81%):100gとトルエン:(量は表記載)を5L四つ口フラスコに仕込み、スリーワンモーター、冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、55℃で溶解した。これにキョーワード200B(協和化学工業)200g添加し、55℃で1時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行い、ろ液を回収した。回収したろ液にヘキサン1000gを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料を回収した。
【0091】
【表7】
【0092】
以上の結果より、溶剤量が少ないと精製効率及び歩留が悪く、溶剤量を増加させると精製効率、歩留は向上するが、20倍を超えると、殆ど精製効果は変わらない。
【0093】
(実施例1-14〜1-18:吸着剤種を変更した例)
mPEG(分子量:30,000、ジオール含量:2.81%):100gとトルエン:1500gを5L四つ口フラスコに仕込み、スリーワンモーター、冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、55℃で溶解した。これに以下の表記載の吸着剤200g添加し、55℃で1時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行い、ろ液を回収した。回収したろ液にヘキサン1000gを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料を回収した。
【0094】
【表8】
【0095】
以上の結果より、アルミニウムとケイ素との少なくとも一方を含む酸化物からなる無機系吸着剤では効果があった。
【0096】
(比較例1-3〜1-6:吸着剤種を変更した例)
実施例1-8〜1-13の方法で、吸着剤にアルミニウム、ケイ素の酸化物を含まない金属塩、または金属酸化物を用いて操作を行った。結果を以下の表9に示す。
【0097】
【表9】
【0098】
以上の結果より、アルミニウム、ケイ素の酸化物を含まないその他の金属酸化物や塩では精製効果が無かった。
【0099】
(実施例1-19〜1-22:吸着剤量を変更した例)
mPEG(分子量:30,000、ジオール含量:2.81%):100gとトルエン:1500gを5L四つ口フラスコに仕込み、スリーワンモーター、冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、55℃で溶解した。これにキョーワード200B(協和化学工業):(量は表記載)を添加し、55℃で1時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行いろ液を回収した。回収したろ液にヘキサン1000gを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料を回収した。
【0100】
【表10】
【0101】
以上の結果より、吸着剤量が0.5倍でも十分な精製効果が見られるが、吸着剤量が多いほど精製効率は上がる。しかしながらそれに伴い歩留が悪化した。
【0102】
(実施例1-23〜1-24:メトキシポリエチレングリコールの分子量を変更した例)
mPEG(表記載):100gとトルエン:1500gを5L四つ口フラスコに仕込み、スリーワンモーター、冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、55℃で溶解した。これにキョーワード200B(協和化学工業):200gを添加し、55℃で1時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行いろ液を回収した。回収したろ液にヘキサン1000gを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料を回収した。
【0103】
【表11】
【0104】
以上の結果より、メトキシポリエチレングリコールの分子量が変わっても十分な精製効果があった。
【0105】
(実施例2)
mPEG(分子量:30,000、高分子量不純物量:2.81%):5kgとKW-200B:10kgを200Lのガラス反応釜に仕込みトルエン75kgを仕込んで55℃まで昇温後1時間攪拌した。これを5A相当のろ紙を敷いたろ過器を用いて加圧ろ過を行った。これを5回繰り返した。得られたろ液を60℃まで加温して、100kg程度トルエンを減圧留去した。その後、ヘキサン75kgを加えて晶析、析出した結晶をろ別を行い、真空乾燥後、試料12kgを回収した。
GPC分析の結果、試料の高分子量不純物量は0.3%であった。
【0106】
(実施例3-1)
下記(a)に示すα-(3,3-ジエトキシプロピル)-,ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン(分子量:20,000、ジオール体:2.88%):100gとトルエン1600gを3L四つ口フラスコに仕込み、スリーワンモーター、冷却管、検水管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、110℃まで加温し、含有する水分をトルエンと共沸させ還流脱水を行った。100gトルエンを留去した後、50℃まで冷却を行った。これにキョーワード200B(協和化学工業)200g添加し、55℃で1時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行い、ろ液を回収した。回収したろ液にヘキサンを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料を回収した(50g)。
GPC分析の結果、試料のジオール体は0.15%であった。
【0107】
【化5】
【0108】
(実施例3-2)
α-(3,3-ジエトキシプロピル)-,ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン(分子量:10,000、ジオール体:3.13%):252gとトルエン3753gを5L四つ口フラスコに仕込み、スリーワンモーター、冷却管、検水管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、110℃まで加温し、含有する水分をトルエンと共沸させ還流脱水を行った。100gトルエンを留去した後、50℃まで冷却を行った。これにキョーワード200B(協和化学工業)500g添加し、55℃で1時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行い、ろ液を回収した。回収したろ液にヘキサンを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料を回収した(116g)。
GPC分析の結果、試料のジオール体はN.D.であった。
【0109】
(実施例4-1)
下記(b)に示すα-(tert-ブチル)-,ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン(分子量:40,000、ジオール含量:6.54%):121gとトルエン:6000gを10Lガラス反応槽に仕込み、スリーワンモーター、冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、55℃で溶解した。これにキョーワード200B(協和化学工業)244g添加し、55℃で1時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行い、ろ液を回収した。回収したろ液にヘキサンを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料を回収した(65g)。
GPC分析の結果、試料のジオール体含量は1.05%であった。
【0110】
【化6】
【0111】
(実施例4-2)
α-(tert-ブチル)-,ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン(分子量:10,000、ジオール含量:2.99%):202gとトルエン:6004gを10Lガラス反応槽に仕込み、スリーワンモーター、冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、55℃で溶解した。これにキョーワード200B(協和化学工業)244g添加し、55℃で1時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行いろ液を回収した。回収したろ液を1200gになるまで濃縮した後、ヘキサンを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料を回収した(105.2g)。
GPC分析の結果、試料のジオール体含量はN.Dであった。
【0112】
(実施例5)
ケースBでの精製が可能であることを証明するため、下記(c)に示すグリセリン骨格に2本のポリオキシエチレン鎖を有する分岐型のポリオキシエチレン誘導体(分子量:40,000)に分子量20,000のメトキシポリエチレングリコールを添加したサンプル(分子量20,000のmPEG含量:11.9%)を調製し、精製を行った。調製したサンプル:2.25gとトルエン:40gを100mL四つ口フラスコに仕込み、スリーワンモーター、冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、55℃で溶解した。これにキョーワード200B(協和化学工業)5g添加し、55℃で1時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行いろ液を回収した。回収したろ液にヘキサンを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、乾燥を行い、試料を回収した(1.22g)。GPC分析の結果、試料の分子量20,000のメトキシポリエチレングリコール不純物含量は9.1%であった。更にこの操作を繰り返した結果、GPC分析では試料の分子量20,000のメトキシポリエチレングリコール不純物含量は5.1%まで低減できた。
【0113】
【化7】
【0114】
(実施例6および比較例2)
本発明が分子量に関わらずジオール体の除去が可能であることを証明するため、主成分の倍の分子量を持つジオール体と主成分の半分の分子量を持つジオール体をそれぞれ3〜4%含むmPEGサンプルを調整し、本発明の処理を行った。この際、比較として、このサンプルを用いて特許文献5(WO2006/028745)に記載の方法で処理を行った。以下に詳細を示す。
【0115】
mPEGサンプル(分子量:40,000、ジオール含量:分子量80,000:2.98%、分子量20,000:3.91%):10gとトルエン:150gを300mL四つ口フラスコに仕込み、スリーワンモーター、冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、55℃で溶解した。これにキョーワード200B(協和化学工業)20g添加し、55℃で1時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行いろ液を回収した。回収したろ液にヘキサンを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料Aを回収した(5g)。
【0116】
mPEGサンプル(分子量:40,000、ジオール含量:分子量80,000:2.98%、分子量20,000:3.91%):10gとイオン交換水1000gを2L四つ口フラスコに仕込み、スリーワンモーター、冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、マントルヒーターを使用して、60℃で溶解した。これにDOWEX(DOW
Chemical社)(ポリアクリル酸樹脂)30g添加し、60℃で3時間攪拌を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行いろ液を回収した。クロロホルム1kgを加えて抽出を行い、これを2回繰り返した。クロロホルム層を濃縮し、その後、酢酸エチル200gを加えて再度溶解し、硫酸マグネシウム10gを加えて脱水を行った。5Aのろ紙を引いたヌッチェを用意し、吸引ろ過を行いろ液を回収した。回収したろ液にヘキサンを加えて晶析、析出した結晶をろ別し、真空乾燥を行い、試料Bを回収した(5g)。
表12および図1に結果を示す。
【0117】
【表12】
【0118】
上記結果のように特許文献5(WO2006/028745)に記載の方法では高分子量のジオール体は除けたものの、低分子量のジオール体は殆ど除去されず、低分子量のジオール体不純物を含む場合適応できないのに対し、本発明ではジオール体を分子量に関らず同時に除去が可能であることが判った。
図1