特許第5713297号(P5713297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5713297排泄物処理用無吸水材の製造方法及び、排泄物処理用無吸水材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713297
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】排泄物処理用無吸水材の製造方法及び、排泄物処理用無吸水材
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   A01K1/015 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-16211(P2012-16211)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-153678(P2013-153678A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2012年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】597098257
【氏名又は名称】株式会社コ−チョ−
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 光史
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−300102(JP,A)
【文献】 特開平03−030619(JP,A)
【文献】 特開2008−136454(JP,A)
【文献】 特開2010−41966(JP,A)
【文献】 特開2006−345830(JP,A)
【文献】 特開2002−335788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の素材を主成分として含むペット用の排泄物処理用無吸水材の製造方法であって、
前記素材としての粉砕した木材に植物由来の結合剤であるコーンスターチ又は澱粉と、水と、合成樹脂からなる撥水剤を少なくとも加えて混合し、水分を10〜15質量%として得た混合物に対し、常温下で、線接触として600〜800kgf/cmの圧力をかけながら押し出して円柱状に造粒し、造粒して得られた造粒物を水分が3質量%以下になるまで乾燥する工程を含む、
ことを特徴とする排泄物処理用無吸水材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排泄物処理用無吸水材の製造方法を用いて得られた排泄物処理用無吸水材であって、
生理食塩水に浸漬し、その10分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の125質量%以下であり、20分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の140質量%以下であり、30分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の155質量%以下であり、かつ、30分経過後も非崩壊となる、
ことを特徴とする排泄物処理用無吸水材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬や猫など、小動物の糞尿を廃棄処理する際に使用され、特に、適度な無吸水性を備えた排泄物処理用無吸水材を製造することが可能な排泄物処理用無吸水材の製造方法及び、この製造方法を用いて得られる排泄物処理用無吸水材に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫などのペットを室内で飼育するとき、糞尿を廃棄処理するための排泄物処理材が欠かせない。この種の排泄物処理材は、一般家庭で使用されるから、脱臭力、抗菌性に優れ、焼却又はトイレ等に流すといった処分が可能で、衛生的であることが望まれている。出願人は、例えば、下記特許文献1において、檜を主体とした木粉を使用して吸水性に優れた粒状体を製造できるペット用排泄物処理材の製造方法を提案している。
【0003】
ペット用排泄物処理材は、ペットが排泄する尿を素早く通過させる撥水性のものと、尿を積極的に吸収する吸水性のものとの2種類が、2層に区画されたペット用トイレにそれぞれ敷設される。ペット用トイレの上層部分に敷設されるのが撥水性のペット用排泄物処理材であり、下層部分に敷設されるのが吸水性のペット用排泄物処理材である。
【0004】
この中で、撥水性のペット用排泄物処理材に関し、植物由来の素材を主成分として構成されたペット用排泄物処理材に係る発明が下記特許文献2に提案され、適度な膨潤度合いを備えることで、消臭性の強化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−4815号公報
【特許文献2】特許第3788625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2では、造粒工程において混合物を、接着剤として用いられる合成樹脂の融点以上に加熱する必要があり、エネルギー的に有利な製法ではないという問題がある。すなわち、常温下で造粒工程を実施しても圧密化した造粒物が造粒され、かつ適度な膨潤度合いを備えて消臭性の強化が図られたペット用排泄物処理材を製造することができれば、そのようなペット用排泄物処理材を安価に提供することができると期待される。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて提案され、製造工程を工夫し、常温下で造粒工程を実施することができ、かつ適度な膨潤度合いを備えて消臭性が強化された排泄物処理用無吸水材の製造方法及び、排泄物処理用無吸水材を提供することを目的とする。また、構成成分のほとんどを植物由来の材料で構成し、一般家庭で幼児等の誤飲に配慮する製品とするという目的もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、植物由来の素材を主成分として含むペット用の排泄物処理用無吸水材の製造方法であって、前記素材としての粉砕した木材に植物由来の結合剤であるコーンスターチ又は澱粉と、水と、合成樹脂からなる撥水剤を少なくとも加えて混合し、水分を10〜15質量%として得た混合物に対し、常温下で、線接触として600〜800kgf/cmの圧力をかけながら押し出して円柱状に造粒し、造粒して得られた造粒物を水分が3質量%以下になるまで乾燥する工程を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記排泄物処理用無吸水材の製造方法を用いて得られた排泄物処理用無吸水材であって、生理食塩水に浸漬し、その10分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の125質量%以下であり、20分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の140質量%以下であり、30分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の155質量%以下であり、かつ、30分経過後も非崩壊となることを特徴とする排泄物処理用無吸水材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る排泄物処理用無吸水材の製造方法では、素材としての粉砕した木材、植物由来の結合剤であるコーンスターチ又は澱粉、水及び、合成樹脂からなる撥水剤を混合し、水分を10〜15質量%として得られた混合物に対し、常温下で、線接触として600〜800kgf/cmの圧力をかけながら押し出して円柱状に造粒する。これにより、従来必要であった加熱工程を省くことでエネルギー的に効率的な製法として提供することができ、安価に排泄物処理用無吸水材を提供することが可能となる。さらに、植物由来の素材と植物由来の結合剤とで構成されているから、一般家庭で幼児等の誤飲に配慮した製品を製造することができる。
【0011】
また、本発明に係る排泄物処理用無吸水材では、本発明に係る排泄物処理用無吸水材の製造方法を用いて得ることにより、生理食塩水に浸漬し、その10分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の125%以下となり、20分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の140%以下となり、30分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の155質量%以下となるという適度な膨潤性を備えさせることができ、使用するに従って徐々に膨潤させることで、植物由来の素材が有する消臭性を持続的に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に関する一実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態は、本発明の構成を具現化した例示に過ぎず、特許請求の範囲に記載した事項を逸脱することがなければ種々の設計変更を行うことができる。
【0013】
まず、本発明に係る排泄物処理用無吸水材の製造方法について説明する。
【0014】
植物由来の素材としての木材、例えば、ヒノキを粉砕機に投入して粉砕し、粉砕した木材(以下、「粉砕後木粉」という。)をホッパーに貯蔵する。ホッパーに貯蔵することにより水分の吸収を防止するとともに、風による飛散等を防止する。その後、ホッパーから粉砕後木粉を取り出し、移送機で結合材としてのコーンスターチを所定量混合しながら移送し、混合機に投入し、水、撥水剤を所定量加えて混合物としての混練物とする。なお、混練物とする過程では、粉砕後木粉にコーンスターチを混合し、続いて撥水剤と水を加えるといった順で実施することが効率的な混合(混練)のために好ましい。加水量は、粉砕後木粉のおよそ10分の1の質量とすればよい。
【0015】
次に、孔が設けられたリングダイ及びこのリングダイを押圧するプレスロールを備える造粒機に混練物を投入し、常温で圧縮成形するとともに所定長さで切断することにより、円柱状に圧縮造粒し、造粒物とする。このとき混練物は、造粒機から線接触で600〜800kgf/cmの圧力を受ける。圧力を受けるのに加えて造粒機との摩擦、混練物同士の摩擦等により発熱し、コーンスターチが有するバインダーの機能が強化され、強固な円柱状に成形(造粒)されることになる。
【0016】
なお、上記の範囲を超えて圧力を高めれば、後述するふるい機で選別される不完全品が多くなるので好ましくない。一方、上記の範囲に届かない圧力とすれば、円柱状に成形されなかったり、円柱形状が乾燥中に維持できなくなったりして、やはり不完全品が多くなるので好ましくない。そして混練物に対して造粒時に与える圧力は、造粒機に一度に投入する混練物の量等に基づいて、上記の範囲内で適宜調整し、最も不完全品が少なくなるような圧力値を決定すればよい。また、造粒する混練物の水分は10〜15質量%であることが、強固な円柱状に成形されるために好ましい。造粒後の造粒物の水分は、造粒前に比べ約半分になる。
【0017】
その後、円柱状の造粒物を乾燥機に投入して加熱し、水分が3質量%以下になるまで除去する。なお、本実施形態では、造粒物を投入する入口と、乾燥させた造粒物が排出される出口をそれぞれ備えた乾燥機により乾燥し、その出口で水分が3質量%以下になったことを確認している。乾燥時間は、出口での造粒物の水分に基づいて決めればよい。
【0018】
最後に、乾燥させた造粒物を、ふるい機に移送し、所定の大きさの製品とそれ以外の不完全品とに選別する。所定の大きさのものを袋詰め機に送り、袋詰めを行う。袋詰めされる製品の大きさは、直径が6mm以下、長さ(高さ)が17mm以下である。それ以外の造粒物は、再度粉砕機に戻して活用する。
【0019】
ここで、本実施形態において、ふるい機で所定の大きさのものを選別する工程を、乾燥前(すなわち、造粒後)の造粒物に対して行ってもよい。この段階で選別することにより、乾燥機における熱エネルギーの不要な消費を抑えることができ、一連の工程を効率化することができるからである。
【0020】
撥水剤としては、ワックス系又はオレフィン系の合成樹脂を採用することができる。
【0021】
下記[表1]に、本発明に係る排泄物処理用無吸水材を構成する成分の混合時の質量比を示す。
【0022】
【表1】
【0023】
また、本発明に係る排泄物処理用無吸水材の製造方法を用いて製造された排泄物処理用無吸水材の撥水性テストの結果を下記[表2]に示す。なお、撥水性テストでは、製品(本発明)を20g、直径4mmの市販品(比較例1)を20g、直径6mmの市販品(比較例2)を20g、各々市販されている不織布製の袋体に入れ、生理食塩水に浸した。この袋体を所定時間経過時に取り出し、1分間の水切り(放置)後に質量を測定した。
【0024】
【表2】
【0025】
上記[表2]から理解されるように、本発明に係る排泄物処理用無吸水材では、生理食塩水に浸漬し、その10分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の125質量%以下であり、20分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の140質量%以下であり、30分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の155質量%以下であり、かつ、30分経過後も非崩壊となることが分かった。市販されている排泄物処理用無吸水材(比較例1,2)と比べ遜色ない撥水性を備えることも判明した。
【0026】
しかも、上記[表1]から理解されるように、本発明に係る排泄物処理用無吸水材の製造方法を用いて製造された排泄物処理用無吸水材は、バインダーにコーンスターチを用いるため、造粒時に加熱することを必要とせず、造粒機から線接触で600〜800kgf/cmの圧力を受けるのに加えて造粒機との摩擦、混練物同士の摩擦等により発熱し、コーンスターチが有するバインダーの機能が強化されていることが分かる。
【0027】
したがって、本発明に係る排泄物処理用無吸水材の製造方法は、結合剤に植物由来のコーンスターチを用いるとともに、線接触として600〜800kgf/cmの圧力をかけながら押し出して円柱状に造粒することで、常温下で円柱状に造粒することができる。そして、この製法より得られた本発明に係る排泄物処理用無吸水材は、生理食塩水に浸漬し、その10分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の125%以下となり、20分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の140%以下となり、30分経過後に取り出して1分間放置した後の質量が浸漬する前の155質量%以下となるという適度な膨潤性を備える。このようなヒノキ由来の排泄物処理用無吸水材は、使用するに従って徐々に膨潤するので、消臭性を持続して発揮することができる。
【0028】
以上、本発明の一実施形態を例示して詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。例えば、バインダーに関し、コーンスターチに代えて、固体から液体となることによらず、糊性を発揮することのできる植物由来の各種の澱粉等を用いることができる。
【0029】
また、植物由来の素材として上記実施形態では、ヒノキを例示して説明したが、木本又は草本の何れを用いることができ、それらの木質又は樹脂の粉砕物、種子油残渣、穀物外皮粉砕物、草本粉砕物などを例示することができる。特に成形性、消臭性能を鑑みれば、スギ科、マツ科又はヒノキ科等の針葉樹の粉砕物を用いることが好ましいといえる。
【0030】
また、本発明に係る排泄物処理用無吸水材は、製造工程の効率化とコスト低減とを両立させることも目的として創作され、この観点から、構成する成分の混合時の質量比を、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、適宜調整することができる。上記実施形態で例示して説明した混合時の質量比は、植物由来の素材である木材(ヒノキ)の質量比を、コスト低減を目的として必要最低限としたときの値を示している。