(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
環状のリムに着脱可能に取付けられる同じく環状のタイヤ外皮の環状空間部に、全体視でリング状にわん曲させると共に、横断面視で僅かに圧縮弾性変形させて嵌め込まれる直棒状をしたチューブであって、
当該チューブは、横断面視において、エラストマーから成る中芯の外側が、熱可塑性樹脂から成る多数本の樹脂糸群が任意に絡み付くことにより全体が弾性変形可能に成形された立体ネット体で被覆され、しかも、前記タイヤ外皮の環状空間部の中心の周長よりも僅かに長い長さを有するように直棒状に形成されて、
前記タイヤ外皮の環状空間部に前記チューブが直棒状のまま嵌め込まれて、当該チューブの長手方向の両端面は互いに反対方向に押し合って突き合わされていることを特徴とするノーパンクチューブ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、複数の実施例及び参考例のチューブC
1 〜C
5 及びその成形方法を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
最初に、
図1ないし
図4を参照して、本発明の実施例1のチューブC
1 用のチューブ長尺材C
01を、その成形方法とともに説明する。
図1(a),(b)は、それぞれチューブC
1 用のチューブ長尺材C
01の部分正面図、及び部分拡大斜視図であり、
図2は、同じく拡大横断面図であり、
図3は、チューブ長尺材C
01の成形方法を示す模式図であり、
図4は、溶融状態の多数本の糸状溶融樹脂R
1'が冷却水の表面に達した直後に互いに絡み合う状態を示す模式図である。チューブ長尺材C
01は、
図1及び
図2に示されるように、全体形状が長尺棒状となっていて、成形時において、熱可塑性樹脂から成る多数本の樹脂糸R
1 群が任意に絡み付いて、内部に連続した空隙部Vが形成されることにより立体ネット体Nにより全体が形成されている。チューブ長尺材C
01は、外力の作用により、絡み付いて互いに結合している樹脂糸R
1 自体の変形と、空隙部Vの存在とによって、原形状に対して自在に変形し、前記外力の解除により原形状に復元可能であって、弾性変形可能である。チューブ長尺材C
01の横断面形状は、ほぼ円形であって、後述のタイヤ外皮21の環状空間部22に僅かに圧縮されて嵌め込まれる大きさとなっている。チューブ長尺材C
01の全体積に対する空隙部Vの割合(空隙率)は、後述のように、成形時において調整可能である。
【0028】
次に、
図3及び
図4を参照して、チューブ長尺材C
01の成形方法について説明する。冷却水槽Jの水面Waの直上には、溶融樹脂原料R
0 の吐出ヘッドEH
1 が配置され、当該吐出ヘッドEH
1 の直下であって、冷却水槽Jの水面Waの部分には、樹脂糸群受け成形具Sが配置されている。吐出ヘッドEH
1 には、溶融状態の多数本の糸状溶融樹脂R
1'を吐出させるための細孔状の多数本の樹脂吐出孔51が垂直方向に形成されている。多数本の樹脂吐出孔51は、成形品であるチューブ長尺材C
01の横断面形状である円内に、周囲の別の樹脂吐出孔51に対して等間隔をおいて配置されている。樹脂糸群受け成形具Sは、ラッパ状(逆中空円錐状)をした受入れ部52の下方に中空円筒状の成形部53が上下方向に形成された構成である。受入れ部52の上端部の全周には、リング状の水噴出管54が配置され、ポンプPにより冷却水槽Jから吸引された冷却水Wが前記水噴出管54に送り込まれて、当該水噴出管54の下端部に設けられた噴出孔(図示せず)を通って受入れ部52の傾斜逆円錐面52aの上端部に落下されて、当該傾斜逆円錐面52aに沿って流れて、中空円筒状の成形部53の上端部に達する。このため、受入れ部52の傾斜逆円錐面52aには、吐出ヘッドEH
1 の樹脂吐出孔51から吐出される多数の糸状溶融樹脂R
1'が前記傾斜逆円錐面52aに当たっても粘着しないように、常時、水膜が形成されている。樹脂糸群受け成形具Sは、中空円筒状の成形部53の上端部が冷却水槽Jの水面Waに位置するように配置されている。中空円筒状の成形部53の内径は、成形されるチューブ長尺材C
01の外径に対応している。
【0029】
このため、吐出ヘッドEH
1 に熱可塑性樹脂の溶融樹脂原料R
0 が供給されて、多数の樹脂吐出孔51から糸状溶融樹脂R
1'が吐出されると、当該多数の糸状溶融樹脂R
1'は、ラッパ状の受入れ部52を通って、そのまま直下の成形部53に充満されている冷却水Wの水面に達する。これにより、多数の糸状溶融樹脂R
1'は、水の抵抗によりそのまま水中に進めなくなると共に、急激に水冷されることにより、水面上で任意の方向に広がって互いに絡み合い(
図4参照)、この状態で引っ張られて、樹脂糸群受け成形具Sの中空円筒状の成形部53内を下方に向けて水中に引き込まれて冷却されることにより、断面形状が定められる。また、受入れ部52の傾斜逆円錐面52aには、常時、冷却水Wが供給されて水膜が形成されているために、水面Waに達した糸状溶融樹脂R
1'の一部が他の糸状溶融樹脂R
1'と絡み合う際に、前記傾斜逆円錐面52aに乗り上げても、当該傾斜逆円錐面52aに付着されることはないと共に、成形部53には、温度の低い冷却水Wが常時供給されているために、絡み合った後の多数の糸状溶融樹脂R
1'の冷却効果も高められる。
【0030】
また、樹脂糸群受け成形具Sの成形部53で成形されたチューブ長尺材C
01は、冷却水槽J内を通過する際に、冷却水Wにより更に冷却されて、冷却水槽Jの外部において巻取機(図示せず)に巻き取られるために、巻取力(引張力)が作用している。ここで、吐出ヘッドEH
1 からの糸状溶融樹脂R
1'の吐出速度に対する成形されたチューブ長尺材C
01の巻取速度を調整することにより、成形されるチューブ長尺材C
01の空隙率の調整を行える。即ち、吐出速度に対して巻取速度を相対的に遅くすれば、樹脂糸R
1 が互いに絡み合った立体ネット体Nで構成されるチューブ長尺材C
01の全体積に対する空隙部の体積の割合が少なくなって、空隙率の低い、即ち、密度の高い立体ネット体で構成されるチューブ長尺材C
01が成形され、逆に、吐出速度に対して巻取速度を相対的に速くすれば、空隙率の高い立体ネット体で構成されるチューブ長尺材C
01が成形される。
【0031】
立体ネット体Nで構成されるチューブ長尺材C
01を構成する樹脂糸R
1 の材質としては、溶融押し出しが可能で、冷却により硬化して形状を保持する必要があることからして、熱可塑性を有する材料であることが必要であって、熱可塑性樹脂、或いは熱可塑性エラストマーが選択される。熱可塑性樹脂としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ABS、PA(ポリアミド)、PET(ポリエチレンフタレート)、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、スチレン系エラストマー、アミド系エラストマー等が上げられるが、タイヤチューブとして求められる物性、成形性(加工性)の点からして、TPUが優れる。
【0032】
そして、
図5ないし
図7を参照して、タイヤ外皮21の環状空間部22の中心Kの周長(L
0 )に対して〔1.01〜1.03)×L
0 〕の長さ(L)に切断されたチューブC
1 を、当該タイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込む方法について簡単に説明する。
図5に示されるように、リム23からタイヤ外皮21を取り外しておいて、1本棒状(直棒状)のチューブC
1 を横断面視で弾性変形させながら、前記タイヤ外皮21の環状空間部22に順次嵌め込んで、その両端面11を互い当接させる。環状空間部22にチューブC
1 が嵌め込まれたタイヤ外皮21の開口の両側に形成された各被係止部21aを、それぞれリム23の各係止部23aに係止させてタイヤTとする(
図6及び
図7参照)。ここで、
図7並びに後述の
図9、
図12及び
図14において、全部又は一部が立体ネット体Nで構成されるチューブC
1 〜C
4 の断面は、模式的にハッチング表示してある。なお、
図7において、24は、車輪25のスポークを示す。
【0033】
上記のようにして、リム23に係止されたタイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC
1 が嵌め込まれると、横断面視では、僅かに圧縮変形されるために、
図5に示されるように、チューブC
1 におけるリム23と対向する部分を除く全ての外周面が、当該タイヤ外皮21の内周面に弾接した状態で収容されると共に、
図7に示されるように、全体視でリング状にわん曲されて、タイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込まれたチューブC
1 の両端面11は、互いに反対方向の押圧力(F)により押し合って、互いに突き合わされた状態となる。このため、チューブC
1 は、嵌込み前においては1本棒状であるが、タイヤ外皮21に嵌め込むことにより、全体視でリング状にわん曲されたチューブC
1 は、機能上、その当接部の存在を殆ど認識させずに、換言すると、当該当接部の存在によりチューブC
1 としての不具合を一切生じさせることなく、恰も、一体のリング形状を有しているように作用する。なお、
図6において、2点鎖線は、チューブC
1 の圧縮変形前の原形状を示す。
【0034】
このように、多数本の樹脂糸R
1 の群が任意に絡み付くことにより全体が弾性変形可能に成形された立体ネット体Nで構成されるチューブC
1 は、横断面視で僅かに圧縮変形されると共に、長手方向視で両端面11が互いに当接して、突き合わされているため、タイヤTの走行時に地面から接地力を受けることにより、チューブC
1 が横断面視で弾性変形すると共に、衝撃力を受けた場合には、一時的に通常時よりも大きく弾性変形した後に、通常時の状態まで復元することにより、走行可能となる。また、チューブC
1 を構成する立体ネット体Nは、多数本の樹脂糸R
1 の群が任意に絡み付くことにより全体が弾性変形可能に成形されているために、内部全体に亘って連続した空隙部が形成されていて、当該空隙部の存在が、チューブC
1 の軽量化に大きく寄与しているために、チューブC
1 自体が軽量化される。
【0035】
このように、本発明に係るチューブC
1 は、軽量でありながら、タイヤ外皮21に嵌め込まれてタイヤTとして機能した場合には、タイヤTが本来的に必要とされる弾性復元力を有していて、通常の空気入りのチューブと遜色のない乗り心地性を確保できる。また、チューブC
1 の弾性復元力の程度、即ち、タイヤTの走行時における乗り心地性は、上記したチューブ長尺材C
01の成形方法の部分で説明したように、立体ネット体の内部に連続形成される空隙部の割合である空隙率を調整することにより、最適状態を選択可能である。
【実施例2】
【0036】
次に、
図8及び
図9を参照して、本発明の実施例2のチューブC
2 について説明する。
図8(a),(b)は、それぞれチューブC
2 用のチューブ長尺材C
02の部分斜視図、及び拡大横断面図であり、
図9は、チューブ長尺材C
02の成形方法を示す模式図である。チューブC
2 は、成形時において、前記チューブC
1 を構成する外周部の樹脂糸R
1 の群のみを溶融させることにより、網目構造の表面凹凸部(外周凹凸部)が緩和されて(細かくなって)、相対的に前記チューブC
1 よりも外周面が滑らかになっている点が構造的に異なる。チューブC
1 の外周部には、薄肉のスキン層1が形成されて、当該スキン層1に、前記チューブC
1 の外周面の凹部よりも小さな凹部2が部分的に残存している。即ち、チューブC
2 の外周部には、凹凸部は存在するが、後述の成形方法により外周面が滑らかに形成されているために、タイヤ外皮21に嵌め込まれた場合に、当該タイヤ外皮21の内周面との抵抗が小さくなると共に、当該タイヤ外皮21の内周面に馴染み易くなる。この結果、経年使用によっても、立体ネット体Nの外周部分を構成する樹脂糸R
1 の絡み付き状態が崩されたり、或いは当該絡み付き状態の崩れにより、樹脂糸R
1 が部分的に切離されなくなって、タイヤ外皮21の内周面に対するチューブC
2 の密着性が高まる。この結果、タイヤ外皮21に対するチューブC
2 の一体性が高まって、タイヤ走行時における微振動の発生を抑制できて、乗り心地性が高められる。
【0037】
次に、
図9を参照して、チューブ長尺材C
02の成形方法について簡単に説明する。冷却水槽Jの水面Waの直上には、チューブ長尺材C
01' の外周部のみを溶融させるためのトリミングヘッドTHが配置されている。成形品であるチューブ長尺材C
02は、中間成形品であるチューブ長尺材C
01' の外周部のみを溶融させて、スキン層1を形成させたものである。従って、チューブ長尺材C
01' は、前記チューブ長尺材C
01と同一の立体ネット構造を有しているが、当該チューブ長尺材C
01' 外径(D’)のみが当該チューブ長尺材C
01の外径(D)よりも溶融分だけ大きくなっている。トリミングヘッドTHには、上端から下端に向けて漸次内径が小さくなったテーパー中空孔61と、当該テーパー中空孔61の下端に連続して形成されたストレート孔状の中空成形部62とが連続して形成されている。中空成形部62の内径(d)は、成形品であるチューブ長尺材C
02の外径(D)と同一となっている(D’>D=d)。
【0038】
よって、トリミングヘッドTHを加熱させておいて、予め成形された中間成形品であるチューブ長尺材C
01' を当該トリミングヘッドTHのテーパー中空孔61及び中空成形部62を通過させると、チューブ長尺材C
01' の外径(D’)は、当該中空成形部62の内径(d)よりも大きいので、当該チューブ長尺材C
01' は、その外周部のみが部分的に溶融された直後に、冷却水槽J内に引き込まれることにより水冷されて、チューブC
2 用のチューブ長尺材C
02が成形される。このため、チューブ長尺材C
02の外周表層部には、トリミングヘッドTHの中空成形部62を通過する際の溶融によるスキン層1が形成されるため、チューブ長尺材C
02の外周面は、当該部分に形成される表面凹凸部が、チューブ長尺材C
01の表面凹凸部に比較して小さくなっているために、当該チューブ長尺材C
01に比較して滑らかになる。なお、スキン層1の厚さは、チューブ長尺材C
01' の外径(D’)と中空成形部62の内径(d)との差(D’−d)に比例し、チューブC
2 の弾性変形を阻害しない範囲内にする必要性を考慮すると、(0.5〜1)mmが望ましい。
【実施例3】
【0039】
次に、
図10及び
図11を参照して、本発明の実施例3のチューブC
3 について説明する。
図10は、タイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC
3 が嵌め込まれた状態の横断面図であり、
図11は、チューブC
3 用のチューブ長尺材C
03の成形方法の模式図である。チューブC
3 は、弾性材から成る中芯B
3 の外側が立体ネット体Nから成る被覆層M
3 で覆われた構成である。中芯B
3 の材質としては、タイヤに使用された場合にクッション性(反発弾性)が奏されることが不可欠であり、この観点から、熱可塑性エラストマー又はゴム、或いはこれらを発泡させたものが挙げられる。
【0040】
立体ネット体Nの構造は、上記したチューブC
1 ,C
2 に使用されているものと同一であって、熱可塑性樹脂から成る樹脂糸を絡み合せて立体化したものである。チューブC
3 は、熱可塑性エラストマー或いはゴムから成る中芯B
3 により弾性力が補強されるために、立体ネット体Nのみから成る前記チューブC
1 ,C
2 に比較して、耐変形荷重が大きくなるために、高荷重での使用において好適である。即ち、熱可塑性エラストマー或いはゴムから成る中芯B
3 により耐変形荷重を大きくしていると共に、被覆層M
3 を構成している立体ネット体Nによりチューブとしてのクッション性を高めており、中芯B
3 及び被覆層M
3 がそれぞれ異なる技術的役割を分担している点に特徴を有している。従って中芯B
3 の外径と、被覆層M
3 の外径(チューブC
3 の外径)との比は、耐変形性及びクッション性に、どの割合で重きを置いてチューブC
3 を設計するかの観点から定められる。
【0041】
また、
図11に示されるように、チューブC
3 用のチューブ長尺材C
03は、冷却水槽Jの水面Waの部分に配置された前記樹脂糸群受け成形具Sと、当該成形具Sの直上に配置された吐出ヘッドEH
3 との組み合せに係る装置で連続成形される。吐出ヘッドEH
3 からは、中芯B
3 用の中芯長尺材B
3'が上方から下方の樹脂糸群受け成形具Sに向けて連続して供給されると共に、当該中芯長尺材B
3'の出口部の周囲に設けられた多数の樹脂吐出孔51から糸状溶融樹脂R
1'が連続して吐出される。
【0042】
このため、吐出ヘッドEH
3 から、中芯長尺材B
3'と、その周囲に溶融状態の多数本の糸状溶融樹脂R
1'とが、直下の樹脂糸群受け成形具Sに向けて供給、或いは吐出されると、当該成形具Sの中空円筒状の成形部53に供給済の中芯長尺材B
3'の周囲の水面Waに多数本の糸状溶融樹脂R
1'が流下されて、チューブ長尺材C
01の成形方法において説明したように、水面Waにおいて多数本の糸状溶融樹脂R
1'が中芯長尺材B
3'の周囲において互いに絡み合った状態で、当該成形具Sの成形部53を通過することにより、全体が1本棒状に成形されて、多数本の糸状溶融樹脂R
1'が互いに絡み合うことにより成形された立体ネット体Nが前記中芯長尺材B
3'が外周面に一体となって成形されて、チューブ長尺材C
03が連続成形される。当該チューブ長尺材C
03を所定長さに切断することにより、前記チューブC
3 が得られる。
【0043】
次に、
図12及び
図13を参照して、本発明の参考例1のチューブC
4 について説明する。
図12は、タイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC
4 が嵌め込まれた状態の横断面図であり、
図13は、チューブC
4 用のチューブ長尺材C
04の成形方法の模式図である。チューブC
4 は、前記チューブC
3 とは逆に、立体ネット体Nから成るチューブ本体部31の外周部が被覆層M
4 で覆われた構成である。被覆層M
4 は、熱可塑性エラストマー又はゴム、或いはこれらを発泡させたもので成形される。
【0044】
チューブC
4 は、全体が立体ネット体NのみであるチューブC
1 に比較して、立体ネット体Nで構成されるチューブ本体部31の外周部の網目(凹凸部)が完全に覆い隠されて平滑となる。このため、熱可塑性エラストマー又はゴムから成る被覆層M
4 により、チューブの弾性力が増強されると共に、外周面が平滑となるために、タイヤ外皮21に嵌め込んだ状態において当該タイヤ外皮21との一体性が高められる結果、タイヤ走行時における微振動の発生を抑制できて、乗り心地性が一層に高められる。
【0045】
上記チューブC
4 は、
図13に示される吐出ヘッドEH
4 の使用により連続成形可能である。吐出ヘッドEH
4 は、冷却水槽Jの水面Waの直上に位置され、吐出口71から下方に向けてエラストマー原料E
0 が吐出される。吐出ヘッドEH
4 には、上方から下方に向けて、予め成形されたチューブ本体部31が供給されて、吐出ヘッドEH
4 内において、チューブ本体部31の全外周に所定厚のエラストマー原料E
0 が被覆された状態で前記吐出口71の部分から排出されて、直下の冷却水槽Jの水中に引き込まれることにより水冷されて、チューブC
4 用のチューブ長尺材C
04が連続成形される。
【実施例4】
【0046】
実施例4のタイヤチューブC
5 は、
図14に示されるように、中空円筒状の中芯B
5 の外側が、立体ネット体からなる被覆層M
5 で被覆された構成である。中芯B
5 が中空円筒状であるために、タイヤ外皮21に嵌め込んでタイヤTとして使用した場合に、軽量化されるのに加えて、中芯B
5 も断面視で変形可能であるために、反発弾性が高められて、乗り心地性が高められる。
【0047】
次に、
図15〜
図17を参照して、タイヤチューブC
1 の両端面である各突き合せ面の一体性を高める構造について説明する。
図15(a),(b)は、それぞれ端面に弾性接着剤Aが塗布されていないタイヤチューブC
1 、及び当該弾性接着剤Aが塗布されたタイヤチューブC
1'の部分斜視図であり、
図16(a)〜(c)は、タイヤチューブC
1'の端面に対する弾性接着剤Aの塗布範囲を示す図であり、
図17は、タイヤ外皮21にタイヤチューブC
1'が嵌め込まれたタイヤTの部分断面図である。設定長に接続されたタイヤチューブC
1 をタイヤ外皮21に嵌め込む直前に、当該タイヤチューブC
1 の一方の端面に弾性接着剤Aを塗布し、この状態で、一方の端面に弾性接着剤Aが塗布されたタイヤチューブC
1'をタイヤ外皮21に嵌め込んで、当該タイヤチューブC
1'の両端の突合せ面を前記弾性接着剤Aを介して接着させる。その後に、弾性接着剤Aは硬化されて、タイヤチューブC
1'の両端面(両突合せ面)は、互いに反対方向の突合せ力と弾性接着剤Aの接着力との双方の作用によって、一体化される(
図17参照)。このため、タイヤ外皮21に嵌め込まれた環状のタイヤチューブC
1'の両端面の部分は、他の一般部と同等の構造となって、当該両端面の部分のみが内側に僅かに倒れ込むという不具合を解消できて、即ち、環状のタイヤチューブC
1'の全周に亘る構造がほぼ同一となって、タイヤチューブC
1'の突合せ面の存在を認識できなくなって、タイヤTの走行中における、乗り心地性が高められる。
【0048】
弾性接着剤Aの特性としては、タイヤチューブをタイヤ外皮に嵌め込んだ後に硬化する一液性湿気硬化型の接着剤が好適であり、例えば、シリコーン変性ポリマー系弾性接着剤が挙げられる。また、中芯を用いていないタイヤチューブC
1 の端面における弾性接着剤Aの塗布範囲としては、
図16(a)〜(c)に示されるように、外周縁のみを除く端面の全域の場合、外周部のみにリング状に塗布する場合、中心部のみの場合等が挙げられ、接着力、或いはタイヤ外皮に嵌め込んだ後のタイヤチューブC
1 の両端面の突き合せ操作の容易性等の観点から最適なものを選択する。接着によるタイヤチューブの突合せ面の一体性が高まる程度は、上記した順序で小さくなる。なお、中芯B
3 が用いられたタイヤチューブC
3 、及び中芯B
5 が用いられたタイヤチューブC
5 の場合には、立体ネット体Nの部分の端面のみに弾性接着剤を塗布する。
【0049】
次に、
図18を参照して、サイズ(26×1 3/8)のタイヤに嵌め込まれる本発明に係るチューブの軽量化の程度について考察する。
図18ーA(a)は、立体ネット体から成るチューブ本体部が、エラストマーから成る被覆層で覆われた構成のチューブにおいて、チューブ本体部の外径の変化によるチューブの重量の変化を示している。同(b)は、エラストマーから成る中芯が立体ネット体から成る被覆層で覆われたチューブにおいて、中芯の外径の変化によるチューブの重量の変化を示している。更に、
図18−B(c)は、エラストマーから成る中実状の中芯が立体ネット体から成る被覆層で覆われたチューブにおいて、中芯の材料であるエラストマーの発泡の程度を変更した場合におけるチューブの重量の変化を示しており、更に同(d)は、エラストマーから成る中空パイプ状の中芯が立体ネット体から成る被覆層で覆われたチューブにおいて、中芯の外径及び内径の双方の変化によるチューブの重量の変化を示している。
【0050】
図18−A(a)からは、チューブの外径は30mmであって、エラストマーから成るチューブ本体部の外径を(26〜27)mmの範囲で変化させた場合のチューブの重量は、(456〜513)gの範囲であることが分かり、同(b)からは、エラストマーから成る中芯の外径を(13〜15)mmの範囲で変化させた場合のチューブの重量は、(454〜514)gの範囲であることが分かった。また、
図18−B(c)からは、中芯の外径の変化と、当該中芯を形成するエラストマーの発泡度の変化との組み合せにおいて、中芯の材料であるエラストマーを発泡させないで、外径が10mmの場合のチューブの重量は、461gであり、中芯の外径を一定の15mmとして、発泡剤の使用量を(0.5〜1.5)重量%の範囲で変化させて、中芯の比重を変化させた場合には、発泡剤の使用量の増大に応じて、(503〜554)gの範囲でチューブが軽くなることが分かる。更に、同(d)からは、
図18−A(b)に示される中芯が中実状の場合に比較して、チューブの軽量化が多少実現されていることが分かる。
【0051】
また、サイズ(26×1 3/8)のタイヤに嵌め込まれるチューブを、熱可塑性エラストマーで成形した場合の重量は、約1300gであり、立体ネット体と、エラストマーから成る中芯、或いは被覆層との組み合せ構造の本発明に係るチューブの重量は、約500gに抑えられるので、本発明に係るチューブが大幅に軽量化できることが分かる。
【0052】
このため、実施例1,2のチューブC
1 ,C
2 のように、全体が立体ネット体で構成されている場合には、立体ネット体の比重が約0.2であることを考慮すると、当該チューブC
1 ,C
2 は、500gよりも遥かに小さな重量であることは明らかであるため、本発明により、タイヤチューブを大幅に軽量化できることが分かる。