特許第5713298号(P5713298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 型善の特許一覧

特許5713298ノーパンクチューブ、及びチューブ長尺材の成形方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713298
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ノーパンクチューブ、及びチューブ長尺材の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20150416BHJP
   B29D 30/04 20060101ALI20150416BHJP
   B60C 7/10 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   B60C7/00 H
   B29D30/04
   B60C7/10 C
   B60C7/10 D
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-97250(P2012-97250)
(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公開番号】特開2012-236588(P2012-236588A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2013年7月30日
【審判番号】不服2014-4927(P2014-4927/J1)
【審判請求日】2014年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-98066(P2011-98066)
(32)【優先日】2011年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501272317
【氏名又は名称】株式会社 型善
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】近藤 駆米雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信治
【合議体】
【審判長】 丸山 英行
【審判官】 氏原 康宏
【審判官】 出口 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−332805(JP,A)
【文献】 特開2001−070106(JP,A)
【文献】 登録実用新案第358753(JP,Z2)
【文献】 特開平10−100609(JP,A)
【文献】 特開昭51−023375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のリムに着脱可能に取付けられる同じく環状のタイヤ外皮の環状空間部に嵌め込まれる直棒状をしたチューブであって、
当該チューブは、熱可塑性樹脂から成る多数本の樹脂糸群が任意に絡み付くことにより全体が弾性変形可能に成形された立体ネット体により、前記タイヤ外皮の環状空間部の中心の周長よりも僅かに長い長さを有するように直棒状に形成されて、
直棒状をした前記チューブは、1本状のままで前記タイヤ外皮の環状空間部に順次嵌め込むことで、全体視でリング状にわん曲されると共に、長手方向視及び横断面視の双方において僅かに圧縮されて、当該チューブの長手方向の両端面は、互いに反対方向に押し合って突き合わされていて、
前記立体ネット体の外周部は、当該外周部の樹脂糸群のみが溶融されて、網目構造による表層凹凸部を緩和させるべく、薄肉のスキン層で被覆されていることを特徴とするノーパンクチューブ。
【請求項2】
環状のリムに着脱可能に取付けられる同じく環状のタイヤ外皮の環状空間部に、全体視でリング状にわん曲させると共に、横断面視で僅かに圧縮弾性変形させて嵌め込まれる直棒状をしたチューブであって、
当該チューブは、横断面視において、エラストマーから成る中芯の外側が、熱可塑性樹脂から成る多数本の樹脂糸群が任意に絡み付くことにより全体が弾性変形可能に成形された立体ネット体で被覆され、しかも、前記タイヤ外皮の環状空間部の中心の周長よりも僅かに長い長さを有するように直棒状に形成されて、
前記タイヤ外皮の環状空間部に前記チューブが直棒状のまま嵌め込まれて、当該チューブの長手方向の両端面は互いに反対方向に押し合って突き合わされていることを特徴とするノーパンクチューブ。
【請求項3】
前記中芯は、中空パイプ状であることを特徴とする請求項に記載のノーパンクチューブ。
【請求項4】
多数の樹脂吐出孔が垂直方向に形成された吐出ヘッドと、冷却水槽の水面部における前記吐出ヘッドの直下に配置された樹脂糸群受け成形具とを備え、
前記吐出ヘッドにより立体ネット状に成形される連続成形品を、当該吐出ヘッドの各樹脂吐出孔から吐出される糸状溶融樹脂の吐出速度に対応した速度で引っ張ることにより、前記多数本の糸状溶融樹脂が、前記樹脂糸群受け成形具の受入れ部の底部に連続して垂直方向に形成された中空円筒状の成形部に充満されている冷却水の水面に達して互いに絡み合った後に、当該中空円筒状の成形部を通過させながら水冷させることにより連続棒状で、しかも立体ネット状をしたチューブ長尺材の成形方法であって、
本来の成形品の外径よりも僅かに大きな外径を有する立体ネット状をした長尺状の中間成形品を予め成形しておいて、
上端から下端に向けて漸次内径が小さくなったテーパー中空孔が形成されて、当該テーパー中空孔の下端部に本来の成形品の外径に対応する内径を有するストレート孔状の中空成形部が形成されたトリミングヘッドを用い、
加熱された前記トリミングヘッドのテーパー中空孔に前記中間成形品を通して、前記中空成形部を通過させる際に、外周部の樹脂糸のみを溶融させた後に水冷させることにより、成形品の外周表層部にスキン層を形成することを特徴とするチューブ長尺材の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数本の糸状溶融樹脂を任意に絡み付かせた後に、圧縮成形により連続棒状に成形して、全体が弾性変形可能に成形された立体ネット体の使用により、乗り心地性を確保したうえで、軽量化を図ったノーパンクチューブ、及びチューブ長尺材の成形方法に関するものである。本発明に係るノーパンクチューブは、自転車、車椅子、シニアカー等のタイヤに嵌め込まれて使用される。
【背景技術】
【0002】
釘類が刺さってもパンクをしないノーパンクチューブ(以下、単に「チューブ」と略すこともある)の一つとして、特許文献1に開示のものが知られている。このチューブは、押出成形された1本棒状であって、タイヤ外皮の環状空間部の中心の周長の1.00〜1.03倍の長さと、前記環状空間部の横断面積に対して1.0〜1.3倍の横断面積を有していて、当該チューブを全体視でリング状にわん曲させて前記環状空間部に嵌め込むことにより、横断面で僅かに圧縮させることにより、周方向で僅かに伸長させて、チューブの両端面を互いに突き合わせた状態で収容されることにより、チューブの両端部を熱融着により接合することを不要にすると共に、リング状のチューブのように、種々のタイヤサイズに対応したものを個々に製作する必要をなくして、押出成形されたチューブ長尺材をタイヤ外皮の周長に切断することにより、各種サイズのタイヤに対して嵌込み可能にしたものである。
【0003】
しかし、嵌込み前のチューブの横断面形状は、断面円形の中実構造か、或いは多数の小孔が長手方向に連続して形成された孔付き構造であって、当該チューブを横断面視で圧縮変形させることにより、当該チューブをタイヤ外皮の内周面のほぼ全面に密着させる構造であった。よって、タイヤ外皮の環状空間部は、その全体が圧縮変形されたチューブで充満される構造となるため、当該チューブの重量が大きくなって、チューブの軽量化が図れない問題があった。例えば、サイズ(26×1 3/8)のタイヤに対応した熱可塑性エラストマーを使用した中実構造のチューブであると、チューブの重量は、約1300gとなって、自転車のチューブとしては、やや重たくなるため、この種の直状のチューブの軽量化が望まれていた。ここで、多数の小孔を設けることにより、多少の軽量化は図られるが、チューブの横断面積に対する小孔の面積の割合である空隙率は、25%を超えると、使用時に接地面から圧力を受けて変形するチューブの変形度合が大きくなり過ぎて、乗り心地性が悪くなると共に、チューブ自体が脆くなって、耐久性が低下する問題がある。このため、チューブの空隙率を余り大きくすることはできず、この点も、チューブの軽量化を阻害していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4392055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、多数本の糸状溶融樹脂を任意に絡み付かせた後に、圧縮成形により連続棒状にして、全体が弾性変形可能に成形された立体ネット体の使用により、乗り心地性を確保したうえで、軽量化を図ったノーパンクチューブ、及びチューブ長尺材の成形方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、環状のリムに着脱可能に取付けられる同じく環状のタイヤ外皮の環状空間部に嵌め込まれる直棒状をしたチューブであって、当該チューブは、熱可塑性樹脂から成る多数本の樹脂糸群が任意に絡み付くことにより全体が弾性変形可能に成形された立体ネット体により、前記タイヤ外皮の環状空間部の中心の周長よりも僅かに長い長さを有するように直棒状に形成されて、直棒状をした前記チューブは、1本状のままで前記タイヤ外皮の環状空間部に順次嵌め込むことで、全体視でリング状にわん曲されると共に、長手方向視及び横断面視の双方において僅かに圧縮されて、当該チューブの長手方向の両端面は、互いに反対方向に押し合って突き合わされていて、前記立体ネット体の外周部は、当該外周部の樹脂糸群のみが溶融されて、網目構造による表層凹凸部を緩和させるべく、薄肉のスキン層で被覆されていることを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明によれば、チューブ自体が、熱可塑性樹脂から成る多数本の樹脂糸群が任意に絡み付くことにより全体が弾性変形可能に成形された立体ネット体により直棒状に形成されていて、直棒状の当該立体ネット体は、成形時に多数本の樹脂糸が任意に絡み付くことにより、内部に連続した空隙部が形成された状態で直棒状の立体形状を維持し得ると共に、全体に設けられている空隙部の存在により、横断面視、及び長手方向視の双方において原形状に復元可能、即ち弾性変形可能である。このため、立体ネット体で長尺状に形成されたチューブ長尺材をタイヤ外皮の環状空間部の中心の周長よりも僅かに長い長さに切断して、長棒状をした当該チューブを全体視でリング状にわん曲させて、タイヤ外皮の環状空間部に嵌め込むと、横断面視で僅かに圧縮されてタイヤ外皮の内周面に密着すると共に、長手方向の両端面が互いに反対方向に押し合って突き合せられた状態となる。
【0008】
そして、チューブを構成する立体ネット体は、走行中のタイヤが地面から受ける接地力により、当該接地力を吸収すべく弾性変形するために、タイヤ全体としては、快適な反発弾性であるクッション性を有することとなって、自転車等の快適な乗り心地性を確保できる。
【0009】
【0010】
また、請求項の発明によれば、チューブを構成する直棒状のネット体の外周部は、当該外周部の樹脂糸群のみが全周に亘って溶融されて薄肉のスキン層を形成しているために、網目構造の表層凹凸部(外周凹凸部)が緩和されて、外周面が滑らかになっているので、タイヤ外皮に嵌め込まれた場合に、当該タイヤの内周面との抵抗が小さくなると共に、当該タイヤ外皮の内周面と馴染み易くなって、経年使用によっても、ネット体の外周部を構成する樹脂糸の絡み状態が崩されたり、或いは樹脂糸の絡み状態の崩れにより当該樹脂糸が部分的に切離されなくなる。また、タイヤ外皮の内周面に対するチューブの密着性が高まる結果、タイヤ外皮に対するチューブの一体性が高まって、タイヤ走行時における微振動の発生を抑制できて、乗り心地性が一層に高められる。
【0011】
また、請求項の発明は、環状のリムに着脱可能に取付けられる同じく環状のタイヤ外皮の環状空間部に、全体視でリング状にわん曲させると共に、横断面視で僅かに圧縮弾性変形させて嵌め込まれる直棒状をしたチューブであって、当該チューブは、横断面視において、エラストマーから成る中芯の外側が、熱可塑性樹脂から成る多数本の樹脂糸群が任意に絡み付くことにより全体が弾性変形可能に成形された立体ネット体で被覆され、しかも、前記タイヤ外皮の環状空間部の中心の周長よりも僅かに長い長さを有するように直棒状に形成されて、前記タイヤ外皮の環状空間部に前記チューブが直棒状のまま嵌め込まれて、当該チューブの長手方向の両端面は互いに反対方向に押し合って突き合わされていることを特徴としている。
【0012】
請求項の発明によれば、チューブの中心部には、エラストマーから成る中芯が配置されて、当該中芯の外側が、熱可塑性樹脂から成る多数本の樹脂糸群が任意に絡み付くことにより全体が弾性変形可能に成形された立体ネット体で被覆されて、横断面視で二層構造となっていて、前記中芯によりチューブとしての弾性力が増強される。このため、高荷重が作用するタイヤに嵌め込んでも、チューブとしての反発弾性を発揮し得る。
【0013】
また、請求項の発明は、請求項の発明において、前記中芯は、中空パイプ状であることを特徴としている。
【0014】
請求項の発明によれば、中芯の形状を中空パイプ状にすることにより、タイヤ外皮を当該チューブを嵌め込んでタイヤとして使用した場合には、中実構造の中芯に比較して反発弾性が高められると共に、チューブ自体が軽量化されて、乗り心地性が高められる。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
また、請求項の発明は、多数の樹脂吐出孔が垂直方向に形成された吐出ヘッドと、冷却水槽の水面部における前記吐出ヘッドの直下に配置された樹脂糸群受け成形具とを備え、前記吐出ヘッドにより立体ネット状に成形される連続成形品を、当該吐出ヘッドの各樹脂吐出孔から吐出される糸状溶融樹脂の吐出速度に対応した速度で引っ張ることにより、前記多数本の糸状溶融樹脂が、前記樹脂糸群受け成形具の受入れ部の底部に連続して垂直方向に形成された中空円筒状の成形部に充満されている冷却水の水面に達して互いに絡み合った後に、当該中空円筒状の成形部を通過させながら水冷させることにより連続棒状で、しかも立体ネット状をしたチューブ長尺材の成形方法であって、本来の成形品の外径よりも僅かに大きな外径を有する立体ネット状をした長尺状の中間成形品を予め成形しておいて、上端から下端に向けて漸次内径が小さくなったテーパー中空孔が形成されて、当該テーパー中空孔の下端部に本来の成形品の外径に対応する内径を有するストレート孔状の中空成形部が形成されたトリミングヘッドを用い、加熱された前記トリミングヘッドのテーパー中空孔に前記中間成形品を通して、前記中空成形部を通過させる際に、外周部の樹脂糸のみを溶融させた後に水冷させることにより、成形品の外周表層部にスキン層を形成することを特徴としている。
【0022】
樹脂糸群受け成形具に設けられたラッパ状の受入れ部は水面よりも上方に配置されているが、中空円筒状の成形部は、冷却槽の水中に配置されていて、当該成形部の入口部は、水面に臨んでいる。この状態で、吐出ヘッドの樹脂吐出口から連続して吐出される多数本の糸状溶融樹脂は、樹脂糸群受け成形具のラッパ状の受入れ部を通って、中空円筒状の成形部の入口部まで達している水面に達すると、多数の糸状溶融樹脂は、水の抵抗によりそのまま水中に進めなくなると共に、急激に水冷されることにより、水面上で任意の方向に広がって互いに絡み合い、この状態で引っ張られて、樹脂糸群受け成形具の中空円筒状の成形部を下方に向けて水中に引き込まれて冷却されることにより、形状が定められる。このように、多数の糸状溶融樹脂が互いに絡み合った直後において、樹脂糸群受け成形具の中空円筒状の成形部に引っ張り込まれた後に、当該成形部により、熱可塑性樹脂から成る多数本の樹脂糸群が更に任意に絡み付いて成形され、当該成形部から引き抜かれて水中を通過する間に冷却が促進されて、全体が弾性変形可能に成形された長尺棒状の立体ネット体から成るチューブ長尺材が連続成形される。
請求項の発明によれば、本来の成形品の外径よりも僅かに大きな外径を有する立体ネット状をした長尺状の中間成形品をトリミングヘッドの中空孔を通して、当該中空孔に連続するストレート孔状の中空成形部を通過する際に、外周部の樹脂糸のみが部分的に溶融されて、原外径よりも僅かに小さな外径に成形された直後に水冷されて成形品となる。これにより、中間成形品と同様に立体ネット体で形成された長尺状の成形品の外周部は溶融により大きな凹凸部が消失されて滑らかな外周表層部が形成されて、当該外周表層部は、成形品に対してはスキン層として機能する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るノーパンクチューブは、チューブを構成する直棒状のネット体の外周部は、当該外周部の樹脂糸群のみが全周に亘って溶融されて薄肉のスキン層を形成しているために、網目構造の表層凹凸部(外周凹凸部)が緩和されて、外周面が滑らかになっているので、タイヤ外皮に嵌め込まれた場合に、当該タイヤの内周面との抵抗が小さくなると共に、当該タイヤ外皮の内周面と馴染み易くなって、経年使用によっても、ネット体の外周部を構成する樹脂糸の絡み状態が崩されたり、或いは樹脂糸の絡み状態の崩れにより当該樹脂糸が部分的に切離されなくなる。また、タイヤ外皮の内周面に対するチューブの密着性が高まる結果、タイヤ外皮に対するチューブの一体性が高まって、タイヤ走行時における微振動の発生を抑制できて、乗り心地性が一層に高められる。
【0024】
また、本発明に係るチューブ長尺材の成形方法は、本来の成形品の外径よりも僅かに大きな外径を有する立体ネット状をした長尺状の中間成形品をトリミングヘッドのテーパー中空孔を通して、当該中空孔に連続するストレート孔状の中空成形部を通過する際に、外周部の樹脂糸のみが部分的に溶融されて、原外径よりも僅かに小さな外径に成形された直後に水冷されて成形品となる。これにより、中間成形品と同様に立体ネット体で形成された長尺状の成形品の外周部は溶融により大きな凹凸部が消失されて滑らかな外周表層部が形成されて、当該外周表層部は、成形品に対してはスキン層として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a),(b)は、それぞれチューブC1 用のチューブ長尺材C01の部分正面図、及び部分拡大斜視図である。
図2】チューブ長尺材C01の拡大横断面図である。
図3】チューブ長尺材C01の成形方法を示す模式図である。
図4】多数本の溶融状態の糸状溶融樹脂R1'が冷却水の表面に達した直後に互いに絡み合う状態を示す模式図である。
図5】タイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC1 を嵌め込む前の横断面図である。
図6】同じく嵌め込まれた後の横断面図である。
図7】タイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC1 を嵌め込まれたタイヤTの一部を破断した正面図である。
図8】(a),(b)は、それぞれチューブC2 用のチューブ長尺材C02の部分斜視図、及び拡大横断面図である。
図9】チューブ長尺材C02の成形方法を示す模式図である。
図10】タイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC3 が嵌め込まれた状態の横断面図である。
図11】チューブC3 用のチューブ長尺材C03の成形方法の模式図である。
図12】タイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC4 が嵌め込まれた状態の横断面図である。
図13】チューブC4 用のチューブ長尺材C04の成形方法の模式図である。
図14】タイヤチューブC5 の横断面図である。
図15】(a),(b)は、それぞれ端面に弾性接着剤Aが塗布されていないタイヤチューブC1 、及び当該弾性接着剤Aが塗布されたタイヤチューブC1'の部分斜視図である。
図16】(a)〜(c)は、タイヤチューブC1'の端面に対する弾性接着剤Aの塗布範囲を示す図である。
図17】タイヤ外皮21にタイヤチューブC1'が嵌め込まれたタイヤTの部分断面図である。
図18-A】本発明に係るチューブが軽量化されることを示す表である。
図18-B】本発明に係るチューブが軽量化されることを示す別の表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、複数の実施例及び参考例のチューブC1 〜C5 及びその成形方法を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
最初に、図1ないし図4を参照して、本発明の実施例1のチューブC1 用のチューブ長尺材C01を、その成形方法とともに説明する。図1(a),(b)は、それぞれチューブC1 用のチューブ長尺材C01の部分正面図、及び部分拡大斜視図であり、図2は、同じく拡大横断面図であり、図3は、チューブ長尺材C01の成形方法を示す模式図であり、図4は、溶融状態の多数本の糸状溶融樹脂R1'が冷却水の表面に達した直後に互いに絡み合う状態を示す模式図である。チューブ長尺材C01は、図1及び図2に示されるように、全体形状が長尺棒状となっていて、成形時において、熱可塑性樹脂から成る多数本の樹脂糸R1 群が任意に絡み付いて、内部に連続した空隙部Vが形成されることにより立体ネット体Nにより全体が形成されている。チューブ長尺材C01は、外力の作用により、絡み付いて互いに結合している樹脂糸R1 自体の変形と、空隙部Vの存在とによって、原形状に対して自在に変形し、前記外力の解除により原形状に復元可能であって、弾性変形可能である。チューブ長尺材C01の横断面形状は、ほぼ円形であって、後述のタイヤ外皮21の環状空間部22に僅かに圧縮されて嵌め込まれる大きさとなっている。チューブ長尺材C01の全体積に対する空隙部Vの割合(空隙率)は、後述のように、成形時において調整可能である。
【0028】
次に、図3及び図4を参照して、チューブ長尺材C01の成形方法について説明する。冷却水槽Jの水面Waの直上には、溶融樹脂原料R0 の吐出ヘッドEH1 が配置され、当該吐出ヘッドEH1 の直下であって、冷却水槽Jの水面Waの部分には、樹脂糸群受け成形具Sが配置されている。吐出ヘッドEH1 には、溶融状態の多数本の糸状溶融樹脂R1'を吐出させるための細孔状の多数本の樹脂吐出孔51が垂直方向に形成されている。多数本の樹脂吐出孔51は、成形品であるチューブ長尺材C01の横断面形状である円内に、周囲の別の樹脂吐出孔51に対して等間隔をおいて配置されている。樹脂糸群受け成形具Sは、ラッパ状(逆中空円錐状)をした受入れ部52の下方に中空円筒状の成形部53が上下方向に形成された構成である。受入れ部52の上端部の全周には、リング状の水噴出管54が配置され、ポンプPにより冷却水槽Jから吸引された冷却水Wが前記水噴出管54に送り込まれて、当該水噴出管54の下端部に設けられた噴出孔(図示せず)を通って受入れ部52の傾斜逆円錐面52aの上端部に落下されて、当該傾斜逆円錐面52aに沿って流れて、中空円筒状の成形部53の上端部に達する。このため、受入れ部52の傾斜逆円錐面52aには、吐出ヘッドEH1 の樹脂吐出孔51から吐出される多数の糸状溶融樹脂R1'が前記傾斜逆円錐面52aに当たっても粘着しないように、常時、水膜が形成されている。樹脂糸群受け成形具Sは、中空円筒状の成形部53の上端部が冷却水槽Jの水面Waに位置するように配置されている。中空円筒状の成形部53の内径は、成形されるチューブ長尺材C01の外径に対応している。
【0029】
このため、吐出ヘッドEH1 に熱可塑性樹脂の溶融樹脂原料R0 が供給されて、多数の樹脂吐出孔51から糸状溶融樹脂R1'が吐出されると、当該多数の糸状溶融樹脂R1'は、ラッパ状の受入れ部52を通って、そのまま直下の成形部53に充満されている冷却水Wの水面に達する。これにより、多数の糸状溶融樹脂R1'は、水の抵抗によりそのまま水中に進めなくなると共に、急激に水冷されることにより、水面上で任意の方向に広がって互いに絡み合い(図4参照)、この状態で引っ張られて、樹脂糸群受け成形具Sの中空円筒状の成形部53内を下方に向けて水中に引き込まれて冷却されることにより、断面形状が定められる。また、受入れ部52の傾斜逆円錐面52aには、常時、冷却水Wが供給されて水膜が形成されているために、水面Waに達した糸状溶融樹脂R1'の一部が他の糸状溶融樹脂R1'と絡み合う際に、前記傾斜逆円錐面52aに乗り上げても、当該傾斜逆円錐面52aに付着されることはないと共に、成形部53には、温度の低い冷却水Wが常時供給されているために、絡み合った後の多数の糸状溶融樹脂R1'の冷却効果も高められる。
【0030】
また、樹脂糸群受け成形具Sの成形部53で成形されたチューブ長尺材C01は、冷却水槽J内を通過する際に、冷却水Wにより更に冷却されて、冷却水槽Jの外部において巻取機(図示せず)に巻き取られるために、巻取力(引張力)が作用している。ここで、吐出ヘッドEH1 からの糸状溶融樹脂R1'の吐出速度に対する成形されたチューブ長尺材C01の巻取速度を調整することにより、成形されるチューブ長尺材C01の空隙率の調整を行える。即ち、吐出速度に対して巻取速度を相対的に遅くすれば、樹脂糸R1 が互いに絡み合った立体ネット体Nで構成されるチューブ長尺材C01の全体積に対する空隙部の体積の割合が少なくなって、空隙率の低い、即ち、密度の高い立体ネット体で構成されるチューブ長尺材C01が成形され、逆に、吐出速度に対して巻取速度を相対的に速くすれば、空隙率の高い立体ネット体で構成されるチューブ長尺材C01が成形される。
【0031】
立体ネット体Nで構成されるチューブ長尺材C01を構成する樹脂糸R1 の材質としては、溶融押し出しが可能で、冷却により硬化して形状を保持する必要があることからして、熱可塑性を有する材料であることが必要であって、熱可塑性樹脂、或いは熱可塑性エラストマーが選択される。熱可塑性樹脂としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ABS、PA(ポリアミド)、PET(ポリエチレンフタレート)、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、スチレン系エラストマー、アミド系エラストマー等が上げられるが、タイヤチューブとして求められる物性、成形性(加工性)の点からして、TPUが優れる。
【0032】
そして、図5ないし図7を参照して、タイヤ外皮21の環状空間部22の中心Kの周長(L0 )に対して〔1.01〜1.03)×L0 〕の長さ(L)に切断されたチューブC1 を、当該タイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込む方法について簡単に説明する。図5に示されるように、リム23からタイヤ外皮21を取り外しておいて、1本棒状(直棒状)のチューブC1 を横断面視で弾性変形させながら、前記タイヤ外皮21の環状空間部22に順次嵌め込んで、その両端面11を互い当接させる。環状空間部22にチューブC1 が嵌め込まれたタイヤ外皮21の開口の両側に形成された各被係止部21aを、それぞれリム23の各係止部23aに係止させてタイヤTとする(図6及び図7参照)。ここで、図7並びに後述の図9図12及び図14において、全部又は一部が立体ネット体Nで構成されるチューブC1 〜C4 の断面は、模式的にハッチング表示してある。なお、図7において、24は、車輪25のスポークを示す。
【0033】
上記のようにして、リム23に係止されたタイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC1 が嵌め込まれると、横断面視では、僅かに圧縮変形されるために、図5に示されるように、チューブC1 におけるリム23と対向する部分を除く全ての外周面が、当該タイヤ外皮21の内周面に弾接した状態で収容されると共に、図7に示されるように、全体視でリング状にわん曲されて、タイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込まれたチューブC1 の両端面11は、互いに反対方向の押圧力(F)により押し合って、互いに突き合わされた状態となる。このため、チューブC1 は、嵌込み前においては1本棒状であるが、タイヤ外皮21に嵌め込むことにより、全体視でリング状にわん曲されたチューブC1 は、機能上、その当接部の存在を殆ど認識させずに、換言すると、当該当接部の存在によりチューブC1 としての不具合を一切生じさせることなく、恰も、一体のリング形状を有しているように作用する。なお、図6において、2点鎖線は、チューブC1 の圧縮変形前の原形状を示す。
【0034】
このように、多数本の樹脂糸R1 の群が任意に絡み付くことにより全体が弾性変形可能に成形された立体ネット体Nで構成されるチューブC1 は、横断面視で僅かに圧縮変形されると共に、長手方向視で両端面11が互いに当接して、突き合わされているため、タイヤTの走行時に地面から接地力を受けることにより、チューブC1 が横断面視で弾性変形すると共に、衝撃力を受けた場合には、一時的に通常時よりも大きく弾性変形した後に、通常時の状態まで復元することにより、走行可能となる。また、チューブC1 を構成する立体ネット体Nは、多数本の樹脂糸R1 の群が任意に絡み付くことにより全体が弾性変形可能に成形されているために、内部全体に亘って連続した空隙部が形成されていて、当該空隙部の存在が、チューブC1 の軽量化に大きく寄与しているために、チューブC1 自体が軽量化される。
【0035】
このように、本発明に係るチューブC1 は、軽量でありながら、タイヤ外皮21に嵌め込まれてタイヤTとして機能した場合には、タイヤTが本来的に必要とされる弾性復元力を有していて、通常の空気入りのチューブと遜色のない乗り心地性を確保できる。また、チューブC1 の弾性復元力の程度、即ち、タイヤTの走行時における乗り心地性は、上記したチューブ長尺材C01の成形方法の部分で説明したように、立体ネット体の内部に連続形成される空隙部の割合である空隙率を調整することにより、最適状態を選択可能である。
【実施例2】
【0036】
次に、図8及び図9を参照して、本発明の実施例2のチューブC2 について説明する。図8(a),(b)は、それぞれチューブC2 用のチューブ長尺材C02の部分斜視図、及び拡大横断面図であり、図9は、チューブ長尺材C02の成形方法を示す模式図である。チューブC2 は、成形時において、前記チューブC1 を構成する外周部の樹脂糸R1 の群のみを溶融させることにより、網目構造の表面凹凸部(外周凹凸部)が緩和されて(細かくなって)、相対的に前記チューブC1 よりも外周面が滑らかになっている点が構造的に異なる。チューブC1 の外周部には、薄肉のスキン層1が形成されて、当該スキン層1に、前記チューブC1 の外周面の凹部よりも小さな凹部2が部分的に残存している。即ち、チューブC2 の外周部には、凹凸部は存在するが、後述の成形方法により外周面が滑らかに形成されているために、タイヤ外皮21に嵌め込まれた場合に、当該タイヤ外皮21の内周面との抵抗が小さくなると共に、当該タイヤ外皮21の内周面に馴染み易くなる。この結果、経年使用によっても、立体ネット体Nの外周部分を構成する樹脂糸R1 の絡み付き状態が崩されたり、或いは当該絡み付き状態の崩れにより、樹脂糸R1 が部分的に切離されなくなって、タイヤ外皮21の内周面に対するチューブC2 の密着性が高まる。この結果、タイヤ外皮21に対するチューブC2 の一体性が高まって、タイヤ走行時における微振動の発生を抑制できて、乗り心地性が高められる。
【0037】
次に、図9を参照して、チューブ長尺材C02の成形方法について簡単に説明する。冷却水槽Jの水面Waの直上には、チューブ長尺材C01' の外周部のみを溶融させるためのトリミングヘッドTHが配置されている。成形品であるチューブ長尺材C02は、中間成形品であるチューブ長尺材C01' の外周部のみを溶融させて、スキン層1を形成させたものである。従って、チューブ長尺材C01' は、前記チューブ長尺材C01と同一の立体ネット構造を有しているが、当該チューブ長尺材C01' 外径(D’)のみが当該チューブ長尺材C01の外径(D)よりも溶融分だけ大きくなっている。トリミングヘッドTHには、上端から下端に向けて漸次内径が小さくなったテーパー中空孔61と、当該テーパー中空孔61の下端に連続して形成されたストレート孔状の中空成形部62とが連続して形成されている。中空成形部62の内径(d)は、成形品であるチューブ長尺材C02の外径(D)と同一となっている(D’>D=d)。
【0038】
よって、トリミングヘッドTHを加熱させておいて、予め成形された中間成形品であるチューブ長尺材C01' を当該トリミングヘッドTHのテーパー中空孔61及び中空成形部62を通過させると、チューブ長尺材C01' の外径(D’)は、当該中空成形部62の内径(d)よりも大きいので、当該チューブ長尺材C01' は、その外周部のみが部分的に溶融された直後に、冷却水槽J内に引き込まれることにより水冷されて、チューブC2 用のチューブ長尺材C02が成形される。このため、チューブ長尺材C02の外周表層部には、トリミングヘッドTHの中空成形部62を通過する際の溶融によるスキン層1が形成されるため、チューブ長尺材C02の外周面は、当該部分に形成される表面凹凸部が、チューブ長尺材C01の表面凹凸部に比較して小さくなっているために、当該チューブ長尺材C01に比較して滑らかになる。なお、スキン層1の厚さは、チューブ長尺材C01' の外径(D’)と中空成形部62の内径(d)との差(D’−d)に比例し、チューブC2 の弾性変形を阻害しない範囲内にする必要性を考慮すると、(0.5〜1)mmが望ましい。
【実施例3】
【0039】
次に、図10及び図11を参照して、本発明の実施例3のチューブC3 について説明する。図10は、タイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC3 が嵌め込まれた状態の横断面図であり、図11は、チューブC3 用のチューブ長尺材C03の成形方法の模式図である。チューブC3 は、弾性材から成る中芯B3 の外側が立体ネット体Nから成る被覆層M3 で覆われた構成である。中芯B3 の材質としては、タイヤに使用された場合にクッション性(反発弾性)が奏されることが不可欠であり、この観点から、熱可塑性エラストマー又はゴム、或いはこれらを発泡させたものが挙げられる。
【0040】
立体ネット体Nの構造は、上記したチューブC1 ,C2 に使用されているものと同一であって、熱可塑性樹脂から成る樹脂糸を絡み合せて立体化したものである。チューブC3 は、熱可塑性エラストマー或いはゴムから成る中芯B3 により弾性力が補強されるために、立体ネット体Nのみから成る前記チューブC1 ,C2 に比較して、耐変形荷重が大きくなるために、高荷重での使用において好適である。即ち、熱可塑性エラストマー或いはゴムから成る中芯B3 により耐変形荷重を大きくしていると共に、被覆層M3 を構成している立体ネット体Nによりチューブとしてのクッション性を高めており、中芯B3 及び被覆層M3 がそれぞれ異なる技術的役割を分担している点に特徴を有している。従って中芯B3 の外径と、被覆層M3 の外径(チューブC3 の外径)との比は、耐変形性及びクッション性に、どの割合で重きを置いてチューブC3 を設計するかの観点から定められる。
【0041】
また、図11に示されるように、チューブC3 用のチューブ長尺材C03は、冷却水槽Jの水面Waの部分に配置された前記樹脂糸群受け成形具Sと、当該成形具Sの直上に配置された吐出ヘッドEH3 との組み合せに係る装置で連続成形される。吐出ヘッドEH3 からは、中芯B3 用の中芯長尺材B3'が上方から下方の樹脂糸群受け成形具Sに向けて連続して供給されると共に、当該中芯長尺材B3'の出口部の周囲に設けられた多数の樹脂吐出孔51から糸状溶融樹脂R1'が連続して吐出される。
【0042】
このため、吐出ヘッドEH3 から、中芯長尺材B3'と、その周囲に溶融状態の多数本の糸状溶融樹脂R1'とが、直下の樹脂糸群受け成形具Sに向けて供給、或いは吐出されると、当該成形具Sの中空円筒状の成形部53に供給済の中芯長尺材B3'の周囲の水面Waに多数本の糸状溶融樹脂R1'が流下されて、チューブ長尺材C01の成形方法において説明したように、水面Waにおいて多数本の糸状溶融樹脂R1'が中芯長尺材B3'の周囲において互いに絡み合った状態で、当該成形具Sの成形部53を通過することにより、全体が1本棒状に成形されて、多数本の糸状溶融樹脂R1'が互いに絡み合うことにより成形された立体ネット体Nが前記中芯長尺材B3'が外周面に一体となって成形されて、チューブ長尺材C03が連続成形される。当該チューブ長尺材C03を所定長さに切断することにより、前記チューブC3 が得られる。
【参考例1】
【0043】
次に、図12及び図13を参照して、本発明の参考例1のチューブC4 について説明する。図12は、タイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC4 が嵌め込まれた状態の横断面図であり、図13は、チューブC4 用のチューブ長尺材C04の成形方法の模式図である。チューブC4 は、前記チューブC3 とは逆に、立体ネット体Nから成るチューブ本体部31の外周部が被覆層M4 で覆われた構成である。被覆層M4 は、熱可塑性エラストマー又はゴム、或いはこれらを発泡させたもので成形される。
【0044】
チューブC4 は、全体が立体ネット体NのみであるチューブC1 に比較して、立体ネット体Nで構成されるチューブ本体部31の外周部の網目(凹凸部)が完全に覆い隠されて平滑となる。このため、熱可塑性エラストマー又はゴムから成る被覆層M4 により、チューブの弾性力が増強されると共に、外周面が平滑となるために、タイヤ外皮21に嵌め込んだ状態において当該タイヤ外皮21との一体性が高められる結果、タイヤ走行時における微振動の発生を抑制できて、乗り心地性が一層に高められる。
【0045】
上記チューブC4 は、図13に示される吐出ヘッドEH4 の使用により連続成形可能である。吐出ヘッドEH4 は、冷却水槽Jの水面Waの直上に位置され、吐出口71から下方に向けてエラストマー原料E0 が吐出される。吐出ヘッドEH4 には、上方から下方に向けて、予め成形されたチューブ本体部31が供給されて、吐出ヘッドEH4 内において、チューブ本体部31の全外周に所定厚のエラストマー原料E0 が被覆された状態で前記吐出口71の部分から排出されて、直下の冷却水槽Jの水中に引き込まれることにより水冷されて、チューブC4 用のチューブ長尺材C04が連続成形される。
【実施例4】
【0046】
実施例4のタイヤチューブC5 は、図14に示されるように、中空円筒状の中芯B5 の外側が、立体ネット体からなる被覆層M5 で被覆された構成である。中芯B5 が中空円筒状であるために、タイヤ外皮21に嵌め込んでタイヤTとして使用した場合に、軽量化されるのに加えて、中芯B5 も断面視で変形可能であるために、反発弾性が高められて、乗り心地性が高められる。
【0047】
次に、図15図17を参照して、タイヤチューブC1 の両端面である各突き合せ面の一体性を高める構造について説明する。図15(a),(b)は、それぞれ端面に弾性接着剤Aが塗布されていないタイヤチューブC1 、及び当該弾性接着剤Aが塗布されたタイヤチューブC1'の部分斜視図であり、図16(a)〜(c)は、タイヤチューブC1'の端面に対する弾性接着剤Aの塗布範囲を示す図であり、図17は、タイヤ外皮21にタイヤチューブC1'が嵌め込まれたタイヤTの部分断面図である。設定長に接続されたタイヤチューブC1 をタイヤ外皮21に嵌め込む直前に、当該タイヤチューブC1 の一方の端面に弾性接着剤Aを塗布し、この状態で、一方の端面に弾性接着剤Aが塗布されたタイヤチューブC1'をタイヤ外皮21に嵌め込んで、当該タイヤチューブC1'の両端の突合せ面を前記弾性接着剤Aを介して接着させる。その後に、弾性接着剤Aは硬化されて、タイヤチューブC1'の両端面(両突合せ面)は、互いに反対方向の突合せ力と弾性接着剤Aの接着力との双方の作用によって、一体化される(図17参照)。このため、タイヤ外皮21に嵌め込まれた環状のタイヤチューブC1'の両端面の部分は、他の一般部と同等の構造となって、当該両端面の部分のみが内側に僅かに倒れ込むという不具合を解消できて、即ち、環状のタイヤチューブC1'の全周に亘る構造がほぼ同一となって、タイヤチューブC1'の突合せ面の存在を認識できなくなって、タイヤTの走行中における、乗り心地性が高められる。
【0048】
弾性接着剤Aの特性としては、タイヤチューブをタイヤ外皮に嵌め込んだ後に硬化する一液性湿気硬化型の接着剤が好適であり、例えば、シリコーン変性ポリマー系弾性接着剤が挙げられる。また、中芯を用いていないタイヤチューブC1 の端面における弾性接着剤Aの塗布範囲としては、図16(a)〜(c)に示されるように、外周縁のみを除く端面の全域の場合、外周部のみにリング状に塗布する場合、中心部のみの場合等が挙げられ、接着力、或いはタイヤ外皮に嵌め込んだ後のタイヤチューブC1 の両端面の突き合せ操作の容易性等の観点から最適なものを選択する。接着によるタイヤチューブの突合せ面の一体性が高まる程度は、上記した順序で小さくなる。なお、中芯B3 が用いられたタイヤチューブC3 、及び中芯B5 が用いられたタイヤチューブC5 の場合には、立体ネット体Nの部分の端面のみに弾性接着剤を塗布する。
【0049】
次に、図18を参照して、サイズ(26×1 3/8)のタイヤに嵌め込まれる本発明に係るチューブの軽量化の程度について考察する。図18ーA(a)は、立体ネット体から成るチューブ本体部が、エラストマーから成る被覆層で覆われた構成のチューブにおいて、チューブ本体部の外径の変化によるチューブの重量の変化を示している。同(b)は、エラストマーから成る中芯が立体ネット体から成る被覆層で覆われたチューブにおいて、中芯の外径の変化によるチューブの重量の変化を示している。更に、図18−B(c)は、エラストマーから成る中実状の中芯が立体ネット体から成る被覆層で覆われたチューブにおいて、中芯の材料であるエラストマーの発泡の程度を変更した場合におけるチューブの重量の変化を示しており、更に同(d)は、エラストマーから成る中空パイプ状の中芯が立体ネット体から成る被覆層で覆われたチューブにおいて、中芯の外径及び内径の双方の変化によるチューブの重量の変化を示している。
【0050】
図18−A(a)からは、チューブの外径は30mmであって、エラストマーから成るチューブ本体部の外径を(26〜27)mmの範囲で変化させた場合のチューブの重量は、(456〜513)gの範囲であることが分かり、同(b)からは、エラストマーから成る中芯の外径を(13〜15)mmの範囲で変化させた場合のチューブの重量は、(454〜514)gの範囲であることが分かった。また、図18−B(c)からは、中芯の外径の変化と、当該中芯を形成するエラストマーの発泡度の変化との組み合せにおいて、中芯の材料であるエラストマーを発泡させないで、外径が10mmの場合のチューブの重量は、461gであり、中芯の外径を一定の15mmとして、発泡剤の使用量を(0.5〜1.5)重量%の範囲で変化させて、中芯の比重を変化させた場合には、発泡剤の使用量の増大に応じて、(503〜554)gの範囲でチューブが軽くなることが分かる。更に、同(d)からは、図18−A(b)に示される中芯が中実状の場合に比較して、チューブの軽量化が多少実現されていることが分かる。
【0051】
また、サイズ(26×1 3/8)のタイヤに嵌め込まれるチューブを、熱可塑性エラストマーで成形した場合の重量は、約1300gであり、立体ネット体と、エラストマーから成る中芯、或いは被覆層との組み合せ構造の本発明に係るチューブの重量は、約500gに抑えられるので、本発明に係るチューブが大幅に軽量化できることが分かる。
【0052】
このため、実施例1,2のチューブC1 ,C2 のように、全体が立体ネット体で構成されている場合には、立体ネット体の比重が約0.2であることを考慮すると、当該チューブC1 ,C2 は、500gよりも遥かに小さな重量であることは明らかであるため、本発明により、タイヤチューブを大幅に軽量化できることが分かる。
【符号の説明】
【0053】
A:弾性接着剤
3,B5 ::チューブの中芯
01〜C04:チューブ長尺材
1 〜C5 :タイヤチューブ
EH1 ,EH3 ,EH4 :吐出ヘッド
F:チューブの両端面の押圧力
J:冷却水槽
K:環状空間部の中心
L:タイヤチューブの長さ
3 ,M4 ,M5 :チューブの被覆層
N:立体ネット体
1 :樹脂糸
1':糸状溶融樹脂
S:樹脂糸群受け成形具
T:タイヤ
TH:トリミングヘッド
W:冷却水
Wa:冷却水の水面
1:チューブのスキン層
21:タイヤ外皮
22:タイヤ外皮の環状空間部
23:リム
51:樹脂吐出孔
52:糸状溶融樹脂の受入れ部
53:中空円筒状の成形部
61:テーパー中空孔
62:中空成形部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18-A】
図18-B】