特許第5713300号(P5713300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5713300蛍光体分散ガラスの製造方法及び蛍光体分散ガラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713300
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】蛍光体分散ガラスの製造方法及び蛍光体分散ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03B 8/02 20060101AFI20150416BHJP
   C03C 3/076 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   C03B8/02 A
   C03B8/02 N
   C03C3/076
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-555929(P2012-555929)
(86)(22)【出願日】2012年2月1日
(86)【国際出願番号】JP2012052268
(87)【国際公開番号】WO2012105606
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2013年4月26日
(31)【優先権主張番号】特願2011-20298(P2011-20298)
(32)【優先日】2011年2月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 浩代
(72)【発明者】
【氏名】吉清水 寿人
(72)【発明者】
【氏名】井上 悟
(72)【発明者】
【氏名】広崎 尚登
【審査官】 大工原 大二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−183769(JP,A)
【文献】 特開平08−012342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00− 5/44
C03B 8/00− 8/04
C03B 19/12−20/00
C09K 11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゾル−ゲル反応及び酸塩基反応を用いて、蛍光体とゾルを反応させることなく、シリコンアルコキシドと金属塩化物および/または金属アルコキシドと蛍光体とを有する蛍光体分散ゾルを作製してから、前記蛍光体分散ゾルをゲル化する蛍光体分散ゲル作製工程と、前記蛍光体分散ゲルを加熱して、蛍光体とガラスを反応させることなく、蛍光体分散ガラスを作製する工程と、を有することを特徴とする蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の蛍光体分散ガラスの製造方法であって、前記シリコンアルコキシドが式Si(OR)で示され、前記金属塩化物が式MClで示され、前記金属アルコキシドがM(OR)で示されることを特徴とする蛍光体分散ガラスの製造方法。但し、ORは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基から選択される1種のアルコキシル基であり、MはTe、Ti、Snから選択される一種の金属、nは2または4である。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蛍光体分散ガラスの製造方法であって、前記シリコンアルコキシド1モルに対して、前記金属塩化物および/または金属アルコキシドが3/7モル未満となるように、前記蛍光体分散ゾル体を作製することを特徴とする蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の蛍光体分散ガラスの製造方法であって、前記蛍光体分散ガラスで前記蛍光体が10mass%以下とすることを特徴とする蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の蛍光体分散ガラスの製造方法であって、前記蛍光体が窒化物、酸化物、および酸窒化物から選択される材料であることを特徴とする蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記酸窒化物がSiAlONであることを特徴とする請求項5に記載の蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の蛍光体分散ガラスの製造方法であって、前記蛍光体分散ゲル作製工程が、前記シリコンアルコキシド、前記金属塩化物および/または金属アルコキシド、水を用いて前駆ゾルを作製し、前記前駆ゾルに前記蛍光体を分散させて前記蛍光体分散ゾルを作製する工程を含むことを特徴とする蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項8】
前記前駆ゾルの粘度を100〜10000mPa・sの範囲内とした後、前記蛍光体を分散させることを特徴とする請求項7記載の蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項9】
前記シリコンアルコキシドと前記金属塩化物および/または金属アルコキシドを混合し、水を添加し加水分解して前記前駆ゾルを作製することを特徴とする請求項7または8に記載の蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項10】
前記シリコンアルコキシドに水を添加して加水分解した後、前記金属塩化物および/または金属アルコキシドを混合して前記前駆ゾルを作製することを特徴とする請求項7または8に記載の蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項11】
請求項7乃至10何れか一項に記載の蛍光体分散ガラスの製造方法であって、前記水のpHが7未満であることを特徴とする蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項12】
請求項7乃至10何れか一項に記載の蛍光体分散ガラスの製造方法であって、前記水のpHが7超であることを特徴とする蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至12何れか一項に記載の蛍光体分散ガラスの製造方法であって、前記蛍光体分散ゾルを作製後、20℃以上の温度で1時間以上放置して、蛍光体分散ゲルを作製することを特徴とする蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至12何れか一項に記載の蛍光体分散ガラスの製造方法であって、前記蛍光体分散ゲルを350℃以上に加熱して、蛍光体分散ガラスを作製することを特徴とする蛍光体分散ガラスの製造方法。
【請求項15】
MO−SiOガラスと、前記MO−SiOガラスに分散された蛍光体とを有し、前記MOがTeO、TiO、SnO、SnOから選択される一種の金属酸化物成分であり、前記MOが30mol%以下であり、前記蛍光体が10mass%以下であることを特徴とする蛍光体分散ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体分散ガラスの製造方法及び蛍光体分散ガラスに関する。特に、ゾル−ゲル法及び酸塩基反応を用いた蛍光体分散ガラスの製造方法に関する。
本願は、2011年2月2日に、日本に出願された特願2011−020298号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)では、一般に、LED光源を覆う封止材料として高分子材料が用いられている。近年、前記高分子封止材料に蛍光体を分散させ、デバイスに用いられている。
例えば、非特許文献1には、窒化物蛍光体をエポキシレジンに分散して、暖かみのある白色をもつLEDとして利用可能であることが記載されている。
【0003】
しかし、前記高分子封止材料は、LED光源からの発光により生じる熱により、劣化、変形するという問題を生じる場合があった。更に、近年の技術開発によりLED光源がより高輝度化されると、発熱量がより大きくなり、前記高分子封止材料の熱的耐久性が不十分であるという問題はより深刻となった。一方、非特許文献2では、酸窒化物および窒化物蛍光体が酸化物蛍光体に比べて高い耐熱性を持つことが記載されており、いっそう高い耐久性を持つ封止材が必要とされるようになってきた。
【0004】
このような背景のもと、高分子材料に代わる封止材料として、熱的耐久性がより高いガラス材料の探索が行われている。
例えば、特許文献1、2は、それぞれ発光ダイオードを封止する溶融ガラスに関するものである。また、特許文献3は、溶融法で作製した蛍光体分散用ガラスと、溶融ガラスに蛍光体を分散して、蛍光体分散ガラスを作製する方法が記載されている。
【0005】
しかし、溶融ガラスは非常に高温の反応工程を必要とする。そのため、この高温反応工程で、蛍光体は溶融ガラスと反応し、失活するという問題を生じた。
例えば、特許文献2には、TeOを主成分とする溶融ガラスを用いると900℃超では蛍光体が失活することが記載されている。
【0006】
ゾル−ゲル法は、高温反応工程を必要としないので、蛍光体をガラスに反応させることなく、蛍光体の失活を抑制した蛍光体分散ガラスを作製することができる。
例えば、特許文献4には、蛍光体粉末を分散させ、ゾル−ゲル法で作製した蛍光体分散ガラスが開示されている。また、特許文献5には、超微粒子を分散させ、ゾル−ゲル法で作製した蛍光体分散ガラスが開示されている。
【0007】
しかし、従来のゾル−ゲル法ではバルク状のガラスを作ることが難しく、低屈折率のシリカガラスが作れるのみであった。特許文献4においても、シリカガラスが利用されており、気泡の数と大きさによって一様な色調の光を放出出来ることが開示されている。これらの効果は蛍光体とガラスの屈折率差を変えることによっても可能である。例えば、高屈折率のTeOを添加したガラスを作製できれば、蛍光体の屈折率と同程度にして、蛍光体とガラスとの界面での発光強度の低下を抑制でき、発光効率を向上させることができる。
【0008】
なお、特許文献6には、ガラス粉末と蛍光体粉末を混合して焼結させて作った蛍光体分散ガラスが開示されている。しかし、これを用いても、前記問題を解決できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−11933号公報
【特許文献2】特開2008−19109号公報
【特許文献3】特願2010−027112
【特許文献4】特開2010−280523号公報
【特許文献5】特開2002−211935号公報
【特許文献6】特開2010−280797号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】K.Sakuma, K.Omichi, N, Kimura, M. Ohashi, D. Tanaka, N. Hirosaki, Y. Yamamoto, R. −J. Xie, T. Suehiro, Opt. Lett. 29 (2004) 2001−2003.
【非特許文献2】R.−J.Xie and N.Hirosaki,Sci.Tech.Adv.Mater.8(2007)588−600.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、蛍光体を高屈折率のガラスに均一に分散してなる蛍光体分散ガラスを、前記蛍光体を前記ガラスと反応させることなく、容易に製造可能な蛍光体分散ガラスの製造方法及び蛍光体分散ガラスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の蛍光体分散ガラスの製造方法は、ゾル−ゲル反応及び酸塩基反応を用いて、蛍光体とゾルを反応させることなく、シリコンアルコキシドと、金属塩化物および/または金属アルコキシドと蛍光体とを有する蛍光体分散ゾルを作製し、前記蛍光体分散ゾルをゲル化する蛍光体分散ゲル作製工程と、前記蛍光体分散ゲルを加熱して、蛍光体とガラスを反応させることなく、蛍光体分散ガラスを作製する工程と、を有する蛍光体分散ガラスの製造方法である。
前記蛍光体分散ガラスの製造方法において、前記シリコンアルコキシドが式Si(OR)で示され、前記金属塩化物が式MClで示され、前記金属アルコキシドM(OR)で示されるものであってもよい。但し、ORはアルコキシル基、Mは金属、nは金属種に応じた整数である。
【0013】
上記蛍光体分散ガラスの製造方法において、MはTe、Ti、Snから選択される一種、nは2または4としてもよい。
上記蛍光分散ガラスの製造方法において、MClはTeCl、TiCl、SnCl、SnClから選択された一種とし、M(OR)nは、Te(OR)、Ti(OR)、Sn(OR)、Sn(OR)から選択された一種としてもよい。
上記蛍光体分散ガラスの製造方法において、アルコキシ基ORは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基から選択される一種としてもよい。
上記蛍光体分散ガラスの製造方法において、前記金属塩化物および/または金属アルコキシドが3/7モル未満となるように、前記蛍光体分散ゾル体を作製することが好ましい。
【0014】
上記蛍光体分散ガラスの製造方法において、前記蛍光体分散ガラスで前記蛍光体が10mass%以下とすることが好ましい。
上記蛍光体分散ガラスの製造方法において、前記蛍光体が窒化物、酸化物又は酸窒化物のいずれかの材料であることが好ましい。
上記蛍光体分散ガラスの製造方法において、前記酸窒化物がSiAlONであることが好ましい。
【0015】
上記蛍光体分散ガラスの製造方法において、前記シリコンアルコキシドと前記尾金属塩化物および/または前記金属アルコキシドを加水分解・縮重合して高粘度の前駆ゾルを作製することが好ましい。
上記蛍光体分散ガラスの製造方法において、前記前駆ゾルの粘度は、100〜10000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
上記蛍光体分散ガラスの製造方法において、前記前駆ゾルに前記蛍光体を分散して、前記蛍光体分散ゾルを作製することが好ましい。
【0016】
上記前駆ゾルを作製する際、前記シリコンアルコキシドと前記金属塩化物および/または金属アルコキシドを混合したものに水を添加して加水分解してもよい。
あるいは、前記シリコンアルコキシドに水を添加して加水分解した後、前記金属塩化物および/または金属アルコキシドを加えてもよい。
前記の水は、pH7未満、または7超のものを用いることが好ましい。
上記蛍光体分散ガラスの製造方法において、前期蛍光体分散ゲルを加熱し、ガラスにすることが好ましい。
【0017】
上記蛍光体分散ガラスの製造方法において、前記蛍光体分散ゾルを作製後、加熱前に20℃以上の温度で1時間以上放置して、蛍光体分散ゲルを作製することが好ましい。
上記蛍光体分散ガラスの製造方法において、前記蛍光体分散ゲルを350℃以上に加熱して、蛍光体分散ガラスを作製することが好ましい。
【0018】
本発明の蛍光体分散ガラスは、MO−SiOガラスと、前記MO−SiOガラスに分散された蛍光体とを有し、MOがTeO、TiO、SnO2、SnOから選択される一種の金属酸化物成分であり、前記MOが30mol%以下であり、前記蛍光体が10mass%以下であることを特徴とする。
上記蛍光体分散ガラスにおいて、前記蛍光体は窒化物、酸化物又は酸窒化物のいずれかの材料であることが好ましい。前記酸窒化物はSiAlONであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の蛍光体分散ガラスの製造方法は、ゾル−ゲル法と酸塩基反応により、シリコンアルコキシドとTe、Ti、Snなどの金属Mの塩および/またはアルコキシドを加水分解・縮重合して蛍光体とを有する蛍光体分散ゾルを作製してから、前記蛍光体分散ゾルから蛍光体分散ゲルを作製する工程と、前記蛍光体分散ゲルを加熱して、蛍光体分散ガラスを作製する工程と、を有する蛍光体分散ガラスの製造方法である。シリコンアルコキシドと金属Mの塩あるいはアルコキシドは十分に反応して高粘度のゾルになった状態で蛍光体を加えるため、蛍光体がゾルと反応することなく、均一にゲル中に分散させることが出来る。
【0020】
シリコンアルコキシド1モルに対して金属Mが3/7モル以下となるように、前記蛍光体分散ゾル体を作製する構成なので、ゾル−ゲル反応及び酸塩基反応により、前記蛍光体を前記ガラスと反応させることなく、蛍光体を高屈折率のガラスに均一に分散させた蛍光体分散ゲルを作製することができ、その後、前記蛍光体分散ゲルを加熱することにより、容易に、蛍光体を高屈折率のガラスに均一に分散してなる蛍光体分散ガラスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の蛍光体分散ガラスの製造方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(本発明の実施形態)
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態である蛍光体分散ガラスの製造方法及び蛍光体分散ガラスについて説明する。
【0023】
<蛍光体分散ガラスの製造方法>
本発明の実施形態である蛍光体分散ガラスの製造方法は、図1に示すように、蛍光体分散ゲルを作製する工程(以下、蛍光体分散ゲル作製工程S1)と、蛍光体分散ガラスを作製する工程(以下、蛍光体分散ガラス作製工程S2)と、を有する。
【0024】
(蛍光体分散ゲル作製工程S1)
蛍光体分散ゲル作製工程S1は、ゾル−ゲル反応と酸塩基反応により、シリコンアルコキシドと塩化物および/または金属アルコキシドおよび蛍光体とを有する蛍光体分散ゾルを作製してから、ゾル−ゲル法により、前記蛍光体分散ゾルから蛍光体分散ゲルを作製する工程である。すなわち、この工程は、蛍光体分散ゾルを作製する工程と、前記ゾルをゲル化する工程を含む。
【0025】
シリコンアルコキシドはSi(OR)で表され、アルコキシル基(アルコキシ基)ORを構成するアルキル基Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を用いることができる。すなわち、アルコキシル基ORとしては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基などを用いることができる。
金属塩化物はMClで、金属アルコキシドはM(OR)で表される。ここで、Mは金属、ORはアルコキシル基、nは金属種に応じた整数である。アルコキシル基を構成するアルキル基Rはエチル基、プロピル基、メチル基、イソプロピル基、ブチル基などが用いられる。すなわち、アルコキシル基ORとしては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などを用いることができる。
【0026】
例えば、金属Mとしては、Te、Ti、Snなどを用いることができる。その場合、nは2または4の整数としてもよい。例えば、MClはTeCl、TiCl、SnCl、SnClから選択された一種とし、M(OR)は、Te(OR)、Ti(OR)、Sn(OR)2、Sn(OR)から選択された一種としてもよい。
例えば、シリコンアルコキシドとしてテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランから選択される一種を用いてもよい。シリコンアルコキシドと金属塩化物を用いてもよく、例えば、上記のシリコンアルコキシドと塩化テルル、塩化チタン、塩化スズから選択される一種を用いてもよい。金属塩化物として水和物を用いてもよい。金属塩化物と金属アルコキシドを併用してもよく、例えば、塩化チタンとチタンイソプロポキシドを用いてもよい。
【0027】
蛍光体分散ゾルを作製する際、シリコンアルコキシド、金属塩化物および/または金属アルコキシド、水を用いて前駆ゾルを作製した後、前記前駆ゾルに前記蛍光体を分散させて蛍光体分散ゾルを作製してもよい。
その場合、シリコンアルコキシドと金属塩化物および/または金属アルコキシドをあらかじめ混ぜておき、水を添加して加水分解し、溶液(ゾル)とする場合と、シリコンアルコキシドをあらかじめ水を用いて加水分解した後に、他の原料と混合し、溶液(ゾル)を作製する場合がある。
【0028】
これらの溶液には、メタノール、エタノール、プロパノール、などのアルコールやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートやTHFなどを溶媒として添加してもよい。またジメチルフォルムアミド(DMF)や炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)のような乾燥制御剤を添加してもよい。これらは、シリコンアルコキシドと金属塩化物および/または金属アルコキシドに水を加えた後に加えてもよい。あるいはシリコンアルコキシドを加水分解する際に加えてもよい。または、シリコンアルコキシドを加水分解した後、金属塩化物および/または金属アルコキシドとともに添加してもよい。
【0029】
シリコンアルコキシドと金属塩化物および/または金属アルコキシドの混合比は、特に限定されないが、シリカガラスとは異なる屈折率を付与するため、Siに対する金属Mのモル比M/Siが0を超えることが好ましい。また、モル比M/Siが3/7以下であることが好ましく、3/7未満であることがより好ましい。モル比M/Siが大きくなると、均質なゾルを得るのが困難となる。例えば、モル比M/Siは0.1から0.25の範囲であってもよい。
【0030】
水は、Si+M1モルに対して1〜10モルとすることが好ましく、2〜4モルとすることがより好ましい。これにより、ガラス化した時に、透明なバルクガラスを生成できる。1モル未満とした場合とした場合には、反応が進まず、高粘度のゾルを得ることが難しくなるため、好ましくない。10モル超とした場合には反応が早く進んでしまい、沈殿が形成されるため、好ましくない。
アルコールはSi+M1モルに対して0〜30モルとすることが好ましく、2〜10モルとすることがより好ましい。
乾燥制御剤はSi+M1モルに対して0〜20モルとすることが好ましく、1〜5モルとすることがより好ましい。
【0031】
加水分解で用いる水はpH7程度の蒸留水を用いてもよい。pH7未満、またはpH7超の水を用いることが好ましい。pH3以下あるいはpH10以上とすることがより好ましい。また、pH1以上2以下としてもよい。pHの調整には、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸などの酸を用いるかあるいはアンモニアや水酸化ナトリウムなどのアルカリを用いることが好ましい。
pH7未満とした場合には、H基が過剰にあるので、これがシリコンアルコキシドを攻撃し、アルコキシル基(−OR)は一つずつ下記反応式(1)で表される加水分解反応によって(−OH)基に変化する。Rにはメチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0032】
[化1]
Si(OR)+HO→(HO)−Si−(OR)+ROH…(1)
【0033】
pH7未満とすることにより、迅速に加水分解反応を進めることができる。
なお、この加水分解反応は、pHが小さいほど早く行われ、pHが7に近づくほどゆっくりしたものとなる。pH1以上2以下とすることにより、最適な反応速度で加水分解することができる。
【0034】
一方、pH7超とした場合には、OH基が過剰にあるので、これがシリコンアルコキシドを攻撃し、急激に4つすべてのアルコキシル基が反応し、下記反応式(2)で表される加水分解反応が生じる。
【0035】
[化2]
Si(OR)+4HO→Si(OH)+4ROH…(2)
【0036】
加水分解は、20℃〜90℃で行うことが好ましく、26℃〜60℃に加熱することが好ましい。加水分解を20℃〜90℃で行うことにより、均質なゾルを作製できる。20℃未満とした場合には、ゾル形成のために10日以上の非常に長い時間を要し、好ましくない。一方、90℃超とした場合には、反応中に原料が変性してしまう為、好ましくない。
また、加水分解は、前記温度で保持することが好ましく、原料の種類によって粘性の上昇は異なる。メチル基→エチル基→プロピル基とRの分子量が大きくなるにつれて長時間となる。
【0037】
なお、ゾルーゲル反応は、加水分解反応と縮重合反応とからなる反応である。縮重合反応は、下記反応式(3)又は(4)で表され、通常、Si−O−Si結合を有するSiOを生成する。MとしてTiやSn、Teを含むアルコキシドを添加した場合にも同様の加水分解反応を起こし、Si−O−M結合を有するSiO−MOを生成する。
【0038】
[化3]
Si(OH)+Si(OR)→2SiO+4ROH…(3)
【0039】
[化4]
Si(OH)+Si(OH)→2SiO+4HO…(4)
【0040】
金属Mを含む塩化物を原料として用いる場合には次の式(5)のような反応が起こる。
[化5]
MCl +R’OH → M(OR’) +HCl…(5)
これによって式(1)〜(4)と同様の加水分解縮重合反応が起こる。
また、反応式(6)に示す酸塩基反応も進行し、Si−O−M結合を有するSiO−MOのゲルが生成される。
【0041】
[化6]
Si(OH)+MCl→SiO−MO+4HCl↑…(6)
【0042】
加水分解縮重合反応及び酸塩基反応により、ゾルの粘度が100〜10000mPa・sまで上昇するまで攪拌を続けることが好ましい。粘度は500〜3000mPa・sがより好ましい。反応温度は、20℃〜80℃で行うことが好ましく、26℃〜60℃に加熱することが好ましい。加水分解を20℃〜80℃で行うことにより、均質なゾルを作製できる。20℃未満とした場合には、ゾル形成のために10日以上の非常に長い時間を要し、好ましくない。一方、80℃超とした場合には、反応中に原料が変性してしまう為、好ましくない。
【0043】
ゾル−ゲル反応あるいは酸塩基反応の際、蛍光体を分散することが好ましい。ゾル−ゲル反応あるいは酸塩基反応が進み、ゾルの粘性が高くなるまで、攪拌を続けた後、蛍光体を分散させることがより望ましい。これにより、ゾルと蛍光体を反応させることなく、蛍光体を均一に分散させた蛍光体分散ゾルを作製でき、攪拌を止めた後に、蛍光体が沈殿することなく固化し、蛍光体分散ゲルが作製できる。
蛍光体としては市中で入手できるものであれば使用できる。たとえば、窒化物蛍光体、酸化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、硫化物蛍光体、酸硫化物蛍光体、ハロゲン化物蛍光体などのいずれかの材料であることが好ましい。SiO−MOガラスに均一にかつ容易に添加可能であるためである。
酸窒化物は、例えば、SiAlONが好ましい。酸化物はたとえばCe添加YAGであり、窒化物はたとえばCaAlSiNが好ましい。
【0044】
蛍光体は、ガラスに対して0mass%を超え、10mass%以下とすることが好ましい。10mass%以下とすれば、ガラスに均一に分散させることが可能であり、高発光効率を有する蛍光体分散ガラスを製造することができる。10mass%超とした場合には、ガラス化した時にバルクの形成が困難になるため、好ましくない。
【0045】
なお、前記蛍光体分散ゾルを作製後、加熱前に10〜50℃の温度で1時間以上放置し、熟成させることが好ましい。これにより、蛍光体を分散したゲルの骨格が強くなり、壊れにくいガラスを作製することが出来る。
熟成温度は、25〜35℃とすることがより好ましい。20℃以上で放置することにより、さらにゾルーゲル反応が進行し、蛍光体を安定ゲル中に分散させたまま保つことが可能となる。25℃未満とした場合には、熟成の進行が遅くなる。
また、放置時間は温度が低いときはより長くする方が好ましい。完全にゲル化した後も、十分に長い時間熟成するほど、反応によって出来たアルコールや水が外に出て、より密度の高いゲルになる。しかし、上限時間は特に規定されないが、48時間超とした場合には、生産効率が低下する為、好ましくない。
【0046】
(蛍光体分散ガラス作製工程S2)
蛍光体分散ガラス作製工程S2は、前記蛍光体分散ゲルを加熱して、蛍光体分散ガラスを作製する工程である。
まず、蛍光体分散ゲル中には多くのアルコールや水、乾燥制御剤などが残っており、これを除去することが必要である。これらの蒸発温度近傍では非常に大きな毛管力が働くため、ゆっくりとしたスピードで加熱する。
【0047】
なお、加熱工程は、一定の昇温速度で所定の加熱温度にする1段階加熱を用いてもよいが、通常、段階的に温度を昇温させる多段階加熱とする。
以下、一例として、3段階加熱工程について説明する。
[1段階目]
まず、室温(26℃)から第1の加熱温度まで、所定の昇温速度で昇温させた後、その温度で一定時間保持する。
第1の加熱温度は、50〜100℃とすることが好ましく、70〜90℃とすることがより好ましい。これにより、アルコールをゆっくり蒸発させながら、ゲル骨格を収縮し強くする。50℃未満とした場合には、上記反応の反応速度が遅くなる。一方、100℃超とした場合には、ゾルの一部が揮発する為、好ましくない。
昇温速度は、0.1〜5℃/hとすることが好ましく、1〜3℃/hとすることがより好ましい。これにより、ゆっくりとアルコールを蒸発させることが出来る。0.1℃/h未満とした場合には、上記反応の反応速度は十分に進行するが、生産効率が低下するため好ましくない。一方、5℃/h超とした場合には、乾燥時の亀裂が形成されやすくなる為、好ましくない。
第一の加熱温度に達した後、穴を数カ所開けて保持する時間は、10〜240時間とすることが好ましく、20〜50時間とすることがより好ましい。これにより、反応によって出たアルコールの乾燥を効率よく行うことができる。10時間未満とした場合には、乾燥が十分に行われないため、その後の乾燥で亀裂が形成しやすくなる。一方、240時間超とした場合には、生産効率が低下する為、好ましくない。
【0048】
[2段階目]
次に、第1の加熱温度から第2の加熱温度まで、所定の昇温速度で昇温させた後、その温度で一定時間保持する(以下、乾燥工程)。乾燥工程は、蛍光体分散ゲルを乾燥する工程である。
第2の加熱温度は、第1の加熱温度以上、200℃以下の温度とすることが好ましく、第1の加熱温度以上180℃以下の温度とすることがより好ましい。第1の加熱温度を超えて180℃以下の温度とすることがさらに好ましい。これにより、残っている水や乾燥制御剤を完全に乾燥することができる。第1の加熱温度未満とした場合には、完全に乾燥することができず、好ましくない。一方、200℃超とした場合には、残存する有機物の炭化が始まり着色する為、好ましくない。
昇温速度は、1〜5℃/hとすることが好ましく、2〜3℃/hとすることがより好ましい。これにより、乾燥を効率よく行うことができる。1℃/h未満とした場合には、十分な乾燥を行うことができるが生産効率が低下するため、好ましくない。一方、5℃/h超とした場合には、急激な乾燥により亀裂が生じてしまう為、好ましくない。
保持時間は、12〜240時間とすることが好ましく、24〜48時間とすることがより好ましい。これにより、完全に乾燥することができる。12時間未満とした場合には、完全に乾燥することができない。一方、48時間超とした場合には、生産効率が低下する為、好ましくない。
【0049】
[3段階目]
次に、乾燥ゲルを室温から第3の加熱温度まで、所定の昇温速度で昇温させた後、その温度で一定時間保持する(以下、ガラス化工程)。ガラス化工程は、完全に有機物を除去し、焼結することによって蛍光体分散ゲルをガラス化する工程である。
第3の加熱温度は、350〜1100℃とすることが好ましく、Mの種類によって異なる。400℃未満とした場合には、有機物が十分に除去されておらず、残存有機物の炭化による着色が生じてしまい、好ましくない。一方、温度が高すぎる場合には、部分的に結晶化し、白色になる為、好ましくない。
昇温速度は、50℃/h以下とすることが好ましく、3〜30℃/hとすることがより好ましい。これにより、ガラス化を効率よく行うことができる。3℃/h未満とした場合には、生産効率が低下するため、好ましくない。一方、50℃/h超とした場合には、亀裂が生じやすくなる為、好ましくない。
保持時間は、1〜240時間とすることが好ましく、2〜4時間とすることがより好ましい。これにより、十分に焼結が進み、ガラスが形成される。1時間未満とした場合には、上記ガラス化できない部分が生じる。一方、240時間超とした場合には、生産効率が低下する為、好ましくない。
以上の工程の後、電気炉の中で放冷して、室温にして、蛍光体分散ガラスを作製できる。
【0050】
<蛍光体分散ガラス>
本発明の実施形態である蛍光体分散ガラスは、MO−SiOガラスと、前記MO−SiOガラスに分散された蛍光体と、を有して概略構成されている。ここでMOはガラス中の金属酸化物成分を示し、例えば、TeO、TiO、SnO、SnOなどから選択できる。
また、MO−SiOガラスでMOは30mol%以下とされている。これにより、MO−SiOガラスを安定な構造とすることができる。MOを30mol%超とすると、ガラス化が困難となる。また、結晶の形成により、ガラスの透明度が低下するため蛍光体からの蛍光を外部にとりだすことが困難となる。
また、前記蛍光体がMO−SiOガラスの総量に対して外割で10mass%以下であることが好ましい。これにより、Si−O−M系材料に均一に分散させることが可能であり、高発光効率を有する蛍光体分散ガラスとすることができる。
なお、蛍光体としては、上記本発明の蛍光体分散ガラスの製造方法に関する説明で記載したものを用いることができる。
【0051】
なお、前記蛍光体が窒化物、酸化物又は酸窒化物のいずれかの材料であることが好ましく、特に、前記酸窒化物がSiAlONであることが好ましい。これにより、高発光効率を有する蛍光体分散ガラスとすることができる。
例えば、高屈折率のSiAlON蛍光体を高屈折率のTeOを添加したガラスに均一に分散してなるガラスとすることにより、蛍光体の屈折率とガラスの屈折率を同程度にでき、散乱光の影響を減少させ、蛍光体とガラスとの界面での発光強度の低下を抑制して、発光効率を向上させることができる。
【0052】
本発明の一実施形態である蛍光体分散ガラスの製造方法は、ゾル−ゲル反応及び酸塩基反応を用いて、テトラメトキシシランと塩化テルルと蛍光体とを有する蛍光体分散ゾルを作製してから、前記蛍光体分散ゾルから蛍光体分散ゲルを作製する工程と、前記蛍光体分散ゲル体を加熱して、蛍光体分散ガラスを作製する工程と、を有する蛍光体分散ガラスの製造方法であって、テトラメトキシシラン1モルに対して塩化テルルが3/7モル以下となるように、前記蛍光体分散ゾル体を作製する構成なので、ゾル−ゲル反応及び酸塩基反応により、前記蛍光体を前記ガラスと反応させることなく、蛍光体を高屈折率のガラスに均一に分散させた蛍光体分散ゲルを作製することができ、その後、前記蛍光体分散ゲルを加熱することにより、容易に、蛍光体を高屈折率のガラスに均一に分散してなる蛍光体分散ガラスを製造することができる。
【0053】
本発明の他の実施形態として、テトラエトキシシランと塩化テルルと蛍光体を有するゾルを作製し、前記ゾルをゲル化して蛍光体分散ゲルを作製する工程と、蛍光体分散ゲル体を加熱して、蛍光体分散ガラスを作製する工程とを有する蛍光体分散ガラスの製造方法を用いることもできる。
本発明の他の実施形態として、テトラメトキシシランと塩化チタンとチタンイソプロポキシドと蛍光体を有するゾルを作製し、前記ゾルをゲル化して蛍光体分散ゲルを作製する工程と、蛍光体分散ゲル体を加熱して、蛍光体分散ガラスを作製する工程とを有する蛍光体分散ガラスの製造方法を用いることもできる。
本発明の他の実施形態として、テトラメトキシシランと塩化スズと蛍光体を有するゾルを作製し、前記ゾルをゲル化して蛍光体分散ゲルを作製する工程と、蛍光体分散ゲル体を加熱して、蛍光体分散ガラスを作製する工程とを有する蛍光体分散ガラスの製造方法を用いることもできる。
【0054】
本発明の実施形態である蛍光体分散ガラスは、MO−SiOガラスと、前記MO−SiOガラスに分散された蛍光体を有し、金属酸化物MOが30mol%未満であり、前記蛍光体が10mass%以下である構成なので、高屈折率のMO−SiOガラスを安定な構造にできるとともに、蛍光体を均一に分散することができる。
【0055】
本発明の蛍光体分散ガラスの用途は特に限定されないが、一例としてLEDの封止材料として用いる場合、LED光源を蛍光体分散ゾルまたは蛍光体分散ゲルに封入し、ついでゲルのガラス化を行ってもよい。これにより、高温処理で蛍光体の発光特性を損なうことなく、蛍光体分散ガラス中にLEDを封入できる。またガラス中には金属酸化物成分が添加されているので、シリカガラスに蛍光体を分散させた場合よりも良好な発光特性を得ることができる。
【0056】
本発明の実施形態である蛍光体分散ガラスの製造方法及び蛍光体分散ガラスは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0057】
(実施例1)
まず、テトラメトキシシラン(TMOS)8.08g(0.053モル)に塩酸を用いて調整したpH2の水1.90ml(0.106モル)を加え、50℃で6時間加水分解して、ゾルを作製した。
更に、ゾルに塩化テルル(TeCl)1.43g(0.0053モル)を添加してから、室温(26℃:反応温度)で5分攪拌した後、SiAlON蛍光体を0.08g添加して、蛍光体分散ゾルを作製した。
次に、蛍光体分散ゾルを26℃で1時間放置して、蛍光体分散ゲルを作製した。室温で12h放置し、熟成を行った。
次に、蛍光体分散ゲルを電気炉内に配置し、26℃から80℃まで、昇温速度2.7℃/hで昇温した後、80℃で1日乾燥を行った。
更に、80℃から150℃まで、昇温速度2.9℃/hで昇温した後、150℃で1日間保持し、乾燥ゲルを得た。
更に、昇温速度20℃/hで150℃から400℃まで昇温し、400℃で2時間保持した後、電気炉の中で放冷して、蛍光体分散ガラスを作製した。
【0058】
次に、この蛍光体分散ガラスを、厚みが3mm、大きさが5mm×10mmの平板状に加工してから、両面を鏡面状に研磨して、実施例1の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0059】
SiAlON蛍光体の励起波長である450nmで励起したところ、585nmをピークに、500nm〜780nmの広い範囲にわたって発光が認められた。色度座標はx=0.40,y=0.32になり、ほぼ白色であった。
また、発光効率は28%であった。この発光効率は、励起光をサンプルに照射したときのエネルギーと積分球によって測定した発光のエネルギーの比率をパーセント表示したものである。
【0060】
(実施例2)
3時間加水分解した他は実施例1と同様にして、実施例2の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0061】
(実施例3)
10時間加水分解した他は実施例1と同様にして、実施例3の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0062】
(実施例4)
塩化テルル3.58g(0.013モル)とした他は実施例1と同様にして、実施例4の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0063】
(実施例5)
まず、テトラメトキシシラン8.08g(0.053モル)と塩化テルル1.43g(0.0053モル)を混合した後、塩酸で調整したpH2の水1.90ml(0.106モル)で、26℃で20分加水分解した後、SiAlON蛍光体を0.08g添加した。
次に、蛍光体分散ゾルを26℃で1時間放置して、蛍光体分散ゲルを作製した。
次に、室温から80℃まで2.7℃/hで昇温した後、1日乾燥を行った。次に、150℃まで2.9℃/hで昇温し、1日間乾燥した。次に、20℃/hで400℃まで昇温し、2時間保持した後、電気炉の中で放冷して、蛍光体分散ガラスを作製した。実施例1と同様に加工を行い、実施例5の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0064】
(実施例6)
SiAlON蛍光体を0.02g添加した他は実施例1と同様にして、実施例6の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0065】
(実施例7)
SiAlON蛍光体を0.2g添加した他は実施例1と同様にして、実施例7の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0066】
(実施例8)
pH3の水を用いた他は実施例1と同様にして、実施例8の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0067】
(実施例9)
pH4の水を用いた他は実施例1と同様にして、実施例9の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0068】
(実施例10)
まず、テトラメトキシシラン4.57g(0.03モル)と塩化テルル0.898g(0.0033モル)を混合した後、塩酸で調整したpH2の水1.20ml(0.067モル)で、26℃で3時間加水分解した後、SiAlON蛍光体を0.04g添加した。
次に、蛍光体分散ゾルを26℃で1時間放置して、蛍光体分散ゲルを作製した。
次に、室温から80℃まで2.7℃/hで昇温した後、1日乾燥を行った。次に、150℃まで2.9℃/hで昇温し、1日間乾燥した。次に、20℃/hで400℃まで昇温し、2時間保持した後、電気炉の中で放冷して、蛍光体分散ガラスを作製した。実施例1と同様に加工を行い、実施例10の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0069】
(実施例11)
蛍光体添加前の加水分解を50℃で3時間行った以外は、実施例10と同様にして、実施例11の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0070】
(実施例12)
アンモニアで調整したpH10の水を加水分解に用いた以外は、実施例10と同様にして、実施例12の蛍光体分散ガラスを作製した。
(実施例13)
アンモニアで調整したpH10の水を加水分解に用い、蛍光体添加前の加水分解を50℃で3時間行った以外は、実施例10と同様にして、実施例13の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0071】
(実施例14)
まず、テトラメトキシシラン4.04g(0.027モル)をpH2の水0.972ml(0.054モル)で、50℃で6時間加水分解した後、塩化テルル0.727g(0.0027モル)をメタノール0.864g(0.027モル)に26℃で1時間攪拌して溶解した溶液に添加した。
次に、26℃で5分攪拌した後、SiAlON蛍光体を0.08g添加した。
次に、室温から80℃まで2.7℃/hで昇温した後、1日熟成を行った。次に、150℃まで2.9℃/hで昇温し、3日間乾燥した。次に、得られた乾燥ゲルを20℃/hで400℃まで昇温し、2時間保持した後、電気炉の中で放冷して、実施例1と同様に加工を行い、実施例14の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0072】
(実施例15)
まず、テトラメトキシシラン4.57g(0.03モル)を塩酸で調整したpH2の水1.08ml(0.06モル)で、50℃で7時間加水分解した後、塩化テルル0.898g(0.0033モル)をメタノール1.92g(0.06モル)に26℃で1時間攪拌して溶解した溶液に添加した。
次に、26℃で5分攪拌した後、SiAlON蛍光体を0.04g添加した。
次に、室温から80℃まで2.7℃/hで昇温した後、1日熟成を行った。次に、150℃まで2.9℃/hで昇温し、3日間乾燥した。次に、得られた乾燥ゲルを20℃/hで400℃まで昇温し、2時間保持した後、電気炉の中で放冷して、実施例1と同様に加工を行い、実施例15の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0073】
(実施例16)
テトラメトキシシランの加水分解を50℃で3時間の条件で行った以外は、実施例15と同様にして、実施例16の蛍光体分散ガラスを作製した。
(実施例17)
テトラメトキシシランの加水分解を50℃で3時間の条件で行い、塩化テルルを溶解するメタノールの量を3.84g(0.12モル)とした以外は、実施例15と同様にして、実施例17の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0074】
(実施例18)
テトラメトキシシラン4.04g(0.027モル)とメタノール1.94g(0.0108モル)にアンモニアで調整したpH10の水0.972ml(0.054モル)を添加し、26℃で1時間加水分解した後、塩化テルル0.727g(0.0027モル)と混合した。26℃で5分攪拌した後、SiAlON蛍光体を0.08g添加した。実施例1と同様に乾燥させ、実施例18の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0075】
(実施例19)
テトラエトキシシラン3.12g(0.015モル)とエタノール2.76g(0.006モル)に塩酸で調整したpH2の水0.54g(0.03モル)を添加し、50℃で6時間攪拌した。塩化テルル0.404g(0.0015モル)を加えて、24時間攪拌し、SiAlON蛍光体を0.08g添加した。実施例1と同様に乾燥させ、実施例19の蛍光体分散ガラスを作製した。
(実施例20)
SiAlON蛍光体を0.044g添加した以外は、実施例19と同様にして、実施例20の蛍光体分散ガラスを作製した。
【0076】
(比較例1)
テトラメトキシシラン8.08g(0.053モル)とし、pH2の水1.90ml(0.106モル)とし、塩化テルル6.14g(0.023モル)とした他は実施例1と同様にして、酸窒化物蛍光体ガラスの作製を試みた。しかし、塩化テルルは完全に溶けなかった。
【0077】
(比較例2)
テトラメトキシシラン8.08g(0.053モル)とし、pH2の水1.90ml(0.0053モル)とし、塩化テルル14.27g(0.053モル)とした他は実施例1と同様にして、酸窒化物蛍光体ガラスの作製を試みた。しかし、塩化テルルは完全に溶けなかった。
【0078】
(比較例3)
まず、テトラメトキシシラン8.08g(0.053モル)に塩化テルル1.43g(0.0053モル)を混合した。
次に、室温で1時間攪拌した後、SiAlON蛍光体を0.08g添加した。次に、室温から80℃まで80℃/hで昇温した後40分攪拌を行った。次に、150℃まで2.9℃/hで昇温したところ、灰色に変化した乾燥ゲルが得られた。乾燥ゲルからはTe11Cl結晶の析出が確認された。
【0079】
(比較例4)
テトラメトキシシラン8.08g(0.053モル)とし、塩化テルル6.14g(0.023モル)とし、26℃とした他は比較例3と同様にして、酸窒化物蛍光体ガラスの作製を試みた。灰色に変化した乾燥ゲルが得られた。
【0080】
(比較例5)
塩化テルル3.07g(0.211モル)、メタノール6.76g(0.211モル)とした他は実施例14と同様にして、酸窒化物蛍光体ガラスの作製を試みた。しかし、ガラス部分からTeO2が析出し、白色がかっていた。
【0081】
(比較例6)
反応温度を80℃とした他は比較例5と同様にして、比較例6の窒化物蛍光体ガラスの作製を試みた。
しかし、粉末状となり、比較例6の酸窒化物蛍光体ガラスを形成できなかった。
【0082】
(比較例7)
TeClの代わりにTeO0.846g(0.0053モル)を用いた他は実施例1と同様にして、比較例7の酸窒化物蛍光体ガラスの作製を試みた。TeOはゾルに溶解しなかった。
【0083】
(比較例8)
水を1.08g(0.06モル)とし、テトラメトキシシランの加水分解を50℃で6時間の条件で行い、塩化テルルを3.46g(0.013モル)とし、塩化テルルを溶解するメタノールの量を4.11g(0.128モル)とした以外は、実施例15と同様にして、酸窒化物蛍光体ガラスの作製を試みた。しかしガラスは析出物により失透し、白色がかっていた。
【0084】
(比較例9)
水を1.08g(0.06モル)とし、塩化テルルを3.46g(0.013モル)とし、蛍光体添加前の加水分解を50℃で3時間行った以外は、実施例10と同様にして、酸窒化物蛍光体ガラスの作製を試みた。しかしガラスは析出物により失透し、白色がかっていた。
【0085】
(比較例10)
塩化テルル2.18g(0.0081モル)とし、実施例1と同様に蛍光体分散ガラスを作製したところ、ガラスは白色になり、TeOおよびTe11Cl12が形成された。
表1、表2、表3に、実験条件及び実験結果をまとめた。表の加水分解工程の欄で、Iは、テトラメトキシシラン(TMOS)を加水分解後、TeClを混合する場合を、IIはTMOSにTeClを混合後、加水分解する場合を、IIIはTMOSを加水分解後、メタノールに溶解したTeClと混合する場合を、IVはTMOSにメタノールを添加して加水分解後、TeClを混合する場合を、Vはテトラエトキシシラン(TEOS)にエタノールを添加して加水分解後、TeClを混合する場合をそれぞれ示している。I’はTMOSを加水分解後、TeOを混合する場合を示している。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
(実施例21)
テトラメトキシラン2.74g(0.018モル)と塩化チタン0.114g(0.0006モル)、チタンイソプロポキシド0.398g(0.0014モル)を混合した液に、塩酸で調整したpH1の水を1.8g(0.1モル)滴下し、メタノール1.8g(0.056モル)加え、攪拌する。その後プロピレンカーボネート6.12g(0.06モル)加えて粘度が1000mPa・s以上に上昇するまで26℃で150時間攪拌した。SiAlON蛍光体0.062gを添加し、ゲル化させた。ゲルを1.7℃/hで昇温し、120℃で1時間乾燥させて乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルは4.2℃/hで400℃まで昇温し、さらに8.3℃/hで1000℃まで昇温した後、1時間保持した後、電気炉の中で放冷して実施例21の酸窒化物蛍光体ガラスを作製した。
【0090】
(実施例22)
SiAlONを0.012g添加した他は実施例21と同様にして実施例22の蛍光体ガラスを作製した。
(実施例23)
SiAlONを0.12g添加した他は実施例22と同様にして実施例23の蛍光体ガラスを作製した。
【0091】
(実施例24)
テトラメトキシシランを2.13g(0.014モル)、塩化チタンを0.34g(0.0018モル)、チタンイソプロポキシドを1.19g(0.0042モル)、炭酸プロピレンを5.94g(0.058モル)とした以外は、実施例21と同様にして、実施例24の酸窒化物蛍光体ガラスを作製した。
【0092】
(実施例25)
テトラメトキシラン2.44g(0.016モル)と塩化チタン0.23g(0.0012モル)、チタンイソプロポキシド0.80g(0.0028モル)とした他は実施例21と同様に実施例25の酸窒化物蛍光体ガラスを作製した。
(実施例26)
炭酸プロピレンを5.76g(0.056モル)とした以外は、実施例25と同様にして実施例26の酸窒化物蛍光体ガラスを作製した。
(実施例27)
炭酸プロピレンを5.94g(0.058モル)とした以外は、実施例25と同様にして実施例27の酸窒化物蛍光体ガラスを作製した。
【0093】
(実施例28)
プロピレンカーボネート2.04g(0.02モル)とした他は実施例21と同様にして、実施例28の酸窒化物蛍光体ガラスを作製した。
(実施例29)
塩化チタン0.15g(0.0008モル)、チタンイソプロポキシド0.34g(0.0012モル)、プロピレンカーボネート1.96g(0.019モル)とした以外は、実施例21と同様にして、実施例29の酸窒化物蛍光体ガラスを作製した。
【0094】
(実施例30)
塩化チタン0.15g(0.0008モル)、チタンイソプロポキシド0.34g(0.0012モル)とした他は実施例21と同様にして、実施例30の蛍光体ガラスを作製した。
(実施例31)
塩化チタン0.08g(0.0004モル)、チタンイソプロポキシド0.45g(0.0016モル)とした他は実施例21と同様にして、実施例31の蛍光体ガラスを作製した。
【0095】
(実施例32)
塩化チタン0.08g(0.0004モル)、チタンイソプロポキシド0.45g(0.0016モル)、プロピレンカーボネート2.00g(0.02モル)とした他は実施例21と同様にして、実施例32の蛍光体ガラスを作製した。
(実施例33)
pH2の水を用いた他は実施例21と同様にして、実施例33の蛍光体ガラスを作製した。
【0096】
(実施例34)
テトラメトキシラン2.74g(0.018モル)と塩化チタン0.114g(0.0006モル)、チタンイソプロポキシド0.398g(0.0014モル)を混合した液に、塩酸で調整したpH1の水を1.8g(0.1モル)滴下し、メタノール1.8g(0.056モル)加え、実施例21と同様に攪拌する。その後ジメチルフォルムアミド(DMF)4.30g(0.059モル)加えて実施例21と同様に実施例34の蛍光体ガラスを作製した。
【0097】
(比較例11)
テトラメトキシラン1.83g(0.012モル)と塩化チタン0.303g(0.0016モル)、チタンイソプロポキシド1.82g(0.0064モル)とした他は実施例21と同様にして、比較例11の蛍光体ガラスを作製したところ、不透明な焼結体が得られた。
【0098】
(比較例12)
テトラメトキシラン1.22g(0.008モル)と塩化チタン0.455g(0.0024モル)、チタンイソプロポキシド2.73g(0.0096モル)とした他は実施例21と同様にして、ゾルを作製したものの、ゲル化が起こらず、ガラスを作製することが出来なかった。
【0099】
(比較例13)
pH3の水を用いた他は実施例21と同様にしたところ、ゾルを形成する際に、沈殿が生じてしまい、均質なゲルを作製することが出来なかった。
表4、表5に、実験条件及び実験結果をまとめた。表でTi(OiPr)4はチタンイソプロポキシドをDMFはジメチルフォルムアミドを示す。
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
(実施例35)
テトラメトキシシラン4.57g(0.03モル)と塩化スズ二水和物0.75g(0.003モル)、メタノール1.07g(0.03モル)を攪拌し、pH2に調整した水を滴下し、さらに攪拌した。SiAlONを0.11g添加し、攪拌し,蛍光体分散ゾルを得た。次に、蛍光体分散ゾルを26℃で1時間放置して、蛍光体分散ゲルを作製した。実施例1と同様に乾燥、焼結を行い、実施例35の蛍光体分散ガラスを作製したところ、透明なガラスを得ることができた。
【0103】
上記の説明および、表1〜表5に示したように、本願の実施例では、ガラス化に成功したが、比較例では沈殿物の形成や析出物の形成、粉末化などにより、透明なバルクガラスは形成されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の蛍光体分散ガラス及びその製造方法は、高屈折率の蛍光体を高屈折率のガラスに均一に分散してなる高発光効率の蛍光体分散ガラスを、前記蛍光体を前記ガラスと反応させることなく、容易に製造可能な蛍光体分散ガラスの製造方法及び蛍光体分散ガラスに関するものであり、この蛍光体分散ガラスを発光素子に応用して、高輝度、多色化を行うことができ、LED産業、照明産業等において利用可能性がある。
図1