(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713312
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 40/00 20060101AFI20150416BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
F25B40/00 V
F25B1/00 101E
F25B1/00 321A
F25B1/00 331Z
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-242164(P2010-242164)
(22)【出願日】2010年10月28日
(65)【公開番号】特開2012-93048(P2012-93048A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博
【審査官】
関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−101043(JP,A)
【文献】
特開2007−240041(JP,A)
【文献】
特開2008−149812(JP,A)
【文献】
特開2007−322001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 40/00
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクル内を循環する冷媒が管内を蒸発器出口から圧縮機入口へと流れる内管と、前記冷媒が管内を凝縮器出口から蒸発器入口へと流れる外管とからなる二重管式内部熱交換器を有し、前記外管の管内を流れる前記冷媒の一部を該外管の蒸発器入口側から前記内管の蒸発器出口側に流入させるバイパス孔が前記内管の管壁面上に形成され、前記バイパス孔に、該バイパス孔内へと流入する冷媒の圧力を減少させる膨張作用が付与されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
冷凍サイクル内を循環する冷媒が管内を蒸発器出口から圧縮機入口へと流れる内管と、前記冷媒が管内を凝縮器出口から蒸発器入口へと流れる外管とからなる二重管式内部熱交換器を有し、前記外管の管内を流れる前記冷媒の一部を該外管の蒸発器入口側から前記内管の蒸発器出口側に流入させるバイパス孔が前記内管の管壁面上に形成され、前記外管の管壁内周面上であって前記バイパス孔よりも上流側に管内の流路断面積を絞る絞り機構が設けられ、該絞り機構に前記外管の管内を流れる前記冷媒の圧力を減少させる膨張作用が付与されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記バイパス孔は、前記内管の管壁外周面から管壁内周面に向けて孔径が減少するように形成されている、請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記バイパス孔を介して前記外管の管内から前記内管の管内に流入する冷媒流量の割合が、前記外管の管内を流れる冷媒流量の5〜35%に設定されている、請求項1〜3のいずれかに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記バイパス孔が、前記内管の管壁面上に複数形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記内管の管壁面上に差圧作動弁が設けられている、請求項1〜5のいずれかに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記差圧作動弁の開弁圧が1.0MPa以上に設定されている、請求項6に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
冷凍サイクル内を循環する冷媒が管内を蒸発器出口から圧縮機入口へと流れる外管と、前記冷媒が管内を凝縮器出口から蒸発器入口へと流れる内管とからなる二重管式内部熱交換器を有し、前記内管の管内を流れる前記冷媒の一部を該内管の蒸発器入口側から前記外管の蒸発器出口側に流入させるバイパス孔が前記内管の管壁面上に形成され、前記バイパス孔に、該バイパス孔内へと流入する冷媒の圧力を減少させる膨張作用が付与されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項9】
冷凍サイクル内を循環する冷媒が管内を蒸発器出口から圧縮機入口へと流れる外管と、前記冷媒が管内を凝縮器出口から蒸発器入口へと流れる内管とからなる二重管式内部熱交換器を有し、前記内管の管内を流れる前記冷媒の一部を該内管の蒸発器入口側から前記外管の蒸発器出口側に流入させるバイパス孔が前記内管の管壁面上に形成され、前記外管の管壁内周面上であって前記バイパス孔よりも上流側に管内の流路断面積を絞る絞り機構が設けられ、該絞り機構に前記内管の管内を流れる前記冷媒の圧力を減少させる膨張作用が付与されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置の蒸気圧縮式冷凍サイクル等に用いられる、内部熱交換器を有する冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素等の冷媒を用いて冷暖房運転を行うヒートポンプサイクルにおいて、特許文献1に記載されるような内部熱交換器を有するものが知られている。このようなサイクル装置においては、高温・高圧の液相冷媒と低温・低圧の気相冷媒との間で熱交換を行うことによって、蒸発器入口冷媒の比エンタルピを減少させ、冷凍効果を増加させることでサイクルの効率および能力の向上が図られている。従来の内部熱交換器を有する冷凍サイクル装置の概略フロー図を、
図7に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4239256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサイクル装置に使用される内部熱交換器においては、熱交換量を増やし過ぎると、圧縮機の吸入過熱度が異常に高くなり、圧縮機および吐出ホースの耐久性に悪影響を及ぼす恐れがあった。このような悪影響を回避するために、内部熱交換器を運転するにあたっては、圧縮機の吸入過熱度を所定範囲内に抑えることができる程度に熱交換量の上限を設定する必要があった。
【0005】
そこで本発明の課題は、高い運転効率および運転能力を保持しつつ、内部熱交換器の熱交換量を従来よりも高めることができる冷凍サイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル内を循環する冷媒が管内を蒸発器出口から圧縮機入口へと流れる内管と、前記冷媒が管内を凝縮器出口から蒸発器入口へと流れる外管とからなる二重管式内部熱交換器を有し、前記外管の管内を流れる前記冷媒の一部を
該外管の蒸発器入口側から前記内管
の蒸発器出口側に流入させるバイパス孔が前記内管の管壁面上に形成され、前記バイパス孔に、該バイパス孔内へと流入する冷媒の圧力を減少させる膨張作用が付与されていることを特徴とするものからなる。
【0007】
このような本発明の冷凍サイクル装置においては、凝縮器を通過した後の高温高圧の液相冷媒を、当該液相冷媒の一部を分岐してバイパス孔を通過させた低温低圧の2相冷媒および蒸発器を通過した後の低温低圧の気相冷媒との間で熱交換させることによって、膨張機構の入口における過冷却度を高めることができる。このような本発明の冷凍サイクルによれば、蒸発器を通過する冷媒の流量を低く抑えることにより、蒸発器における冷媒の圧力損失を抑制し、冷凍能力およびサイクル効率を増加させることが可能となる。さらに、本発明の冷凍サイクルによれば、蒸発器入口における冷媒の乾き度を低く抑えることも可能であり、これによって冷凍効率およびサイクル効率のさらなる改善が図られる。
【0008】
バイパス孔に膨張作用を適切に付与するためには、バイパス孔の開口面積を適正範囲に設定する必要がある。バイパス孔の開口面積は基本的にバイパス孔の孔径によって決まるが、一定の孔径を有するバイパス孔を内管の管壁面上に複数形成することによって、バイパス孔の総開口面積を簡便に設定することが可能である。
【0009】
また、本発明に係る第2の冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル内を循環する冷媒が管内を蒸発器出口から圧縮機入口へと流れる内管と、前記冷媒が管内を凝縮器出口から蒸発器入口へと流れる外管とからなる二重管式内部熱交換器を有し、前記外管の管内を流れる前記冷媒の一部を
該外管の蒸発器入口側から前記内管
の蒸発器出口側に流入させるバイパス孔が前記内管の管壁面上に形成され、前記外管の管壁内周面上であって前記バイパス孔よりも上流側に管内の流路断面積を絞る絞り機構が設けられ、該絞り機構に前記外管の管内を流れる前記冷媒の圧力を減少させる膨張作用が付与されていることを特徴とするものからなる。本発明における絞り機構は、例えば外管の管壁内周面に設けられるオリフィス板として構成することができる。当該オリフィス板の寸法を適切に設計することにより、冷媒の圧力を所望の圧力まで減少させることが可能となる。このような絞り機構が設けられる場合には、冷媒に対する膨張作用は主として絞り機構に付与されるので、バイパス孔は主として流量調整作用を果たすこととなる。
【0010】
このような本発明に係る第2の冷凍サイクル装置においては、凝縮器を通過した後の高温高圧の液相冷媒を、当該液相冷媒の一部を分岐してバイパス孔を通過させた低温低圧の2相冷媒および蒸発器を通過した後の低温低圧の気相冷媒との間で熱交換させることによって、凝縮器の後段における過冷却度を高めることができる。このような本発明の冷凍サイクルによれば、蒸発器を通過する冷媒の流量を低く抑えることにより、蒸発器における冷媒の圧力損失を抑制し、冷凍能力およびサイクル効率を増加させることが可能となる。さらに、本発明の冷凍サイクルによれば、蒸発器入口における冷媒の乾き度を低く抑えることも可能であり、これによって冷凍効率およびサイクル効率のさらなる改善が図られる。
【0011】
本発明に係る第1および第2の冷凍サイクル装置において、系内の異物によってバイパス孔が閉塞されることを回避するために、バイパス孔を複数設けることが好ましい。さらにエンドミル等の治具にて外から内に向かって穿孔加工を行う際の便宜から、バイパス孔を、内管の管壁外周面から管壁内周面に向けて孔径が減少するように形成してもよい。
【0012】
本発明に係る第1および第2の冷凍サイクル装置において、前記バイパス孔を介して前記外管の管内から前記内管の管内に流入する冷媒流量の割合が、前記外管の管内を流れる冷媒流量の5〜35%に設定されていることが好ましい。このような流量割合で冷媒をバイパスさせることにより、冷凍サイクルのシステム性能を不安定にすることなく、膨張機構における過冷却度を高めることができる。
【0013】
本発明に係る第1および第2の冷凍サイクル装置において、前記内管の管壁面上に差圧作動弁が設けられていることが好ましい。差圧作動弁の開弁圧は1.0MPa以上に設定されていることが好ましい。バイパス孔の前後における冷媒圧力のバランスが不安定になると、冷媒がバイパス孔を通して逆流して冷凍サイクルの性能を悪化させるおそれがある。そこで、このような差圧作動弁が設けられることにより、バイパス開始の圧力を所望の値に設定することができるとともに、内管の管内を流れる冷媒がバイパス孔を介して外管の管内に逆流する恐れが解消され安定した性能を発揮する冷凍サイクル装置が実現可能となる。
【0014】
また、本発明に係る冷凍サイクル装置の変形例として、内管と外管内を流れる冷媒を入れ替えた態様も採用可能である。すなわち本発明に係る第3の冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル内を循環する冷媒が管内を蒸発器出口から圧縮機入口へと流れる外管と、前記冷媒が管内を凝縮器出口から蒸発器入口へと流れる内管とからなる二重管式内部熱交換器を有し、前記内管の管内を流れる前記冷媒の一部を
該内管の蒸発器入口側から前記外管
の蒸発器出口側に流入させるバイパス孔が前記内管の管壁面上に形成され、前記バイパス孔に、該バイパス孔内へと流入する冷媒の圧力を減少させる膨張作用が付与されていることを特徴とするものからなる。
【0015】
また、本発明に係る第4の冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル内を循環する冷媒が管内を蒸発器出口から圧縮機入口へと流れる外管と、前記冷媒が管内を凝縮器出口から蒸発器入口へと流れる内管とからなる二重管式内部熱交換器を有し、前記内管の管内を流れる前記冷媒の一部を
該内管の蒸発器入口側から前記外管
の蒸発器出口側に流入させるバイパス孔が前記内管の管壁面上に形成され、前記外管の管壁内周面上であって前記バイパス孔よりも上流側に管内の流路断面積を絞る絞り機構が設けられ、該絞り機構に前記内管の管内を流れる前記冷媒の圧力を減少させる膨張作用が付与されていることを特徴とするものからなる。
【0016】
このような本発明に係る第3および第4の冷凍サイクル装置においても、前述した第1および第2の冷凍サイクル装置と同様の付加的構成を追加することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る冷凍サイクル装置によれば、蒸発器を通過する冷媒の流量を低く抑えることにより蒸発器における冷媒の圧力損失を抑制可能であるので、過冷却度の増加と相まって容易に冷凍能力を高めることが可能となる。すなわち、過冷却度増加によって冷凍能力の改善を図る際に、圧縮機の吸入過熱度を低く抑えることができ、圧縮機や圧縮機からの吐出ホース等の配管部材に与えられるダメージを極力小さく抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施態様に係る冷凍サイクル装置の概略フロー図である。
【
図2】
図1の冷凍サイクル装置において用いられる内部熱交換器を示し、(A)は斜視図、(B)は概略縦断面図である。
【
図3】
図2の内部熱交換器を示し、(A)はバイパス孔近傍を拡大した部分拡大図、(B)はバイパス孔が形成される位置を説明する概略縦断面図である。
【
図4】
図2の内部熱交換器の変形例を示す概略縦断面図である。
【
図5】本発明の他の実施態様に係る冷凍サイクル装置の概略フロー図である。
【
図6】
図5の冷凍サイクル装置において用いられる内部熱交換器を示す概略縦断面図である。
【
図7】従来の内部熱交換器を有する冷凍サイクル装置の概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る冷凍サイクル装置1の概略フロー図である。系内には冷媒が循環しており、凝縮器2から流出した冷媒は、二重管式の内部熱交換器3の外管3aを経由し、主として膨張弁8を通して蒸発器4に流入するが、一部の冷媒は内管3bの管壁面上に形成されたバイパス孔16の膨張作用により膨張しながらバイパス孔16内に流入することにより、蒸発器4をバイパスする。蒸発器4内で蒸発した冷媒は、蒸発器4から流出した後、バイパス孔16内に流入したバイパス流れと合流して内部熱交換器3の内管3bを経由し、圧縮機5に流入する。圧縮機5内で圧縮された冷媒は、凝縮器2に流入して凝縮される。このような冷凍サイクル装置1において、蒸発器4の出口における過熱度が、内部熱交換器3の内管3bの出口における過熱度(圧縮機5の入口における過熱度)以下になるように、内部熱交換器3の長さ(熱交換量に影響する)およびバイパス孔16の孔径(バイパス量に影響する)が設定されている。
【0020】
図2は、
図1の冷凍サイクル装置1において用いられる二重管式の内部熱交換器13を示しており、(A)は斜視図、(B)は概略縦断面図である。凝縮器2から外管13aに流入した冷媒は、流出管7を介して蒸発器4へと流入する主流れと、内管13bの管壁面上に形成されたバイパス孔26を介して内管13bの内部流路に流入するバイパス流れとに分岐される。このバイパス流れを形成する冷媒は、内管13b内に蒸発器4から流入する冷媒と合流して、圧縮機5に向けて流出する。
【0021】
図2において、外管13a内を流れる冷媒は、内管13b内を流れる冷媒との間で、内管13bの管壁面を介して熱交換を行う。バイパス孔26は、通過する冷媒流れに所定範囲内の流動抵抗が生じるように形成されており、これによって高温・高圧冷媒を低温・低圧冷媒へと膨張させる膨張作用を有するとともに、膨張した低温・低圧冷媒の一部をバイパスさせて、蒸発器4を通過した後の低温・低圧冷媒に合流させる働きをする。このような構成にて冷媒をバイパスおよび合流させ、バイパスした冷媒の持つ蒸発潜熱を高圧冷媒の冷却に利用することによって、サイクル効率の向上が図られている。
【0022】
図3は、
図2の内部熱交換器を示しており、(A)はバイパス孔26近傍を拡大した部分拡大図、(B)はバイパス孔26が形成される位置を説明する概略縦断面図である。バイパス孔26は、
図3(A)に示すように、内管13bの管壁外周面から管壁内周面に向けて孔径が減少するように形成されている。バイパス孔26の孔径(図面下方の下流側開口径)は、孔を通過する冷媒の質量流量が外管13aの内部流路を流れる冷媒の質量流量の5〜35%となるような孔径に設定されている。
【0023】
図3のバイパス孔26は内管13bの管壁面上に1つだけ形成されているが、孔の目詰まりを防止する観点からは複数形成されていることが好ましい。さらに、
図3(B)に示すように、バイパス孔26は内管13bの上流側にのみ形成されるのがよい。具体的には、外管13aの出口側の端面9から内管13bの下流側に向けて、外管13aの外径(D)の3倍の長さ(3D)の範囲内に形成されることが好ましい。このような位置にバイパス孔26を形成することにより、内管13bの管壁面上の有効な熱交換面積を十分に確保し、冷媒の熱交換を効率的に行うことができる。
【0024】
図4は、
図2の内部熱交換器13の変形例23を示す概略縦断面図である。内管23bの管壁面上には台座10が形成され、バイパス孔36を介して冷媒が逆流することを防止する差圧作動弁12が台座10を介して設置されている。差圧作動弁12は、弁本体、ディスク弁、コイルばねおよびばね受座から構成されている。差圧作動弁12を開放させるのに必要な開弁圧は1.0MPa以上に設定されており、これによって熱負荷が十分に高められることで、バイパス孔36を通した冷媒流れのバイパスによる装置性能の向上が図られている。差圧作動弁12の流動抵抗は、バイパス孔36を通過する冷媒の質量流量が外管23aの内部流路を流れる冷媒の質量流量の5〜35%となるような流動抵抗に設定されている。
【0025】
図5は、本発明の他の実施態様に係る冷凍サイクル装置11の概略フロー図である。系内には冷媒が循環しており、凝縮器2から流出した冷媒は、二重管式の内部熱交換器33の外管33a内周面上に形成されたオリフィス15の膨張作用により膨張して主として蒸発器4に流入するが、一部の冷媒は内管33bの管壁面上に形成されたバイパス孔46内に流入することにより蒸発器4をバイパスする。蒸発器4内で蒸発した冷媒は、蒸発器4から流出した後、バイパス孔46内に流入した分岐流と合流して内部熱交換器33の内管33bを経由し、圧縮機5に流入する。圧縮機5内で圧縮された冷媒は、凝縮器2に流入して凝縮される。このような冷凍サイクル装置1において、蒸発器4の出口における過熱度が、内部熱交換器33の内管33bの出口における過熱度(圧縮機5の入口における過熱度)以下になるように、内部熱交換器33の長さ(熱交換量に影響する)およびバイパス孔46の孔径(バイパス量に影響する)が設定されている。
【0026】
図6は、
図5の冷凍サイクル装置11において用いられる二重管式の内部熱交換器43を示す概略縦断面図である。凝縮器2から流入管6を通して外管43aに流入した冷媒は、外管43aの内部流路の途中に形成されたオリフィス板25aからなるオリフィス25を通過した後、流出管7を介して蒸発器4へと流入する主流れと、内管43bの管壁面上に形成されたバイパス孔56を介して内管43bの内部流路に流入するバイパス流れとに分岐される。このバイパス流れを形成する冷媒は、内管43b内に蒸発器4から流入する冷媒と合流して、圧縮機5に向けて流出する。
【0027】
図6において、外管43a内を流れる冷媒は、内管43b内を流れる冷媒との間で、内管43bの管壁面を介して熱交換を行う。オリフィス25は、外管43a内の流路断面積を絞るように形成されており、これによって高温・高圧冷媒を低温・低圧冷媒へと膨張させる膨張作用を有している。バイパス孔56は、オリフィス25により膨張した後の低温・低圧冷媒の一部をバイパスさせて、蒸発器4を通過した後の低温・低圧冷媒に合流させる働きをする。このような構成にて冷媒をバイパスおよび合流させ、バイパスした冷媒の持つ蒸発潜熱を高圧冷媒の冷却に利用することによって、サイクル効率の向上が図られている。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る冷凍サイクル装置は、車両用空調装置の蒸気圧縮式冷凍サイクル等に広く用いられる。
【符号の説明】
【0029】
1、11、51 冷凍サイクル装置
2 凝縮器
3、13、23、33、43、53 内部熱交換器
3a、13a、23a、33a、43a、53a 外管
3b、13b、23b、33b、43b、53b 内管
4 蒸発器
5 圧縮機
6 流入管
7 流出管
8 膨張弁
9 端面
10 台座
12 差圧作動弁
15、25 オリフィス
16、26、36、46、56 バイパス孔
25a オリフィス板
D 外管の外径