特許第5713336号(P5713336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713336
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/82 20130101AFI20150416BHJP
【FI】
   A61F2/82
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2010-181172(P2010-181172)
(22)【出願日】2010年8月12日
(65)【公開番号】特開2012-40050(P2012-40050A)
(43)【公開日】2012年3月1日
【審査請求日】2013年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】396026710
【氏名又は名称】株式会社オプトニクス精密
(72)【発明者】
【氏名】絹田 精鎮
(72)【発明者】
【氏名】川端 隆司
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/041691(WO,A1)
【文献】 特表2008−539898(JP,A)
【文献】 特開2007−267844(JP,A)
【文献】 特開2006−175211(JP,A)
【文献】 特開2000−8187(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0075168(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0033418(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/82
A61L 31/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の管腔内に留置される半径方向に拡張可能な筒形状であって、円筒仮想表面に形成された主ステント要素から成り、このステント要素はニッケルまたはニッケル/コバルト合金より高い疲労強度を有する合金から作製されたことを特徴とするステント。
【請求項2】
前記ステント要素の疲労強度は、前記ニッケルまたはニッケル/コバルト合金の1.5倍以上の強度を有する合金である請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記ステント要素は、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、パラジュームのいずれかを含む電鋳合金である請求項1または請求項2に記載のステント。
【請求項4】
前記ステント要素は、硫酸塩、塩化物、アンモニア錯塩、シアン錯塩、スルファミン塩、次亜りん酸塩、ピロリン酸塩、酒石酸塩、EDTAのいずれかの化合物を添加して、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、パラジュームのいずれかを含む合金を用いて電鋳で作製されている請求項3に記載のステント。
【請求項5】
前記ステント要素は、金を主構成成分とし、銀、銅、ニッケル、コバルト、パラジュームから選ばれた少なくとも1つ以上の合金を用いて、電鋳で作製されている請求項3または請求項4に記載のステント。
【請求項6】
前記ステント要素は、パラジュームを主構成成分とし、金、銀、銅、ニッケル、コバルトから選ばれた少なくとも1つ以上の合金を用いて、電鋳で作製されている請求項3または請求項4に記載のステント。
【請求項7】
前記ステント要素は、筒形状に形成するための接合部を有している請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のステント。
【請求項8】
前記ステント要素は、前記接合部が電着により接合される請求項7に記載のステント。
【請求項9】
前記ステント要素は、複数のセルとこのセル同士を連結する連結部からなり、セルの線径が10〜50μm、連結部の線径が5〜20μmである請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆のう、食道、腸、尿管などの体腔内の狭窄部などに留置されるステントに関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、例えばバルーンカテーテルと共に用いられ、血管などの体腔内に狭窄部が生じた場合、その狭窄部をバルーンカテーテルにより拡げた後に留置され、体腔内壁を内側から支持し、再狭窄を起こすことを防止するために使用される。ステントの挿入に際しては、ステントは収縮状態のバルーン部の外側に縮径状態で装着され、バルーン部と一緒に体腔内に挿入される。バルーン部を狭窄部に位置させた後、バルーン部を膨らませることによりステントも膨らみ、狭窄部を拡張してステント拡張状態を維持したまま留置され、バルーンカテーテルのみが引き抜かれる。
【0003】
このようにして使用されるステントとして要求される特性として、縮径状態では柔軟であり体腔内への挿入性に優れ、しかも、半径方向に容易に且つ均一に拡張が可能であり、拡張後には、半径方向に容易に潰れないことが必要である。このようなステントとして、例えば、特許文献1や特許文献2で提唱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−267844号公報
【特許文献2】特開2000−8187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載のステントは、耐力の下限値が300MPaと低く、且つ、上限値が示されていないため、実用性に不安があり、しかも、レーザー加工により製造されるため、熱の影響を受けて焼きなましや熱変形による脆ささが生じたり、また、バリ取りや研磨工程等が必要であり、製造工程が複雑である等の課題があった。
【0006】
また、上記の特許文献2に記載のステントは、レーザー加工よりも作製し易い電鋳により製造されているが、電鋳では作製できないとされているステンレスが例示されているとともに耐力が劣る金が例示されており、実用性に問題がある等の課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に着目し、金属イオン溶液中で電解析出させることにより各種の合金析出に成功し、そして通常の素材、すなわち、高温を伴う溶解と圧延により得られる金属材料とは異なる優れた機械特性と耐食性を持った合金電鋳材を得ることができた。そこで、耐力(弾性限界応力)に優れ、尚且つ、心臓の拍動に耐える疲労強度が高く、しかも、あらゆる体液、電解液にも金属イオンが溶出しない合金を得られる実用上、極めて有用なステントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のステントでは、生体の管腔内に留置される半径方向に拡張可能な筒形状であって、円筒仮想表面に形成された主ステント要素から成り、このステント要素をニッケルまたはニッケル/コバルト合金より高い疲労強度を有する合金から作製したものである。
また、請求項2に記載のステントでは、主ステント要素を疲労強度がニッケルまたはニッケル/コバルト合金の1.5倍以上の強度を有する合金から作製したものである。
このように、ステント要素をニッケルまたはニッケル/コバルト合金より高い疲労強度で、特に1.5倍以上の強度を有する合金から作製したことにより、極めて薄い肉厚のステントでも外圧に耐えることができるようになり血管内にステントを配置した時に血管断面積を犠牲にすることが無くなるとともに、半径方向に容易に且つ均一に拡張でき、且つ拡張後には半径方向に容易に潰れないようにしたものである。
【0009】
請求項に記載のステントでは、主ステント要素を、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、パラジュームのいずれかを含む電鋳合金から作製したものである。
また、請求項4に記載のステントでは、主ステント要素は、硫酸塩、塩化物、アンモニア錯塩、シアン錯塩、スルファミン塩、次亜りん酸塩、ピロリン酸塩、酒石酸塩、EDTAのいずれかの化合物を添加して、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、パラジュームのいずれかを含む合金を用いて電鋳で作製したものである。
このように、主ステント要素を金、銀、銅、ニッケル、コバルト、パラジュームのいずれかを含む電鋳合金を、特に各金属析出電位を近付けるために上記化合物を添加して作製したことにより、疲労強度が極めて高い材料を電鋳で作ることができたため、特に振動を常時加えられる部位のステントには最適であり、しかも、半径方向に容易に且つ均一に拡張でき、且つ拡張後には半径方向に容易に潰れないようにしたものである。
【0010】
請求項に記載のステントでは、主ステント要素を、金を主構成成分とし、銀、銅、ニッケル、コバルト、パラジユームから選ばれた少なくとも1つ以上の合金を用いて、電鋳で作製したものである。
また、請求項6に記載のステントでは、主ステント要素を、パラジユームを主構成成分とし、金、銀、銅、ニッケル、コバルトから選ばれた少なくとも1つ以上の合金を用いて、電鋳で作製したものである。
このように、耐力を大幅に改善させ、尚且つ、疲労強度の高い合金を選んで電鋳で作製することにより、特許文献2に記載のステントの上述した課題を解決したものである。
【0011】
請求項に記載のステントでは、主ステント要素を筒形状に形成するための接合部を設けるようにしたものである。
また、請求項8に記載のステントでは、主ステント要素を筒形状に形成するための接合部を電着により接合するようにしたものである。
このように、ステントを平面形状で作製した後、筒形状に丸めて接合部を電気抵抗溶接やレーザー溶接などで接合することにより、生産性と品質性を向上させるようにしたもので、好ましくは、電着により接合することにより、接合の時に熱が全くかからないため、熱による焼きなましや、熱変形による脆さなどが生じることはなく、また接合部は素材と同じ光沢を保持できるため外観は滑らかであり、ステントを生体の管腔内に挿入する時には好都合である。
【0012】
請求項に記載のステントでは、主ステント要素を、複数のセルとこのセル同士を連結する連結部からなり、セルの線径を10〜50μm、連結部の線径を5〜20μmとしたものである。
このように、セルの線径、即ち、ステントの肉厚を10〜50μmとすることにより、特許文献1に記載のステントの肉厚60μmよりも薄くしたので、ステントを血管内に留置してもステントが血流の邪魔をして血流が悪くなることはなく、しかも連結部の線径を5〜20μmと細くしたので、血管が波を打つように蛇行すると、連結部も屈曲してセルが血管の内壁を内側から確実に支持するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のステントによれば、生体の管腔内に留置される半径方向に拡張可能な筒形状であって、円筒仮想表面に形成された主ステント要素から成り、この主ステント要素をニッケルまたはニッケル/コバルト合金より高い疲労強度を有する合金から作製したので、半径方向に容易に且つ均一に拡張できるとともに、拡張後には半径方向に容易に潰れないようにすることができるという優れた効果を得ることができる。
また、本発明に係る請求項2に記載のステントによれば、主ステント要素を疲労強度がニッケルまたはニッケル/コバルト合金の1.5倍以上の強度を有する合金から作製したので、極めて薄い肉厚のステントでも外圧に耐えることができるようになり血管内にステントを配置した時に血管断面積を犠牲にすることが無いという優れた効果を得ることができる。
【0015】
請求項に記載のステントによれば、主ステント要素を、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、パラジユームのいずれかを含む電鋳合金から作製し、更に請求項4に記載のステントによれば、各金属析出電位を近付けるために硫酸塩、塩化物、アンモニア錯塩、シアン錯塩、スルファミン塩、次亜りん酸塩、ピロリン酸塩、酒石酸塩、EDTAのいずれかの化合物を添加して硫酸塩、塩化物、アンモニア錯塩、シアン錯塩、スルファミン塩、次亜りん酸塩、ピロリン酸塩、酒石酸塩、EDTAのいずれかの化合物を添加したので、疲労強度が極めて高い材料を電鋳で作ることができ、特に振動を常時加えられる部位のステントには最適であり、しかも、半径方向に容易に且つ均一に拡張でき、且つ拡張後には半径方向に容易に潰れないようにすることができるという優れた効果を得ることができる。
【0016】
請求項に記載のステントによれば、主ステント要素を、金を主構成成分とし、銀、銅、パラジユーム、ニッケル、コバルトから選ばれた少なくとも1つ以上の合金を用いて、電鋳で作製し、また、請求項6に記載のステントによれば、主ステント要素を、パラジュームを主構成成分とし、金、銀、銅、ニッケル、コバルトから選ばれた少なくとも1つ以上の合金を用いて、電鋳で作製したので、あらゆる体液、電解液にも金属のイオン溶出は全く無く、生体の管腔内に悪影響を及ぼすことは全くないという優れた効果を確実に得ることができる。
また、請求項7に記載のステントによれば、筒形状に形成するための接合部を設けるようにしたもので、ステントを平面形状で作製した後、筒形状に丸めて接合部を電気抵抗溶接やレーザー溶接などで接合することにより、生産性と品質性を向上させることができるという優れた効果を得ることができる。
【0017】
請求項に記載のステントによれば、主ステント要素の接続部を電着により接続するようにしたので、接合の時に熱が全くかからないため、熱による焼きなましや、熱変形による脆さなどが生じることはなく、また接合部は素材と同じ光沢を保持できるため外観を滑らかにでき、ステントを生体の管腔内にスムーズに挿入できるという優れた効果を得ることができる。
【0018】
請求項に記載のステントによれば、主ステント要素を複数のセルとこのセル同士を連結する連結部から構成し、セルの線径を10〜50μm、連結部の線径を5〜20μmとしたので、セルの線径、即ち、ステントの肉厚を10〜50μmと薄くでき、ステントを血管内に留置してもステントが血流の邪魔をして血流が悪くなることはなく、しかも連結部の線径を5〜20μmと細くでき、血管が波を打つように蛇行すると、連結部も追従して屈曲してセルが血管の内壁に密着した常態で血管の内側から確実に支持することができるという優れた効果を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態を示すステントの斜視図である。
図2】本発明の実施形態を示すステントの展開図である。
図3】本発明の実施形態を示す連結部の拡大図である。
図4A】本発明の実施形態を示す主ステント要素の接続工程図である。
図4B】本発明の実施形態を示す主ステント要素の接続工程図である。
図4C】本発明の実施形態を示す主ステント要素の接続工程図である。
図4D】本発明の実施形態を示す主ステント要素の接続工程図である。
図5】本発明によるステントの耐力を示すグラフである。
図6】本発明による合金の疲労強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図1図6に基づいて説明するが、本発明は以下の実施形態について何ら限定されるものではない。
【0023】
図1及び図2において、1は生体の管腔内に留置される半径方向に拡張可能な筒形状のステントであり、円筒仮想表面に形成された主ステント要素2を有している。この主ステント要素2は9個のセル3とこのセル3同士を連結する連結部4からなり、セル3の線径が10〜30μm、連結部4の線径が5〜9μmである。この連結部4は図3の拡大図に示すように、蛇行状に屈曲させて、屈伸性を高めている。
尚、この実施形態では、9個のセル3が独立して巻回されているが、1個のセルを連続して巻回しても良く、この場合、一周ごとに連結部が一体に形成されるようになる。
また、この実施形態では、ステント1を図2に示すように平面で作っておき、これを図1に示すように円筒状に丸めて、電着で円筒にしているが、初期から円筒状のマンドレルニレジストをコーティングした後、円筒状に露光してエッティングを行うことにより、ステント1を作製しても良い。
【0024】
主ステント要素2は、金を主構成成分とし、銀、銅、パラジューム、ニッケル、コバルトから選ばれた少なくとも1つ以上の合金、または、パラジュームを主構成成分とし、金、銀、銅、ニッケル、コバルトから選ばれた少なくとも1つ以上の合金を用いて、以下のとおり電鋳で作製されている。
【0025】
先ず、導体基板上にレジストをコートして光を遮断するフォトマスクを置いた後、紫外線を当てて露光し、現像処理などによって露光部、未露光部、などをレジストの特性に依存して除去する。この除去した部分に上述した合金を電鋳で第1回目の析出を行い複数のセル3を作製する。
次に、この複数のセル3をマスキングした状態で、再び、基板上にレジストをコートしてフォトマスクを置いた後、紫外線を当てて露光して除去し、この除去した部分に上述した合金を電鋳で2回目の析出を行い、連結部4を作製する。このとき、セル3と連結部4は互いに一部が連結するよう露光され、その後、電着するので、結果として連結体となる。このようにして、複数のセル3と連結部4とが上述した合金で一体に成形され、主ステント要素2が図2に示すように作製される。
【0026】
この製作プロセスによれば、第1回目の析出形状と第2回目の析出金属形状を任意に変えることができる。すなわち、幅や厚さの差は、例えば幅はフォトマスク製作時の幅に依存させ、形状の厚さは析出電解時間に依存させるこができるため、本発明のプロセスによって作られるステント1は、部分的な部位を必要に応じて厚さや幅を極めて正確に、自由に変化させることができる。
このように、厚さや幅を自由に正確に制御することができることはステント1に今までに無い高い機能を付与させることが可能になり、これは従来のレーザーなどで加工したステントでは全く得ることができない大きな特徴である。
【0027】
そして、主ステント要素2を筒形状に丸めた後、複数のセル3の接合部5Aと接合部5B同士を接合して接合することにより、図1に示すように、ステント1が完成する。接合は電気抵抗溶接、レーザー溶接などで可能であるが、好ましくは、図4A図4Dの接合工程に従って接合する方が好ましい。すなわち、図4Aに示すように、接合部5Aと接合部5Bを近づけて図4Bに示すように重ね合わせた後、重ね合わせた部位以外を図4Cの断面図に示すように塗料や不導体テープなどによりマスキング6を施工し、しかる後、ステント1と同じ電鋳合金7で追加電着して図4Dに示すようにマスキング6を取り除くことにより、接合部5Aと接合部5B同士の接合工程は終了する。
この接合方法によれば、接合の時に熱が全くかからないため、熱による焼きなましや、熱変形による脆さなどが生じることはなく、また接合部5A、5Bは素材と同じ光沢を保持できるため外観は滑らかであり、ステント1を挿入する時には好都合である。
【0028】
図5はステント1の耐力(弾性限界応力)の測定結果を示すグラフで、横軸がひずみ(%)、縦軸が応力(MPa)である。図5において、Aは主ステント要素2の合金としてニッケル40%とパラジューム60%の合金を使用した場合、Bは従来の合金としてニッケル80%とコバルト20%の合金を使用した場合を示すもので、本発明によるステント1の耐力がBの500MPa〜Aの2,700MPaと極めて大きいことが確認できた。
【0029】
また、図6は疲労強度の測定結果を示すグラフで、横軸が繰り返し数(回)、縦軸が最大応力(MPa)である。図6において、Cは本発明によるもので主ステント要素2の合金としてニッケル40%とパラジューム60%の合金を使用した場合、DとEは従来の材料で、Dはニッケル/コバルト合金、Eはニッケルを使用した場合を示すもので、最大応力が1,000MPaのとき、Dは70万回繰り返した時点で切断し、Eは5万回繰り返した時点で切断したのに対し、本発明によるCは1,000万回繰り返しても切断しなかったことから、従来のニッケル/コバルト合金材やニッケル材の2倍〜14倍以上の疲労強度が大きいことが確認できた。
【0030】
尚、電鋳可能な金属は限られており、鍍金ができても電鋳ができない金属の典型的な例はクロムである。これは金属イオンまたは金属酸化物イオンに起因しており、電解中に生じる強力な応力によって安定的な素材にならないことに依存している。金属によっては電気鍍金すら困難な金属もあり、例えばチタン、アルミニューム、モリブデン、タングステンなどである。これ等は酸化性が強く単金属では、水溶液中においてイオンとして存在できないところに起因している。電鋳合金においても電解中の応力がしばしば問題になり、近年の技術ではいろいろな水溶性の金属化合物の登場により電解液の低応力実現が可能となりつつある。
【0031】
また、合金の組成をコントロールするには、合金にしようとする各金属析出電位を近付ける必要があり、そのための化合物は単塩化合物のみでなく各種の錯塩やキレート化合物などを動員しなければならない。本発明に関わる金、銀、銅、ニッケル、コバルト、パラジュームの6種類の金属の2つ以上の合金を電鋳で作るにあたり、化合物である硫酸塩、塩化物、アンモニア錯塩、シアン錯塩、アミン錯塩、スルファミン塩、次亜りん酸塩、ピロリン酸塩、酒石酸塩、EDTAなどの無機、有機添加剤も動員され実現した物である。
【0032】
次に、合金の耐食性を確認するために、合金を生理食塩水、PH3.0から8.0までの溶液、ミルトンなどの消毒液に浸漬した後、試験液中での溶出加速試験のため試料を強制的に100キロヘルツの振動をさせて後、金属イオンの溶出試験を行った。なお、溶液の分析は原子吸光分析で、分析限界値はPPBである。
その結果、金属イオンが溶出しない組成は以下のようであった。
1)金とパラジュームの合金は、どのような組成でも金属のイオン溶出は全く無い。
2)金と、銀、ニッケル、コバルトのいずれかの合金は、金の含有率が65%以上では金属イオン溶出は全く無い。
3)パラジュームと、金、銀、銅、ニッケル、コバルトのいずれかの合金は、パラジュームの含有率が60%以上では金属イオンの溶出は全く無い。
【0033】
また、このステント要素2の合金として、金30%とパラジューム70%の合金、金90%と銀10%の合金、コバルト35%とパラジューム65%の合金、金80%と銀15%とコバルト5%の合金、金80%とパラジューム15%とコバルト5%の合金から選ばれた合金を用いて、電鋳で作製しても、上述と同様な耐力(弾性限界応力)、疲労強度の結果が得られることが確認された。
尚、これらの組成で作成されたステント1は、いずれも、ステンレスやコバルト、クロムなど、従来の材料で作成されたステントに比べ、同等以上の優れたX線吸収性を示し、実用性能に優れ、耐食性に関しても、十分な性能を示した。 また、本発明のステント1は、均質な組成からなっており、非磁性であり、近年一般化した、MRIなど、高磁場を用いた診断機器による画像に対するアーティファクトも従来品に比べ優れている。
【0034】
近年、ステントにおいては、ステント留置後の血管や消化器官など管状組織の再狭窄
を防止する目的で、
1、 ステントの金属表面に、PC(パイロライトカーボン)、DLC(ダイヤモンドライクカ)など、比較的抗血栓性が良いとされる成分をコーティングする。
2、 ステントの金属表面にポリマーをコーティングして、このポリマーを抗血栓性材料で表面修飾する。
3、 ステントの金属表面にポリマーをコーティングした後、このポリマーに組織増殖を抑制する薬剤を含ませ、このポリマーから薬剤を徐放させる。
4、 ステントの金属表面に生分解性ポリマーをコーティングした後、このポリマーに組織増殖を抑制する薬剤を含ませ、このポリマーを徐々に分解させ、薬剤を一定期間で完全に放出させる。
5、 ステント表面に小さなディンプル(凹凸)を作り、ここに薬剤を含ませ、比較的短期間だけ、組織増殖防止効果を持たせる。
ことなどが行われているが、本発明のステント1では、これらを容易に適用できる。
【0035】
また、特に、消化器系、呼吸器系、泌尿器科系の管状組織に適用するステントでは、がん細胞組織の肥大化や管状器官の再狭窄を防ぐため、管状器官拡張のための主ステント要素と、ステントのセル密度を高くし、組織の張出を抑制するための副ステント要素からなるステントなどが作られているが、本発明では、強度の優れた材料を提供できることから、更に緻密で強度に優れたものが容易に実現できる。
【0036】
また、最近では、
1、分岐血管に留置するステント(Y-ステント)で、分岐血管への血流の確保、カテーテル、ステントなどのデバイスのアプローチを容易にするため、円筒状のステントの一部のセルを大きく開口させる。
2、或いは、ステントの長さ方向の剛性を調整し、曲げ方向が柔軟で、挿入しやすい構造のステントとするため、主ステント要素に比べ、副ステント要素のステント長さ方向のステント連結要素などを細く作る。
など、特殊なデザインが用いられるが、本発明では、これらはいずれも容易に適用できる。
【0037】
(作用)
本実施形態は上記のように構成されており、以下その作用について説明する。バルーンカテーテルのバルーン部を収縮させた状態で、このバルーン部の外側に図1に示すステント1を縮径状態で装着する。そして、ステント1をバルーン部と一緒に血管内に挿入して、血管内の狭窄部にバルーン部を位置させ、バルーン部を膨らませるとステント1も膨らみ、狭窄部を拡張してステント1は拡張状態を維持したまま留置され、バルーンカテーテルのみが引き抜かれる。
【0038】
この作用を血管と血液に相当する実験材料を用いて検証した結果、ステント1は主ステント要素2の耐力が500〜2,700MPaあるため、半径方向に容易に且つ均一に拡張するとともに、拡張後には半径方向に容易に潰れないことが確認できた。
また、主ステント要素2のセルの線径が10〜30μm、連結部の線径が5〜9μmであるため、ステント1を血管内に留置してもステント1が血流の邪魔をして血流が悪くなることもないことも確認できた。更に血管が波を打つように蛇行すると、細い連結部も追従して屈曲してセル2が血管の内壁に密着した常態で血管の内側から確実に支持することも確認できた。
【符号の説明】
【0039】
1 ステント
2 主ステント要素
3 セル
4 連結部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6