(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713382
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】メタリックカード
(51)【国際特許分類】
B42D 25/20 20140101AFI20150416BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
B42D15/10 200
B32B7/02 103
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-199053(P2010-199053)
(22)【出願日】2010年9月6日
(65)【公開番号】特開2012-56113(P2012-56113A)
(43)【公開日】2012年3月22日
【審査請求日】2013年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(74)【代理人】
【識別番号】100130410
【弁理士】
【氏名又は名称】茅原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】小川 純生
(72)【発明者】
【氏名】神谷 敬史
【審査官】
荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−205616(JP,A)
【文献】
特開2003−162206(JP,A)
【文献】
特開2006−076207(JP,A)
【文献】
特開2009−143092(JP,A)
【文献】
特開2000−177282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/00−25/485
B32B 7/02
B41M 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光沢層を含むことによって光沢を発するベースカードと、
前記ベースカードの表裏いずれか一方又は双方の面に印刷された絵柄その他の情報からなる光透過性の印刷層と、を備え、
前記印刷層によって描かれている絵柄その他の情報について粒子感、キラキラ感、ザラザラ感、およびメタリック感を得る手段、並びに、その情報の色変化を少なくする手段として、前記光沢層は、粒径25μm〜40μmの光沢粒子を含むことにより光沢を発するものとし、かつ、前記ベースカードの一面に前記印刷層を設けた状態で、そのベースカードの一面を反射濃度計で計測したときのK値が0.2〜0.55の範囲に含まれるものとしたこと
を特徴とするメタリックカード。
【請求項2】
前記光沢層は、金属光沢を発する層またはホログラム光沢を発する層であること
を特徴とする請求項1に記載のメタリックカード。
【請求項3】
前記印刷層は、オフセット印刷で形成されることにより光透過性を有すること
を特徴とする請求項1に記載のメタリックカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に光沢感のある高精細な絵柄その他の情報を印刷表示できるデザイン性の高いメタリックカー
ドに関する。
【背景技術】
【0002】
クレジットカード、キャッシュカード等のカード類においては、カード表面に絵柄等を印刷することによってカードのデザイン性を高めている(例えば、特許文献1参照)。カード表面の印刷として光沢印刷を採用した例もある。
【0003】
図4は、カード表面の印刷として光沢印刷を採用した従来のメタリックカードの断面図である。同図のメタリックカードMCは、上下2枚の白色のフィルム基材層12B、12BでICチップ12Aを挟んだ構造のICチップ層12と、このICチップ層12の表面に金、銀、ホログラム等の光沢印刷で絵柄を印刷してなる光沢印刷絵柄層13と、前記ICチップ層12の裏面に非光沢印刷で情報を印刷してなる非光沢印刷層14とを有し、光沢印刷絵柄層13の絵柄自体が光の反射によって光沢を発することによりデザイン性を高めている。なお、光沢印刷絵柄層13と非光沢印刷層14の表面はそれぞれ透明の保護フィルム層11で保護されている。
【0004】
ところで、前記従来のメタリックカードMCにおいて、光沢印刷絵柄層13はスクリーン印刷で形成していた。金、銀、ホログラム等の光沢印刷を行う場合には、その質感を出すために、光沢印刷絵柄層13を数十ミクロン以上の厚盛インキ層として形成しなければならないからである。
【0005】
そのため、スクリーン印刷では高精細な絵柄その他の情報を印刷することができないので、前記従来のメタリックカードMCでは、光沢感のある高精細な絵柄その他の情報を印刷表示できるデザイン性の高いメタリックカードを得ることができないという問題点がある。
【0006】
さらに、前記従来のメタリックカードMCにあっては、フィルム基材層12Bと保護フィルム層11との間に光沢印刷絵柄層13の絵柄が印刷で設けられる構成(スクリーン印刷による中刷り)であるため、多面付け印刷となり、小ロット生産(5千枚以下のメタリックカードの生産)に適さない。また、絵柄の異なるメタリックカードMCを作製する場合には、中刷り用の絵柄を変更して最初からメタリックカードMCを作り変えなければならず、最終製品としてのメタリックカードMCを得るのに納期がかかるという問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−7677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、光沢感のある高精細な絵柄その他の情報を印刷表示できるデザイン性の高いメタリックカー
ドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係るメタリックカードは、光沢層を含むことによって光沢を発するベースカードと、前記ベースカードの表裏いずれか一方又は双方の面に印刷された絵柄その他の情報からなる光透過性の印刷層と、を備え、
前記印刷層によって描かれている絵柄その他の情報について粒子感、キラキラ感、ザラザラ感、およびメタリック感を得る手段、並びに、その情報の色変化を少なくする手段として、前記光沢層は、粒径25μm〜40μmの光沢粒子を含むことにより光沢を発するものとし、かつ、前記ベースカードの一面に前記印刷層を設けた状態で、そのベースカードの一面を反射濃度計で計測したときのK値が0.2〜0.55の範囲に含まれるものとしたことを特徴とする。
【0010】
前記本発明に係るメタリックカードにおいて、前記光沢層は、金属光沢を発する層またはホログラム光沢を発する層であるものとしてもよい。
【0011】
前記本発明に係るメタリックカードにおいて、前記印刷層は、オフセット印刷で形成されることにより光透過性を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るメタリックカードにあっては、その具体的な構成として、前記のように光沢層を含むことによって光沢を発するベースカードのいずれか一方又は双方の面に、絵柄その他の情報からなる光透過性の印刷層を設ける構成を採用した。このため、例えば、スクリーン印刷で前記光沢層を厚く形成することにより光沢層に光沢の質感(光沢感)を付与し、かつ、オフセット印刷で前記印刷層を形成することにより光透過性のある高精細の印刷層を設けることができ、この場合、その印刷層は光沢層の光沢が透けて輝いて見えるので、光沢感のある高精細な絵柄その他の情報を印刷表示することができる。
【0017】
本発明に係るメタリックカードによると、メタリックカードのベース基材として共通のベースカード(中刷りによる光沢層を含む)を予め用意しておき、共通のベースカードにそれぞれ異なる絵柄等を個別に印刷(外追い刷り)するだけで、最終製品としてのメタリックカードを得ることができるので、メタリックカードの大幅な納期の短縮を図ることができ、かつ、小ロット生産(5千枚以下のメタリックカードの生産)に好適であり、メタリックカードの作りすぎによる廃棄処分等のロスも少なくて済む等の作用効果が奏し得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明を適用したメタリックカードの断面図。
【
図2】
図1のメタリックカードの表印刷層について、そのメタリック感と色変化を目視で観察・評価したときの印刷目視評価結果を示した図。
【
図3】
図1のメタリックカードMCの光沢層10として金属光沢層を採用した場合において、表印刷層2の粒子感、キラキラ感、ザラザラ感を目視で観察・評価したときの印刷目視評価結果を示した図。
【
図4】カード表面の印刷として光沢印刷を採用した従来のメタリックカードの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
《メタリックカードの構成概要》
図1は本発明を適用したメタリックカードの断面図である。同図のメタリックカードMCは、光沢層10を含むことによって光沢を発するベースカード1と、ベースカード1の表面に印刷された絵柄その他の情報からなる光透過性の印刷層(以下「表印刷層2」という)と、ベースカード1の裏面に印刷された印刷層(以下「裏印刷層3」という)とを備えた構成になっている。
【0021】
《ベースカード1の詳細構成》
ベースカード1は、光沢層10の上下面に、透明の保護フィルム層11を設け、かつ下面の保護フィルム層11と光沢層10との間に、ICチップ層12を設けた構成になっている。
【0022】
図1のメタリックカードMCでは、表印刷層2を非光沢インキで形成することにより表印刷層2によって表示される絵柄その他の情報の色彩を非光沢色とし、このような非光沢色の絵柄その他の情報の背景として前記光沢層10を利用するため、光沢層10は、ICチップ層12の全面又はその一部である背景領域全体を光沢インキ(光沢粒子を含むインキ)で塗り潰す方式(ベタ塗り方式)によって形成される。
【0023】
前記のような光沢層10としては、例えば、光沢粒子としてアルミニウム等の金属粒子やそれを加工した金属粒子を含むことにより金属光沢を発する層(以下「金属光沢層」という)、あるいは、ホログラム光沢を発する層(以下「ホログラム光沢層」という)を採用することができる。
【0024】
ICチップ層12は、上下2枚の白色のフィルム基材層12B、12BでICチップ12Aを挟んだ構造になっているが、この構造に限定されることはない。
【0025】
《表印刷層2、裏印刷層3の詳細構成》
表印刷層2は、オフセット印刷で形成(外刷り印刷)されることにより厚みが薄く、光透過性を有している。表印刷層2の下面側には、前述の光沢層10が存在するので、このオフセット印刷による表印刷層2を上面からみると、光沢層10の光沢が表印刷層2を透けて輝いて見える。
【0026】
オフセット印刷以外の印刷方式で表印刷層2を形成することもできるが、その場合はオフセット印刷と同等の光透過性が表印刷層2に付与されるようにする。
【0027】
裏印刷層3もオフセット印刷で形成(外刷り印刷)してあるが、オフセット印刷以外の印刷方式で裏印刷層3を形成してもよい。
【0028】
図1の例では、表印刷層2の上に透明のオーバープリント層4を設けることにより表印刷層2を保護する構成を採用しているが、このようなオーバープリント層4は必要に応じて裏印刷層3の上に設けることもできる。また、表印刷層2や裏印刷層3を保護する必要がないなら、オーバープリント層4は省略してもよい。
【0029】
《メタリックカードMCのK値》
図2は、
図1のメタリックカードMCの表印刷層2について、そのメタリック感と色変化を目視で観察・評価したときの印刷目視評価結果である。この評価では、ベースカード1の一面に表印刷層2を設けた状態で、そのベースカード1の一面を反射濃度計で計測したときのK(黒色)値(以下「メタリックカードのK値」という)の違いによって、淡色の表印刷層2と濃色の表印刷層2とではメタリック感と色変化がどのように変わるかを評価した。なお、反射濃度はlog
101/R,R×100=反射率で示される。
【0030】
《K値の下限》
図2を参照すると、K値=0.3〜0.4では、淡色の表印刷層2でも濃色の表印刷層2でもメタリック感が有り(メタリック感○)、色変化も無い(色変化○)。また、K値=0.25〜0.2では、淡色の表印刷層2でも濃色の表印刷層2でもややメタリック感を欠くものの(メタリック感△)、色変化は無い(色変化○)。しかし、K値=0.15の場合には、淡色の表印刷層2でも濃色の表印刷層2でも、メタリック感が欠けてしまう(メタリック感×)。このことから、メタリックカードのK値の下限は0.2とするのが好ましい。
【0031】
《K値の上限》
図2を参照すると、K値=0.55の場合、淡色の表印刷層2でも濃色の表印刷層2でも色変化がやや発生するものの(色変化△)、メタリック感は有る(メタリック感○)。しかし、K値=0.6の場合には、淡色の表印刷層2で大きな色変化が生じてしまい(色変化×)、表印刷層2によって例えば人物の顔等が描かれているとしたら、その顔の色がくすんでしまう等の不具合が生じる。このことから、メタリックカードのK値の上限は0.55とするのが好ましい。
【0032】
《K値のまとめ》
以上より、ベースカード1の一面に表印刷層2を設けた状態で、そのベースカード1の一面を反射濃度計で計測したときのK値は、0.2〜0.55の範囲に含まれるものするのが好ましい。この範囲であれば、表印刷層2によって描かれている絵柄その他の情報に、色変化が少なく、適度なメタリック感が得られる。
【0033】
《光沢層10中に含まれている光沢粒子の粒径》
図3は、
図1のメタリックカードMCの光沢層10として金属光沢層を採用した場合において、表印刷層2の粒子感、キラキラ感、ザラザラ感を目視で観察・評価したときの印刷目視評価結果である。この評価では、金属光沢層(光沢層10)中に含まれている光沢粒子の粒径(以下「光沢粒子径」という)の違いによって、表印刷層2の粒子感、キラキラ感、ザラザラ感がどのように変わるかを評価した。
【0034】
《光沢粒子径の下限》
図3を参照すると、光沢粒子径が30〜35μmの場合には、印刷物として良好な粒子感、キラキラ感、ザラザラ感が得られる(粒子感○、キラキラ感○、ザラザラ感○)。光沢粒子径が25μmの場合には、粒子感が多少欠けるものの(粒子感△)、キラキラ感とザラザラ感は良好である(キラキラ感○、ザラザラ感○)。しかし、光沢粒子径が20μmのように小さすぎると、粒子感が殆ど無くなってしまう(粒子感×)。これらのことから、光沢粒子径の下限は25μmとするのが好ましい。
【0035】
《光沢粒子径の上限》
図3を参照すると、光沢粒子径が40μmの場合には、ザラザラ感を少し大きくなるものの(ザラザラ感△)、印刷物として実用上問題はない。しかし、光沢粒子径が45μの場合は、ザラザラ感が大きくなりすぎてしまい(ザラザラ感×)、印刷物として実用上の問題が生じる。これらのことから、光沢粒子径の上限は40μmとすることが好ましい。
【0036】
《光沢粒子径のまとめ》
以上より、光沢粒子径は25〜45μmの範囲であることが好ましい。この範囲であれば、表印刷層2によって描かれている絵柄その他の情報に、適度な粒子感、キラキラ感およびザラザラ感が得られる。
【0037】
以上説明した本実施形態のメタリックカードMCでは、その具体的な構成として、光沢層10を含むことによって光沢を発するベースカード1の表面に、絵柄その他の情報からなる光透過性の表印刷層2を設ける構成を採用した。このため、例えば、オフセット印刷で光沢層10を厚く形成することにより光沢層10に光沢の質感(光沢感)を付与し、かつ、スクリーン印刷で表印刷層2を形成することにより光透過性のある高精細の表印刷層2を設けることができ、この場合、その表印刷層2は光沢層10の光沢が透けて輝いて見えるので、光沢感のある高精細な絵柄その他の情報を印刷表示することができる。
【0038】
《メタリックカードの他の実施形態》
図1のメタリックカードMCは、ベースカード1の表印刷層2が光沢感を生じる例であるが、ベースカード1の裏印刷層3にも表印刷層2と同様のスクリーン印刷によって光透過性を付与すること、及び、ICチップ層12のフィルム基材層12Bを透明とすることにより、裏印刷層3にも同様の光沢感を持たせるように構成することもできる。
【0039】
図1のメタリックカードMCにおいて、そのベースカード1のICチップ層12は省略することができる。この場合も同様に、裏印刷層3に光透過性を付与することで光沢感が生じるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ベースカード
10 光沢層
11 保護フィルム層
12 ICチップ層
12A ICチップ
12B フィルム基材層
2 表印刷層
3 裏印刷層
MC メタリックカード