(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、食事の際に箸を上手く使用することができない幼児のために、箸の持ち方を訓練させ、スプーンやフォーク等の飲食用具から箸への移行をスムーズに行わせるための補助具や、正しく箸を持つことができない子供及び成人のための矯正具や、手指の機能後退が進んでいる高齢者や機能障害を持つ者のための飲食用具が種々知られている。
例えば、幼児が掌でスプーンの柄を握りしめるいわゆる「幼児にぎり」を防止するための突起と、柄の一部に人差し指、親指及び中指のガイドとなる凹部及び穴を設けた幼児用スプーンが知られている(特許文献1)。
また、スプーンの柄を二又にし、各柄に人差し指及び中指のガイドとなる凹部を設けた飲食用スプーンが知られている(特許文献2)。
また、ほぼ円柱状のグリップの側面に切り込みを開けて、この切り込みにスプーンの後端を挿入して固定する介護用グリップが知られている(特許文献3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の技術では以下のような問題がある。
すなわち、特許文献1に記載された幼児用スプーンでは、当該スプーンを幼児に正しく持たせる際に、例えば母親が幼児の人差し指と親指を所定の凹部まで移動させ、中指を穴に挿入する必要がある。幼児にとってこのような指の状態を維持することは困難であり、また、食事中に頻繁にスプーンから手を離してしまうため、母親は度々スプーンを正しく持たせ直す必要があり、煩わしいという問題があった。
【0005】
また、特許文献2に記載された飲食用スプーンも同様に母親が子供の人差し指と中指を所定の凹部に移動させる必要があり煩わしいという問題がある。また、食事中に無意識に人差し指及び中指を凹部から外してしまい、結果的に誤った握り方が習慣化されてしまう可能性がある。
また、人差し指用の凹部が設けられている方の柄が当該凹部から後方(スプーン頭部とは反対の方向)にのびているため、スプーンを正しく握った状態ではのびている部分が人差し指の付け根の側面に接触した状態になる。
本来、2本の箸を正しく持った状態では、固定箸は親指の付け根と薬指の第一関節とで支持されて固定され、作用箸はその先端に近い部分が親指と人差し指で挟まれた状態で中指の第一関節によって下方から支えられ、その後端に近い部分が人差し指の付け根の側面に接触している。
【0006】
上述の通り、上記特許文献2に記載された飲食用スプーンは、2本の箸を正しく持った状態に近い形、すなわち人差し指用の凹部が設けられている側(作用箸に相当する側)の柄が当該凹部から後方にのびて、こののびた部分が人差し指の付け根の側面に接触した状態になる。
これにより、スプーンを持つために必要な力の一部を人差し指の付け根の側面が負担することになるため、親指、人差し指及び中指でスプーンを持つ力が少なくてすむ。
ところが、親指、人差し指及び中指でスプーンを持つ力が少なくてすむことから、食事中にこれら3本の指でスプーンを支持しなければならないという意識が次第に薄れていき、結果として正しくスプーン(箸)を持った状態を長時間維持することが困難になるという問題があり、箸の持ち方の訓練及び矯正という観点からは問題があった。
また、特許文献3に記載された介護用グリップは手の自由が利かない高齢者等であってもスプーンを使用して食事できるという点では有効であるが、手指の機能回復を目的とするリハビリテーション効果は得られない。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑み、正しい箸の持ち方を訓練及び矯正できると共に、手指の機能回復を目指すリハビリテーションにも使用できる飲食用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の飲食用具は、ヘッド部と当該ヘッド部から後方にのびる柄部とを備え、柄部は後方に向かって二又に分岐しており、一方の柄部に対して他方の柄部が相対的に短くなっており、当該短い方の柄部の後端に
突起状の把持部を備える。
また、把持部が球形状であってもよく、短い方の柄部の長手方向に直交する平面における断面形状が三角形状であってもよい。
また、短い方の柄部と長い方の柄部との間隔が後方に向かうにつれて広くなるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の飲食用具によれば、把持部を親指、人差し指及び中指で確実に把持することを常に意識しながら食事することになる。これにより、正しく箸を持った状態に近い状態を長時間維持することが可能となり、正しく箸を持つための訓練効果を得ることができる。
また、柄部が左右二又に分岐し、把持部が設けられている短い方の柄部を長い方の柄部に対して相対的に短くしているので、スプーンを持つために必要な力の大部分を親指、人差し指及び中指が負担せねばならず、結果として把持部を親指、人差し指及び中指で確実に把持することを意識しながら食事することになり、正しく箸を持った状態に近い状態を長時間維持することが可能となる。
【0010】
また、把持部を球形状とすることで親指、人差し指及び中指で確実かつ容易に把持することができる。
また、把持部の断面形状を三角形状にすることで、把持部を掴む際に、親指、人差し指及び中指がそれぞれ自然に各平面上に位置することになると共に各指が滑りにくくなるため、正しく箸を持った状態を長時間維持できる。
また、長い方の柄部と短い方の柄部との間隔が後方に向かうにつれて次第に拡がるようにすることで、実際に箸を持った状態に近くなり、訓練、矯正及びリハビリテーション効果をより高めることができる。
なお、本明細書中において「飲食用具」とは、飲食を行う際に手で持って使用する器具のうち箸を除くものを指し、例えば、スプーン、フォーク、ナイフ、先割れスプーンが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第一の実施の形態]
本発明の第一の実施の形態について
図1及び
図2を用いて説明する。
第一の実施の形態における飲食用具は右利き用のスプーン10であり、ヘッド部20、柄部30及び把持部40で構成される。
ヘッド部20は平面視した場合に前後方向に長いほぼ楕円形状の部材であり、その中央において下方に窪んでいる。
【0013】
柄部30はヘッド部20の後部から後方に向かってのびる部材である。
柄部30は後方に向かって左右二又に分岐しており、左側の柄部に対して右側の柄部が相対的に短くなっている。以下の説明においては左側の柄部を「長い方の柄部31」とし、右側の柄部を「短い方の柄部32」と表記する。
本実施の形態においては長い方の柄部31と短い方の柄部32とがほぼ平行、すなわち両者の間隔がほぼ一定に保たれている。
長い方の柄部31の長手方向の長さは、スプーンが幼児用の場合は7cm〜8cm程度が好ましく、児童用の場合は11cm〜12cm程度が好ましく、成人用の場合は15cm〜16cm程度が好ましいが、これに限定されるものではない。
短い方の柄部32の長手方向の長さは、スプーンが幼児用の場合は3cm〜4cm程度が好ましく、児童用の場合は5cm〜6cm程度が好ましく、成人用の場合は7cm〜8cm程度が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0014】
把持部40は短い方の柄部32の後端に設けられるほぼ球形状の部材であり、詳しい説明は後述するが、スプーンの使用時に親指、人差し指及び中指で把持されることになる。
ほぼ球形状の把持部40の直径は、スプーンが幼児用の場合は10mm〜12mm程度が好ましく、児童用の場合は12mm〜14mm程度が好ましく、成人用の場合は14mm〜16mm程度が好ましいが、これに限定されるものではない。
なお、本実施の形態における「ほぼ球形状」には楕円形状を含むものとする。
本実施の形態においてはヘッド部20、柄部30及び把持部40が一体的に成形されている。材質としては、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)、シリコン樹脂等の熱可塑性樹脂、水添型スチレンイソプレン共重合樹脂、スチレンブチレン共重合樹脂等の熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂等が挙げられるが、必ずしもこれに限定されるわけではない。
ヘッド部20、柄部30及び把持部40を一体的に成形することでスプーンの製造コストを抑えることができ、また、食事後の洗浄が容易になるため衛生面で優れる。
【0015】
なお、ヘッド部20、柄部30及び把持部40を個別に成形したり、いずれか2つを一体成形にし、残り一つを別途成形して取り付けるものとしてもよい。例えば、ヘッド部20及び柄部30を上記熱可塑性樹脂で一体成形し、把持部40を弾性を有するシリコン樹脂で成形すると共に柄部30の後端を挿入できる程度の穴を設けておき、当該穴を弾性的に拡径させながら柄部30の後端を挿入し、固定する構成にしてもよい。これにより把持部40が弾性を有し、指のフィット感が向上すると共に滑りにくくなるので、より把持しやすくなる。
あるいは、ヘッド部20としてスプーン10の先端部と後述するフォーク11(
図3参照)の先端部を成形し、用途に応じて柄部30に付け替えることにしてもよい。
成形法について特に限定されるものではないが、例えば射出成形、真空成型、圧空成形、プレス成形、ブロー成形等が挙げられる。また、インサート成形法を用いて、例えばヘッド部20及び柄部30をポリプロピレンで一体成形した後、シリコン樹脂で把持部40を成形してもよい。
また、長い方の柄部31と短い方の柄部32とが分岐する部分を弾性材料又は塑性材料で成形することにより、長い方の柄部31と短い方の柄部32の両者あるいはいずれか一方が上下左右及び斜め方向に弾性的又は塑性的に移動可能な構造にしてもよい。これにより、スプーンを使用する者の指の長さに応じて把持部40の位置を微調整することができる。
【0016】
次に、スプーンの使用法について
図2を用いて説明する。
使用者が幼児の場合、例えば母親が幼児の右手の親指を開き、親指の付け根の位置に長い方の柄部31を載せる。
一般的に幼児は長いものの先端を指先で摘む傾向が知られているので、幼児は無意識のうちに把持部40を親指の先端と人差し指の先端で挟むと共に、中指の第一関節付近で支えることになる。
【0017】
ここで、長い方の柄部31と短い方の柄部32は前方において繋がっているので、長い方の柄部31を親指の付け根に載せて、把持部40を親指、人差し指及び中指で把持することでスプーン10は安定した状態になっている。
換言すると、把持部40を親指、人差し指及び中指で確実に把持した状態でないとスプーン10が手の中で安定せず、使用し辛いことから、幼児は把持部40を親指、人差し指及び中指で確実に把持することを常に意識しながら食事することになる。これにより、正しく箸を持った状態に近い状態を長時間維持することが可能となり、正しく箸を持つための訓練効果を得ることができる。
【0018】
また、柄部30が左右二又に分岐し、把持部40が設けられている短い方の柄部32を長い方の柄部31に対して相対的に短くしている。仮に把持部40の位置を
図2に示した位置とし、短い方の柄部32の後端を更に後方にのばして長い方の柄部31と同じ長さにすると、スプーン10を持った状態で短い方の柄部32の後端が人差し指の付け根の側面に接触してしまい、スプーン10を持つために必要な力の一部を人差し指の付け根の側面が負担することになるため、親指、人差し指及び中指でスプーン10を持つ力が小さくなり、把持部40を親指、人差し指及び中指で把持しなければならないという意識が食事中に次第に薄れていってしまう。
しかし、本実施の形態に示した通り、把持部40が設けられている短い方の柄部32を長い方の柄部31に対して相対的に短くしているため、スプーン10を持つために必要な力の大部分を親指、人差し指及び中指が負担せねばならない。結果として把持部40を親指、人差し指及び中指で確実に把持することを意識しながら食事することになり、正しく箸を持った状態に近い状態を長時間維持することが可能となる。
また、把持部40の形状を短い方の柄部32の後端から突起して目立つ形状にすることで、母親が幼児に対して把持部40を持つように口頭で指示した場合に、幼児は把持部40の存在を目視で容易に認識し、把持できるので、訓練効率を向上できる。
また、従来、箸の側面に人差し指や中指等を通すためのリングを設けておき、これらリングに各指を通すことで正しい箸の持ち方を再現する矯正具が知られているが、このような矯正具と比較して、本実施の形態に示したスプーン10は幼児が自ら積極的に把持部40を把持するので、幼児に主体性を持たせながら訓練することが可能となる。
また、長い方の柄部31を親指の付け根で挟んで支持するので、親指の付け根に固定箸の存在を意識しながら作用箸を動かして食事するという実際に箸を使用している状態に近い状態を再現できると共に、この状態を長時間維持することが可能となる。
【0019】
なお、薬指は必ずしも長い方の柄部31を下方から支持する位置にあるとは限らないが、親指、人差し指及び中指で把持部40を確実に把持し、この状態を維持することが正しく箸を持つための訓練に最も効果的であるため特に支障はない。
また、正しく箸を持つことができない子供及び成人の場合も同様に、把持部40を親指、人差し指及び中指で確実に把持することを常に意識しながら食事することで、正しく箸を持った状態に近い状態を長時間維持することが可能となり、正しく箸を持つための矯正効果を得られる。
また、手指の機能後退が進んでいる高齢者や機能障害を持つ者の場合は、把持部40を親指、人差し指及び中指で確実に把持することを常に意識しながら食事することで、手指の機能回復を目的とするリハビリテーション効果を得られる。
なお、長い方の柄部31及び短い方の柄部32の表面全部或いは一部に微細な凹凸加工を施し、いわゆるシボ面とすることで滑りを防止する構造にしてもよい。
また、長い方の柄部31の表面の親指が接触する位置にシリコン樹脂からなる面を成形し、親指の滑りを防止する構造にしてもよい。
【0020】
[第二の実施の形態]
次に、本発明の第二の実施の形態について
図3〜
図5を用いて説明する。
なお、上記第一の実施の形態と同一の構成となる部分は同一の符号を用いてその説明を省略する。
本実施の形態における飲食用具は右利き用のフォーク11であり、ヘッド部21、柄部30及び把持部41で構成される。
ヘッド部21は平面視した場合にその先端に食品を突き刺すための刺し歯が複数並んだ櫛歯状の部材である。
【0021】
本実施の形態においては長い方の柄部31と短い方の柄部32との間隔が後方に向かうにつれて次第に拡がるように設計されている。両者の間隔を後方に向かうにつれて拡がるようにすることで、実際に箸を持った状態に近くなり、上記訓練、矯正及びリハビリテーション効果をより高めることができるというメリットがある。
図5に示すように、把持部41は短い方の柄部32の長手方向に直交する平面における断面形状が三角形状の部材である。断面形状を三角形状にする、すなわち把持部41の表面を3つの平面42〜44で構成することにより、各平面42〜44にそれぞれ親指、人差し指及び中指を載せやすくなる。つまり、幼児が把持部41を掴む際に、親指、人差し指及び中指がそれぞれ自然に各平面上に位置することになると共に各指が滑りにくくなるため、正しく箸を持った状態を長時間維持できる。
また、把持部41の断面形状をほぼ正三角形にした場合、親指を載せる平面42の水平面Hに対する傾斜角aを角度bよりも小さくするのが好ましく、例えば傾斜角aを20度、角度bを40度にするのが好ましい。このように傾斜角aを角度bよりも小さくすることで親指を平面42に載せやすくできる。把持部41の断面形状を正三角形以外にする場合でも傾斜角aを角度bよりも小さくするのが好ましい。
なお、本実施の形態では断面形状を三角形状としたが、四角形以上の多角形状としてもよく、各角を面取りしたものであってもよい。
【0022】
[第三の実施の形態]
次に、本発明の第三の実施の形態について
図6及び
図7を用いて説明する。
なお、上記第一及び第二の実施の形態と同一の構成となる部分は同一の符号を用いてその説明を省略する。
本実施の形態における飲食用具は左利き用であり、
図6はスプーン12、
図7はフォーク13を示している。
左利き用の場合、上記各実施の形態とは反対に右側の柄部(長い方の柄部)31に対して左側の柄部(短い方の柄部)32を相対的に短くすればよい。
なお、幼児用のスプーンやフォークの場合、ヘッド部20を口からスムーズに出し入れできるように、ヘッド部20を平面で構成することがある。この場合は、ヘッド部20の表裏両面を使用すればよいので、右利き用と左利き用を区別して製造する必要はない。但し、把持部41は
図5に示す水平面Hに対して線対称となる断面形状にするのが好ましい。
以上、各実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は各実施の形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能である。例えば、飲食用具の一部にエッチング加工やプリント加工等で人、動物、乗り物等のキャラクターを描いたり、あるいはこれらキャラクターを立体化して取り付けてもよい。