特許第5713409号(P5713409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NECプラットフォームズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5713409-光パス切替方法および装置 図000002
  • 特許5713409-光パス切替方法および装置 図000003
  • 特許5713409-光パス切替方法および装置 図000004
  • 特許5713409-光パス切替方法および装置 図000005
  • 特許5713409-光パス切替方法および装置 図000006
  • 特許5713409-光パス切替方法および装置 図000007
  • 特許5713409-光パス切替方法および装置 図000008
  • 特許5713409-光パス切替方法および装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713409
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】光パス切替方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/032 20130101AFI20150416BHJP
   H04L 12/713 20130101ALI20150416BHJP
   H04B 10/079 20130101ALI20150416BHJP
【FI】
   H04B9/00 132
   H04L12/713
   H04B9/00 179
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-105870(P2012-105870)
(22)【出願日】2012年5月7日
(65)【公開番号】特開2013-236156(P2013-236156A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2013年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】内田 良則
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−273047(JP,A)
【文献】 特開平05−336001(JP,A)
【文献】 特開2002−171496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
H04L 12/713
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現用伝送路と予備伝送路とを用いた光パス網における光パス切替装置であって、
前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を電気信号に変換する光電変換手段と、
前記電気信号から抽出した複数の所定信号成分からそれぞれの位相を検出し、これらの検出された複数の位相から位相オフセット量を検出する位相オフセット検出手段と、
前記位相オフセット量と所定のしきい値との比較結果に基づいて前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の切替を制御する切替制御手段と、
を有することを特徴とする光パス切替装置。
【請求項2】
前記複数の所定信号成分は、前記光信号の送信側において当該光信号に変換される前の原電気信号に挿入された2つのパイロット信号であることを特徴とする請求項1に記載の光パス切替装置。
【請求項3】
現用伝送路と予備伝送路とを用いた光パス網における光パス切替方法であって、
前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を電気信号に変換し、
前記電気信号から抽出した複数の所定信号成分からそれぞれの位相を検出し、
これらの検出された複数の位相から位相オフセット量を検出し、
前記位相オフセット量と所定のしきい値との比較結果に基づいて前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の切替を制御する、
ことを特徴とする光パス切替方法。
【請求項4】
前記複数の所定信号成分は、前記光信号の送信側において当該光信号に変換される前の原電気信号に挿入された2つのパイロット信号であることを特徴とする請求項に記載の光パス切替方法。
【請求項5】
現用伝送路と予備伝送路とを用いた光パス網における光伝送システムであって、
前記現用伝送路および前記予備伝送路に対して、それぞれの主電気信号に複数の所定信号成分を挿入した原電気信号を光信号に変換して送信する光送信機と、
前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を点検して前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の伝送路切替を実行する光パス切替装置と、
を有し、
前記光パス切替装置が、前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を電気信号に変換し、前記電気信号から抽出した複数の所定信号成分からそれぞれの位相を検出し、これらの検出された複数の位相から位相オフセット量を検出し、前記位相オフセット量と所定のしきい値との比較結果に基づいて前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の切替を制御する、ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項6】
前記複数の所定信号成分は、前記光信号の送信側において当該光信号に変換される前の原電気信号に挿入された2つのパイロット信号であることを特徴とする請求項に記載の光伝送システム。
【請求項7】
現用伝送路と予備伝送路とを用いた光パス網における光パス切替装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号から光電変換された電気信号から複数の所定信号成分を抽出し、
前記複数の所定信号成分からそれぞれの位相を検出し、
これらの検出された複数の位相から位相オフセット量を検出し、
前記位相オフセット量と所定のしきい値との比較結果に基づいて前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の切替を制御する、
ように前記コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光パス網に係り、特に現用伝送路と予備伝送路を用いた光伝送システムにおける光パス切替方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光パス網における現用伝送路と予備用伝送路の切替方法としては、特許文献1に開示されているように、現用伝送路と予備伝送路の光信号レベルを用いて光伝送路の劣化を判定し伝送路の切り替えを行う方法が知られている。
【0003】
しかしながら、光パス網を伝送する光信号は電気信号から光信号に変換されてから送信される。したがって、信号レベルの低下は、光伝送路の問題だけでなく、送信側の光信号を生成する前の電気信号の処理段階が原因となる場合もあり得る。たとえば、使用する電気素子の劣化や周囲温度による電気信号の減衰量の変化が原因となって、信号レベルの低下や伝送路のノイズレベルの増大といった問題が発生すると、光パス網全体の信頼性を損なってしまう。この問題を解決する手段として、特許文献2には、光信号に変換する前の電気信号におけるパイロット信号のレベルを光伝送路を通過した後で検出し、レベル低下があれば光パスの切替を実行する光パス切替方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−303814号公報
【特許文献2】特開2010−273047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、変換前の電気信号は、電気素子の劣化や周囲温度により、その位相特性が変化する場合がある。上述した特許文献2による光パス切替方法では、電気信号の位相特性が劣化した場合に伝送路の切り替えを行うことができない。位相特定の劣化も伝送路の切替要因であるから、このような場合に伝送路が切り替えられないことは、光パス網全体の信頼性が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、位相特定の劣化が生じても伝送路を切り替えることができ光パス網全体の信頼性を向上させることができる光パス切替方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光パス切替装置は、現用伝送路と予備伝送路とを用いた光パス網における光パス切替装置であって、前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を電気信号に変換する光電変換手段と、前記電気信号から抽出した複数の所定信号成分からそれぞれの位相を検出し、これらの検出された複数の位相から位相オフセット量を検出する位相オフセット検出手段と、前記位相オフセット量と所定のしきい値との比較結果に基づいて前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の切替を制御する切替制御手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明による光パス切替方法は、現用伝送路と予備伝送路とを用いた光パス網における光パス切替方法であって、前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を電気信号に変換し、前記電気信号から抽出した複数の所定信号成分からそれぞれの位相を検出し、これらの検出された複数の位相から位相オフセット量を検出し、前記位相オフセット量と所定のしきい値との比較結果に基づいて前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の切替を制御する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明による光伝送システムは、現用伝送路と予備伝送路とを用いた光パス網における光伝送システムであって、前記現用伝送路および前記予備伝送路に対して、それぞれの主電気信号に複数の所定信号成分を挿入した原電気信号を光信号に変換して送信する光送信機と、前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を点検して前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の伝送路切替を実行する光パス切替装置と、を有し、前記光パス切替装置が、前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を電気信号に変換し、前記電気信号から抽出した複数の所定信号成分からそれぞれの位相を検出し、これらの検出された複数の位相から位相オフセット量を検出し、前記位相オフセット量と所定のしきい値との比較結果に基づいて前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の切替を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、位相特定の劣化が生じても伝送路を切り替えることができ光パス網全体の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明を適用した光パス網の一例を示す模式的ネットワーク構成図である。
図2図2は本発明の第1実施形態による光パス切替装置の機能的構成を示すブロック図である。
図3図3図2における識別部のより具体的な機能構成を示すブロック図である。
図4図4図2に示す第1実施形態による光パス切替方法を示すフローチャートである。
図5図5は本発明の第2実施形態による光パス切替装置の機能的構成を示すブロック図である。
図6図6図5における判定処理部のより具体的な機能構成を示すブロック図である。
図7図7図5に示す第2実施形態による光パス切替方法を示すフローチャートである。
図8図8は第2実施形態における判定部の条件判定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態によれば、光パス網における現用伝送路および予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を電気信号に変換し、これら電気信号から検波された所定信号成分(所定周波数のパイロット信号)の位相特性の劣化を識別することで光パスを切り替える。以下、CATV伝送システムを一例として取り上げ、CATV信号に挿入されるパイロット信号を位相特性劣化の検出に利用する実施形態について説明する。
【0013】
まず、CATV伝送システムでは、電気信号の伝送に使用される同軸ケーブルの減衰量が周囲温度により変化するために、同軸中継増幅器の利得を制御することで減衰量の変化を抑制している。その制御のために、通常のCATV信号に、出力レベルの安定したパイロット信号を挿入して送信している。
【0014】
図1に示すように、現用伝送路1の送信側に一般的な光送信機21が設けられ、予備伝送路2の送信側に一般的な光送信機22が設けられている。光送信機21の入力側に接続された混合器17は、映像/音声/データ信号等のCATV信号11にパイロット信号12および13を挿入し光送信機21へ出力する。光送信機21は、混合器17から出力された電気信号を光信号に変換し、現用伝送路1を介して光パス切替装置3へ送信する。なお、現用系のパイロット信号12および13は、簡略のために、それぞれP1wおよびP2wと記すものとする。
【0015】
同様に、光送信機22の入力側に接続された混合器18は、同じくCATV信号14にパイロット信号15および16を挿入して光送信機22へ出力する。光送信機22は、混合器18から出力された電気信号を光信号に変換し、予備伝送路2を介して光パス切替装置3へ送信する。ここで、予備系のパイロット信号15および16も、簡略のために、それぞれP1pおよびP2pと記すものとする。
【0016】
光パス切替装置3は、後述するように、光変換前の電気信号の位相特性の劣化を識別して伝送路の切替制御を実行し、切り替えられた光出力信号4が伝送路を通して光中継増幅器へ送信される。以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
1.第1実施形態
1.1)構成
図2に示すように、本発明の第1実施形態による光パス切替装置3は光出力信号切替部100を有し、現用伝送路1から入力した光入力信号と予備伝送路2から入力した光入力信号とを切り替えて光出力信号4として出力する。
【0018】
光パス切替装置3は、さらに、現用系および予備系の位相オフセットをそれぞれ検出する回路を有する。現用系の回路は、現用伝送路1からの光入力信号を電気信号に変換する光電変換素子101と、この電気信号を2つに分岐する分岐部102と、一方の分岐信号からパイロット信号P1wの周波数を抽出して当該信号の位相を検出する位相検出器103と、他方の分岐信号からパイロット信号P2wの周波数を抽出して当該信号の位相を検出する位相検出器104と、位相検出器103および104のそれぞれの出力信号の位相から位相オフセットPofs−wを検出する位相オフセット検出部105と、を有する。予備系の回路も、同様に、予備伝送路2からの光入力信号を電気信号に変換する光電変換素子111と、この電気信号を2つに分岐する分岐部112と、パイロット信号P1pの周波数を抽出して当該信号の位相を検出する位相検出器113と、パイロット信号P2pの周波数を抽出して当該信号の位相を検出する位相検出器114と、位相検出器113および114のそれぞれの出力信号の位相から位相オフセットPofs−pを検出する位相オフセット検出部115と、を有する。
【0019】
光パス切替装置3は、さらに、位相オフセット検出部105および106からそれぞれ入力した位相オフセットPofs−wおよびPofs−pに基づき光出力信号切替部100に切替要求信号RQswを出力する識別部120を有する。光出力信号切替部100は、切替要求信号RQswに従って、光出力信号4を現用伝送路1からの光入力信号か予備伝送路2からの光入力信号かのいずれかに切り替える。
【0020】
図3に示すように、識別部120は、CPU(Central Processing Unit)と、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等のメモリを備えた主制御部を有する。この主制御部は、機能構成要素として、現用パイロット信号の位相オフセットPofs−wと予備パイロット信号の位相オフセットPofs−pとをそれぞれ格納する現用位相オフセット記憶部201および予備位相オフセット記憶部202と、現用位相オフセットPofs−wと予備位相オフセットPofs−pとをしきい値保持メモリ204に保持されたしきい値Pthと比較する比較部203と、比較部203の比較結果から切替要求信号RQswを光出力信号切替部100へ出力する切替要求信号出力部205と、を有する。主制御部は、図示しないバス等の信号伝達手段を通じて次の各部と接続され、これらの全体的な制御を行う。
【0021】
しきい値保持メモリ204は位相オフセットのしきい値を保持する。この位相オフセットのしきい値は管理者が予め設定している。現用位相オフセット記憶部201は、図2に示した現用伝送路1に関して、最新の位相オフセットPofs−wをそれまでの記憶内容に上書きして記憶する。同様に、予備位相オフセット記憶部202は予備伝送路2に関して、最新の位相オフセットPofs−pをそれまでの記憶内容に上書きして記憶する。切替要求信号出力部205は、比較部203の比較結果により現用位相オフセットと予備位相オフセットの一方がしきい値よりも増大した場合、他方の位相オフセットに対応する伝送路への切替要求信号RQswを出力する。なお、現用位相オフセットPofs−wと予備位相オフセットPofs−pの双方がしきい値よりも増大したときには、エラーの発生を示すエラー信号を出力するようにしてもよい。以下、本実施例により切替動作について更に詳しく説明する。
【0022】
1.2)動作
次に、本実施形態による光パス切替装置3における光信号の切り替え動作について説明する。この光信号の切替動作は図2に示す各機能ブロックにより実現することができるが、上述したCPU上でプログラムを実行することにより同様の機能を実現することも可能である。
【0023】
図2において、現用伝送路1を伝送する光信号は、光出力信号切替部100の一方の入力ポートと光電変換素子101に入力する。また予備伝送路2を伝送する光信号は、光出力信号切替部100の他方の入力ポートと光電変換素子111に入力する。
【0024】
現用系の光電変換素子101は現用伝送路1に伝送する光信号を電気信号に変換し、この電気信号は分岐器102により2つに分岐され、それぞれ位相検出器103および位相検出器104へ入力する。位相検出器103はパイロット信号P1wの位相を抽出し、これを位相オフセット検出部105へ出力し、位相検出器104はパイロット信号P2wの位相を抽出し、これを位相オフセット検出部105へ出力する。位相オフセット検出部105は、位相検出器103および104から入力された位相信号との間の位相ずれから位相オフセットPofs−wを検出し、その検出信号を識別部120へ出力する。
【0025】
同様に、予備系の光電変換素子111は予備伝送路1に伝送する光信号を電気信号に変換し、この電気信号は分岐器112により2つに分岐され、それぞれ位相検出器113および位相検出器114へ入力する。位相検出器113はパイロット信号P1pの位相を抽出し、これを位相オフセット検出部115へ出力し、位相検出器114はパイロット信号P2pの位相を抽出し、これを位相オフセット検出部115へ出力する。位相オフセット検出部115は、位相検出器113および114から入力された位相信号との間の位相ずれから位相オフセットPofs−pを検出し、その検出信号を識別部120へ出力する。
【0026】
識別部120は、現用系および予備系の位相オフセットPofs−wおよびPofs−pを格納し、これらの位相オフセットとしきい値とを比較することで光パスの切替判定を行い、光出力信号切替部100へ切替要求信号RQswを出力する。以下、図4を参照しながら識別部120の動作について説明する。
【0027】
図4において、識別部120の比較部203は、CPUの制御の下で、現用系および予備系の光入力信号の点検を行うタイミングになると(ステップ301;YES)、現用系オフセット記憶部201に格納されている現用系位相オフセットPofs−wを読み出し(ステップ302)、しきい値保持メモリ204に格納されている所定のしきい値Pthと比較する(ステップ303)。現用系位相オフセットPofs−wがしきい値Pth以上であれば(ステップ303;NO)、現用系のパイロット信号の位相特性が劣化していると判断し、比較部203は、CPUの制御の下で、予備系オフセット記憶部202に格納されている予備系位相オフセットPofs−pを読み出す(ステップ304)。続いて、比較部203は、予備系位相オフセットPofs−pとしきい値保持メモリ204に格納されている所定のしきい値Pthと比較し(ステップ305)、予備系位相オフセットPofs−pがしきい値Pth未満であれば(ステップ305;YES)、予備系は正常と判断し、現用伝送路1を伝送する光信号入力から予備伝送路2を伝送する光信号へ切り替える切替要求信号RQswを光出力信号切替部100へ出力する(ステップ306)。もし予備系位相オフセットPofs−pもしきい値Pth以上となれば(ステップ305;NO)、CPUはエラー信号を出力するようにしてもよい。
【0028】
他方、現用系位相オフセットPofs−wがしきい値Pth未満であれば(ステップ303;YES)、現用系は正常と判断し、比較部203は、CPUの制御の下で、予備系オフセット記憶部202に格納されている予備系位相オフセットPofs−pを読み出す(ステップ307)。続いて、比較部203は、予備系位相オフセットPofs−pとしきい値Pthとを比較し(ステップ308)、予備系位相オフセットPofs−pがしきい値Pth以上であれば(ステップ308;NO)、予備系の位相特性が劣化していると判断し、現用伝送路1を使用中であればそのまま維持するか、あるいは予備伝送路2を使用中であれば予備伝送路2から現用伝送路1へ切り替える切替要求信号RQswを光出力信号切替部100へ出力する(ステップ309)。予備系位相オフセットPofs−pもしきい値Pth未満で正常であれば(ステップ308;NO)、CPUは何もせずに本処理を終了する。
【0029】
1.3)効果
上述したように、本実施形態によれば、現用伝送路1および予備伝送路2をそれぞれ伝送するパイロット信号の位相オフセットから位相特性の劣化を検出することができ、光出力信号の切替を位相特性に応じて適切に切り替えることが可能となる。したがって、送信信号が光に変換される前の特定周波数での位相特性が劣化した時に光信号の切り替えを実行することができ、信頼性の高い光パス網を構築することができる。
なお、本発明は上記第1実施形態に限定されるものではなく、位相検出部は他の周波数での位相特性の劣化を検出してもよい。
【0030】
2.第2実施形態
本発明の第2実施形態によれば、位相特性劣化だけでなく他の回線品質条件を適用した判定を行う。例えば、パイロット信号の電気信号レベルと位相オフセットの組み合わせで、伝送路の回線品質条件を判定して光パスを切り替える。以下、図6図8を参照し、本発明の第2実施形態の構成および動作について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0031】
2.1)構成
図5において、光パス切替装置3の現用系および予備系の位相オフセットをそれぞれ検出する回路については、図2と同様であるから同一参照番号を付して説明は省略する。
【0032】
図5において、現用系の光電変換素子101は現用伝送路1に伝送する光信号を電気信号に変換し、この電気信号は分岐器102aにより3つに分岐され、それぞれ位相検出器103、位相検出器104および検波部131へ入力する。同様に、予備系の光電変換素子111は予備伝送路2に伝送する光信号を電気信号に変換し、この電気信号は分岐器112aにより3つに分岐され、それぞれ位相検出器113、位相検出器114および検波部132へ入力する。
【0033】
検波部131はパイロット信号P1wの周波数の信号レベルのみを電圧に変換し、これをレベル識別部133へ出力する。同様に、検波部132はパイロット信号Pipの周波数の信号レベルのみを電圧に変換し、これをレベル識別部133へ出力する。レベル識別部132は、後述するように検波レベルを識別し、識別結果を判定部134へ出力する。判定部134は、既に述べた識別部120からの識別結果(ここではRQ1と記す。)とレベル識別部133からの識別結果RQ2とに基づいて、後述する判定条件に従って切替要求信号RQswを生成し光出力信号切替部100へ出力する。以下、図6を参照して、レベル識別部133、判定部134および識別部120からなる判定処理部200の構成について説明する。
【0034】
図6において、判定処理部200における識別部120の構成は図3に示すとおりであり、同じ参照番号を付して説明は省略する。レベル識別部133は、現用パイロット信号の検波レベルL−wと予備パイロット信号の検波レベルL−pとをそれぞれ格納する現用パイロット信号レベル記憶部210および予備パイロット信号レベル記憶部211と、現用パイロット信号の検波レベルL−wと予備パイロット信号の検波レベルL−pとをしきい値保持メモリ214に保持されたしきい値Lthと比較するレベル比較部213と、を有する。
【0035】
現用パイロット信号レベル記憶部210は、図6に示した検波部131から出力される現用のパイロット信号レベルL−wを記憶する領域であり、最新のパイロット信号レベルL−wをそれまでの記憶内容に上書きして記憶する。予備パイロット信号レベル記憶部211も同様に、図6に示した検波回路132から出力される予備パイロット信号レベルL−pを記憶する領域であり、最新のパイロット信号レベルL−pをそれまでの記憶内容に上書きして記憶する。
【0036】
判定部134は、比較部203の比較結果RQ1とレベル比較部213からの比較結果RQ2とを入力して光パスの切替判定を行う条件判定部215と、その判定結果から切替要求信号RQswを出力する切替要求信号出力部216とを有する。
【0037】
なお、本実施形態による判定処理部200も、CPUと制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等のメモリを備えた主制御部を有している。判定処理部200の主制御部は、既に述べたように、図示しないバス等の信号伝達手段を通じて次の各部と接続され、これらの全体的な制御を行う。
【0038】
2.2)動作
次に、本実施形態による光パス切替装置3における光信号の切り替え動作について説明する。この光信号の切替動作は図5に示す各機能ブロックにより実現することができるが、上述したCPU上でプログラムを実行することにより同様の機能を実現することも可能である。ただし、図5における現用系および予備系の位相オフセットをそれぞれ検出する回路の動作と図6における識別120の動作については、第1実施形態で説明したとおりであるから説明は省略する。
【0039】
図6において、レベル比較部213は、現用パイロット信号の検波レベルL−wおよび予備パイロット信号の検波レベルL−pの各々と予め設定されたしきい値Lthとを比較し、パイロット信号のレベルが閾値以下であれば条件判定部215に比較結果RQ2を出力する。条件判定部215は、比較部203およびレベル比較部213からのそれぞれの比較結果RQ1およびRQ2を入力し、後述する判定条件(図8参照)に従って、切替要求信号RQswを光出力信号切替部100へ出力する。以下、図7および図8を参照しながら、判定処理部200の条件判定動作について説明する。
【0040】
図7において、判定処理部200は、CPUの制御の下で、現用系および予備系の光入力信号の点検を行うタイミングになると(ステップ401;YES)、現用系パイロット信号のオフセット記憶部201に格納されている現用系位相オフセットPofs−wとレベル記憶部210に格納されている現用系検波レベルL−wを用いて現用系伝送品質劣化の有無を判定する(ステップ402)。具体的には、比較部203が現用系位相オフセットPofs−wとしきい値Pthとを比較して比較結果RQ1を条件判定部215へ出力し、レベル比較部213が現用系検波レベルL−wとしきい値Lthとを比較して比較結果RQ2を条件判定部215へ出力する。
【0041】
現用系の伝送品質が劣化していると判定されると(ステップ403;YES)、判定処理部200は、続いて、予備系パイロット信号のオフセット記憶部202に格納されている予備系位相オフセットPofs−pとレベル記憶部211に格納されている予備系検波レベルL−pを用いて予備系伝送品質劣化の有無を判定する(ステップ404)。具体的には、比較部203が現用系位相オフセットPofs−pとしきい値Pthとを比較して比較結果RQ1を条件判定部215へ出力し、レベル比較部213が現用系検波レベルL−pとしきい値Lthとを比較して比較結果RQ2を条件判定部215へ出力する。
【0042】
予備系伝送品質が劣化していないと判定されると(ステップ405;NO)、条件判定部215は現用伝送路1から予備伝送路2への切替要求信号RQswを切替要求信号出力部216から光出力信号切替部100へ出力する(ステップ406)。なお、現用伝送路と予備伝送路の位相特性とパイロット信号レベルの全てが劣化したときには(ステップ405;YES)、エラーの発生を示すエラー信号を出力するようにしてもよい。
【0043】
他方、現用系の伝送品質が劣化していなければ(ステップ403;NO)、判定処理部200は、続いて、予備系パイロット信号のオフセット記憶部202に格納されている予備系位相オフセットPofs−pとレベル記憶部211に格納されている予備系検波レベルL−pを用いて予備系伝送品質劣化の有無を判定する(ステップ407)。具体的には、比較部203が現用系位相オフセットPofs−pとしきい値Pthとを比較して比較結果RQ1を条件判定部215へ出力し、レベル比較部213が現用系検波レベルL−pとしきい値Lthとを比較して比較結果RQ2を条件判定部215へ出力する。
【0044】
予備系伝送品質が劣化していると判定されると(ステップ408;YES)、条件判定部215は予備伝送路2から現用伝送路1への切替要求信号RQswを切替要求信号出力部216から光出力信号切替部100へ出力する(ステップ409)。予備系伝送品質が劣化していなければ(ステップ408;NO)、そのまま何もせずに処理を終了する。
【0045】
2.3)切替条件判定
図8に示すように、本実施形態による判定処理部200は、現用伝送路1および予備伝送路2の品質(検波レベルおよび位相特性)に従って、適切な伝送路を選択することができる。たとえば、図8に従えば、次の選択基準が採用される。
第1に、良好の数が多い方の伝送路が選択される。
【0046】
第2に、良好の数の同じであれば検波レベルが良好である伝送路が選択される。たとえば、現用系では検波レベルのみが良好で、予備系では位相特性のみが良好である場合、検波レベルが優先され、現用伝送路が選択される。同様に、現用系では位相特性のみが良好で、予備系では検波レベルのみが良好である場合には予備伝送路が選択される。
第3に、現用系と予備系とは全く同等であれば、現用伝送路が選択される。
【0047】
2.4)効果
上述したように、本実施形態によれば、現用伝送路1および予備伝送路2をそれぞれ伝送するパイロット信号の位相オフセットおよび検波レベルを検出し、検出した結果を所定の品質判定条件に従って伝送路切替を制御する。したがって、送信信号が光に変換される前の特定周波数での位相特性および/または伝送品質が劣化した時に光信号の切り替えを実行することができ、信頼性の高い光パス網を構築することができる。
【0048】
3.付記
上述した実施形態の一部あるいは全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
(付記1)
現用伝送路と予備伝送路とを用いた光パス網における光パス切替装置であって、
前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を電気信号に変換する光電変換手段と、
前記電気信号から抽出した所定信号成分を用いて位相特性を検出する位相特性検出手段と、
前記位相特性に基づいて前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の切替を制御する切替制御手段と、
を有することを特徴とする光パス切替装置。
(付記2)
前記位相特性は前記所定信号成分の位相オフセット量として検出されることを特徴とする付記1に記載の光パス切替装置。
(付記3)
前記所定信号成分は、前記光信号の送信側において当該光信号に変換される前の原電気信号に挿入されたパイロット信号であることを特徴とする付記1または2に記載の光パス切替装置。
(付記4)
前記原電気信号はCATV信号であることを特徴とする付記3に記載の光パス切替装置。
(付記5)
現用伝送路と予備伝送路とを用いた光パス網における光パス切替方法であって、
前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を電気信号に変換し、
前記電気信号から抽出した所定信号成分を用いて位相特性を検出し、
前記位相特性に基づいて前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の切替を制御する、
ことを特徴とする光パス切替方法。
(付記6)
前記位相特性は前記所定信号成分の位相オフセット量として検出されることを特徴とする付記5に記載の光パス切替方法。
(付記7)
前記所定信号成分は、前記光信号の送信側において当該光信号に変換される前の原電気信号に挿入されたパイロット信号であることを特徴とする付記5または6に記載の光パス切替方法。
(付記8)
前記原電気信号はCATV信号であることを特徴とする付記7に記載の光パス切替方法。
(付記9)
現用伝送路と予備伝送路とを用いた光パス網における光伝送システムであって、
前記現用伝送路および前記予備伝送路に対して、それぞれの主電気信号に所定信号成分を挿入した原電気信号を光信号に変換して送信する光送信機と、
前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を点検して前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の伝送路切替を実行する光パス切替装置と、
を有し、
前記光パス切替装置が、前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号を電気信号に変換し、前記電気信号から抽出した前記所定信号成分を用いて位相特性を検出し、前記位相特性に基づいて前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の切替を制御する、ことを特徴とする光伝送システム。
(付記10)
前記位相特性は前記所定信号成分の位相オフセット量として検出されることを特徴とする付記9に記載の光伝送システム。
(付記11)
前記所定信号成分は、前記光信号の送信側において当該光信号に変換される前の原電気信号に挿入されたパイロット信号であることを特徴とする付記9または10に記載の光伝送システム。
(付記12)
前記原電気信号はCATV信号であることを特徴とする付記11に記載の光伝送システム。
(付記13)
現用伝送路と予備伝送路とを用いた光パス網における光パス切替装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記現用伝送路および前記予備伝送路からそれぞれ入力した光信号から光電変換された電気信号から所定信号成分を抽出し、
前記所定信号成分を用いて位相特性を検出し、
前記位相特性に基づいて前記現用伝送路と前記予備伝送路との間の伝送路切替を制御する、
ように前記コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は現用伝送路と予備伝送路とを切り替え可能な光パス網を用いたCATV光伝送システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 現用伝送路
2 予備伝送路
3 光パス切替装置
4 光出力信号
11,14 CATV信号
12,15 パイロット信号
13,16 パイロット信号
17,18 混合器
21、22 光送信機
100 光出力信号切替部
101,111 光電変換素子
102,112 分岐部
103,113 位相検出部
104,114 位相検出部
105,115 位相オフセット検出部
120 識別部
131,132 検波部
133 レベル識別部
134 判定部
200 識別処理部
201 現用位相オフセット記憶部
202 予備位相オフセット記憶部
203 比較部
204 しきい値保持メモリ
205 切替要求信号出力部
210 現用パイロット信号レベル記憶部
211 予備パイロット信号レベル記憶部
213 レベル比較部
214 しきい値保持メモリ
215 条件判定部
216 切替要求信号出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8