(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713410
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】油圧式ダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20150416BHJP
F16F 9/20 20060101ALI20150416BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
F16F9/32 L
F16F9/20
E04H9/02 351
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-248030(P2012-248030)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2014-95449(P2014-95449A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233239
【氏名又は名称】日立機材株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小竹 祐治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆之
(72)【発明者】
【氏名】新飯田 匠
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−347018(JP,A)
【文献】
特開平11−230230(JP,A)
【文献】
特開昭56−143836(JP,A)
【文献】
特開2010−209960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
E04H 9/02
F16F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に収納されたピストンと、
前記シリンダ内の前記ピストンの両側に形成され作動油を充填する2つの油室である第一油室と第二油室と、
前記ピストンに形成されるピストンロッドと、
前記2つの油室との間で前記作動油を給排するアキュムレータを備える油圧式ダンパにおいて、
前記アキュムレータが前記ピストンに収装され、第一油室に連通するものと、第二油室に連通するものと二つ備えられたことを特徴とする油圧式ダンパ。
【請求項2】
シリンダと、
前記シリンダ内に収納されたピストンと、
前記シリンダ内の前記ピストンの両側に形成され作動油を充填する2つの油室である第一油室と第二油室と、
前記ピストンに形成されるピストンロッドと、
前記2つの油室との間で前記作動油を給排するアキュムレータを備える油圧式ダンパにおいて、
前記アキュムレータが前記ピストンに収装され、第一油室に連通する第一アキュムレータ油室と、第二油室に連通する第二アキュムレータ油室を有し、第一アキュムレータ油室の第一アキュムレータピストンと第二アキュムレータ油室の第二アキュムレータピストンが、バネで連結されていることを特徴とする油圧式ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建築物等の構造物に取り付けられ、地震等の外力により構造物に発生する運動エネルギーを作動油の熱エネルギーに変換して吸収する油圧式ダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧式ダンパには、例えば
図5に示すようなものがあった。
【0003】
この従来の油圧式ダンパ120は、両端を閉止された円筒状のシリンダ122と、このシリンダ122の内部に収納されて、作動油が充填された第1油室124,第2油室126をその両側に形成するピストン128とを備えていた。
【0004】
このピストン128は、その両端面128a,128bから軸線方向(
図5中左右方向)の外側に伸びた建物構造体にボールジョイントなどを介して接続されるロッド側ピストンロッド130と、ロッド側ピストンロッド130とは逆側に設けられるヘッド側ピストンロッド132を有しており、これらの両ピストンロッド130,132は、シリンダ122の両端面122a,122bから軸線方向の外側にそれぞれの先端部が突出していた。そして、ヘッド側ピストンロッド132の先端部は、シリンダ122の端面122bからその軸線方向の外側に延長する延長部材134の内部空間に収容されていた。
【0005】
そして、従来の油圧式ダンパ120には、そのピストン128の中実内部に設けられる第1油室124,第2油室126間を連通する油路128c,128dの途中に、第1油室124,第2油室126間の作動油の流動状態を制御するリリーフ弁136,138が設けられていた。ヘッド側ピストンロッド132の内部空間には、第1油室124,第2油室126内の作動油の膨張、収縮を吸収して油圧式ダンパ120を安定して動作させるアキュムレータ140が設けられていた。
【0006】
このアキュムレータ140は、ヘッド側ピストンロッド132の内部空間を2つの空間に区分するアキュムレータピストン144と、2つの空間の一方に形成され、シリンダ122内の第1油室124,第2油室126に連通するアキュムレータ油室142と、2つの空間の他方に収納されて、アキュムレータピストン144をアキュムレータ油室142に向けて押圧するバネ146等により構成されていた。
【0007】
そして、シリンダ122内の第1油室124,第2油室126とアキュムレータ油室142を連通する油路は、ピストン128からロッド側ピストンロッド130を通りヘッド側ピストンロッド132に設けられるアキュムレータ油室142に連通するよう形成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-36677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の油圧式ダンパにおいては、ヘッド側ピストンロッドにアキュムレータを設けるため、ヘッド側ピストンロッドにアキュムレータを加工しなければならず、また、ロッド側ピストンロッドにもアキュムレータ油室へ連通する油路を加工する必要があるので、ヘッド側、ロッド側両ピストンロッドの加工の手間が多い、という問題があった。
【0010】
また、アキュムレータをヘッド側ピストンロッドに設けると、ヘッド側ピストンロッドが長くなる。ヘッド側ピストンロッドが長くなると、延長部材も長くなり、ひいては油圧式ダンパの全長が長くなる、という問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて、ヘッド側、ロッド側両ピストンロッドへの加工の手間を軽減し、油圧式ダンパの全長が長くなることを防止することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、
シリンダと、
前記シリンダ内に収納されたピストンと、
前記シリンダ内の前記ピストンの両側に形成された2つの油室である第一油室と第二油室と、
前記ピストンに形成されるピストンロッドと、
前記2つの油室との間で前記作動油を給排するアキュムレータを備える油圧式ダンパにおいて、
前記アキュムレータが前記ピストンに収装されることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記アキュムレータが第一油室に連通するものと、第二油室に連通するものと二つ備えられたことを特徴とするものである。
【0014】
また、前記アキュムレータが、第一油室に連通する第一アキュムレータ油室と、第二油室に連通する第二アキュムレータ油室を有し、第一アキュムレータ油室の第一アキュムレータピストンと第二アキュムレータ油室の第二アキュムレータピストンが、バネで連結されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
このような本発明によれば、
シリンダと、
前記シリンダ内に収納されたピストンと、
前記シリンダ内の前記ピストンの両側に形成された2つの油室である第一油室と第二油室と、
前記ピストンに形成されるピストンロッドと、
前記2つの油室に連通する油室を有するアキュムレータを備える油圧式ダンパにおいて、
前記アキュムレータを前記ピストンに収装することにより、
ヘッド側,ロッド側両ピストンロッドへの加工の手間を軽減することができ、
ヘッド側ピストンロッドにアキュムレータを設けずに済むから、ヘッド側ピストンロッドを短くすることができ、ひいては油圧式ダンパの全長が長くなることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る油圧式ダンパの全体図である。
【
図2】本発明の第一の実施の形態に係る油圧式ダンパに組み込まれるピストンとロッド側ピストンロッドとヘッド側ピストンロッドを結合した状態の断面図である。
【
図3】本発明の第二の実施の形態に係る油圧式ダンパに組み込まれるピストンとロッド側ピストンロッドとヘッド側ピストンロッドを結合した状態の断面図である。
【
図4】本発明の第三の実施の形態に係る油圧式ダンパに組み込まれるピストンとロッド側ピストンロッドとヘッド側ピストンロッドを結合した状態の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る油圧式ダンパを実施するための最良の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。ロッド側ピストンロッド、ヘッド側ピストンロッド、ピストン以外の構成については従来例と同様なので、説明を省略する。
【0018】
図1は、油圧式ダンパの全体図である。全体図においては、ピストン10内部に設けられるアキュムレータ等についての図示は省略している。以下、主に、油圧式ダンパ2に組み込まれるピストン10とロッド側ピストンロッド12とヘッド側ピストンロッド18を結合した状態を示す図である、
図2から
図4を用いて説明する。
【0019】
図2から
図4は、本発明の第一から第三の実施の形態の、ピストン26,52,88と両ピストンロッド12,18を組み合わせた状態の断面図である。
【0020】
図2から
図4に示すように、ピストン26,52,88は、略円柱状の部材であり、両ピストンロッド12,18に設けられる挿入部16,22を挿入する孔28,54,90が円柱の中心部に設けられる。
【0021】
ロッド側ピストンロッド12は、主にロッド部14とピストン26,52,88の孔28,54,90に挿入される挿入部16とからなる部材である。挿入部16の先端の外周には、ヘッド側ピストンロッド18の雌ネジ部23と結合される雄ネジ部17が設けられる。
【0022】
ヘッド側ピストンロッド18は、主にロッド部20とピストン26,52,88の孔28,54,90に挿入される挿入部22とからなる部材である。挿入部22の先端の内周にはロッド側ピストンロッド12の雄ネジ部17と結合される雌ネジ部23が設けられる。
【0023】
ピストン26,52,88の孔28,54,90にロッド側ピストンロッド12の挿入部16を挿入し、ロッド側ピストンロッド12の挿入部16の先端の外周に設けられた雄ネジ部17と、ヘッド側ピストンロッド18の挿入部22の内周に設けられた雌ネジ部23をネジ結合することにより、ピストン26,52,88とロッド側ピストンロッド12とヘッド側ピストンロッド18は一体的に結合される。
【0024】
図2は、本発明の第一の実施の形態に係る油圧式ダンパ2に組み込まれるピストン26とロッド側ピストンロッド12とヘッド側ピストンロッド18を結合した状態の断面図である。
【0025】
ピストン26内部に設けられるアキュムレータ30は、ピストン26の内部空間を2つの空間に区分するアキュムレータピストン34と、2つの空間の一方に形成され、シリンダ内の第1油室、第2油室に連通するアキュムレータ油室32と、2つの空間の他方に収納されて、アキュムレータピストン34をアキュムレータ油室32に向けて押圧するバネ36等により構成される。
【0026】
第一の実施の形態では、ピストン26内に設けられるアキュムレータ30のアキュムレータ油室32は第1油室6と第2油室8に油路38,40,42を介して連通される。
【0027】
アキュムレータ油室と両油室を連通する油路には、固定絞りとチェック弁を並列して設けるか、固定絞りを設ける油路とチェック弁を設ける油路をそれぞれ別個に設けるのが望ましい。
アキュムレータ油室と両油室を連通する油路に固定絞りを設けることで、油圧式ダンパの動作時に、アキュムレータへ作動油が過剰に流入することを防止することができ、また、アキュムレータ油室と両油室を連通する油路にチェック弁を設けることで、アキュムレータから油圧回路内への作動油の補給を円滑に行うことができるからである。
【0028】
図3は、本発明の第二の実施の形態に係る油圧式ダンパ2に組み込まれるピストン52とロッド側ピストンロッド12とヘッド側ピストンロッド18を結合した状態を示す図である。
【0029】
第二の実施の形態では、第1油室6に連通するアキュムレータ56と、第2油室8に連通するアキュムレータ72がそれぞれ別個にピストン52内に設けられる。アキュムレータ56,72の構成自体は、第一の実施の形態のアキュムレータ30と略同様である。
【0030】
第二の実施の形態においても、第1油室に連通するアキュムレータと第1油室を連通する油路および第2油室に連通するアキュムレータと第2油室を連通する油路には、固定絞りとチェック弁を並列して設けるか、固定絞りを設ける油路とチェック弁を設ける油路をそれぞれ別個に設けるのが望ましい。
【0031】
図4は、本発明の第三の実施の形態に係る油圧式ダンパ2に組み込まれるピストン88とロッド側ピストンロッド12とヘッド側ピストンロッド18を結合した状態を示す図である。
【0032】
第三の実施の形態では、第1油室6に連通する第一アキュムレータ油室94と第2油室8に連通する第二アキュムレータ油室98がそれぞれ設けられ、第1油室6に連通する第一アキュムレータ油室94の第一アキュムレータピストン96と第2油室8に連通する第二アキュムレータ油室98の第二アキュムレータピストン100とは、一本のバネ102で連結される。
【0033】
第三の実施の形態においても、第一アキュムレータ油室と第1油室を連通する油路および第二アキュムレータ油室と第2油室を連通する油路には、固定絞りとチェック弁を並列して設けるか、固定絞りを設ける油路とチェック弁を設ける油路をそれぞれ別個に設けるのが望ましい。
【0034】
なお、本発明の実施の形態においては、図示を省略したが、油圧式ダンパの減衰性能を発揮するために、第一油室と第二油室を連通する油路を設け、油路の途中に減衰性能を規定する調圧弁を設けることが望ましい。
【符号の説明】
【0035】
2 油圧式ダンパ
4 シリンダ
6 第1油室
8 第2油室
10 ピストン
12 ロッド側ピストンロッド
14 ロッド部
16 挿入部
17 雄ネジ部
18 ヘッド側ピストンロッド
20 ロッド部
22 挿入部
23 雌ネジ部
24 延長部材
26 ピストン
28 孔
30 アキュムレータ
32 アキュムレータ油室
34 アキュムレータピストン
36 バネ
38 油路
40 油路
42 油路
44 固定絞り
46 チェック弁
48 固定絞り
50 チェック弁
52 ピストン
54 孔
56 アキュムレータ
58 アキュムレータ油室
60 アキュムレータピストン
62 バネ
64 油路
66 油路
68 固定絞り
70 チェック弁
72 アキュムレータ
74 アキュムレータ油室
76 アキュムレータピストン
78 バネ
80 油路
82 油路
84 固定絞り
86 チェック弁
88 ピストン
90 孔
92 アキュムレータ
94 第一アキュムレータ油室
96 第一アキュムレータピストン
98 第二アキュムレータ油室
100第二アキュムレータピストン
102バネ
104油路
106油路
108固定絞り
110チェック弁
112油路
114油路
116固定絞り
118チェック弁
120油圧式ダンパ
122シリンダ
122a 端面
122b 端面
124第1油室
126第2油室
128ピストン
128a 端面
128b 端面
128c 油路
128d 油路
130ロッド側ピストンロッド
132ヘッド側ピストンロッド
134延長部材
136リリーフ弁
138リリーフ弁
140アキュムレータ
142アキュムレータ油室
144アキュムレータピストン
146バネ