(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713414
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】気密封止筐体製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20150416BHJP
H01L 23/00 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
H01L23/02 C
H01L23/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-207714(P2013-207714)
(22)【出願日】2013年10月2日
(62)【分割の表示】特願2009-174494(P2009-174494)の分割
【原出願日】2009年7月27日
(65)【公開番号】特開2013-258435(P2013-258435A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2013年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NEC東芝スペースシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小川 文輔
【審査官】
田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−218564(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/108262(WO,A1)
【文献】
特開2005−353885(JP,A)
【文献】
特開2002−246490(JP,A)
【文献】
特開平09−181207(JP,A)
【文献】
特開平11−345893(JP,A)
【文献】
特開2003−224427(JP,A)
【文献】
特開2007−012752(JP,A)
【文献】
特開2006−135008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口縁を有する箱形状の筐体本体の底面のチップ実装部に実装した半導体チップを気密封止する気密封止筐体を製造する気密封止筐体製造方法であって、
ベース部材となる金属板がアルミニウム合金からなる金属板を、前記半導体チップ間のRF(Radio Frequency)リークを遮蔽する遮蔽壁のパターンに成形加工した後、周辺に前記開口縁を有する箱形状に成形加工するステップと、
前記開口縁の上面側および前記遮蔽壁の上面側に、放電プラズマ焼結法により、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)を加圧しながら溶接接合した後、前記開口縁および前記遮蔽壁の形状に沿うように溶接部分の切削加工を行うことにより、前記溶接部分を接合部として形成するステップと、
前記チップ実装部に半導体チップを実装した後、前記開口縁の上面および前記遮蔽壁の上面にそれぞれ形成された前記接合部上に、YAGレーザ溶接機により、前記チップ実装部を覆う蓋を加圧しながらYAGレーザ溶接するステップと、
を有していることを特徴とし、
前記蓋に、前記遮蔽壁の上面側に形成された接合部に対向するスリットを予め設け、
前記遮蔽壁の上面に形成された接合部と前記蓋との前記YAGレーザ溶接は、前記スリットを介して行い、かつ前記接合部上で前記接合部と前記蓋とが直接接するようにして行うことをさらに特徴とする気密封止筐体製造方法。
【請求項2】
前記蓋のうち、少なくとも、前記開口縁の上面および前記遮蔽壁の上面にそれぞれ形成された前記接合部と溶接される部位が、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)からなることを特徴とする請求項1に気密封止筐体製造方法。
【請求項3】
開口縁を有する箱形状の筐体本体の底面に、半導体チップのチップ実装部を有する気密封止筐体の製造方法であって、
アルミニウム合金を、前記開口縁を有し、かつ前記チップ実装部の間に遮蔽壁を有する箱形状に成形加工するステップと、
前記遮蔽壁の上面側に、放電プラズマ焼結法により、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)を加圧しながら溶接接合することにより接合部を形成するステップと、
前記チップ実装部に半導体チップを実装した後、前記開口縁の上面の接合部、および前記遮蔽壁の前記接合部上に、YAGレーザ溶接機により、前記チップ実装部を覆う蓋を加圧しながらYAGレーザ溶接するステップと、を有し、
前記蓋に、前記遮蔽壁の上面側に形成された接合部に対向するスリットを予め設け、
前記遮蔽壁の上面側に形成された接合部と前記蓋との前記YAGレーザ溶接は、前記スリットを介して行い、かつ前記接合部上で前記接合部と前記蓋とが直接接するようにして行うことを特徴とする、
気密封止筐体製造方法。
【請求項4】
前記蓋のうち、前記遮蔽壁の前記接合部と溶接される部位が、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)からなる、
請求項3に記載の気密封止筐体製造方法。
【請求項5】
前記スリットは、前記遮蔽壁の前記接合部の幅方向の中心線に沿って前記接合部に対向しており、
前記中心線が、前記遮蔽壁の前記接合部と、前記蓋の前記溶接される部位との溶接領域の中心線である、
請求項4に記載の気密封止筐体製造方法。
【請求項6】
開口縁を有する箱形状の筐体本体の底面に、半導体チップのチップ実装部を有する気密封止筐体の製造方法であって、
アルミニウム合金からなり、開口縁を有し、かつ前記チップ実装部の間に遮蔽壁を有する箱形状に成形加工された前記筐体本体に対し、
前記遮蔽壁の上面側に、放電プラズマ焼結法により、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)を加圧しながら溶接接合することにより接合部を形成するステップと、
前記チップ実装部に半導体チップを実装した後、前記開口縁の上面の接合部、および前記遮蔽壁の前記接合部上に、YAGレーザ溶接機により、前記チップ実装部を覆う蓋を加圧しながらYAGレーザ溶接するステップと、を有し、
前記蓋に、前記遮蔽壁の上面側に形成された接合部に対向するスリットを予め設け、
前記遮蔽壁の上面側に形成された接合部と前記蓋との前記YAGレーザ溶接は、前記スリットを介して行い、かつ前記接合部上で前記接合部と前記蓋とが直接接するようにして行うことを特徴とする、
気密封止筐体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密封止筐体製造方法に関し、特に、RF(Radio Frequency)リークを遮蔽可能で、かつ、軽量化可能な気密封止筐体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星搭載機器用のRFデバイス(無線機器)を格納する筐体として、比重が8以上に及ぶ鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)を使用したものがあるが、気密封止を必要とする筐体の大型化が進み、筐体質量を抑えなければ、人工衛星搭載用の筐体としては適用できない状況になりつつある。しかし、軽量化を図るために、筐体材料を安易にアルミニウム合金とする場合は、気密封止のために高額な投資が必要であり、筐体内に半導体チップ等の実装を行った後の気密封止を実施するためには、高価な高出力溶接機(例えば800W級YAGレーザ溶接機等)を導入しなければならない。
【0003】
また、高価な高出力溶接機を導入する場合は、高価な高出力溶接機の稼働率を高く保ち、投資費用の回収期間を短縮することが必要であるが、人工衛星搭載機器のような場合には個別受注生産形態を取っている都合上、稼働率を常に高く保つということができない状況下にある。また、気密封止条件が狭いため、厳しい工程管理が必要となり、製造期間の短縮を図ることが困難であるという問題も生じる。
【0004】
一方、筐体の大型化に伴い、RF−IN側とRF−OUT側とにおけるRFリークの問題も顕著となってきており、確実に、RFリークを抑制するための対策が急がれていたことに加え、半導体チップの高密度実装が必要となってきており、半導体チップを実装するベース部材として、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)等の熱伝導が悪い材質ではなく、アルミニウム合金等の熱伝導が良い材質の筐体が必要となる状況になりつつある。
【0005】
このため、従来の気密封止筐体としては、特許文献1の特開2002−246490号公報「半導体集積回路用パッケージおよびその製造方法」に記載のように、上部に開口された箱形状のアルミニウム製のベース部材の開口縁に、リング状に、高電気抵抗の金属製のシームフレームを接合させ、該シームフレームに金属製の蓋板を接合する構造が提案されている。ここで、シームフレームおよび蓋板には、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)を用いるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−246490号公報(第3−4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1のように、気密封止のために、アルミニウム合金製筐体の開口縁にリング形状のシールフレームを接合した筐体構造の場合は、筐体外部に対する電気的なシールド効果が得られるものの、筐体内部における半導体チップ間のRFリークの遮蔽を行うことができないため、RFデバイス用の軽量筐体としては、使用することができないという課題がある。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、筐体外部との遮蔽のみならず、筐体内部における半導体チップ間のRFリークの遮蔽も可能で、かつ、軽量化が可能な気密封止筐体製造方法を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明による気密封止筐体の製造方法は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0010】
開口縁を有する箱形状の筐体本体の底面のチップ実装部に実装した半導体チップを気密封止する気密封止筐体を製造する気密封止筐体製造方法であって、ベース部材となる金属板がアルミニウム合金からなる金属板を、前記半導体チップ間のRF(Radio Frequency)リークを遮蔽する遮蔽壁のパターンに成形加工した後、周辺に前記開口縁を有する箱形状に成形加工するステップと、前記開口縁の上面側および前記遮蔽壁の上面側に、放電プラズマ焼結法により、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)を加圧しながら溶接接合した後、前記開口縁および前記遮蔽壁の形状に沿うように溶接部分の切削加工を行うことにより、前記溶接部分を接合部として形成するステップと、前記チップ実装部に半導体チップを実装した後、前記開口縁の上面および前記遮蔽壁の上面にそれぞれ形成された前記接合部上に、通常出力のYAGレーザ溶接機により、前記チップ実装部を覆う蓋を加圧しながら溶接するステップと、を有していることを特徴とし、前記蓋に、前記遮蔽壁の上面に形成された接合部に対向するスリットを予め設け、前記遮蔽壁の上面に形成された接合部と前記蓋との溶接は、前記スリットを介して行うことをさらに特徴とする気密封止筐体製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の気密封止筐体製造方法によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0012】
つまり、放電プラズマ焼結法等を用いて、ベース金属となるアルミニウム合金と鉄−コバルト−ニッケル合金とを低歪みにて接合することによって、筐体の大型化に際しても、軽量化が可能であり、かつ、通常の低出力溶接機にて、RFリークの遮蔽と気密封止とが可能となり、新たな設備投資が不要となる。
【0013】
また、筐体内部に遮蔽壁を設けることにより筐体内部の半導体チップの実装エリア間のRFリークの遮蔽効果が大きくなるので、軽量筐体に実装後のRFデバイス特性の高性能化も期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る気密封止筐体の筐体構造の一例を示す構造図である。
【
図2】金属蓋を溶接する筐体本体側の部位の全面に鉄−コバルト−ニッケル合金等からなる接合部を溶接した状態を示す模式図である。
【
図3】金属蓋を筐体本体側の接合部に溶接した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による気密封止筐体および気密封止筐体製造方法の好適な実施例について添付図を参照して説明する。
【0016】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、気密封止時に、ベース金属となるアルミニウム合金と鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)とを、高価な高出力溶接機等を必要とせずに、通常出力の溶接機による放電プラズマ焼結法等を用いて、低歪みで接合することにより気密封止構造の筐体を実現するとともに、アルミニウム合金製の箱形状のベース部材に実装された半導体チップの実装エリアをアルミニウム合金製の遮蔽壁によって仕切ることによって、各実装エリア間のRFリークを遮蔽し、かつ、ベース部材の開口縁および遮蔽壁の上面に鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)製の接合部を形成することにより、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)等の効果により、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)製の金属蓋を容易にYAGレーザ等により溶接することを可能としていることを主要な特徴としている。
【0017】
而して、筐体が大型化しても、アルミニウム合金製のベース部材により軽量かつ熱伝導性も良くかつ容易に気密封止を可能とするとともに、筐体内部のRFリークを防止したい半導体チップの実装エリア間を遮蔽壁によって仕切ることで、各実装エリア間のRFリークを遮蔽し、かつ、ベース部材の開口縁および遮蔽壁の上面に金属蓋を接合させることによって、さらにRFリークの遮蔽効果を向上させると同時に気密封止の向上も可能としている。
【0018】
つまり、本発明は、放電プラズマ焼結法等を用いて、ベース金属となるアルミニウム合金と鉄−コバルト−ニッケル合金とを低歪みにて接合することによって、筐体の大型化に際しても、軽量化が可能であり、かつ、通常の低出力溶接機にて、RFリークの遮蔽と気密封止とを同時に達成することが可能となり、新たな設備投資が不要となる。また、筐体内部に遮蔽壁を設けることにより筐体内部の半導体チップの実装エリア間のRFリークの遮蔽効果が大きくなるので、軽量筐体に実装後のRFデバイス特性の高性能化も期待することができる。
【0019】
この結果、本発明による気密封止筐体および気密封止筐体製造方法は、航空・宇宙分野等における半導体チップの気密封止が必要でかつ筐体の軽量化が必要な分野のみならず、半導体チップの性能上の要求が厳しく、かつ、実装する筐体の軽量化も必要となる分野や高発熱チップが実装されるものの、全体として軽量化が必須とされる分野等にも適用することが可能となる。
【0020】
(本発明の実施形態)
図1は、本発明に係る気密封止筐体の筐体構造の一例を示す構造図であり、
図1(A)は、金属蓋21,22を取り付ける前の状態における気密封止筐体の上面から見た上面断面図であり、
図1(B)は、気密封止筐体の側面から見た側面断面図である。
【0021】
図1(A)の上面断面図に示すように、気密封止筐体は、当該気密封止筐体を実行搭載機器本体に取り付けるための取り付け部11、上面に向かって開口している箱形状の筐体本体12、筐体本体12の周辺の壁を形成する開口縁13、筐体本体12の底面に半導体チップの取り付け部として形成されるチップ実装部14、RFリークを遮蔽するために筐体本体12の底面から立設した遮蔽壁15およびリード端子16により構成される。ここで、筐体本体12は、筐体内部に半導体チップを実装するためのベース部材を構成するものである。遮蔽壁15は、チップ実装部14に取り付けられる半導体チップのうち、互いのRFリークを遮蔽すべき半導体チップの実装エリア間を遮蔽する位置に立設される。
【0022】
また、
図1(B)の側面断面図に示すように、開口縁13の上部には段差13a,13bが形成してある。鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)製の金属蓋22及び21は、段差13b及び段差13aにそれぞれ嵌められ、溶接されている。金属蓋21は筐体を気密封止するために設けてあり、金属蓋22はRFリークを遮蔽するために設けてある。なお、後述のように、開口縁13はアルミニウム合金製であるが、段差13b及びは段差13aの上部には鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)が溶合され、金属蓋22及び21が溶接されるので、以下では段差13b及び13aをそれぞれ接合部13b及び13aとも称することとする。
【0023】
底面のチップ実装部14に半導体チップを実装する箱形状の筐体本体12及び開口縁13でなるベース部材、並びに実装した半導体チップ間のRFリークを遮蔽するための遮蔽壁15からなる気密封止筐体の主要部分は、軽量化および高熱伝導性を実現するためにアルミニウム合金の部材からなっており、他方、開口縁13の接合部13a,13bおよび遮蔽壁15の接合部15aは、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)からなっている。鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)は、通常出力の溶接機による放電プラズマ焼結法等を用いて、それぞれ、アルミニウム合金製の開口縁13および遮蔽壁15に低歪みで溶接することが可能である。
【0024】
また、金属蓋21、22も、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)からなるので、通常出力の溶接機による放電プラズマ焼結法等を用いて、開口縁13の接合部13a,13bおよび遮蔽壁15の接合部15aと容易に溶接することが可能であり、チップ実装部14に実装した半導体チップ間のRFリークの遮蔽性をさらに向上させるとともに、気密性が高い気密封止筐体を実現することができる。
【0025】
以上のような筐体構造を備えることにより、軽量化が可能であるとともに、高価な設備を用いることなく容易に気密封止が可能であり、かつ、筐体内に実装した半導体チップ間のRFリークを確実に遮蔽することが可能な気密封止筐体を実現することができる。
【0026】
(実施形態の気密封止筐体の製造方法)
次に、
図1に例示した気密封止筐体の製造方法について説明する。まず、第1ステップとして、ベース部材となるアルミニウム合金等の金属板を、
図1に示すような遮蔽壁15のパターンに成形加工した後、周辺に
図1に示すような開口縁13を有する箱形状に成形加工することによって、半導体チップを実装する箱形状の筐体本体12と半導体チップ間のRFリークを遮蔽するための遮蔽壁15とを製造する。
【0027】
しかる後、第2ステップとして、アルミニウム合金からなる開口縁13の上面側および遮蔽壁15の上面側に、通常の低出力溶接機を用いた放電プラズマ焼結法等により、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)等を加圧しながら低歪みで溶接接合した後、開口縁13および遮蔽壁15の形状に沿うように溶接部分の切削加工を行うことにより、接合部13a,13bおよび接合部15aを形成する。かくのごときプロセスにより接合部13aおよび接合部15aを形成することによって、鉄−コバルト−ニッケル合金とアルミニウム合金との接合を安定化させることができ、また、複雑な形状を有する遮蔽壁15のアルミニウム合金であっても、当該アルミニウム合金上に、鉄−コバルト−ニッケル合金等を、放電プラズマ焼結法等を用いて接合することが可能となる。または、アルミニウム合金と鉄−コバルト−ニッケル合金とを放電プラズマ焼結法等により低歪で接合後に切削加工を行うことで、本形状の筐体を製作することも可能である。
【0028】
次いで、第3ステップとして、筐体本体12の開口縁13の近傍および遮蔽壁15の近傍にリード端子16を形成した後、筐体本体12の底面に形成されたチップ実装部14に半導体チップを実装する。
【0029】
最後に、第4ステップとして、半導体チップが実装された筐体本体12の開口縁13の上面および遮蔽壁15の上面にそれぞれ形成された接合部13a,13bおよび接合部15a上に、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)等からなる金属蓋22,21を、通常の
YAGレーザー溶接機を用いて、加圧しながら低歪みで溶接する。または金属蓋22を遮蔽壁15の上面の接合部15a及び開口縁13の上面の接合部13bに、金属蓋21を筐体本体12の開口縁13の上面の接合部13aに、それぞれYAGレーザ溶接等により溶接して取り付ける。
図1及び
図2に示すように接合部15aに接合される金属蓋22には、その接合部15aの幅方向の中心線15bを中心とする幅0.3mmのスリット22aが予め設けてある。接合部15aと金属蓋22との
上記溶接は、スリット22aを介して行われる。
【0030】
かくのごときプロセスにより気密封止筐体を形成することによって、気密封止およびRFリークの遮蔽が容易に可能であり、かつ、軽量な筐体を有する高性能RFデバイスを製造することができる。
【0031】
つまり、
図2、
図3に示すように、筐体本体12の底面にチップ実装部14として形成された半導体チップ実装エリアを仕切っているアルミニウム合金製の遮蔽壁15の上面を含め、アルミニウム合金製の筐体本体12の開口縁13の上面等の金属蓋22や21を溶接する部分の全面には、接合部15aや接合部13a,13bとして、鉄−コバルト−ニッケル合金等を溶接接合しており、しかる後、筐体内のチップ実装部14への半導体チップの実装後に、接合部15aや接合部13a,13bに鉄−コバルト−ニッケル合金等にて製作された金属蓋22と21を溶接するという2段階の溶接工程を踏むことにより、RFリークの遮蔽と気密封止とを実現としている。
図2は、鉄−コバルト−ニッケル合金をアルミニウム合金上部に接合した接合部15aに金属蓋22を溶接した状態を示す模式図である。
図2において、一点鎖線で示す遮蔽壁15の上部の接合部15aの幅方向の中心線15bは、金属蓋22との溶接領域の中心線である。
図3は、金属蓋21を筐体本体12側の接合部13aに溶接した状態を示す模式図である。
【0032】
ここで、RFリーク遮蔽のためと気密封止のための溶接時には、高価な高出力溶接機(例えばYAGレーザの場合、800W級レーザ溶接機)を用いることなく、通常出力の溶接機での接合が可能となる。つまり、該通常出力の溶接機を用いても、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)等とアルミニウム合金のベース部材との接合に放電プラズマ焼結法等を用いることによりにて、接合時に低歪みの接合が可能となりなされており、かつ、金属製の蓋22,21を溶接するに際しても、筐体本体12底面の平面度、筐体全体の捻れ等の筐体変形を抑えることができる。
【0033】
また、比重が重い鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)等の使用は、金属蓋21,22、RFリーク遮蔽のための遮蔽壁15の上面と気密封止用の開口縁13の上面に限られていて、気密封止筐体の大部分は、アルミニウム合金で形成されているので、気密封止筐体の軽量化を図ることができる。
【0034】
なお、前述の実施形態においては、金属蓋21,22を鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)等からなる場合として説明したが、場合によっては、金属蓋21の蓋本体部分はアルミニウム合金とし、開口縁13の上面および遮蔽壁15の上面にそれぞれ形成された接合部13aおよび接合部15aと接合するための溶接部分のみを鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)等を用いるようにしても良い。
【0035】
また、セラミック材料と金属材料とのそれぞれに、前述のような鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)等からなる接合部を形成することによって、放電プラズマ焼結法等の低ひずみ接合法を用いて、セラミック材料と金属材料とを容易に接合することも可能である。例えば、金属蓋21の蓋本体を電気的に絶縁する気密封止筐体としたい場合には、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)やアルミニウム材の代わりにセラミック材を用いて構成するようにしても良い。
【0036】
また、電気伝導を要する部分には、アルミニウム合金等の金属材料を用い、電気絶縁が必要な部分には、セラミック材料等を用いても、前述した実施形態と全く同様な気密封止筐体を複合材料からなる気密封止筐体として比較的安価に実現することが可能となる。したがって、厚膜印刷技術を用いた半導体チップを搭載したセラミックと電気的・熱的伝導性が良好なアルミニウム等の金属との蝋付け作業の不要化、歩留り率の向上等、材料特性を最大限生かした気密封止筐体の実現が可能となる。
【0037】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
【0038】
本実施形態の気密封止筐体においては、筐体の大型化の進展によっても、通常の鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)製の気密封止筐体と比べて、確実に軽量化が可能となるため、軽量化が至上命題である航空・宇宙分野等においても、適用することが可能である。
【0039】
また、軽量化を目指す余り、アルミニウム合金製の気密封止筐体とした場合には、気密封止時に、高価な高出力溶接機(例えばYAGレーザの場合、800W級のレーザ溶接機)が必要となり、かつ、溶接可能条件が狭いため、厳しい工程管理をする必要がある。これに対して、本実施形態の気密封止筐体においては、通常出力の溶接機にて歪みを生じることなく溶接を行うことが可能である。
【0040】
さらに、気密封止筐体の主要部分に、熱伝導率の高いアルミニウム合金を採用することによって、高発熱部品の実装も熱設計上容易となるメリットも享受することができる。
【0041】
また、半導体チップの実装エリア間を遮蔽する遮蔽壁15の上面に放電プラズマ焼結法等により接合された鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)製の接合部15aに金属製の蓋22を通常のYAGレーザ溶接機に
て溶接することにより、半導体チップ間のRFリークを遮蔽し、しかる後、気密封止をするための鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)製の金属蓋21を、筐体本体の開口縁13の上面の接合部13
aに、YAGレーザ溶接機にて接合することによって、さらなるRFリーク遮蔽性とより高い気密性とを達成することができる。
【0042】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。例えば、本発明の実施態様は、課題を解決するための手段における構成(1)に加えて、次のような構成として表現できる。
(2)前記遮蔽壁が、前記チップ実装部に実装される前記半導体チップのうち、RFリークを遮蔽しようとする前記半導体チップの実装エリア間に任意の形状で配置される気密封止筐体。
(3)前記筐体本体、前記開口縁および前記遮蔽壁は、アルミニウム合金からなっている上記(1)または(2)の気密封止筐体。
(4)前記開口縁の上面および前記遮蔽壁の上面に鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)が前記蓋との接合部として形成され、前記開口縁の上面および前記遮蔽壁の上面に形成された前記接合部と溶接される前記蓋の部位が鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)から形成されている上記(3)の気密封止筐体。
(5)開口縁を有する箱形状の筐体本体の底面のチップ実装部に実装した半導体チップを気密封止する気密封止筐体を製造する気密封止筐体製造方法であって、ベース部材となる金属板を、前記半導体チップ間のRF(Radio Frequency)リークを遮蔽する遮蔽壁のパターンに成形加工した後、周辺に前記開口縁を有する箱形状に成形加工するステップと、前記開口縁上面側および前記遮蔽壁の上面側に、放電プラズマ焼結法により、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)を加圧しながら溶接接合した後、前記開口縁および前記遮蔽壁の形状に沿うように溶接部分の切削加工を行うことにより、前記溶接部分を接合部として形成するステップと、前記チップ実装部に半導体チップを実装した後、前記開口縁の上面および前記遮蔽壁の上面にそれぞれ形成された前記接合部上に、放電プラズマ焼結法通常出力のYAGレーザ溶接機により、前記チップ実装部を覆う蓋を加圧しながら溶接するステップとを有している気密封止筐体製造方法。
(6)前記ベース部材となる金属板がアルミニウム合金からなる上記(5)の気密封止筐体製造方法。
(7)前記蓋のうち、少なくとも、前記開口縁の上面および前記遮蔽壁の上面にそれぞれ形成された前記接合部と溶接される部位が、鉄−コバルト−ニッケル合金(コバール)からなる上記(5)または(6)に気密封止筐体製造方法。
【符号の説明】
【0043】
11 取り付け部
12 筐体本体
13 開口縁
13a,13b 接合部
14 チップ実装部
15 遮蔽壁
15a 接合部
16 リード端子
21 金属蓋(気密封止用)
22 金属蓋(RFリーク遮断用)
22a 金属蓋22に設けた溶接用スリット