特許第5713421号(P5713421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三和化学研究所の特許一覧

<>
  • 特許5713421-口腔内崩壊錠 図000019
  • 特許5713421-口腔内崩壊錠 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5713421
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20150416BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20150416BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   A61K47/36
   A61K47/02
   A61K9/20
   A61K47/32
   A61K31/445
   A61P3/10
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-559971(P2014-559971)
(86)(22)【出願日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】JP2014069024
【審査請求日】2014年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-150410(P2013-150410)
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000144577
【氏名又は名称】株式会社三和化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真弘
(72)【発明者】
【氏名】落合 直也
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 有紀
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−187349(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/019046(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00 − 9/72
A61K 47/00 −47/48
A61K 31/445
A61P 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有効成分、
(b)アミロースの含有量が20質量%以上30質量%以下かつアルファー化度が10%未満のデンプン、及び、
(c)ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、及び合成ヒドロタルサイトからなる群から選択される1種以上の無機賦形剤
を含む口腔内崩壊錠であって、
当該口腔内崩壊錠が、前記(a)有効成分、前記(b)デンプン及び前記(c)無機賦形剤が当該口腔内崩壊錠全体に分散して混合されている単層錠であり、
前記(a)有効成分の含有量が当該口腔内崩壊錠全体の0.1質量%以上60質量%以下であり、
前記(b)デンプンの含有量が当該口腔内崩壊錠全体の20質量%以上96質量%以下であり、
前記(c)無機賦形剤の含有量が当該口腔内崩壊錠全体の3質量%以上60質量%以下であり、
当該口腔内崩壊錠における結晶セルロースの含有量が当該口腔内崩壊錠全体の0質量%以上5質量%以下であり、当該口腔内崩壊錠における糖アルコールの含有量が当該口腔内崩壊錠全体の0質量%以上10質量%以下である、
口腔内崩壊錠。
【請求項2】
(a)有効成分、
(b)アミロースの含有量が20質量%以上30質量%以下かつアルファー化度が10%未満のデンプン、及び、
(c)ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、及び合成ヒドロタルサイトからなる群から選択される1種以上の無機賦形剤
を含む口腔内崩壊錠であって、
当該口腔内崩壊錠が、前記(a)有効成分を含有する内核と、該内核を被覆し、前記(b)デンプン及び前記(c)無機賦形剤を含有する外層部とを有する有核錠であり、
前記外層部における結晶セルロースの含有量が前記外層部全体の0質量%以上5質量%以下であり、前記外層部における糖アルコールの含有量が前記外層部全体の0質量%以上15質量%以下である
口腔内崩壊錠。
【請求項3】
前記(a)有効成分、前記(b)デンプン及び前記(c)無機賦形剤の含有量の総量が、当該口腔内崩壊錠全体の80質量%以上である、
請求項1又は2に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項4】
前記(b)デンプンが、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、及びコムギデンプンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項5】
更に、(d)クロスポピドンを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項6】
前記(d)クロスポピドンの含有量が当該口腔内崩壊錠全体の0.1質量%以上20質量%以下である、請求項に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項7】
前記(a)有効成分が水溶性の有効成分を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項8】
前記水溶性の有効成分がα−グルコシダーゼ阻害剤を含む、請求項に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項9】
前記α−グルコシダーゼ阻害剤がミグリトールを含む、請求項に記載の口腔内崩壊錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内崩壊錠に関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている剤形の中でもとりわけ服用性及び取り扱い性が優れているのは、錠剤である。しかし、高齢者や小児など、嚥下機能に問題を有している患者にとっては、錠剤は必ずしも優れた剤形とは言い難い。そこで、この問題を解決する剤形として口腔内崩壊錠が考案され、これらの患者の服薬コンプライアンスの向上に寄与している。
【0003】
一般的に、口腔内崩壊錠は、その特性である口腔内での速やかな崩壊を達成するために、錠剤内部に唾液を速やかに導入できるよう、錠剤自体の構造が非常に低密度に設計されている場合がある。しかし、その場合の製剤は非常に脆く、輸送時もしくは服用する際の取り扱いなど、時に錠剤の割れや欠けが発生し問題となっている。
【0004】
一方、近年この錠剤の脆さを補った口腔内崩壊錠として、特許文献1には、湿潤粉体を特殊な機構を有する打錠機にて製錠後、乾燥装置にて湿潤した錠剤を乾燥させて得た速崩壊性製剤が記載されている。
【0005】
上記のような特殊な製造機器を用いない口腔内崩壊錠の例としては、特許文献2には、活性成分、結晶セルロース及び無機賦形剤からなり、結晶セルロースと無機賦形剤とを所定の割合で含む口腔内速崩壊錠が記載されている。特許文献3〜7には、糖アルコール等をデンプン等の水不溶性親水性賦形剤で造粒し、圧縮成形して得られる口腔内崩壊錠が記載されている。特許文献8には、有効成分と、2種以上の糖類の複合粒子中に無機物および崩壊剤が均一に分散してなる造粒粒子とを含有する口腔内崩壊錠が記載されている。特許文献9〜10には、(1)有効成分、(2)無機賦形剤、(3)結晶セルロース、及び(4)天然デンプン類を含有する口腔内崩壊錠が記載されている。特許文献11には、(1)糖アルコール等、(2)デンプン等、及び(3)滑沢剤からなる口腔内崩壊錠が記載されている。特許文献12には、(1)有効成分、(2)ケイ酸カルシウム15重量%以下、(3)崩壊剤、及び(4)糖アルコールや結晶セルロース等の希釈剤を含有する口腔内崩壊錠が記載されている。特許文献13には、糖アルコール等の水溶性賦形剤及びケイ酸カルシウムを含む直接圧縮性複合材が記載されている。特許文献14には、(1)有効成分、(2)結晶セルロース等の非水溶性部分、(3)界面活性剤、及び(4)崩壊剤を含む口腔内崩壊錠が記載されている。特許文献15には、(1)有効成分、(2)クロスポピドン等の超崩壊剤、(3)ケイ酸カルシウムからなる分散剤、及び(4)糖アルコール等の分散剤を含む口腔内崩壊錠が記載されている。
【0006】
これら特殊な製造機器を用いない口腔内崩壊錠は、好ましい錠剤物性をもつ口腔内崩壊錠を得るために、結晶セルロース(水不溶性セルロース)又は糖アルコールを用いている場合が多い。そして、口腔内崩壊性及び錠剤強度を維持するために、崩壊剤及び成型剤等の賦形剤含有量を増やす傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4162405号公報
【特許文献2】特許第3996626号公報
【特許文献3】特開2010−155865号公報
【特許文献4】特許第4446177号公報
【特許文献5】特許第5062871号公報
【特許文献6】特許第4551627号公報
【特許文献7】特許第5062872号公報
【特許文献8】特表2011−513194号公報
【特許文献9】国際公開第2010/134574号
【特許文献10】国際公開第2009/066773号
【特許文献11】特許第4802436号公報
【特許文献12】特表2010−540588号公報
【特許文献13】特表2009−532343号公報
【特許文献14】特表2011−506279号公報
【特許文献15】特表2005−507397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、従来の口腔内崩壊錠は、崩壊性及び錠剤強度を併せ持つために、有効成分以外の賦形剤の含有量を増やすことによりその目的を達成させているものが多い。しかし、有効成分の含有量を多くすると、錠剤強度及び崩壊性のバランスが低下する傾向にある。実際に、本邦で既に市場に流通している口腔内崩壊錠(267品目)における、錠剤中の有効成分の平均含有量は約7.2質量%と低いものであった。従って、一つの側面において、本発明は、有効成分等の物理的性質及び含有量に影響され難く、口腔内での速やかな崩壊性と高い錠剤強度とを兼ね備えた口腔内崩壊錠を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題に鑑み、本発明者らが鋭意検討したところ、従来の口腔内崩壊錠で主として用いられている結晶セルロースは、有効成分の物理的性質及び含有量に影響されやすく、期待される崩壊性及び錠剤強度が得難く、かえって口腔内崩壊錠としての錠剤物性によくない影響を及ぼし得ることに気が付いた。そこで、本発明者らは、結晶セルロースを実質的に含まない口腔内崩壊錠を着想し、口腔内での速やかな崩壊性を確保する賦形剤として、デンプンに着目した。通常、製剤的加工をしていないデンプンは圧縮成型性があまり良好ではないため、デンプンの含有量が多くなると錠剤の摩損及びキャッピングが増加する傾向があることが知られている(薬事日報社、改訂医薬品添加物ハンドブック、p603−p610、2007年)。ところが、本発明者らは、特定のデンプンと特定の無機賦形剤との組み合わせにより、製剤的加工をしていないデンプンを用いる場合の問題点を解消し、有効成分を高い含有量で含有する口腔内崩壊錠であっても、口腔内での速やかな崩壊性と高い錠剤強度を併せ持つことを見出し、本発明を完成させた。本発明者らは更に、従来の口腔内崩壊錠でよく用いられる糖アルコールについても、前記結晶セルロースと同様に、口腔内崩壊錠としての錠剤物性によくない影響を及ぼし得ることに気づいた。
【0010】
即ち、本発明の主な構成は次のとおりである。
<1>(a)有効成分、(b)アミロースの含有量が20質量%以上30質量%かつアルファー化度が10%未満のデンプン、及び、(c)ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、及び合成ヒドロタルサイトからなる群から選択される1種以上の無機賦形剤を含む口腔内崩壊錠であって、
当該口腔内崩壊錠が、前記(a)有効成分、前記(b)デンプン及び前記(c)無機賦形剤が当該口腔内崩壊錠全体に分散して混合されている単層錠であり、当該口腔内崩壊錠における結晶セルロースの含有量が、当該口腔内崩壊錠全体の0質量%以上5質量%以下である、口腔内崩壊錠。
<2>当該口腔内崩壊錠における糖アルコールの含有量が当該口腔内崩壊錠全体の0質量%以上15質量%以下である、<1>に記載の口腔内崩壊錠。
<3>(a)有効成分、(b)アミロースの含有量が20質量%以上30質量%かつアルファー化度が10%未満のデンプン、及び、(c)ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、及び合成ヒドロタルサイトからなる群から選択される1種以上の無機賦形剤を含む口腔内崩壊錠であって、
当該口腔内崩壊錠が、前記(a)有効成分を含有する内核と、該内核を被覆し、前記(b)デンプン及び前記(c)無機賦形剤を含有する外層部とを有する有核錠であり、前記外層部における結晶セルロースの含有量が、前記外層部全体の0質量%以上5質量%以下である、口腔内崩壊錠。
<4>前記外層部における糖アルコールの含有量が前記外層部全体の0質量%以上15質量%以下である、<3>に記載の口腔内崩壊錠。
<5>前記(a)有効成分、前記(b)デンプン及び(c)無機賦形剤の含有量の総量が、当該口腔内崩壊錠(以下、本明細書において「製剤」ということがある。)全体の80質量%以上である、<1>〜<4>のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
<6>前記(a)有効成分の含有量が製剤全体の0.1質量%以上60質量%以下であり、前記(b)デンプンの含有量が製剤全体の20質量%以上96質量%以下(又は20質量%以上95質量%以下)であり、前記(c)無機賦形剤の含有量が製剤全体の3質量%以上60質量%以下(又は4質量%以上45質量%以下)である、<1>〜<5>のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
<7>前記(a)有効成分の含有量が製剤全体の2.5質量%以上55質量%以下(又は20質量%以上55質量%以下)である、<6>に記載の口腔内崩壊錠。
<8>前記(b)デンプンの含有量が製剤全体の25質量%以上85質量%以下(又は25質量%以上70質量%以下)である、<6>に記載の口腔内崩壊錠。
<9>前記(c)無機賦形剤の含有量が製剤全体の4質量%以上45質量%以下(又は8質量%以上30質量%以下)である、<6>に記載の口腔内崩壊錠。
<10>前記(b)デンプンが、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、及びコムギデンプンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、又は前記群から選択される少なくとも1種である、<1>〜<9>のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
<11>更に、(d)クロスポピドンを含む、<1>〜<10>のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
<12>前記(d)クロスポピドンの含有量が製剤全体の0.1質量%以上20質量%以下である、<11>に記載の口腔内崩壊錠。
<13>前記(a)有効成分が水溶性の有効成分を含む、又は水溶性の有効成分である、<1>〜<12>のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠。
<14>前記水溶性の有効成分がα−グルコシダーゼ阻害剤を含む、又はα−グルコシダーゼ阻害剤である、<13>に記載の口腔内崩壊錠。
<15>前記α−グルコシダーゼ阻害剤がミグリトールを含む、又はミグリトールである、<14>に記載の口腔内崩壊錠。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有効成分の物理的性質や含有量に影響され難く、口腔内における速やかな崩壊性と、高い錠剤強度とを併せ持つ口腔内崩壊錠を提供することができる。特に、水溶性の有効成分を含有する場合においても、更にはその含有量が高い場合においても、前述の望ましい錠剤物性を得ることができ、優れた口腔内崩壊錠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】口腔内崩壊錠(単層錠)の一実施形態を示す断面図である。
図2】口腔内崩壊錠(有核錠)の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を更に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態に係る口腔内崩壊錠は、後述の特定のデンプン及び特定の無機賦形剤を有効成分等とともに含有する。図1及び図2は、それぞれ口腔内崩壊錠の一実施形態を示す断面図である。図1の口腔内崩壊錠1は、有効成分、デンプン及び無機賦形剤を含有し、これらが分散して混合されている単一の混合層10のみから構成される単層錠である。この形態の場合、各成分の口腔内崩壊錠(製剤)1全体に対する含有量は、各成分の混合層10に対する含有量と一致する。図2の口腔内崩壊錠1は、内核11と、内核11を被覆する外層部20とから構成される。有効成分は、通常、主として内核11に含まれるが、外層部20に有効成分の一部が含まれることもあり得る。
【0015】
本実施形態に係る口腔内崩壊錠1(混合層10)、又は外層部20は、従来の口腔内崩壊錠で一般的に用いられている結晶セルロース(又は水不溶性セルロース)を実質的に含まない。具体的には、結晶セルロースの含有量が、製剤又は外層部全体の0質量%以上5質量%以下であり得る。言い換えると、後述の特定のデンプン及び特定の無機賦形剤と混合された状態で含まれる結晶セルロースの含有量が、混合部分(混合層10又は外層部20)全体の0質量%以上5質量%以下である。
【0016】
本実施形態に係る口腔内崩壊錠に含まれ得る(b)特定のデンプンとは、ヨウ素呈色比色法により測定したときのアミロースの含有量が20質量%以上30質量%以下であり、かつグルコアミラーゼ法により測定したときのアルファー化度が10%未満のデンプンである。このようなデンプンは水に対する溶解性が低いため好適である。アミロース含有量が20質量%以上30質量%以下のデンプンを含む口腔内崩壊錠は、口腔内で速やかに崩壊する傾向にある。アルファー化度が10%以上のデンプンを含む口腔内崩壊錠は、好ましい崩壊性を得難いことがある。アミロースの含有量が20質量%以上30質量%以下であり、かつアルファー化度が10%未満のデンプンとしては、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、及びコムギデンプンが挙げられる。錠剤物性の観点から、特にトウモロコシデンプン及びバレイショデンプンから選ばれるデンプン、又はトウモロコシデンプンを用いることができる。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0017】
上記デンプンの含有量は、製剤全体の20質量%以上96質量%以下、25質量%以上85質量%以下、又は30質量%以上75質量%以下であってもよい。デンプンは口腔内における速やかな崩壊性を担っており、デンプンの含有量が20質量%以上、又は上記数値範囲にあると、口腔内における崩壊性が特に優れる傾向にある。
【0018】
デンプンの粒子径は、特に制限を設けない。ただし、デンプンに水/95%エタノール/グリセリン混合液(体積比1:1:1)を加え、光学顕微鏡にて鏡検したときのデンプンの粒子直径が100μm以下であってもよい。デンプンの粒子径が大き過ぎると、服用時に口腔内にてザラツキを感じ易くなる傾向がある。通常、製剤的加工をしていないデンプンは圧縮成型性があまり良好でないと言われているが、本実施形態に係る口腔内崩壊錠の製造においては、造粒等の製剤的加工を施されないデンプンを用いることができる。その方が口腔内でのより速やかな崩壊性が得られる。
【0019】
本実施形態に係る口腔内崩壊錠に含まれ得る(c)特定の無機賦形剤とは、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、及び合成ヒドロタルサイトから成る群から選択される少なくとも1種以上の無機賦形剤である。上記の無機賦形剤は、高い錠剤強度を付与することができ、水への溶解度が低く非吸水性である。
【0020】
無機賦形剤の粒子径は、特に制限を設けない。ただし、レーザー回折散乱法により測定したときの無機賦形剤の平均粒子径が1〜50μmであってもよい。
【0021】
ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、及び合成ヒドロタルサイトから成る群から選択される少なくとも1種以上の無機賦形剤の含有量は、製剤全体の3質量%以上60質量%以下、3質量%以上50質量%以下、4質量%以上45質量%以下、又は7質量%以上40質量%以下であってもよい。無機賦形剤は高い錠剤強度を付与する役割を担っており、製剤全体の無機賦形剤の含有量が適度に大きく、具体的には上記数値範囲内にあると、デンプンの圧縮成型性の問題をより容易に改善することができる。
【0022】
本実施形態に係る口腔内崩壊錠は、必須ではないが、上記以外の無機賦形剤を更に含むことができる。上記以外の無機賦形剤としては、20±5℃の水への溶解度が0.1g/L以下の無機賦形剤を用いることができる。具体的には、上記以外の無機賦形剤として、カオリン、含水二酸化ケイ素、含水無結晶酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、水酸化アルミニウム・炭酸水素マグネシウム・炭酸カルシウム共沈物、水酸化マグネシウム、第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、ベントナイト、無水ケイ酸水加物、無水リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム造粒物、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、及びリン酸水素カルシウム造粒物などが挙げられる。口腔内崩壊錠がこれら他の無機賦形剤を更に含む場合、好ましい錠剤強度を得るために、無機賦形剤全体の少なくとも50質量%が、(c)ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、及び合成ヒドロタルサイトから成る群から選択される少なくとも1種以上の無機賦形剤であってもよい。前記他の無機賦形剤が多量に用いられると、臼や杵への付着性が強くなる可能性、及び打錠機器が磨耗し金属異物が発生する可能性がある。
【0023】
次に、本実施形態に係る口腔内崩壊錠において用いられ得る(a)有効成分について説明する。有効成分の粉体物性及び形状等に特に制限はなく、あらゆるものを使用することができる。例えば、目的に応じて粉末状又は結晶状の有効成分の原料をそのまま他の成分の一部又は全部と混合することができる。原料をそのまま、或いは篩過して粒子径を調整した有効成分を使用することができる。
【0024】
有効成分は、それ単独で、又は、該有効成分を含有する粒子(有効成分含有粒子)の形態で、口腔内崩壊錠に含まれ得る。有効成分含有粒子は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、放出制御、苦味マスキング、又は可溶化等を目的として、医薬上許容される添加剤を用いて、有効成分に造粒等の製剤的加工を施したものであり得る。有効成分含有粒子としては、例えば、造粒顆粒、マイクロカプセル、及びコーティング顆粒が挙げられる。有効成分含有粒子は、有効成分の他に、前述の無機賦形剤と同じ又は異なる賦形剤等を含有することができる。有効成分含有粒子における有効成分の含有量は、特に制限されないが、例えば、有効成分含有粒子全体に対して0.001質量%以上100質量%以下であってもよい。有効成分含有粒子は、医薬上許容される溶媒又は精製水等を用いて、当業者に公知の方法、例えば、撹拌造粒法、流動層造粒法、乾式造粒法等の慣用の方法に従って製造することができる。
【0025】
本実施形態に係る口腔内崩壊錠に用いられ得る(a)有効成分としては、経口投与可能な有効成分であれば、その薬効等に特に制限を設けない。有効成分としては、例えば、胃腸薬、化学療法薬、気管支拡張薬、強心薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血管収縮薬、血管補強薬、解熱鎮痛消炎剤、高脂血症薬、抗精神病薬、抗生物質、抗てんかん薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、抗不安薬、骨粗しょう症薬、骨格筋弛緩薬、催眠鎮静薬、止しゃ薬、消化性潰瘍薬、自律神経用薬、精神神経用薬、制酸薬、整腸薬、鎮咳去たん薬、鎮けい薬、痛風治療薬、糖尿病用薬、不整脈用薬、ホルモン剤、及び利尿薬が挙げられる。気管支拡張薬としてはPDE阻害剤、血管拡張薬としてはジヒドロピリジン系カルシウム拮抗剤、糖尿病用薬としてはα-グルコシダーゼ阻害剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。有効成分としては、ビタミン、アミノ酸等のサプリメント又は栄養成分的なものを用いることもできる。
【0026】
これらの有効成分の中でも、いくつかの実施形態では、水溶性の有効成分が用いられる。水溶性の有効成分とは、20±5℃において、有効成分1g又は1mLを溶かすために要する水の量が1,000mL未満のものを意味する。水溶性の有効成分は、前記水の量が100mL未満、30mL未満、又は10mL未満のものであってもよい。
【0027】
前記水の量が10mL未満である有効成分としては、例えば、中枢神経系用薬であるレベチラセタム、クロルプロマジン塩酸塩、ロキソプロフェンナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、セレギリン塩酸塩、チアプリド塩酸塩、ミルナシプラン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、ドスレピン塩酸塩、ジメトチアジンメシル酸塩、アマンタジン塩酸塩、クロミプラミン塩酸塩、イミプラミン塩酸塩、エトスクシミド、スルトプリド塩酸塩、エモルファゾン、タルチレリン水和物、塩酸ペンタゾシン、チアラミド塩酸塩、トラマドール塩酸塩、アミトリプチリン塩酸、タリペキソール塩酸塩、アンフェナクナトリウム水和物、ピパンペロン塩酸塩、フルラゼパム塩酸塩、クロラゼプ酸二カリウム、メチルフェニデート塩酸塩、ロピニロール塩酸塩及びナルフラフィン塩酸塩、末梢神経用薬であるアクラトニウムナパジシル酸塩、ジスチグミン臭化物、N-メチルスコポラミンメチル硫酸塩、ブチルスコポラミン臭化物、プロパンテリン臭化物、ピリドスチグミン臭化物、ネオスチグミン臭化物、エペリゾン塩酸塩、トルペリゾン塩酸塩及びアンベノニウム塩化物、感覚器用薬であるベタヒスチンメシル酸塩及びdl-イソプレナリン塩酸塩、循環器官用薬であるエチレフリン塩酸塩、アプリンジン塩酸塩、プロカインアミド塩酸塩、ビソプロロールフマル酸塩、オクスプレノロール塩酸塩、イソソルビド、ベタキソロール塩酸塩、メトプロロール酒石酸塩、チリソロール塩酸塩、ロサルタンカリウム、トラピジル、トリメタジジン塩酸塩、プロキシフィリン、プロプラノロール塩酸塩、アセブトロール塩酸塩、ブフェトロール塩酸塩、ピルシカイニド塩酸塩水和物、アルプレノロール塩酸塩、メキシレチン塩酸塩、ジソピラミドリン酸塩、キナプリル塩酸塩、ペリンドプリルエルブミン、セリプロロール塩酸塩、ベナゼプリル塩酸塩、アリスキレンフマル酸塩、スマトリプタンコハク酸塩、ジルチアゼム塩酸塩、デキストラン硫酸エステルナトリウムイオウ18、プラバスタチンナトリウム、ガンマアミノ酪酸、ベラプロストナトリウム及びメクロフェノキサート塩酸塩、呼吸器官用薬であるフドステイン、L-メチルシステイン塩酸塩、L-エチルシステイン塩酸塩、クロペラスチン塩酸塩、サルブタモール硫酸塩、ペントキシベリンクエン酸塩、テルブタリン硫酸塩、ツロブテロール塩酸、消化器官用薬としてはロキサチジン酢酸エステル塩酸塩、メチルメチオニンスルホニウムクロリド、ラニチジン塩酸塩、ラベプラゾールナトリウム、ピコスルファートナトリウム水和物、イトプリド塩酸塩、セビメリン塩酸塩水和物、エグアレンナトリウム水和物、ピレンゼピン塩酸塩無水物、テトラサイクリン塩酸塩、ラモセトロン塩酸塩、ドミフェン臭化物、グラニセトロン塩酸塩、ピロカルピン塩酸塩、インジセトロン塩酸塩、セチルピリジニウム塩化物水和物、アザセトロン塩酸塩、トロピセトロン塩酸塩、ホルモン剤としてはカリジノゲナーゼ、結合型エストロゲン及びチアマゾール、泌尿生殖器官及び肛門用薬であるリトドリン塩酸塩、オキシブチニン塩酸塩、フェソテロジンフマル酸塩、コハク酸ソリフェナシン、ビタミン剤としてはフルスルチアミン塩酸塩、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、アスコルビン酸、パントテン酸カルシウム、ピリドキシン塩酸塩、ジセチアミン塩酸塩水和物及びヒドロキソコバラミン酢酸塩、滋養強壮薬であるヨウ化カリウム、L-アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、塩化カルシウム水和物、L-アスパラギン酸カルシウム水和物、ブドウ糖、塩化カリウム、乾燥硫酸鉄及び無水リン酸水素二ナトリウム、血液体液用薬であるワルファリンカリウム、アドレノクロムモノアミノグアニジンメシル酸塩水和物、リマプロストアルファデクス、クエン酸ナトリウム、トラネキサム酸及びクロピドグレル硫酸塩、代謝性医薬品であるクエン酸カリウム、レボカルニチン塩化物、アナグリプチン、サプロプテリン塩酸塩、プロトポルフィリン二ナトリウム、ボグリボース、ラクチトール水和物、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン、アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物、アカルボース、リゾチーム塩酸塩、L‐アルギニン塩酸塩、L‐アルギニン、イノシンプラノベクス、フィンゴリモド塩酸塩、クエン酸ナトリウム水和物、ビルダグリプチン、L-システイン、メトホルミン塩酸塩、グリチルリチン酸一アンモニウム、グルタチオン、ブホルミン塩酸塩、ミグリトール、エチドロン酸二ナトリウム、チオプロニン、テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物、酢酸亜鉛水和物、フェニル酪酸ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム水和物、ミグルスタット、ミゾリビン、塩酸トリエンチン及びペニシラミン、腫瘍用薬であるイマチニブメシル酸塩、エストラムスチンリン酸エステルナトリウム水和物、シタラビン オクホスファート水和物、ヒドロキシカルバミド、プロカルバジン塩酸塩、組織細胞機能医薬品としてはスプラタストトシル酸塩、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、セチリジン塩酸塩、ホモクロルシクリジン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、抗生物質製剤としてはクラブラン酸カリウム、セフォチアム ヘキセチル塩酸塩、カナマイシン一硫酸塩、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、クリンダマイシン塩酸塩、バンコマイシン塩酸塩、クロキサシリンナトリウム水和物、ドキシサイクリン塩酸塩水和物、ファロペネムナトリウム水和物、ピブメシリナム塩酸塩、リンコマイシン塩酸塩水和物及びポリミキシンB硫酸塩、化学療法剤であるエタンブトール塩酸塩、インジナビル硫酸塩エタノール付加物、ラルテグラビルカリウム、イソニアジド、エムトリシタビン、リバビリン、オセルタミビルリン酸塩、イソニアジドメタンスルホン酸ナトリウム水和物、バルガンシクロビル塩酸塩及びバラシクロビル塩酸塩、寄生動物用薬であるジエチルカルバマジンクエン酸塩、診断用薬である酒石酸及び尿素、アルカロイド系麻薬であるコカイン塩酸塩、エチルモルヒネ塩酸塩水和物、オキシコドン塩酸塩水和物、コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩及びアヘンアルカロイド塩酸塩、非アルカロイド系麻薬であるペチジン塩酸塩、並びに、その他の治療を主目的としない医薬品であるバレニクリン酒石酸塩が挙げられる。
【0028】
前記水の量が30mL未満(10mL以上)である有効成分としては、例えば、中枢神経系用薬であるドネペジル塩酸塩、トラゾドン塩酸塩、ロベンザリット二ナトリウム、ガバペンチン、メチキセン塩酸塩、メマンチン塩酸塩及びリルマザホン塩酸塩水和物、末梢神経用薬であるチザニジン塩酸塩、循環器官用薬であるアミノフィリン水和物、カルテオロール塩酸塩、ピルメノール塩酸塩水和物、リシノプリル水和物、ヒドララジン塩酸塩、カプトプリル、イミダプリル塩酸塩、クロニジン塩酸塩、ミドドリン塩酸塩、リザトリプタン安息香酸塩、ジラゼプ塩酸塩水和物及びフルバスタチンナトリウム、呼吸器官用薬であるフェノテロール臭化水素酸塩、プロカテロール塩酸塩水和物、クレンブテロール塩酸塩及びベンプロペリン、消化器官用薬であるベネキサート塩酸塩ベータデクス、ホルモン剤であるデスモプレシン酢酸塩水和物、泌尿生殖器官及び肛門用薬であるプロピベリン塩酸塩及びバルデナフィル塩酸塩水和物、ビタミン剤であるコバマミド、滋養強壮薬であるグルコン酸カルシウム水和物及びグリセロリン酸カルシウム、血液体液用薬であるチクロピジン塩酸塩、代謝性医薬品であるリセドロン酸ナトリウム水和物、プロナーゼ、シタグリプチンリン酸塩水和物、DL-メチオニン及びタウリン、腫瘍用薬であるシクロホスファミド水和物及びドキシフルリジン、抗生物質製剤であるサイクロセリン、バカンピシリン塩酸塩及びデメチルクロルテトラサイクリン塩酸塩、化学療法剤であるラミブジン、アバカビル硫酸塩、サニルブジン及びファムシクロビル、診断用薬である炭酸水素ナトリウム、アルカロイド系麻薬であるモルヒネ硫酸塩水和物及びモルヒネ塩酸塩水和物、並びに、非アルカロイド系麻薬であるメサドン塩酸塩が挙げられる。
【0029】
前記水の量が100mL未満(30mL以上)である有効成分としては、例えば、中枢神経系用薬であるアセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウム、モサプラミン塩酸塩、クロカプラミン塩酸塩水和物、テトラベナジン、デュロキセチン塩酸塩、アトモキセチン塩酸塩、ゾルピデム酒石酸塩、ミアンセリン塩酸塩、フルボキサミンマレイン酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、ノルトリプチリン塩酸塩、マザチコール塩酸塩水和物、エピリゾール、ペントバルビタールカルシウム、炭酸リチウム、プレガバリン及びエスシタロプラムシュウ酸塩、末梢神経用薬であるチメピジウム臭化物、ピペリドレート塩酸塩、プリジノールメシル酸塩及びメトカルバモール、感覚器用薬であるジフェニドール塩酸塩、循環器官用薬であるシベンゾリンコハク酸塩、フレカイニド酢酸塩、モザバプタン塩酸塩、ラベタロール塩酸塩、デラプリル塩酸塩、エナラプリルマレイン酸塩、テラゾシン塩酸塩水和物、アモスラロール塩酸塩、ニコランジル、ベラパミル塩酸塩及びアメジニウムメチル硫酸塩、呼吸器官用薬であるアズレンスルホン酸ナトリウム水和物、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、ジメモルファンリン酸塩、アンブロキソール塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩水和物、クロフェダノール塩酸塩及びエプラジノン塩酸塩、消化器官用薬であるニザチジン及びセトラキサート塩酸塩、泌尿生殖器官及び肛門用薬であるタムスロシン塩酸塩及び酒石酸トルテロジン、ビタミン剤であるシアノコバラミン、チアミン硝化物、ニコチン酸及びメコバラミン、血液体液用薬であるカルバゾクロムスルホン酸ナトリウム水和物、代謝性医薬品であるカモスタットメシル酸塩、アレンドロン酸ナトリウム水和物、コルヒチン、アログリプチン安息香酸塩、ピルフェニドン及びホリナートカルシウム、腫瘍用薬であるフルオロウラシル及びカペシタビン、組織細胞機能医薬品であるオロパタジン塩酸塩及びベポタスチンベシル酸塩、抗生物質製剤であるセファレキシン、セファクロル、アンピシリン水和物及びミノサイクリン塩酸塩、化学療法剤であるフルシトシン、ジドブジン、リネゾリド、塩酸シプロフロキサシン、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩及びジダノシン、並びに、診断用薬であるメチラポンが挙げられる。
【0030】
前記水の量が1,000mL未満(100mL以上)である有効成分としては、例えば、中枢神経系用薬であるトリヘキシフェニジル塩酸塩、ビペリデン塩酸塩、アクタリット、レボドパ、カルビドパ水和物、クエチアピンフマル酸塩、マプロチリン塩酸塩、塩酸セルトラリン、トリミプラミンマレイン酸塩、タンドスピロンクエン酸塩、セチプチリンマレイン酸塩、カルピプラミン塩酸塩水和物、トピラマート、ドロキシドパ、プロフェナミン塩酸塩、パロキセチン塩酸塩水和物、ペルフェナジンマレイン酸塩、フルフェナジンマレイン酸塩、ペルゴリドメシル酸塩及びペロスピロン塩酸塩、末梢神経用薬であるメペンゾラート臭化物、オキサピウムヨウ化物、バクロフェン、ブトロピウム臭化物、クロルフェネシンカルバミン酸エステル及びチキジウム臭化物、感覚器用薬であるジメンヒドリナート、循環器官用薬であるアロチノロール塩酸塩、アテノロール、ジソピラミド、プロパフェノン塩酸塩、ナドロール、ベプリジル塩酸塩水和物、アムロジピンベシル酸塩、アラセプリル、メチルドパ水和物、ドキサゾシンメシル酸塩、ニカルジピン塩酸塩、シラザプリル水和物、ベバントロール塩酸塩、シラザプリル、ブナゾシン塩酸塩、バルニジピン塩酸塩、グアナベンズ酢酸塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、エレトリプタン臭化水素酸塩、イソクスプリン塩酸塩、ロスバスタチンカルシウム、イフェンプロジル酒石酸塩、ジヒドロエルゴトキシンメシル酸塩、ロメリジン塩酸塩及びシルデナフィルクエン酸塩、呼吸器官用薬であるテオフィリン及びブロムヘキシン塩酸塩、消化器官用薬であるロペラミド塩酸塩、トロキシピド、シメチジン、エカベトナトリウム水和物、デカリニウム塩化物、トリメブチンマレイン酸塩及びメサラジン、ホルモン剤であるクロミフェンクエン酸塩、泌尿生殖器官及び肛門用薬であるフラボキサート塩酸塩及びメチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ビタミン剤であるベンフォチアミン及びピリドキサールリン酸エステル水和物、滋養強壮薬であるクエン酸第一鉄ナトリウム、血液体液用薬であるアスピリン、サルポグレラート塩酸塩及びエドキサバントシル酸塩水和物、代謝性医薬品であるミチグリニドカルシウム水和物、プロパゲルマニウム、シナカルセト塩酸塩、腫瘍用薬としてはメルファラン、スニチニブリンゴ酸塩、タモキシフェンクエン酸塩、テモゾロミド、フルダラビンリン酸エステル、ウベニメクス及びウラシル、組織細胞機能医薬品であるアゼラスチン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、シプロヘプタジン塩酸塩水和物及びブシラミン、抗生物質製剤であるリファンピシン、アモキシシリン水和物、セフロキサジン水和物、クロラムフェニコール、セフカペンピボキシル塩酸塩水和物、ホスホマイシンカルシウム水和物及びリファブチン、化学療法剤であるアシクロビル、モキシフロキサシン塩酸塩、オフロキサシン、テルビナフィン塩酸塩、メシル酸ガレノキサシン水和物、フルコナゾール、エンテカビル水和物、ピラジナミド、アタザナビル硫酸塩、レボフロキサシン水和物及びロメフロキサシン塩酸塩、寄生動物用薬であるメトロニダゾール及びメフロキン塩酸塩、並びに、アルカロイド系麻薬であるオキシメテバノールが挙げられる。
【0031】
一般に、有効成分が水溶性の場合は、口腔内における速やかな崩壊性と高い錠剤強度とを併せ持つ口腔内崩壊錠を設計することが難しいといわれている。そのため、従来は、水溶性有効成分の1製剤あたりの含有率を低減させ、崩壊剤及び成型剤等の賦形剤を多量に配合することで、好ましい物性値を示す口腔内崩壊錠を得る傾向にあった。本実施形態によれば、有効成分が水溶性であり、かつ有効成分の含有量が大きい場合であっても、速やかな崩壊性と強い錠剤強度とを併せ持つ口腔内崩壊錠を得ることができる。口腔内崩壊錠の設計が難しいとされている有効成分を使用した場合でも好ましい物性値が示されるということは、製剤設計が容易な有効成分を使用した場合は、更に好ましい物性値が示されるということを意味する。
【0032】
前記(a)有効成分、又は有効成分含有粒子の含有量は、その粉体特性にもよるが、製剤全体の0.1質量%以上60質量%以下、2.5質量%以上55質量%以下、又は5質量%以上50質量%以下であってもよい。本実施形態の口腔内崩壊錠によれば、有効成分又は有効成分含有粒子の含有量が高い場合にも、口腔内崩壊錠としての優れた特性が得られる。従って、有効成分又は有効成分含有粒子の含有量が例えば20質量%以上60質量%以下、又は25質量%以上60質量%以下のように高くても、優れた口腔内崩壊錠を得ることができる。口腔内崩壊錠が、有効成分含有粒子と単独で口腔内崩壊錠中に分散している有効成分とを含む場合、有効成分含有粒子と単独で分散している有効成分の合計の含有量を、上記数値範囲内とすることができる。
【0033】
(a)有効成分、(b)特定のデンプン並びに(c)特定の無機賦形剤の合計含有量は、製剤全体の80質量%以上であってもよい。これら以外の賦形剤等の成分が多く含まれると、口腔内における速やかな崩壊性及び高い錠剤強度を有する口腔内崩壊錠が得られ難くなる傾向がある。
【0034】
口腔内崩壊錠又は外層部における結晶セルロースの含有量は、口腔内崩壊錠又は外層部全体の5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、又は0.1質量%以下であってもよい。結晶セルロースは、従来の口腔内崩壊錠においてはしばしば使用されていたが、本実施形態の口腔内崩壊錠においては、含有する賦形剤量を徒に増やすばかりか、場合によっては、錠剤強度を低下させるといった問題を引き起こす可能性がある。従って、口腔内崩壊錠又は外層部が結晶セルロースを実質的に含まなくてもよいし、結晶セルロースの含有量を口腔内崩壊錠の錠剤特性を著しく損ねない範囲で設定してもよい。具体的には、結晶セルロースの含有量が、概ね、製剤又は外層部全体の5質量%以下、又は上記上限値以下とすることができる。
【0035】
口腔内崩壊錠は、前記結晶セルロースを含む水不溶性セルロース類を実質的に含まなくてもよいし、口腔内崩壊錠又は外層部における水不溶性セルロース類の含有量が口腔内崩壊錠又は外層部全体の5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、又は0.1質量%以下であってもよい。水不溶性セルロース類としては、エチルセルロース、エチルセルロース水分散液、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、結晶セルロース(微粒子)、結晶セルロース(粒)、合成ケイ酸アルミニウム・ヒドロキシプロピルスターチ・結晶セルロース、酢酸セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乳糖・結晶セルロース球状顆粒、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、粉末セルロースなどが挙げられる。水不溶性セルロースは、その構造上一定の吸水能を有するため、これが多量に配合された場合は、口腔内における唾液の過剰な吸収により、口腔内にてザラツキを感じるなど服用性の低下を招く傾向にある。
【0036】
口腔内崩壊錠において、水溶性賦形剤が実質的に含まれない、又は口腔内崩壊錠若しくは外層部における水溶性賦形剤の含有量が製剤若しくは外層部全体の15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。全ての賦形剤が水不溶性で低吸水性の賦形剤の場合、有効成分等の物理的性質に係わらず、口腔内における良好な崩壊性を得やすいというメリットがある。尚、水溶性賦形剤としては、糖類及び糖アルコールなどが挙げられる。
【0037】
水溶性賦形剤の中でも糖アルコールについて、口腔内崩壊錠又は外層部における含有量が、口腔内崩壊錠又は外層部全体の0質量%以上15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。糖アルコールとしては、例えば、エリスリトース、D‐マンニトール、D‐ソルビトール、キシリトール、マルチトール、無水マルトース、含水マルトース、無水ラクチトール、含水ラクチトール、及び還元麦芽糖水アメが挙げられる。糖アルコールは、水溶性が高く、かつ成形性が低い性質を有する。特にこれら糖アルコールを、造粒等の公知の製剤的加工を施さずに配合した場合、好ましい錠剤強度が得られ難い、又は適切に製錠するのが困難になるという傾向にある。口腔内崩壊錠における糖アルコールの許容可能な含有量は、上記上限値以下であってもよいが、他の成分の含有量の影響等も考慮して上限値を超える値に設定してもよい。
【0038】
糖類についても糖アルコールと同様である。口腔内崩壊錠又は外層部における糖類及び糖アルコールの含有量の合計が口腔内崩壊錠又は外層部全体の0質量%以上15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。糖類としては、グルコース、キシロース、ラクトース、シュクロース、及びマルトース等、水溶性の単糖類及び二糖類が挙げられる。口腔内崩壊錠が糖及び/又は糖アルコールを甘味剤等として含むことは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲、例えば前述の数値範囲であれば可能である。
【0039】
口腔内崩壊錠は、水溶性セルロース類を実質的に含まなくてもよいし、口腔内崩壊錠又は外層部における水溶性セルロース類の含有量が口腔内崩壊錠又は外層部全体の5質量%以下、又は3質量%以下であってもよい。水溶性セルロース類としては、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒプロメロースなどが挙げられる。
【0040】
以上のように、本実施形態の口腔内崩壊錠が実質的に含まなくてもよい結晶セルロース等の成分についての説明をしたが、いずれの成分も、口腔内崩壊錠の錠剤物性(崩壊性及び錠剤強度)に著しい影響を与えない範囲での使用は可能である。これらの成分の許容される含有量は、前記(b)デンプン及び(c)無機賦形剤と混合された状態での混合層又は外層部全体に対する含有量であり得る。なぜならば、結晶セルロース等の成分は、前記(b)デンプン及び(c)無機賦形剤と混合されたときに錠剤特性に影響を与えるからである。例えば、内核及びこれを被覆する外層部から構成される有核型の口腔内崩壊錠(有核錠)の場合、外層が(b)デンプン及び(c)無機賦形剤を含有し、内核が結晶セルロース等の成分を含有するのであれば、結晶セルロース等の成分の含有量が多くても、錠剤物性に影響を与えにくい。この有核型の形態においては、混合部分全体とは外層部全体である。単層錠(普通錠)の場合、混合部分全体とは、錠剤全体(製剤全体、口腔内崩壊錠全体)である。従って、結晶セルロースについて述べれば、前記(b)デンプン及び(c)無機賦形剤と混合された状態で含まれる結晶セルロースの混合部分(外層部)全体に対する含有量が0質量%以上5質量%以下であり得る。同様に、前記(b)デンプン及び(c)無機賦形剤と混合された状態で含まれる糖アルコールの混合部分(外層部)全体に対する含有量が0質量%以上15質量%以下であり得る。
【0041】
有核型の口腔内崩壊錠は、例えば、WO01/98067に記載された有核錠の製造方法(特に図1の製造方法)にしたがって製造することができる。WO01/98067の有核錠の製造方法による有核型速溶崩壊性成型品は、WO03/028706にも記載されているが、WO03/028706の有核型速溶崩壊性成型品は、外層が成形性及び崩壊性の高い成分を含有し、内核が有効成分等の成形性の低い成分を含有する有核型速溶崩壊性成型品である。同様の有核型口腔内崩壊錠は、WO2010/134540及びWO2011/071139にも記載されている。
【0042】
本実施形態の口腔内崩壊錠では、前記(b)デンプン及び(c)無機賦形剤によって十分な成形性が得られるため、前記(a)有効成分の成形性が低い場合であっても、例えばWO01/98067の有核錠の製造方法を使用することにより、前記(a)有効成分を含有する内核を有する有核錠を得ることができる。このような本実施形態の有核型口腔内崩壊錠においては、内核が前記(a)有効成分を含有し、外層部が前記(b)デンプン及び(c)無機賦形剤を含有していればよく、前記(a)有効成分は内核のみに含有させる、すなわち、内核が前記(a)有効成分の全量を含有してもよい。また、前記(b)デンプン及び(c)無機賦形剤は外層部のみに含有されてもよいし内核の崩壊性を調整するために、前記(b)デンプン及び/又は(c)無機賦形剤の一部が、前記(a)有効成分とともに内核に含有されていてもよい。
【0043】
有核錠の口腔内崩壊錠において、内核の大きさ、外層部の厚みは特に限定されるものではない。例えば、有効成分が内核のみに含有され、内核の成形性が乏しい場合、前記(b)デンプン及び(c)無機賦形剤を主として含む外層部によって成形性を保持するためには、前記(a)有効成分の含有量に基づいて内核の大きさを決め、外層部は成形品全体の成形性、すなわち錠剤強度が維持できるような厚みになるように設定すればよい。これらの観点から、例えば、内核の最大径が1mm以上11mm以下で、外層部の厚みが0.3mm以上10.5mm以下であってもよい。内核と外層部の比率も任意であるが、口腔内崩壊錠全体における内核の比率は、例えば1〜90質量%であり得る。
【0044】
本実施形態の口腔内崩壊錠は、必要に応じて、(d)クロスポビドンを更に含むことができる。クロスポビドンを更に配合した口腔内崩壊錠は、口腔内での速やかな崩壊性を損なわずに、錠剤強度が更に向上する傾向にある。係る効果の観点から、クロスポピドンの含有量は、製剤全体に対して、0.1質量%以上20質量%以下、又は5質量%以上15質量%以下であってもよい。
【0045】
有核錠の口腔内崩壊錠において、前記(d)クロスポビドンは、強度及び崩壊性を高めるために、外層部、内核のどちらに含有されていてもよい。
【0046】
本実施形態の口腔内崩壊錠は、上記以外に医薬品添加剤として一般的に使用され得る添加剤を含むことができる。これら添加剤としては、例えば、前記他の無機賦形剤、甘味剤、矯味剤、香料、滑沢剤、流動化剤、着色料、安定化剤、抗酸化剤、溶解補助剤、崩壊剤、矯臭剤、帯電防止剤、吸着剤、防腐剤、湿潤剤、及びpH調整剤等が挙げられる。これら添加剤の含有量は、製剤全体に対して0質量%以上20質量%以下、又は0質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0047】
有効成分が光に不安定な成分であれば、有核錠の外層部が各種色素等の光吸収物質を含有することにより、有効成分の光安定性を改善することができる。外層部に含有され得る光吸収物質としては、例えば、食用赤色2号、食用赤色3号、食用黄色4号、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、及び黒酸化鉄等が挙げられる。これについては、WO2010/087462に詳述されているので、参照されたい。
【0048】
本実施形態の口腔内崩壊錠は、口腔内での速やかな崩壊性と高い錠剤強度とを併せ持つ。「口腔内での速やかな崩壊性」とは、口腔内における崩壊時間(健康な成人の口腔内にて、水を口に含まずに口腔内に錠剤が入ってから錠剤が完全に崩壊又は溶解するまでの時間)が短いことを意味する。口腔内崩壊時間は、通常5〜60秒であり、5〜45秒、又は5〜30秒程度であってもよい。
【0049】
「高い錠剤強度」とは、輸送時、調剤薬局等における自動分包機での一包化等の調剤時、又は患者の服用時等に、通常の錠剤と同等程度の取り扱いが可能な強度を意味する。錠剤強度は、上記のような取り扱い時の指標として用いられており、錠剤硬度と錠剤の破断面積から算出することができる。錠剤強度が1〜2N/mmの場合は、PTP包装に耐えうる錠剤強度であり、2N/mm以上の場合は、普通錠と同じ取り扱いが可能であると報告されている(落合 康,新アムロジンOD錠の開発,p51−57,新薬と臨床,Vol.58(2009))。例えば破断面積が、20.0mmである錠剤の錠剤強度が、0.5、1.0、1.5、2.0N/mmである場合の錠剤硬度は、それぞれ約10.0N、20.0N、30.0N、40.0Nであり、錠剤強度として0.5N/mmの差が生じた場合、錠剤硬度としては、約10Nの差が生じることとなる。
【0050】
錠剤の大きさについては、円形錠において直径7〜9mmが服用し易く、取り扱い易いと言われている。一態様では、製剤全体の有効成分等の含有量が多くても、直径7〜9mmの口腔内崩壊錠を提供することができる。例えば、有効成分等の1回投与量が多く、通常の方法で製剤化した場合に錠剤直径として9mmを超えるような製剤の場合は、賦形剤含有量を減らして、1錠あたりの有効成分等の含有比率を高くすることができる。そのため、錠剤質量を低下させることができ、錠剤直径を9mm以下とすることが可能である。その結果、患者等の服用時の負担を軽減することができる。
【0051】
本実施形態の口腔内崩壊錠は、例えば、以下の工程を含む方法により製造することができる。一実施形態に係る口腔内崩壊錠の製造方法は、少なくとも前記(a)有効成分等、前記(b)特定のデンプン及び前記(c)特定の無機賦形剤を必要により乾燥状態にて混合して、混合物を得る工程と、その後、その(乾燥)混合物を圧縮成形する工程とを有する。混合物を得る工程では、必要に応じて、(d)クロスポビドン又は前記その他の添加剤を更に混合することもできる。圧縮成形の工程では、所望の製剤密度となるよう混合物を圧縮成形することができる。
【0052】
混合物を得る工程において、少なくとも前記(b)デンプン及び前記(c)無機賦形剤は、造粒等の公知の製剤的加工を施さずに、そのまま混合されてもよい。そうすれば、口腔内での速やかな崩壊性と高い錠剤強度を併せ持つ口腔内崩壊錠を、簡略化された製造工程にて製することができる。混合にはW型混合機、V型混合機、コンテナミキサー等を用いることができる。圧縮成形には単発打錠機、ロータリー打錠機等を用いることができ、混合物を直接圧縮成形(直接打錠)することができる。
【0053】
製剤密度とは、錠剤1錠あたりの体積に対する質量である。口腔内崩壊錠の製剤密度は、0.5〜2.0mg/mm、1.0〜1.5mg/mm、又は1.1〜1.3mg/mmであってもよい。そのような製剤密度とするには、打錠圧3.0〜20.0kNの範囲内で、当業者であれば適宜設定することができる。本実施形態の処方によれば、特に上記製剤密度の範囲において、口腔内における速やかな崩壊性と、高い錠剤強度とを併せ持つ口腔内崩壊錠を提供することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。実施例、比較例及び参考例にて得られた錠剤について、下記(1)〜(3)の試験法によって、崩壊時間、錠剤強度、及び製剤密度の確認を行った。
(1)崩壊性(崩壊時間)
第十六改正日本薬局方崩壊試験法に準じ、6錠の崩壊時間を測定し、その平均値を算出した。崩壊時間は、120秒以内、更に好ましくは90秒以内を基準とした。
(2)錠剤強度
錠剤硬度計(PC−30、岡田精工株式会社製)を用いて錠剤硬度を、シックネスゲージ(SM−528、株式会社テクロック製)を用いて錠剤直径及び錠剤厚みを、それぞれ10錠について測定した。その平均値より、以下の計算式にて錠剤強度を算出した。錠剤強度は、1.8N/mm以上、更に好ましくは2.0N/mm以上を基準とした。
錠剤強度(N/mm)=硬度平均(N)/破断面積(mm
(3)製剤密度
電子天秤(XS−204、メトラートレド製)を用いて錠剤質量を、シックネスゲージ(SM−528、株式会社テクロック製)を用いて錠剤直径及び錠剤厚みを、それぞれ10錠について測定した。その平均値より、以下の計算式にて錠剤密度を算出した。
製剤密度(mg/mm)=質量平均(mg)/平均錠剤体積(mm
(4)口腔内崩壊試験
健康な成人男性にて、水を口に含まずに口腔内に錠剤が入ってから錠剤が完全に崩壊又は溶解するまでの時間を測定し、その平均値を算出した。口腔内崩壊時間は45秒以内を基準とした。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例及び比較例の錠剤は、以下の方法で、打錠圧等の調製により、製剤密度が1.1〜1.3mg/mmとなるように製造した。
(実施例1)
各成分を表1の含有量に従い量り取り、篩にて篩過後、V型混合機(徳寿工作所製)にて混合し、打錠機(VIRG、株式会社菊水製作所製)を用いて、1錠あたり200mgの錠剤を製した。このとき、丸型の形状で、直径が8.5mmの杵を用いた。錠剤の形状は杵の形状と対応する。尚、有効成分としてミグリトールを使用した。ミグリトールは、一般的に口腔内における速やかな崩壊性と高い錠剤強度とを併せ持つ口腔内崩壊錠の設計が難しい水溶性のものである。ミグリトールの1gを溶かすために要する水の量は10mL未満である。後述するように、実施例1で用いたトウモロコシデンプンのアミロース含有量は25〜30質量%であり、そのアルファー化度は10%未満である。
(実施例2)
実施例2の錠剤は、実施例1の無機賦形剤(合成ヒドロタルサイト)に加えてその他賦形剤(クロスポピドン)を用い、表1の含有量に従い、実施例1と同様の条件にて製した。
(比較例1)
比較例1の錠剤は、実施例1の無機賦形剤をその他賦形剤(クロスポピドン)に置き換え、表1の含有量に従い、実施例1と同様の条件にて製した。
(比較例2)
比較例2の錠剤は、実施例1から無機賦形剤を除いたもので、表1の含有量に従い、実施例1と同様の条件にて製した。
(比較例3)
比較例3の錠剤は、実施例1のデンプンを無機賦形剤及びその他賦形剤(クロスポピドン)に置き換え、表1の含有量に従い、実施例1と同様の条件にて製した。
(比較例4〜6)
比較例4〜6の錠剤は、実施例2のデンプンを糖アルコールに置き換え、表1の含有量に従い、実施例1と同様の条件にて製した。
(比較例7〜8)
比較例7〜8の錠剤は、本発明処方に従来技術でしばしば使用されている結晶セルロースを加えた処方として、表1の含有量に従い、実施例1と同様の条件にて製した。
(比較例9〜10)
比較例9〜10の錠剤は、本発明処方に従来技術でしばしば使用されている糖アルコールを加えた処方として、表1の含有量に従い、実施例1と同様の条件にて製した。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例1〜2及び比較例1〜10の錠剤評価結果を表2に示す。有効成分、特定のデンプン、及び特定の無機賦形剤から構成される実施例1は、錠剤強度2.0N/mm以上、崩壊時間90秒以内と良好であった。更にクロスポビドンを加えた実施例2においても、実施例1と同様、錠剤強度2.0N/mm以上、崩壊時間90秒以内と良好であった。実施例1の処方から合成ヒドロタルサイト又はトウモロコシデンプンを除きクロスポピドンに置き換えた比較例1及び比較例3においては、錠剤強度は2.0N/mm以上と良好なものの、崩壊時間の延長が認められた。実施例1の処方から合成ヒドロタルサイトを除いた比較例2においては、崩壊時間は良好なものの、錠剤強度が0.64N/mmと低いものであった。実施例2の処方のデンプンを糖アルコールに置き換えた比較例4〜6においては、打錠工程にて顕著な打錠障害(キャッピング)が確認され、比較例6については錠剤の製造が困難であった。また、比較例4〜5において、錠剤強度は1.7N/mm程度と、低いものであった。一方、結晶セルロースの含有量が10質量%である比較例7〜8では、期待する錠剤強度は得られなかった。
【0059】
以上の結果より、口腔内崩壊錠においては、前記(b)特定のデンプン及び前記(c)特定の無機賦形剤の組み合わせが特に重要であり、いずれかを他の賦形剤に置き換えた場合と比較して優れた物性値を得ることができることが判明した。また、このような組み合わせにおいては、結晶セルロースを過度に加えることは、口腔内崩壊錠としての錠剤物性に、好ましくない影響を与え得ることが判明した。尚、結晶セルロースの含有量が0質量%の実施例において高い錠剤強度が得られたことから、結晶セルロースの含有量が概ね5質量%以下程度であれば、口腔内崩壊錠としての錠剤物性に実質的な影響を与えないと考えられる。
【0060】
(デンプンの検討1)
デンプンのアミロース含有量による効果の違いを検討した。
【0061】
【表3】
【0062】
(実施例3)
各成分を表3の含有量に従い量り取り、実施例1と同様の条件にて実施例3の錠剤を製した。
(実施例4)
実施例4の錠剤は、実施例3のトウモロコシデンプンをバレイショデンプンに置き換え、表3の含有量に従い、実施例3と同様の条件にて製した。
(比較例11)
比較例11の錠剤は、実施例3のトウモロコシデンプンをコメデンプンに置き換え、表3の含有量に従い、実施例3と同様の条件にて製した。
【0063】
【表4】
【0064】
実施例3〜4及び比較例11の錠剤評価結果を表4に示す。アミロースの含有量が20〜30質量%のデンプンを用いた実施例3〜4では、いずれも錠剤強度1.8N/mm以上、崩壊時間90秒以内と良好であった。アミロース含有量が15〜20質量%のデンプンを用いた比較例11では、錠剤強度は良好なものの、崩壊時間が著しく遅延した。このことから、アミロースの含有量が20〜30質量%のデンプンであれば、高い錠剤強度と速やかな崩壊性が得られることが確認された。
【0065】
(デンプンの検討2)
デンプンのアルファー化度による効果の違いを検討した。
【表5】
【0066】
(実施例5)
実施例5の錠剤は、各成分を表5の含有量に従い量り取り、実施例1と同様の条件にて製した。
(比較例12〜13)
比較例12〜13の錠剤は、実施例5のトウモロコシデンプンを部分アルファー化デンプン又はアルファー化デンプンに置き換え、表5の含有量に従い、実施例5と同様の条件にて製した。
【0067】
【表6】
【0068】
実施例5及び比較例12〜13の錠剤評価結果を表6に示す。デンプンのアルファー化度が高くなるにつれて、崩壊時間の著しい延長が認められた。また、デンプンのアルファー化度が高くなると、同じ条件で打錠しているにも関わらず、打錠工程にて顕著な圧力上昇が認められた。このことから、アルファー化度が10%未満のデンプンであれば、口腔内での速やかな崩壊性が得られると確認された。
【0069】
(無機賦形剤の検討1)
無機賦形剤の種類による効果の違いを検討した。
【0070】
【表7】
【0071】
(実施例6)
実施例6の錠剤は、各成分を表7の含有量に従い量り取り、実施例1と同様の条件にて製した。
(実施例7)
実施例7の錠剤は、実施例6の無機賦形剤である合成ヒドロタルサイトをケイ酸マグネシウムに置き換え、表7の含有量に従い、実施例6と同様の条件にて製した。
(実施例8)
実施例8の錠剤は、実施例6の無機賦形剤である合成ヒドロタルサイトをケイ酸カルシウムに置き換え、表7の含有量に従い、実施例6と同様の条件にて製した。
(比較例14)
比較例14の錠剤は、実施例6の無機賦形剤である合成ヒドロタルサイトを無水リン酸水素カルシウムに置き換え、表7の含有量に従い、実施例6と同様の条件にて製した。
【0072】
【表8】
【0073】
実施例6〜8及び比較例14の錠剤評価結果を表8に示す。無機賦形剤として合成ヒドロタルサイト、ケイ酸マグネシウム、又はケイ酸カルシウムを用いた実施例6〜8において、錠剤強度2.0N/mm以上、崩壊時間90秒以内と錠剤特性が良好であった。無機賦形剤として無水リン酸水素カルシウムを用いた比較例14では、崩壊性は良好なものの、錠剤強度が1.45N/mmと低いものであった。このことより、無機賦形剤の中でも特に、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸マグネシウム、及びケイ酸カルシウムが好ましい無機賦形剤であることが示された。
【0074】
(無機賦形剤の検討2)
無機賦形剤の含有量による効果の違いを検討した。
【0075】
【表9】
【0076】
(実施例5)
前述のとおり、各成分を表9の含有量に従い量り取り、実施例1と同様の条件にて実施例5の錠剤を製した。
(実施例9〜10)
実施例9〜10の錠剤は、実施例5における無機賦形剤の含有量を変えて、表9の含有量に従い、実施例5と同様の条件にて製した。
(参考例1〜2)
実施例5における活性成分と合成ヒドロタルサイトの一部を、トウモロコシデンプンに置き換え、表9の含有量に従い、実施例5と同様の条件にて参考例1〜2の錠剤を製した。この参考例1〜2は、有効成分の影響をできるだけ排除して、合成ヒドロタルサイトの下限値を見極めるために、有効成分の含有量を小さくしたものであるが、有効成分の含有量が微量の場合の実施例と見なすことができる。
【0077】
【表10】
【0078】
錠剤評価結果を表10に示す。無機賦形剤の含有量が15〜40質量%である実施例5、9〜10において、錠剤強度2.0N/mm以上、崩壊時間90秒以内と錠剤物性が良好であった。また、無機賦形剤の含有量が5質量%及び10質量%である参考例1及び2においても、実施例1と同様に、錠剤強度2.0N/mm以上、崩壊時間90秒以内と錠剤物性が良好であった。このことから、無機賦形剤の含有量が概ね3質量%以上であれば、期待される錠剤物性が得られることが明らかとなった。
【0079】
無機賦形剤の含有量の範囲について考察すると、実施例10における無機賦形剤の含有量は40質量%であるが、この実施例10から有効成分であるミグリトールを除いても、やはり口腔内崩壊錠としての特性は失われないと考えられる。従って、無機賦形剤の含有量が概ね60質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下であれば、特に優れた錠剤物性が得られると考えられる。尚、参考例1及び2の結果から、口腔内崩壊錠としての特性を得るためには、有効成分は必ずしも必須ではないといえる。従って、有効成分を含有する内核と、特定のデンプン及び特定の無機賦形剤を含む外層部とから構成される有核型の口腔内崩壊錠も、良好な錠剤物性を有することが可能であることがわかる。
【0080】
(デンプン及び有効成分の検討)
デンプン及び有効成分の含有量による効果の違いを検討した。
【0081】
【表11】
【0082】
(実施例2)
前述のとおり、各成分を表11の含有量に従い量り取り、実施例1と同様の条件にて実施例2の錠剤を製した。
(実施例11〜12)
実施例11〜12の錠剤は、実施例2における有効成分とデンプンの含有量を変えて、表11の含有量に従い、実施例2と同様の条件にて製した。
(参考例1)
前述のとおり、表11の含有量に従い、実施例2と同様の条件にて参考例1の錠剤を製した。これは、実施例2における活性成分、クロスポビドン、及び合成ヒドロタルサイトの一部を、トウモロコシデンプンに置き換えたものと考えることができる。
【0083】
【表12】
【0084】
実施例2、11〜12、及び参考例1の錠剤評価結果を表12に示す。有効成分の含有量が5〜25質量%であり、デンプンの含有量が49〜69質量%である実施例2及び実施例11において、錠剤強度2.0N/mm以上、崩壊時間90秒以内と良好であった。有効成分の含有量が50質量%であり、デンプンの含有量が24質量%である実施例12において、錠剤強度は2.0N/mm以上と良好であり、崩壊時間も120秒以内と許容範囲であった。有効成分の含有量が0質量%であり、デンプンの含有量が94質量%である参考例1において、錠剤強度2.0N/mm以上、崩壊時間90秒以内と良好であった。このことより、口腔内崩壊錠は、有効成分含有量が製剤全体の60質量%以下であり、更に有効成分含有量に応じデンプンの含有量は20〜95質量%であるとき、特に良好な物性値を示すといえる。
【0085】
(他の有効成分における確認)
有効成分について種類を変更し検討した。
【0086】
【表13】
【0087】
(実施例13)
実施例13の錠剤は、有効成分をテオフィリンに置き換え、表13の含有量に従い、実施例1と同様の条件にて製した。テオフィリンの1gを溶かすために要する水の量は、1,000mL未満である。
(実施例14)
実施例14の錠剤は、有効成分をニフェジピンに置き換え、表13の含有量に従い、実施例1と同様の条件にて製した。ニフェジピンの1gを溶かすために要する水の量は、10,000mL以上である。
(実施例15)
核粒子である結晶セルロース粒(商品名:セルフィアCP−203,旭化成ケミカルズ株式会社製)26.3質量%に対し、クエン酸トリエチル(商品名:シトロフレックス、森村商事株式会社製)5.3質量%、タルク(商品名:日本薬局方タルク、松村産業株式会社製)15.8質量%、及びメタクリル酸コポリマーLD(商品名:オイドラギットL30D−55,EVONIC INDUSTRIES製)52.6質量%(固形分として)からなるコーティング液を、流動層造粒乾燥コーティング機FLO−5(フロイント産業株式会社製)にて噴霧した。その後、乾燥し、得られたコーティング顆粒を用い、表13の含有量に従い、実施例1と同様の条件にて実施例15の錠剤を製した。実施例15の錠剤は、有効成分を含まないが、コーティング顆粒は、仮想の有効成分としての結晶セルロース粒に放出制御及び苦味マスキング等を目的とした、製剤的加工を施して得られる有効成分含有粒子と見なすことができる。
【0088】
【表14】
【0089】
実施例13〜15の錠剤評価結果を表14に示す。有効成分としてテオフィリン又はニフェジピンを用いた実施例13〜14において、錠剤強度2.0N/mm以上、崩壊時間90秒以内と錠剤物性が良好であった。有効成分含有粒子の例としてコーティングを施した結晶セルロース粒(コーティング顆粒)を用いた実施例15において、錠剤強度2.0N/mm以上、崩壊時間90秒以内と錠剤物性が良好であった。これらの結果より、特定のデンプンと特定の無機賦形剤との組み合わせは、一般に口腔内崩壊錠としての設計が難しいといわれている水溶性有効成分を含有する場合に好ましい物性を示すだけでなく、水不溶性の有効成分を含有する場合には更に好ましい物性を示すことが判明した。従って本発明の口腔内崩壊錠は、有効成分又は有効成分含有顆粒の性質にかかわらず良好な物性を示すと考えられる。
【0090】
(有核型口腔内崩壊錠の検討)
前記参考例1及び2の考察をもとに、実際に、口腔内崩壊錠を有核型口腔内崩壊錠とすることができるかどうか検討した。
【0091】
【表15】
【0092】
(実施例16)
内核成分を表16の含有量に従い量り取った後混合し、内核用粉粒体を得た。また、外層成分を表16の含有量に従い量り取った後混合し、外層部用粉粒体を得た。次に、内径6.0mm、外径8.0mmの2重構造を持ち押圧可能な丸型の杵を用い、WO01/98067の図1に記載される有核錠の製造方法により、第一外層部が20質量%、内核が12.5質量%、第二外層部が67.5質量%となるような割合でそれぞれの粉末を設置後、仮圧縮し、最終的にオートグラフ(AG-1,島津製作所製)を用いて約10kN/錠の圧縮圧で打錠し、1錠あたり200mgの有核型口腔内崩壊錠を製した。尚、内核と外層部の比率は、内核12.5質量%に対し、外層部87.5質量%である。
(実施例17)
実施例17の錠剤は、実施例16の外層成分の無機賦形剤をケイ酸カルシウムに置き換え、表16の含有量に従い、実施例16と同様の条件にて製した。
(実施例18)
実施例18の錠剤は、実施例16の外層成分のデンプンの一部をその他賦形剤(クロスポピドン)に置き換え、表16の含有量に従い、実施例16と同様の条件にて製した。
【0093】
【表16】
【0094】
実施例16〜18の錠剤評価結果を表17に示す。有効成分、デンプン、及び無機賦形剤から構成される実施例16〜18の有核錠である口腔内崩壊錠は、錠剤強度2.0N/mm以上、崩壊時間90秒以内と良好であった。更に外層部の成分のうちデンプンの一部をクロスポビドンに置き換えた実施例18においても、実施例16及び17と同様、錠剤強度2.0N/mm以上、崩壊時間90秒以内と錠剤物性が良好であった。これらの結果より、本発明の口腔内崩壊錠においては、特定のデンプンと特定の無機賦形剤との組み合わせにより、口腔内崩壊錠としての特性が得られるため、特定のデンプンと特定の無機賦形剤により外層を構成し、有効成分又は有効成分を含有する粒子の全量を含有する内核を有する有核錠の場合においても、口腔内崩壊錠としての好ましい物性が得られることが判明した。尚、実施例16〜18の内核用粉粒体である、無水カフェインとトウモロコシデンプンとステアリン酸マグネシウムとの混合物は、極めて成形性の低い粉粒体であり、これらの実施例は、まさしく、WO03/028706、WO2010/134540、及びWO2011/071139等に記載された、内核が不完全成形物からなる有核型口腔内崩壊錠、又は、内核が成形性の低い粉粒体である有核型口腔内崩壊錠である。
【0095】
(第十六改正日本薬局方崩壊試験法と口腔内崩壊試験との関連性)
上記実施例及び比較例の一部について、健康な成人男性6名(25才〜39才)による口腔内での崩壊時間の測定を実施した。
【0096】
【表17】
【0097】
実施例1、2、11、12及び比較例1〜3の評価結果を表15に示す。第十六改正日本薬局方崩壊試験法による崩壊時間が120秒以内であった実施例1、2、11、12及び比較例2では、口腔内崩壊時間45秒以内と、良好な結果であった。一方、同法による崩壊時間が120秒以上であった比較例1及び3は、口腔内崩壊時間が45秒以上であった。このことより、第十六改正日本薬局方崩壊試験法における崩壊時間が120秒以内であれば、口腔内崩壊時間が45秒以内になるという関連性があることが示された。
【符号の説明】
【0098】
1…口腔内崩壊錠、10…混合層、11…内核、20…外層部。
【要約】
(a)有効成分、(b)アミロースの含有量が20質量%以上30質量%以下かつアルファー化度が10%未満のデンプン、及び、(c)ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、及び合成ヒドロタルサイトからなる群から選択される1種以上の無機賦形剤を含む口腔内崩壊錠が開示される。口腔内崩壊錠は、単層錠、又は内核及び外層部を有する有核錠である。単層錠である口腔内崩壊錠、又は有核錠である口腔内崩壊錠の外層部における結晶セルロースの含有量が0質量%以上5質量%以下である。
図1
図2