【実施例】
【0023】
本発明について、以下実施例を用いて具体的に説明する。尚、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。
実施例および比較例における物性測定方法、評価方法は以下の通りである。
【0024】
(1)フィルムの作製
高密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンの組成物を、(株)プラスチック工学研究所社製GT−65−A(1軸押出機、スクリュー径65mm、L/D=28)を用い、200℃にて、押出し量30kg/時間で押出して造粒した(以下、造粒物を「ペレット」と表記する)。ペレットを、山口製作所製Tダイフラットフィルム製膜機(スクリュー径30mm、ダイス300mm幅)を用い、シリンダー温度200℃、ダイス温度210℃、引き取り速度15m/分で製膜し、厚さ35ミクロンメートルのポリエチレンフィルムを得た。
【0025】
(2)密度測定
JIS K7112:1999に準拠し、測定した。
【0026】
(3)メルトマスフローレイト(MFR)測定
JIS K7210:1999 コードD(温度=190℃、荷重=2.16kg)に準拠し、測定した。
【0027】
(4)Mw/Mn(分子量分布)測定
GPCから求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を分子量分布の指標とした。GPC測定は、ウォーターズ社製GPCV2000を用い、カラムは昭和電工(株)製UT−807(1本)と東ソー(株)製GMHHR−H(S)HT(2本)を直列に接続して使用し、移動相:トリクロロベンゼン(TCB)、カラム温度:140℃、流量:1.0ml/分、試料濃度:20mg/15ml(TCB)、試料溶解温度:140℃、試料溶解時間:2時間の条件で行った。分子量の校正は、Mwが1050〜206万の範囲の東ソー(株)製標準ポリスチレンの12点で行い、それぞれの標準ポリスチレンのMwに係数0.43を乗じてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量のプロットから一次校正直線を作成し、分子量を決定した。
【0028】
(5)2%引張弾性率
上記Tダイ成形加工により得られたポリエチレンフィルムを用いて、オリエンテック(株)製引張試験機RTC−1310AにてJIS K 7127:1989に準拠した引張割線弾性率(規定ひずみ2%)測定を行ない2%引張弾性率とした。縦、横両方向について、測定を行った。縦方向はフィルムの引取り方向に対して平行方向とし、横方向は面内でそれに垂直な方向とした。
【0029】
(6)エルメンドルフ引裂強度
上記Tダイ成形加工により得られたポリエチレンフィルムを用いて、(株)東洋精機製作所製エルメンドルフ引裂強度にてJIS K7128−2:1998に準拠した引裂強さを行ないエルメンドルフ引裂強度とした。上記(5)同様に、縦、横両方向について、測定を行った。縦方向はフィルムの引取り方向に対して平行方向とし、横方向は面内でそれに垂直な方向とした。
【0030】
(7)引張引張破断伸度
上記Tダイ成形加工により得られたポリエチレンフィルムを用いて、オリエンテック(株)製引張試験機RTC−1310AにてJIS K 7127:1999に準拠して、試験片タイプ5、試験速度500mm/min.で引張破壊伸びの測定を行ない引張引張破断伸度とした。上記(5)同様に、縦、横両方向について、測定を行った。縦方向はフィルムの引取り方向に対して平行方向とし、横方向は面内でそれに垂直な方向とした。
【0031】
(8)引張引張破断強度
上記Tダイ成形加工により得られたポリエチレンフィルムを用いて、オリエンテック(株)製引張試験機RTC−1310AにてJIS K 7127:1999に準拠して、試験片タイプ5、試験速度500mm/min.で引張破壊強さの測定を行ない引張引張破断強度とした。上記(5)同様に、縦、横両方向について、測定を行った。縦方向はフィルムの引取り方向に対して平行方向とし、横方向は面内でそれに垂直な方向とした。
【0032】
(9)切断性
上記Tダイ成形加工により得られたポリエチレンフィルムを両面テープ(積水化学工業(株)製、幅50mm)を用いて、アクリル板に貼着した。貼着部分をギロチンカッターで切断し、ポリエチレンフィルムの切断端面を目視で観察し、以下の基準によって切断性を評価した。縦、横両方向について、評価を行った。縦方向はフィルムの引取り方向に対して平行方向とし、横方向は面内でそれに垂直な方向とした。
○:フィルム切断端面のフィルム伸びが1mm以下。
△:フィルム切断端面のフィルム伸びが1mm以上2mm以下。
×:フィルム切断端面のフィルム3mm超。
【0033】
(10)低分子量成分のブリードアウト(低粉性)
上記Tダイ成形加工により得られたポリエチレンフィルムを50℃で24時間加熱し、23℃で24時間冷却した後に固定ロールに貼りつけた黒色のフェルト布に基材層面を接触させながら20m長走行させ、基材層面の粉をフェルト布上に集積させた。集積した粉の量や集積状態を目視観察し、粉の発生がない、またはわずかに発生しているが集積が部分的である場合には低粉性に優れると評価した。一方、粉が多く発生しており、フィルムとフェルト布が接触し始める部分に帯状に連続的に集積している場合には低粉性に劣ると評価した。粉の量や集積状態が両者の中間であれば、低粉性にやや優れると評価した。
【0034】
[メタロセン担持触媒(a)の調製]
シリカP−10[富士シリシア社(日本国)製]を、窒素雰囲気下、400℃で5時間焼成し、脱水した。脱水シリカの表面水酸基の量は、1.3mmol/g−SiO
2であった。容量1.8リットルのオートクレーブの中で、この脱水シリカ40gをヘキサン800cc中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを50℃に保ちながら攪拌し、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/リットル)を60cc加え、その後さらに2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させ、トリエチルアルミニウム処理されたシリカと上澄み液とを含み、該トリエチルアルミニウム処理されたシリカの全ての表面水酸基がトリエチルアルミニウムによりキャッピングされている成分[d]を得た。その後、得られた反応混合物中の上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、上澄み液中の未反応のトリエチルアルミニウムを除去した。その後、ヘキサンを適量加え、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのヘキサンスラリー800ccを得た。
【0035】
一方、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」という)200mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1000ccに溶解し、予めトリエチルアルミニウムとジブチルマグネシウムより合成した組成式AlMg
6(C
2H
5)
3(n−C
4H
9)
12の1mol/リットルヘキサン溶液20ccをここに加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1mol/リットルに調整し、成分[e]を得た。
【0036】
また、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)5.7gをトルエン50ccに添加して溶解し、ボレートの100mmol/リットルトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの1mol/リットルヘキサン溶液5ccを室温で加え、さらにヘキサンを加えてトルエン溶液中のボレート濃度が70mmol/リットルとなるように調整した。その後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合物を得た。
【0037】
ボレートを含むこの反応混合物46ccを、上記の成分[d]のスラリー800ccに15〜20℃で攪拌しながら加え、ボレートを物理吸着によりシリカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。このスラリーにさらに上記の成分[e]のうち32ccを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応させた。こうしてシリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成されているメタロセン担持触媒(a)を得た。
【0038】
[液体助触媒成分(b)の調製]
有機マグネシウム化合物[c1]として、AlMg
6(C
2H
5)
3(n−C
4H
9)
12で示される有機マグネシウム化合物を使用した。化合物[c2]として、メチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度20センチストークス)を使用した。
【0039】
200ccのフラスコ中で、ヘキサン40ccとAlMg
6(C
2H
5)
3(n−C
4H
9)
12とを、MgとAlの総量として37.8mmolになるように攪拌しながら混合し、更に25℃でメチルヒドロポリシロキサン2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40ccを攪拌しながら添加し、その後80℃に温度を上げて3時間、攪拌しながら反応させることにより、液体助触媒成分(b)を調製した。
【0040】
[高密度ポリエチレン樹脂(E−1)の調製]
上記により得られたメタロセン担持触媒(a)と液体助触媒成分(b)を、触媒移送ラインに連鎖移動剤として必要量の水素を供給することで水素と接触させて重合反応器に導入した。溶媒として精製したヘキサン、モノマーとしてエチレン及びブテン−1を用いた。反応温度を75℃としてエチレン、ブテン−1、水素の混合ガス(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が0.04%、水素とエチレン+水素のモル比が0.0053%である状態を維持できるように調節)を全圧が0.8MPaとなるように供給し、高密度ポリエチレン樹脂(E−1)を重合した。得られた高密度ポリエチレン樹脂(E−1)は密度が959kg/m
3、MFRが28g/10分、Mw/Mnが3.6であった。
【0041】
[高密度ポリエチレン樹脂(E−2)の調製]
上記により得られたメタロセン担持触媒(a)と液体助触媒成分(b)を、触媒移送ラインに連鎖移動剤として必要量の水素を供給することで水素と接触させて重合反応器に導入した。溶媒として精製したヘキサン、モノマーとしてエチレンを用いた。反応温度は75℃としてエチレン、水素の混合ガス(ガス組成は水素とエチレン+水素のモル比が0.0045%を維持できるように調節)を全圧が1.0MPaとなるように供給し高密度ポリエチレン樹脂(E−2)を重合した。得られた高密度ポリエチレン樹脂(E−2)は密度が966kg/m
3、MFRが12g/10分、Mw/Mnが3.7であった。
【0042】
[高密度ポリエチレン樹脂(E−3)の調整]
上記により得られたメタロセン担持触媒(a)と液体助触媒成分(b)とを、触媒移送ラインに連鎖移動剤として必要量の水素を供給することで水素と接触させて重合反応器に導入した。溶媒としてヘキサン、モノマーとしてエチレン及びブテン−1を用いた。反応温度は70℃としてエチレン、ブテン−1、水素の混合ガス(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が0.36%、水素とエチレン+水素のモル比が0.0025%である状態を維持できるように調節)を全圧が0.8MPaとなるように供給しエチレンとα−オレフィンとの共重合体である高密度ポリエチレン樹脂(E−3)を重合した。得られた(I)エチレンとα−オレフィンとの共重合体である高密度ポリエチレン樹脂(E−3)はMFRが2.5g/10分、密度が941kg/m
3、分子量分布(Mw/Mn)が4.3であった。
【0043】
[高密度ポリエチレン樹脂(E−4)の製法]
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロルシランを2mol/リットルのn−ヘプタン溶液として3リットル仕込み、攪拌しながら65℃に保った。組成式AlMg
6(C
2H
5)
3(n−C
4H
9)
6.4(On−C
4H
9)
5.6で示される有機マグネシウム成分のn−ヘプタン溶液7リットル(マグネシウム換算で5mol)を1時間かけてここに加え、更に65℃にて1時間攪拌して反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、n−ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体を分離・乾燥して分析した結果、固体1グラム当たり、7.45mmolのMgを含有していた。
【0044】
固体500gを含有する固体物質スラリーを、n−ブチルアルコール1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.93リットルとともに、攪拌下50℃で1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで1回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1mol/リットルのn−ヘキサン溶液1.3リットルを攪拌しながら加えて1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで2回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットル及び四塩化チタン1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルを加えて、2時間反応した。反応終了後上澄みを除去し、固体触媒を単離し、遊離のハロゲンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。この固体触媒は2.3重量%のチタンを有していた。
上記で得られたチーグラー触媒を用い、下記の要領で高密度ポリエチレン樹脂(E−4)を製造した。
【0045】
単段重合プロセスにおいて、容積230リットルの重合器で重合した。重合温度は86℃、重合圧力は0.98MPaであった。この重合器に上記で合成したチーグラー触媒を0.3g/hrの速度で、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hrの速度で、ヘキサンを60リットル/hrの速度で導入した。ここに、エチレン、水素、ブテン−1の混合ガス(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が2.20%、水素とエチレン+水素のモル比が48.2%を維持できるように調節)を導入して重合した。得られた高密度ポリエチレン樹脂(E−4)は密度が959kg/m
3、MFRが12.0g/10分、Mw/Mnが9.9であった。
【0046】
[高圧法低密度ポリエチレン樹脂(F−1)の調製]
オートクレーブリアクターの中で、重合平均温度265℃、重合圧力150MPa、開始剤に過酸化物を用い高圧法低密度ポリエチレン樹脂(F−1)を重合した。得られた高圧法低密度ポリエチレン樹脂(F−1)は密度が923kg/m
3、MFRが3.8g/10分であった。
【0047】
[実施例1]
高密度ポリエチレン(E−1)と高圧法低密度ポリエチレン(F−1)とを表1に記載の混合割合でメルトブレンドしたポリエチレン樹脂組成物をシリンダー温度200℃、ダイス温度210℃でTダイフラット製膜し、物性評価をおこなった。評価結果を表1に示す。
得られたフィルムを用いた2%引張弾性率、エレメンドルフ引裂強度、引張破断伸度、引張破断強度、切断性の評価を表1に示す。切断性は縦方向、横方向共に優れ、低分子量成分のブリードアウトの点でも優れていることがわかる。
【0048】
[実施例2]
高密度ポリエチレン(E−2)と高圧法低密度ポリエチレン(F−1)とを表1に記載の混合割合でメルトブレンドしたポリエチレン樹脂組成物を実施例1と同様な方法で評価した。結果を表1に示す。
【0049】
[比較例1]
高密度ポリエチレン(E−4)と高圧法低密度ポリエチレン(F−1)とを表1に記載の混合割合でメルトブレンドしたポリエチレン樹脂組成物を実施例1と同様な方法で評価した。結果を表1に示す。
低分子量成分のブリードアウト量が多く、2%引張弾性率の横方向と縦方向の比が1.5以上、エレメンドルフ引裂強度の横方法と縦方向の比が4以上であり、得られたフィルムの横方向の切断性に劣ることがわかる。
【0050】
[比較例2]
表1に記載の高密度ポリエチレン(E−3)を用いて実施例1と同様な方法で評価した。結果を表1に示す。
低分子量成分のブリードアウト量が優れるが、引張破断伸度が700%以上、引張破断強度が30MPa以上であり、フィルムの切断性に劣ることがわかる。
【0051】
[比較例3]
表1に記載の高圧法低密度ポリエチレン(F−1)を用いて実施例1と同様な方法で評価した。結果を表1に示す。
低分子量成分のブリードアウト量に優れるが、剛性がなく、フィルムの切断性に劣ることがわかる。
【0052】
【表1】