特許第5713438号(P5713438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713438
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/06 20060101AFI20150416BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20150416BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   C08L23/06
   C08F10/02
   C08J5/18
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-86394(P2011-86394)
(22)【出願日】2011年4月8日
(65)【公開番号】特開2012-219188(P2012-219188A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100112243
【弁理士】
【氏名又は名称】下村 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100088926
【弁理士】
【氏名又は名称】長沼 暉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100102897
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 幸弘
(74)【代理人】
【識別番号】100097870
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 斎子
(74)【代理人】
【識別番号】100140556
【弁理士】
【氏名又は名称】新村 守男
(74)【代理人】
【識別番号】100114719
【弁理士】
【氏名又は名称】金森 久司
(74)【代理人】
【識別番号】100143258
【弁理士】
【氏名又は名称】長瀬 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100124969
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100132492
【弁理士】
【氏名又は名称】弓削 麻理
(74)【代理人】
【識別番号】100163485
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100162411
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 慎一
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 義昭
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−064456(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/028553(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0285511(US,A1)
【文献】 特開2009−241487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
B32B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度ポリエチレン(E)と高圧法低密度ポリエチレン(F)とを含む組成物からなる樹脂層を少なくとも一層基材層に有する表面保護フィルムであって、該樹脂層が下記(A)〜(D)の要件:
(A)2%引張弾性率の横方向と縦方向との比(横方向/縦方向)が0.8以上1.5以下
(B)エルメンドルフ引裂強度の横方向と縦方向との比(横方向/縦方向)が1以上4以下
(C)縦方向と横方向の引張破断伸度がそれぞれ100%以上700%以下
(D)縦方向と横方向の引張破断強度がそれぞれ5MPa以上30MPa以下
を満た
該組成物が、30質量部以上65質量部以下の上記高密度ポリエチレン(E)と70質量部以下35質量部以上の上記高圧法低密度ポリエチレン(F)を含み(該高密度ポリエチレン(E)と該高圧法低密度ポリエチレン(F)との合計は、100質量部)、かつ該組成物の密度が935kg/m以上であり、
該高密度ポリエチレン(E)が、950kg/m以上975kg/m以下の密度、0.1g/10min以上40g/10min以下のメルトマスフローレイト(温度=190℃、荷重=2.16kg)、及び、2以上8以下のMw/Mn(数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布の指標)を有し、かつ、
該高圧法低密度ポリエチレン(F)が、915kg/m以上930kg/m以下の密度、及び1g/10min以上10g/10min以下のメルトマスフローレイト(温度=190℃、荷重=2.16kg)を有する、上記表面保護フィルム。
【請求項2】
上記高密度ポリエチレン(E)が、シングルサイト触媒を用いる重合法で得られる請求項1に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横方向にも優れた切断性を有する、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材用、自動車部品用、特には液晶部材用、電気電子部品用などに好適に用いられる表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に表面保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフテタレート等の熱可塑性樹脂単体あるいはこれらを混合してなる樹脂組成物からなる1層または多層の基材層と粘着層とからなり、加工時、輸送時、保管時に外部から受ける傷や汚れ発生を防止することを目的として、金属板、樹脂板、木製化粧板、銘板、液晶部材、電気電子部品、建築資材、自動車部品などに貼って使用されている。
近年、表面保護フィルムは液晶部材を中心に薄肉化が進み、該部材の支持体としての役割も求められ、剛性が必要となってきている。また、該部材は表面保護フィルムを貼合したまま、切断されることがあり、表面保護フィルムの切断性が劣るとフィルムが伸び、該部材から表面保護フィルムが剥離する、毛羽立ちが発生する等の問題が発生するので、これを防止するために、基材層がポリエチレンからなる場合には、高密度ポリエチレンを使用することが知られている。例えば特許文献1には、高密度ポリエチレンを単体で基材層に使用する方法が、特許文献2には高密度ポリエチレンを高圧法低密度ポリエチレンと混合して使用する方法がそれぞれ開示されている。
【0003】
しかしながら、高密度ポリエチレンを使用することで低密度ポリエチレンに比較して、表面保護フィルムの剛性、及びフィルムの引取り方向に対して平行方向である縦方向の切断性を改良することが可能となるものの、垂直方向である横方向においては、必ずしも切断性に対する要求を満足するに至っていないというのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−170056号公報
【特許文献2】特開2009−241487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであって、フィルムの剛性に優れるとともに、横方向においても、切断性に優れる表面保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記のような問題点を解決することができる、切断性に優れる表面保護フィルムを開発するために鋭意研究を重ねた結果、特定のポリエチレン樹脂層を少なくとも一層有する基材層を用いることで、上記の問題点を解決することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
(1)高密度ポリエチレン(E)と高圧法低密度ポリエチレン(F)とを含む組成物からなる樹脂層を少なくとも一層基材層に有する表面保護フィルムであって、該樹脂層が下記(A)〜(D)の要件:
(A) 2%引張弾性率の横方向と縦方向との比(横方向/縦方向)が0.8以上1.5以下
(B) エルメンドルフ引裂強度引裂強度の横方向と縦方向との比(横方向/縦方向)が1以上4以下
(C) 縦方向と横方向の引張破断伸度がそれぞれ100%以上700%以下
(D) 縦方向と横方向の引張破断強度がそれぞれ5MPa以上30MPa以下
を満たすことを特徴とする、上記表面保護フィルム。
なお、ここで「縦方向」とは、フィルムの引取り方向に平行な方向のことをいい、「横方向」とは、フィルム面内であって、引き取り方向に垂直な方向のことをいう。
(2)上記組成物が、30質量部以上65質量部以下の上記高密度ポリエチレン(E)と70質量部以下35質量部以上の上記高圧法低密度ポリエチレン(F)を含み(該高密度ポリエチレン(E)と該高圧法低密度ポリエチレン(F)との合計は、100質量部)、かつ該組成物の密度が935kg/m以上であり、
該高密度ポリエチレン(E)が、950kg/m以上975kg/m以下の密度、0.1g/10min以上40g/10min以下のメルトマスフローレイト(温度=190℃、荷重=2.16kg)、及び、2以上8以下のMw/Mn(数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布の指標)を有し、かつ、
該高圧法低密度ポリエチレン(F)が、915kg/m以上930kg/m以下の密度、及び1g/10min以上10g/10min以下のメルトマスフローレイト(温度=190℃、荷重=2.16kg)を有する、請求項1に記載の表面保護フィルム。
(3)上記高密度ポリエチレン(E)が、シングルサイト触媒を用いる重合法で得られる上記(1)又は(2)に記載の表面保護フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、切断時の表面保護フィルムの剥離、毛羽立ちを防止することができる、切断性に優れた表面保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、高密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンとを含む組成物からなる樹脂層を少なくとも一層基材層に有する表面保護フィルムであって、該樹脂層の2%引張弾性率の横方向と縦方向との比(横方向/縦方向)が0.8以上1.5以下、エレメンドルフ引裂強度の横方向と縦方向との比(横方向/縦方向)が1以上4以下、縦方向と横方向の引張破断伸度がそれぞれ100%以上700%以下、縦方向と横方向の引張破断強度がそれぞれ5MPa以上30MPa以下である表面保護フィルムである。
【0010】
本発明の表面保護フィルムの基材層中に少なくとも一層として用いられるポリエチレン樹脂層の2%引張弾性率の横方向と縦方向との比(横方向/縦方向)が0.8以上1.5以下、エルメンドルフ引裂強度の横方向と縦方向との比(横方向/縦方向)が1以上4以下であると、樹脂層の異方性が小さくなり、縦方向のみならず横方向の切断性が良好になり、切断時のフィルム伸びによるフィルムの剥離、毛羽立ちを抑制できる。
また、縦方向と横方向の引張破断伸度がそれぞれ100%以上700%以下、縦方向と横方向の引張破断強度がそれぞれ5MPa以上30MPa以下であることが必要である。引張破断伸度、引張破断強度がそれぞれ100%以上、5MPa以上であると、保護する部材から表面保護フィルムを剥がす時に、フィルムが切れることが抑制され、作業性が良好である。一方、張破断伸度、引張破断強度がそれぞれ700%以下、30MPa以下であると切断が容易である。
上記、フィルム特性は、加工条件を適切に設定することでも発現は可能であるが、以下の特定の樹脂組成物を用いることで容易に発現することができる。
【0011】
本発明の表面保護フィルムの基材層に少なくとも一層として用いられる樹脂層は、高密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンの組成物から構成される。高密度ポリエチレン単体では、フィルム強度が強くなり良好な切断性が得られず、低密度ポリエチレン単体では、剛性及び切断性が不足する。
【0012】
本発明に用いられる高密度ポリエチレン(E)は、剛性と切断性の観点から、密度は950kg/m以上975kg/m以下が好ましく、955kg/m以上970kg/m以下であることがより好ましい。またフィルム加工時の薄膜成形性と成形安定性の観点から、メルトマスフローレイトは0.1g/10min以上40g/10min以下が好ましく、0.5g/10min以上20g/10min以下であることがより好ましい。さらに、成形時の押出し負荷、発煙量の抑制や低分子量成分のブリードアウトの観点からMw/Mn(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布の指標)は2以上8以下が好ましく、3以上6以下であることがより好ましい。
【0013】
本発明に用いられる高密度ポリエチレン(E)は、エチレン単独から得られる重合体であってもエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとから得られる共重合体であってもよい。エチレンと共重合させる炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、6−メチル−ヘプテン−1などが挙げられるが、これらには限定されない。
また、これらの重合体、共重合体を2種類以上、任意の比率でドライブレンド、あるいはメルトブレンドしたものであってもよい。
【0014】
本発明に用いられる高密度ポリエチレン(E)は、シングルサイト触媒、特に、担持型幾何拘束型シングルサイト触媒を用いたポリエチレンの重合法で得られる樹脂であることが好ましい。この樹脂を用いると低密度ポリエチレンと相溶性が良好であり、異方性が少なく十分な切断性が得られる。重合法は公知の各種方法を使用でき、例えば、不活性ガス中での流動床式気相重合、或いは攪拌式気相重合、不活性溶媒中でのスラリー重合、モノマーを溶媒とするバルク重合などが挙げられるが、不活性溶媒中でのスラリー重合が好ましい。上記の重合法において好ましく用いられる担持型幾何拘束型シングルサイト触媒(以下メタロセン触媒と略す)とは、(ア)担体物質、(イ)有機アルミニウム、(ウ)環状η性結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物、及び(エ)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体が形成可能な活性化剤から調製される。該シングルサイト触媒としては、(ウ)の環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物中の遷移金属原子としてチタニウムを用いる公知の触媒が挙げられる。具体的には、例えば特開平11−166009号公報等に記載された触媒が使用できる。
【0015】
本発明に用いられる高圧法低密度ポリエチレン(F)は、成形加工安定性の観点から密度は、915kg/m以上930kg/m以下が好ましく、917kg/m以上925kg/m以下であることがより好ましい。また、薄膜成形性と成形加工安定性の観点からメルトマスフローレイトは1g/10min以上10.0g/10min以下が好ましく、2g/10min以上7.0g/10min以下であることがより好ましい。
【0016】
本発明に用いられる高圧法低密度ポリエチレン(F)は、例えば、1000〜3500気圧の高圧下でパーオキサイドなどの遊離基発生剤の存在下で得られるエチレン系ポリマーであり、その製造方式の例としてはオートクレーブ方式、チューブラー方式が挙げられ、また本発明の目的を損なわない範囲であれば2種類以上を任意の比率でドライブレンド、又はメルトブレンドしたものを使用することができる。
【0017】
本発明の表面保護フィルムの基材層を構成する少なくとも一層として用いられるポリエチレン樹脂層は、高密度ポリエチレン(E)と高圧法低密度ポリエチレン(F)とを含む組成物からなる。それぞれの配合量は切断性と成形安定性の観点から高密度ポリエチレン(E)が30質量部以上65質量部以下であることが好ましく、高圧法低密度ポリエチレン(F)が70質量部以下35質量部以上であることが好ましく、50質量部以下40質量部以上であることがさらに好ましい(該高密度ポリエチレン(E)と該高圧法低密度ポリエチレン(F)との合計は、100質量部)。また、剛性や切断性の観点から、組成物の密度は935kg/m以上が好ましく、940kg/m以上であることがより好ましい。
【0018】
なお、高密度ポリエチレン(E)と高圧法低密度ポリエチレン(F)との混合方法には特に限定はなく、ドライブレンド、あるいはメルトブレンドのどちらであってもよい。
【0019】
本発明の表面保護フィルムを構成する少なくとも一層として用いられるポリエチレン樹脂層に使用されるポリエチレン樹脂組成物には、充填剤、スリップ剤、酸化防止剤等の添加剤は含有しても含有しなくてもよいが、含有しないことがより好ましい。これらを含有しないことにより、添加剤による被保護物の汚染を防止することができる。
【0020】
ポリエチレン樹脂フィルムとしての成形加工は、例えば、インフレーション製膜法、Tダイフラットフィルム製膜法等で成形することができるが、フィルムの偏肉精度の観点からTダイフラットフィルム製膜法が好ましい。
【0021】
本発明の表面保護フィルムは、インフレーション製膜、Tダイフラットフィルム製膜でポリエチレン樹脂層を基材層として粘着層等と積層させて得る共押出法、あるいはポリエチレン樹脂フィルムをインフレーション製膜、Tダイ製膜で得た後に粘着剤等を塗布して得ることもできるが、特に限定されるものではない。
本発明の表面保護フィルムに好ましく用いられる粘着層は、エチレン・酢酸ビニル共重合ポリマー、直鎖状低密度ポリエチレンなどの公知の粘着性樹脂を単独であるいは高圧法低密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、合成ゴム、天然ゴムなどのエラストマー、テルペン樹脂、石油樹脂などの粘着助剤などを混合してもよく、共押出法によるインフレーション製膜、Tダイフラットフィルム製膜で基材層と積層することができる。あるいは天然ゴム、アクリル系、ポリイソブチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合ポリマー、スチレン・ブチレン・スチレン共重合ポリマー、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合ポリマー等の粘着剤を基材層に塗布して粘着層とすることもできる。
【0022】
本発明の表面保護フィルムにおける基材層は単層であっても多層であってもよいが、多層である場合、該ポリエチレン樹脂層の厚み比が基材層全体の厚みの50%以上あることが好ましい。
【実施例】
【0023】
本発明について、以下実施例を用いて具体的に説明する。尚、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。
実施例および比較例における物性測定方法、評価方法は以下の通りである。
【0024】
(1)フィルムの作製
高密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンの組成物を、(株)プラスチック工学研究所社製GT−65−A(1軸押出機、スクリュー径65mm、L/D=28)を用い、200℃にて、押出し量30kg/時間で押出して造粒した(以下、造粒物を「ペレット」と表記する)。ペレットを、山口製作所製Tダイフラットフィルム製膜機(スクリュー径30mm、ダイス300mm幅)を用い、シリンダー温度200℃、ダイス温度210℃、引き取り速度15m/分で製膜し、厚さ35ミクロンメートルのポリエチレンフィルムを得た。
【0025】
(2)密度測定
JIS K7112:1999に準拠し、測定した。
【0026】
(3)メルトマスフローレイト(MFR)測定
JIS K7210:1999 コードD(温度=190℃、荷重=2.16kg)に準拠し、測定した。
【0027】
(4)Mw/Mn(分子量分布)測定
GPCから求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を分子量分布の指標とした。GPC測定は、ウォーターズ社製GPCV2000を用い、カラムは昭和電工(株)製UT−807(1本)と東ソー(株)製GMHHR−H(S)HT(2本)を直列に接続して使用し、移動相:トリクロロベンゼン(TCB)、カラム温度:140℃、流量:1.0ml/分、試料濃度:20mg/15ml(TCB)、試料溶解温度:140℃、試料溶解時間:2時間の条件で行った。分子量の校正は、Mwが1050〜206万の範囲の東ソー(株)製標準ポリスチレンの12点で行い、それぞれの標準ポリスチレンのMwに係数0.43を乗じてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量のプロットから一次校正直線を作成し、分子量を決定した。
【0028】
(5)2%引張弾性率
上記Tダイ成形加工により得られたポリエチレンフィルムを用いて、オリエンテック(株)製引張試験機RTC−1310AにてJIS K 7127:1989に準拠した引張割線弾性率(規定ひずみ2%)測定を行ない2%引張弾性率とした。縦、横両方向について、測定を行った。縦方向はフィルムの引取り方向に対して平行方向とし、横方向は面内でそれに垂直な方向とした。
【0029】
(6)エルメンドルフ引裂強度
上記Tダイ成形加工により得られたポリエチレンフィルムを用いて、(株)東洋精機製作所製エルメンドルフ引裂強度にてJIS K7128−2:1998に準拠した引裂強さを行ないエルメンドルフ引裂強度とした。上記(5)同様に、縦、横両方向について、測定を行った。縦方向はフィルムの引取り方向に対して平行方向とし、横方向は面内でそれに垂直な方向とした。
【0030】
(7)引張引張破断伸度
上記Tダイ成形加工により得られたポリエチレンフィルムを用いて、オリエンテック(株)製引張試験機RTC−1310AにてJIS K 7127:1999に準拠して、試験片タイプ5、試験速度500mm/min.で引張破壊伸びの測定を行ない引張引張破断伸度とした。上記(5)同様に、縦、横両方向について、測定を行った。縦方向はフィルムの引取り方向に対して平行方向とし、横方向は面内でそれに垂直な方向とした。
【0031】
(8)引張引張破断強度
上記Tダイ成形加工により得られたポリエチレンフィルムを用いて、オリエンテック(株)製引張試験機RTC−1310AにてJIS K 7127:1999に準拠して、試験片タイプ5、試験速度500mm/min.で引張破壊強さの測定を行ない引張引張破断強度とした。上記(5)同様に、縦、横両方向について、測定を行った。縦方向はフィルムの引取り方向に対して平行方向とし、横方向は面内でそれに垂直な方向とした。
【0032】
(9)切断性
上記Tダイ成形加工により得られたポリエチレンフィルムを両面テープ(積水化学工業(株)製、幅50mm)を用いて、アクリル板に貼着した。貼着部分をギロチンカッターで切断し、ポリエチレンフィルムの切断端面を目視で観察し、以下の基準によって切断性を評価した。縦、横両方向について、評価を行った。縦方向はフィルムの引取り方向に対して平行方向とし、横方向は面内でそれに垂直な方向とした。
○:フィルム切断端面のフィルム伸びが1mm以下。
△:フィルム切断端面のフィルム伸びが1mm以上2mm以下。
×:フィルム切断端面のフィルム3mm超。
【0033】
(10)低分子量成分のブリードアウト(低粉性)
上記Tダイ成形加工により得られたポリエチレンフィルムを50℃で24時間加熱し、23℃で24時間冷却した後に固定ロールに貼りつけた黒色のフェルト布に基材層面を接触させながら20m長走行させ、基材層面の粉をフェルト布上に集積させた。集積した粉の量や集積状態を目視観察し、粉の発生がない、またはわずかに発生しているが集積が部分的である場合には低粉性に優れると評価した。一方、粉が多く発生しており、フィルムとフェルト布が接触し始める部分に帯状に連続的に集積している場合には低粉性に劣ると評価した。粉の量や集積状態が両者の中間であれば、低粉性にやや優れると評価した。
【0034】
[メタロセン担持触媒(a)の調製]
シリカP−10[富士シリシア社(日本国)製]を、窒素雰囲気下、400℃で5時間焼成し、脱水した。脱水シリカの表面水酸基の量は、1.3mmol/g−SiOであった。容量1.8リットルのオートクレーブの中で、この脱水シリカ40gをヘキサン800cc中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを50℃に保ちながら攪拌し、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/リットル)を60cc加え、その後さらに2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させ、トリエチルアルミニウム処理されたシリカと上澄み液とを含み、該トリエチルアルミニウム処理されたシリカの全ての表面水酸基がトリエチルアルミニウムによりキャッピングされている成分[d]を得た。その後、得られた反応混合物中の上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、上澄み液中の未反応のトリエチルアルミニウムを除去した。その後、ヘキサンを適量加え、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのヘキサンスラリー800ccを得た。
【0035】
一方、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」という)200mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1000ccに溶解し、予めトリエチルアルミニウムとジブチルマグネシウムより合成した組成式AlMg(C(n−C12の1mol/リットルヘキサン溶液20ccをここに加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1mol/リットルに調整し、成分[e]を得た。
【0036】
また、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)5.7gをトルエン50ccに添加して溶解し、ボレートの100mmol/リットルトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの1mol/リットルヘキサン溶液5ccを室温で加え、さらにヘキサンを加えてトルエン溶液中のボレート濃度が70mmol/リットルとなるように調整した。その後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合物を得た。
【0037】
ボレートを含むこの反応混合物46ccを、上記の成分[d]のスラリー800ccに15〜20℃で攪拌しながら加え、ボレートを物理吸着によりシリカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。このスラリーにさらに上記の成分[e]のうち32ccを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応させた。こうしてシリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成されているメタロセン担持触媒(a)を得た。
【0038】
[液体助触媒成分(b)の調製]
有機マグネシウム化合物[c1]として、AlMg(C(n−C12で示される有機マグネシウム化合物を使用した。化合物[c2]として、メチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度20センチストークス)を使用した。
【0039】
200ccのフラスコ中で、ヘキサン40ccとAlMg(C(n−C12とを、MgとAlの総量として37.8mmolになるように攪拌しながら混合し、更に25℃でメチルヒドロポリシロキサン2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40ccを攪拌しながら添加し、その後80℃に温度を上げて3時間、攪拌しながら反応させることにより、液体助触媒成分(b)を調製した。
【0040】
[高密度ポリエチレン樹脂(E−1)の調製]
上記により得られたメタロセン担持触媒(a)と液体助触媒成分(b)を、触媒移送ラインに連鎖移動剤として必要量の水素を供給することで水素と接触させて重合反応器に導入した。溶媒として精製したヘキサン、モノマーとしてエチレン及びブテン−1を用いた。反応温度を75℃としてエチレン、ブテン−1、水素の混合ガス(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が0.04%、水素とエチレン+水素のモル比が0.0053%である状態を維持できるように調節)を全圧が0.8MPaとなるように供給し、高密度ポリエチレン樹脂(E−1)を重合した。得られた高密度ポリエチレン樹脂(E−1)は密度が959kg/m、MFRが28g/10分、Mw/Mnが3.6であった。
【0041】
[高密度ポリエチレン樹脂(E−2)の調製]
上記により得られたメタロセン担持触媒(a)と液体助触媒成分(b)を、触媒移送ラインに連鎖移動剤として必要量の水素を供給することで水素と接触させて重合反応器に導入した。溶媒として精製したヘキサン、モノマーとしてエチレンを用いた。反応温度は75℃としてエチレン、水素の混合ガス(ガス組成は水素とエチレン+水素のモル比が0.0045%を維持できるように調節)を全圧が1.0MPaとなるように供給し高密度ポリエチレン樹脂(E−2)を重合した。得られた高密度ポリエチレン樹脂(E−2)は密度が966kg/m、MFRが12g/10分、Mw/Mnが3.7であった。
【0042】
[高密度ポリエチレン樹脂(E−3)の調整]
上記により得られたメタロセン担持触媒(a)と液体助触媒成分(b)とを、触媒移送ラインに連鎖移動剤として必要量の水素を供給することで水素と接触させて重合反応器に導入した。溶媒としてヘキサン、モノマーとしてエチレン及びブテン−1を用いた。反応温度は70℃としてエチレン、ブテン−1、水素の混合ガス(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が0.36%、水素とエチレン+水素のモル比が0.0025%である状態を維持できるように調節)を全圧が0.8MPaとなるように供給しエチレンとα−オレフィンとの共重合体である高密度ポリエチレン樹脂(E−3)を重合した。得られた(I)エチレンとα−オレフィンとの共重合体である高密度ポリエチレン樹脂(E−3)はMFRが2.5g/10分、密度が941kg/m、分子量分布(Mw/Mn)が4.3であった。
【0043】
[高密度ポリエチレン樹脂(E−4)の製法]
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロルシランを2mol/リットルのn−ヘプタン溶液として3リットル仕込み、攪拌しながら65℃に保った。組成式AlMg(C(n−C6.4(On−C5.6で示される有機マグネシウム成分のn−ヘプタン溶液7リットル(マグネシウム換算で5mol)を1時間かけてここに加え、更に65℃にて1時間攪拌して反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、n−ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体を分離・乾燥して分析した結果、固体1グラム当たり、7.45mmolのMgを含有していた。
【0044】
固体500gを含有する固体物質スラリーを、n−ブチルアルコール1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.93リットルとともに、攪拌下50℃で1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで1回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1mol/リットルのn−ヘキサン溶液1.3リットルを攪拌しながら加えて1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで2回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットル及び四塩化チタン1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルを加えて、2時間反応した。反応終了後上澄みを除去し、固体触媒を単離し、遊離のハロゲンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。この固体触媒は2.3重量%のチタンを有していた。
上記で得られたチーグラー触媒を用い、下記の要領で高密度ポリエチレン樹脂(E−4)を製造した。
【0045】
単段重合プロセスにおいて、容積230リットルの重合器で重合した。重合温度は86℃、重合圧力は0.98MPaであった。この重合器に上記で合成したチーグラー触媒を0.3g/hrの速度で、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hrの速度で、ヘキサンを60リットル/hrの速度で導入した。ここに、エチレン、水素、ブテン−1の混合ガス(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が2.20%、水素とエチレン+水素のモル比が48.2%を維持できるように調節)を導入して重合した。得られた高密度ポリエチレン樹脂(E−4)は密度が959kg/m、MFRが12.0g/10分、Mw/Mnが9.9であった。
【0046】
[高圧法低密度ポリエチレン樹脂(F−1)の調製]
オートクレーブリアクターの中で、重合平均温度265℃、重合圧力150MPa、開始剤に過酸化物を用い高圧法低密度ポリエチレン樹脂(F−1)を重合した。得られた高圧法低密度ポリエチレン樹脂(F−1)は密度が923kg/m、MFRが3.8g/10分であった。
【0047】
[実施例1]
高密度ポリエチレン(E−1)と高圧法低密度ポリエチレン(F−1)とを表1に記載の混合割合でメルトブレンドしたポリエチレン樹脂組成物をシリンダー温度200℃、ダイス温度210℃でTダイフラット製膜し、物性評価をおこなった。評価結果を表1に示す。
得られたフィルムを用いた2%引張弾性率、エレメンドルフ引裂強度、引張破断伸度、引張破断強度、切断性の評価を表1に示す。切断性は縦方向、横方向共に優れ、低分子量成分のブリードアウトの点でも優れていることがわかる。
【0048】
[実施例2]
高密度ポリエチレン(E−2)と高圧法低密度ポリエチレン(F−1)とを表1に記載の混合割合でメルトブレンドしたポリエチレン樹脂組成物を実施例1と同様な方法で評価した。結果を表1に示す。
【0049】
[比較例1]
高密度ポリエチレン(E−4)と高圧法低密度ポリエチレン(F−1)とを表1に記載の混合割合でメルトブレンドしたポリエチレン樹脂組成物を実施例1と同様な方法で評価した。結果を表1に示す。
低分子量成分のブリードアウト量が多く、2%引張弾性率の横方向と縦方向の比が1.5以上、エレメンドルフ引裂強度の横方法と縦方向の比が4以上であり、得られたフィルムの横方向の切断性に劣ることがわかる。
【0050】
[比較例2]
表1に記載の高密度ポリエチレン(E−3)を用いて実施例1と同様な方法で評価した。結果を表1に示す。
低分子量成分のブリードアウト量が優れるが、引張破断伸度が700%以上、引張破断強度が30MPa以上であり、フィルムの切断性に劣ることがわかる。
【0051】
[比較例3]
表1に記載の高圧法低密度ポリエチレン(F−1)を用いて実施例1と同様な方法で評価した。結果を表1に示す。
低分子量成分のブリードアウト量に優れるが、剛性がなく、フィルムの切断性に劣ることがわかる。
【0052】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の表面保護フィルムは、金属板用、樹脂板用、木製化粧板用、銘板用、建築資材用、自動車部品用、特には液晶部材用、電気電子部品用等を保護する用途に好適に用いられるので、高い産業上の利用可能性を有する。