【実施例1】
【0016】
図1に示す本発明の実施形態における望ましい電力変換装置1は、外部交流電源10乃至12を整流する整流器3と、例えば電解コンデンサからなる直流中間回路5と、外部の交流電動機9を駆動するためのインバータ回路4と、外部の蓄電装置8を充放電するための昇降圧DC/DCコンバータ回路2で構成される。
【0017】
図4は、
図1に示す昇降圧DC/DCコンバータ回路2の具体的構成例である。同図中41〜44はそれぞれスイッチング素子、45〜48はそれぞれ還流ダイオード、49はDCリアクトル、401はコンデンサである。
【0018】
図5は、
図1に示す整流器3の具体的構成例である。同図中51〜56はそれぞれ整流ダイオードである。
【0019】
図6は、
図1に示すインバータ回路4の具体的構成例である。同図中61〜66はそれぞれスイッチング素子、67〜69と601〜603はそれぞれ還流ダイオードである。
【0020】
図1に示す本発明の実施形態における望ましい電力変換装置1の、通常の運転形態は以下に示す通りである。
【0021】
図1に示す交流電動機9を運転する場合、同図外部蓄電装置8→二極電磁開閉器7→双方向DC/DCコンバータ回路2→インバータ回路4→交流電動機9の経由で電力を供給する。別の手段では、同図外部交流電源10(例えば三相AC200V)→外部電源用コネクタ13→三極電磁開閉器6→整流器3→直流中間回路5→インバータ回路4→交流電動機9の経由で電力を供給する。
【0022】
図1に示す外部蓄電装置8を充電する場合、同図外部交流電源10(例えば三相AC200V)→外部電源用コネクタ13→三極電磁開閉器6→整流器3→直流中間回路5→双方向電力変換器2→二極電磁開閉器7→外部蓄電装置8の経由で充電用電力を供給する。別の手段では、上記の同図外部交流電源10(例えば三相AC200V)→外部電源用コネクタ13の替わりに、外部交流電源11(例えば単相AC100V)→外部電源用コネクタ14、または外部交流電源12(例えば単相AC60V)→外部電源用コネクタ15を使用することも可能である。同図中外部電源用コネクタ13乃至15は、図示しない手段によってそのいずれか1つのみ接続が可能となる様に構成される。
【0023】
図4に示す昇降圧DC/DCコンバータ回路2の具体的構成例と、
図6に示すインバータ回路の具体的構成例の一般的な動作については、それぞれ特許文献3と非特許文献1に記載のとおり、当業者に広く周知されている。また、
図5に示す整流器の動作についても同様に広く周知されているので、ここでは詳述しない。
【0024】
図2は、電源投入時の、
図1に示す直流中間回路5に印加される電圧の時間的変化を表わす代表的な例である。同図中T
0は電源を投入した時刻、T
1は、どの電源が投入されたかを検知しようとする時刻であって、通常は電源投入に伴う過渡現象が終了した頃になされる。図中の破線は、例えば電源が三相AC200Vの時、実線は単相AC100Vの場合を示し、電源が投入され、
図1に示すインバータ回路4と双方向DC/DCコンバータが起動していない時には電源の電圧の波高値近くまで上昇する。時刻T
1において検知された電圧の大きさで、電源が三相AC200Vか、または単相AC100Vかを判断するものであって、その検知された電圧が約DC280Vであれば電源が三相AC200V、約DC140Vであれば単相AC100Vとみなすものである。
【0025】
図9は、直流中間電圧を検知して、どの外部電源が接続されているかを識別する手段の例である。同図中で91乃至96は分圧抵抗、97乃至99は比較器、901は基準電源である。それぞれの分圧抵抗の比率と基準電源の電圧は、例えば、
図1に示す直流中間電圧が、250V、125V、75Vに対応するように定められ、
図9に示す比較器99の出力109は、
図1に示す直流中間電圧が75V以上で“L”から“H”に変化し、同様に125V以上で108、250V以上で107がそれぞれ“L”から“H”に変化する。表1はこれらの関係を一覧表にしたもので、例えば
図9の107、108、109がそれぞれ“L”、“H”、“H”であれば、
図1に示す外部電源電圧がAC100Vと識別される。
【表1】
【0026】
図8は、従来技術の、電源断時に
図1に示す直流中間回路5に蓄えられた電荷を強制的に放電しない場合の波形例であって、電源断後も長時間その電荷を保つ。例えば
図8の時刻T
3の電源断時直前に三相AC200Vが接続されていて、そのすぐ後の時刻T
4に単相AC100Vを接続した場合には、同図の破線で示すように前記直流中間回路5の電圧は、約DC270Vを保っているので、接続された電源が単相100Vとは識別出来ず、三相AC200Vと誤識別する。
【0027】
図3は、電源断時に
図1に示す直流中間回路5に蓄えられた電荷を強制的に放電する場合の波形例であって、時刻T
5に電源断後直ちにその電圧は零近辺に引き下げられる。従って、次に時刻T
6に電源再投入された場合を考えると、
図2に示すように、前記直流中間回路5の電圧がゼロの状態から電圧が上昇するので、同図中時刻T
1でその電圧を検知する場合でも誤検知しない。
【0028】
本発明の要点は、電源断時に
図1に示す直流中間回路5に蓄えられた電荷を強制的に放電する手段として、同図に示す双方向DC/DCコンバータ2の制御によって、同図中の蓄電装置8にその電気エネルギーを移動させるものである。
【0029】
図7は、
図1に示す直流中間回路5に蓄えられた電荷を強制的に放電するための望ましい制御方法と、その直流中間回路5の電圧波形、および
図4に示すDCリアクトル49に流れる電流波形と直流中間回路5を構成するコンデンサに流れる電流波形の例を示すものである。
【0030】
図7において、(1)〜(4)は、それぞれ
図4に示すスイッチング素子41〜44のゲート電圧波形に対応する。同図中、各ゲート波形が“H”レベル時に対応するスイッチング素子が導通し、“L”レベル時に非導通となる。すなわち、
図1に示す直流中間回路5に蓄えられた電荷を強制的に同図に示す蓄電装置8に移動させるには、
図4に示すスイッチング素子41と44を同時にオンオフすることでその目的を達成する。その最も簡単なオンオフの方法は、そのオン期間とオフ期間をそれぞれ一定の値にすることである。
【0031】
図7に示す(5)は
図4に示すDCリアクトル49に流れる電流波形、(6)は
図1に示す直流中間回路5を構成するコンデンサに流れる電流波形、(7)は
図1に示す直流中間回路5の電圧波形の具体例である。この例では
図4に示すスイッチング素子41と44のオン期間とオフ期間は、それぞれ10μsと90μsとした。
図7の時刻T
10で
図4に示すスイッチング素子41と44が導通すると、
図1に示す直流中間回路5を構成するコンデンサの正極→母線101→
図4に示すスイッチング素子41→同
図DCリアクトル49→スイッチング素子44→直流母線102→
図1に示す直流中間回路5を構成するコンデンサの負極に至る閉回路で電流が増加し、この間前記コンデンサに蓄えられた電気エネルギーが前記DCリアクトル49に移動する。
図7の時刻T
11で
図4に示すスイッチング素子41と44をオフすると、同
図DCリアクトル49に流れていた電流は、同図還流ダイオード47→母線103→コンデンサ401の正極と
図1に示す蓄電装置8の正極に分流→それらの負極→母線104→還流ダイオード46→DCリアクトル49に至る閉回路で、コンデンサ401等の電圧に逆らう方向なので電流は次第に減少し、それらの電流がゼロになるまで継続し、DCリアクトル49に一時的に蓄えられた電気エネルギーは前記コンデンサ401と蓄電装置8に移される。以下、同様に時刻T
12→T
13→T
14→T
15・・・に示すように推移し、前記直流中間回路の電荷がほぼゼロになるまで続き、
図3に示すように短時間で放電を終了し、その目的を達するものである。
【0032】
以上説明した本実施形態では、特別なハードウェアを追加することなく簡単な制御で、運転開始時に、どの電源が接続されているかを確実に検知できる効果を有する電力変換装置の電源識別方法を提供できるものである。
【0033】
図1に示す外部交流電源11と12は、交流電源に限定されることなく、例えば外部バッテリ電源のような外部直流電源でも同様な効果を有する。
【0034】
図1に示す直流中間回路は、コンデンサのみで構成されているが、
図10に示すようにDCリアクトルとコンデンサで構成されたものでも同様な効果を有する。