(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713468
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】PET/MRI一体型装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20150416BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
G01T1/161 A
G01T1/161 C
A61B5/05 350
A61B5/05 390
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-540549(P2012-540549)
(86)(22)【出願日】2010年10月25日
(86)【国際出願番号】JP2010068810
(87)【国際公開番号】WO2012056504
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2013年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(72)【発明者】
【氏名】山谷 泰賀
(72)【発明者】
【氏名】錦戸 文彦
(72)【発明者】
【氏名】小畠 隆行
(72)【発明者】
【氏名】菅 幹生
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 一幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 光男
(72)【発明者】
【氏名】田中 栄一
【審査官】
南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−536600(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/079251(WO,A1)
【文献】
特開2003−038459(JP,A)
【文献】
特表2010−515517(JP,A)
【文献】
特表2006−500082(JP,A)
【文献】
特開2010−160045(JP,A)
【文献】
特表2010−523191(JP,A)
【文献】
特表2010−512907(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/095063(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0265887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−7/12
A61B 5/05−5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI装置の測定ポートに、MRI用RFコイルと複数のPET検出器を備えたPET/MRI一体型装置において、
前記MRI用RFコイルが送信用コイルエレメントと受信用コイルエレメントに分離されると共に、
前記PET検出器が互いに間隔を空けて配設されており、前記MRI用RFコイルの送信用コイルエレメントのみが、隣り合う該PET検出器の間に配設されていることを特徴とするPET/MRI一体型装置。
【請求項2】
前記PET検出器が前記測定ポートの周方向に間隔を空けて配設され、前記送信用コイルエレメントのみが前記測定ポートの軸方向に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項3】
前記PET検出器をリング状に配設した検出器リングの複数が互いに前記測定ポートの軸方向に間隔を空けて配設され、前記送信用コイルエレメントのみが、隣り合う該検出器リング間に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項4】
前記MRI用RFコイルの受信用コイルエレメントの測定ポート内側先端が、前記PET検出器の測定ポート内側先端よりも測定ポート内側に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項5】
前記PET検出器に設けられた電波シールドの測定ポート内側先端より、前記送信用コイルエレメントの測定ポート内側先端が測定ポート内側に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項6】
前記PET検出器が、放射線を感知して電気信号に変える半導体検出器で構成されていることを特徴とする請求項5に記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項7】
前記PET検出器が、放射線を感知して発光するシンチレータと、該シンチレータの発光を感知して電気信号に変える受光素子との組合せで構成されていて、該受光素子より前記シンチレータが測定ポート内側に位置することを特徴とする請求項5に記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項8】
前記PET検出器の全体が電波シールドで覆われていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項9】
前記PET検出器のシンチレータ外周に該シンチレータを覆う電波シールドが無く、該シンチレータと受光素子の間に電波シールドが配設されていることを特徴とする請求項7に記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項10】
前記PET検出器のシンチレータの測定ポート内側先端が、前記送信用コイルエレメントの測定ポート内側先端よりも測定ポート内側に位置することを特徴とする請求項9に記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項11】
前記電波シールドがワイヤーメッシュ状とされていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項12】
前記電波シールドが、前記受光素子の受光面に対応する開口を有する格子板状とされていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項13】
前記格子板状の電波シールドが、反射材を兼ねるようにされていることを特徴とする請求項12に記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項14】
前記電波シールドが、前記PET検出器の受光素子の受光面を避けて配設されていることを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項15】
前記電波シールドが、前記PET検出器のアレイ状受光素子の受光素子間に配置される格子線状とされていることを特徴とする請求項14に記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項16】
前記送信用コイルエレメントが板状とされ、前記測定ポートの中心から見て放射方向に幅広となるように配設されていることを特徴とする請求項2に記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項17】
前記PET検出器のシンチレータと受光素子の間にライトガイドが設けられていることを特徴とする請求項7乃至16のいずれかに記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項18】
前記ライトガイドに前記電波シールドが内包されていることを特徴とする請求項17に記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項19】
前記PET検出器が、深さ方向の位置も検出可能なDOI型検出器とされていることを特徴とする請求項7乃至18のいずれかに記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項20】
前記PET検出器が、前記測定ポートの軸方向に移動可能とされていることを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載のPET/MRI一体型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PET(Positron Emission Tomography)装置とMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置を一体化したPET/MRI一体型装置に係り、特に、PET検出器を測定対象に近接させて、PETの高感度化・高空間分解能化を図ることが可能なPET/MRI一体型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PETは、陽電子放出核種で標識した化合物を投与して、受光素子とシンチレータの組合せや、CdTe、CZTなどの半導体検出器で構成されたPET検出器で得たデータを処理することで、その体内分布を断層像として画像化する方法である。X線CT(Computed Tomography)やMRIで得られる断層像は形態情報であるのに対して、PET画像は生体機能情報を表す機能画像と言われ、たとえば腫瘍検出を高感度で行えるが、位置が不明確である。よって、PET画像に正確な位置的情報を付加するためには、位置情報を明確に得られるX線CT画像やMRI画像とPET画像を重ね合わせる必要があり、重ね合わせの精度を高め、撮影の効率化を図るために、PET装置とX線CT装置を合体させたPET/CT装置が普及している。しかし、一般的に、X線CTによる被曝量はPETによる被曝量の数倍であるため、CTによる被曝は無視できない。
【0003】
そこで、CT装置の代わりに、放射線に被曝することなく形態画像を取得可能なMRI装置が注目されており、PET画像とMRI画像の同時取得が可能なPET/MRI装置の研究開発が進んでいる(特許文献1、非特許文献1参照)。
【0004】
PET検出器は、消滅放射線の入射を受けて発光するシンチレータと、その発光を検出する受光素子で構成されており、過去にはシンチレーション光を光ファイバー等で磁場の影響が少ない場所まで引き出してから受光素子で受光する方法が検討されたが、シンチレーション光の減衰によりPET側の性能が劣化していた。最近では、受光素子に磁場の影響の少ないAPD(アバランシェフォトダイオード)やガイガーモードAPD(SiPMとも呼ばれる)を用いて、
図1に例示する如く、PET装置の検出器ユニット(以下、PET検出器と称する)10を完全にMRI装置8の静磁場中に設置する半導体受光素子方式が開発されており、小動物PET装置と頭部用PET装置で開発実績がある(非特許文献2乃至4、特許文献2乃至4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−48923号公報
【特許文献2】米国特許第7626392B2号明細書
【特許文献3】米国特許US2008/0287772A1号明細書
【特許文献4】米国特許US2009/0108206A1号明細書
【特許文献5】特開2009−121929号公報
【特許文献6】特開2009−270971号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ciprian Catana et al.“Simultaneous Acquisition of Multislice PET and MR images:Initial Results with a MR-Compatible PET Scanner” The Journal of Nuclear Medicine,Vol.47,No.12,December 2006 pp1968-1976
【非特許文献2】Schlyer D,et al.,“A Simultaneous PET/MRIscanner based on RatCAP in small animals,”IEEE Nuclear Scicnce Symposium Conference Record,Volume:5,pp:3256-3259,2007
【非特許文献3】Schlemmer HW,et al.Simultaneous MR/PET Imaging of the Human Brain:Feasibility Study.Radiology,2008:248,1028-1035.
【非特許文献4】Judenhofer MS,et al.Simultancous PET-MRI:a new approach for functional and morphological imaging.Net Med 2008;14(4):459-65.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、PET検出器のシンチレータを測定対象に近づけるほどPETの感度が上がる他、測定対象内の陽電子放出核種から互いに逆方向に放出される一対の消滅放射線の180°方向からのずれである角度揺動による分解能劣化も抑制できる。しかしながら、従来のPET/MRI一体型装置は、
図1に例示する如く、MRI装置8の測定ポート8P内にPET検出器10を配置する際、PET検出器10がMRI測定に影響しないように、送受信用RFコイル42の外側にPET検出器10を配置していた。送受信用RFコイル42には、送信用コイルエレメントと受信用コイルエレメントを別々に設置するタイプと、送受信兼用のタイプがあるが、少なくとも送信用コイルエレメントは、均一に励起するため測定対象から遠ざける必要がある。従って、PET検出器10を測定対象へ近づけるには限界があり、PETの感度を上げられないという問題点と、角度揺動による分解能劣化を抑制できないという問題点を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、PET検出器を測定対象に近接させて、PETの高感度化・高空間分解能化を図ることが可能なPET/MRI一体型装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、MRI装置の測定ポートに、MRI用RFコイルと複数のPET検出器を備えたPET/MRI一体型装置において、
前記MRI用RFコイルを送信用コイルエレメントと受信用コイルエレメントに分離すると共に、
前記PET検出器を互いに間隔を空けて配設し、前記MRI用RFコイル
の送信用コイルエレメント
のみを、隣り合う該PET検出器の間に配設することにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
ここで、前記PET検出器を前記測定ポートの周方向に間隔を空けて配設し、前記送信用コイルエレメント
のみを前記測定ポートの軸方向に配設することができる。
【0012】
あるいは、前記PET検出器をリング状に配設した検出器リングの複数を互いに
前記測定ポートの軸方向に間隔を空けて配設し、前記送信用コイルエレメント
のみを、隣り合う該検出器リング間に配設することができる。
【0013】
又、前記MRI用RFコイルの受信用コイルエレメントの測定ポート内側先端を、前記PET検出器の測定ポート内側先端よりも測定ポート内側に位置させることができる。
【0014】
又、前記PET検出器に設けられた電波シールドの測定ポート内側先端より、前記送信用コイルエレメントの測定ポート内側先端が測定ポート内側にあるようにすることができる。
【0015】
又、前記PET検出器を、放射線を感知して電気信号に変える半導体検出器で構成することができる。
【0016】
あるいは、前記PET検出器を、放射線を感知して発光するシンチレータと、該シンチレータの発光を感知して電気信号に変える受光素子との組合せで構成し、該受光素子より前記シンチレータが測定ポート内側に位置するようにすることができる。
【0017】
又、前記PET検出器の全体が電源シールドで覆われているようにすることができる。
【0018】
又、前記PET検出器のシンチレータ外周に該シンチレータを覆う電波シールドが無く、該シンチレータと受光素子の間に電波シールドが配設されているようにすることができる。
【0019】
又、前記PET検出器のシンチレータの測定ポート内側先端が、前記送信用コイルエレメントの測定ポート内側先端よりも測定ポート内側に位置するようにすることができる。
【0020】
又、前記電波シールドを、ワイヤーメッシュ状とすることができる。
【0021】
又、前記電波シールドを、前記受光素子の受光面に対応する開口を有する格子板状とすることができる。
【0022】
又、前記格子板状の電波シールドが、反射材を兼ねるようにすることができる。
【0023】
又、前記電波シールドを、前記PET検出器の受光素子の受光面を避けて配設することができる。
【0024】
又、前記電波シールドを、前記PET検出器のアレイ状受光素子の受光素子間に配置される格子線状とすることができる。
【0025】
又、前記送信用コイルエレメントを板状とし、前記測定ポートの中心から見て放射方向に幅広となるように配設することができる。
【0026】
又、前記PET検出器のシンチレータと受光素子の間にライトガイドを設けることができる。
【0027】
又、前記ライトガイドに前記電波シールドを内包することができる。
【0028】
又、前記PET検出器を、深さ方向の位置も検出可能なDOI型検出器とすることができる。
【0029】
又、前記PET検出器を、前記測定ポートの軸方向に移動可能とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば
、送信用コイルエレメント
のみをPET検出器間の隙間に配設したので、測定対象から遠ざけたい送信用コイルエレメントに邪魔されること無く、PET検出器のシンチレータを測定対象に近づけることができ、MRIの性能を犠牲にすることなく、PETの感度を向上することが可能となる。
【0031】
特に、PET検出器が放射線を感知して発光するシンチレータと、該シンチレータの発光を感知して電気信号に変える受光素子との組合せで構成されていて、該受光素子より該シンチレータが測定ポート内側に位置する場合は、PET検出器をMRI装置の測定ポート中で使用可能とするための電波シールドを、シンチレータ外周部分を省略してシンチレータと受光素子の間に配設し、該電波シールドをMRI用RFコイルの送信用コイルエレメントの測定ポート内側先端より測定ポート内側に位置させ、且つシンチレータの測定ポート内側先端が受信用コイルを超えない範囲で送信用コイルより測定ポート内側に突出するようにして、シンチレータを少しでも測定対象に近づけ、その分PET検出器同士の隙間も小さくして、MRIに影響を及ぼすことなく、一層の高感度化を図ることができる。
【0032】
さらに、PET検出器として、深さ方向の位置も検出可能なDOI(Depth of Interaction)型検出器(特許文献5、6参照)を用いれば、より分解能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】従来のPET/MRI一体型装置の一例の全体構成を示す正面図
【
図2】
PET/MRI一体型装置の第1
参考形態におけるPET検出器とRFコイルの配置を示す斜視図
【
図4】第1
参考形態で用いられているPET検出器の構成を示す縦断面図
【
図5】
図4に示したPET検出器で用いられているワイヤーメッシュ状電波シールドを示す斜視図
【
図6】同じくシンチレータ部分の詳細構成を示す分解斜視図
【
図7】同じく受光素子部分の詳細構成を示す分解斜視図
【
図8】PET検出器の変形例の構成を示す分解斜視図
【
図9】PET検出器の他の変形例の構成を示す縦断面図
【
図10】
図9に示したPET検出器の詳細構成を示す分解斜視図
【
図11】PET検出器の更に他の変形例の詳細構成を示す分解斜視図
【
図12】PET検出器の更に他の変形例の構成を示す横断面図
【
図13】
図11に示すPET検出器を備えたPET/MRI一体型装置の第2
参考形態を示す横断面図
【
図14】
PET/MRI装置の第3
参考形態を示す横断面図
【
図18】本発明に係るPET/MRI装置の第
1実施形態で用いられている送信用コイルエレメント、受信用コイルエレメント及びPET検出器の配置を示す斜視図
【
図20】本発明に係るPET/MRI装置の第
2実施形態を示す横断面図
【
図21】
PET/MRI装置の第
7参考形態の要部構成を示す斜視図
【
図22】同じく第
8参考形態の要部構成を示す斜視図
【
図24】
PET/MRI装置の第
9参考形態の全体構成を示す斜視図
【
図25】
同じく第
10参考形態におけるPET検出器リングとRFコイルの関係を示す縦断面図
【
図27】同じく各PET検出器リングにおけるRFコイルとPET検出器の配置を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下図面を参照して、
参考形態及び本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0035】
PET/MRI一体型装置の第1
参考形態は、
図2(要部構成を示す斜視図)、及び
図3(横断面図)に示す如く、頭部MRI検査用のいわゆるバードケージタイプの送受信用RFコイル(以下、単にRFコイルとも称する)42であり、測定ポート8Pの軸方向に延びる棒状のケースに収納された送受信用コイルエレメント(以下、単にコイルエレメントとも称する)44が間隔をおいて互いに平行に並設されており、一方、多数のPET検出器10が測定ポート8Pの周方向に互いに間隔が空くように配設されていて、各送受信用コイルエレメント44が各PET検出器10の間隔に収まる構成にしたものである。
【0036】
ここでは、
図3に示した如く、前記PET検出器10が受光素子16とシンチレータ12の組合せで構成されていて、受光素子16よりシンチレータ16が測定ポート内側に位置しており、さらに、該PET検出器10を、シンチレータ12を深さ方向(測定ポートの中心8Pcから見て放射方向)に4段に分割したDOI検出器としているが、4段に限る必要はなく、またDOI型でない(すなわち段数が1である)PET検出器でもよい。さらに、シンチレータ12は、必ずしも分割された小さなシンチレータの集合体を組み合わせたシンチレータブロック(アレイ型)である必要はなく、光学的不連続点や光学的不連続面を含まない一塊のシンチレータ(一体型)であってもよい。なお一般的に、DOI検出器の段数が多いほど、分解能を高めることができる。更に、受光素子とシンチレータの組合せで構成されたシンチレーション検出器ではなく、CdTeやCZTなどの半導体検出器であっても良い。また、ここでは、一般で良く用いられているバードケージタイプのRFコイルとしているが、形状が類似するその他のRFコイルでも良い。また、測定対象もヒト頭部に限らない。
【0037】
図3において、8Bは、例えばMRI装置8の土台や測定対象を載せるベッドである。
【0038】
前記PET検出器10は、
図4に詳細に示す如く、シンチレータ12と、該シンチレータ12の外周を覆う、非磁性体且つ絶縁体でなり、電波をシールドしない、ケーシングを兼ねた遮光材14と、前記シンチレータ12の発光を受光する受光素子16と、該受光素子16の出力に対して増幅や演算等の処理を行うためのフロントエンド回路18と、MRI磁場中での使用を可能とするため、前記受光素子16とフロントエンド回路18の部分をシールドするための電波シールド20と、前記シンチレータ12と受光素子16の間に配設された、電波はシールドするがシンチレーション光は十分に通す、
図5に例示するようなワイヤーメッシュ状電波シールド22とを備えている。前記電波シールド22の測定ポート8P内側先端(測定ポート中心8Pc方向の先端)より、RFコイル42のコイルエレメント44の測定ポート8P内側先端が測定ポート8P内側にあるようにするのが好ましい。
【0039】
なお、シンチレーション光を受光素子16へなるべく多く導く目的で、遮光材14に反射材としての機能も備えた材質を使用するか、遮光材14とシンチレータ12の間に反射材を挿入することができる。各反射材も、非磁性体且つ絶縁体である必要がある。
【0040】
前記シンチレータ12は、アレイ型、一体型を問わない。このシンチレータ12の受光素子16と接しない外周は、
図6に示す如く、遮光材14でカバーされている。このシンチレータ12と受光素子16は、例えばグリース等で光学結合されている。前記電波シールド20は、例えば銅箔とされ、接地されている。
【0041】
前記ワイヤーメッシュ状電波シールド22は、例えば、銅製の網とすることができる。
【0042】
前記受光素子16とシンチレータ12の間には、
図6及び
図7に示す如く、受光面の間を埋めて光の無駄を防ぎ受光効率を高めるための反射材24が配設されている。反射材24の例としては、薄いシート状のマルチポリマーミラーや白色のパウダーなどが挙げられる。この反射材24は省略することも可能である。
【0043】
本
参考形態においては、シンチレータ12の外周には該シンチレータ12を覆う電波シールドを設けず、シンチレータ12と受光素子16の間、特に、受光素子16とフロントエンド回路18の部分のみを電波シールドしているので、コイルエレメント44より測定ポート内側に電波シールドが割り込んで、MRIの感度を低下させることがない一方、シンチレータの測定ポート内側部がコイルエレメント44より測定ポート内側に突出している分だけ、PET検出器の感度が高くなることが期待できる。
【0044】
なお、
図4乃至
図7に示すPET検出器では、シンチレータ12と受光素子16の間の電波シールドとしてワイヤーメッシュ状電波シールド22が用いられていたが、
図8に示す変形例の如く、受光素子16の受光面に対応する開口を有する格子板状の電波シールド26を用いることも可能である。更に、格子板状電波シールド26のシンチレータ側面(図の上面)を反射面として、反射材24を省略することも可能である。このように電波シールドを板状とした場合には、電流が流れ易く、シールド性能が高い。
【0045】
あるいは、
図9(断面図)及び
図10(分解斜視図)に示す更に他の変形例の如く、受光素子16の受光面を避けて受光素子の隙間に配置される格子線状電波シールド28を用いることも可能である。
【0046】
あるいは
図11に示す更に他の変形例の如く、例えば格子線状電波シールド28とシンチレータ12の間にライトガイド30を挿入して、ライトガイド30の表面近くもしくは内部に格子線状電波シールド28を埋め込むことができる。ライトガイド30は、シンチレータ12と受光素子16の間におけるシンチレーション光の伝達効率を改善したり、シンチレータ12と受光素子16の間の設置面積が異なる場合、その設置面積の違いを吸収したりすることができる。ライトガイド30の材質の例としては、透明度の高いプラスチックやガラスが挙げられる。電波シールドをライトガイド30内に埋め込む(内包する)ことにより、あるいはライトガイド30の表面に取り付けることにより、シンチレータ12と受光素子16の間における光学的連続性を高めることができる。なお、ライトガイド30を挿入するPET検出器の電波シールドは格子線状に限定されず、
図5に示したワイヤーメッシュ状電波シールド22や
図8に示した格子板状電波シールド26であっても良い。
【0047】
なお、構造を簡単にするために、
図12に例示する変形例の如く、シンチレータ12を含むPET検出器10の全体が電波シールド20で覆われているようにすることもできる。この場合は、PET検出器10の測定ポート8P内側先端が、コイルエレメント44の測定ポート8P内側先端より突出しないようにする。
【0048】
図11に例示したライトガイド付PET検出器を用いた
、PET/MRI一体型装置の第2
参考形態の構成を
図13に示す。ライトガイド30をシンチレータ12側が大きな台形状にすることによって、受光素子16の受光面積より大きなシンチレータ12を接続でき、またライトガイド30を装着した分だけシンチレータ12を測定対象に近づけることが可能となる為、PETの感度を高めることができる。
【0049】
さらに、
図14に示す第3
参考形態の構成のように、ライトガイド30を厚くすれば、ライトガイド30を台形にしなくとも、シンチレータ12同士の隙間を狭くし、かつシンチレータ12を測定対象に近づけることが可能となる為、PETの感度を高めることができる。
【0050】
なお、前記第1、第2、第3
参考形態においては、いずれもRFコイル42のコイルエレメント44が棒状のケースに収納されていたが、
図15に示す第4
参考形態のように、例えば測定ポート8Pの周方向に幅広の板状のケースに収納されていても良い。
【0051】
板状のコイルエレメント44を用いる場合には、
図16に示す第5
参考形態の如く、測定ポートの中心8Pcから見て放射方向に幅広となるように配設することにより、PET検出器10の間の隙間Sを減らして、PETの感度を高めることができる。
【0052】
又、
図17に示す第6
参考形態のように、RFコイル42のコイルエレメント44をPET検出器10間の間隔に合わせたV字形状にして、PET検出器10の配設密度を高めることで、PET及びMRIの感度を高めることも可能である。
【0053】
なお、前記
参考形態においては、いずれも、RFコイルとして、送信用コイルエレメントと受信用コイルエレメントが一体化された送受信用RFコイルが用いられていたが、
図18(要部の斜視図)及び
図19(横断面図)に示す
本発明の第
1実施形態のように、RFコイル42の送信用コイルエレメント44Sと受信用コイルエレメント44Rを分離し、送信用コイルエレメント44Sを例えば棒状のケースに収納し、受信用コイルエレメント44Rを例えば測定ポート8Pの周方向に幅広の板状のケースに収納して、送信用コイルエレメント44SのみをPET検出器10の間に配置することも可能である。なお、PETで計測する511keVの放射線に対するコイルエレメントの吸収効果は小さいため、受信用コイルエレメント44Rは、このようにPET検出器10の前面に置くことも出来る。
【0054】
本実施形態においては、受信用コイルエレメント44Rの少なくとも測定ポート8P内側先端がPET検出器10の測定ポート8P内側先端よりも測定ポート8P内側に位置されるので、PET検出器10によりMRIの受信感度が妨害されることがない。従って、PET検出器10のシンチレータ部分に電波シールドを設けた場合においても、その影響を軽減することができる。このようにシンチレータ部分にも電波シールドを設けた場合は、その電波シールドの測定ポート8P内側先端より、RFコイル42の送信用コイルエレメント44Sの測定ポート8P内側先端が測定ポート8P内側にあるようにするのが好ましい。これにより、シンチレータ12を測定対象に近づけて感度を向上することができる。
【0055】
なお、受信用コイルエレメント44Rは、必ずしも第
1実施形態のようにRFコイル42のフレームに固定する必要は無く、
図20に示す第
2実施形態のように、フレキシブルなコイル保持帯46に設け、測定対象6の周囲に巻き付けるようにして、MRIの感度を更に向上することも可能である。
【0056】
又、PET検出器10も、RFコイル42のフレームに固定する必要は無く、
図21に示す第
7参考形態の如く、RFコイル42のフレーム内で摺動自在として、測定ポート8Pの軸方向に移動可能とし、測定対象の要求分解能などに合わせて調整できるようにすることができる。
【0057】
例えば、
図22(要部斜視図)及び
図23(測定状態を示す横断面図)に示す第
8参考形態のように、測定対象6の例えば目に当たる部分のPET検出器10の間を空け、測定対象6の視界を遮らないようにして、測定中の不安を解消することもできる。
【0058】
なお、前記
参考形態及び実施形態においては、いずれも、本発明がMRI装置の頭部用RFコイルに適用され、PET検出器10がMRI装置8の測定ポート8Pの軸と同軸に設けられていたが、本発明の適用対象はこれに限定されず、頭部以外にも適用可能である。
【0059】
例えば、
図24(斜視図)及び
図25(リング部分の縦断面図)に示す第
9参考形態のように、所謂ハンバーガー型MRI装置40の縦静磁場(体軸と直交する静磁場)用に、リング状にPET検出器10が配設されたリング11(PET検出器リングと称する)の二つが互いに間隔を空けて配設されていて、二つのPET検出器リング11間にマルチリング状のコイルエレメント44を挟むことも可能である。図において、40Pは測定ポートである。
【0060】
前記コイルエレメント44の接続状態を
図26に、各PET検出器リング11でコイルエレメント44の間にPET検出器10を挿入した状態を
図27に示す。
【0061】
なお、前記
参考形態及び実施形態のいずれにおいても、RFコイルやPET検出器リングの形状は円形に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
PET検出器を測定対象に近接させて、PETの高感度化・高空間分解能化を図ることが可能なPET/MRI一体型装置を提供できる。
【符号の説明】
【0063】
6…測定対象
8、40…MRI装置
8P、40P…測定ポート
10…PET検出器
11…PET検出器リング
12…シンチレータ
14…遮光材
16…受光素子
18…フロントエンド回路
20…電波シールド
22…ワイヤーメッシュ状電波シールド
24…反射材
26…格子板状電波シールド
28…格子線状電波シールド
30…ライトガイド
42…RFコイル
44…コイルエレメント
44S…送信用コイルエレメント
44R…受信用コイルエレメント
46…コイル保持帯