特許第5713535号(P5713535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5713535血小板凝集低下用薬学的組成物、血小板凝集低下用栄養組成物、および血小板凝集低下用食品又は飲料あるいは水性液体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713535
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】血小板凝集低下用薬学的組成物、血小板凝集低下用栄養組成物、および血小板凝集低下用食品又は飲料あるいは水性液体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20150416BHJP
   A61K 31/401 20060101ALI20150416BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20150416BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20150416BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20150416BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20150416BHJP
   A23L 1/305 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   A61K31/198
   A61K31/401
   A61K9/08
   A61P7/02
   A61P9/00
   A61P9/10
   A23L1/305
【請求項の数】18
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2008-540251(P2008-540251)
(86)(22)【出願日】2006年11月13日
(65)【公表番号】特表2009-519219(P2009-519219A)
(43)【公表日】2009年5月14日
(86)【国際出願番号】US2006044011
(87)【国際公開番号】WO2007059047
(87)【国際公開日】20070524
【審査請求日】2009年9月29日
(31)【優先権主張番号】60/735,280
(32)【優先日】2005年11月11日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508142435
【氏名又は名称】チャンドラン,ブイ.,ラビ
【氏名又は名称原語表記】CHANDRAN,V.,RAVI
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラン,ブイ.,ラビ
【審査官】 常見 優
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−247841(JP,A)
【文献】 特開昭54−113442(JP,A)
【文献】 特開2002−262896(JP,A)
【文献】 米国特許第02349774(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0031547(US,A1)
【文献】 特開2006−143649(JP,A)
【文献】 LEWIS,G.P. et al.,British journal of pharmacology,1972年,Vol.45, No.1,p.104-17
【文献】 HAN,B. et al,Yaoxue Xuebao,1985年,Vol.20, No.8,p.606-9
【文献】 KAWASAKI,T. et al.,Journal of Biomedical Materials Research,1985年,Vol.19,p.851-61
【文献】 内山真一郎,Vasc Med,2005年,Vol.1, No.1,p.53-62
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 38/00−38/58
A61K 35/00−35/76
A61P 1/00−43/00
A23L 1/27− 1/308
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその薬学的に許容される塩またはその両性イオン及びそのための薬学的担体を含み、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、O−アセチル−L−トレオニン、O−アセチル−L−チロシン、O−アセチル−L−セリンとそれらの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする血小板凝集低下用薬学的組成物。
【請求項2】
前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸が鏡像異性的に純粋である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸が純粋である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−ヒドロキシプロリンである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−トレオニンである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−セリンである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−チロシンである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
2つ以上のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸の組合わせが存在する請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
追加の抗血小板剤がさらに存在する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記追加の抗血小板薬がアスピリン、クロピドグレル、ジピリダモールまたはチクロピジンである、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
有効量のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその栄養的に許容される塩またはその両性イオン及びそのための栄養的に許容される担体を含む血小板凝集低下用栄養組成物であって、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその栄養的に許容される塩またはその両性イオンは血小板凝集を低下させるために存在し、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−ヒドロキシプロリンであることを特徴とする血小板凝集低下用栄養組成物。
【請求項12】
有効量のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその栄養的に許容される塩またはその両性イオン及びそのための栄養的に許容される担体を含む血小板凝集低下用栄養組成物であって、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその栄養的に許容される塩またはその両性イオンは血小板凝集を低下させるために存在し、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−トレオニンであることを特徴とする血小板凝集低下用栄養組成物。
【請求項13】
有効量のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその栄養的に許容される塩またはその両性イオン及びそのための栄養的に許容される担体を含む血小板凝集低下用栄養組成物であって、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその栄養的に許容される塩またはその両性イオンは血小板凝集を低下させるために存在し、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−チロシンであることを特徴とする血小板凝集低下用栄養組成物。
【請求項14】
有効量のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその栄養的に許容される塩またはその両性イオン及びそのための栄養的に許容される担体を含む血小板凝集低下用栄養組成物であって、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその栄養的に許容される塩またはその両性イオンは血小板凝集を低下させるために存在し、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、O−アセチル−L−トレオニン、O−アセチル−L−チロシン、O−アセチル−L−セリンからなるグループから選択され、2つ以上のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸の組合わせが存在することを特徴とする血小板凝集低下用栄養組成物。
【請求項15】
抗血小板有効量のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその薬学的に許容される塩またはその両性イオンを含む血小板凝集低下用食品又は飲料あるいは水性液体であって、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその栄養的に許容される塩またはその両性イオンは血小板凝集を低下させるために存在し、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−ヒドロキシプロリンであることを特徴とする血小板凝集低下用食品又は飲料あるいは水性液体。
【請求項16】
抗血小板有効量のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその薬学的に許容される塩またはその両性イオンを含む血小板凝集低下用食品又は飲料あるいは水性液体であって、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその栄養的に許容される塩またはその両性イオンは血小板凝集を低下させるために存在し、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−トレオニンであることを特徴とする血小板凝集低下用食品又は飲料あるいは水性液体。
【請求項17】
抗血小板有効量のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその薬学的に許容される塩またはその両性イオンを含む血小板凝集低下用食品又は飲料あるいは水性液体であって、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその栄養的に許容される塩またはその両性イオンは血小板凝集を低下させるために存在し、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−チロシンであることを特徴とする血小板凝集低下用食品又は飲料あるいは水性液体。
【請求項18】
抗血小板有効量のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその薬学的に許容される塩またはその両性イオンを含む血小板凝集低下用食品又は飲料あるいは水性液体であって、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸あるいはその栄養的に許容される塩またはその両性イオンは血小板凝集を低下させるために存在し、前記アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸がO−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、O−アセチル−L−トレオニン、O−アセチル−L−チロシン、O−アセチル−L−セリンから選択され、2つ以上のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸の組合わせが存在することを特徴とする血小板凝集低下用食品又は飲料あるいは水性液体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
抗血小板薬は、心血管疾患および脳血管疾患の治療で有用である。それらは血管現象、最も重要には心筋梗塞(MI)および脳卒中の発生率を低下させることが示されている。高齢者はこれらの疾患に対して特に脆弱であり、そのリスク因子は年齢と共に上昇する。
【0002】
抗血小板薬は、アテローム硬化性血管中に未処置のまま放置されると、血栓塞栓形成と、続く脳卒中またはMIなどの心血管現象を引き起こし得る、血中の血小板の凝集を減少させる。アテローム性動脈硬化は血管現象の主な原因である。アテローム性動脈硬化は冠状動脈疾患、心血管疾患または末梢血管疾患(PVD)として明らかとなり得、一部の患者は上記の複数の疾患の1つを超える形に罹患している。
【0003】
10歳という若さのある無症候者の動脈血管の内側に見出された脂肪沈着物は、後に動脈硬化性プラークの形成部位となり得ることが示されている。これらのプラークは破裂しがちであり、一連の反応を受ける血栓形成物質を露出して、血栓形成を引き起こし、これが血管の閉塞をもたらし得、潜在的にMIまたは脳卒中に至る。
【0004】
血栓は、血管内で発生する異常な血塊である。血塊を通過する血流は、血塊をその血管への付着から引き離しやすい。これらの自由に流動する血塊は塞栓として既知である。塞栓は、それらが循環系の狭い部分、たとえば心臓、脳、腎臓または肺に至るより細い全身動脈または細動脈における狭い部分を塞ぐまで流動を停止しない。血栓および血小板凝集は通常、正常で健康な血管では生成しない。これは内皮がプロスタサイクリンおよび一酸化窒素を放出して、血栓の生成を防止し、血小板凝集を抑制するためである。
【0005】
アテローム性動脈硬化は、アテローム性プラークと呼ばれる脂肪病巣が動脈壁内部に発生する動脈の疾患である。これらのプラークは、血管の内膜および平滑筋におけるコレステロールの微小な結晶の沈着によって形成される。結晶は経時的に大きく成長して、最終的に合体してより大きい結晶を形成する。加えて周囲の線維性および平滑筋組織が増殖して追加の層を形成し、これが経時的に成長してさらに大きなプラークを形成する。プラークおよび細胞増殖が動脈内で非常に大規模となるので、最終的には血管における血流の遮断に至る。さらにプラークのこのように大規模な量が動脈中に沈着するので、最終的に動脈は硬く非柔軟性となり、その伸展性を失う。加えてカルシウム塩がコレステロールおよび他の脂質によってしばしば沈殿して、石灰化を引き起こし、動脈に剛性の管を形成させる。動脈壁の変性区域のために、アテローム性動脈は容易に破裂する。アテローム性動脈が破裂して、その表面が粗雑になると、内皮は損傷されて上述の保護介在物質を放出できない。さらにプラークが流血中に突出する場合、表面の粗雑性が血塊を発生させて、最終的に血栓または塞栓の形成を引き起こす。
【0006】
さらに詳細には、血小板がその糖タンパク質IIb受容体を介して破裂したプラークに付着して、アデノシン二リン酸(ADP)、トロンボキサンA2(TXA2)およびフィブリノゲンなどの多数の活性物質を放出する。これらの作用物質は、他の作用物質の中でも血小板の凝集を促進する。加えて一連の反応を通じて、血管破裂に応答してプロトロンビン活性化因子と呼ばれる物質の複合体が形成される;プロトロンビン活性化因子は、プロトロンビンのトロンビンへの変換を触媒する。トロンビンはフィブリノゲンを線維状物、絡み合った血小板、血管および血漿に変換して血塊を形成する。血管の閉塞のために、血液は血管を低速で流れて血塊を形成し、血栓または塞栓の形成をもたらし得る。
【0007】
血小板の付着に対抗して、凝固作用を抑制するために、抗血小板薬が患者に投与されてきた。このような薬物が多数あるが、それらは概して血小板COX−I阻害薬、糖タンパク質IIb/IIIa阻害薬およびプロスタサイクリンエンハンサーとして分類され得る。
【0008】
これらの抗血小板薬はアスピリン、クロピドグレルおよびジピリダモールを含み、MIを治療するために現在使用されている。これらをそれぞれ下で説明する。
【0009】
アスピリンの低用量が脳卒中およびMIを予防または治療するのに有益であることが示されている。アスピリンの1日当たり75mgの低い維持量が有効であることが示されている。アスピリンは血小板においてCOX酵素を阻害して、次にTXA2の合成を阻害する。アスピリンはプロスタサイクリンも阻害する。理論的には、これらの2つの作用は相互を無効にするが、内皮はさらなるCOX酵素を産生可能であるのに対して、血小板は産生できない。内皮はまた、そのCOX酵素を阻害するために血小板が必要とするよりも高用量のアスピリンを必要とする;それゆえアスピリンの低用量が有効である。
【0010】
しかしながら多くの患者は、アスピリンによる深刻な副作用に苦しんでおり、最も重大なのが胃腸(「GI」)障害、炎症および出血である。また他の非ステロイド性抗炎症薬(「NSAID」)の同時投与は、これらの副作用の発生を著しく向上させる。アスピリンはまた、多くの他のクラスの薬物と相互作用して、それらの有効性を低くするか、またはそれらをより毒性にするかのどちらかである(抗凝血薬、メトトレキサートなど)。
【0011】
クロピドグレルは、臨床試験の一部においてアスピリンよりも多少有効であることが示されている。クロピドグレルは、血小板凝集素ADPのその膜受容体への結合を阻害するので、より選択的な作用機構を有する。アスピリンとは異なり、クロピドグレルはCOX酵素を阻害しない。しかしながらクロピドグレルを用いた多くの臨床試験でのGI副作用の発生率は、クロピドグレルがアスピリンと同じGI毒性プロフィールを呈することを示した。下痢および発疹は、アスピリンよりもクロピドグレルでより一般的である。他の副作用としては、腹部不快感、悪心、嘔吐、頭痛、めまいおよび血小板減少症(循環血中の血小板の異常な低レベル)が挙げられる。
【0012】
アスピリンと同様に、NSAIDがクロピドグレルと同時投与されるときに、出血の増加が見られる;そしてクロピドグレルは抗凝血薬の出血時間を延長する。
【0013】
ジピリダモールは人工心臓弁と関連する血栓塞栓症の予防にアスピリンと共に使用される。ジピリダモールは、単独でまたはアスピリンと共にのどちらかで、虚血性卒中および一過性脳虚血発作の予防にも使用される。ジピリダモールの作用様式は明らかでないが、損傷壁への血小板の付着を抑制し、(凝集を減少させる)プロスタサイクリンの効力を向上させることが考えられ、血管拡張を含む他の有益な効果に関与する。しかし再び、ジピリダモールはそれと関連する複数の有害な副作用を有する。たとえばジピリダモール投与に関連して、肝不全および肝酵素上昇が報告されている。その上、潜在する冠状動脈疾患を持つ患者への投与は胸痛を悪化させることがある。
【0014】
MIまたは脳卒中などの多くの血管疾患の治療に有用である多くの抗血小板薬が市場に出ている。しかしながらすべての薬物が潜在的な副作用または他の健康上の合併症を有する。
【発明の開示】
【0015】
本発明は、血管疾患を予防または治療し得る栄養および/またはビタミンサプリメントでもある抗血小板薬に関する。これらの抗血小板薬は天然アミノ酸に由来する。それらは本質的に副作用を有さない;それゆえそれらは非常に高い治療指数を有する。さらに詳細にはそれらは、セリン、カルニチン、トレオニン、ヒドロキシプロリン、チロシン、5−ヒドロキシリジンなどのヒドロキシル含有天然型アミノ酸のアセチル化誘導体またはその薬学的に許容される塩であるか、あるいはそれらはペプチド中のヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル化されているヒドロキシ含有アミノ酸のジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドまたはペンタペプチドまたはヘキサペプチドあるいはその混合物である。本発明は、薬学的および/または栄養サプリメント担体と組合された、それぞれ側鎖にヒドロキシ基を有し、側鎖上のヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル化されている、天然型アミノ酸および/またはジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドまたはペンタペプチドまたはヘキサペプチドのアセチル化エステルあるいは薬学的に許容されるその塩を含む薬学的および栄養サプリメント組成物にも関する。
【0016】
本発明は、哺乳類の血液中の血小板凝集を減少させる方法にも関し、該方法は、治療の必要がある前記哺乳類に、それぞれその側鎖にヒドロキシ基を有する天然型アミノ酸あるいはジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドまたはペンタペプチドまたはヘキサペプチドのアセチルエステルあるいはその薬学的または栄養的に許容される塩の抗血小板有効量を投与するステップを含み、前記アミノ酸あるいはジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドまたはヘキサペプチドの側鎖上のヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル基またはその混合物によってエステル化されている。
【0017】
本発明は、血小板凝集から生じる、または血小板凝集によって引き起こされた哺乳類における疾患を治療または予防する方法であって、治療の必要がある前記哺乳類に、ペプチド中のアミノ酸を含む各アミノ酸がその側鎖にヒドロキシル基を有する、天然型アミノ酸あるいはジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドまたはペンタペプチドまたはその混合物のアセチルエステルあるいはその薬学的および/または栄養的に許容される塩の抗血小板有効量を投与するステップを含む方法にも関し、前記アミノ酸あるいはジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドまたはヘキサペプチドのヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル基によってエステル化されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書で定義するように、ペプチドは、2個以上のアミノ酸残基を有するアミノ酸鎖である。好ましいペプチドは、1〜5個のペプチド結合、すなわちジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドまたはヘキサペプチドを含有する。
【0019】
「ヒドロキシ含有天然型アミノ酸」という用語は、側鎖上にヒドロキシ基を有する天然に入手できるアミノ酸を指す。
【0020】
「ヒドロキシ含有天然型アミノ酸」という用語が、本発明でアセチル化生成物を作製するために利用されるヒドロキシ含有アミノ酸が天然源に由来しなければならないということを意味しないことが理解されるべきである。それはヒドロキシ含有天然型アミノ酸が天然に見いだされ得るという事実のみを指す。しかしながらヒドロキシ含有天然型アミノ酸は天然に見出すことができるが、当業者は代わりにそれを合成し得る。それゆえその程度まで、ヒドロキシ含有天然型アミノ酸は合成され得る。たとえばL−セリンは、天然型アミノ酸である。使用されるL−セリンは、天然源から単離されたL−セリンであり得るか、またはL−セリンは合成され得る;それらに違いはない。本発明に記載するアセチル化アミノ酸は、化学的または天然に作製されたL−セリンのどちらにも由来し得る。
【0021】
「アセチル化ヒドロキシル含有天然型アミノ酸」またはその同義語は、本明細書で定義するように、側鎖上に1個以上のヒドロキシ基を有する天然型アミノ酸を指し、側鎖上のヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル化されている。
【0022】
上で示したように、安全かつ有効な抗血小板薬を開発するために非常に多くの研究が実施されてきた。アスピリンは安価であるが、多数の副作用と関連している。クロピドグレルはアスピリンに対するより高価な対照物であるが、より少ない副作用が示されてきた。またこれらの薬物はそれを摂取するすべての患者で一貫して作用するわけではない。たとえばアスピリン「応答者」とアスピリン「非応答者」がいることが報告されてきた。ある研究では、クロピドグレル治療にも同様の非応答者が同様に存在することが注目された。ある研究では、アスピリンおよびクロピドグレル非応答者は25%から40%もの高さまで変化したことが報告された。このことは明らかに、次に心臓発作および脳卒中を有する患者での良好な治療応答の不足を示す。
【0023】
チクロピジンなどの異なる治療様式の多数の新たな薬物も合成されてきた。しかしチクロピジンは、好中球減少症/顆粒球減少症、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および再生不良性貧血を含む、生命を脅かす血液有害反応を引き起こし得る。それゆえこれらの薬物は著しい副作用を被り、それゆえ各種の血管疾患の治療でのその使用が制限される。
【0024】
本発明者らは、OH基を含有し、ヒドロキシル基の少なくとも1個がアセチル化されている、天然型アミノ酸またはそのペプチド、たとえばジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドおよびペンタペプチドおよびヘキサペプチドのアセチル化誘導体が、驚くべきことに血小板中のCOX酵素の強力な阻害薬であり、それゆえ優れた抗血小板薬として作用することを見出した。それらは単純アセチル化アミノ酸またはペプチドであるので、それらを栄養サプリメントとして分類することが可能であり、したがって公衆の心血管の健康を改善するための公衆による即時の消費用に市場に位置づけることができる。それゆえ本発明の態様は、側鎖上にヒドロキシ基を有するアセチル化天然型アミノ酸に、そしてその薬学的および栄養的に許容される塩に関し、アセチル基は側鎖上のヒドロキシ基でアセチル化される。本明細書で上述したように、アセチル化アミノ酸は、L配置の天然型ヒドロキシ含有アミノ基から調製される。側鎖には1個を超えるヒドロキシ基があり得るが、好ましいヒドロキシ含有アミノ酸は側鎖に1個のみのヒドロキシ基を有する。しかしながらアミノ酸が側鎖上に1個を超えるヒドロキシ基を有する場合、本発明は、ヒドロキシ基の(すべてを含む)1個以上がアセチル化されている、これらの化合物またはその薬学的および栄養的に許容される塩を含む。側鎖上にヒドロキシ基を有する天然型アミノ酸の例としては、ヒドロキシプロリン、トレオニン、セリン、チロシン、3’−ヨードチロシン、5’−ヨードチロシン、3’5’−ジ−ヨードチロシン、α−メチル−m−チロシン、メチロシン、5−ヒドロキシリジンなどが挙げられる。カルニチンは、側鎖にOH基を有するアミノ酸の別の例である。アセチル化アミノ酸を調製するために使用されるヒドロキシ含有アミノ酸は、アミノ酸およびカルボキシ基が結合される炭素原子においてL配置であることが好ましい。加えて、カルニチンがL配置にあることが好ましい。アセチル化アミノ酸を調製するために使用されるヒドロキシ含有アミノ酸は、他の不斉炭素を含有し、他の不斉炭素それぞれにてDまたはL配置のどちらかで存在し得る。それから生じるこのようなすべての立体異性体は、本発明の範囲内であるとして考慮される。
【0025】
それゆえ本発明により、本発明の実施形態において、天然型アミノ酸の側鎖上のヒドロキシ基はアセチル化されている。アミノ酸が側鎖上に1個を超えるヒドロキシ基を含有する場合、本発明は側鎖上のヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル化されている生成物を考慮する。それゆえ側鎖上に存在するヒドロキシ基の数に応じて、本発明は、側鎖上のヒドロキシ基のすべてがアセチル化されているアセチル化アミノ酸、側鎖上のヒドロキシ基のすべてより1個少ないヒドロキシ基がアセチル化されているアセチル化アミノ酸、側鎖上のヒドロキシ基のすべてより2個少ないヒドロキシ基がアセチル化されているアセチル化アミノ酸など、常に減少して側鎖上のヒドロキシ基の1個のみがアセチル化されているアセチル化アミノ酸を考慮する。アミノ酸が側鎖上に1個のみ、2個または3個のヒドロキシ基を、さらに好ましくは側鎖上に1または2個のヒドロキシ基を、最も好ましくは側鎖上に1個のみのヒドロキシを有することが好ましいので、本発明の好ましい生成物としては、モノアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸が挙げられる。アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸の例としては
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
に加えて、モノおよびジアセチル化ホモゲンチジン酸、5−O−アセチル−L−リジン、O−アセチル−L−3’,5’−ジヨードチロシン、O−アセチル−3’−L−ヨードチロシン、O−アセチル−5’−ヨードチロシン、α−メチル−m−o−アセチルチロシン、O−アセチルメチロシンなどが挙げられる。好ましいアセチル化アミノ酸は、O−アセチルL−ヒドロキシプロリン、O−アセチル−L−トレオニン、O−アセチル−L−セリン、ならびにO−アセチル−L−チロシンおよびO−アセチル−L−カルニチンである。アミノ酸と同様に、好ましいO−アセチル化アミノ酸は、アセチル化アミノ酸のカルボキシおよびアミノ基に対してαである不斉炭素原子、すなわち側鎖が結合する炭素原子にてL配置を有する。別の好ましいO−アセチル化アミノ酸は、炭素原子にヒドロキシ側鎖がL配置で結合されている、O−アセチル−L−カルニチンである。
【0026】
アセチル化アミノ酸は、その上に1個を超える不斉炭素原子を含有することができ、それから得られる各種の立体異性体が本発明によって考慮される。それにもかかわらず、アミノ基およびカルボキシ基に対してαであり、アセチル基を含有する側鎖に結合されている炭素原子が、それが自然に発生したようにL配置であることがなお好ましい。
抗血小板活性を備えるペプチド:
【0027】
本発明は、ペプチド中のアミノ酸の側鎖上のヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル化されている、天然型アミノ酸に由来するペプチド、たとえばジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドおよびペンタペプチド、およびヘキサペプチドをさらに考慮する。これらのペプチドは対応するアミノ酸から調製されるが、本発明の実施形態において、ペプチドを調製するために使用されるアミノ酸の1個のみが、側鎖上でアセチル化されているヒドロキシ基を有することが必要である。それゆえジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドまたはペンタペプチドは、側鎖上にアセチル化されている1個のみのヒドロキシ基のみを有し得る。それゆえペプチドを生成するときに、アミノ酸の1個のみが側鎖上にアセチル化されているヒドロキシ基を有し得る。たとえばペプチドは側鎖上に2個以上のヒドロキシ基を有し得るが、1個のみがアセチル化されている。他の実施形態において、側鎖上のヒドロキシ基のすべてがアセチル化されている、側鎖上のヒドロキシ基のすべてより1個少ないヒドロキシ基がアセチル化されている、側鎖上のヒドロキシ基のすべてより2個少ないヒドロキシ基がアセチル化されているなど、常に減少して側鎖上のヒドロキシ基の1個がアセチル化されている。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、ヒドロキシ含有天然型アミノ酸およびアセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸あるいは前記化合物の薬学的に許容される塩または前記化合物の両性イオンからなる群より選択される2〜6個の化合物の混合物に関し、アミノ酸の少なくとも1個の側基の少なくとも1個がアセチル化されており、同時に残りのアミノ酸のそれぞれがヒドロキシ基を含有する少なくとも1個の側基を有する。2、3、4、5、または6個のアミノ酸のこのような混合物はそれぞれ、上述したジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドおよびヘキサペプチドに相当する。ヒドロキシ側基を有するアミノ酸のいずれも、または側鎖上のヒドロキシ基がアセチル化されているいずれのアミノ酸も混合物中に存在し得る。その上、混合物は、アセチル化アミノ酸およびそのアミノ酸のヒドロキシ含有アミノ酸、たとえばO−アセチルチロシンおよびチロシンを含有し得る。唯一の基準は、側鎖上のヒドロキシ基の1個がアセチル化されなければならないということである。さらにアセチル化ヒドロキシ含有天然アミノ酸は、本明細書で定義するように、抗血小板有効量で存在する。1個を超えるアミノ酸側鎖がアセチル化されている場合、アセチル化アミノ酸の全量は、本明細書で定義するように抗血小板阻害量で存在している。カルニチンおよびO−アセチルカルニチンは存在し得るが、O−アセチルカルニチンが組成物中で唯一の活性成分(唯一のアセチル化ヒドロキシル含有天然型アミノ酸)であることが好ましい。
【0029】
ペプチド中のアミノ酸残基が天然型アミノ酸であることが好ましい。その上、ペプチドのアミノ酸残基がαまたはβアミノ酸であることが好ましく、側鎖が結合される炭素原子に不斉炭素をそれらが有する場合、それはL配置にある。ペプチドのアミノ酸残基に他の不斉炭素が存在することがあり、それから得られる各種の立体異性体は本発明によって考慮される。ペプチドが調製される好ましいアミノ酸は、上記のヒドロキシ含有アミノ酸である。
【0030】
さらなる実施形態において、本発明は、同じまたは異なる2、3、4、5または6個のヒドロキシ含有アミノ酸に由来するジペプチドであって、側鎖上のヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル化されているジペプチドを考慮する。ジペプチドは、塩基性の5個のO−アセチル化アミノ酸、たとえばヒドロキシプロリン、セリン、トレオニンおよびチロシンに、またはカルニチンに由来することが好ましい。これらはその個々のモノマーと比較して、同じまたは改善された治療的および薬学的および栄養的補助特性を有する。側鎖上のヒドロキシ基の少なくとも2個、さらに好ましくは2、3、4、5または6個、あるいはすべてがアセチル化されていることも好ましい。実際にヒドロキシプロリン、セリン、トレオニン、チロシンおよびカルニチンからの、ジペプチドのアミノ端からカルボキシ端に至る次の20個の異なる組合わせが可能であり、下に挙げたジペプチドのすべてがその各OH位置にてジアセチル化されることが理解される。(命名法:Ser=セリン、Hyp=ヒドロキシプロリン、Thr=トレオニン、Car−カルニチン、およびTyr=チロシン)ジ−O−アセチル−Ser−Ser、ジ−O−Acetyl−Ser−Thr、ジ−O−アセチル−Thr−Ser、ジ−O−アセチル−Ser−Hyp、ジ−O−アセチル−Hyp−Ser、ジ−O−アセチル−Thr−Thr、ジ−O−アセチル−Thr−Tyr、ジ−O−アセチル−Tyr−Thr、ジ−O−アセチル−Thr−Hyp、ジ−O−アセチル−Hyp−Thr、ジ−O−アセチル−Tyr−Tyr、ジ−O−アセチル−Tyr−Hyp、ジ−O−アセチル−Hyp−Tyr、ジ−O−アセチル−Hyp−Hyp、ジ−O−アセチル−Ser−Tyr、ジ−O−アセチル−Tyr−Ser、ジ−O−アセチル−Car−Ser、ジ−O−アセチル−Car−Hyp、ジ−O−アセチル−Car−Thr、およびジ−O−アセチル−Car−Tyr。
【0031】
それゆえSer、Hyp、Thr、CarおよびTyrからのアミノ酸残基のジペプチドの組合わせは全部で20である。上では、ジペプチドは1つのアミノ酸のカルボキシ基および第2のアミノ酸のアミノ基から生成される。たとえばセリン−トレオニンジアセチル化ジペプチドでは、L−セリンはそのCOOH基によってトレオニンのNH基と共有結合されて、(C=O)−NHアミド結合を形成し得る。別の例において、L−セリンのNH基は、L−トレオニンのCOOH基に結合されて、NH−(C=O)アミド結合を形成し得る。
【0032】
上のジアセチル化ジペプチドはそれぞれ、体内で膨大な数のGI、肝臓および血液タンパク質分解酵素によって直ちに変換されて、モノマー性アセチル化アミノ酸を産生する。たとえばジアセチル化セリルセリンは、インビボで加水分解されて、血液中でその抗血小板活性を発揮するアセチル−L−セリン2分子を生成する。
【0033】
アミノ酸残基のヒドロキシ側基の少なくとも1個がアセチル化されている、天然型アミノ酸またはジペプチドのアセチルエステル、あるいはどちらかの薬学的に許容される塩またはその組合わせが最も好ましい。
【0034】
それゆえ上に示したジアセチル化ジペプチドは活性が完全であるだけでなく、対応する活性代謝産物も産生し、該代謝産物も有効なモノマー性アセチル化アミノ酸である。
【0035】
たとえばO,O−ジアセチル−L−トレオニル−L−ヒドロキシプロリンを、GI、肝臓または血液中のいずれかにおいて見出されるタンパク質分解酵素に供することによって、O−アセチル−L−ヒドロキシプロリンおよびO−アセチル−L−トレオニンが生成される。反応は下のように示される。
【化6】
【0036】
別の例として、O−アセチル−L−セリンおよびO−アセチル−L−チロシンは、O,O−ジアセチル−L−チロシル−L−セリンをGI、肝臓および血液のいずれかで見出されるタンパク質分解酵素に供することによって哺乳類系にて放出される。反応は下のように示される。
【化7】
【0037】
さらにこれらのモノマー性アセチル化アミノ酸に加えて、ジアセチル化アミノ酸も、本発明の他の実施形態と同様に、本明細書で上述したNSAIDの有害な副作用を示さない。
【0038】
その上、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドおよびヘキサペプチドは活性が完全であるだけでなく、活性代謝産物も産生し、該代謝産物も有効である小ペプチド単位および/または1つのモノマー性アセチル化アミノ酸である。その上、これらの生成物のいずれもNSAIDの有害な副作用を示さない。
【0039】
発明者らは、塩基性の5個のO−アセチル化アミノ酸、たとえばヒドロキシプロリン、セリン、トレオニン、カルニチンおよびチロシンに由来するポリペプチドが、その個々のモノマーと比較して、同じまたは改善された治療的および薬学的および栄養的補助特性を有することをさらに考慮する。しかしながらいずれのこのようなポリペプチド中の多数のアミノ酸も2〜6個の残基を含有することができ、その2〜6員ポリペプチド中の少なくとも1個のアミノ酸がアセチル化基を有する。単純ジペプチドの場合、ジペプチドのすべてが好ましくは、ジペプチド中のアミノ酸残基それぞれの側鎖上のその各OH位置にてモノまたはジアセチル化される。
【0040】
しかしながら本発明は、上述したようにジペプチドに限定されない。アミノ酸の数は、アミノ酸それぞれの間にCO−NH結合によって結合された2〜6個のペプチドで変化することが可能であり、2〜6員アミノ酸は、少なくとも1個のアセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸(たとえばO−アセチル−セリン、O−アセチル−トレオニン、O−アセチルヒドロキシリジン、O−アセチルチロシン、O−アセチルカルニチンまたはO−アセチルヒドロキシプロリンなど)を含有し、ペプチドに残存するアミノ酸はヒドロキシ含有天然型アミノ酸である。本発明は、2〜6個のポリペプチド分子中に、またはアミノ酸の混合物中に1個を越えるアセチル化アミノ酸があり得ることも考慮する。以下は、非制限的であるポリペプチドの代表的な例である。
O−アセチルSer−Thr−O−アセチル−Hyp−Tyr
O−アセチルSer−Ser−O−アセチルCar
【0041】
本発明は、本明細書で上述したような1個以上のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸、および/または本明細書で定義したように側鎖上のヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル化されているヒドロキシ含有アミノ酸の1個以上のペプチドあるいはジペプチドのヒドロキシ側鎖の少なくとも1個がアセチル化されている、側鎖上のヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル化されている1個以上のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸および/または1個以上のペプチド(たとえばジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドまたはヘキサペプチド)の組合わせも考慮する。
【0042】
本発明は、O−アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸およびペプチドの薬学的および栄養的に許容される塩も考慮する。特にカルニチンおよび他のカルニチン含有ペプチドを除いて、本発明のアセチル化アミノ酸は酸性(カルボキシル)および塩基性(アミノ)官能基を含有するので、これらはその酸性および塩基性塩を含む。カルニチンは、正に帯電したアンモニウム基および負に帯電したCOO基を含有する両性イオンである。しかしながらそれは下で述べるような他のアミノ酸と同様の塩を生成し得る。
【0043】
薬学的および栄養的に許容される塩としては、無機または有機酸である酸添加塩、たとえば硝酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、過塩化物、リン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、サリチル酸塩などである酸添加塩が挙げられる。適切な塩基性塩は、非毒性塩を生成する無機または有機塩基から生成され、たとえばアルカリ金属またはアルカリ土類金属、特にナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛およびアンモニウム塩を含む。
【0044】
本発明の化合物の薬学的および栄養的に許容される塩は、必要に応じて、アセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸および所望の酸または塩基の溶液を共に混合することによって直ちに調製され得る。あるいは酸性塩は、アセチル化反応の反応条件下で、あるいはアセチル化反応の前にアミノ酸またはペプチドを酸添加塩に変換することによって調製され得る。塩は溶液から沈殿して、濾過によって収集されるか、溶媒の蒸発によって回収され得る。塩は、イオン交換によって、たとえば本発明の化合物の溶液を適切なイオン交換樹脂で平衡にすることによっても調製され得る。イオン交換は、アセチル化アミノ酸の1つの塩形、たとえば薬学的に許容されない酸または塩基による塩を別の塩形に変換するためにも使用され得る。これらの方法は一般に当分野で周知である。
【0045】
本発明の化合物は、当分野で認識された技法によって調製され得るか、市販されている。たとえばO−アセチル−セリンおよびO−アセチル−チロシンは市販されている。しかしながら購入しない場合、本発明のアセチル化アミノ酸は、O−アセチル誘導体を生成するのに有効な条件下で酢酸によって、側鎖上にヒドロキシ基を有する天然型必須および非必須アミノ酸および/またはペプチドをアセチル化することにより調製する。たとえばO−アセチル−チロシンは、チロシンに塩化アセチルをトリフルオロ酢酸の存在下で反応させることによって調製する。O−アセチルアミノ酸の調製の例は、1)Specific O−Acylation of Hydroxylamino Acids in the Presence of Free Amino Acids,Previero,A.,Barry,L.−G.,Coletti−Previero,M.−A.,Biochimica et Biophysica Acta,1972,263(1),pages 7−13;2)Synthesis of Tryosyltyrosyltyrosine and Tyrosyltyrosyltyrosyltyrosine,Barkdoll,A.E.,Ross,W.F.,Journal of the American Chemical Society,1944,66,951−956;3)The Investigations of Amino Acid Reactions by Methods of Non−Aqueous Titrimetry,Sakami,W.,Toennies,G.,Journal of Biological Chemistry,1942,144,203−216;および4)Chong Heng,H.,Kimura R.,Bawarshi−Nassa,R.,Hussain,A.,Journal of Pharmaceutical Science,1985,74(12),1298−1301に記載されており、その内容は参照により組み込まれる。反応が不活性溶媒または不活性溶媒の混合物中で実施されること、すなわち(複数の)溶媒がアセチル化反応条件下で非反応性であることが好ましい。このような溶媒の例としては、エーテル、たとえばエチルエーテル、THF、ジオキサン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。反応が、たとえば室温から溶媒の沸点までの範囲にわたる有効温度にて実施されることも好ましい。反応は、アミノ酸のその両性イオン形またはその塩形によって実施され得る。
【0046】
ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドおよびヘキサペプチドは、当分野で既知のペプチド合成によって調製される。側鎖上のヒドロキシ基のすべてがアセチル化される場合、ヒドロキシ含有アミノ酸を含有するペプチドが調製可能であり、当分野で既知のアセチル化条件下でのそのアセチル化が続く。ペプチド中のヒドロキシ基のすべてがアセチル化されているわけではない場合、アセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸が最初に調製され、次にその生成物が、ヒドロキシ基が当分野で既知のペプチド生成条件下でアセチル化されていないアミノ酸またはペプチドと、たとえば溶液化学または固相ペプチド合成によってカップリングされることが好ましい。
【0047】
側鎖上にヒドロキシ基をそれぞれ有する天然型アミノ酸またはペプチドの置換基が反応条件下でそれ自体反応性である場合、これらの置換基は当分野で既知の保護基を利用して、既知の化学技法を利用してそれ自体保護され得る。当分野で既知の各種の保護基が利用され得る。このような保護基の例は、T.W.Greene,John Wiley and Sonsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」,NY,NY 1981という名称の本に見出すことができ、その内容は参照により組み込まれる。当業者が十分に認識しているように、保護基は、もしあれば、アセチル化反応の前にヒドロキシ側鎖を持つ天然型アミノ酸またはその上の側鎖上にヒドロキシ基を有するペプチド上に配置され、Greeneによる上述の本に記載した方法によるアセチル化反応後に、当分野で既知の技法を利用して除去される。
【0048】
本発明のアセチル化天然型アミノ酸およびペプチドは、当業者に既知の技法によって、たとえばクロマトグラフィー、たとえばHPLC、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなど;結晶化技法などによってさらに精製され得る。薬学的組成物および栄養組成物において、ならび本発明の方法において利用されるアセチル化天然型アミノ酸およびジペプチドは、鏡像異性的に純粋であること、すなわち鏡像異性的に純粋であることがアセチルエステルに結合される炭素原子にて対応するD異性体を実質的に含まないアセチル化カルニチン化合物を指す、カルニチンを除いて、アミノ酸のアミノ基およびカルボキシ基に対してαである炭素原子にて対応するD異性体を実質的に含まないことが好ましい。好ましくは、本発明のアセチル化アミノ酸またはペプチドは、上述の炭素原子にて約50%未満のD異性体を、さらに好ましくは上述の炭素原子にて約40%未満のD異性体を、なおさらに好ましくは上述の炭素原子にて約25%未満のD異性体を、特にさらに好ましくは上述の炭素原子にて約10%未満のD異性体を、最も好ましくは上述の炭素原子にて約5%未満のD異性体を含有する。加えて、本発明のアセチル化アミノ酸および/またはペプチドは、実質的に純粋、すなわち本段落の上で言及した不斉炭素における対応するD異性体を含めて不純物を実質的に含まない。さらに詳細には、アセチル化天然型アミノ酸またはペプチドが、少なくとも約50%の純度、さらに好ましくは少なくとも約60%の純度、なおさらに好ましくは少なくとも約75%の純度、特にさらに好ましくは少なくとも約90%の純度、なおさらに特に好ましくは少なくとも約95%の純度、特に最も好ましくは少なくとも約98%の純度であることが好ましい。
【0049】
本発明のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸およびペプチドおよび/またはその混合物は、血小板凝集を低下させるのに有用である。本発明のアセチル化天然型アミノ酸およびペプチドは、これらの組成物中に本明細書で定義するような血小板阻害有効量で存在する。
【0050】
加えて、アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸およびペプチドは本明細書で定義するように薬学的および/または栄養組成物中に、他のアセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸またはペプチドあるいは他の活性薬物または他の栄養サプリメントと共に存在し得る。他の栄養サプリメントまたは薬物が薬学的およびまたは栄養組成物中に存在する場合、他の薬物/栄養サプリメントが抗血小板活性を持つことが好ましい。例としては、アスピリン、クロピドグレル、ジピリミダモール、チクロピジンなどが挙げられる。第2の薬物または栄養サプリメント、特に抗血小板薬が薬学的組成物中に存在する場合、本発明のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸または本発明のペプチドの合計の、別の抗血小板薬または栄養サプリメントを含む第2の薬物または栄養サプリメントに対するモル比は、約10−6〜10、さらに好ましくは1:1〜約100:1の範囲にわたる。好ましくは、本発明のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸またはジペプチドの、いずれかの追加の薬物、または栄養サプリメントに対する比は、1:1より大きい。
【0051】
本発明の別の実施形態は、本発明のアセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸またはペプチドの抗血小板阻害有効量を、その薬学的に許容される担体と組合わせて含む薬学的組成物である。薬学的組成物は、本明細書で定義する1つのこのようなアセチル化アミノ酸および/またはペプチド、あるいは1つを超えるこのようなアセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸またはペプチドの混合物を含有する。1つの実施形態において、薬学的組成物はO−アセチル化カルニチンを含有し得るが、O−アセチル化カルニチンは唯一のアミノ酸として、あるいはそれよりなる他のアセチル化ヒドロキシル含有天然型アミノ酸またはペプチドと組合されて存在し得る。O−アセチル化カルニチンが存在する唯一の活性成分でないこと、あるいはそれが他のアセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸またはペプチドと共に存在する場合に、他のアミノ酸またはペプチドが血小板阻害有効量で存在することが好ましい。別の実施形態において、薬学的組成物はO−アセチル化カルニチンを除外する。
【0052】
本発明の別の実施形態は、本発明のアセチル化アミノ酸またはペプチドの栄養的有効量を、そのための栄養的に許容される担体と組合わせて含む栄養組成物である。栄養組成物は、本明細書に記載した1つのアセチル化アミノ酸またはその組合わせおよび/またはペプチドおよび/またはヒドロキシ含有天然型アミノ酸またはペプチドを含有し得る。一実施形態において、栄養組成物は、特にO−アセチル化カルニチンが存在する唯一の活性成分でない場合に、あるいはそれが他のアセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸またはペプチドと共に存在し、他のアミノ酸またはペプチドが血小板阻害有効量で存在する場合に、O−アセチル化カルニチンを含有し得る。別の実施形態において、栄養組成物はO−アセチルカルニチンを除外する。
【0053】
本発明の化合物は、当業者に既知の技法によって薬学的およびまたは栄養組成物へと調製される。本発明の化合物は患者、たとえば哺乳類に治療または予防有効量で、すなわち血小板凝集を阻害するのに有効な量で投与される。本発明の化合物は好ましくは、哺乳類に0.0001〜1000mg/kg哺乳類体重の範囲にわたる量で投与される。
【0054】
それにもかかわらず、医師は最も適切であるアセチル化アミノ酸またはペプチドの投薬量を決定する;投薬量は投与形および選択された特定の化合物に応じて変化し、さらにこれに限定されるわけではないが、治療中の患者、患者の年齢、治療される状態の重症度などを含む各種の他の因子に応じて変化し得る。医師は一般に、本発明のアセチル化アミノ酸またはペプチドの最適用量よりも実質的に少ない量の低投薬量で治療を開始して、状況下で最適効果に達するまで少ない増分で投薬量を増加させることを望む。
【0055】
投薬計画はさらに、最適治療または予防応答を与えるために医師によって調節され得る。たとえば複数の分割用量が毎日投与され得るか、または用量が状況の必要によって示されるように比例的に低減され得る。
【0056】
これらのO−アセチル化アミノ酸およびペプチドの栄養サプリメントとしての有用性に関する十分な情報が本明細書で提供されるので、博識であり、心血管疾患の予防および治療に抗血小板薬および栄養サプリメントの使用に精通している患者は、医師からカウンセリングまたは処方を一切得ずに、自己診断して、これらのO−アセチル化アミノ酸を栄養サプリメントとして自己投与することができる。患者は単にこれらのO−アセチル化アミノ酸またはペプチドを世界中の店頭で小売薬局、食料品アウトレットのいずれかから、またはインターネットショップを介して、そしてOTC薬物およびサプリメントのための各種の流通センターを通じて購入でき、それゆえ医療の高コストを回避できる。
【0057】
本明細書に記載するアセチル化アミノ酸および/またはペプチドは、便利な方法で、たとえば経口、静脈内、筋肉内または皮下経路によって、経直腸的に、口腔的に、または経皮的に薬物または栄養サプリメントとして投与され得る。
【0058】
本発明のアセチル化アミノ酸またはペプチドは、たとえば不活性希釈剤と共に、または吸収性食用担体と共に経口投与され得るか、あるいは硬または軟シェルゼラチンカプセルに包囲され得るか、あるいは錠剤に圧縮され得るか、または摂取食物、たとえばクッキー、ケーキ、食用チョコレートバーなど;水性飲料、たとえば水、牛乳、紅茶、コーヒー、ソーダ、レモネード、ジュースなどに直接包含され得る。あるいはそれらは液体として投与可能であり、その中に懸濁され得るか、液体によって溶液にされることがあり、液体の例としては水、飲料、ジュース、スープなどが挙げられる。経口治療または予防投与では、アセチル化アミノ酸またはペプチドは賦形剤と共に包含され、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウェファなどの形で使用され得る。アセチル化アミノ酸およびペプチドは単位投薬形で存在することが好ましい。このような組成物および調製物は、アセチル化アミノ酸またはペプチドの少なくとも1%を含有すべきである。組成物および調製物のパーセンテージはもちろん変化させることができ、好都合にはアセチル化アミノ酸またはペプチドの約5〜約80質量%を含有し得る。このような治療組成物で使用されるアセチル化アミノ酸またはペプチドの量は、適切な投薬量が得られるような量である。本発明による好ましい組成物または調製物は、アセチル化アミノ酸の約25mg〜約2000mgを、本発明のアセチル化ジペプチドのジペプチドが側鎖上に1個のみのヒドロキシ基を有するアミノ酸よりなる場合、そして両方のヒドロキシ基がアセチル化されているか、またはその中のヒドロキシ基の1個のみのほぼ同量がアセチル化されている場合は、本発明のアセチル化ジペプチドのほぼ半量を、トリペプチドが3個のアミノ酸よりなり、それぞれ側鎖上に1個のヒドロキシ基を有し、3個すべてのヒドロキシ基がアセチル化されている場合には、約3分の1の量を含む、などである。ペプチドのサイズにかかわらず、側鎖上のヒドロキシ基の1個のみがアセチル化されている場合、好ましい組成物はその約25mg〜約2000mgを含有する;アミノ酸の側鎖のヒドロキシ基の2個がアセチル化されている場合、好ましい量は約半量である;アミノ酸の側鎖のヒドロキシ基の3個がアセチル化されている場合、好ましい量は約3分の1である、などである。
【0059】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤は以下の、トラガカントゴム、アカシアゴム、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;およびスクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味料が添加され得る、あるいはペパーミント、ウインターグリーン油、またはチェリー香料などの着香料も含有し得る。投薬単位形がカプセルであるとき、それは上の種類の物質に加えて液体担体を含有し得る。
【0060】
各種の他の物質はコーティングとして存在し得るか、またはそうでなければ本発明の薬学的または栄養組成物の物理形を変更し得る。たとえば錠剤、丸剤、またはカプセル剤はシェラック、糖または両方でコーティングされ得る。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、すなわち甘味料としてのアセチル化アミノ酸またはペプチド、スクロース、保存料としてのメチルおよびプロピルパラベン、染料およびチェリーまたはオレンジ香料などの香料を含有し得る。もちろんいずれの投薬単位形を調製するのに使用されるいずれの物質も薬学的に純粋であり、利用される量で実質的に非毒性であるべきである。加えて、アセチル化アミノ酸またはジペプチドは、持続放出調製物および調合物中に包含され得る。たとえばアセチル化アミノ酸またはペプチドが、樹脂の放出特性を変更するために拡散バリアコーティングによって任意でコーティングされ得るイオン交換樹脂に結合されている、または活性成分、すなわちアセチル化アミノ酸が当分野で既知の持続放出ポリマー、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロースなどと結合されている、持続放出投薬形が考慮される。
【0061】
アセチル化アミノ酸およびペプチドは、液剤または懸濁剤充填軟または硬ゼラチンカプセル剤の形で投与され得る。そのようなカプセルは一般に、ゼラチン、グリセリン、水およびソルビトールよりなる。硬カプセル剤は、より少ない水を含有し、それゆえ対応してより強力な殻を有することによって軟カプセル剤と区別される。このようなカプセル剤で使用するのに適した追加の賦形剤としては、プロピレングリコール、エタノール、水、グリセロールおよび食用油が挙げられる。
【0062】
活性化合物は非経口的にも、たとえば静脈内に、動脈内に、腹腔内に、髄腔内に、脳室内に、尿道内に、胸骨内に、頭蓋内に、筋肉内に、または皮下にも投与され得る。このような投与は、単回ボーラス注射として、あるいは短期または長期輸液としてであり得る。投与の容易さおよび投薬量の均一性のために非経口組成物を投薬単位形で調合することは特に好都合である。分散剤もグリセロール、液体ポリエチレングリコール、たとえばPEG100、PEG200、PEG300、PEG400などで、およびその混合物および油で調製され得る。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を防止するために保存料を含有する。
【0063】
注射用途に適した薬学および栄養形としては、滅菌水性液剤(水溶性である場合)または分散剤および滅菌注射用液剤または分散剤の即時調製用の滅菌粉剤が挙げられる。すべての場合で、形は通例滅菌であり、注射可能性が存在する程度まで流動性でなければならない。それは製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、通例、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、たとえば水、エタノール、ポリオール(たとえばグリセロール、ポリプロピレングリコール、およびたとえば本明細書で開示されているような1つ以上の液体ポリエチレングリコール)、その適切な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。このような非経口投与では、化合物は好ましくは、水または別の適切な溶媒または溶媒の混合物の滅菌溶液として調合される。溶液は、他の物質、たとえば血液と等張性である溶液を作製するために塩、特に塩化ナトリウム、および糖、特にグルコースまたはマンニトール、溶液のpHが好ましくは3〜9であるように緩衝剤、たとえば酢酸、クエン酸およびリン酸ならびにそのナトリウム塩;および保存料を含有し得る。滅菌条件下での適切な非経口調合物の調製は、当業者に周知の標準薬学技法によって直ちに達成される。微生物作用の防止は、各種の抗細菌剤および抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。
【0064】
多くの場合で、等張剤、たとえば糖または塩化ナトリウムをこれらの滅菌水溶液中に含めることが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、組成物中での吸収遅延剤、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0065】
滅菌注射用溶液は、必要量のアセチル化アミノ酸またはペプチドを、必要に応じて上に挙げた各種の他の成分と共に適切な溶媒に包含させることによって調製され、続いて滅菌濾過される。一般に分散剤は、各種の滅菌活性成分を、基本分散媒および上に挙げた成分からの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に包含させることによって調製される。滅菌粉剤の場合、上の溶液は必要に応じて真空乾燥または凍結乾燥される。
【0066】
あるいはアセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸またはペプチドは、坐剤またはペッサリーの形で膣または直腸経路によって投与され得る。本発明の化合物は、たとえば皮膚パッチの使用により皮膚にまたは経皮的に投与され得る。これらの組成物は、当業者に周知の標準薬学および/または栄養サプリメント技法によって調製される。
【0067】
アセチル化アミノ酸およびペプチドは、ゲル、ハイドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏または散布剤の形で局所塗布することもできる。適切な軟膏は、たとえば以下の、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化ワックスおよび水の1つ以上との混合物中に懸濁または溶解された本発明の化合物を含有し得る。適切なローションまたはクリームは、たとえば以下の、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステル、ワックス、セチルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、水などの1つ以上との混合物中に懸濁または溶解された本発明のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸またはジペプチドを含有し得る。
【0068】
活性成分は、本発明の化合物の適切な調合物を調製することと、当業者に周知の手順を利用することとによって口腔投与され得る。これらの調合物は、適切な非毒性の薬学的および栄養的に許容される成分を用いて調製される。これらの成分は口腔投薬形の調製で当業者に既知である。これらの成分の一部は、当分野の標準文献であるRemington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,1985に見出され得る。適切な担体の選択は、所望の口腔投薬形、たとえば錠剤、ロゼンジ剤、ゲル、パッチなどの正確な性質に高く依存している。これらの口腔投薬形のすべては本薬学的および/または栄養補助発明の範囲内として考慮され、それらは従来の方法で調合され得る。好ましくは口腔形のアセチル化アミノ酸の有効量は、哺乳類の体重の約0.15mg/kg〜200mg/kgであるが、口腔形のアセチル化ジペプチドの有効量は、ジペプチドのアミノ酸それぞれのヒドロキシ基がアセチル化されている場合、その量の約半分である。
【0069】
たとえば口腔投薬形態は、アセチル化アミノ酸またはジペプチドを本明細書に定義するように血小板阻害有効量で、薬学的および栄養的に許容されるポリマー担体、好ましくは口腔粘膜の湿潤表面に付着して、生分解性であり、下でさらに詳細に説明する生分解性ポリマーと組合わせて含む。1つの実施形態において、口腔投薬形態は有効量のアセチル化アミノ酸またはジペプチドおよびポリマーを含む。しかしながら他の賦形剤、たとえば結合剤、崩壊剤、潤滑剤、希釈剤、香料、着色料などが任意で存在し得る。
【0070】
理想的には、担体は、投薬単位を口腔粘膜に必要な期間、すなわち本発明のアセチル化アミノ酸またはジペプチドが口腔粘膜に送達される期間にわたって付着させるのに十分な粘着性を有するポリマーを含む。加えて、ポリマー担体は段階的に生体内分解性であること、すなわちポリマーは水分との接触時に所定の速度で加水分解することが好ましい。ポリマー担体は好ましくは、取り扱いの便宜上、湿潤時に粘着性であるが、乾燥時にはそうではない。一般にポリマーの平均分子量は約4,000〜約1,000,000ダルトンの範囲に及ぶことが好ましい。当業者は、ポリマーの分子量が大きくなればなるほど、浸食時間が遅くなることを認識する。
【0071】
適切な付着度および所望の薬物放出プロフィールの両方が得られるという条件で、そして口腔投薬ユニット中で投与される薬剤および存在し得る任意の他の成分と適合性であるという条件で、薬学的に許容されるいずれのポリマー担体も使用され得る。一般にポリマー担体は、口腔粘膜の湿潤表面に付着する親水性(水溶性および水膨潤性)ポリマーを含む。本明細書で有用なポリマー担体の例としては、たとえば「カルボマー」(GAFから入手可能なCarbopol(商標))として既知のアクリル酸ポリマーおよびコポリマー;ビニルポリマーおよびコポリマー;ポリビニルピロリドン、デキストラン、グアーガム、ペクチン、デンプン;およびセルロースポリマー、たとえばDow Chemical Companyから入手可能なヒドロキシプロピル−メチルセルロース(たとえばメトセル)、ヒドロキシプロピルセルロース(たとえばDowからも入手可能なKlucel(商標))、ヒドロキシプロピルセルロースエーテル(たとえばAldermanへのU.S.patent No.4,704,285を参照)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロースなどが挙げられる。担体は、組合された2つ以上の適切なポリマー、たとえばポリエチレンオキシドと1:5〜5:1の質量比で組合されたカルボマーも含み得る。
【0072】
本発明の薬学的および/または栄養サプリメント組成物の投薬単位は、本発明のアセチル化アミノ酸またはペプチドあるいはそのいずれかの組合わせまたは混合物およびポリマー担体のみを含有し得る。しかしながら一部の場合では、1つ以上の追加の成分を含むことが望ましい。たとえば投薬単位を製造するプロセスを容易にするために潤滑剤が含まれ得る;潤滑剤は浸食速度および薬物流動も最適化し得る。潤滑剤が存在する場合、潤滑剤は投薬単位の約0.01質量%〜約2質量%、好ましくは約0.01質量%〜約0.5質量%で存在する。適切な潤滑剤としては、これに限定されるわけではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、タルク、水素化植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。しかしながら当業者によって認識されるように、投薬単位中の成分の粒径および/または単位の密度を変更することは、潤滑剤の添加なしに同様の効果、すなわち製造性の改善ならびに浸食速度および薬物流動の最適化を与え得る。
【0073】
他の成分も任意で投薬単位中に包含され得る。このような追加の任意の成分としてはたとえば、1つ以上の崩壊剤、希釈剤、結合剤、促進剤などが挙げられる。使用され得る崩壊剤の例としては、これに限定されるわけではないが、架橋ポリビニルピロリドン、たとえばクロスポビドン(たとえばPolyplasdone(登録商標)XL、GAFから入手可能)、架橋カルボン酸メチルセルロース、たとえばクロスカンメロース(たとえばAc−di−sol(登録商標)、FMCから入手可能)、アルギン酸、およびナトリウムカルボキシメチルデンプン(たとえばExplotab(登録商標)、Edward Medell Co.,Inc.から入手可能)、寒天、ベントナイトおよびアルギン酸が挙げられる。適切な希釈剤は、圧縮技法を使用して調製される薬学的調合物で一般に有用である希釈剤、たとえばリン酸二カルシウム二水和物(たとえばDi−Tab(登録商標)、Staufferから入手可能)、デキストリンとの共結晶化によって処理された糖(たとえばDi−Pak(登録商標)などの共結晶化スクロースおよびデキストリン、Amstarから入手可能)、リン酸カルシウム、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、無水デンプン、粉糖などである。
【0074】
結合剤は使用する場合、付着を向上させる結合剤である。結合剤が存在することが好ましい。このような結合剤の例としては、これに限定されるわけではないが、デンプン、ゼラチン、および糖、たとえばスクロース、デキストロース、糖蜜およびラクトースが挙げられる。
【0075】
活性剤が口腔粘膜を通過する速度を上昇させる透過促進剤も投薬単位形に存在し得る。透過促進剤の例としては、これに限定されるわけではないが、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、N.N−ジメチルアセトアミド(「DMA」)、デシルメチルスルホキシド(「C10MSO」)、モノラウリン酸ポリエチレングリコール(「PEGML」)、モノラウリン酸グリセロール、レシチン、1−置換アザシクロヘプタン−2−オン、特に1−n−ドデシルシクラザシクロヘプタン−2−オン(商標Azone(登録商標)でNelson Research & Development Co.,Irvine,Califから入手可能)、低級アルカノール(たとえばエタノール)、SEP A(登録商標)(Macrochem Co.,Lexington,Mass.から入手可能)、コール酸、タウロコール酸、胆汁酸塩型促進剤、および界面活性剤、たとえばTergitol(登録商標)、ノンオキシノール−9(登録商標)およびTween−80(登録商標)が挙げられる。
【0076】
香料は任意で、薬学的および/または栄養サプリメント組成物中に包含され得る。いずれの適切な香料は、たとえばマンニトール、ラクトースあるいはアスパルテームなどの人工甘味料も使用され得る。着色料は添加され得るが、再度、このような薬剤は必要ではない。着色料の例としては、水溶性FD&C染料、その混合物、またはその対応するレーキのいずれも含む。
【0077】
一般に、本発明の好ましい投薬単位は、組成的に実質的に同種であり、実質的に均質な調合物である。「実質的に均質な」は、投薬単位がコーティングされておらず、複数の層または他の種類の別個の部分を含有しないことを意味する。むしろ投薬単位の物質は、全体で同様であるため、単位は本質的に性質が「モノリシック」である。
【0078】
投薬単位は、従来の圧縮または成形法のどちらかによって作製された錠剤の形であり得る。たとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences,18thedition(Easton,Pa.:Mack Publishing Co.,1990)を参照。好ましくは、投薬単位は成分を共に混合して、混合物を錠剤形へ圧縮することによって調製される。当業者によって認識されるように、投薬単位の浸食速度、それゆえ薬物送達の速度は、3つの因子、錠剤を作製するのに使用される圧力、それゆえ錠剤の密度;上で言及したような選択された担体;および担体対薬物比によって制御される。それゆえ圧力、担体および担体対薬物比は、より短いまたは長い寿命の投薬単位を得るために変更され得る。
【0079】
投薬単位は、従来の形状、たとえばロゼンジ、円板、ウェファ、錠剤などのいずれかを有し得る。
【0080】
本明細書で使用するように、「薬学的に許容される担体」および/または「栄養的に許容される担体」としては、当分野で周知である薬学的活性物質用または栄養用途でのありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤が挙げられる。いずれかの従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合性である場合を除いて、薬学的および/または栄養組成物でのそれらの使用が考慮される。補助活性成分も組成物に包含され得る。
【0081】
本明細書で使用する投薬単位は、治療される対象への単一投薬量として適した物理的に別個の単位;必要な薬学的担体と組合わせて、所望の治療的または予防的効果を生じるために算出された活性物質の所定量を含有する各単位を指す。
【0082】
本発明のアセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸またはジペプチドは上述した単位投薬形において、好都合で有効な投与のために有効量で適切な薬学的およびまたは栄養的に許容される担体と混合される。本明細書の目的では、薬学的有効量、抗血小板阻害有効量および栄養的有効量またはその同義語は同じであり、互換的に使用される。単位投薬量はたとえば、主な活性化合物を約10mg、またはわずか1mg(小動物用)から約2000mgの範囲にわたる量で含有する。溶液に入れられる場合、アセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸の化合物の濃度は好ましくは、約0.1mg/mL〜約500mg/mLの範囲にわたる。口腔投与の場合、口腔単位投薬形のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸は、好ましくは約1〜約500mgの範囲にわたる量で存在する。本発明の栄養または薬学的組成物のいずれかにおいて、本明細書に記載するペプチドは、ペプチドに少なくとも1個のヒドロキシ基を含有し、該ヒドロキシ基はアセチル化されている。ヒドロキシ基の1個がアセチル化されている場合、ペプチドの量は上述したようにヒドロキシ含有アミノ酸のそれと同じである。ヒドロキシ含有アミノ酸の1つのヒドロキシ基1個がアセチル化されているが、他のアミノ酸のヒドロキシ基がいずれもアセチル化されていない場合、ペプチドの量は上述したようにヒドロキシ含有アミノ酸のそれと同じである。これに対してペプチド中のアミノ酸のそれぞれのヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル化されている場合、利用されたペプチドの量はおおよそ1を、モノアセチル化アミノ酸に対する側鎖上のアセチル基の数で割った数である。たとえばジペプチドがアセチル化された側鎖上にヒドロキシ基を2個有する場合、利用されたジペプチドの量は、アセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸のそれの約2分の1である。
【0083】
ペプチドは、本明細書に記載した手順を使用して薬学的組成物へも調合され得る。O−アセチルL−チロシン、O−アセチル−ヒドロキシプロリン、O−アセチル−トレオニンおよびO−アセチル−L−セリンに関して上述した各種の調合物も、上述のペプチドに利用できる。しかしながら投与時に、各ペプチドは2〜6個のアミノ酸残基を含有するので、アセチル化される各アミノ酸残基上のヒドロキシ側基のサイズおよび数に応じて、ペプチドはO−アセチル化アミノ酸の混合物を産生し、それによりジペプチドの各アミノ酸上のヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル化される;それゆえ治療的および予防的有効量はおおよそ1を、モノアセチル化アミノ酸に対するアセチル化ヒドロキシ基を有するアミノ酸残基の数で割った数である。
【0084】
本発明によって考慮されるアセチル化ペプチドは、当分野で認識された技法によって調製される。たとえば本明細書に記載する2つのO−アセチルアミノ酸は、ペプチドカップリング反応条件下でそれぞれ反応して、ジペプチドを生成する。
【0085】
本明細書で使用するように、「患者」または「対象」という用語は、温血動物、好ましくは哺乳類、たとえばネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、マウス、ラットおよびヒトを含む霊長類を指す。好ましい患者はヒトである。
【0086】
「治療する」という用語は、患者の血中の血小板凝集量を低減させることを指す。それは血小板凝集から生じる疾患、状態または障害と闘う目的での哺乳類対象、好ましくはヒトの管理および看護も指し、症状または合併症の開始の可能性を予防または遅延または低減するための本発明の化合物の投与、症状または合併症の緩和あるいはそれによって、またはそれから生じる疾患、状態または障害の排除を含む。このような疾患の例としては、冠状動脈疾患、心血管疾患、または末梢血管疾患、たとえば虚血、脳卒中、および心臓発作などが挙げられる。
【0087】
本明細書で使用するように、用語「予防」、「予防する」またはその同義語は、血流中でのその血小板凝集を有する、および/または過度の血小板凝集から生じる疾患または病状に罹患する傾向にある、またはその危機に瀕した患者のリスクを低減させることを指す。このような疾患の例としては、冠状動脈疾患、心血管疾患、末梢血管疾患、たとえば虚血、脳卒中、および心臓発作などが挙げられる。
【0088】
上述したように、本発明のアセチル化ヒドロキシ含有アミノ酸およびペプチドは、血中の血小板凝集の量を低減させるのに有用である。結果として、それらは血小板凝集から生じる疾患または状態、たとえば上述した疾患または状態を治療および予防するのにそれぞれ有用である。それゆえそれらは、血栓症、塞栓症、冠状動脈疾患、心血管疾患、末梢血管疾患など、たとえば脳卒中、心臓発作、虚血などを治療および/または予防するのに有用である。
【0089】
その上、本発明の化合物は、血中の過剰な血小板凝集によって引き起こされた、またはそれから生じる疾患または状態に罹患または苦しんでいる患者のリスクを低下させるのに有用である。それらはまた、血流中の血小板凝集の量を低減させて、それゆえ血流中でさらなる血小板が凝集するのを予防および/または遅延する。
【0090】
束縛されたくはないが、血小板が血管の側壁へ付着すると考えられる。十分な濃度で存在する場合、それらは存在する血小板の量および動脈の直径に応じて、動脈内の血流を遅延させる。十分な量で存在する場合、それらは心臓または脳に至る大動脈、たとえば冠状動脈または動脈内で閉塞を引き起こして、心臓発作、虚血または脳卒中を生じ得る。あるいはこれは血栓症または塞栓症を引き起こし得る。束縛されたくはないが、本発明の化合物が動脈の損傷壁への血小板の付着を抑制して、プロスタサイクリンの効力を向上させる、および/または血管拡張を引き起こすと考えられる。それゆえ本発明の化合物は、これらの疾患を治療するのに有用であるだけでなく、これらの疾患に罹患している哺乳類のリスクも低下させる。
【0091】
驚くべきことに、本発明のこれらすべてのO−アセチル化誘導体は、市場で現在入手可能な抗血小板薬とは対照的に、本質的に非毒性である。それゆえそれらは栄養サプリメントとして理想的な候補であり、患者は自己診断して、追加の医療支出なしにこれらのサプリメントを自己投与できる。
【0092】
その上、それらは通例、哺乳類の血液凝固時間を、あるいは血小板凝集時間および/または出血時間を、未処置個体より少なくとも20%延長して、それゆえ多数の血管疾患に対する防御を与える。
【0093】
本発明の化合物は単独で、あるいは相互にまたは他の薬物と組合わせて使用され得る。他の薬物と組合わせて使用されるとき、薬剤の投与は同時または連続であり得る。同時投与は、実質的に同時に投薬形のすべてを含む単一投薬形の投与を含む。連続投与は、治療および/または予防のどちらかの処置が与えられる期間中に重複があるという条件で、異なるスケジュールによる少なくとも2つの化合物の投与を含む。
【0094】
本明細書で使用するように「活性化合物」という用語あるいは同様の用語またはその同義語は、本明細書で定義するアセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸またはジペプチドを指す。
【0095】
加えて「アセチル化ヒドロキシ含有天然型アミノ酸」または「アセチル化アミノ酸」という用語あるいは同様の用語または類義語は、側鎖上に1個以上のヒドロキシ基を含有する天然型であり、ヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル化されているアミノ酸を指す。
【0096】
さらに「ジアセチル化ヒドロキシ含有ペプチド」または「ジアセチル化ジペプチド」または本明細書のアセチル化ヒドロキシアミノ酸の「ジペプチド」という用語あるいは同義語は、側鎖上に少なくとも1個のヒドロキシ基を有する2個のアミノ酸のジペプチドを指し、さらに好ましくはそれぞれアセチル化されている1個のみのヒドロキシ基を側鎖上に有する。さらにジペプチドのどちらかのアミノ酸のヒドロキシ基の少なくとも1個がアセチル化されており、さらに好ましくはジペプチドのアミノ酸のそれぞれのヒドロキシ基がアセチル化されている。好ましい実施形態において、各アミノ酸は側鎖上に1個のみのヒドロキシ基を有し、好ましくは両方がアセチル化されている。ジペプチド中のアセチル化アミノ酸は、同じまた異なり得る。
【0097】
「アセチル化ヒドロキシ含有ペプチド」という用語または同義語は、側鎖上に少なくとも1個のヒドロキシ基を有する2個以上のアミノ酸のペプチドを指し、さらに好ましくは側鎖上のヒドロキシ基のそれぞれがアセチル化されている。
【0098】
しかしながらペプチドが調製される好ましいアセチル化アミノ酸は、アセチル化トレオニン、アセチル化ヒドロキシプロリン、アセチル化チロシンならびにアセチル化セリンおよびアセチル化カルニチンである。
【0099】
アミノ酸は、1級アミン、2級アミンまたは3級アミンとして、あるいは4級アミノ酸中にカルボキシ基またはその塩として存在し得るアミノ基を含有する化合物である。アミノ酸は好ましくは、少なくとも1個の不斉中心を含有し、不斉中心はヒドロキシ基であるか、またはヒドロキシ基を含有するかのどちらかである側鎖を含有する。不斉中心におけるこの炭素原子は好ましくは、L配置にある。
【0100】
αアミノ酸は、定義により、式
【化8】
の基あるいはその酸性または塩基性形あるいは両性イオン形であり、
式中、R基は、アミノ酸の側鎖である。アミノ酸はα−アミノ酸であることが好ましい。
【0101】
αアミノ酸のL異性体を指すとき、上に示した不斉炭素、すなわちアスタリスクの付いた炭素における立体化学を指すことが理解される。活性化合物は、その上に存在する他の不斉炭素を有することがあり、それらはこれらの他の不斉炭素において他の立体化学配置で存在し得る。他の立体異性体はすべて、本発明の範囲内であるとして考慮される。
【0102】
本明細書で使用するように、反対に指摘しない限り、「または(or)」という用語は離接詞を指す。さらに「および(and)」は本明細書で、接続詞および離接詞の両方を含む。
【0103】
反対に指摘しない限り、単数形は本明細書で使用するように複数形を含むものとし、その逆も同じである。
【0104】
次の非制限的な実施例は、本発明をさらに例証する。
【実施例1】
【0105】
ラットにおけるアセチルセリンおよびアセチルチロシンの抗血小板活性:
【0106】
試験方法は、試験システムとしてスイスアルビノラットを使用する毛細管法を利用することによって、凝固時間を決定してO−アセチル−L−セリンHCl塩(OAS)、およびO−アセチル−L−チロシン(OAT)の抗血小板凝集効果を評価するために開発された。
【0107】
体重約200グラムの若い5〜6週齢スイスアルビノラットを次のプロトコルで使用した。それらは定評のある動物供給者から入手した。
投薬量詳細
1.用量強度:OASおよびOAT10、20、50および100mg/kg
2.用量期間:1回
3.投与経路:経口胃管投与による1回暴露
4.1グループ当たりの動物数:5
5.ブランク対照 ビヒクル
【0108】
実験手順:ラットは投薬前に18〜20時間絶食させた。16ゲージ・ブラントチップ・カニューレに取り付けた注射器をこの目的で使用した。投薬の2時間後に、動物に給餌した。薬物投与の24時間(±10分間)後、毛細管に血液サンプル(約0.2ml)を収集した。動物は、動物の鼻孔付近にエーテルを吸い込ませた消毒綿を保持することによる軽度のエーテル吸入によって麻酔した。血液は眼窩から毛細管へ収集した。凝固時間は30秒の間隔で観察した。凝固の確認のために、最後に観察された凝固の30秒後に凝固を点検した。ビヒクルと比較した凝固時間の延長は、血小板凝集の阻害指数である。
【0109】
OATに関して、凝固時間は投薬2時間後に1回、次に投薬24時間後に再度決定した。OASでは、投薬2時間後に凝固時間測定を1回のみ実施した。
【0110】
試験の結果を以下の表に示す。
1.OAT試験
【表1】
2.OAS試験
【表2】
対数用量対凝固時間(分)のプロットを図1に示す。
【0111】
図1において、凝固時間(分)が用量(mg/kg)の対数に対してプロットされ、各点は5匹のラットで得た凝固時間の平均である。ビヒクル対照にはゼロの値が割り当てられた(ゼロ用量)。図1のプロットによって示すように、統計的に有意な(P<0.5)凝固時間は、すべての用量レベルにて、そして用量レベル間で見られた。(AceTyro=O−アセチル−L−チロシンおよびAceSer=O−アセチル−L−セリンHCl)。
【実施例2】
【0112】
O−アセチルチロシンによるヒト臨床試験:
試験方法は、2名のヒト志願者にて毛細管法を利用することによって、凝固時間を決定してO−アセチル−L−チロシン(OAT)の抗血小板凝固効果を評価するために開発された。
【0113】
体重がそれぞれ約60kgおよび90kgの年齢46歳および50歳の男性2名をそれぞれ、次の投与計画に従って処置した。
投薬量詳細
1.用量強度:志願者1(90kg)OAT1000mg、志願者2(60kg)OAT350mg
2.用量期間:1回
3.投与経路:経口胃管投与による1回暴露
4.ブランク対照 自己、時間ゼロ凝固時間
結果を次の表に示す。
【表3】
【0114】
図2は、それぞれ1000および350mgを摂取した2名のヒト志願者での全血凝固時間をプロットしている。42%の最大凝固時間増加が、より高用量を摂取した志願者1ユーザで見られ、初回投与の48時間後でも凝固時間の23%の増加を維持した;第2の志願者は、投与されたより低用量と一致して、凝固時間のより少ない最大および持続増加(それぞれ25および18%)を有していた。
【0115】
表2および図2に示すデータに基づいて、O−アセチルチロシンなどの単純アセチル化アミノ酸が凝固時間の用量依存性増加を示し、凝固時間のこのような増加が志願者1で測定されたように少なくとも48時間持続したことは驚くべきである。どちらの志願者も異常な副作用またはO−アセチル−L−チロシンに対する毒性反応を報告しなかった。
【0116】
上の説明は、本発明の範囲および精神を例証している。それは当業者に他の実施形態を明らかにする。これらの他の実施形態は、本発明の考慮の範囲内である。したがって本発明は、添付の請求項によってのみ限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
図1】ラットにおける平均凝固時間(分)を、ラットに投与された用量の対数に対してグラフで示す。
図2】薬物の異なる用量レベル1000mg、および350mgでのヒト血液凝固時間に対するチロシンのアセチルエステルの効果をグラフで示す。
図1
図2