特許第5713559号(P5713559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713559
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】導電性接触子
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20150416BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   G01R1/067 C
   H01L21/66 B
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-512970(P2009-512970)
(86)(22)【出願日】2008年4月25日
(86)【国際出願番号】JP2008058044
(87)【国際公開番号】WO2008136396
(87)【国際公開日】20081113
【審査請求日】2011年2月8日
(31)【優先権主張番号】特願2007-119060(P2007-119060)
(32)【優先日】2007年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】風間 俊男
(72)【発明者】
【氏名】石川 重樹
【審査官】 柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−239349(JP,A)
【文献】 特開平10−312845(JP,A)
【文献】 特開2000−028638(JP,A)
【文献】 特開2000−241447(JP,A)
【文献】 特開2003−035722(JP,A)
【文献】 特開2005−345235(JP,A)
【文献】 特開2006−153723(JP,A)
【文献】 米国特許第06506082(US,B1)
【文献】 国際公開第2006/135680(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/043977(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06− 1/073
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略針状の導電性材料からなり、先端部が軸対称な形状をなし、前記先端部より径が大きいフランジ部と、前記フランジ部を介して前記先端部と反対方向に突出し、前記フランジ部の径より小さい径を有するボス部と、前記ボス部から前記フランジ部と反対側に延在し、前記ボス部と接触している側の端部が前記ボス部の径より小さい径を有する円柱状をなす基端部と、を有する第1プランジャと、
略針状の導電性材料からなり、先端部が前記第1プランジャの先端部と相反する方向を指向するとともに、当該先端部が前記第1プランジャの先端部と同じ軸線に対して軸対称な形状をなし、前記第1プランジャと同じ形状をなす第2プランジャと、
導電性材料からなり、前記第1および第2プランジャがそれぞれ有する前記ボス部の径より大きくかつ均一な内径を有し、一端が前記第1プランジャに接触するとともに他端が前記第2プランジャに接触し、長手方向に伸縮自在なコイルばねであるバネ部材と、
を備え、
前記第1プランジャの基端部と前記第2プランジャの基端部は、互いに係止可能な形状をなして摺動可能に接触し、
前記第1および第2プランジャがそれぞれ有する前記基端部は、
前記ボス部と接触している側の端部と他方のプランジャに係止可能な形状をなして摺動可能に接触する部分との間が、前記軸線の方向を高さ方向とする円柱の一部を切り欠いた形状をなすとともに、互いに接触する部分が鉤型形状をなし、該鉤型形状の端部の外周面は、基端側に行くほど内周側へ近づくように傾斜する平面であり、
前記バネ部材は、
前記第1および第2プランジャに接触する端部を除いて巻き線のピッチが同じであることを特徴とする導電性接触子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路等の電気特性検査で信号の入出力を行う導電性接触子に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップなどの半導体集積回路の電気特性検査においては、その半導体集積回路が有する外部接続用電極の設置パターンに対応して、複数の導電性接触子を所定の位置に収容する導電性接触子ユニットが用いられる。このような導電性接触子ユニットでは、導電性接触子の両端部が、半導体集積回路の球状電極と検査用の回路基板の電極にそれぞれ接触することにより、検査時の電気的な接続が確立される(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−107377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、1GHz以上の高い周波数に対応可能な半導体の需要が増加している。このような半導体の電気特性検査を行うためには、導電性接触子のインダクタンスや抵抗を下げる必要がある。このためには、導電性接触子の径を太くするとともに、導電性接触子の長さを短くするのが好ましい。このうち、径が太い導電性接触子を加工するのは比較的容易であるが、全長を短くした導電性接触子を加工するのは難しかった。例えば、両端に位置する二つのプランジャをバネ部材によって連結する構成を有する導電性接触子の場合、所望のバネ特性を確保するとともに効率的な導通経路を実現するため、バネ部材の巻き線のピッチを途中で変更し、密着巻き部分に二つのプランジャを接触させることがある。この導電性接触子の全長を短くしようとすると、バネ部材の密着巻き部分を短くして二つのプランジャ間の距離を短くする必要があり、導電性接触子に要求されるストロークを確保できなくなってしまうことがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、1GHz以上の高い周波数の信号の送受信を行うことが可能であり、容易に加工することができる導電性接触子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る導電性接触子は、略針状の導電性材料からなり、先端部が軸対称な形状をなす第1プランジャと、略針状の導電性材料からなり、先端部が前記第1プランジャの先端部と相反する方向を指向するとともに、当該先端部が前記第1プランジャの先端部と同じ軸線に対して軸対称な形状をなす第2プランジャと、導電性材料からなり、一端が前記第1プランジャに接触するとともに他端が前記第2プランジャに接触し、長手方向に伸縮自在なバネ部材と、を備え、前記第1プランジャの基端部と前記第2プランジャの基端部が摺動可能に接触していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る導電性接触子は、上記発明において、前記第1プランジャの基端部と前記第2プランジャの基端部は、同じ断面形状を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る導電性接触子は、上記発明において、前記第1プランジャの基端部と前記第2プランジャの基端部は、互いに係止可能な形状をなすことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る導電性接触子は、上記発明において、前記第1プランジャおよび前記第2プランジャは、同じ形状をなすことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る導電性接触子は、上記発明において、前記バネ部材は、前記第1および第2プランジャに取り付けられる端部を除いて巻き線のピッチが同じであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る導電性接触子は、上記発明において、前記バネ部材は、長手方向に沿って巻き線のピッチが変化し、ストロークしていない状態で前記第1プランジャの基端部と前記第2プランジャの基端部が接触している箇所の外周付近に位置する部分が密着巻きされていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る導電性接触子は、上記発明において、前記バネ部材は、長手方向に沿って巻き線の径が変化し、ストロークしていない状態で前記第1プランジャの基端部と前記第2プランジャの基端部が接触している箇所の外周付近に位置する部分の巻き線の径が最大であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、略針状の導電性材料からなり、先端部が軸対称な形状をなす第1プランジャと、略針状の導電性材料からなり、先端部が前記第1プランジャの先端部と相反する方向を指向するとともに、当該先端部が前記第1プランジャの先端部と同じ軸線に対して軸対称な形状をなす第2プランジャと、導電性材料からなり、一端が前記第1プランジャに接触するとともに他端が前記第2プランジャに接触し、長手方向に伸縮自在なバネ部材と、を備え、前記第1プランジャの基端部と前記第2プランジャの基端部とを摺動可能に接触させたことにより、1GHz以上の高い周波数の信号の送受信を行うことが可能であり、容易に加工することができる導電性接触子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る導電性接触子の構成を示す図である。
図2図2は、第1プランジャの基端部と第2プランジャの基端部との接触態様を示す図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1に係る導電性接触子を収容する導電性接触子ホルダの要部の構成を示す図である。
図4図4は、本発明の実施の形態1に係る導電性接触子が奏する効果を説明する図である。
図5図5は、本発明の実施の形態1の第1変形例に係る導電性接触子の構成を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態1の第2変形例に係る導電性接触子の第1プランジャの基端部と第2プランジャの基端部との接触態様を示す図である。
図7図7は、本発明の実施の形態1の第3変形例に係る導電性接触子の第1プランジャの基端部と第2プランジャの基端部との接触態様を示す図である。
図8図8は、本発明の実施の形態2に係る導電性接触子の構成を示す図である。
図9図9は、本発明の実施の形態2の変形例に係る導電性接触子の構成を示す図である。
図10図10は、本発明の別な実施の形態に係る導電性接触子の構成を示す図である。
図11図11は、本発明のさらに別な実施の形態に係る導電性接触子の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
1、3、4、5、6、7、8 導電性接触子
2 導電性接触子ホルダ
11、31、51、61 第1プランジャ
12、32、52、62 第2プランジャ
11a、12a、31a、32a、51a、52a、61a、62a 先端部
11b、12b、31b、32b、51b、52b、61b、62b フランジ部
11c、12c、31c、32c、51c、52c、61c、62c ボス部
11d、11−2d、11−3d、12d、12−2d、12−3d、31d、32d、51d、52d、61d、62d 基端部
13、33、71、81 バネ部材
21 第1基板
22 第2基板
33a、81a、81b 粗巻き部
33b、81c 密着巻き部
100 回路基板
101、201 電極
200 検査対象
211、221 孔部
211a、221a 小径孔
211b、221b 大径孔
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。なお、図面は模式的なものであって、各部分の厚みと幅との関係、それぞれの部分の厚みの比率などは現実のものとは異なる場合もあることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合があることは勿論である。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る導電性接触子の構成を示す図である。同図に示す導電性接触子1は導電性材料によって形成され、先鋭端を有する第1プランジャ11と、第1プランジャ11と相反する向きに突出したクラウン形状の先端を有する第2プランジャ12と、一端が第1プランジャ11に接触するとともに他端が第2プランジャ12に接触し、長手方向に伸縮自在なバネ部材13とを備える。
【0018】
第1プランジャ11は、先鋭端を有する先端部11aと、先端部11aの径よりも大きい径を有するフランジ部11bと、フランジ部11bを介して先端部11aと反対方向に突出し、フランジ部11bの径よりも小さくかつバネ部材13の内径よりも若干大きい径の円柱状をなし、バネ部材13の端部が圧入されるボス部11cと、ボス部11cからフランジ部11bと反対側に延在している基端部11dと、を有する。先端部11a、フランジ部11bおよびボス部11cは、長手方向と平行な中心軸に対して軸対称な形状をなしている。基端部11dは、ボス部11cの径およびバネ部材13の内径よりも小さい径を有する円柱からボス部11cと接触していない側の端部を含む一部を長手方向に沿って半円柱状に切り欠いた形状をなしている。
【0019】
第2プランジャ12は、クラウン形状をなす先端部12aと、先端部12aの径よりも大きい径を有するフランジ部12bと、フランジ部12bを介して先端部12aと反対方向に突出し、フランジ部12bの径よりも小さくかつバネ部材13の内径よりも若干大きい径の円柱状をなし、バネ部材13の端部が圧入されるボス部12cと、ボス部12cからフランジ部12bと反対側に延在している基端部12dと、を有する。先端部12a、フランジ部12bおよびボス部12cは、長手方向と平行な中心軸に対して軸対称な形状をなしている。基端部12dは、第1プランジャ11の基端部11dと同じ形状をなしている。
【0020】
第1プランジャ11の基端部11dと第2プランジャ12の基端部12dとは、各々の端部付近で摺動可能に接触している。図2は、基端部11dおよび12dの接触態様を示す図であり、図1のA−A線断面に相当する図である。基端部11dおよび12dは、互いに接触する部分の断面が同じ半円形状をなしており、各々の半円の中心を通過して長手方向に延在する側面同士が接触しあっている。このように第1プランジャ11と第2プランジャ12とが摺動可能に接触することにより、基端部11dから直接基端部12dに至る導通経路を確保することが可能となる。
【0021】
第1プランジャ11および第2プランジャ12は、例えば旋盤加工によって形成される。この点については、後述する実施の形態等においても同様である。なお、第1プランジャ11の基端部11dの長さと第2プランジャ12の基端部12dの長さは適宜変更可能であり、互いに異なる長さを有してもよい。
【0022】
バネ部材13は均一な径を有するコイルバネであり、両端部が第1プランジャ11のボス部11cおよび第2プランジャ12のボス部12cにそれぞれ圧入される。バネ部材13の巻き線のピッチは、第1プランジャ11および第2プランジャ12に圧入される両端部を除いて均一である。また、バネ部材13の軸線は、第1プランジャ11の基端部11dを除いた部分の軸線および第2プランジャ12の基端部12dを除いた部分の部分の軸線と一致している。
【0023】
以上の構成を有する導電性接触子1において、基端部11dと基端部12dが接触する部分は、導電性接触子1に荷重が加わってバネ部材13が蛇行するようにストロークしても離れてしまうことがない。この結果、確実な摺動摩擦が確保されることとなる。
【0024】
図3は、導電性接触子1を収容する導電性接触子ホルダの要部の構成と、導電性接触子1の両端部でそれぞれ接触する被接触体の構成を示す図である。同図に示す導電性接触子ホルダ2は、第1基板21と第2基板22が板厚方向に積層されて成る。第1基板21には、複数の導電性接触子1を個別に収容する孔部211が形成されている。孔部211は、第1プランジャ11の先端部11aの径よりも若干大きい径を有する小径孔211aと、フランジ部11bよりも若干大きい径を有する大径孔211bとを備えた段付き孔形状をなす。
【0025】
第2基板22には、複数の導電性接触子1を個別に収容する孔部221が形成されている。孔部221は、第2プランジャ12の先端部12aの径よりも若干大きい径を有する小径孔221aと、フランジ部12bよりも若干大きい径を有する大径孔221bとを備えた段付き孔形状をなす。大径孔221bの径は、大径孔211bの径と等しい。
【0026】
導電性接触子1を収容して第1基板21と第2基板22を積層すると、対応する孔部211と孔部221が軸線方向に連通する。
【0027】
導電性接触子ホルダ2が収容する導電性接触子1の第1プランジャ11の先端部11aは、検査用の信号を出力する回路基板100に設けられる電極101と接触する。他方、導電性接触子ホルダ2が収容する導電性接触子1の第2プランジャ12の先端部12aは、半導体集積回路等の検査対象200の電極201に接触する。図3に示す場合、電極101の表面は平面である一方、電極201の表面は球面をなしている。第1プランジャ11の先端部11aは先鋭端をなす一方、第2プランジャ12の先端部12aがクラウン形状をなしているのは、電極101および201の形状に応じて最適な接触状態を確保するためである。このように、各プランジャの先端部の形状は、接触する電極の形状に応じて定めればよい。
【0028】
導電性接触子ホルダ2を構成する第1基板21および第2基板22は、樹脂、マシナブルセラミック、シリコンなどの絶縁性材料を用いてそれぞれ形成される。また、第1基板21および第2基板22にそれぞれ形成される孔部211および221は、ドリル加工、エッチング、打抜き成形を行うか、あるいはレーザ、電子ビーム、イオンビーム、ワイヤ放電等を用いた加工を行うことによって形成される。
【0029】
図4は、本実施の形態1に係る導電性接触子1の効果を説明する図である。図4に示す導電性接触子3は、従来型の導電性接触子である。導電性接触子3は、先鋭端を有する第1プランジャ31と、第1プランジャ31と相反する向きに突出し、クラウン形状の先端を有する第2プランジャ32と、第1プランジャ31と第2プランジャ32とを連結するバネ部材33と、を備える。
【0030】
第1プランジャ31は、先端部31aと、先端部31aの径よりも大きい径を有するフランジ部31bと、フランジ部31bを介して先端部31aと反対方向に突出し、フランジ部31bの径よりも小さくかつバネ部材33の内径よりも若干大きい径の円柱状をなし、バネ部材33の端部が圧入されるボス部31cと、ボス部31cよりも径が小さくかつバネ部材33の内径よりも径が小さい円柱状をなす基端部31dとを有する。第2プランジャ32は、クラウン形状をなす先端部32aと、先端部32aの径よりも大きい径を有するフランジ部32bと、フランジ部32bを介して先端部32aと反対方向に突出し、フランジ部32bの径よりも小さくかつバネ部材33の内径よりも若干大きい径の円柱状をなし、バネ部材33の端部が圧入されるボス部32cと、ボス部32cよりも径が小さくかつバネ部材33の内径よりも径が小さい円柱状をなす基端部32dとを有する。バネ部材33は、第1プランジャ31側が粗巻き部33aである一方、第2プランジャ32側が密着巻き部33bである。粗巻き部33aの端部は、第1プランジャ31のボス部31cに圧入される一方、密着巻き部33bの端部は、第2プランジャ32のボス部32cに圧入される。導電性接触子3は、基端部31dが密着巻き部33bと接触するように構成され、第1プランジャ31、密着巻き部33b、第2プランジャ32の順で最短となる導通経路を形成する。
【0031】
以上の構成を有する導電性接触子3に対して、本実施の形態1に係る導電性接触子1は、第1プランジャ11の基端部11dと第2プランジャ12の基端部12dとが摺動可能に接触しているため、バネ部材13を介さず、基端部11dから基端部12dに直接至る導通経路を確保することができる。したがって、バネ部材に密着巻き部を設ける必要はない。
【0032】
図4に示す場合、導電性接触子1と導電性接触子3とで同じバネ特性を持たせるため、粗巻き部33aの長さとバネ部材13の長さをともにLPで揃えるとともに、粗巻き部33aの巻き線のピッチとバネ部材13の巻き線のピッチをともにΔPで揃えている。この場合、導電性接触子1では、上述したように密着巻き部を設ける必要がないため、その全長L1を、導電性接触子3の全長L3よりも短くすることができる(L3−L1=ΔL)。この結果、導電性接触子のインダクタンスや抵抗を従来型と比較して低減することができ、優れた高周波特性を実現することが可能となる。
【0033】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、略針状の導電性材料からなり、先端部が軸対称な形状をなす第1プランジャと、略針状の導電性材料からなり、先端部が第1プランジャの先端部と相反する方向を指向するとともに、当該先端部が第1プランジャの先端部と同じ軸線に対して軸対称な形状をなす第2プランジャと、導電性材料からなり、一端が第1プランジャに接触するとともに他端が第2プランジャに接触し、長手方向に伸縮自在なバネ部材と、を備え、第1プランジャの基端部と第2プランジャの基端部とを摺動可能に接触させたことにより、1GHz以上の高い周波数の信号の送受信を行うことが可能であり、容易に加工することができる導電性接触子を提供することができる。
【0034】
なお、本実施の形態1の第1変形例として、図5に示すように、第2プランジャが第1プランジャ11と同じ形状をなす導電性接触子4を構成することも可能である。この場合、各プランジャの基端部11d同士が摺動可能に接触していることはもちろんである。
【0035】
また、本実施の形態1の第2変形例として、二つのプランジャの基端部の接触部分の長手方向に垂直な断面(図2に対応する断面)を非対称な形状とすることも可能である。例えば、図6に示すように、第1プランジャの基端部11−2dの断面積を第2プランジャの基端部12−2dの断面積よりも小さくし、二つの基端部11−2dおよび12−2dを合わせた断面が円形をなすようにしてもよい。
【0036】
さらに、本実施の形態1の第3変形例として、図7に示すように、第1プランジャの基端部11−3dと第2プランジャの基端部12−3dとの接触部分の断面が隙間を有する構成とすることも可能である。
【0037】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係る導電性接触子の構成を示す図である。同図に示す導電性接触子5は、第1プランジャ51と、第2プランジャ52と、一端が第1プランジャ51に接触するとともに他端が第2プランジャ52に接触し、長手方向に伸縮自在なバネ部材13と、を備える。
【0038】
第1プランジャ51は、先鋭端を有する先端部51aと、先端部51aよりも径が大きいフランジ部51bと、フランジ部51bを介して先端部51aと反対方向に突出し、フランジ部51bの径よりも小さくかつバネ部材13の内径よりも若干小さい径の円柱状をなし、バネ部材13の端部の径方向への動きを抑制するボス部51cと、ボス部51cからフランジ部51bと反対側に延在している基端部51dと、を有する。基端部51dは、ボス部51cと接触している側の端部がボス部51cの径およびバネ部材13の内径よりも小さい径を有する円柱状をなす一方、ボス部51cと接触していない側の端部が鉤型形状をなしている。基端部51dの中間部は、ボス部51cと接触している側の端部がなす円柱から長手方向に沿って一部を切り欠いた形状をなしている。
【0039】
第2プランジャ52は、クラウン形状をなす先端部52aと、先端部52aよりも径が大きいフランジ部52bと、フランジ部52bを介して先端部52aと反対方向に突出し、フランジ部52bの径よりも小さくかつバネ部材13の内径よりも若干小さい径の円柱状をなし、バネ部材13の端部の径方向への動きを抑制するボス部52cと、ボス部52cからフランジ部52bと反対側に延在している基端部52dと、を有する。基端部52dは第1プランジャ51の基端部51dと同じ形状を有しており、基端部52dの鉤型形状をなす端部は、基端部51dの鉤型形状をなす端部と互いに係止可能である。
【0040】
第1プランジャ51の基端部51dと第2プランジャ52の基端部52dが互いに係止可能な構成とすることにより、導電性接触子5を組み立てた状態で初期荷重を与えることができる。このため、バネ部材13の両端部を第1プランジャ51および第2プランジャ52に圧入して固定する必要がなく、一段とプローブ組立て加工が容易になる。また、導電性接触子ホルダの孔部に関しては、その両端を段付き孔形状として初期荷重を加える必要がなくなり、導電性接触子ホルダの荷重による反りをなくすことができる。また、孔部の下端のみを段付き孔形状として導電性接触子5の抜け止めを行うようにすると、導電性接触子ホルダを1枚の基板によって形成することが可能となり、部品点数および工数を削減するとともに低コスト化を実現することができる。さらに、図3に示すのと同様の構成を有する導電性接触子ホルダに導電性接触子5を挿入し、二つの基板を合わせる際、導電性接触子5の荷重が各基板に印加されないので、組み立てが容易になる。
【0041】
なお、図8に示す基端部51d、52dの形状はあくまでも一例に過ぎない。例えば、図9に示す導電性接触子6のように、第1プランジャ61の基端部61dと第2プランジャ62の基端部62dが互いに係止しあうとともに、長手方向に摺動可能に接触しあうような形状としてもよい。この導電性接触子6において、第1プランジャ61の先端部61a、フランジ部61bおよびボス部61cは、導電性接触子5の第1プランジャ51の先端部51a、フランジ部51bおよびボス部51cとそれぞれ同様の形状をなす。また、第2プランジャ62の先端部62a、フランジ部62bおよびボス部62cは、導電性接触子5の第2プランジャ52の先端部52a、フランジ部52bおよびボス部52cとそれぞれ同様の形状をなす。
【0042】
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、略針状の導電性材料からなり、先端部が軸対称な形状をなす第1プランジャと、略針状の導電性材料からなり、先端部が前記第1プランジャの先端部と相反する方向を指向するとともに、当該先端部が前記第1プランジャの先端部と同じ軸線に対して軸対称な形状をなす第2プランジャと、導電性材料からなり、一端が第1プランジャに接触するとともに他端が第2プランジャに接触し、長手方向に伸縮自在なバネ部材と、を備え、第1プランジャの基端部と第2プランジャの基端部とを摺動可能に接触させたことにより、1GHz以上の高い周波数の信号の送受信を行うことが可能であり、容易に加工することができる導電性接触子を提供することができる。
【0043】
また、本実施の形態2によれば、第1プランジャの基端部と第2プランジャの基端部が互いに係止可能な形状をなすことにより、嵌め合わせによって導電性接触子に初期荷重を付加することができる。この結果、バネ部材の両端を第1プランジャおよび第2プランジャにそれぞれ圧入して固定する必要がなくなり、導電性接触子の製造が容易となる。また、導電性接触子ホルダを1枚の基板で構成することができ、導電性接触子を収容する孔部の構成も単純にすることができ、製造も容易となる。この結果、導電性接触子および導電性接触子ホルダの製造コストを削減することができる。
【0044】
さらに、本実施の形態2によれば、導電性接触子ホルダが導電性接触子に対して荷重を加えなくてよいので、導電性接触子ホルダがバネ部材の反力によって反りを生じることがなくなり、導電性接触子の動きをスムーズにし、導電性接触子の先端の位置精度を向上させることができる。加えて、導電性接触子を収容した導電性接触子ホルダの組み立てが容易となる。
【0045】
なお、本実施の形態2において、上記実施の形態1と同様に、各プランジャのボス部の径をバネ部材の内径よりも若干大きくし、バネ部材の端部をボス部に圧入するような構成とすることも可能である。
【0046】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための最良の形態として、実施の形態1および2を詳述してきたが、本発明はそれら二つの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、以下に示すように、バネ部材に関しては、第1プランジャと第2プランジャの材質、両プランジャの基端部の接触面積、接触部分の全長などの各種条件に応じて形状を変更することができる。
【0047】
図10は、本発明の別な実施の形態に係る導電性接触子の構成を示す図である。同図に示す導電性接触子7は、第1プランジャ11と、第2プランジャ12と、第1プランジャ11と第2プランジャ12とを連結するバネ部材71と、を備える。バネ部材71は、長手方向に沿って巻き線の径が変化し、ストロークしていない状態(図10に示す状態)で第1プランジャ11の基端部11dと第2プランジャ12の基端部12dが接触している箇所の外周付近に位置する部分の巻き線の径が最大となっている。バネ部材71は、両端部が第1プランジャ11および第2プランジャ12にそれぞれ圧入される。
【0048】
以上の構成を有する導電性接触子7によれば、検査対象とのコンタクト時に基端部11d、12d間のスムーズな摺動を実現することができる。
【0049】
なお、図10に示す場合には、バネ部材71は長手方向の中央部よりも長手方向の端部の方が巻き線の径が小さいため、各プランジャのストロークが増加するにしたがって基端部11d、12d間の摺動部分の接触圧が高まるが、ストロークの増加に伴って荷重も増加するので、ストロークに支障をきたすことはない。
【0050】
図11は、本発明のさらに別な実施の形態に係る導電性接触子の構成を示す図である。同図に示す導電性接触子8は、第1プランジャ11と、第2プランジャ12と、第1プランジャ11と第2プランジャ12とを連結するバネ部材81と、を備える。バネ部材81は、長手方向に沿って巻き線のピッチが変化している。具体的には、バネ部材81は、第1プランジャ11側が粗巻き部81aである一方、第2プランジャ12側が粗巻き部81bであり、粗巻き部81aと粗巻き部81bとの間には、密着巻きされた密着巻き部81cが設けられている。密着巻き部81cは、バネ部材81がストロークしていない状態で第1プランジャ11の基端部11dと第2プランジャ12の基端部12dが接触している箇所の外周付近に位置する。バネ部材81は、両端部が第1プランジャ11および第2プランジャ12にそれぞれ圧入される。
【0051】
以上の構成を有する導電性接触子8によれば、基端部11d、12d間の接触を確実なものとすることができる。
【0052】
なお、以上説明したバネ部材は、各プランジャの基端部の形状によらずに適用することが可能である。したがって、上述した導電性接触子4〜6のバネ部材13の代わりにバネ部材71または81を適用することができる。
【0053】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明にに係る導電性接触子は、半導体集積回路等の電気特性検査を行う際に有用であり、特に、1GHz以上の高い周波数の信号の送受信を行うのに適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11