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特許5713587製函機,検査装置,及び製函機の印刷見当制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5713587
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】製函機,検査装置,及び製函機の印刷見当制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/14 20060101AFI20150416BHJP
   B41F 19/08 20060101ALI20150416BHJP
   B41F 13/56 20060101ALI20150416BHJP
   B31B 1/88 20060101ALI20150416BHJP
   B31B 1/25 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   B41F33/14 K
   B41F19/08 A
   B41F13/56
   B31B1/88 301
   B31B1/25 301
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-148179(P2010-148179)
(22)【出願日】2010年6月29日
(65)【公開番号】特開2012-11600(P2012-11600A)
(43)【公開日】2012年1月19日
【審査請求日】2013年5月24日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】310016522
【氏名又は名称】三菱重工印刷紙工機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591114641
【氏名又は名称】株式会社ヒューテック
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 保成
(72)【発明者】
【氏名】伊折 信耶
(72)【発明者】
【氏名】児島 透
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−099149(JP,A)
【文献】 特開昭60−250955(JP,A)
【文献】 特開2009−078462(JP,A)
【文献】 特開2007−069607(JP,A)
【文献】 特開2006−130795(JP,A)
【文献】 特開2002−292831(JP,A)
【文献】 特開2007−062374(JP,A)
【文献】 特開2006−053080(JP,A)
【文献】 特開2010−052211(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0283002(US,A1)
【文献】 特開2006−068948(JP,A)
【文献】 香田 裕誌,4.樹脂版によるフレキソハーフトーン印刷(網点印刷),フレキソ印刷総覧,(株)加工技術研究会,2000年11月 9日,152−155頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 19/08
B31B 1/25
B31B 1/88
B41F 13/56
B41F 33/00−33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキソ印刷機が用いられた複数の印刷ユニットを有する印刷部を備えた製函機において、
前記印刷部により製函用シートに印刷された印刷面の画像を取得する画像取得装置と、
前記印刷の見本となるマスター画像の第一特定絵柄と前記画像取得装置により取得された前記印刷面の画像中の絵柄であって前記第一特定絵柄に相当する第二特定絵柄とを比較して前記各印刷ユニットにおける見当ズレ量をそれぞれ求めて、前記見当ズレ量に基づいて前記各印刷ユニットに装備された見当調整機構を制御して前記印刷の見当を修正する見当修正制御装置と、を備え、
前記第一特定絵柄は、少なくとも複数の色が重なりあっていない箇所が存在する絵柄であって且つ近辺に他のインキ色が存在しない絵柄であり
前記見当修正制御装置は、前記第一特定絵柄を抽出する絵柄抽出部を備えると共に、抽出した前記第一特定絵柄を含み且つ前記第一特定絵柄に対して十分に余裕を持った範囲で他のインキ色が存在しない領域を指定する機能を備え、指定した前記領域内で前記第一特定絵柄と前記第二特定絵柄絵柄とを比較することを特徴とする、製函機。
【請求項2】
前記見当修正制御装置は、前記マスター画像に基づいて予め指定された、前記第一特定絵柄が存在する領域内で前記第二特定絵柄を検出し、前記マスター画像の前記第一特定絵柄との比較をすることを特徴とする、請求項1記載の製函機。
【請求項3】
前記印刷部の下流に配備され、前記印刷部により製函用シートに印刷された前記印刷面の画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により取得された前記印刷面の画像に基づいて印刷の良否を判定する良否判定部とを有する検査装置を備え、
前記画像取得装置には、専用の画像取得部ではなく、前記検査装置の前記画像取得部が用いられていることを特徴とする、請求項1又は2記載の製函機。
【請求項4】
前記見当修正制御装置では、前記マスター画像を、印刷版データから取得することを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の製函機。
【請求項5】
前記見当修正制御装置では、パターンマッチング法を用いて前記見当ズレ量を求めることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の製函機。
【請求項6】
前記画像取得装置は、前記製函機に試し通しされた前記製函用シートに印刷された印刷面の画像を取得し、
前記見当修正制御装置は、前記画像取得装置により取得された前記印刷面の画像に基づいて、前記製函機の本運転前の事前調整として前記印刷の見当を修正することを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の製函機。
【請求項7】
前記印刷部の下流に前記製函用シートを溝切りするスリッタを有する排紙部を備えると共に、
前記スリッタにより溝切りされた位置を検出する溝切り位置検出装置と、前記溝切り位置検出装置により検出された溝切り位置を見本の溝切り位置と比較して溝切り位置のズレ量を求めて、前記溝切り位置ズレ量に基づいて前記スリッタに装備された割出位置調整機構を制御して溝切り位置を修正する溝切り位置制御装置と、を備えていることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の製函機。
【請求項8】
前記印刷部の下流に前記製函用シートを溝切りするスリッタを有する排紙部と、
前記排紙部の下流に前記製函用シートを断裁するダイカット部と、を備えると共に、
前記ダイカット部により断裁された断裁位置を検出する断裁位置検出装置と、前記断裁位置検出装置により検出された断裁位置を見本の断裁位置と比較して断裁位置のズレ量を求めて、前記断裁位置ズレ量に基づいて前記ダイカット部に装備された割出位置調整機構を制御して断裁位置を修正する断裁位置制御装置と、を備えていることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の製函機。
【請求項9】
前記ダイカット部の下流に前記製函用シートに糊付けするグルーマシンを備えると共に、
前記グルーマシンにより糊付けされた糊付け位置を検出する糊付け位置検出装置と、前記糊付け位置検出装置により検出された糊付け位置を見本の糊付け位置と比較して糊付け位置のズレ量を求めて、前記糊付け位置ズレ量に基づいて前記グルーマシンに装備された割出位置調整機構を制御して糊付け位置を修正する糊付け位置制御装置と、を備えていることを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の製函機。
【請求項10】
フレキソ印刷機が用いられた複数の印刷ユニットを有する印刷部を備えた製函機に装備され、
前記印刷部により製函用シートに印刷された印刷面の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記印刷面の画像に基づいて印刷の良否を検査する検査部とを備えると共に、
前記印刷の見本となるマスター画像の第一特定絵柄と前記画像取得部により取得された前記印刷面の画像中の絵柄であって前記第一特定絵柄に相当する第二特定絵柄とを比較して前記各印刷ユニットにおける見当ズレ量をそれぞれ求めて、前記各見当ズレ量に基づく見当修正情報を前記各印刷ユニットに装備された見当調整機構に出力する見当修正制御部と、を備え、
前記第一特定絵柄は、少なくとも複数の色が重なりあっていない箇所が存在する絵柄であって且つ近辺に他のインキ色が存在しない絵柄であり
前記見当修正制御部は、前記第一特定絵柄を抽出する絵柄抽出部を備えると共に、抽出した前記第一特定絵柄を含み且つ前記第一特定絵柄に対して十分に余裕を持った範囲で他のインキ色が存在しない領域を指定する機能を備え、指定した前記領域内で前記第一特定絵柄と前記第二特定絵柄絵柄とを比較することを特徴とする、検査装置。
【請求項11】
前記見当修正制御部は、前記見当ズレ量をインキ色に紐つけられた印刷版データと紐つけて出力する
ことを特徴とする、請求項10記載の検査装置。
【請求項12】
フレキソ印刷機が用いられた複数の印刷ユニットを有する印刷部を備えた製函機における各印刷ユニットの見当調整を行なう方法であって、
前記印刷部により製函用シートに印刷された印刷面の画像を取得し、
印刷見本となるマスター画像のうち少なくとも複数の色が重なりあっていない箇所が存在する絵柄であって且つ近辺に他のインキ色が存在しない絵柄である第一特定絵柄を抽出し、
抽出した前記第一特定絵柄を含み且つ前記第一特定絵柄に対して十分に余裕を持った範囲で他のインキ色が存在しない領域を指定する機能を備え、指定した前記領域内で、前記第一特定絵柄と、取得した前記印刷面の画像中の絵柄であって前記第一特定絵柄に相当する第二特定絵柄とを比較して前記各印刷ユニットにおける見当ズレ量をそれぞれ求めて、
前記見当ズレ量に基づいて前記各印刷ユニットに装備された見当調整機構を制御して前記印刷の見当を修正することを特徴とする、製函機の印刷見当制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート表面に複数色の印刷をして製函を行なう製函機に関し、特に、印刷色の見当修正(見当合わせ)を行なう装置を備えた製函機,検査装置,及び製函機の印刷見当制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
段ボールシート等の製函用シートから箱を製造する製函機には、上流側から給紙部,印刷部,排紙部,ダイカット部,フォルディング部(フォルダグルア部),カウンタエジェクタ部を順に備えて構成されたものがある。このような製函機では、給紙部には、製函用シートが積載されており、製函用シートが1枚ずつ送り出され、まず、印刷部に装備された複数の印刷ユニットで各色の印刷が行なわれ、排紙部でスリッタによる溝切り及びスコアラによる罫線入れが行なわれ、ダイカット部で各部の断裁が行なわれて、フォルディング部で、グルーガンによる糊付け後、折り曲げ,接着が行なわれて、カウンタエジェクタ部で計数されながら積み上げられ所定数毎に次工程へ搬送される。なお、製函機には、フォルディング部を備えず、糊付け,折り曲げ,接着をせずに、ダイカット部で断裁されたシート状のままカウンタエジェクタ部で計数されながら積み上げられ所定数毎に次工程へ搬送される構造のものもある。
【0003】
このような製函機において、製函機の要所にカメラを装備し、予め良品シートの画像を取り込んでこれを基準画像として用意して、製函機の運転中に各処理を施されたシートをカメラにより撮影して、カメラにより取り込まれた運転中のシート画像を基準画像と比較して、印刷位置,色抜け,糊付け位置の品質検査を行なって不良判定をする技術も開発されている。例えば、印刷欠陥検査装置に関しては、特許文献1にも記載されている。また、製函機の要所に、光電センサ及びロータリエンコーダ等を装備して、加工後のスロッタ長さやダイカット打ち抜き位置の不良判定をする技術も開発されている。
【0004】
ところで、製函された段ボール箱の商品性を向上させるには、箱の形状を適正にすることや切断面等を適正に処理することが重要であり、このためには、排紙部におけるスロッタによる溝切り位置やフォルディング部における糊付けのためのグルーガンによる糊付位置等をそれぞれ適正に設定することが必要になる。さらに、段ボール箱の商品性向上の点では、印刷された絵柄や文字(以下、これらを単に絵柄という)が適正に配置されていることもきわめて重要な要素である。
【0005】
上述の製品不良を検査する装置では、製品から不良品を取り除き、良品のみを出荷することはできるが、不良品が発生しないようにすることまではできない。
そこで、通常は、製函機に、1枚の試し通しシートを供給して、オペレータが印刷位置等を検品し、以下の5点を釦操作にて調整することにより、各部を事前調整している。
(1)印刷部における各色印刷ユニットの割出位置(印刷天地方向位置)の調整。
(2)印刷部における各色印刷ユニットの印刷幅方向位置の調整。
(3)スロッタの割出位置の調整。
(4)ダイカットの割出位置の調整。
(5)グルーガンによる糊付位置の調整。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−315309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のような製函機における各部の事前調整は、試し通しシートの処理結果を見本(基準)と比較して、処理結果の見本に対する偏差(ズレ量)を求めて、この偏差から印刷部の各色印刷ユニット、スロッタ、ダイカット、グルーガンの各位置(印刷位置、溝切り位置、断裁位置、糊付け位置)を調整する。
各部の位置を調整すると、これに応じて各位置(印刷位置、溝切り位置、断裁位置、糊付け位置)が修正されるが、ズレ量に対する各位置の修正は、オペレータの技量に頼るところがあり、特に、見本に対する偏差が大きいと熟練オペレータでも微調整は難しいため、試し通しを複数回行なって、処理結果を見本に近づけていくことが必要になる。
【0008】
このように事前調整を行なったら、その結果をオーダ毎に記憶させておくことにより、同一オーダに対しては、記憶された調整値にプリセットすれば、試し通しシートと見本との偏差を当初から小さくできるため、一度の試し通しにより事前調整を完了できるが、新オーダの場合には、当初の偏差が大きいため、試し通しを複数回行なうことが必要になり、オペレータにとって大きな負担となり、調整時間も長く要してしまう。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、製函機の事前調整を容易にすることができるようにして、オペレータの負担を軽減させながら、適正な製函を確実に行なうことができるようにした、製函機,検査装置,及び製函機の印刷見当制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目標を達成するために、本発明の製函機は、フレキソ印刷機が用いられた複数の印刷ユニットを有する印刷部を備えた製函機において、前記印刷部により製函用シートに印刷された印刷面の画像を取得する画像取得装置と、前記印刷の見本となるマスター画像(マスターとなるパターン)の第一特定絵柄と前記画像取得装置により取得された前記印刷面の画像中の絵柄であって前記第一特定絵柄に相当する第二特定絵柄とを比較して前記各印刷ユニットにおける見当ズレ量をそれぞれ求めて、前記見当ズレ量に基づいて前記各印刷ユニットに装備された見当調整機構を制御して前記印刷の見当を修正する見当修正制御装置と、を備え、前記第一特定絵柄は、少なくとも複数の色が重なりあっていない箇所が存在する絵柄であって且つ近辺に他のインキ色が存在しない絵柄であり、前記見当修正制御装置は、前記第一特定絵柄を抽出する絵柄抽出部を備えると共に、抽出した前記第一特定絵柄を含み且つ前記第一特定絵柄に対して十分に余裕を持った範囲で他のインキ色が存在しない領域を指定する機能を備え、指定した前記領域内で前記第一特定絵柄と前記第二特定絵柄絵柄とを比較することを特徴としている。
【0011】
前記見当修正制御装置は、前記マスター画像に基づいて予め指定された、前記第一特定絵柄が存在する領域内で前記第二特定絵柄を検出し、前記マスター画像の前記第一特定絵柄との比較をすることが好ましい
【0012】
前記印刷部の下流に配備され、前記印刷部により製函用シートに印刷された前記印刷面の画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により取得された前記印刷面の画像に基づいて印刷の良否を判定する良否判定部とを有する検査装置を備え、前記画像取得装置には、専用の画像取得部ではなく、前記検査装置の前記画像取得部が用いられていることが好ましい。
【0013】
前記見当修正制御装置では、前記マスター画像を、印刷版データから取得することが好ましい。
前記見当修正制御装置では、パターンマッチング法を用いて前記見当ズレ量を求めることが好ましい。この場合、パターンマッチング法としては、例えば、マスターとなるパターン(マスター画像)を目標となるパターン(取得された印刷面の画像)に対して位置を上下左右に移動させながら、重ね合わせの残差が最小になる点を求める残差マッチング等の技術を用いることができる。
【0014】
前記画像取得装置は、前記製函機に試し通しされた前記製函用シートに印刷された印刷面の画像を取得し、前記見当修正制御装置は、前記画像取得装置により取得された前記印刷面の画像に基づいて、前記製函機の本運転前の事前調整として前記印刷の見当を修正することが好ましい。
前記印刷部の下流に前記製函用シートを溝切りするスリッタを有する排紙部を備えると共に、前記スリッタにより溝切りされた位置を検出する溝切り位置検出装置と、前記溝切り位置検出装置により検出された溝切り位置を見本の溝切り位置と比較して溝切り位置のズレ量を求めて、前記溝切り位置ズレ量に基づいて前記スリッタに装備された割出位置調整機構を制御して溝切り位置を修正する溝切り位置制御装置と、を備えていることが好ましい。
【0015】
前記印刷部の下流に前記製函用シートを溝切りするスリッタを有する排紙部と、前記排紙部の下流に前記製函用シートを断裁するダイカット部を備えると共に、前記ダイカット部により断裁された断裁位置を検出する断裁位置検出装置と、前記断裁位置検出装置により検出された断裁位置を見本の断裁位置と比較して断裁位置のズレ量を求めて、前記断裁位置ズレ量に基づいて前記ダイカット部に装備された割出位置調整機構を制御して断裁位置を修正する断裁位置制御装置と、を備えていることが好ましい。
【0016】
前記ダイカット部の下流に前記製函用シートに糊付けするグルーマシンを備えると共に、前記グルーマシンにより糊付けされた糊付け位置を検出する糊付け位置検出装置と、前記糊付け位置検出装置により検出された糊付け位置を見本の糊付け位置と比較して糊付け位置のズレ量を求めて、前記糊付け位置ズレ量に基づいて前記グルーマシンに装備された割出位置調整機構を制御して糊付け位置を修正する糊付け位置制御装置と、を備えていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の検査装置は、フレキソ印刷機が用いられた複数の印刷ユニットを有する印刷部を備えた製函機に装備され、前記印刷部により製函用シートに印刷された印刷面の画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により取得された前記印刷面の画像に基づいて印刷の良否を検査する検査部とを備えると共に、前記印刷の見本となるマスター画像の第一特定絵柄と前記画像取得部により取得された前記印刷面の画像中の絵柄であって前記第一特定絵柄に相当する第二特定絵柄とを比較して前記各印刷ユニットにおける見当ズレ量をそれぞれ求めて、前記各見当ズレ量に基づく見当修正情報を前記各印刷ユニットに装備された見当調整機構に出力する見当修正制御部と、を備え、前記第一特定絵柄は、少なくとも複数の色が重なりあっていない箇所が存在する絵柄であって且つ近辺に他のインキ色が存在しない絵柄であり、前記見当修正制御部は、前記第一特定絵柄を抽出する絵柄抽出部を備えると共に、抽出した前記第一特定絵柄を含み且つ前記第一特定絵柄に対して十分に余裕を持った範囲で他のインキ色が存在しない領域を指定する機能を備え、指定した前記領域内で前記第一特定絵柄と前記第二特定絵柄絵柄とを比較することを特徴としている。
【0018】
前記見当修正制御部は、前記見当ズレ量をインキ色に紐つけられた印刷版データと紐つけて出力することが好ましい。
さらに、本発明の製函機の印刷見当制御方法は、フレキソ印刷機が用いられた複数の印刷ユニットを有する印刷部を備えた製函機における各印刷ユニットの見当調整を行なう方法であって、前記印刷部により製函用シートに印刷された印刷面の画像を取得し、印刷見本となるマスター画像のうち少なくとも複数の色が重なりあっていない箇所が存在する絵柄であって且つ近辺に他のインキ色が存在しない絵柄である第一特定絵柄を抽出し、抽出した前記第一特定絵柄を含み且つ前記第一特定絵柄に対して十分に余裕を持った範囲で他のインキ色が存在しない領域を指定する機能を備え、指定した前記領域内で、前記第一特定絵柄と、取得した前記印刷面の画像中の絵柄であって前記第一特定絵柄に相当する第二特定絵柄とを比較して前記各印刷ユニットにおける見当ズレ量をそれぞれ求めて、前記見当ズレ量に基づいて前記各印刷ユニットに装備された見当調整機構を制御して前記印刷の見当を修正することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製函機,検査装置,及び製函機の印刷見当制御方法によれば、取得された印刷面の画像中の指定された領域内の絵柄であって第一特定絵柄に相当する第二特定絵柄を印刷の見本となるマスター画像の第一特定絵柄と比較して各印刷ユニットにおける見当ズレ量をそれぞれ求めて、この見当ズレ量に基づいて各印刷ユニットに装備された見当調整機構を制御して印刷の見当を修正する。例えば、予めマスター画像情報を入手してこのマスター画像情報から各印刷ユニットで印刷される絵柄(第一特定絵柄)を特定し、この絵柄を含む領域を指定しておけば、製函用シートを1枚、試し通しすることにより画像取得装置により印刷画像を取得することができ、見当修正制御装置により、印刷画像の指定領域にある絵柄(第二特定絵柄)をマスター画像の特定絵柄(第一特定絵柄)と比較して各印刷ユニットの印刷版の見当ズレ量をそれぞれ求め、この見当ズレ量に基づいて各印刷ユニットの見当調整機構を制御して印刷の見当修正を自動で行なうことができる。したがって、製函機の事前調整を容易にすることができて、オペレータの負担を軽減できると共に、オペレータの熟練に頼ることなく適正な製函を短時間で速やかに行なうことができるようになる。
また、第一特定絵柄を、少なくとも複数の色が重なりあっていない箇所が存在する絵柄とすることにより、注目する印刷ユニットに関する見当ズレ量を誤ることなく求めることができる。このような第一特定絵柄を絵柄抽出部において自動で抽出すれば、容易に特定絵柄を設定することができる。
【0020】
また、画像取得部と良否判定部とを有する検査装置の前記画像取得部を前記画像取得装置として用いれば、見当制御と良否検査とを装置を兼用しながらそれぞれ実行することができ、装置構成を簡素化できる利点や、装置コストを低減できる効果が得られる。
マスター画像を受注時に得られる印刷版データから取得すれば、適正なマスター画像を容易に得ることができ、人為的な作業負担を抑えながら制御精度を向上させることができる。
【0021】
ターンマッチング法を用いて見当ズレ量を求めると、確実に且つ精度良く求めることができる。
【0022】
また、印刷の見当修正に加えて、スリッタにより溝切りされた位置を検出し、検出した溝切り位置を見本の溝切り位置と比較して溝切り位置のズレ量を求めて、このズレ量に基づいて溝切り位置を修正することにより、製函品質を向上させることができる。
さらに、ダイカット部により断裁された断裁位置を検出し、検出した断裁位置を見本の断裁位置と比較して断裁位置のズレ量を求めて、このズレ量に基づいて断裁位置を修正することによっても、製函品質を向上させることができる。
【0023】
同様に、グルーマシンにより糊付けされた糊付け位置を検出し、検出した糊付け位置を見本の糊付け位置と比較して糊付け位置のズレ量を求めて、このズレ量に基づいて糊付け位置を修正することによっても、製函品質を向上させることができる。
見当ズレ量をインキ色に紐つけられた印刷版データと紐つけて出力することにより、印刷版とこれを取り付ける印刷ユニットの組み合わせが変わった場合でも、インキ色に紐つけられた印刷ユニットの見当調整機構を制御して前記印刷の見当を修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態にかかる製函機及び付設された検査装置の構成をシートの加工過程とともに示す構成図である。
図2】本発明の第1実施形態にかかる製函機の情報処理系統を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態にかかる製函機の印刷部の印刷ユニットを示す構成図である。
図4】本発明の第1実施形態にかかる製函機の印刷部の印刷ユニットにおける見当調整機構の機能を説明する印刷ユニット要部の斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態にかかる印刷見本となるマスター画像の入手及びその利用を説明する模式図である。
図6】本発明の第1実施形態にかかる印刷面の画像の取得及び処理を説明する模式図である。
図7】本発明の第1実施形態にかかるマスター画像と印刷面の画像との対比例を説明する模式図である。
図8】本発明の第1実施形態にかかる印刷位置のズレ量の算出例を、(a)〜(d)に印刷ユニット毎に説明する模式図である。
図9】本発明の第1実施形態にかかる印刷見当修正の制御を説明するフローチャートである。
図10】本発明の第2実施形態にかかる製函機の情報処理系統を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1図9は本発明の第1実施形態に係る製函機及び製函機に付設された検査装置並びにその見当修正方法を説明する図であり、これらの図に基づいて説明する。
【0026】
(製函機)
まず、本実施形態に係る製函機を説明する。図1は本実施形態に係る製函機を説明する構成図であり、図1には、装置構成を図面下方に記載し、製函用シートとしての段ボールシートがフラットに折り畳まれた状態の函(製函シート)に加工される工程を図面上方に装置構成と分けて併記している。
【0027】
図1に示すように、この製函機Mには、上流側から、給紙部1,印刷部2,排紙部3,ダイカット部4,フォルディング部(フォルダグルア部)5,カウンタエジェクタ部6が設けられている。
給紙部1では、板状の段ボールシート10aが多数積載された状態で搬入され、この段ボールシート10aを搬送コンベア7に載せて1枚ずつ印刷部2に供給する。
【0028】
印刷部2は、所定の印刷色数(ここでは、4色)の印刷ユニット2a〜2dからなり、この印刷部2では、搬送コンベア7によって1枚ずつ搬送される段ボールシート10aに、各色のインキを順次印刷する。図1に示す例では、1番目の印刷ユニット2aにより絵柄「E」が、2番目の印刷ユニット2bにより絵柄「V」が、3番目の印刷ユニット2cにより絵柄「O」が、4番目の印刷ユニット2dにより絵柄「L」が、それぞれ印刷される。この印刷部については、詳細を後述する。
【0029】
排紙部3は、スリッタ・スコアラを備えており、印刷部2で印刷された段ボールシート10aに、スリッタによる溝切りやスコアラによる罫線入れを行なう。
ダイカット部4は、打ち抜きによって段ボールシート10aから不要部分を断裁し除去する。
フォルディング部5の最上流には、グルーガンが装備され、印刷後、溝切りや罫線入れや打ち抜き断裁された段ボールシート10aの左右方向一端の糊代にグルーガンによって糊付けして、その後、段ボールシート10aの左右両端部が裏側(下方)で重合するように、折り曲げ加工を行なって、折り曲げられた段ボールシート10aの左右両端部を糊によって接着して製函シート10とする。
【0030】
カウンタエジェクタ部6では、フォルディング部5で加工された製函シート10を計数しながら、スタッカに積載する。そして、所定枚数の製函シート10が積み上げられたら、このシート群100を次工程へ搬送する。
【0031】
(検査装置)
本実施形態にかかる検査装置50は、図1図2に示すように、製函機の通所運転時に、段ボールシートの印刷面に印刷された印刷面の画像を取得する画像取得部(画像取得装置)としてのカメラ51と、カメラ51で取得された印刷面の画像と印刷の見本(基準)となるマスター画像(基準)とを比較して、印刷部2による印刷の良否(印刷位置の良否や色抜けの有無)を判定する良否判定部53と、カメラ51で取得された印刷面の画像と印刷の見本(基準)となるマスター画像(基準)とを比較して各印刷ユニット2a〜2dにより印刷された絵柄の位置のズレ量(見当ズレ量)を求めて、この見当ズレ量に基づいて各印刷ユニット2a〜2dの見当を修正(見当合わせ)する見当修正制御部(見当修正制御装置)60と、を備えている。
【0032】
なお、本実施形態では、良否判定部53及び見当修正制御部60は、検査装置用サーバ(サーバコンピュータ)52の機能要素として構成されているが、検査装置50としては、カメラ51と良否判定部53を有する検査装置用サーバ52とから構成して、見当修正制御部60は、検査装置用サーバ52と別のハードウエア(見当修正制御用コンピュータ)を用いて、検査装置用サーバ52と情報伝達可能に接続した構成としても良い。
【0033】
良否判定部53は、製函機の通常運転時に、印刷面の画像にマスター画像の各絵柄と対応した位置に対応した絵柄があるか否かのみを判定するが、見当修正制御部60は、通常運転前の準備段階(事前調整時)に、印刷面の画像にマスター画像の各インキ色のそれぞれの絵柄と対応した印刷絵柄について、その印刷絵柄の見本の絵柄に対するズレ量を求めて、印刷版の見当修正のための修正量を算出し、各印刷ユニット2a〜2dの見当を修正する。
【0034】
ここで、各印刷ユニット2a〜2dの概略構成を説明すると、図3に示すように、各印刷ユニット2a〜2dは、フレキソ印刷機が用いられ、チャンバフレーム,シールブレード,ドクタブレードからなるインキチャンバ21と、シールブレード,ドクタブレードと摺接しながら回転しインキチャンバ21内のフレキソインキを外周面の溝内に供給されるアニロックスロール22と、外周にアニロックスロール22からフレキソインキを転写される印刷版24を装着された版胴23と、段ボールシート10aを版胴23と圧接する圧胴25とを備えている。
【0035】
製函機の印刷の場合、オフセット印刷のような一般的な印刷機のようにインキ色によって使用する印刷ユニットが決まっているわけではなく、使用インキは通常いずれも特色であり、また、どのインキをどの印刷ユニット2a〜2dに割り当てるかはその都度設定される。したがって、各印刷ユニット2a〜2dに使用するインキ色が割り当てられると、インキ色と印刷ユニット2a〜2dとが紐付けされると共に、印刷版データにおいては、印刷絵柄とインキ色とが紐付けされて管理される。
【0036】
版胴23は、図4に示すように、印刷版24の割出方向位置(天地方向位置)及び幅方向位置を調整可能な見当調整機構26a〜26d(図2参照)が装備され、見当調整機構は制御信号に応じて作動して、印刷版24の割出方向位置(天地方向位置)及び幅方向位置を調整して印刷位置の見当調整(見当修正)を行なうようになっている。
【0037】
次に、見当修正制御を説明する。
見当修正制御には、印刷の見本となるマスター画像のデータが必要であり、図5に示すように、検査装置用サーバ52には、製函依頼元サーバ(お客様サーバ)70から印刷の見本となるマスター画像のデータが送信される。マスター画像のデータには、色毎のファイルデータ(各印刷ユニットの印刷版24のデータ)が含まれており、検査装置用サーバ52の見当修正制御部60では、各色のファイルデータ201から各色の代表絵柄202を抽出し、検索ウインドウデータ211内にこの抽出した代表絵柄202を含んだ領域213を指定する。この指定する領域213には、代表絵柄202に対して十分に余裕を持った範囲で、且つ、他のインキ色が存在しない領域を選定し、その基準位置(絶対アドレスX0,Y0)に対する位置として指定する。したがって、代表絵柄202はこの条件を満たす絵柄とする必要がある。
【0038】
なお、この代表絵柄202は、少なくとも複数の色が重なりあっていない箇所を有する絵柄であり、本実施形態では、近辺に他のインキ色が存在しない絵柄としている。複数の色が重なりあっていない箇所や近辺に他のインキ色が存在しない絵柄は、製版データ上で複数色が重なっていないことや離隔していることから自動で抽出でき、ここでは、見当修正制御部60が、代表絵柄202を自動抽出する(この機能を、絵柄抽出部とする)が、もちろん手動で代表絵柄202を設定しても良い。
【0039】
そして、このような代表絵柄を包含する領域213の指定(この機能を、領域指定部とする)も、見当修正制御部60が自動的に設定するが、これも手動で設定しても良い。
図示する例では、第1の印刷ユニットによる印刷データ(1色目のデータ)201aから代表絵柄202aとして近辺に他のインキ色が存在しない「ABCDE」を抽出し、検索ウインドウデータ211a内にこの代表絵柄202aを、十分に余裕を持って含んだ領域213aを選定し指定する。同様に、第2の印刷ユニットによる印刷データ(2色目のデータ)201bから代表絵柄202bとして近辺に他のインキ色が存在しない「OpqrStuv」を抽出し、検索ウインドウデータ211b内にこの代表絵柄202bを十分に余裕を持って含んだ領域213bを選定し指定する。同様に、第3の印刷ユニットによる印刷データ(3色目のデータ)201cから代表絵柄202cとして近辺に他のインキ色が存在しない「FGIJKLMN」を抽出し、検索ウインドウデータ211c内にこの代表絵柄202cを十分に余裕を持って含んだ領域213cを選定し指定する。同様に、第4の印刷ユニットによる印刷データ(4色目のデータ)201dから代表絵柄202dとして近辺に他のインキ色が存在しない「WXYZ」を抽出し、検索ウインドウデータ211d内にこの代表絵柄202dを十分に余裕を持って含んだ領域213dを選定し指定する。
【0040】
一方、見当修正制御では、印刷データに基づいた印刷版24を用いて印刷して得られた印刷面の画像(センサ画像)のデータが必要であり、図6に示すように、検査装置用サーバ52は、カメラ51からの画像データを取得する。この画像データは、製函機Mに試し通しモードとして装備された1枚給紙を実施して、1枚の段ボールシート10aのみを製函機Mに供給して、この段ボールシート10aの印刷面に印刷された全絵柄を含んだ段ボールシート10a全体を撮影するか、若しくは、各インキ色の代表絵柄202a〜202dを全て含み且つ段ボールシート10aの基準位置(例えば何れかの角部)を含んだ領域のデータが必要であり、カメラ51では、これを満たすように撮影する。
【0041】
検査装置用サーバ52の見当修正制御部60では、取り込んで記録されたマスター画像のデータの解像度にあわせる解像度変換を行なうと共に、検索ウインドウデータ211と同様に基準位置(絶対アドレスX0,Y0)を指定する。
こうして、マスター画像のデータ(代表絵柄)202と、センサ画像(印刷面の画像)のデータ(代表絵柄と対応した絵柄)212とが得られると、検査装置用サーバ52の見当修正制御部60では、図7に示すように、各色の指定の領域(ウインドウ)213内の絵柄212を捜し、各色の指定領域213内の絵柄212と、これと対応したマスター画像のこれと対応した絵柄とを、パターンマッチング法を用いて照合させる。このように絵柄を照合させた際の絵柄の対応する位置情報から、印刷面の画像のマスター画像に対する位置ズレ量を算出する。
【0042】
なお、パターンマッチング法には、公知の種々の手法があるが、例えば、マスターパターンをターゲットパターンに対し位置を上下左右に移動させながら、重ね合わせの残差が最小になる点を求める残差マッチングをはじめとして、正規化相関法,位相限定相関,幾何マッチング等、種々の手法を適用しうる。
つまり、図8(a)に示すように、第1の印刷ユニットのインキ色については、マスター画像の代表絵柄202aとセンサ画像の代表絵柄に対応した絵柄(対応絵柄)212aとをパターンマッチング法により照合させると、両者の基準位置(絶対アドレスX0,Y0)は割出方向及び幅方向にそれぞれ偏差が発生する。この偏差が割出方向ズレ及び幅方向ズレである。同様に、図8(b)〜図8(d)に示すように、第2,3,4の各印刷ユニットのインキ色についても、マスター画像の代表絵柄202b,202c,202dとセンサ画像の代表絵柄に対応した絵柄(対応絵柄)212b,212c,212dとをパターンマッチング法により照合させると、それぞれにおいて、マスター画像の絵柄とセンサ画像の絵柄との基準位置(絶対アドレスX0,Y0)は割出方向及び幅方向にそれぞれの偏差(即ち、割出方向ズレ及び幅方向ズレ)が発生する。
【0043】
検査装置用サーバ52の見当修正制御部60では、このように、各印刷ユニットの割出方向ズレ及び幅方向ズレ(これらを総称して、見当ズレという)を求めると、この割出方向ズレ及び幅方向ズレに対応して、各印刷ユニットの版胴23に設けられた見当調整機構に、各ズレを解消するだけの制御量に応じた制御信号を生成し出力する。なお、割出方向ズレに対する印刷版24の割出方向位置の調整量(制御量)との関係、及び、幅方向ズレに対する印刷版24の幅方向位置の調整量(制御量)との関係は、検査装置用サーバ52内のメモリ若しくは外部メモリに記憶され、制御信号生成時にはこれが参照される。
【0044】
なお、本見当修正制御部60は、求めた見当ズレ量をインキ色に紐つけられた印刷版データと紐つけて出力することにより、印刷版とこれを取り付ける印刷ユニットの組み合わせが変わった場合でも、インキ色に紐つけられた印刷ユニットの見当調整機構を制御して印刷の見当を修正することができるようにしている。
【0045】
(作用、効果)
本発明の第1実施形態に係る製函機及び検査装置は、上述のように構成されているので、例えば、図9に示すように、製函機の事前調整として版位置の見当修正を行なうことができる。
【0046】
つまり、まず、通常運転前の準備段階(事前調整時)において、製函機Mの釦操作によって1枚給紙指令を行ない、段ボールシート1枚だけを試し通しする(ステップS10)。これに応じて、製函機Mでは給紙された1枚の段ボールシート10aに対して印刷を実施する(ステップS20)。なお、製函機Mでは、印刷後の折り曲げ端部貼り付けまでの処理も行なう。
【0047】
段ボールシート10aに対して印刷が実施されると、検査装置50のカメラ51が印刷面を撮影し(ステップS30)、撮影した印刷画像の情報を見当修正制御装置(見当修正制御部)60に送信する(ステップS40)。
見当修正制御装置(見当修正制御部)60では、印刷画像(センサ画像)とマスター画像とを比較して、版毎に見当ズレ量(割出方向ズレ量及び幅方向ズレ量)を算出し(ステップS50)、算出した見当ズレ量に基づいて、印刷部の各印刷ユニットの見当修正機構を制御し、版位置を修正する(ステップS60)。
【0048】
なお、見当ズレ量を求める際には、インキ色自体には着目せずに、各印刷ユニット2a〜2dとその印刷ユニットで印刷される特定の絵柄(代表絵柄)202とを関連付けたうえで、代表絵柄202に対して十分に余裕を持った範囲で、且つ、他のインキ色が存在しない領域213を選定し指定し、この領域213内で特定の絵柄を検索するので、センサ絵柄のデータから各印刷ユニット2a〜2dに関するものを適切に拾い上げて、見当ズレ量を求めることができる。
【0049】
したがって、本製函機,本検査装置,及び本印刷見当制御方法によれば、取得された印刷面の画像中の指定された領域内の絵柄を印刷の見本となるマスター画像の特定絵柄と比較して各印刷ユニット2a〜2dにおける見当ズレ量をそれぞれ求めて、この見当ズレ量に基づいて各印刷ユニット2a〜2dに装備された見当調整機構を制御して印刷の見当を修正することができる。例えば、予めマスター画像情報を入手してこのマスター画像情報から各印刷ユニットで印刷される絵柄を特定し、この絵柄を含む領域を指定しておけば、製函用シートを1枚だけ試し通しすることによりカメラ51により印刷画像を取得することができ、見当修正制御部60により、印刷画像の指定領域にある絵柄をマスター画像の特定絵柄と比較して各印刷ユニット2a〜2dの印刷版の見当ズレ量がそれぞれ求められ、この見当ズレ量に基づいて各印刷ユニット2a〜2dの見当調整機構が制御されて印刷版の見当修正が自動で行なわれる。したがって、製函機の事前調整を容易にすることができて、オペレータの負担を軽減できると共に、オペレータの熟練に頼ることなく適正な製函を短時間で行なうことができるようになる。
【0050】
また、カメラ(画像取得部)51と良否判定部53とを有する検査装置50のカメラ51を見当修正制御部(見当修正制御装置)60に画像情報を供給する画像取得装置として用いているので、見当制御と良否検査とを装置を兼用しながらそれぞれ実行することができ、装置構成を簡素化できる利点や、装置コストを低減できる効果が得られる。
さらに、マスター画像を受注時に得られる印刷版データから取得するので、適正なマスター画像を容易に得ることができ、オペレータの作業負担を抑えながら制御精度を向上させることができる。
パターンマッチング法を用いて見当ズレ量を求めるので、確実に且つ精度良く求めることができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について図10を参照して説明する。
図10に示すように、本実施形態では、第1実施形態と同様に、製函した製品の良否を判定する検査装置を利用しているが、本実施形態にかかる検査装置は、カメラ51及び印刷部2による印刷の良否(印刷位置の良否や色抜けの有無)を判定する良否判定部53に加えて、スリッタにより溝切りされた位置を検出するセンサ(溝切り位置検出装置)54と、検出された溝切り位置を見本の溝切り位置と比較して溝切り位置の良否を判定する良否判定部55と、ダイカット部により断裁された断裁位置を検出するセンサ(断裁位置検出装置)56と、検出された断裁位置を見本の断裁位置と比較して断裁位置の良否を判定する良否判定部57と、グルーマシンにより糊付けされた糊付け位置を検出するセンサ(糊付け位置検出装置)58と、検出された糊付け位置を見本の糊付け位置と比較して糊付け断裁位置の良否を判定する良否判定部59と、を有している。
【0052】
そして、本実施形態では、見当修正制御部(見当修正制御装置)60に加えて、溝切り位置センサ54により検出された溝切り位置を見本の溝切り位置と比較して溝切り位置のズレ量を求めて、この溝切り位置ズレ量に基づいて排紙部3のスリッタに装備された割出位置調整機構(図示略)を制御して溝切り位置を修正する溝切り位置制御部(溝切り位置制御装置)61と、断裁位置センサ56により検出された断裁位置を見本の断裁位置と比較して断裁位置のズレ量を求めて、この断裁位置ズレ量に基づいてダイカット部4に装備された割出位置調整機構(図示略)を制御して断裁位置を修正する断裁位置制御部(断裁位置制御装置)62と、と、糊付け位置センサ58により検出された糊付け位置を見本の糊付け位置と比較して糊付け位置のズレ量を求めて、この糊付け位置ズレ量に基づいてフォルディング部5のグルーマシンに装備された割出位置調整機構(図示略)を制御して糊付け位置を修正する糊付け位置制御部(糊付け位置制御装置)63と、を備えている。
【0053】
なお、各センサ54,56,58には、例えばカメラを適用することができる。この場合、カメラ51の設置位置を、グルーマシンの直後において、各センサ54,56,58をカメラ51に兼用させることもでき、これにより、コスト削減及び装置構成の簡素化を図ることができる。
本実施形態の場合、印刷の見当修正に加えて、スリッタにより溝切りされた位置を検出し、検出した溝切り位置を見本の溝切り位置と比較して溝切り位置のズレ量を求めて、このズレ量に基づいて溝切り位置を修正することにより、製函品質を向上させることができる。
【0054】
さらに、ダイカット部4により断裁された断裁位置を検出し、検出した断裁位置を見本の断裁位置と比較して断裁位置のズレ量を求めて、このズレ量に基づいて断裁位置を修正することによっても、製函品質を向上させることができる。
同様に、グルーマシンにより糊付けされた糊付け位置を検出し、検出した糊付け位置を見本の糊付け位置と比較して糊付け位置のズレ量を求めて、このズレ量に基づいて糊付け位置を修正することによっても、製函品質を向上させることができる。
【0055】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の各実施形態のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形或いは省略或いは組み合わせをして実施することができる。
【0056】
例えば、上記の各実施形態では、検査装置を利用して、各要素のズレを修正する装置を構成しており、兼用化によるコスト削減及び装置構成の簡素化が図られているが、各センサ類(カメラを含む)51,54,56,58や各制御部(制御装置)53,55,57,59に専用のものを装備しても良い。
また、上記実施形態では、印刷の刷版データと紐づいて印刷色の情報が取得される場合(刷版データとともに印刷色の情報も取得される場合)を説明したが、このように印刷色の情報がない場合は、印刷色の情報を手動で入力する(例えば、人が入力ボタンで押す)ようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 給紙部
2 印刷部
2a〜2d 印刷ユニット
3 排紙部
4 ダイカット部
5 フォルダグルア部
6 カウンタエジェクタ部
7 搬送コンベア
10 製函シート
10a 段ボールシート(製函用シート)
21 インキチャンバ
22 アニロックスロール
23 版胴
24 印刷版
25 圧胴
26a〜26d見当調整機構
50 検査装置
51 カメラ(画像取得装置)
52 検査装置用サーバ(サーバコンピュータ)
53,55,57,59 良否判定部
54 溝切り位置センサ(溝切り位置検出装置)
56 断裁位置センサ(断裁位置検出装置)
58 糊付け位置センサ(糊付け位置検出装置)
60 見当修正制御部(見当修正制御装置)
61 溝切り位置制御部(溝切り位置制御装置)
62 断裁位置制御部(断裁位置制御装置)
63 糊付け位置制御部(糊付け位置制御装置)
70 製函依頼元サーバ(お客様サーバ)
100 製函シート群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10